和歌山県発祥の「架線集材システム」を活用した架線集材のようす

和歌山県発祥の「新たな架線集材システム」を活用し、架線集材を行う。

和 vol.59 【特集】
和歌山の林業 -2-
和歌山の林業

木を伐る

匠の「索張り」技術と
最新AI技術で、
急峻(きゅうしゅん)な山から
紀州材を運び出す
紀州の新しい林業

 山は、木を伐って、苗木を植えて、育てることで循環し、持続可能な形で守られていく。和歌山県は急傾斜地が多く、先人たちが植えた広大な人工林から木を伐り出すため、山にワイヤー(架線)を張って木を集める架線集材形態を構築してきた。今、その技術を発展させる取り組みが進んでいる。
 最新技術の導入を進める目的は、急峻な地形でも安全で効率的な作業ができ、山の循環がより進むためだ。3代にわたり木を伐り、架線集材を行う中井林業は、2017(平成29)年からイワフジ工業と連携し、現在に至るまで集材技術の革新に向けた技術の開発・導入に注力する。
 研究が実り、2021(令和3)年にシステムラジコンで油圧集材機と架線式グラップルを無線操作する「グラップル付集材機械」の実用化に成功。従来は伐った木の場所まで作業員が向かい、木に架線を掛け、巻き上げて荷下ろし場へ搬送する作業を行っていた。この機械があれば作業が減り、3~4人必要だった作業員が2人でも可能になり生産性がアップ。さらに木に作業員が直接触れることなく無線操作できるため、安全性も高まった。

和歌山県発祥の「架線集材システム」

架線式グラップルは、2本の爪が付いた機器で、山に張った架線を通り、木を荷下ろし場まで運ぶ。

山の循環のため木を伐り出す新技術の開発に挑戦し、
省力化と安全性を両立させる

 現在は、伐った木をAIが自動で感知して自動で集材を行うことが可能なシステムの開発にも着手している。伐った木のある場所をAIが発見し、自動で掴み、木を搬送する。システムラジコンを操作する人員も不要となり、より省力化が進む。ただ、作業範囲は架線の配置によって決まるため、まず人の手で現場全体をカバーできるように架線を張らなければならない。代表取締役の中井稔さんは「日本は急傾斜の山が多く、架線集材技術は必要不可欠。架線を張る技術がなければ機器類が発達しても活用できません。山の地形や集材作業の効率、伐り出した後の運搬方法まで考慮するため、長年の経験が必要です」と話す。

山中で、架線集材システムを操作する男性

➀「新たな架線集材システム」は油圧集材機と架線式グラップルをシステムラジコンで無線操作する。 ➁AIを使用したシステムの開発も、架線を張る作業から始まった。

 中井さんは自身の持つ架線集材技術を後進に伝える指導も行う。技術革新と熟練技の継承に取り組み、新しい林業の形を全国へ広めている。「先進的な技術研究は大変だが、技術革新が進み、省力化ができれば木の伐り出しが進みます。戦後に植えた木は、伐り時を迎えている。できるだけ早く伐り、次の世代の木を育てたい。伐った後は苗を植えることを山主に提案し、山の循環が進むよう尽力しています」(中井さん)。

column 【新たな架線集材システム】

次世代型架線集材の実用化へ向け、架線式グラップル(下写真)を用いて木を掴んでから搬送までを自動化するシステムをイワフジ工業(岩手県)と中井林業が協力して開発。AIを活用した作業の効率化を目指す。安全性・生産性の向上と軽労化のため、技術開発に取り組んでいる。

新たな架線集材システムである架線式グラップル