「有田・下津地域世界農業遺産推進協議会」の会長を務める、柑橘農家の森田さん

「有田・下津地域世界農業遺産推進協議会」の会長を務める、柑橘農家の森田さん。

和 vol.58

【わかやま産品 テロワール】
vol.02

【わかやま産品 テロワール】有田みかん

テロワールはフランス語で「風土、土地」を意味する「terre」から派生した言葉。地理、地勢、気候、こだわりの栽培法や確かな技術により栽培される農作物の生育環境全体を指す。和歌山県の恵まれた自然や気候、土壌環境、生産者のこだわりが集結した産品のテロワールにも注目し、それぞれの魅力を再発見してみよう。

温暖な気候が生み出す
甘味と酸味
栽培の工夫や管理の徹底で
おいしさを追求
有田みかん

 温州みかん(以下、みかん)の生産量が日本一の和歌山県。初代紀州藩主・徳川頼宣が、有田・下津地域にみかんの栽培を奨励し保護したのが商業栽培の始まりとされる。その歴史と文化が国際的に認められ、2025(令和7)年8月26日に「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」が世界農業遺産に認定された。
 今回紹介する”有田みかん“は県北西部の有田川流域(有田市、湯浅町、広川町、有田川町)で生産される。温暖で、夏の降雨が比較的少なく、おいしいみかん栽培の適地だ。平地が少ない同地域に広がる石積み階段園は、傾斜地を開墾し、河原から運んだ丸石など園地に応じた自然石を積み、多大な労力を費やして造成される。石積みは畑の崩壊や土壌の流亡を防ぐ他、地温上昇や排水性向上、光の反射による果実の着色向上などの利点がある。

“有田みかん”の品種の一つ「白鳳」

“有田みかん”は、「極早生(ごくわせ)みかん」「早生(わせ)みかん」「普通みかん」の順に、概ね9月〜2月にかけて出荷される。

 柑橘農家で、「有田・下津地域世界農業遺産推進協議会」会長の森田耕司さんは「石を積み上げて築かれた階段園は、先人たちが自然と折り合いながら作り上げてきた知恵の結晶。石段作りの技術も継承され、階段園の景観が守られている」と話す。生産者は秋から冬の収穫に向け、不要な実を落とす摘果作業を夏の盛りに行い、一つひとつ丁寧な作業でみかんを仕上げる。「有田みかんの特徴は、甘さの中に適度な酸味があること。手間暇かけた摘果作業と夏から秋にかけての寒暖差により、一粒に旨味が凝縮されます」。

 ”有田みかん“は恵まれた気候等の条件に加え、品質向上に尽力する生産者の努力と代々受け継がれた知恵や技術により生み出される逸品だ。

世界農業遺産に認定!!

有田・下津地域の石積み階段園

2025(令和7)年8月26日、国連食糧農業機関(FAO)により「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」が世界農業遺産(GIAHS)に認定された。
「みなべ・田辺の梅システム」に続き県内2例目。
400 年以上前から農家の手により壮大な石積み階段園を築き上げ、自然条件を巧みに活かして多様な品種系統を導入。貯蔵技術も駆使することで、長期リレー出荷を実現した、世界的に重要なシステムです。

「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」の世界農業遺産マーク
世界農業遺産について
世界農業遺産(GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。
おいしく食べて和歌山モール

「食の宝庫」である和歌山県で、作り手たちが心を込めて生み出したおいしい“食”。それらを集めて和歌山県食品流通課が運営する紹介サイトです。豊かな自然環境と、さまざまな発酵食品のルーツとなった和歌山県の“食”をぜひご体験ください。

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