実った桃
和 vol.56 【特集】
果樹王国和歌山。その秘密 -8-
販売にこだわる

果樹王国、和歌山のその先へ
未来を見据え戦略的な
販売促進を進める

 生産者の減少や耕作放棄地の拡大など、果樹産地が抱える課題もあるなか、産地の将来を見据え、販売戦略において先進的な対策を講じているのがJA紀の里だ。「担い手の減少に、小さな選果場では取り扱う農産物が少なくなることを見越し、20年前ぐらいから選果場の統合を検討し、2005年に大型の流通センターを開設しました」と語るのはJA紀の里の常務理事中山裕之さん。今では全国トップクラスの売上高を誇り、県内外から旬の食材を求め多くの人が訪れる紀の川市の“めっけもん広場”もその頃から始めたという。「農家の収入向上に向け、市場への出荷だけでなく、海外への輸出を中心に多様な形態での販売を模索しました。東南アジアへは、航空機であれば国内流通と同じ時間での輸送が可能でした。しかし、国によって使用できない農薬があるなど、検疫という輸出ならではの難しさがありました。それでも大きなメリットがあり、和歌山の果実を受け入れてもらうのに何十年とかかりましたが、今では台湾や香港などへの輸出も順調に推移しています」。

紀の川市桃山町で収穫された「あら川の桃」 実った紀の川市桃山町「あら川の桃」/紀の川市桃山町の桃源郷

❶あら川の桃とは、紀の川市桃山町で収穫された桃のことで、数百年に及ぶ歴史をもつ。見た目が美しいだけでなく、溢れる果汁と甘く柔らかい果肉が特徴な和歌山の夏を彩る果実である。 ❷紀の川市桃山町の桃源郷。3月下旬から4月上旬にかけて紀の川の南側に桃の花が咲き誇る。

 販路開拓にはプロモーション活動も重要だと語る。「例えば“百果桃”。通常1本の桃の木から500個以上の桃が収穫されますが、そのうち匠(農家)が選んだ100個を特別なパッケージにして販売しています。また、“あら川の桃”であればGI登録されていること、そして、市場では規格外品となる傷がついた桃も、味は変わらないことを伝え、産直市場で販売するなど、商品がもつ物語や産地の背景を一緒に伝えることが重要なんですね。今では桃の時期になると、出向かずともお客さんがこちらに来てくれるようになりました」。他にもインターネット販売やVRめっけもん、ふるさと納税などいくつもの販路を開拓。方向は同じでも異なる手法で、未来に繋ぐ戦略を立てている。

JA紀の里
住所/紀の川市上野12-5
電話/0736-77-7801