鹿肉のロティ赤ワインソース

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和 vol.56 【特集】
果樹王国和歌山。その秘密 -6-

自分の畑は自分で守る
農人と山の番人プロジェクト

 和歌山県の鳥獣による農作物被害は約2億4900万円(※1)で、その約8割が果樹被害である。田辺市上芳養地域でも8年前ぐらいから被害が急増したという。「猟師が減り、山に近いところから耕作放棄地が増えてきたことが大きな原因だと思います。果実が食べられることに加え、木も傷つけられてしまうのは農家として辛い。収穫量の回復には数年かかりますからね」と語るのは、梅とみかんの栽培農家である岡本和宜さんだ。鳥獣被害の軽減を地域全体の問題と捉え、それらを解決するために平成18年に(株)日向屋を立ち上げたのだという。
(※1)和歌山県の令和5年度の野生鳥獣による農作物被害額調査結果から抜粋

地域内で一連して鳥獣対策からジビエ活用までができるように“チームひなた”を結成した猟師歴25年の湯川さん(右)と岡本さん(左)

猟師歴25年の湯川さん(右)が、農家からの連絡を受けるとすぐに現地へ出向き、獣の状態を見極めるため、新鮮なジビエが流通されている。岡本さん(左)との息もピッタリ。

 「農家の傍ら罠の掛け方などを地域の先輩に教えてもらいました。でも、自らの手で処理をすることは精神的に辛く、将来、こどもたちに継がせることにも葛藤を抱いたため、せめて活用しようと思いました」。そんな時、猟師の湯川俊之さんとの出会いもあり、仲間を集め、役割を分担しつつも、地域内で一連して鳥獣対策からジビエ活用までができるように“チームひなた”を結成した。そうして今、上芳養のジビエは“山の宝”として販売され、近くのフレンチレストラン“キャラバンサライ”でも提供されている。「産地を守り、動物の命も大切にする。出前授業などを通じて地域のこども達にも伝えています。これからも力を合わせて、地域の課題解決に取り組んでいきたいと考えています」。
 上芳養地域をはじめ、県内でも捕獲や防護柵設置など鳥獣害対策は進んできており、農作物被害も減少傾向にある。また、全国に先駆けてジビエの肉質等級制度を始めた和歌山県。ジビエの活用を図りながら、果樹王国を守り、農山村地域の維持に向けた取り組みは続いていく。

安珍清姫の悲恋物語の絵とき説法に使われる絵巻物

チームひなたの仲間であり、キャラバンサライオーナーシェフ更井亮介さん。レストランは、おじいさんが使っていた梅蔵を改装したもの。

民設・民営の解体施設のひなたの杜

民設・民営の解体施設のひなたの杜。

株式会社日向屋
住所/田辺市上芳養755-2
電話/080-3806-2716
ひなたの杜
住所/田辺市上芳養469-2
電話/0739-33-7870
Restaurant Caravansarai(キャラバンサライ)
住所/田辺市上芳養595
電話/0739-33-9990
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