
研究を積み重ね、守り育てる
“果樹王国”という誇り
9月から始まる
みかんのリレー出荷
みかんの生産量が20年連続全国1位の和歌山県。温州みかんだけでも10種類以上、柑橘類では100種類近くも栽培されている。みかんといえば、冬の“こたつみかん”のイメージが強いが、和歌山では早いもので9月上旬から収穫できるみかんも自慢だ。特に今人気で、栽培面積を増やしているのが“ゆら早生”だ。ゆら早生は10月上旬から収穫可能な品種として和歌山県内で登録。爽やかな酸味に加え、11月以降のみかんに負けないぐらいの甘みを味わうことができる。また、県果樹試験場の研究により、ゆら早生よりも早く収穫できる“YN26”も開発されている。このようにシーズンを通じた出荷に向けて進歩し続けてきた結果、今では露地栽培だけでも、YN26やゆら早生など極早生みかんから下津蔵出しみかんと、秋から春にかけてリレー出荷を実現している。こうした努力により、収穫時期を拡大し、生産量と販売額を増大させてきたのである。
- ゆら早生
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1985年、由良町で「宮川早生」の枝変わりとして発見された極早生みかんで、後に和歌山県内でオリジナル品種として登録された。他の温州みかんよりも丸く、完熟しても果皮に緑色が残っているが、糖度が高い上、じょうのう膜(房になっている袋状の薄い皮)がみかんの中でも薄くて、食べやすいと人気だ。
和歌山県果樹試験場
住所/有田川町奥751-1
電話/0737-52-4320
なぜ日本一の柿産地に?
実は、和歌山で栽培されている柿の約8割が渋柿である。出荷には渋抜きが不可欠で、そこに誇るべき技術があった。1969年に設立された県内の研究チームにより、炭酸ガスによる脱渋法が確立され、ほどよい固さとまろやかな甘さが楽しめる柿として市場に出すことに成功。大型選果場や脱渋施設、ノウハウが揃う和歌山だからこそ、現在まで日本一の産地を維持してきた。そして近年、新たに注目されているのが“紀の川柿”だ。樹上での脱渋によりシャキシャキ食感が楽しめ、中は黒いという個性も持ち合わせていることから、輸出など今後の展開にも期待されている。
また、和歌山は地理的条件にも恵まれ、他産地よりも早く出荷ができることを活かし、切れ目のない出荷リレーに向けて、県オリジナル品種である“紀州てまり”など新品種が登場している。
- 紀の川柿
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シャキシャキとした食感で中身は黒いという個性的な和歌山の柿。樹上にあるたねなし柿ひとつずつに袋をかぶせアルコール脱渋させるため、栽培には非常に手間がかかるが、単価は他の柿の2~3倍程度で取引されているという。
和歌山県果樹試験場かき・もも研究所
住所/紀の川市粉河3336
電話/0736-73-2274

黒いかっぱん(褐斑)が特徴的な紀の川柿。実は“紀の川柿”は品種名ではなく、たねなし柿のうち樹上で脱渋したものを呼ぶ。