第1章

第1章 計画の概要

第1項 計画策定の趣旨

 和歌山県では、平成26年3月に平成29年度までの4年間を計画期間とする「紀の国障害者プラン2014」を策定し、障害のある人もない人も社会の一員として互いに人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するため、総合的に障害者施策を進めてきました。
 この間、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消 法」という。)が施行されるとともに、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支 援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)が改正され、地域生活における自立や就労定着を支援するための新しいサービスが始まる等、障害のある人を取 り巻く環境は変化しています。
 このような新たな社会情勢に対応するため、平成30年度を始期とする「紀の国障 害者プラン2018」を策定します。

第2項 計画の位置づけ

1.計画の位置づけ

  • 「紀の国障害者プラン2018」は障害のある人の自立と社会参加を支援する施策 の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものであり、本県における障害 者施策に関する基本的な計画として位置づけます。

2.法的根拠

  • 本プランは、下記の3つの計画から構成されています。
計画名 規定内容 法的根拠
和歌山県障害者計画
(第5次)
・和歌山県の障害者施策に関する分野
  ごとの基本的方向性と施策目標
・施策目標を達成するための具体的取組
障害者基本法
和歌山県障害福祉計画
(第5期)

・障害のある人の支援体制確保のための

  障害福祉サービスの見込量等

障害者総合
支援法
和歌山県障害児福祉計画
(第1期)

・障害のある子供の支援体制確保のための

  障害福祉サービスの見込量等

児童福祉法

3.関連計画等

  • 「紀の国障害者プラン2018」は、県が目指す将来像の実現に向けた施策の基本的方向性を明らかにした「和歌山県長期総合計画-世界とつながる愛着ある元気な和歌山-」(平成29年3月策定)を上位計画とする、障害福祉分野の実施計画です。
  • また、「和歌山県地域福祉推進計画」「わかやま長寿プラン2018」「和歌山県保 健医療計画」「和歌山県健康増進計画」等を関連計画として、これらの計画と調和して計画の推進を図ります。

第3項 計画の考え方

1.基本理念

障害者施策は、全ての県民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有 するかけがえのない個人として尊重されるという理念にのっとり、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して講じる必要があります。
このプランでは、このような社会の実現に向け、障害のある人を、必要な支援を受 けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体としてとらえ、障害のある人の行動を制限し、社会への参加を制約している社会的な障壁を除去するた め、県が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を定めます。


2.基本原則

基本理念の実現を目指し、障害のある人の自立及び社会参加の支援等のための施策について、次に掲げる基本原則にのっとり、総合的かつ計画的に推進します。

(1)地域社会における共生について

すべての障害のある人が、障害のない人と平等に基本的人権を享有する個人とし て生活を保障されることを前提に、次に掲げる機会の確保を図ります。

1 社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参 加する機会の確保

2 地域社会において他の人々と共生することを妨げられず、どこで誰と生活す るかについて選択する機会の確保

3 言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段について選択する機会の確保

4 情報の取得又は利用のための手段について選択する機会の拡大

(2)障害を理由とする差別の禁止について

障害を理由とする差別その他の権利利益を侵害する行為の禁止と、社会的障壁を 除去するための合理的配慮が提供されるよう取り組みます。

3.計画の各分野に共通する横断的視点

施策分野にとらわれず、次に掲げる視点を踏まえて障害者施策を実施します。

(1)障害のある人の自己決定の尊重及び意思決定の支援

障害のある人は、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会に参加する主体であり、障害者施策の策定や実施においては、障害のある人及びその家族等の関係者の意見を聴き、その意見を尊重します。
また、障害のある人等の意見を聴くにあたり、適切に意思決定を行い、その意思 を表明することができるよう支援に努めるとともに、意思疎通のための手段を選択する機会の提供に努めます。

(2)当事者本位の総合的な支援

障害のある人が乳幼児期から高齢期まで各ライフステージを通じて適切な支援を 受けられるよう、福祉、保健、教育、医療、労働、文化芸術・スポーツ等の各分野 の有機的な連携のもと、施策を総合的に展開し、切れ目のない支援を行います。
支援に当たっては、障害者施策が、障害のある人が日常生活又は社会生活で直面する困難に着目して講じられる必要があること、支援は障害のある人が直面するその時々の困難の解消だけに着目するのではなく、障害のある人の自立と社会参加の 支援という観点に立って行われる必要があることに留意します。

(3)障害特性等に配慮した支援

障害者施策は、性別、年齢、障害の状態、生活の実態等に応じた障害のある人の 個別的な支援の必要性を踏まえて策定し、実施します。
また、発達障害、難病、高次脳機能障害、盲ろうなど、外見上認識されないこと が多く、理解が進んでいない障害について、県民の更なる理解の促進に向けた広報 ・啓発活動を行うとともに、施策の充実を図ります。

(4)アクセシビリティの向上

障害者権利条約や障害者基本法では、障害のある人が直面する困難や制限が、障 害のある人個人の障害と社会的な要因の両方に起因するという視点が示されていま す。
こうした視点を踏まえ、障害のある人の社会参加を実現し、障害の有無にかかわ らず、その能力を最大限に発揮しながら、安心して生活できるようにするため、障 害のある人の活動を制限し、社会への参加を制約している、事物、制度、慣行、観 念等の社会的障壁の除去を進め、社会のあらゆる場面でハード、ソフト両面のバリ アフリー化を推進し、アクセシビリティ(施設・設備、サービス、情報、制度等の 利用しやすさ)の向上を図ります。
特に、障害を理由とする差別は、障害のある人の自立や社会参加に深刻な悪影響 を与えるものであり、社会全体で、その解消に向けた取組が行われる必要があるた め、障害者差別解消法に基づき、市町村や障害者団体と連携を図りつつ、事業者や 県民の理解を深め、障害を理由とする差別の解消に取り組みます。
併せて、社会全体でバリアフリー化を推進する観点から、積極的な広報・啓発活 動に取り組み、企業や市民団体等の取組を支援します。

(5)総合的かつ計画的な取組の推進

障害のある人が必要なときに必要な場所で適切な支援を受けられるよう、市町村 等との適切な連携及び役割分担の下で、障害者施策を策定、実施する必要がありま す。
また、効果的かつ効率的に施策を推進する観点から、高齢者施策、医療関係施策、 子供・子育て関係施策、男女共同参画施策等、障害者施策に関係する他の施策・計 画等との整合性を確保し、総合的な施策に取り組みます。


4.障害者施策と人権

私たちの身の回りには、依然として、障害者の人権問題とともに我が国固有の人権 問題である同和問題や、女性、子供、高齢者等の人権にかかわる問題が、時には重層 的に関連しながら存在します。

    本県においては、平成10年(1998年)8月に「人権教育のための国連10年」「和 歌山県長期行動計画」を策定しました。平成14年(2002年)4月に「和歌山県人権 尊重の社会づくり条例」を施行するとともに、同条例に基づき平成16年(2004年) には「和歌山県人権施策基本方針」を策定し、全ての人の人権が尊重される豊かな社 会の実現を目指して総合的な施策の推進に取り組んできました。そして、その取組は、 平成27年(2015年)2月に改定された「和歌山県人権施策基本方針(第二次改訂版)」 や、平成29年(2017年)3月に策定された「和歌山県長期総合計画」に受け継がれ ています。

国においては、平成19年(2007年)9月に署名した「障害者権利条約」の批准に 向け、平成23年(2011年)の「障害者基本法」の改正や平成25年(2013年)の 「障害者差別解消法」の成立等、国内における法整備を進め、平成26年(2014年)2 月19日に同条約が発効しました。

障害者差別解消法の施行を受け、本県では職員一人ひとりが適切な対応を行うよう 職員対応要領を策定し、研修を行うとともに、県内全市町村においても策定されるよ う取り組みました。また、障害者差別解消支援地域協議会を設置し、各市町村や関係 団体と連携しながら、障害を理由とする差別の解消と障害者に対する合理的配慮の提 供が徹底されるよう取り組んでいるところです。

     誰もがお互いの人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の実現は、障害者 だけでなくすべての人の人権を尊重することであり、その理念は、同和問題をはじめ、 女性、子供、高齢者の人権に関わるさまざまな問題解決に繋がるものです。この計画では、障害の有無にかかわらず、県民誰もが安心して暮らすことができる、差別のない社会の実現を目指すことを基本姿勢として、施策の推進を図ります。

第4項 計画の期間

このプランは、2018年度から2023年度までの6年間を計画期間とします。
なお、障害福祉サービス等の見込量については3年後に見直します。

第5項 計画の推進体制

  • 障害者施策は、福祉、保健、教育、医療、労働、文化芸術・スポーツ、生活環境 基盤整備等、多くの分野に関わるものであるため、関係機関と連携し効果的かつ総合的に推進します。
  • 障害者施策を着実に推進するため、住民に最も身近な市町村との連携に努めます。
  • 障害のある人の自立と社会参加に関する取組を社会全体で進めるため、県におけ る様々な活動の実施にあたり、障害者団体、企業、経済、団体等の協力を得るよう努めます。
  • 毎年度、関係部局における本計画の進捗状況等について点検・評価を行うととも に、必要に応じてPDCAサイクルに基づいた施策の見直しを行い、実効性のある障害者施策を実施します。

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