
「高品質で見た目も美しいぶどう山椒は“緑のダイヤモンド“と言われています」と新田さん。
Wakayama移住定住ヒストリー
ぶどう山椒発祥の地から
全国へ、世界へ
きとら農園 代表 ● 新田清信さん
山椒の収穫量日本一を誇る和歌山県。なかでも最高級品とされる“ぶどう山椒”発祥の地であり生産の中心地である有田川町清水地区で、ぶどう山椒の栽培を始め注目を集めているのが“きとら農園”の新田清信さんだ。
新田さんが故郷・和歌山にUターンしたのは2011年。「大学卒業後も、都会への憧れで東京に住み働いていたのですが、生涯過ごす場所ではないなと感じていました。そんな時に親戚から農業をやってみないかと誘われたんです。結婚の話が出ていたところだったので、妻を説得して和歌山に戻ってきました」。

「この桑の木は、偶然実が落ちてここまで大きく育ったんですよ」と文映さん。庭にある桑の葉の変化で季節の移り変わりを知る。
妻・文映さんの職場に近い海南市に移住し、清水地区で山椒づくりを始めた。そして2022年、自然の中でのびのびと子育てをしたいと、長女の小学校入学を機に、自身が生まれ育った清水地区に家族4人で移り住んだ。

繁忙期には両親にも手伝ってもらい一家総出で作業を行う。
「就農し“これからだ!”と思った矢先、山椒の価格が下がり、理想と現実の差に愕然としました」と新田さん。とはいえ品質には絶対の自信がある。だったら直接消費者に販売しようと、オリジナルブランドを立ち上げ、ネット販売をスタートさせた。
「粉山椒は特に挽き方にこだわりました。封を開けた瞬間、フワッと香りが広がり、山椒本来の緑色が目に飛び込んできます。和食のイメージが強いですが、お肉との相性も良いと洋食の分野からも注目され、世界中から問い合わせがあるんですよ」と目を輝かせる。

ぶどう山椒の収穫は5月から8月。直径5〜6mmになると収穫が始まる。
さらに、養蚕業が盛んだった遠井地区に多く残る桑の木を利用し、「桑の葉茶」の販売にも乗り出した。「山椒は春から夏、桑の葉は秋と収穫時期が違うので好都合でした。年中通して農産物を収穫して加工、販売するというビジネスモデルもようやく確立しました。

「カエルの大合唱が始まるともうすぐ田植えの時期です」と新田さん。人の声よりも大きな鳴き声が響き渡る。
生活できることがわかれば、後継者不足も解消でき、ぶどう山椒という地場産業も守ることができます」。新規就農の架け橋としての役目も果たしながら、山椒を未来へと繋ぐ新田さんの挑戦はこれからも続く。
生活を支える
山椒と桑の葉

石臼で丁寧に挽き粉山椒にして販売(1袋480円)。佃煮や煮魚、麻婆豆腐とジャンルを問わず使えると人気商品。シンプルだがぶどう山椒の特徴を的確に表現するパッケージも好評だ。

糖の働きを抑えお腹の調子を整えるとされる「桑の葉茶」。農薬・化学肥料不使用。電気やガスを使わず環境にやさしい持続可能な製法で作られている。

ご夫婦並んで縁側に腰掛け、ゆったりとした時間を過ごすのも楽しみのひとつ。
これがぶどう山椒です

さわやかな香り、そして口に含むと穏やかな辛味としびれるような刺激がある日本特産の香辛料“山椒”。山椒の品種には数種類あるが、和歌山で栽培されている品種は、大粒の実が連なり、ぶどうの房のようになるのが特徴で“ぶどう山椒”と呼ばれている。
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