

漁の“厄介者”が
地域を活性化させる
新たな資源に
瀬戸内海の海水と外洋性の黒潮が混ざりあう由良町周辺は好漁場で、海藻の生育にも最適な場所だといわれている。全長が4~5メートルにもなるあかもくは、船のスクリューに絡まるため“漁の厄介者”とされてきた。そんなあかもくを地域の特産品“紀州あかもく”に加工、販売しているのが、紀州日高漁業協同組合だ。「2015年に調査を開始し、翌年、商品化に向けて組合員たちと“アカモク会”を結成しました。ほどよい粘り気とシャキシャキ感を残すため、収穫時期は春先のたった2週間程度。その絶妙なタイミングを見極めるのに2、3年かかりました」と語るのは会長の市川将彦さん。

「地元の人にももっと食べてもらって、あかもくを地域の特産として定着させたい」と話す市川さん。

若手から年配者までが活躍するアカモク会。地域の結束力も強い。由良町産のあかもくの品質を保ち、乱獲を防ぐという役割も担っている。
あかもくはクセが少なく、湯通ししたものに出汁醤油などをつけるだけで美味しい。熱を加えても栄養価が壊れないので、うどんにかけたりだし巻き卵にしたりとアレンジの方法は多様。地元学校給食への提供や、今年オープンした“しらしょう”をはじめ町内飲食店におけるメニュー開発など、地域をあげての認知度向上に取り組んでいる。

あかもくは収穫した段階でも粘り気がある。

豊富な栄養素が含まれているあかもく。地元では、あかもく丼にして食べるのが定番。あかもくのシャキシャキとした食感と粘り気が玉子と相性抜群。

由良町産のメジロ(ワラサ)とあかもくを使ったカルパッチョ。ネバネバと酸味がベストマッチ。
さらに、あかもくのパワーは食だけに留まらない。加工場の洗浄担当者の手がツルツルに潤っていることに気づいた。近畿大学に尋ねたところ、あかもくが持つ高濃度のフコイダンに優れた保湿性があることが判明。2021年には、同大学薬学部と共に美容液を開発した。
実は、あかもくは昔から由良町周辺の海にあったのではなく、ある時から自然と定着したという。環境の変化によっては、あかもくが採れなくなる可能性があることを見据え、県と協力し、増殖や生育環境の調査にも取り組んでいるという。「厄介者でも新たな価値が生まれた。もっと多くの人にあかもくに親しんでもらって、由良の浜を盛り上げていきたい」と市川さん。地域の皆で開発したあかもくは、地域を活性化させる海のスーパーフードとして目が離せない。

湯通しをしミキサーでペースト状にした後に包装された紀州あかもくは、お土産としても人気。
地元漁師たちと
近畿大学が連携し
生まれた保湿美容液

あかもくから抽出したフコイダンを主成分とした“アキュラモイスチャーセラム”。長時間の保湿効果、肌をなめらかにする保湿美容液として注目を集めている。
由良町産の食材を使った
ランチや特産品を提供

2024年春、閉校した小学校の校舎を活用してオープンしたノスタルジックな食堂。あかもく丼をはじめ、鮮魚など地元産の食材をふんだんに使った料理を楽しめる他、特産品も販売。紀州あかもくも購入可能。
地域を知る体験が多数
日高地域の教育旅行

由良町を含む日高地域では、県内外から教育旅行を受け入れ、学生の学びをサポート。漁船クルーズから、地引網体験や干物づくり体験、語り部によるガイドまで、地域の人や文化、歴史にふれられる多彩な体験が設けられている。