
作品を広げて古道を紹介する生駒さん。田辺の色付き墨に、龍神産の山路紙とメイド・イン・和歌山にもこだわる。
Wakayama移住定住ヒストリー
暮らしを楽しみながら
古道の絵地図を描く
絵地図作家 ● いこまわかこさん
大辺路刈り開き隊として活動しながら、田辺市で作られている色付きの墨、彩煙墨で熊野古道の絵地図を書いているのは、移住歴24年の生駒和歌子さん。「奈良から仕事で和歌山によく来ていた父は、和歌山のことが好きだったので、私の名前を和歌子と名付けたそうです」と笑顔を浮かべる。そんな父親の影響もあり、こどもの頃から何度も和歌山を訪れたそう。結婚を機に、夫の実家である田辺市に移住。

埋もれていた大辺路を調査・復元してきた“大辺路刈り開き隊”。「これぐらいまで古道が埋まっていたそうです」と説明する生駒さん。整備をして石畳が現れるといつも飛び上がって喜ぶそうだ。

まもなく「わかやま絵本の会」からの誘いで古道歩きの現地調査に参加、さらに古道のイラストマップを担当することに。当時の大辺路は埋もれている街道も多く、訪ね歩くこともあったが、そこでの出会いや熊野古道の奥深さに魅了されたのをきっかけに、大辺路街道の整備・復元を行う「大辺路刈り開き隊」の設立メンバーとなった。「それからは、古道を歩き、整備作業に参加しながら、地域の語り部さんの話や文献を参考に、描き進めました」と振り返る。大辺路の絵地図が完成すると生駒さんが描く優しいタッチの絵地図は瞬く間に反響を呼んだ。

里野の浜。「山中が多い熊野古道で、美しい海岸線を楽しめるのも大辺路の魅力です」。
そして古座街道、小栗街道と次々に作品を完成させた。2016年には、刈り開き隊など地元活動団体の努力が実を結び、大辺路街道の7か所が世界遺産に追加登録されている。「雨や風の影響でもこの素晴らしい景色は一変してしまいます。草刈りなど古道の保全活動に取り組みながら、今の姿を絵地図に描き未来へ残したいです」と力強く語る。

先に文字を書き、次にイラストを描く。間違うとまた一からやり直しになる一発勝負。

初めて手掛けた冊子は線画だったが、最新作のすさみ町江住の絵地図は彩煙墨を使用し柔らかな雰囲気に。
多忙な日々を過ごす一方で、田舎ならではのスローライフも満喫している。週に1度はすさみ町の畑を訪れ、自然農法で野菜を作る。また最近は、綿花の栽培にもチャレンジし、龍神村で和綿を使いサステナブルな活動をしている「糸つむぎの会」に娘と参加するようになった。「いろんな人に出会えるのが楽しい。移住者の方との出会いも多く、これまでの経験を伝えられたらと、現地案内をすることもあります」と話す生駒さん。畑仕事、手仕事、絵地図と活動の輪を広げながら、和歌山で日々の暮らしを楽しんでいる。
アクティブにスローライフを楽しむ

家の裏にある小さな畑では、季節野菜や綿花を育てている。

山の冬を越すために欠かせない薪をストック。庭に咲く花が季節の変化を知らせてくれる。

畑で採れた綿花を、綿繰り機を使って紡ぎ糸にするのも日課。娘さんも綿作家として活動を始めている。
住所/田辺市
大辺路刈り開き隊