クジラショーの鯨とトレーナー
和 vol.52 【特集】
聖地リゾート!和歌山 -5-

とともにきる太地町
変化していくとの

 人口約3000人、 美しいリアス式海岸を擁する太地町は、古式捕鯨発祥の地として知られる小さな港町だ。“鯨一頭で七浦が潤う”といわれるほど、住民に多大な恩恵をもたらす鯨は、海の神=エビスとして信仰の対象となる特別な存在だった。そんな太地町の人々と鯨の密接な関係は、形を変えながら現在も受け継がれている。

貴重な資料が揃うくじらの博物館

セミクジラの実物大模型をはじめ、貴重な資料が揃うくじらの博物館。

 1969年に開設された、世界的にも珍しい鯨専門の博物館“太地町立くじらの博物館”では現在、9種・約35頭の鯨とイルカを飼育。捕鯨の歴史・文化や鯨の生態に関する多様な資料の展示に加え、水族館や湾を利用したクジラショーなどによって、訪れる人の心を癒している。

クジラショーの様子

種類や大きさによって、異なる個性があるという鯨。くじらの博物館では、それぞれの魅力をクジラショーで多くの人に伝えている。

同館スタッフの飯塚明日菜さんは、「私たちにとって最も大切な仕事は、鯨やイルカの健康管理を徹底することなんです」と話す。鯨の体調や行動のささいな変化に気付けるよう、鯨それぞれに決まった担当トレーナーがついているという。日々、トレーナーたちは、鯨との信頼関係を築き、それぞれの特徴を伝えられるよう、ショーの演目を作り上げていく。「トレーナーと鯨は合わせ鏡のようなもの。トレーナー自身の成長に、鯨は必ず応えてくれます」。

ドーム型大水槽で泳ぐ珍しいアルビノのバンドウイルカ

ドーム型の大水槽では、珍しいアルビノのバンドウイルカが飼育されている。

一対一で鯨との絆を育み、観光客や一般市民に向けてその魅力を発信する傍ら、同館は各研究機関と共同で鯨の生態について解明を進めている。「鯨類の生態は、実はまだまだ分からないことばかり。鯨と向き合いながら研究に力を入れていくことも、博物館の使命だと思っています」と飯塚さん。2024年には、鯨類の研究所の開設も予定されている。鯨とともに生きることを目指し、やがて太地町は鯨の専門家が集まる先進的な学術都市に。太地町の人々と鯨のつながりは、変化しながらこれからも続いていくだろう。

太地町立くじらの博物館
住所/太地町太地2934-2
電話/0735-59-2400
HPはこちら
マッコウクジラが目にできる串本町のホエールウォッチング

ホエールウォッチングは、体長16mにも達するマッコウクジラを目にできる人気のアクティビティ(串本町)。

グランオーシャンリュクス海熊野の外観 グランオーシャンリュクス海熊野の内観

1日5組限定のプライベートヴィラ「グランオーシャンリュクス海熊野」。捕鯨船をモチーフに斜め張りにした壁が特徴の外観。目前に美しい大海原が広がるラグジュアリーな空間。夜になれば、波音とともに時折鯨やイルカの鳴き声が聞こえてくるという。住所/太地町太地2906 電話/0735-59-3060

聖地リゾート! 和歌山

黒潮がおどる熊野灘に面した太地町は、
長い歴史を誇る捕鯨の町であり、
日本遺産に認定された“鯨とともに生きる”町。

地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を語るストーリーを文化庁が認定する制度「日本遺産」。2016年、熊野灘の捕鯨文化に関するストーリー「鯨とともに生きる」が認定された。江戸時代初期から組織的な古式捕鯨が行われ、人々の暮らしは鯨によって支えられていた。熊野灘沿岸地域には、鯨に関わる祭りや伝統芸能が今も残されている。

風見鶏ならぬ風見鯨がある梶取埼灯台

風見鶏ならぬ風見鯨がある梶取埼灯台。

伝統的な太地浦くじら祭

日本遺産の鯨踊りや鯨太鼓が披露される、伝統的な太地浦くじら祭。

河内祭

国重要無形民俗文化財である河内祭。古式捕鯨で使われた船を飾り付けた御舟が華やかに川を渡る。

恵比寿神社

鯨骨の鳥居が迎える恵比寿神社。

燈明崎

古式捕鯨の総指揮所であった山見台と狼煙場跡が残されている燈明崎。

日本遺産「鯨とともに生きる」
HPはこちら