咲きほこる梅の木とそれを囲む雑木林が印象的な里山の風景

咲きほこる梅の木とそれを囲む雑木林が印象的な里山の風景。

みかんを栽培するために築かれた世界的にも珍しい石積み階段園

みかんを栽培するために築かれた世界的にも珍しい石積み階段園。

和 vol.60 【特集】 
nostalgic emotions 〜古き良き和歌山〜 -3-

世界農業遺産、
四百年以上続く
和歌山の里山

みなべ・田辺の梅システム
有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム

 風がそよぎ木々が揺れる。時の流れは絶えずして、留まることがないにもかかわらず、昔と変わらない懐かしさを感じてしまう里山の風景。それは山に手を入れ、斜面に木を植え、道を敷く。人々が長い時間をかけて育ててきた、日本の風景である。
 全国の約6割のシェアを誇る和歌山県の梅の産地、みなべ・田辺。寒さ残る早春の頃、梅の花はミツバチに蜜を与え受粉し、6月にはまるまるとした果実をたわわに実らせる。また梅園を囲む雑木林と山の斜面が崩れないように守りながら、択伐したウバメガシは炭作りにも活かされてきた。この一連の流れは、住民たちの生活そのものであり、世界農業遺産“みなべ・田辺の梅システム”の景色そのものである。

 “有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム”もまた、世界農業遺産に認定されている。重機のない時代に人々は自ら石を運び積み上げ、急斜面の土地をみかん畑に変えていった。石垣は斜面を支えるだけではなく、日中の熱を蓄え、その反射光は果樹を照らすもう一つの太陽となった。また年末に収穫したみかんを貯蔵箱で熟成させ、年明けに出荷する蔵出しみかんも古くから伝わる和歌山の知恵だ。
 果樹王国といわれる和歌山。とりわけ梅とみかんは、和歌山県が日本一の生産量を誇る。そしてこの二つの農業システムが魅せる里山の風景は、四百年ほど前から始まる。世界最大級の暖流・黒潮が沖合を流れ、太陽は燦々と大地を照らし、一年を通じて温暖な気候の紀伊半島。しかし沿岸部は山が海に迫り平地は少なく、地質的にも水捌けが良すぎて田畑などの農業に適していない。そこで名君と名高い紀州藩初代藩主徳川頼宣は、農民たちの生活を守り、藩の経済的な安寧を測るために、急斜面でも栽培が適している梅とみかんの栽培を奨励・保護したという。

 雲がたなびき日陰が移動する。目の前に広がる懐かしくも美しい里山の風景。特徴ある農園と、そこに住む人々の暮らしや伝統、そして森に住む生き物たちとの共生関係が見事に調和しているこれらのシステムも、最初から完成された仕組みだったわけではないだろう。自然を相手にした試行錯誤は、何代という膨大な歳月を積み重ねる必要がある。それは山と向き合い続ける人々の人生そのものである。

梅干しではなく、あえて
梅酒のために梅を育てる梅農家

 有本陽平さんは、梅酒づくりを見据えて梅を栽培する全国でも珍しい農家。厳選した自園の梅を使い、栽培から製造まで一貫して手掛ける梅酒ブランド「Plumity」を展開。「梅の新たな価値を追求し、その魅力を世界へ届けたい」と語る。

有本農園の有本陽平さん
有田川町の“高垣酒造”の日本酒で造る梅酒「Plumity」4種

梅酒「Plumity」は、全部で4種類。そのうち3種類は有田川町の“高垣酒造”の日本酒で造る。

有本農園
住所/和歌山県みなべ町東岩代872-3
電話/090-5164-4659

みかん

世界農業遺産があって、今の私がある。
160年続くみかん農家6代目

 「自然が相手ですから、収穫の前日に台風で全滅することもある厳しい仕事です。しかし、みかん作りが地域の生活を支え、続けていくことが地域の文化を守ることに気づき、6代目として頑張ることを決意しました」と語る小澤光範さん。

みっちゃん農園の小澤光範さん
可愛い箱に詰められたみかんのみっちゃん農園のみかん

可愛い箱に詰められたみかんのみっちゃん農園のみかん。オンラインで購入可能。

みかんのみっちゃん農園
住所/和歌山県有田川町市場77
電話/090-2047-9590