和歌山県内唯一である湯浅町の重要伝統的建造物群保存地区の一角。麹屋はかつて、醸造に用いる麹の製造販売店だった。
今も黒江の町並みのなかで漆器を取り扱う老舗漆器店。
電話/073-482-0125
職人技と伝統が、
色濃く残る町並み
海南市・黒江 湯浅町・重要伝統的建造物群保存地区
狭い路地を曲がった瞬間、ふと時間の感覚が揺らぐ。初めて訪れたはずなのに、なんだか懐かしい。和歌山の古い町並みが人を惹きつけるのは、建物の古さそのものではない。その風景の奥にある、人々の暮らしを支えてきた産業や文化の記憶が、何かを語りかけてくるからだろう。
海南市黒江は、日本三大漆器の一つ、紀州漆器で栄えた町である。室町時代に始まった漆器づくりは、江戸時代には紀州藩の保護を受けながら発展し、全国へ販路を広げた。川端通りには、職人の住居兼工房や問屋が軒を連ね、連子格子を備えた町家が多数、並んでいたという。その町並みは、時の流れとともに少しずつ姿を変えてきたが、今も残る路地の雰囲気から当時の面影を感じることができる。
江戸時代に創業した銭湯。経営者の名前から「甚風呂」という愛称で呼ばれていた。【湯浅町】
また湯浅町は醤油醸造発祥の地である。鎌倉時代、中国・宋から伝わった金山寺味噌。その製造過程で生まれた上澄液が、醤油の原型になったといわれている。やがて紀州藩の保護を受け、湯浅で醤油醸造が本格化し、世界にも認められる日本の味覚となった。醸造文化が育んだ蔵や白壁の町家が続く町並みには、今も醤油の香ばしい香りが漂い、和歌山県内で唯一の重要伝統的建造物群保存地区として、多くの人を惹きつけている。
漆器も醤油も私たちが日々触れ、使い、味わってきた身近な文化である。そしてそれらの町並みは、私たちの記憶の深い場所に訴えかけてくる。忘れられない、大切にしなければならない。それは残しておかなければならない、日本の原風景である。
築約180年の元塗師職人の工房兼住居をリノベーションした古民家カフェ。
電話/073-482-5321
醤油
醤油醸造発祥の地といわれる湯浅。1535年にはすでに、湯浅から大坂に醤油が出荷されるようになっていたと伝わっている。
電話/0737-22-3133
漆器
川端通りには、漆器職人の住居や作業場などが規則正しく立ち並び、江戸時代には約2000人もの漆器職人が暮らしていたという。黒江漆器は、丈夫で実用的なものから、多彩な加飾が施されたものまで、バリエーション豊かなのも特徴だ。
電話/073-482-0322