自主防災組織について

1 自主防災組織ってなに?
2 自主防災組織はどうやって作ればいいの?
3 自主防災組織はなにをすればいいの?

1 自主防災組織ってなに?

(1) 自主防災組織とは

自主防災組織とは、地域住民が協力・連携し、「自分たちの地域は自分たちで守る」ために活動することを目的に、自主的に結成する組織のことです。

和歌山県は、台風の常襲地帯であり、また、近い将来、南海トラフ地震が発生する可能性があります。大きな災害が起きた時、できるだけ被害を減らすためには、災害直後の初期消火、被災者の救出・救護、避難支援等の防災活動を行うことが大切であり、近隣住民同士の助け合いが有効です。

しかし、このような活動は、住民がばらばらに活動していても効果は少なく、場合によっては情報の混乱により適切で迅速な対応が困難となる場合があります。

地域の防災力を最大限に発揮するために作られるのが、自主防災組織です。

阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊による生き埋めや建物などに閉じ込められた方のうち、約95%の方々は自力又は家族や隣人などに救助されました。

大規模な災害が発生した時、国や都道府県、市町村の対応(公助)だけでは限界があり、すぐに対策をとることが難しい場合も考えられます。

そこで、自分の身を自分の事前の備えや努力によって守る(自助)とともに、普段から顔を合わせている地域や近隣の人々が集まって、互いに協力し合いながら、防災活動に組織的に取り組むこと(共助)が必要です。

防災対策の基本は、「自助」、「共助」、「公助」の3つであり、これらが上手く連携することで、防災対策は効果を発揮することができます。

自助共助公助の図

(クリックで拡大)

自主防災組織は、この「自助」「共助」の要となり、地域の防災力の中核を担う大切な組織です。

(2) 和歌山県の自主防災組織 (以下 出典:消防庁 消防白書)

令和4年4月1日現在における和歌山県の自主防災組織の組織率は97.1%となっています。

(※自主防災組織の組織率=自主防災組織がカバーする地区の世帯数÷総世帯数)

・和歌山県と全国都道府県の自主防災組織の組織率の推移 (令和4年4月1日現在)

PDF形式を開きます自主防災組織組織率の推移(PDF形式 202キロバイト)

・県内の市町村別自主防災組織の組織率の一覧(令和4年4月1日現在)

PDF形式を開きます自主防災組織組織率(PDF)(PDF形式 39キロバイト)

2 自主防災組織はどうやって作ればいいの?

(1)組織の中心となる人物を決めよう

自主防災組織を結成する場合には、地域の中で中心となる人物を定め、その人物を中心として結成に向けた取り組みを行います。一例としては、防災に関して知識のある方や自治会長や副会長などがあたります。

自主防災組織の規模は主に自治会単位、区単位を基準とする場合が多くみられますが、地域の特性や実情に応じて、以下のように柔軟に対応することが重要です。

地域の特性や実情に応じた組織編成の例

組織例 高齢率が高い場合の組織例 人数が少ない場合の組織例

(クリックで拡大)

(2) 活動班を編成しよう

自主防災組織は地域において災害の備えを行い、災害時において活動する組織であるため、編成の際には役割分担や指揮系統をあらかじめ明確にしておく必要があります。

そのため、組織を率いる中心となる会長を置き、会長のもとに副会長ほか役員を配置するなど、自主防災活動に参加する構成員一人ひとりの役割分担を決め、組織を編成する必要があります。

編成にあたっては、まず役員を定めます。役員は、会長、副会長のほか、幹事、防災委員、会計などがあり、組織の規模に応じて、種類や人数を定めます。

また、災害時に役割分担して迅速に活動できるよう、活動班を編成し、活動班ごとにも指揮者(班長)を定めます。班編成も組織の規模や地域の実情によって異なるため、まずは地域に必要な最低限の班編成を作り、そこから編成を充実させることも必要です。

・組織の基本的な班編成

(3)組織の結成に向けて

組織の役割や役員などが決まれば、活動に必要な経費や資機材の調達を行うための収支を定めます。自治会費から一定額を補助したり、資機材整備や活動の運営に関しては、市町村から補助金が出る場合もあるため、活用しましょう。

(4)規約を作ろう

以上のような組織内の決まり事を、組織の位置づけや体系、役割分担等を明確にした規約(運営ルール)として作成することで、持続的に活動できる組織とする必要があります。

規約を作るにあたっては、規約(例)を参考として、地域内で話し合いましょう。

作成方法など不明な点は、まず市町村に相談しましょう。

(5)防災計画を策定しよう

自主防災組織としてどのように活動するのか、災害時・平常時両面から作成します。

防災計画の策定に当たっては、主に

・平常時の対策

・災害時の活動

を具体的に明記し、地域の実情を踏まえたうえで、計画に反映することが重要です。

また、必要に応じて、市町村をはじめ消防機関とあらかじめ協議しましょう。

(6)地域の総会などで同意を得よう

最終的に活動内容が決まれば、地域(町内会)の総会などで同意を得た上で、自主防災組織が結成されます。

3 自主防災組織はなにをすればいいの?

自主防災組織は、(1)災害時の役割と(2)平常時の役割の二つがあります。

(1) 災害時の役割

災害時には、その時々の状況に応じ地域によって最適な災害対策を迅速に行います。

活動とは、被害を抑える活動と、二次災害を防止する活動があります。

被害を最小限に抑えるために・・・避難支援・避難誘導、初期消火、簡易な救助・救護対応、応急手当

二次被害を起こさないために・・・避難所運営・災害時の危険箇所の巡視

(※詳細については、上記をクリックしてください)

(2) 平常時の役割

平常時には、仮に災害が起こっても、その予想される被害を出来るだけ軽減させるような活動、つまり予防的活動を行います。

地域防災力を100%発揮するために・・・普段から、繰り返し防災訓練を実施し、準備・用意をしておく

地域の防災意識を高めるために・・・防災士や県・市町村の防災担当者、講師による地域での防災知識の普及・啓発活動などを実施する

(※詳細については、上記をクリックしてください)

 

災害が起きた時、どこへ逃げたらいいのか、自力で逃げられない人はどうすればいいのか、また、地域で避難所を運営・運営の補助をしなければならなくなったとき、最初の段階で殺到する人々や出来事にどう対処すればいいのか・・・

このような出来事について、速やかに行動できるようになるためには、日ごろから、慣れておくことが必要です。災害時は、心理的にもパニックに陥り、判断能力が鈍ります。普段やっていないことは、災害時には絶対にできません。

まずは、防災訓練を行い、地域の危険箇所や隣近所との連携を確認するところから始めましょう。

コラム(1) どうして訓練に参加しなければいけないの?

近い将来発生が危惧されている南海トラフの地震では、自主防災組織のリーダーだけではなく、地域住民の皆さんが迅速かつ効率的に行動することが要求されます。

そのためには、一部のリーダーだけではなく、多くの方が自主防災活動の必要性を理解するとともに、実際に訓練等に参加して実践力を身につけることが必要です。

平成23年に発生した東日本大震災においても、訓練は大きな力を発揮しました。宮城県のある保育園では、地震が起きた時間は園児の昼寝中でした。保育士はすぐに園児を起こし、園児全員を確認し、0歳児や乳児はおんぶや台車に乗せ、2歳児以上は手をつないで歩かせ、高台へ避難しました。日頃の訓練で避難場所と決めていた場所に到着し、振り返ると、保育園が津波に飲み込まれていたことから、保育士は「ここも危ない」と瞬時に判断し、更に高い場所に園児を誘導し津波から逃げ切ったそうです。

その保育園では、各種災害を想定した避難訓練を毎月行うことが義務付けられていました。宮城県は、「保育士らの冷静な対応と日頃の訓練による的確な判断が子供の命を守った。」と評価し、訓練の重要性をあらためて教えてくれる出来事となりました。

近年、地球温暖化等の影響で、平成23年9月に紀伊半島を中心に甚大な被害をもたらした紀伊半島大水害、鬼怒川の堤防決壊などにより東日本に水害をもたらした平成27年9月の関東・東北豪雨等、日本を襲う水害の被害も想定外に大きくなり、人命を脅かしています。

地震・津波だけでなく、あらゆる災害に冷静に対応し、また迅速・的確な判断を行うために、日頃からの訓練に参加することが重要です。

「訓練で出来ないことは、災害時でも出来ない」

「訓練は本番のつもりで、本番は訓練のつもりで」

これらを忘れず、必ず地域の防災訓練に参加しましょう。

コラム(2) 自主防災組織の活動をしよう

大きな災害が起きた時には、被害の概要がつかめず、市町村の災害対策本部が混乱したり、人命救助等の人員が不足します。また、道路や橋梁等の公共施設が被害を受けるため、公的な防災機関が迅速・的確な行動をとるには限界が生じます。

災害による被害をなくすためには、避難などにより自己の安全を確保したうえで、災害直後の初期消火、被災者の救出・救護、避難支援等の防災活動を行うことが大切であり、それには近隣住民同士の助け合いが必要となってきます。

しかしながら、地域に自主防災組織がない場合、災害時に組織的、効果的かつ迅速な助け合いの行動を取ることはできないため、普段から、災害時に備えて組織しておく必要があります。

実際に、自主防災組織による普段からの備えが命を救った例があります。

平成26年11月22日午後10時ごろ、長野県北部を中心に、非常に震源が浅いマグニチュード6.7の直下型地震が発生しました。長野県白馬村では、震度5強を記録し、全壊42棟、大規模半壊12棟、半壊20棟と、多くの家屋が倒壊しました。また、家屋被害以外にも、停電や断水、道路の損傷等が生じました。

白馬村では常備消防が設置されていたものの、発災時に勤務していた消防隊員は8名でした。地震直後の救急要請により、 2台ある救急車と隊員6名が現場に直行してしまったため人員不足に陥るなど、常備消防だけの力では救命・救助には限界がありました。

そこで、現場では、常備消防・消防団・自主防災組織が連携し、現場によっては、消防団と自主防災組織、または地域住民のみでジャッキや建設会社のフォークリフトなどを活用して、倒壊した家屋に取り残された人たちの救助が行われました。

また、地域で協力して地区内をくまなく巡回し、逃げ遅れた人がいないかの確認や、出火の恐れを防ぎ火災拡大の要素を排除することに努めました。また、被災者の避難所への移動が終わってからは、災害対策本部に被害状況を報告するため、倒壊家屋などの現場確認をしました。活動は余震が続く中、深夜から早朝まで継続されました。

実は、白馬村の被害の大きかった地区の自主防災組織では、平常時から、地域に住む住民の把握に努めており、特に障害者や高齢者、一人暮らしなどの要配慮者世帯を「災害時住民支えあいマップ」という地図に落とし、有事の際に誰が安否確認をするのかを事前に決めていました。

また、その地区では、防災に限らず、日頃から自分達の住む地域は自分たちで守る、住民が協力し合い、花植えなどの環境整備を皆で協力し合って行う、季節ごとに行われる伝統行事を地域全体で行うなど、地域での様々な活動を積極的に行っていました。

発災直後、速やかに自主防災組織等が人命救助・救護にあたり、結果的に死者を一人も出すことがなかったのは、普段から地域のコミュニティ活動において近隣住民が顔見知りであり、また災害時には助け合うということを平常時から確認していたことが大きな要因であったと考えられています。

近年、居住形態の多様化により、地域住民の連帯意識の低下がみられますが、平常時から地域の人たちと、様々な交流を通じて顔見知りになり、住民も積極的に参加した自主防災組織の活動を行うことが、災害時において重要な鍵となります。

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