凄いぞ! 和歌山 Only one story 製造された多種多様な撚糸と社長の林さん

音の反響を防ぐのこぎり屋根の昔ながらの木造工場で、独自技術を活かした多種多様な撚糸を製造。

和 vol.53

凄いぞ! 和歌山

豊かでダイナミックな自然に恵まれた和歌山。
しかし凄いのはそれだけじゃない!
あっと驚く技術を持った企業をご紹介。

03

パイル産業×撚糸技術

AweSome! WAKAYAMA-tech

ねじれるものは何でもねじる
撚糸の持つ大きな可能性

 古くから高野山参詣の玄関口として栄え、江戸時代にはすでに織物が盛んだった橋本市高野口町。やがて技術が進み、昭和には日本一の生産高を誇るパイル織物が生まれ、現在にも技術が継承されている。そんな地域で、繊維産業に欠かせない、“糸”を作っているのが“林撚糸”だ。4代目社長の林雄太さんは「当社は昭和7年に大阪で創業し、染物や軍足を手掛けていました。戦時中に一家で高野口へ疎開。織物の産地で何が必要とされているかを考え、2代目である祖父が撚糸事業に着手したそうです」と話す。

紙の糸とそれで作られたシャツ

柔らかな手触りを実現した紙の糸。サステナブルで、日常使いが期待される。同社には、シート状の素材も糸にできる技術があり、これまで繊維産業とは関わりのなかった分野からも注目されている。

撚糸とは、糸と糸をねじり合わせること。複数の糸や異素材のものを束にすることで、繊維の性能を高めたり、特性を変化させることが可能になる。「代々受け継がれている精神は、ないものをつくること。素材にこだわらず“ねじれるものは何でもねじる”をモットーにしています」と林さん。

消防服に使われるアラミド繊維をベースに、使い心地を追求した耐熱手袋「ATSuBOuGu」

消防服に使われるアラミド繊維をベースに、使い心地を追求したオリジナルの耐熱手袋「ATSuBOuGu」。

 これまで林撚糸は、その柔軟な発想と磨き上げてきた独自の技術のもとで、多彩な製品を生み出してきた。中でも注目したいのが、生体センシングに関わる導電性素材の撚糸技術だ。医療機器に使用される極細ワイヤーと、コットンなどの肌触りの良い素材を融合した糸でつくられた衣類を身に付けることで、誰でも気軽に日常の健康状態を測ることが可能になる。加えて、膨大な情報収集により医療の発展が期待される。

導電性素材を編み込んだニット生地

導電性素材を編み込んだニット生地。触れるだけで、スマートフォンを使って心拍数を測定できる。生地は金属が含まれているとは思えないほど柔らかだ。

糸の持つ可能性を追求し、画期的な製品を作り続ける林撚糸。同社の技術は、万博パビリオンの内装材としても使われる予定で、業界を超えたこれからの活躍が楽しみだ。

撚糸を作る作業の様子

遡れば原始時代から用いられてきた技術だという撚糸。同社では、人の生活に根差した繊維も手掛けながら、最先端技術を使った糸など多様なニーズに合わせて製造している。

撚糸を作る機械

目では追えない早さで2本の糸がより合わされていく。湿度なども考えねじり具合を調整している。

オーガニックコットンの撚糸の様子

オーガニックコットンの撚糸の様子。

代表の林さん

「異業種についても追及することが、優れた糸を生み出すことに繋がる」という林さん。

独自の改良を加えて生み出される唯一無二の林撚糸の製品

既存の機械に独自の改良を加えて生み出される唯一無二の製品は、世界的なハイブランドに採用されることも。

林撚糸の製品
林撚糸株式会社
橋本市高野口町名倉879
電話/0736-42-3205
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