Wakayama 移住定住ヒストリー 伊藤夫妻

「炭焼きを通してたくましく生きる力を手に入れた」と笑顔が眩しい伊藤夫妻。

和 vol.53

Wakayama移住定住ヒストリー

自分らしさを
たどり
着いた紀州備長炭の地

紀州備長炭 伊藤商店 伊藤弘貴さん 周子さん

 最高品質の木炭として知られる紀州備長炭の炭焼き職人として生計を立てている伊藤弘貴さんと周子さん。周子さんは東京で東日本大震災を経験し、それを機にこどもを田舎で育てたいと関西に移住。まもなく弘貴さんと出会い、3人の生活が始まったものの、より自分らしく暮らせる場所はないかと探していた時、「和歌山県の移住フェアに参加し日高川町を知りました。移住者も多く、受け入れにも積極的に取り組み、多様性のある町であること、地場産業に従事できることも魅力に感じました」とご夫婦。早速町を訪れてみると、ご近所の人から「早くおいで」とうれしい言葉が投げかけられた。さらに思い描いていた古民家も見つかり、こどもが小学校に上がるタイミングで移り住んだ。

愛用の軽トラと伊藤弘貴さん

軽トラを走らせ2分ほどで炭焼き小屋に到着。紀州備長炭の生産量日本一を誇る日高川町には約40人の職人がいて、町には炭焼きの香りが広がっている。

 日高川町に住むにあたり、弘貴さんは炭焼き職人になることに迷いはなかった。修行中に「使っていない窯があるよ」と声をかけてもらい、譲り受け独り立ちもした。「周りの人たちが気にかけてくれるのもありがたいです。山の木を切り、炭にして売る。自分たちは和歌山の自然のおかげで生活しています」と感謝の気持ちを忘れず備長炭作りに日々勤しむ。また、2018年には長男が、2021年には次女が誕生し、現在は家族5人、そして猫3匹とともに賑やかな毎日を送っている。

長女猫の冬ちゃんに語りかける周子さん

3匹の愛猫も家族の一員。長女猫の冬ちゃんに語りかける周子さん。

縁側から見える山を指差し仲睦まじく話すご夫妻

縁側から見える山を指差し仲睦まじく話すふたり。

仕事に子育てに大忙しのふたりではあったが、2023年夏に、古民家をもう1軒借り、国内外の学生らが田舎暮らし体験を行う「教育民泊」の受け入れを始めた。「旅に出る機会が減ったので、それなら来てもらおうと思ったんです。外国人のお客様だと言葉が通じないこともありますが、一緒に料理するなどして家族全員でおもてなしをします。将来は炭焼き体験も取り入れたり、援農に来ている人達のためのシェアハウスを始めたいな」と目を輝かせる周子さん。ご夫婦の周りは笑顔が溢れ、出会った人との絆がしっかり結ばれている。

仕事の合間にちょっと一息するふたり

仕事の合間にちょっと一息。「お休みも自分次第。仕事の段取りもマイペースにできるのがいいですね」と弘貴さん。

 陽だまりの中、ウトウトする3匹の愛猫

陽だまりの中、縁側でウトウトと眠たくなるのは人だけじゃない。

紀州備長炭ができるまで

原木のウバメガシを割る様子

原木のウバメガシを山で伐採。太いものは割って細く、曲がった木は、のこぎりやナタで切れ目を入れたり、楔を打ち込んだりして真っ直ぐにする。

細い木は数本ずつ束ねて窯の中に入れる

細い木は数本ずつ束ねて窯の中に。立てて入れるのが紀州備長炭の焼き方の特徴。

火をチェックする弘貴さん

火を絶やさないよう注意深く見守る。窯出し前日は夜通しつきっきりで作業。「火を起こすだけでなく、空気や水をきれいにしてくれる紀州備長炭は先人の知恵の塊です」と弘貴さん。

できあがった備長炭

窯から出した炭に灰をかけて消火。固く締まりのよい備長炭は、叩くと鋭い金属音がする。

紀州備長炭 伊藤商店
住所/日高川町上田原178
電話/090-3706-1384
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