令和4年度調査研究成果

令和4年度調査研究成果一覧

流通食品中における薬剤耐性菌汚染実態調査

研究期間

R2~R3(終了)
担当課(主担当) 微生物グループ( 中岡 )
概要  県内流通食品 435 検体を対象に調査を行った.大腸菌群が検出された食品 252 検体のうち,35 検体(13.9%)から第三世代セファロスポリン系薬剤耐性菌が 49 株,3検体(1.2%)からカルバペネム系薬剤耐性菌3株が検出された.これらのうち3株はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)であった.β-ラクタマーゼ産生性試験を行ったところ,52 株中 47 株に β-ラクタマーゼ産生性が認められ,ESBL 産生菌は 14 株,AmpC 産生菌は 33 株であった.前述の CRE3株はいずれも AmpC 産生菌であった.メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌はみられなかった.また,ESBL 産生菌 11 株から CTX-M1 group,CTX-M-2 group,SHV 型,TEM 型が,AmpC 産生菌 15 株から ACC 型,CIT 型,EBC 型がそれぞれ検出された.今回の調査により,食品における薬剤耐性菌の分布および薬剤耐性傾向に関する知見を得ることができた.

感染性胃腸炎流行の早期把握に関する検討

研究期間 R2~R4(終了)
担当課(主担当) 微生物グループ( 藤本 )
概要  県内2か所の下水処理場の流入下水から感染性胃腸炎の原因となるウイルスの遺伝子をリアルタイムPCR法により検出した.毎月の下水中ウイルス濃度を算出し,定点当たりの患者報告数との関連性を検討した.ノロウイルスおよびサポウイルスは調査研究期間を通してよく検出され,感染性胃腸炎の流行期である冬季にかけて下水中濃度が高値を示す傾向が認められた.下水中ウイルス濃度が患者報告数と連動することから,下水中ウイルス濃度のモニタリングが市中の流行状況を把握する手法として有用であると考えられる.

二枚貝中の神経毒分析法の検討 -自然毒分析法の検討(2)-

研究期間 R3~R4(終了)
担当課(主担当) 衛生グループ( 髙井 )
概要  麻痺性貝毒はアレキサンドリウム属等の渦鞭毛藻類が産生する神経毒で,これらを摂取,蓄積することで起こる二枚貝の毒化は,日本近海において問題となっており,和歌山県沿岸でも二枚貝の毒化が度々確認されている.また近年,二枚貝から麻痺性貝毒と同じ神経毒であるフグ毒(テトロドトキシン)が検出される例が報告されており,二枚貝への新たな懸念も生じている.しかし,当センターではこれらについて分析法を検討できておらず,食中毒への迅速な対応は難しい状態であった.
 そこで本研究では,二枚貝中の神経毒の検査体制を整備することを目的に,昨年度に引き続き一斉機器分析法の検討を行った.その結果,食中毒時に適応可能な麻痺性貝毒8成分およびテトロドトキシンを対象とした一斉分析法を確立することができた.

迅速かつ効率的な食品添加物分析法の検討

研究期間 R4~R5(継続)
担当課(主担当) 衛生グループ( 新宅 )
概要  当センターでは,防かび剤,保存料,甘味料,着色料,発色剤,酸化防止剤,漂白剤など各種の食品添加物の検査を行っている.しかし,正確な検査結果の判定に時間がかかることや,新規指定成分に未対応であるなど課題が多い状況にあった.そこで今回,これらの分析法改良の検討を行った.
 1年目は新規指定成分も含めた防かび剤8種類について,当センターの残留農薬一斉分析法を用いて検討した.検討対象はレモン,グレープフルーツ,オレンジ,バナナ,キウイの5種類の果実とし,妥当性評価(添加回収)試験を行った(添加濃度1.0 mg/kgおよび0.2 mg/kg,実施者1名×2併行,5日間実施).その結果,回収率78~103%,併行精度・室内精度共に7.3%以下の良好な結果を得た.次年度は,保存料・甘味料の分析法について検討予定である.

災害時等の緊急調査を想定した網羅的簡易迅速測定法の開発

研究期間 H31~R4(終了)
担当課(主担当) 大気環境グループ( 樋下 )
概要  県では巨大地震を含めた自然災害の発生や,事故等の環境危機事象に備えることは重要な課題である.その際,被害拡散の防止や県民の安全,安心の確保のために迅速な対応を求められる.緊急時には通常時のモニタリング法では対応が困難であるため,本研究では大気環境における危機事象対応のための簡易迅速測定法を開発した.
 サンプリングには大気試料を迅速に捕集するため,ガラス製1L真空ビンを使用し、ポンプにより吸引捕集する方法を採用した.また,前処理法は感度および迅速性の観点から SPME 法を検討した.以上の方法により添加回収試験を行ったところ VOC 混合標準ガスに含まれる 32 成分において60~116%の回収率が得られ,また,GC/MS による SCAN 法を併用することで危機事象発生時に大気中で比較的高濃度となっている物質を迅速に検出できる可能性が見いだせた.

危機事象発生時の緊急調査を想定した無機分析法の開発

研究期間 R3~R4(終了)
担当課(主担当) 大気環境グループ( 桶谷 )
概要  災害,事故等により,環境および人の健康に深刻な影響を与える危機事象が発生した場合は原因を迅速に把握することが求められる.一部の重金属をはじめとした無機元素も危機事象の原因となるため,分析対象の試料について有害な無機元素に適した前処理,分析方法を準備しておく必要がある.本研究では,無機元素の含有状況を迅速に確認するための分析法開発を目的とし,環境試料および食品試料を対象に検討を行った.
 河川水は短時間の加熱処理,大気粉じん試料および食品試料についてはマイクロ波加熱で前処理が可能であることが確認できた.このことから危機事象発生時においても,無機元素に対応する分析法を整理することができた.

LC-Q/TOF による災害時等を想定した水質の緊急調査手法の開発

研究期間 R2~R4(終了)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山本 )
概要  災害/事故で流出した有害物質によって健康被害が発生し緊急迅速な対応が必要となる事態(危機事象)に適切に対応するためには,原因物質を迅速に特定できる緊急調査手法の開発が必要となる.本研究では,ノンターゲット分析および差分解析に着目した緊急調査手法の開発に取組み,実際に発生した魚のへい死事故において原因物質の迅速な特定に適用できることを示した.この結果は,本手法の有効性を示すものであり,災害/事故を想定した有害物質によって健康被害が発生し,緊急迅速な対応が必要となる事態(危機事象)において,原因物質を特定し適切な対応に貢献できる緊急調査手法として期待できる.

底生動物相を用いた河川環境の変遷調査 -那智川-

研究期間 R4~R5(継続)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山東 )
概要  底生動物相を用いた生物学的評価は,一般の方にも比較的わかりやすく,環境啓発を行う上で重要な情報となり得る.当センターでは,底生動物相の把握および底生動物相による水質評価を目的とした調査研究を県の主要 11 河川を対象に平成6年度から平成 16 年度まで実施してきた(第1次 調査).また,平成 28 年度からは,第2次調査として底生動物相手の最新状況の把握と前回調査との比較検討を目的とした調査を開始し,これまでに 11 河川中6河川において豊かな河川環境が保たれていることを確認した.
 このうち,今回対象とした那智川は平成 23 年度に発生した台風 12 号による記録的な大雨で,大規模な洪水および土石流が発生し,死者,行方不明者を出す甚大な被害を受けた.この水害後の底生動物相に与えた影響および回復過程において生息する種や数の変化を確認する調査(水害の影響調査)を平成 24 年度から平成 27 年度において毎年実施したものの,十分な回復が見られなかった.
 そこで,本研究は水害発生から 10 年経過した那智川の水質および多様性を調査し,これまでの調査と比較することにより,中長期的の総合的な河川環境の確認を目的に実施した.
 その結果,今回の水質評価は第1次調査と同水準の高い水質を示し,多様性は第1次調査時点より,多種多様な生物が生息する環境であることが示された.また,水害の影響調査の結果と比較すると,洪水前の良好な水質が維持され,多種多様な生物が生息する環境に回復していることが示された.

令和4年度環境省受託事業 化学物質環境実態調査 分析法開発物質一覧

LC-MS/MS による水質中のアルキル硫酸及びその塩類の分析法の検討

研究期間 R3~R5(継続)
担当課(主担当) 水質環境グループ(山本)
概要  アルキル硫酸塩は界面活性剤等に使用されており,一般家庭等で使用・排出されたものが環境中に広がり検出されると予測される.生態系に対する影響が懸念されることから,国は化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質に指定し,リスク評価を進めている.環境リスクは有害性と暴露量から評価することから,本研究ではこの暴露量を正しく評価するためのアルキル硫酸及びその塩類の分析方法の開発に取り組んだ.

GC-MS による水質中の n-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルの分析法の検討

研究期間 R4~R5(継続)
担当課(主担当) 水質環境グループ(大内)
概要  n-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルは高分子改質剤等に使用されており,工業用途で使用・排出されたものが環境中に広がり検出されると予測される.生態系に対する影響が懸念されることから,国は化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質に指定し,リスク評価を進 めている.環境リスクは有害性と暴露量から評価することから,本研究ではこの暴露量を正しく評価するための n-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーテルの分析方法の開発に取り組んだ.

関連ファイル

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