令和3年度調査研究成果

二枚貝中の神経毒分析法の検討 -自然毒分析法の検討(2)-

研究期間 R3~R4(継続)
担当課(主担当) 衛生グループ( 髙井 )
概要 麻痺性貝毒はアレキサンドリウム属等の渦鞭毛藻類が産生する神経毒で,これらを摂取,蓄 積することで起こる二枚貝の毒化は,日本近海において問題となっており,和歌山県沿岸でも 毎年のように二枚貝の毒化が確認されている.しかし,当センターでは麻痺性貝毒の機器分析 法について検討できておらず,食中毒への迅速な対応は難しい状態であった. そこで,本研 究では,二枚貝中の神経毒(今年度は麻痺性貝毒)の検査体制を整備することを目的に,一斉 機器分析法の検討を行った.その結果,食品由来の夾雑成分の影響を受けるものの食中毒時に 適応可能な麻痺性貝毒8成分を対象としたスクリーニング法を確立することができた.次年度 は,夾雑成分の影響を緩和できる前処理法を再検討するとともに,他の神経毒(テトロドトキ シン)も検査対象に追加した分析法を検討したい.

食品におけるグリホサートおよびグルホシネートの分析法の検討

研究期間 R2~R3(終了)
担当課(主担当) 衛生グループ( 樋下 )
概要 除草剤として使用量の多いグリホサート,グルホシネートは発がん性や健康への影響の疑い から世界的に不安が高まり,使用を禁止する国が出てきている.一方,当センターの農産物に おける残留農薬検査は一斉分析により行っているが,これらの成分はきわめて高極性のため分 析対象となっていない.そこで今回,これら除草剤の同時分析法の検討を行った. 一年目は緊急時対応を優先し,HPLC-蛍光検出器を用いる方法により,小麦粉,大麦,大豆 及び小麦粉加工食品である食パン,パスタにおいてPPMレベルで良好な結果を得た.二年目は オルト酢酸トリメチル誘導体化-LC-MS/MSを用いた分析法により,代謝物を含めた一律基準値 レベルの分析法を開発した.本法を用いて小麦粉,大豆における一律基準値濃度の妥当性評価 を行ったところ,良好な結果を得た.その他の農産物への適用については今後検討予定である.

災害時等の緊急調査を想定した網羅的簡易迅速測定法の開発

研究期間 H31~R3(継続)
担当課(主担当) 大気環境グループ( 片田 )
概要 和歌山県は近い将来, 巨大地震に遭遇する可能性が高く, これに事故なども含めた環境危機 事象に備えることは重要な課題である. そこで, 本研究では国と地方環境研究所が協力して行 うII型共同研究を活用し, 和歌山県に最適化された緊急時簡易迅速測定法を開発することとし た. これは, 危機事象時に漏洩するリスクの高い物質を選定し, ガスクロマトグラフ質量分析 計(GC/MS)で測定後, 質量分析データを全自動同定定量データベースシステム(AIQS-DB)に 登録すること, そして, 漏洩リスクの高い物質については, 緊急時の値を評価するため平常時 モニタリングを行うことの2つからなる. 2年目である本年度は, 平常時モニタリングを継続しつつ, 大気サンプルの捕集方法につ いて検討した.活性炭カートリッジを用いてトルエンを含むいくつかの物質を捕集することが できたものの,捕集できない物質もあることから,次年度は,他のカートリッジの併用につい て検討する.

危機事象発生時の緊急調査を想定した無機分析法の開発

研究期間 R3~R4(継続)
担当課(主担当) 大気環境グループ( 桶谷 )
概要 災害,事故,事件により,環境および人の健康に深刻な影響を与える危機事象が発生した場 合は原因を迅速に把握することが求められる.一部の重金属をはじめとした無機成分も危機事 象の原因となるため,分析対象の試料について有害な無機成分に適した前処理,分析方法を準 備しておく必要がある.本研究では,無機成分の含有状況を迅速に確認するための分析法開発 を目的とし,環境試料及び食品試料を対象に検討を行う. 本年度は,河川水および飲料を対象に検討を行った.結果,河川水はブロックヒーターを使 用した短時間の加熱,飲料についてはマイクロ波加熱で前処理が可能であることが分かった. また,測定についてはICP-MSを使用し,2点検量線で迅速に結果を算出できる可能性が見いだ せた.

LC-Q/TOFによる災害時等を想定した水質の緊急調査手法の開発

研究期間 R2~R4(継続)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山本 )
概要 本研究は災害時等を想定した緊急調査手法の開発に取り組むものであり, LC-Q/TOFによるノ ンターゲット分析に着目し, 環境中に拡散した化学物質によって人の健康が損なわれるおそれ がある等, 緊急迅速な対応が求められる環境危機事象において, 迅速に原因物質を特定し, 適 切な対応につなげる調査手法の開発を目指す. 今回, 実際に発生した魚のへい死事故に緊急調査手法を適用することで, 未知の原因物質で ある農薬成分を迅速に特定することができた. 次年度は研究期間を1年延長し, 農薬に限定せず, 工業製品等の平常時データを取得するこ とで, 緊急調査手法の適用範囲をさらに広げる取り組みを継続する.

底生動物相を用いた河川環境の変遷調査 -紀の川水系-

研究期間 H31~R3(終了)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山東 )
概要 和歌山県では平成6年度から16年度まで,河川の保全・創造に関する検討を行う上で基礎と なる底生動物の生態系に関するデータの取得と底生動物による水質評価を目的とした調査研究 「底生動物相を用いた河川の水質評価」を実施してきた.和歌山県において,20年以上にわた り良好な水環境が維持されていることを確認すること,および県内の豊かな自然を通じて地域 住民に環境への関心を持ってもらうことを目的として,改めて底生動物相を用いた河川環境調 査を実施し,平成14年度に実施した紀の川水系の評価結果との比較を行った. 今年度調査において,底生動物を採集することができ,紀の川水系の底生動物相について最 新のデータを得ることができた.生物学的水質評価の結果,今年度の紀の川水系は,平成14年 度に比べて水質が改善され,長期にわたって良好な河川環境が保たれていると考えられる.

LC-MS/MSによる水質中のアルキル(ベンジル)(ジメチル)アンモニウム塩の分析法 の検討

研究期間 R2~R3(終了)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山本 )
概要 アルキル(ベンジル)(ジメチル)アンモニウム塩は殺菌剤等に使用されており,一般家庭等で 使用・排出されたものが環境中に広がり検出されると予測される.生態系に対する影響が懸念 されることから,国は化審法の優先評価化学物質に指定し,リスク評価を進めている.環境リ スクは有害性と暴露量から評価することから,本研究ではこの暴露量を正しく評価するための アルキル(ベンジル)(ジメチル)アンモニウム塩の分析方法の開発に取り組んだ.

LC-MS/MSによる水質中のアルキル硫酸及びその塩類の分析法の検討

研究期間 R3~(継続)
担当課(主担当) 水質環境グループ( 山本 )
概要 アルキル硫酸塩は界面活性剤等に使用されており,一般家庭等で使用・排出されたものが環 境中に広がり検出されると予測される. 生態系に対する影響が懸念されることから, 国は化管 法の第一種指定化学物質に指定し, リスク評価を進めている. 環境リスクは有害性と暴露量か ら評価することから, 本研究ではこの暴露量を正しく評価するためのアルキル硫酸及びその塩 類の分析方法の開発に取り組んだ.

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