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掲載内容





県政最前線 試験研究が支える
わかやまの農林水産業

問い合わせ:研究推進課
電話073-441-2995 ファックス073-424-3024

 農林水産業は、県内各地域の経済や雇用を支える重要な産業です。県が設置する各農林水産研究機関では、生産現場のニーズを的確に把握し、生産者の所得向上や地域の活性化につながる新品種・新技術の開発に取り組んでいます。
果樹試験場と職員の画像

県が設置する農林水産研究機関 県が設置する農林水産研究機関 地図

優れた極晩生(ごくおくて)品種「あおさん」を産地へ

 果樹試験場では、生産現場で発生した枝変わり(突然変異)の情報提供を呼びかける「枝変わり探索事業」を実施した結果、果皮と果肉が離れる浮皮の発生が少なく、熟期が遅い極晩生の温州みかんの情報提供がありました。調査の結果、優れた特徴を持っていたため、品種登録に係る調査に協力し、2024年3月に新品種「あおさん」として登録されました。
 本試験場では、「あおさん」の特徴に合った適切な栽培方法を研究し、早期の産地化に取り組んでいます。

優れた特徴
  • 成熟期が1月下旬(成熟期が年明けの品種はこれまでなし)
  • 浮皮の発生が非常に少なく温暖化に対応
  • ※浮皮 高温で発生しやすく、発生すると日持ちせず腐りやすくなる
  • 外側の皮と果肉を包む皮が薄く食べやすい
    一般的な温州みかんと比べ糖度が高い

    温州みかんの収穫時期 収穫時期が遅くみかんを長く消費者に届けられる!
    あおさん

    湯川 知明さん 「あおさん」を育成
    湯川農園
    湯川 知明さん

     「あおさん」は、味がよく食べやすい、暑さや寒さに強く育てやすい、極晩生なので収穫や発送作業が他のみかんと重複しない、流通時期を遅らせられる、などの特徴があり、市場からも生産者からも期待されています。品種登録の際は、たくさんの調査が必要だったため、果樹試験場に協力いただき大変助けられました。「あおさん」が年明け以降のみかんとして定着し、県の特産品になってもらえたらと考えています。

    県特産地鶏「龍神コッコ」を開発

     養鶏研究所では、田辺市龍神村で300年以上飼育されてきた県固有種「龍神地鶏」と「ロードアイランドレッド」を掛け合わせた採卵用の地鶏「龍神コッコ」を2020年に開発しました。
     本研究所では、龍神コッコの卵の生産性向上に継続的に取り組んでいます。
     生産地域では、飼養農家、地元商工会、観光協会、村おこし団体などによる協議会が設立され、普及とブランド化が進められるなど、「龍神コッコ」の卵は地域の特産品として期待されています。

    卵の特徴
  • 卵黄の官能評価で味の濃さである「コク」が高い
  • 旨味成分である遊離グルタミン酸が一般白色卵より高い傾向にある
  • 卵黄比率が高い
  • サイズがSSで小振り
  • 左から龍神コッコ、龍神地鶏、ロードアイランドレッド、一般白色卵

    左から龍神コッコ、龍神地鶏、ロードアイランドレッド、一般白色卵
    卵黄の官能評価結果卵黄の官能評価結果のレーダーチャート

    石﨑さんご夫妻「龍神コッコ」を飼育
    とりとんファーム
    石﨑さんご夫妻

     ゆとりのある平飼いで育て、不要なものは与えずに自分たちで選んだえさを与えるなど、鶏にとって何が良いのかを考えて飼育しています。こうしたこだわりが、胸を張って安全安心でおいしいと言える卵を産んでもらえることにつながっています。卵の流通を拡大して県内外の販売店で買えるようにしたり、地元の菓子工房でプリンを製造して地元のコンビニでも買えるようにしたりと、地域の名物になれるよう皆でがんばっています。

    龍神地鶏×ロードアイランドレッド 龍神コッコ

    高級魚「シロアマダイ」の稚魚放流に向けて

     「シロアマダイ」は、本県沿岸に生息し、はえ縄や底びき網漁業などで漁獲されています。美味しい魚として知られ魚価が高いことから、漁業関係者から漁獲量の増大が望まれています。
     水産試験場では、天然海域に稚魚を放流して大きく育った魚を漁獲する「栽培漁業」を推進するため、受精卵からシロアマダイ稚魚を量産する技術を開発しました。2022年から2024年には、年間で1万尾から2万尾の稚魚を生産し、試験放流しています。
     今後は、シロアマダイの栽培漁業の事業化を目標に、安定した受精卵の確保技術の開発や放流に適した稚魚のサイズ・海域の検討を行います。

    シロアマダイ稚魚放流とシロアマダイ稚魚の画像

    本県初のスプレーギクオリジナル品種「紀州サマーリンド」を開発

     スプレーギクは、花色や花型が豊富で、仏花だけでなく生け花、テーブルフラワー、ウェディングブーケなど用途が多岐にわたることから需要が高まっています。特に8〜9月では、お盆や秋彼岸で需要が高まる一方で、茎葉の柔らかさや花持ちの悪さが問題になっていました。
     農業試験場では、こうした課題の改善に取り組み、本県初のスプレーギクオリジナル品種「紀州サマーリンド」を開発し、2024年に品種登録出願しました。生産者からの期待も大きく、安定的な苗の供給に向けた準備を進めています。

    紀州サマーリンド


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