宅地建物取引業(宅地建物取引業と人権)

人権とは

 人権とは、すべての人が生まれながらに持っている、人として幸せに生きていくために必要な、誰からも侵されることのない権利です。すべての人の人権が尊重される豊かな社会を実現するためには、自分の人権のみならず、他人の人権についても正しく理解し、人権を相互に尊重し合うことが必要です。

 県では、このような社会の実現を図るため、「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」を施行し、差別のない、すべての人の人権が尊重される社会づくりに取り組んでいます。

宅地建物取引と人権問題

 宅地建物取引業に従事する皆さんは、日ごろ、宅地建物を取り扱う中で多くの人との接点を持たれていることと思います。その中で同和地区や外国人、高齢者、障がいのある人、母子(父子)家庭などの人々に対し、偏見や誤った知識に基づくものであると感じることはありませんか。

  たとえば、お客さんから

  「この物件は同和地区にあるのか?」

  「この物件が同和地区にあることをなぜ教えてくれなかったのか?」

  などといった問い合わせや、家主さんから

  「外国人の入居を断ってほしい」

  などの申し入れを受けたことはないでしょうか。

  このような問い合わせや申し入れを受けた場合、どのように対応されているでしょうか。

 土地の取引にかかる問い合わせに対して「お客さんの意向だから言わないわけにはいかない」とか、「言わなかったことによって、後でトラブルになったら大変である」といった声や外国人・高齢者・障がいのある人などの入居拒否に際して「家主さんの意向だから、お断りするのは仕方がない」とか「家主さんの意向を無視すると、今後の営業に支障をきたす」といった考え方をしている場合があります。

 同和地区の物件ならば購入したくない、外国人であれば入居させたくないといったお客さんや家主さんの意向は、偏見や誤った知識に基づく差別意識の表れであり、人権問題が正しく理解されていないことに起因するものです。これらの意向をうのみにし、同和地区であるかどうかを調べたり、教えたりすることや外国人などであることを理由に入居をお断りすることは、差別を助長することになります。

宅地建物取引業者である皆さんは、憲法で保障された居住・移転の自由にかかわる重要な業務に従事しており、業務の執行に関しては常に「基本的人権の尊重」を十分に理解し、認識していただかなければなりません。偏見や誤った知識に基づく問い合わせなどに対しては、毅然とした対応をしていただく必要がありますし、お客さんや家主さんに対して人権問題についての正しい理解と認識を持っていただくよう、日頃から啓発に努めてください。

宅地建物取引業法第47条に関する考え方について

 取引の相手方から同和地区に関する質問を受けた際に、その存在について回答しなかった場合、法第47条に違反するのではないかと考えているかもしれません。

 同和地区の問い合わせに関する回答は差別行為です。従って、同和地区の問い合わせに関して、回答しなくても法第47条違反には該当しません。

宅地建物取引において問い合わせや申し出を受けた場合

 宅地建物取引の中で、お客さんや家主さんなどから、偏見や誤った知識に基づいた問い合わせや申し出を受けた場合には、以下の事例を参考に、人権を尊重する視点から毅然とした対応をしてください。

[例1]

Q この地区は同和地区(又は校区)か

  (同和地区だから)契約の申込みを撤回したい(契約解除したい)

  なぜ、この地区が同和地区(又は校区)であることを教えてくれなかったのか

  同和地区であるかどうかの問い合わせについて、お答えする立場にありません。また、宅地建物取引業法上も答える必要はありません。

 私たちは憲法で保障された居住の自由にかかわる仕事をしています。同和問題は憲法で保障されている基本的人権に関わる重大な問題であり、私たち一人ひとりが協力していかなければならない問題です。同和地区であるかどうかを調査したり、同和地区(又は校区)であるなら宅地建物を購入しない、入居しないということは差別行為に当たります。

[例2]

  この物件は、同和地区にあるから安いのか

  物件の値段は、主にその物件の土地の価値や建設などにかかったコストによって決まります。土地の価値を決定しているものには、公示価格や交通の便など様々な要因があります。

 「同和地区に住めば差別される。同和地区にある物件だから、安くなるのだ。」という考えは、同和問題を正しく理解されていないことであり、差別意識のあらわれであるといえます。ご自身が妥当な価格だと思われたのであれば、それが正当な価格であり、同和地区にこだわることは正しいことではありません。

[例3]

  外国人・障がいのある人・高齢者・母子(父子)家庭等であることを理由に入居を断りたい

  入居申込者が外国人・障がいのある人・高齢者・母子(父子)家庭等であるという理由だけで入居を断ることは差別です。幸せに暮らすことは、私たちみんなの願いであり、お互いの居住・移転の自由を尊重しなければなりません。あなたやあなたのご家族がこのような立場に立たされたらどう思いますか。

[例4]

  以前にトラブルがあったから、外国人・障がいのある人・高齢者・母子(父子)家庭等には貸さない

A  外国人・障がいのある人・高齢者・母子(父子)家庭等であるということだけを理由に入居を断ることは、居住・移転の自由という基本的な人権を侵害するものです。個人的なトラブル経験や伝聞をもって、差別を普遍化するのは問題であり、予断や偏見に基づく差別がいかに人の心を傷つけるかよく考えてください。また、生活習慣や文化の違いも理解しあうように努めましょう。

その他

 人権に関する施策、啓発等についてはこちらもご参照ください。

 ・「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」の概要や周知の取組み(外部リンク)

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