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掲載内容



研究開発

次々と育成される
県オリジナル品種

はる

春の紀州を感じる

はるき

 果樹試験場では、収穫時期の異なる県オリジナル品種を切れめなく出荷する「カンキツのシリーズ出荷」の実現をめざしています。平成24年には9月中下旬に出荷できる極早生温州みかん「YN26」を育成し、平成26年には、浮皮が少なく良品質で、12月から出荷できる中生温州みかん「きゅうき」を現地枝変わり系統から県とJAで選抜し、品種登録の支援を行いました。
 さらに、新たな中晩柑として、3月から出荷でき、高糖度でさくさくした食感の「はるき」を育成しました。皮がむきやすいので手が汚れず、果実の袋が薄いことから非常に食べやすい特徴があり、令和3年に品種登録されました。

カンキツの育成をしている様子の画像

「はるき」に続くカンキツも育成しています。

カンキツの研究をしている様子の画像
はるきの画像

大玉で美しく、食味良し

紀州てまり
紀州てまりの画像

 本県の主力品種「刀根早生」(渋柿)の出荷が集中する10月上旬から、その後「富有」(甘柿)の出荷が集中する11月中旬までの間に出荷できる甘柿の育成が望まれており、かき・もも研究所では、10月下旬頃から収穫できる「紀州てまり」を育成し、令和2年から出荷が始まっています。
柿の収穫をしている様子の画像  「紀州てまり」は、糖度が17パーセント程度と高く、食味も良く、「富有」より大きい上に、果皮に亀裂の入る条紋などの生理障害がほとんど発生しないため、外観が良好という優位性のある完全甘柿です。

現在、「紀州てまり」より1週間程度早く収穫可能で、シャキシャキとした食感で食味が良い「紀州あかね」も育成しています。

柿の研究をしている様子の画像

黒星病に強く、受粉樹に活用できる

星秀

 「南高」は本県を代表する全国ブランドとして有名ですが、開花期の気象条件によって、収穫量が左右されることがあります。
 そこで、うめ研究所では、受粉が安定し、主要病害の黒星病に強く、「南高」と同時期に開花する「星秀」を育成しました。
 この品種は、減農薬栽培によるコスト削減などが期待されるほか、受粉樹としての活用により「南高」の安定生産にも寄与することが見込まれます。
 また、ICT(情報通信技術)やロボット技術などを活用し、省力化を図る「スマート農業」の実証実験にも積極的に取り組んでおり、スマート農機の導入などを視野に入れた省力的樹形も検討しています。

スマート農機を使って梅の観察をしている様子の画像
梅の研究をしている様子の画像

果実成分の分析により、新たな品種育成も行っています。

星秀の画像

辛くないししとう

ししわかまる
ししわかまるの画像

 ししとうは、栽培条件によって辛い果実が発生することがあり、外観からは区別ができないため、消費者から敬遠される要因となっていました。

出荷前にJAの組合員らが検品をする様子の画像 ししとうの研究をしている人の画像

 そこで、暖地園芸センターでは、京都教育大学と連携し、在来品種「紀州ししとう1号」とピーマンとの掛け合わせなどを繰り返して、7年の歳月をかけ、辛み成分が発生しない「ししわかまる」を育成しました。
 現在、県内の各産地で試験栽培を開始しており、市場では高値で取引された実績もあり、産地の収益向上が期待されています。また、辛みが苦手な方でも安心して食べられるという利点を活(い)かし、販路として業務用にも提案できる強みがあります。

出荷前にJAの組合員らが検品をする様子

病気に強く、極早生で良食味

紀の香
紀の香の画像

 農業試験場で育成されたいちご「まりひめ」は、大粒で、甘みが強く、ほどよい酸味が特徴で、現在、県内のいちごの主力品種となっています。しかし、株が枯死する炭そ病に弱く、安定生産には熟練の栽培技術が求められるため、同試験場では、「まりひめ」と同程度の糖度で炭そ病に強い、極早生の「紀の香」を育成しました。

いちごの研究をしている様子の画像  

11月中旬から収穫できる「紀の香」の登場で、「まりひめ」とともに県産ブランドいちごによる産地の活性化が期待されています。

「紀の香」は、平成30年に品種登録され、農家での栽培も始まっています。現在、その品種特性を活かした栽培技術の開発を進めています。

 
いちごの観察をしている様子の画像

低温管理でも生育が良く、多収量

紀州ファインライラック、紀州ファインオーシャン
紀州ファインオーシャンの画像

 スターチスは、本県が出荷量、栽培面積ともに全国1位の品目です(令和2年産花き生産出荷統計)。
 暖地園芸センターでは、これまで「紀州ファインシリーズ」として10品種を育成しており、この度、青色品種の「紀州ファインライラック」と「紀州ファインオーシャン」の2品種を新たに育成しました。
 この品種は、ハウス内の夜温管理を通常より低温の2℃または無加温にしても、1株あたりの切り花本数が既存の県オリジナル品種より多く、燃油コスト削減も期待できるという優位性をもっており、産地への普及に取り組んでいきます。

スターチスの観察や研究をしている様子の画像

草丈が低く収穫しやすい

光丸うすい
光丸うすいの画像

 本県のえんどうは、出荷量で全国第2位(令和2年産野菜生産出荷統計)を誇っており、暖地園芸センターでは、うすいえんどうの「きしゅううすい」や、きぬさやえんどうの「紀州さや美人」などの県オリジナル品種を育成してきました。しかし、主力品種である「きしゅううすい」は、ハウス栽培では草丈が伸び、収穫や整枝などの作業性に課題があったことから、草丈が低い短節間品種の育成が求められてきました。
えんどうの研究をしている様子の画像  そうした中、みなべ町内で節間の短い系統が発見され、さやの形質が主要品種と同等で、草丈が低く、収穫時の作業効率が良い有望種であったため、産地関係者の協力のもと特性調査を実施するなど、品種登録支援を行いました。
 この「光丸うすい」は、省力化が図られる優良品種として、栽培技術の確立などが進められています。  

えんどうの研究をしている様子の画像


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