体罰等によらない子育てを広げよう!

1.子供の権利が守られる体罰等のない社会へ

 児童相談所に寄せられる児童虐待の相談件数は増加の一途をたどっており、その中には、「しつけ」と称して暴力等をもちいて子育てされる場合があります。

 こうしたことを踏まえ、2019年6月に成立した児童福祉法等の改正法において、体罰が許されないものであることが法定化され、2020年4月1日から施行されています。

 法律の施行を踏まえ、子供の権利が守られる体罰等のない社会を実現していくためには、一人ひとりが意識を変えていくとともに、子育て中の保護者に対する支援も含めて社会全体で取り組んでいかなければなりません。

2.しつけと体罰は何が違うの?

 「しつけ」とは、子供の人格形成を目的として、社会において自律した生活を送れよう子供をサポートし、社会性を育む行為です。対して「体罰」とは、身体に何らかの苦痛を与えたり、または不快感を意図的にもたらすなどの行為をいい、その程度は問いません。

 子供をしつけるときは、子供の発達しつつある能力に合わせて行う必要があり、体罰で押さえつけるしつけは、この目的に合うものではなく、許されません。

これらは全て体罰です

  • 言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
  • 他人のものを取ったので、お尻を叩いた
  • 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
  • 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子供を殴った
  • 掃除をしないので、雑巾を顔に押し付けた        など

3.なぜ体罰等をしてはいけないのか

 体罰等が子供の成長・発達に悪影響を与えることは科学的にも明らかになっており、体罰等が繰り返されると、心身にさまざまな悪影響が生じる可能性があることが報告されています。虐待や体罰、暴言を受けた体験がトラウマ(心的外傷)とな って、心身にダメージを引き起こし、その後の子供達の成長・発達に悪影響を与えます。
 親から体罰を受けていた子供は、全く受けていなかった子供に比べ、「落ち着いて話を聞けない」、「約束を守れない」、「一つのことに集中できない」、「我慢ができない」、「感情をうまく表せない」、「集団で行動できない」という行動問題のリスクが高まり、また、体罰が頻繁に行われるほど、そのリスクはさらに高まると指摘する調査研究もあります。
 手の平で身体を叩くなどの体罰は、親子関係の悪さ、周りの人を傷つけるといった反社会的な行動、攻撃性の強さなどとの関連が示されており、また、それらの有害さは、虐待に至らない程度の軽い体罰であっても、深刻な 身体的虐待と類似しているとする研究結果も見られます。

4.体罰等によらない子育てのために

 体罰等はよくないと分かっていてもいろいろな状況や理由によって、それが難しいと感じられることもあります。一方で、安心感や信頼感、温かな関係が心地よいのは、子供も大人も同じです。

POINT 1 子供の気持ちや考えに耳を傾けましょう

  • 相手に自分の気持ちや考えを受け止めてもらえたという体験によって、子供は、気持ちが落ち着いたり、大切にされていると感じたりします。
  • 子どもに問いかけたり、相談をしながら、どうしたらよいかを一緒に考えましょう。

POINT 2 「言うことを聞かない」にもいろいろあります

  • 保護者の気をひきたい、子供なりに考えがある、言われていることを子供が理解できていない、体調が悪いなど、さまざまです。
  • 「イヤだ」というのは、子供の気持ちです。こうした感情を持つこと自体はいけないことではありません。重要なことでない場合、今はそれ以上やり合わない・・・というのも一つです。

POINT 3 子供も成長・発達によっても異なることがあります

  • 子供の年齢や成長・発達の状況によって、できることとできないことがあります。また、大人に言われていることが理解できないこともあります。
  • 子供自身が困難を抱えているときは、それに応じたケアを考え対応しましょう。

POINT 4 子供の状況に応じて、身の周りの環境を整えましょう

  • 乳幼児の場合は、危ないものに触れないようにするなど、叱らないでよい環境づくりを心がけましょう。子供が困った行動をする場合、子供自身も困っていることがあります。
  • 子供が自分でできるような環境づくりを工夫してみましょう。

POINT 5 注意の方向を変えたり、子供のやる気に働きかけてみましょう

  • 子供はすぐに気持ちを切り替えるのが難しいこともあります。時間的に可能なら待つことも一案です。難しければ、場面を切り替えるなど、注意の方向を変えてみてもよいでしょう。
  • 子供が好きなことや楽しく取り組めることなど、子供のやる気が増す方法を意識してみましょう。

POINT 6 肯定文でわかりやすく、時には一緒に、お手本に

  • 子供に伝えるときは、大声で怒鳴るよりも、「ここでは歩いてね」など、肯定文で何をすべきかを具体的に、また、穏やかに、より近づいて、落ち着いた声で伝えると、子供に伝わりやすくなります。
  • 「一緒におもちゃを片付けよう」と共に行ったり、やり方を示したり教えたりするのもいいでしょう。

POINT 7 良いこと、できていることを具体的に褒めましょう

  • 子供の良い態度や行動を褒めることは、子供にとって嬉しいだけでなく、自己肯定感を育むことにもなります。
  • 結果だけではなく、頑張りを認めることや、今できていることに注目して褒めることも大切です。

5.子育てはいろいろな人の力と共に

 子育てを頑張るのはとても大変なことです。子供を育てる上では、支援を受けることも必要であり、市区町村などが提供している子育て支援サービスを積極的に活用しましょう。子育ての大変さを保護者だけで抱えるのではなく、少しでも困ったことがあれば、まずは、お住まいの市区町村 の子育て相談窓口や保健センターなどにご連絡下さい。
 市区町村の実施している乳幼児健診などの健診時や、乳幼児全戸訪問などの機会にも相談することができます。また、児童相談所虐待対応ダイヤル(無料)「189( いち・はや・く)」や児童相談所相談専用ダイヤル「0570-783-189(なやみ・いち・はや・く)」なども利用が可能です。
 また、子育てには、気力・体力をとても使います。そのため、困ってから相談に行こうと思っても、その気力が湧かなくなってしまうこともあり ます。落ち着いているときに、地域子育て支援拠点など、子供を連れ て出かけられる場所に出かけてみることも一つの方法です。子育ての不安などを話すことで気分転換になり、気になることなどを気軽に相談できる関係ができるかもしれません。
 周囲の親族や地域住民、NPO、保育などの子育ての支援者、保健・医療・ 福祉・教育現場などで子育て中の保護者に接する方は、子育て中の保護者が孤立しないようにサポートしていくことが大切です。保護者だけで抱え込まないように、声かけや支援を行い、市区町村や児童相談所などとも連携して、社会全体で支えていくことが必要です。

ポスター2

※詳しくは「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/minnadekosodate.pdf

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