施肥の基本的な考え方

特性

カキは深根性で貯蔵養分が多く、施肥に対する反応は鈍いほうである。また、細根は耐湿性には比較的強いが乾燥に弱いとともに、養水分の急激な変化を嫌い土壌の塩類濃度や窒素濃度が高くなると伸びた新根が枯死する場合がある。
養分吸収が開始される時期は遅く、新梢伸長が停止する5月末から活発になることから、発芽期から開花・着果期までに必要な養分は主として秋季に蓄えられた貯蔵養分によりまかなわれている。したがって、貯蔵養分の浪費を避けて蓄積を図るには、早期の摘蕾と摘果(適正着果)により着果過多を避け、葉の保護(病害虫の防除)と受光態勢の改善(整枝せん定)により葉の同化作用を活発にすることが重要である。
また、6月から8月にかけての養分吸収力が極めて強く、この時期に窒素を過剰吸収させると着色の遅延等果実品質に悪影響を及ぼす可能性が高い。

土づくり

カキ園の多くは急傾斜地であること、近年中耕等表土管理の不徹底により表土が硬く締まり透水性が低下している園が多いこと等から、降雨等による肥料の流亡や夏季干ばつの被害がみられる。本来、深根性であり地力依存度が高いため、土を深くまで膨軟にし、通気性を高めると深層部への根域拡大と細根密度の増加が図れ、天然養水分の利用効率が高まり、施肥量の削減や夏季の干ばつの軽減につながる。したがって、土壌改良は土壌改善目標(1)-(2)第4表を目安とし、土壌診断結果(1)-(3)第10表に基づき、深耕と有機物(土壌改良資材)の投入を行い、土壌の物理性及び化学性を改善する。ただし、深耕は断根の恐れがあるため、深耕位置は主幹から2メートル程度離し、3年から5年で樹冠を1周する程度が望ましい。

施肥

現在の果樹栽培は果実品質重視であることから、過剰な施肥、特に窒素の多量施用は品質の低下を招くため、減肥傾向が定着しつつある。また、カキ園の多くは急傾斜地であることから降雨等により肥料が流亡し、池や河川等の富栄養化を招き環境負荷の一因となっているものと考えられる。加えて、近年は環境保全の観点から有機物を利用した土づくりに重点をおき、化学肥料を削減する傾向にある。
一方、年間養分吸収量は「富有」成木(2.5トン/10アール)で窒素16.6キログラム、リン酸3.1キログラム、カリ20.0キログラムとの報告があり、このうち約3分の1は天然供給量であると考えられる。
これら及び上述の養分吸収特性から、施肥については、まず深耕や有機物施用等の土づくりを行い、根域の拡大と天然養水分の利用を促進し、その分施肥量を削減するとともに、肥料も急激な肥効の起こらない有機質肥料を主体とすることが望ましい。
また、これまでの施肥は12月から1月の元肥を中心としたものであったが、施肥時期が早いほど養分吸収率が高く、10月以降に吸収された窒素の多くは中・細根に蓄積され果実へはほとんど移行せず着色を抑制する危険がないこと、果実生産により消耗した樹体を早期に回復し貯蔵養分の増加を図ること等から、礼肥を中心とした施肥体系が望ましい。礼肥の施用時期は収穫の早い「刀根早生」及び「平核無」で9月下旬から10月上旬、「富有」で10月中下旬とし、元肥もできるだけ効率的に吸収させるため、「刀根早生」・「平核無」で11月上旬、「富有」では11月上中旬が適当である。なお、6月の追肥は果実品質への悪影響の恐れがあるため樹勢の弱っている場合のみ行うようにする。

診断基準

  • 発芽が斉一であり、開花期には葉の緑化が正常に進行していること。
  • 5月中旬には不定芽を除く80%の新梢が伸長を停止し、結果枝の先端葉は開花期前に成葉化していること。
  • 新梢の二次伸長はおこさないこと。
  • 生理落果は少なく、開花後40日間でほぼ終了すること。
  • 刀根早生で9月上旬、平核無で9月中旬、富有で9月下旬に概ね着色が始まること。
  • 落葉期(80%落葉)は11月下旬であること。
  • 葉成分適否判断基準(8月・着果枝葉)
    診断基準の表

かん水

カキは深根性であるが耐干性が低く、土壌の乾湿の変化が大きいとヘタスキなど種々の生理障害が生じやすい。7月から8月にかけての期間は葉の光合成活性が最も活発な時期であるため、この時期の土壌の乾燥は光合成活性を低下させ果実肥大を抑制する。また、この時期は降水量が少なく蒸散量が多いため、干ばつの被害を被りやすいので、晴天日が10日以上続くような場合はスプリンクラー等で20ミリメートルから30ミリメートルのかん水を行うとともに、株元への敷ワラや敷草等により土壌水分の蒸散抑制に努める。

施肥基準

施肥基準の表

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