カットストロー法によるウシ体外受精胚の超急速ガラス化

カットストロー法によるウシ体外受精胚の超急速ガラス化

研究成果情報

はじめに

受精卵移植技術を基礎として、ガラス化保存卵、体外受精卵、雌雄判別卵、受精卵クローン等のバイオテクノロジーを活用としたウシの生産技術を確立するため、今年度は、体外受精胚に適した胚保存方法を検討するため、超急速ガラス化法のひとつであるカットストロー法(ガラス化区)が加温融解後の体外受精胚の生存性に及ぼす影響を調査した。

材料及び方法

食肉処理場由来ウシ卵巣から採取した未成熟卵子を24時間成熟培養後、体外受精を実施し、発生培養7日目及び8日目のA及びBランク胚を供試した。
急速ガラス化(ガラス化区)には2.5ミリリットル精液ストローの先端を斜めにカットし、スプーン状にしたものを用い、ガラス化液の組成は20% Gly,20% EG,0.3M Suc,0.3M Xyl,3% PEGを含む20%CS加m-PBSとした。第1平衡液(10% Gly,0.1M Xyl,1% PEG in 20%CS加m-PBS)、第2平衡液(10% Gly,10% EG,0.2M Xyl,2% PEG in 20%CS加m-PBS)中にそれぞれ5分間浸積・平衡し、胚を少量のガラス化液とともにカットストローの先端にのせ、30秒後に液体窒素中に投入した。対照区には緩衝凍結法を用いた。
ガラス化・凍結した胚は加温融解後、72時間培養し、24時間毎に胚の形態を観察した。

結果

  1. 加温融解後の胚の生存率はガラス化区と対照区の間に有意差は認められなかった。(図1)(PDF形式 264キロバイト)
  2. 加温融解後のAランク胚の割合は、融解後24時間でガラス化区が対照区に比べ高い傾向にあり(p=0.09)、カットストロー法による超急速ガラス化は緩慢凍結法に比べ、加 温融解後の胚の形態回復の速度が早い傾向にあることが示唆された。(図2)(PDF形式 264キロバイト)
  3. 加温融解後の胚の透明帯脱出率は、融解後72時間でガラス化区が対照区に比べ有意に高く、カットストロー法による超急速ガラス化は緩慢凍結法に比べ、加温融解後の胚の品質が改善されることが示唆された。(図3)(PDF形式 264キロバイト)

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