第16回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第16回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第16回和歌山県人権施策推進審議会
日 時 平成16年2月5日(金曜日) 13時~15時半
場 所 和歌山市 アバローム紀の国
議 題

(1)人権施策基本方針総論について
(2)その他

出席委員

稲垣委員 大畠委員 橘委員 谷口委員 月山委員 辻委員 都村委員 中川委員
中谷委員 中村委員 西委員 村田溥委員 村田恭委員 柳瀬委員 吉澤委員

配布資料

(1)人権施策基本方針(案)-修正版-
(2)人権施策基本方針(案)-清書版-
(3)基本方針総論案 修正箇所等一覧
(4)人権に関する県民意識調査
(5)解説が必要な語句

内 容

委 員

それでは、ただ今から、第16回和歌山県人権施策推進審議会を開催させて頂きます。

本日は、前回の審議会に引き続きまして、「人権施策基本方針総論について」のご審議をお願いしたいと思います。

なお、前回までに各委員方から総論部分についてのご意見を頂戴いたしており、それに基づき小委員会で検討をいたしました。その結果を委員方に事前にお送りさせて頂いております。その内容につきまして、委員方のご意見を頂戴して、直すべきところは直していきたいと考えてございます。本日は、主に総論部分についてのご審議を賜りますことが中心でございます。

また、お手元にお配りしていますとおり、意識調査の結果についての資料もございます。この資料についても後に事務局からご報告を申し上げまして、委員方のご意見を頂戴したいということもございます。

時間の制限もありますが、できる限り、実りのあるご意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

まず最初に、基本方針の総論部分からご審議を賜りたいと思います。これについて事務局からご説明を頂けますか。

事務局

それでは、事務局からご説明を申し上げます。本日の資料は、前回までの審議会のご意見、あるいは小委員会等のご意見等を踏まえ修正してございます。その点について、ご審議をお願いします。

なお、ご審議は、各章ごとに進めて参りたいと思ってございます。第1章の次に、第2章と区切って第4章まで進みたいと思ってございますが、第4章は短いので、第3章と一緒にご審議して頂きたいと思います。

まず、資料1と資料3とを対比して見て頂きたいと思います。

なお、資料3の意見のところで、空欄となっている部分は、小委員会での意見を受けて対応(修正)案を作成した部分でございます。

1ページから9ページまでの全体に係るところでは、「総論が長すぎると読みにくい」、「なるべく短く要領よくまとめた方がインパクトがある」というご意見を頂いてございます。それを受けまして、できるだけ文言を整理し、また、他と重複している分については削除し、全体的には1ページ程度短縮しております。

それから、「基本方針の位置づけと人権施策の基本理念の順を逆にした方がよいのではないか」というご意見も頂いてございます。それについては、全体ができた後で、再検討をお願いしたいと思ってございます。

また、「基本方針の策定は条例に基づくものだということを端的に書いた方がよい」というご意見については、「(3)本県での取組」の最後の部分、5ページから6ページにあたりますが、そこを抜き出し、新しく「1 基本方針策定の趣旨」として記載し、条例に基づくものであることを明確にしてございます。これは、資料1の1ページの一番最初の部分でございます。

それでは、ページを追って説明していきたいと思います。

1ページ目の「1 基本方針策定の背景」となっていたものを「2 基本方針策定の背景」としました。そして、「人権施策の中心は一人ひとりお互いの尊重であり、自然との共生は馴染まない」、あるいは、「単に優しくお互いを尊重して、いきなり共生では平板な感じがする」、「自然との共生も人間の傲慢さに対する反省を書き込まないで使うべきではない」、また、「導入文は必要ない。書くならば共生について明確にした方がよい」、「自然との共生は良い文章だが、違和感がある」というご意見や基本方針の性格等を考え、導入文を削除してございます。それが1ページ目でございます。

それから、次の「(1)国際的動向」の部分ですが、「世界人権宣言の分析が不十分」というご意見を頂きました。それについては、基本方針の性格上、分析は行いませんが、用語解説で説明をしたいと思っております。

次に「(2)国内の動向」のところでは、世界の各国にその例を見ないという部分を消してございます。「世界に例を見ない部落差別とあるが、カースト制度など世界に例を見ないことはない」というご意見を受け、この部分は削除しています。

それから、説明には入っていないのですが、その上の方で一部削除している部分がございます。これは、全体を整理する中で、例を一つとして、文章を短縮したためでございます。

その下の意見のところには、何も書いてございませんが、修正以前は「人権擁護推進審議会の教育・啓発に関する答申を受けて人権教育・啓発推進法が制定された」と記述していました。しかし、成立過程からすると答申に基づいた立法とは明確に言えないため、誤解を招かないように関連づけをしない記述としました。

資料3をご覧下さい。「(3)本県での取組」のところでは、「実態的差別、心理的差別の表現について、一般的には心理的差別ではなく差別意識ではないか」、あるいは「同和問題の記述が多く、国の動向とも重複する内容がある」というご意見を受け、同和問題の解決への取組が人権尊重の社会づくりの先導的役割を果たしてきた経緯を中心とした記述と、また、同和問題について国と重複する部分を削除させて頂いています。同じところで、「基本方針を作るに至った経緯」のように、小見出しをつけた方が、なぜ方針を作るのかが分かりやすいのではないかということで、これは5ページの下の方にありますが、先程も説明させて頂きましたとおり、「1 基本方針策定の趣旨」として、1ページの最初に持っていってございます。

それから、5ページの中段にありました、「知る権利」や「インターネットによる人権侵害」、「環境と人権」などについては、第3章の前段で記述したため、その部分を削除しております。

次に7ページの「基本方針の位置づけ」のところでは、人権尊重の社会づくりについて、県民とともに進めるという視点から、文章や文言を整理してございます。

次は8ページの「人権施策の基本理念」のところでございますが、基本方針の性格を考慮し、人権の定義や憲法の具体的根拠についての部分を削除してございます。

それから、人権尊重の社会づくりを県民との協働により進めることや自然を畏敬するもとでの共生を記述してございます。

9ページでは、「人間の尊厳の問題は是非入れるべきだ」というご意見等を受けまして、人間の尊厳について、基本方針の中で詳細に記述することは難しいが、本県が目指す社会の姿の中において位置づけてございます。もう一つは、「多様な個人を尊重する社会という認識が大事であり、一点に絞った方がよい」、あるいは、「3つの社会像はインパクトがなく必要ない」というご意見があり、「社会像」とすると固定的にとられる恐れがあるため、本県が目指すところの「人権文化が根付いた社会」を表現するものとして4つを記述してございます。

第1章につきましては以上です。簡単に説明させて頂きました。

委 員 今、事務局からご説明をさせて頂きました。「第1章 基本的な考え方」の修正について、各委員のご意見を頂戴いたしたいと思います。
委 員 ずいぶんと回数を重ねて、十分に色々と検討されているようですね。大体、要領よくうまくまとめられていると思います。細かい点を言えば、色々と問題があるみたいですが、大体この位で良いだろうということです。ただ、字句の問題で2、3あります。
委 員 おっしゃって頂けますか。
委 員

2ページの上から7行目、「世界人権宣言の精神が薄らいできました」というのは、言い過ぎではないかと思います。これは、「薄らぐ懸念が生じている」とか、「薄らぐ恐れが生じてきている」とか、その程度が良いのではないでしょうか。

そのページの下の方で、国内の動向の一つ上の行に「「人権の世紀」といわれる21世紀」とありますが、「「人権の世紀」として実現すべき」ということだと思うのです。「人権の世紀」といわれることが、自然になるというのもありますが、目標として、「「人権の世紀」として実現すべき21世紀」というような意味で修正された方が良いと思います。

一番の問題は、6ページです。先程も説明がありましたが、「人間の尊厳」という問題です。「人間としての尊厳性」とか、「人としての尊厳」、私は「人としての尊厳」という言葉が一番好きですが、人権の根拠は人間の尊厳だと思うのです。国際的な色々な人権条約が沢山あり、それを読んでも、人権は人間の尊厳に由来するという説明が圧倒的に多いです。その点は、人権施策なのだから、なぜ人権を守らなくてはならないのかという基本的な理念だろうと思うのです。

やはり、人間の尊厳に由来する、さらに人間の尊厳そのものを説明できると良いのですが、かなり難しい。簡単に説明できるかどうか分かりませんが、いずれにしても、人権の基礎というか、人権が由来するものは、人としての尊厳であるということを明確に打ち出すべきであると思います。場所は、冒頭でも良いし、この人権施策の基本理念でも良いと思います。

それから、尊厳という言葉は人権宣言のところで出てきます。尊厳と権利においてという一文と、下から5行目の人間としての尊厳性というところです。尊厳と尊厳性が同じ意味だとすれば、どちらかに統一した方が良い。尊厳とするほうが。尊厳性というのは、しっくりしないような感じがするのです。

委 員 ありがとうございました。ご意見については、最終的に各論部分も含めて、もう一度検討をお願いする機会がございますので、それまでに小委員会と事務局で、ご意見をどのように活かしていくかということを検討させて頂きたいと思います。
委 員 清書版の6ページです。「4 人権施策の基本理念」の一番下です。理念にまとめて頂き、4つの項目となって非常に良く分かるのですが、このままでは読み流してしまいます。よりインパクトを与える意味から、文章の左に丸印、米印をつけるか、また太字にしてクローズアップさせてはいかがでしょうか。4項目を活かすために細かいことですが、そんな印象を持ちました。
委 員 目立つようにですか。
委 員 目立つようにということです。
委 員

2ページの「(2)国内の動向」のところです。1行目の憲法のところですが、昭和22年にという字句を入れておいた方が、つまり、「我が国においては、昭和22年に基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法が施行されて以来」という方が良いのではないかと思いました。

次に、3ページの下から10行目の「男女共同参画基本法」というところですが、正式な法律名としては、「男女共同参画社会基本法」だと思いますので、社会を入れた方が良いのではないかと思います。

それと、今のところの上に3行目、「また、人権の擁護に資することを目的として、平成12年12月には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されるとともに」というところですが、この法律は、国、県や国民の責任を定めたり、基本計画を策定することを義務づけている法律なので、目的として書いている第1条の一番最後の「人権擁護に資することを目的とする」というところを引用されていると思うのですが、もう少し加えた方が良いと思います。

また、5ページの一番下から3行目のところ、「この基本方針は、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の趣旨に積極的に対応するものであり」と出てくるのですが、国の法律なので詳しく書く必要はないですが、説明があった方が分かりやすいと思いました。

委 員 今、言われたところは、この法律の趣旨を・・・。
委 員 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の第1条の目的では、「この法律は、人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、必要な措置を定め、もって人権の擁護に資することを目的とする。」となっています。人権の擁護に資するためというだけでなく、もう少し付け加えて貰ったら良いのではないか。第7条では、基本計画を策定する義務を謳われてるので、表現はお任せしますが、少し付け加えたらどうかと思いました。
委 員 清書版だと6ページの一番最後に4つ並んでいるところです。「すべての人が、自然を大切にする、豊かな心をいだく社会」ということが一番上にきていますが、むしろ、2番目にある「すべての人が、互いに、人間としての尊厳性を何よりも大切に認め合う社会」、3番目の「偏見を持たず、差別することなく、思いやりを持って、ともに生きる平和な社会」が上に来る方が良いのではないでしょうか。「すべての人が、自然を大切にする、豊かな心をいだく社会」というのは、3番目か4番目でも良いのではないかと思いました。
委 員

私も同じことを申し上げたいのですが、「自然を大切にする」というところはなくても良いのではないかと思います。流れとして読ませて頂くと、短い文章から長くなるという感じで、入りやすい感じはするのですが、この人権施策のところで、はじめに自然が入ってくる、「自然を大切にする」ということが基本理念として謳われるというのは、私としては後でも良いし、むしろなくても良いのではと感じました。

それから細かいことですが、清書版の4ページの上から6行目で、「女性や子ども、高齢者、障害者、外国人等の人権問題についても、個別分野ごとに計画やプランを策定する」と書かれていますが、計画とプランはどう違うのか、同じではないかと感じました。

委 員 今の最後のご意見、計画とプランについて事務局でご説明願いますか。
事務局 各課室によって作ったものが、例えば、障害者プランとなっていたり、他の課では、何々計画となっているものを並べただけなので、深い意味はありません。
委 員

今と同じところ、6ページの下から2行目のところについての質問なのですが、「人がその努力によって、自由に自己実現を図れる、公平な機会が保障された、希望の持てる明るい社会」というのは、やはり、「その努力によって」という文章にかなり意味があるのですか。

人権の問題をいつも考えていると、「その努力によって」というのは、努力できない状態、非常に難しい立場の人、障害を持たれる方、難病の方、あるいは子どもと色々います。努力しないで、甘い公平な機会は保障しないという意識を反映してのことだと思いますが、「その努力によって」という文章が入っているので、厳しい気もしました。

委 員 おそらく、各人が努力してということで、意識して入れた。努力しても、その人なりに出し得ない分野もあるでしょうが、それはそれなりにということで、やはり自分自身が努力してということを意識して書かれた。努力してもできない場合があるではないかという今の点も良く検討するようにしますけれども。
委 員 そもそも、努力すること自体が非常に難しく、ある意味からすれば、そのことが人権侵害を受けている人に対して重荷になったり、不可能を強いるようなこともある。自己実現を図るということは、そういうことですが、公平な機会の保障とか、希望の持てる明るい社会といったことと、この文章が繋がっています。努力によってという文章は、あえて必要なのかと少し悩んでいたのです。
委 員

なかなか難しい問題ですが、例えば重度精神障害者、また寝たきりになった植物人間状態の人は、2番目にある、人間としての尊厳によって、当然に人間というのは配慮されるということで、別に努力も何も関係ない。そこで、そういう問題を論じていくと思います。私は、人権はかなり努力しないとならないという考えを持っているのですが、そのことに関わるのかどうか分かりませんが、少し難しいです。

また、最初に書かれている、「すべての人が、自然を大切にする、豊かな心をいだく社会」、これは一番最後が良いのではないですか。人間の尊厳の問題を一番最初に持ってきて、あとはそれぞれの心構えなり、努力目標を書いて、最後に自然との共生とする。最後に締め括るという方が、順序としては良いのではないかと思います。

委 員

人権条例ができた時から、和歌山県の場合、やはり豊かな自然があるということは、人間性とずいぶん大きな関連があるだろうということから、豊かな自然を残していく、環境と人権を語る時も、導入として同じことだと思いますが、そういう意味から言って、人権条例の前文の中に少し説明不足ではあるけれども、言葉として入れている。逆にいえば、和歌山県の特性でもある。

ただ、自然との共生という時、よく間違えられるのは、人間の共生のように真横に並んだ形で考えていくことがある。人が自然を好きなようにコントロールしながらいくということが、地球規模で間違いであることになってきたことからすると、自然の恵みを受けながら、あるいは自然を畏敬、畏怖しながらというような形で、上下の関係を分かればという意味で、文章の中にも自然を畏敬して、あるいは柔らかく自然を大切にするというようなところと繋いだ。ある意味では和歌山県のユニークな部分であるということで、一番最後に納めておけばと思うのですが。

委 員 策定の趣旨あるいは背景のところで、自然との共生を大きく謳っていたが、前回の審議会でそういうことはおかしいということで、それを省いたという経緯がございます。
委 員

今の4項目の主語が、それぞれ、「すべての人が」、「一人ひとりが」、「人が」となっているが、その使い分けの意味が分からない。

それから、「人が」という時、一人ひとり、例えば、非常に障害の重い人まで想定しているのか。あるいは県民一般を指すのか。つまり、この「人が」という言葉が何を指しているのだろうか。「人が」と書いてしまうと、色々な読み方ができてしまいます。だから、場合によっては、主語を統一するようなことをした方が分かりやすいのかも知れないと思います。

委 員 例えば、どうすれば良いですか。
委 員 県民が努力をしているという趣旨ならば、「すべての人が」で構わないわけですが、一般的には「人が」ということになると、この人みたいな考え方になります。
委 員 そのことに関連して、ご指摘のように、最後の「人は」というのは、努力する人ですので、寝たきりとかいった人が入ってこない。だから、この最後のところを、「すべての人が」と書くとおかしいわけです。上の3つは当然、「すべての人が」で良いのですが、最後のところは「すべての人が」では具合が悪い。ここをどう書き分けるかという問題でしょうね。
委 員 そこは、あえて「すべての人が」という言葉を避けるということですか。
委 員

4つ目を、「すべての人が」と書くのは具合が悪いのではないですか。努力したくとも、できない人もあるわけですから。寝たきりの人などは、努力しようがないわけではないですか。「努力によって」ということにならないわけです。

人間として生まれ、人間の尊厳性がある、人間存在そのものが尊厳であるということであって、努力に関わらず、皆から公平に扱われるべきです。それでなくては、人間の尊厳という意味がありませんから。

委 員 先程からこだわっていることは、「努力によって」ということでなくても、すべての人に公平な機会は保障されないといけないし、希望の持てる明るい社会でないとダメなのではないかということなのですが。つまり、競争社会というか、自由社会なので、努力しないでということは、もちろん論外ですが、ここで人権施策として言う時には、「すべての人が自己実現を図ったり、公平な機会が保障される」、例えば、「寝たきりの人でも投票に行きたいと言ったら、何らかの形で投票ができる」、あるいは、「外出したいと言えば外出できる」、そういうことを考えると、「努力によって」ということを強調しなくても、「自由で希望を持てる明るい社会」とすれば良いのではないかという気持ちがあります。
委 員 投票に行こうという努力をする必要があるのと違いますか。
委 員 「努力によって」ということを強調しなくても、自己実現を図れる、あるいは希望の持てる明るい社会というか、「努力によって」という部分が全部にかかっているように読めてしまうのです。「自由に自己実現を図れる」と、「公平な機会が保障される」と、「希望の持てる明るい社会」の全部にかかるような気がするです。だから、ダメだということではないのですが、悩んでいるというか、気になっているのです。
委 員

努力という言葉の持つ固定概念から問題が出てくるのだと思います。努力というと、「頑張って何かしないといけない」というようなものを努力と言ってきた。みんなに対して、「頑張れ」という声をかけることがあるけれど、それを非常に嫌がっている人もいます。

近江学園の糸賀先生が書かれている本の中にこんなことが書いてありました。重度の障害のある子が寝たきりになっていて、保母さんがお世話をして下さっている。おむつを替えようという時に、子どもが0.1ミリぐらい、お尻を上げようとしていることに気づいた。保母さんのやって頂くことについて、心を示して、自らの力でもって自分もやろうとしている。それを保母さんが泣きながら訴えてきたことについて、これこそがこの子の自己実現だと糸賀先生は書いておられます。

そのような形から行くと、それぞれが生きていく中で、何かをしようという姿勢や意思を「努力」という言葉で書いてしまうと、「努力」という文字の字面から、もの凄いことをしなくてはいけないというような印象になる。もしも、この言葉にそうした固定概念があり、逆に動かないといけないという形の強制になるとすれば、この言葉そのものを工夫をしてみるということに限定していった方が良いのではないかと思うのです。

委 員

私は、委員のお気持ちがとても良く分かります。「努力によって」ということを抜いてしまっても、意味は十分に通じるのではないか。自己実現を望むということ自体、能動的な力が働くということですので、むしろ「努力によって」ということがなくとも、本来、保障される希望のもてる明るい社会であるべきだと思います。

それから一番最初の「すべての人が」というのを一番最初に持ってきた経緯ですが、人が人として、すべて尊厳を持って、尊重される社会ということの前提としての考え方に、色々な人の考え方がある。信仰心のある人は、宗教を基本に人の在り方みたいなものを考えていくのだと思いますが、それがあまり表に出ていない日本の社会では、これを最初に持ってくることによって、共通理解が得られるのではないかということで、一番最初になったのではないかと思います。

委 員

重度障害者の例が出ていますが、本当に努力という気持ちがないのかということは、捉えようがないです。成人レベルで変化が起こったりということもありますし、色々なことを表現しているが、こちらが受けとめられないという場合もあるのではないかという指摘もあります。

それはともかく、努力によってという意味合いも込めて、一人ひとりが自由にということで良いのではないかと思います。

つまり、「人がその努力によって」というのを、「一人ひとりが」ということに換えれば、障害の重さや考え方の違いなど、色々な人が、その人に応じた読み方ができ、それに応じて自由に自己実現が図れるとか等々ということになっていくのではないか。

だから、あえて「努力」というのを入れる必要はないのかも分かりません。「一人ひとりが」という言い方にすれば、そこに含まれてくるのではないかと感じました。

委 員

お二人の委員方と全く同感でして、「努力によって」というのは除いて頂いて良いのではないかと思います。これがあることで、自己実現を制限してしまう。努力のできない方は、自己実現からは少し遠のいていくというふうに読みとれ、誤解をされてしまう可能性があるのではないかと感じます。

ノーマライゼーションという言葉を、審議会の中でも大切な考え方として、挙げてこられたと記憶しているのですが、ノーマライゼーションは、どんなステージにおいても、どんな身体的なレベルになったとしても、その人達が可能な残存機能を活かして、可能な範囲で自己実現を図れるのだという大切な意味であると思うのです。強制ということだけではなくて。そこからしても、制限をしていくということは、やはり少し外れるのではないか。除いて頂いたら良いのではないかと思います。

委 員 いくつかの理由があるわけですが、この文章は「努力によって」というのを取ってしまっても十分に意味が通りますね。問題は、初めのものと2つ目が、「すべての人が」となっているわけですが、これは全部「一人ひとりが」にしても良いのではないですか。できたら統一した方が良いような気もするのです。「一人ひとりが」によって、「すべての人が」という意味を含有しますから。
委 員

今おっしゃるような趣旨ならば、「一人ひとりが」で良いのですね。その辺も合わせて、検討するようにしたいと思います。

他にございませんか。

次の第2章の方に移らせて頂きたいと思います。

事務局

それでは、第2章の10ページからご説明させて頂きます。

「1 人権の視点に立った行政の推進」というところですが、ここでは、「常に人権の尊重を念頭に置いて行う」ことを明示しました。また、取組について、文言を整理し、また重要性を考慮し、(1)(2)の記述の順番を入れ替えてございます。

それから、11ページの「2 人権教育・啓発の推進」のところです。「(1)人権教育・啓発の基本的方向」の「ア 多様な機会の提供」、「イ 効果的な方法の検討・実施」、「ウ 県民の自主性の尊重」のところでは、抽象的な表現を具体的な表現に修正してございます。また、文言の追加や文章の整理を行うなどして、分かりやすく書かせて頂いてございます。

12ページの「エ 人権文化創造のための共通認識の踏襲」のところですけれども、これは、16ページの「(7) 人権教育・啓発の共通認識」のところを、今後も、教育・啓発を進めていく上での基本的な認識として受け継ぐ必要があるので、文章を整理して、ここに移したものでございます。ここへ、新たに「エ」として、載せております。その時には、8つの視点を示していましたが、それについては資料として添付いたしたいと思っております。

それから「(2) 人権教育の基本的なとりくみ」の「ア 家庭における人権教育」というところですが、前の審議会の中で、「今までは学校、家庭、地域となっていた」、「生涯学習の形でもいいが、家庭教育の必要性が欠けていると思われる」、また、「この案では、社会教育を社会教育施設中心に書いているので幅が狭い。今後、家庭教育をどのようにしていくかという問題と関わってくることでもある」、「社会教育の取組が、親を指導するだけでは内容が貧弱である」、「リスクグループやリスクファミリーの対応として、保健師や保育所・学校との関連で行政が家庭に入り込んでいく取組が必要」、あるいは、「家庭での人権教育をどのような場で、どのような方法で行うのか。保健所は、子育ての中で母親と接する場所であり、取組に一工夫が必要である」、また、「地域の中で助け合う体制を民間主導で作り、成功している例もある」、「市町村との連携も強化する必要がある。」という意見が出てございます。

これらのご意見を踏まえ、「ア 家庭における人権教育」として、社会教育から分離して、ここへ記述いたしております。

また、関係機関(社会教育機関、保健機関、保育所、学校、市町村)や民間団体が連携を図りつつ、家庭に入り込み、家庭への支援に取り組む方法や位置づけということで、書いております。それが12ページの家庭における人権教育ということです。

資料3の4ページに移りまして、「イ 学校教育における人権教育」ですが、これについては、今までは(1)~(4)と、箇条書きの形式であったものを、文章形式に改めております。

それから、13ページから14ページにかけて、今、説明させて頂きましたように、「社会教育における人権教育」から、「家庭における人権教育」を分離して記述しましたので、新たに生涯学習の振興のための各種施策を通じた人権に関する学習の充実と、日常の態度や行動に現れるような人権意識の涵養を取組の方向性として記述しております。それから、先程の「イ」と同じように、ここでは(1)~(3)となっていたものを、これも文章形式に改めております。

15ページに入っていきます。「(3) 人権啓発の基本的なとりくみ」の中の「ア 県民への啓発」の部分でございますが、修正以前は、啓発について、マスメディアの活用について抜けていたということで、追加記述をしております。

16ページの「(5) 人材の育成と調査・研究の推進」というところでは、修正前は「(5)人材の育成と活用」と「(6)調査・研究の推進」があったわけですが、(5)と(6)統合して、項目も新たに、「(5) 人材の育成と調査研究の推進」としております。

同じく、(7)の分を削除してございます。この部分については、前に持っていった部分でございます。「エ 人権文化創造のための共通認識の踏襲」ということで、前に持っていっております。

次に17ページ、「3 相談・支援・救済の推進」のところです。前の審議会では、「救済が軽視されている」、「相談・支援・救済の推進」とすべきである。」というご意見がございまして、項目名に「救済」を追加してございます。

そして、「処罰と救済を同列に扱っている表現と取れる」、あるいは、「法的救済がすべて国の専管事項とは言えないのではないか」、「条例により勧告などはできるのではないか」、また、「ある段階において、条例化による救済(調査、勧告)を考えるべきである」、それから、「取組が国に要望しますでは、消極的では」、もう一つは、「救済のところで、国と県の区別が分からないので、修正すべき」というご意見を受けて、次のように整理しております。

国における現在の救済制度と新たな動き、あるいは、地方公共団体における救済の取組、本県における現在の救済の取組、それから、県が今後、より充実を図るための救済の在り方を条例化も含めて検討するということです。18ページから19ページにかけて、書いております。

次に、20ページ、「4 人権行政の推進体制等の整備」の「(1)県の推進体制」の最初のところです。人権行政を県政の重要課題と位置づけるということで、この文を最初に入れております。

それから、ここでの意見、「人権教育・啓発の予算についてどのように取り組むかが必要」ということについて、本県での人権行政の位置づけ及び人権施策予算についての記述を追加してございます。

それから「(2)財団法人和歌山県人権啓発センターの充実」のところで、「各市町村にもセンターのような組織を作らないとネットワークは機能しない」というご意見がありました。各市町村には、啓発組織として人権(尊重)委員会等が現在ございまして、これらのネットワークを図るように努力しております。今のところは、特に修正はしてございません。

また、「(3)国、市町村、関係団体との連携」の中では、「県と市町村の組織がどのように連携していくかが重要」というご意見を頂いてございます。これについては、担当課長会議の開催等を通じて、人権に関する情報を共有しながら、市町村と連携を図ることを想定して記述してございます。今のところ修正はしてございません。以上でございます。

委 員 今、事務局から第2章について、ご説明させて頂きましたが、これについて各委員のご意見を賜りたいと思います。
委 員

清書版の9ページの後の段落です。「今後は」というところから、その6行後の「というところまで」の文章が一つになっていますが、長すぎるのではないかと思います。2つの文章に分けた方が分かりやすいのではないでしょうか。

それから、質問させて頂きたいのですが、10ページの「(2)人権教育の基本的なとりくみ」の4行目、「今後は、これを「学習」という県民自らが進んで学び、取り組んでいくこと」というところです。これは、皆さんが知っていて、「これを「学習」という」の部分はなくても良いのではないかと思うのです。この文章の意図が分からないのですが、「これを「学習」という」という部分が必要でしょうか。

委 員 今のご意見は、「今後は、県民自ら進んで学び」というだけで良いではないか、あえて「これを「学習」ということ」の意味は何かということですね。
委 員 それと、11ページのところ、「ウ 社会教育における人権教育」の4行目の最後のところです。「涵養が求められます。」の「涵養」というのは、常用漢字外で、難しい言葉かと思いますので、他の表現の方が良いのではないかと思いました。
委 員

この10ページですが、「これを「学習」という県民自らが進んで学び、取り組んでいく」というのを「学習」としているのでしょうが、生涯学習というのが出てくる前に、生涯教育という形で出てきた。どうも日本というところは、教育というと、上からやっていくことを教育と思っているような風土がある。ここでは、そのようなものではないというふうに捉えなくてはいけない部分なので、そのまま生涯学習と置き換えたところで、国民全体が自らが学んでいくというような形で、内容まで変わってきたという経緯があった。

おそらく、それを踏まえながら、今までのように教育・啓発と何となくそう言ってしまうと、上から作り上げていくようなものとなるので、県民自らが学ぼうということに大きく変えていこうということがある。学習をして、実践をしていこうという面へ行こうという意味だろうと思うのです。そこにうまく行くことができるのならば、このことがなくても構わないのですが、ここで、そういう意味でもう一回、説明をしたのではないかと思うのです。

委 員

「(1)人権教育・啓発の基本的な方向」の「イ 効果的な方法の検討・実施」のところで、「人権教育・啓発の手法については、「法の下の平等」「個人の尊重」といった人権一般の普遍的な視点」という限りは、「人間の尊厳」を入れる必要があると思います。

実はもう1箇所あるのです。それは12ページの5行目です。「自他の生命の尊さや」と「他人との共生・共感の大切さ」の間に、「人としての尊厳」が入ります。「生命の尊さ、人としての尊厳、他人との共生・共感」、これが妥当な並びだと思います。

それから13ページの一番最後の行ですが、「インターネット等を利用した人権侵害、環境問題」と来れば、やはり先端医療問題というか、遺伝子問題がある。いずれ必ず、先端医療に関連した問題が絶対に出てくるので、これは研究しなくてはならない。今から、研究の準備をされても良いのではないか。だから、環境問題、それから先端医療問題、言葉は遺伝子問題でも良いですが入れる必要がある。

また、15ページの下から4行目、「より有効な救済の在り方について、条例化も含めて検討します」と書かれています。これは非常に良いのですが、意気込みということから言えば、ここに「早急に」という言葉を入れるべきではないかと思います。「条例化も含めて、早急に」と。 まだ、検討の段階ですから、「早急に」と入った方が良いのではないかと思います。

委 員

清書版の10ページの下の方の「涵養」という言葉については、「涵養」でも良いかも知れませんが、例えば「育成」とか、また、他の言葉があればということは同感であります。

それから、ここでは「保育園、学校教育」という言葉の中で、保育園から大学までを含めた記述をして、保育園から大学までを言葉としては、学校教育となるのかも分かりませんが、それが含められているということの整合性を図って下さっていると思いますが、11ページに入り、今おっしゃられた、「人間としての尊厳」ということも、教育の場では、非常に重点を置いていると思います。ですから、11ページの上から3行目の後ろの方に、「いのちを大切にすることや他の人を尊敬することなど」と書いてありますが、ここも、人間のいのちを大切にすることや、人間の尊厳を教えているという感覚でいます。

またその下に、「人間らしく生きる力」とありますが、「人間として生きる力」のどちらが良いのだろうかと思っております。

それから、次の段落、「このような認識のもと、学校における」とありますが、ここは、面倒でも「保育園あるいは園や学校とか、あるいは大学」という、少なくとも3つは並べて頂いておく方が良いのではないかと思います。

委 員 もう一度、おっしゃって頂けますか。
委 員 「このような認識のもと、学校における」と一括りでの表現となっていますが、内容からすると、ここでは、「幼稚園・保育園や学校」というような具体性が必要ではないかと思います。特殊諸学校との交流も、人権教育としては重視しており、「多様な体験活動や高齢者等との交流」というのを書いて頂いてますから、その中に含むものとして考えたいと、解釈したいと思いますので。
委 員 「3 相談・支援・救済の推進」、それから「4 人権行政の推進体制等の整備」について、ご意見はございませんでしょうか。
委 員

11ページの5行目「人間らしく生きる力」というところは、このような表現が良いと思っていました。生物学的には人間なのですが、その人間が人間らしさを失ってきているというのが、今の世の中ではないかと思うのです。

その前の、「いのちの大切さ、他人を尊敬する」という表現、また先程言われた尊厳も含めて、人間が本来の人間らしく生きる、そういう力を育むという表現として、これで良いのではないかと思いました。

学校教育でも、もう少し団体生活を重視する、いわば他人と自分の住み分け、自分を意識する、そしてまた他人を意識する、他者として尊敬するという心を養うためにも、団体生活を重視するということが必要ではないだろうかと思います。

また、ボランティア精神が、最近は少し薄くなってきているのではないだろうかという感じもします。学校でも、例えばボランティア活動に参加することも、あっても良いのではなかろうか。それぞれの人間の存在というものを意識して、その生と死についても考え、そういった人間らしく考え生きるということが教育としては大事ではないかと考えております。

委 員 清書版の13ページの4行目に、「また、採用にあたっては公正な採用選考の確立を図り、雇用の機会均等を図られるよう」と具体的に書かれているのですが、県、自らの採用について、分野別にはありますが、総論の中で触れられていないので、この部分は必要ないのではないでしょうか。
委 員 委員のお考えでは、ここではなくても良いのではないかということですか。
委 員 県の採用について、この中では書かれていない。企業の項目だけに注文をつけるのは、バランスが悪いように思うのですがいかがでしょうか。
事務局 この部分は、特に企業ということで書いている部分でございますので、特に記述しております。特に、障害者等の雇用率達成等については、達成していない面が多大にありますので、あえて書いてございます。
委 員

今のご意見も、十分に検討させて頂きます。

次に推進体制については、この程度で分かりますか。十分だろうか、なお検討する必要があるのではないかと、小委員会でも考えているわけですが、委員方でこの点についてご意見がございましたら、この機会に伺いたいと思っています。

なければ、第3章、第4章に移らせて頂いてよろしいでしょうか。

事務局

第3章と第4章を併せてご説明させて頂きます。

資料3は、最後の6ページでございます。そして、資料1については、22ページからでございます。22ページの前文では、「属性は一般的に理解しにくく、どちらかというと「特性」ではないか」というご意見等がございました。修正については、分野分けが必ずしも属性だけによってなされているとは言えないため、属性に関する記述は削除し、分野別施策として取り上げるものをどのように決定したかということの説明を追加しました。

それから、22ページから23ページにかけて、公権力と人権という中で、「公務員」、「行政職員」と書いていたものを、「刑務官」あるいは「公務員」と書き換えております。

また、「機構としての行政とそれに携わる者との取組が整理されていない」、「行政としての取組の方が重要である」、「県民が行政を監視すればいいというものでなく、意見表明のシステムを書く必要がある」というご意見がありました。それに対して、行政の在り方と行政に携わる職員について、本県での取組として整理しました。また、公権力が人権を侵害することなく適正に機能するよう、協働の視点から情報の共有や意見表明の機会の確保について記述しています。

次に、23ページの環境と人権ですが、ここでは「廃棄物問題や自動車環境問題は地域的問題とは言えないのではないか」というご意見がございました。それに対しまして、環境問題の原因が多様化しているということと、様々な環境問題が、地球的規模の重大な問題として認識されてきているという記述に修正しております。

それから24ページになりますが、全体的には「取組」という方向の書き方に換えています。また、「個人情報の保護」と対極的にある「知る権利」との関係を整理するため、インターネットに関わる問題を個人情報の保護に関わる問題として統合して記述しております。

第4章については、項目が「人権施策の推進にあたって」ということでございましたが、「人権施策等の公表と基本方針の見直し」に変更しております。

また、「1 情報の収集と提供」では、「県民の意見を聴く機会をどう制度化・規格化するのか、検討する必要がある」というご意見がございまして、県民との協働の視点から、県民が意見表明しやすい条件整備を検討することを追加しております。

「2 施策の進行管理」では、「評価は、県民の満足度だけでは不十分であり、客観的な評価が必要」というご意見がございまして、適切な情報収集により、県民の様々な意見・評価を得ながら、施策の点検・評価を行い、施策に反映させることを記述をしております。以上でございます。

委 員 第3章、第4章につきまして、前回のご意見等を踏まえて、今の説明のとおり修正させて頂いておりますが、ご意見等ございましたら賜りたいと思います。
委 員

20ページの「情報と人権」のところで最初に読んだ時に気になったのは、「インターネットの急速な普及を背景に」というところなのです。ここで書かれているのは、インターネットを利用して、他を誹謗中傷するとか、差別するとかという人権侵害のことですが、もう一つ、インターネットを通じて情報が流出するという問題があるわけです。

それは、公共団体の情報だけではなくて、私企業の情報も、簡単に流出している。そうすると、情報と人権というところ、特に「個人情報の保護はプライバシー保護の観点から大事です」というところからすると、個人情報の流出ということの方が重要かなと思ったのです。個人情報がインターネット等を通じて容易に流出するという問題も触れておかないといけないと思うのですが、出てくるのは、その後の「個人情報保護法」のところで、「行政や企業に対して個人情報の適正な取扱を義務づけています」と、プロバイダー責任制限法の後に、少し出てくるだけです。

ここで「プロバイダー責任制限法を制定し、その防止への取組を行ってます。また、平成15年5月には「個人情報保護法」を制定・施行し・・」とするのならば、その前の「近年、インターネットの急速な普及を背景に」というところにも、「インターネット等を利用した個人情報の流出」が問題になっているということを書いても良いかなと思います。

特にインターネットだけではなくて、色々な形での個人情報の流出というのは、今、非常に問題になっているのです。最近の相談では、あるところの名簿が流出して、その名簿に載っている全員に、「借金があるから返せ」という葉書が送り付けられているというようなことがありました。インターネットに限らず、人の情報が色々な形で流出しているというのが、プライバシーの権利、情報と人権のところで、かなり問題になって来ている。その視点を、個人情報が色々な形で容易に流出しているということを少し入れておいて頂き、その下の個人情報保護法というところに繋げた方が分かりやすいと思いました。

委 員

他にご意見はありませんか。

次に、今後の進行予定について、事務局から説明をお願いできますか。本日のご意見を参考に検討して頂くことはもちろんですが、今後の全体的な審議会のスケジュールについて説明を頂けますか。

事務局

次回の審議会は、3月23日です。事務局としては、次回で、素案の中間取りまとめとし、それをもってパブリックコメントを行いたいと考えております。

もし、ご意見、色々な面でお気づきの点がありましたら、今後、小委員会で検討して頂く予定をしておりますので、2月20日までにお願いしたいと考えてございます。

委 員 パブリックコメントを実施した後の進め方はどうなのですか。
事務局 パブリックコメントは、4月の中旬以降に開始し、1か月間行うことになるかと思います。それで、出てきた意見を踏まえた上で、審議会を開催し、ご検討をお願いしたいと考えてございます。

委 員

ご審議を賜るようなことは以上ですが、事務局からご報告と言いますか、委員方のご意見を頂戴する意味で、報告するようなことがあるようです。その点について、おっしゃって頂けますか。
事務局

「人権に関する県民意識調査報告書 素案」についてでございます。10月1日の審議会に概略をお渡しさせて頂きましたが、ようやく素案を作成しましたので、お配りさせて頂きました。

もし、文言的に、またミスプリント等、お気づきのことがございましたら、2月20日までにご連絡を頂ければありがたいと思ってございます。

また、本日は、県民意識調査報告書の簡単な説明をさせて頂き、この位置づけについて、ご協議をお願いしたいと思ってございます。

それでは説明させて頂きます。

1ページ目、「調査の概要」と書いてございます。この調査の目的ですが、調査をする前にお諮りさせて頂きましたとおり、基本方針策定の参考資料にさせて頂くということと、今後の人権施策推進の参考資料として使わせて頂くということでございます。調査項目につきましては、お諮りしていますように行いました。

また、調査対象につきましては、前回も報告させて頂きましたけれども、地域を和歌山県全域とし、二十歳以上、3,000人を対象に無作為抽出で行いました。宛先は選挙人名簿から収集し、郵送により送付、また途中で督促をしております。

調査期間は、8月25日から9月8日までということで行いました。回収結果につきましては、3,000通を発送しましたが、住所等が不明で返ってきたものが45通ございます。それで、実発送数が2,955 通、回答数が1,641通ということですが、その中には11通の無回答の分がございましたので、有効回答数としましては、1,630通、回答率は 55.2%でございました。

2ページの居住地域別という部分ですが、これは、発送数3,000通の内訳、和歌山市は800通と、ある程度、人口割りに応じた送り方をさせて頂いたのですけれども、有効回答率の一番高かったのが那賀郡の59.6%、低かったのが、有田市、有田郡、あるいは田辺市、西牟婁郡の50.5%となってございます。

しかし、どの地域も50%以上の回答を頂きまして、予想よりは良い。 郵送にしては良かったと事務局は考えております。

この報告書の見方ですが、数値はパーセントで表示をしています。答えが一つの場合は100%、全体を100%、分母が1,630人分と考えて頂ければ良いのです。

けれども、(2)のところに書いていますが、これは、意味合いが読んで分かりにくいと思われますけれども、設問の中には、「3つ以内までの回答でお願いします。3つ以内で丸をつけて下さい」という設問がございました。1,630人、全員が3つずつ丸をした場合には、300%となるのですけれども、2つの方、1つの方もおられますので、その設問によって、全体のパーセンテージが変わってきます。だから、一つひとつの分母が1,630人分ということで、項目ごとに見て貰えればと思います。

(3)で書いているのは、設問とタイトルが、全く一緒ではない場合があるということ、簡略化して表示していることについて書いてございます。

3ページ目は、調査の精度、40~60%、あるいは 50%と出てきた時には、プラスマイナス2.4%ぐらいの誤差は出ます。ただし、その範囲以内で収まっているということで書いてございます。

5ページ目は、回答者の属性ということで、一つには、性別を上げてございます。この性別につきましては、男性42.5%、女性55.8%ということになってございます。無回答とあることにつきましては、回答を頂けなかった分でございます。

それから、年齢構成では、50歳代が22.2%で、一番良く返してくれました。20歳代、年齢の若い方が、少し低いかなという傾向が出てございます。

あるいは、3番目の職業につきましては、「無職、その他」という方が大体、半数近くでございました。居住地域では、和歌山市が25.9%とあるのですが、送った数も800通と、一番多く送っていますので、そういうような意味合いで見て頂きたいと思います。よって、全体の1,630の割り振りというふうに考えて頂ければと思います。今まで説明しました、「性別・年齢・職業・居住地域」の部分については、後の結果報告の中で、全部をクロス集計させて頂いています。

7ページから13ページまでの部分については、結果の概要です。それぞれの設問ごとの概要を書いてございます。概要ごとの一つの文章ごとに、ページ数と図の番号を参照と書いてございますので、照らしながら見て頂ければと思います。

15ページからは、調査結果ということで、表を載せてございます。先程、言いましたように、属性の部分については、一つひとつクロス集計しております。ただ、この調査については、分析までは踏み込まないということでございましたので、調査結果、クロス集計までで止めておりますので、ご了承、よろしくお願いしたいと思います。

それから、先程言いました活用でございますが、この基本方針案の中に記述している課題の認識や課題解決に向けての取組の方向が、県民意識調査の結果から得られた県民の意識とかけ離れたものになっていないかを確認する作業を事務局で行いました。その結論ですが、調査結果の「人権上、特に関心のあること」で、県民が人権問題と捉えている内容と、現在、作成中の方針案の課題として記述している内容との間には、認識の大きなずれは、特に見られませんでした。

それから調査結果の「人権を守るために必要なこと」で、県民が必要と考えている取組についても、方針案の基本的な取組として、概ね記述されています。事務局としては、特に修正する箇所はないかと考えておりますが、修正を要する、あるいは加筆を要する箇所等がございましたら、これも含めて2月20日までに事務局あて、文章あるいはFAXでご連絡を頂きたいと思います。また、その上で小委員会等でご検討をさせて頂くということを併せてご了承をお願いしたいと思います。以上でございます。

委 員 今の事務局の説明につきまして、ご質問等ございませんか。
委 員 「無職とその他」、「その他」というのは、何も書いていないのですか。無職でない人も、かなり「その他」に入っているのではないかと思うのです。
事務局 設問で、そうなっています。
委 員 「その他」があるわけですか。
事務局 「無職」と「その他」が一緒になっています。
委 員 そうですか、それは仕方がない。それから、分析はするのですか。
事務局 今回、初めてということでありましたし、時間の制約等もございまして、クロス集計までということです。
委 員 それは、分かっています。ただ、分析が必要な項目もかなりあるのではないですか。例えば、関心のある人権では、障害のある人の人権が1位となっている。なぜ、こうなるのだろうかということについて、分析ないし任意調査、追跡調査というようなものが必要ではないか。やはり、クロス集計だけでは、読む人が勝手に解釈するということになってしまう。
委 員 今後、色々な分野で分析も十分に検討していかなくてはいけないことは間違いないですね。
委 員 この報告書を見ても非常に分かりにくいのは、つまり同じ色になってしまっているので、どこで区切られているのかが分からないということです。その辺が分かるようにすべきである。例えば、どこかのグラフを見て、その数字を見れば、この辺に線があるのかなという予測はつくのだけれど、一見すると全部が一本の黒い線にしか見えない。しかし実際には、項目的には分かれているわけです。その辺の工夫が欲しいと思います。
事務局 このことにつきましては、色覚特性の人のことなども考えに入れ、もう少し、見やすくさせて頂きたいと思います。
委 員 どういう形で、何部ぐらい発行していくわけですか。
事務局 報告書につきましては、1,000部を作成します。また、研修等に使えるような概要版を作っていきたいと思ってございます。この概要版につきましては、10,000部を用意するつもりにしております。人権局あるいは関係部局、啓発センター、市町村、それから関係団体などに配布いたします。できるだけ活用したいと考えてございます。
委 員 従来、県の同和委員会が同和問題を中心にした意識調査を、5年ごとぐらいでやってきた。分析は片寄った形ではいけないということで非常に難しいのですが、分析を行って、それぞれのところに配布すると同時に、最後には県民の友などに、貴重な資料ということで、色々な形で活用しながら、県民の学習に資するようにということでやってきました。人権という形になって初めてのものだから、条例や基本方針とともに、十分な形での情報提供を考えていくということですね。その時には、これを使った分析が、一人歩きをしたり、あるいは、ある部分だけを都合のよいように利用されては困るので、是非、統一した形での使い方を考えておいて欲しいと思います。
委 員 同和委員会が作られた調査の最終は何年でしたか。
事務局 同和問題だけに関する意識調査が12年です。
委 員 そういう意味からすると、同和問題に関する意識調査と今回の調査の設問は、継続性のない形であり、ある部分においては利用できるようなこともあるかも分からないが、とにかく第1回目ということですね。
委 員 これを、県民や関連機関、然るべきところに流していく、そういうネットワークシステム作りをする中で、単に投げかけただけでなく、県民からフィードバックする、そういうことを吸い上げるというスタンスでやることは、今後の人権を展開する意味で良いと思います。そういったことで、かなり大変かも分かりませんが、それも含んで頂きたいと思います。
委 員 分析の仕方によっては、悪く言えば偏見を持ったような分析の仕方もあり得ますし、なかなか難しいと思います。
委 員 データを業者から貰っておかないと。つまり、これだけでは仕方がないですから。せっかく、貴重な調査を行っているわけですから。今後、色々な使い方をしていく際には、一定のチェックを入れないといけないけれども、使えるデータだと思いますので、それは保存なりしておかれた方が良いと思うのです。
委 員

利用の仕方や分析については、委員方のご意見を聴いていかなければならないと思いますが、こういう形で一般に配布するということで、考えておるようです。

この他にも委員方のご意見を伺うために、報告しておかないといけないことがありますか。

事務局

事務局ですが、よろしいですか。

資料5ですが、解説が必要な用語ということで、事務局で挙げさせて頂きました。ここに書いています二重丸で太字になっていますのが、事務局として、人権施策の説明に、特に必要と考えている用語でございます。一重丸の方は、説明しなくても良いのではないかと、今のところ考えている用語でございます。ここに挙げさせて頂きました用語は、全部で94個あるわけですが、その内、太字のものは、36個です。この36個でいかがかなと思うのですが、「やはりこの用語の説明はすべきだ」というご意見等を承りたいと思っています。

それから、4ページですが、他県の用語解説の状況を参考としてまとめたものです。丸印の付いているものが解説をしている用語です。

6ページから8ページは、実際に用語解説をするのであれば、こういう形になるということで付けさせて頂いております。

なお、今すぐにご意見を頂くというのもどうかと思いますので、先程と同じように2月20日までに事務局へFAX等でご連絡をお願いしたいと思います。

委 員 今、事務局から説明がありましたように、基本方針の終わりの方に、用語解説を付けて出そうということです。事務局が説明されたように、太字のものが36個です。その程度を考えておるようですが、委員が分野別に検討された結果、あるいはその内容に関して、これだけでは足らないということがございましたら、それも合わせて考えなければいけないのではないかということで、委員方のご意見を求めたいと思ったわけです。ただちにというわけにもいかないと思いますので、事務局から話がありましたように、分野別等の関係から、こういう用語の説明はしておく必要があるというお考えがありましたら、20日までにご意見をお寄せ願いたいと思います。
委 員 必要な用語ですが、子どもの人権ということで、「ひきこもり」とあります。ひきこもりの中には、不登校と言ってますが、和歌山県でも非常に不登校が多いということから、注目すべき言葉でありますので、ひきこもりと不登校という言葉で、民間でも使ってますので、是非とも「不登校」ということで入れて頂ければと思いますので、提案させて貰います。
委 員 各委員から、ご意見、ご質問等ございませんでしょうか。
委 員 文章の形はなるべく短い方が良い。長く書くと読んでくれないということがあります。なるべく短く記述するということに心がけながら、やって頂けたらと思います。
委 員 用語の説明文は、審議会に配って頂けるのですか。
委 員 これについては、最終的に3月の段階では、まとまったものとして提示して、委員方のご意見を求めるということに、当然なろうかと思います。今言われたのは、それ以前にということでしょうか。
委 員 用語解説を付けて討議しだすときりがないです。非常に時間がかかる。だから、例えば小委員会、事務局などの一定のグループに任せて、その人にやって貰うことしかないと思う。最終の審議会の前ぐらいに、各委員に送って、意見を聴く方法を取った方が良いと思う。1つするのに10分かかり、30個あるから300分、これで5時間かかることになりますから。
委 員 数は、あればある程良いです。ただ、それはできないから、用語集みたいなものとして、今後、別冊として、脇に置いて貰う形であればいいんですが。ここに載せられるのは、そうはいかないでしょうが。
委 員

用語集は、中間報告段階では必要ないのでは。最終的にあれば良いことなので、もう少し時間があるのではないか。

それから、パブリックコメント段階でも、必要ないわけです。そこでは用語集を検討して貰うわけではないですから。用語は、あくまでも理解のためですから、説明ができる場面があれば、説明したら良いわけです。最終的に、中身も一部、替わったりしているでしょうから。用語については、最終で良いのかなという感じがします。

委 員 でき上ったような形でお渡しするということですか。
委 員 最終版の時に付けるということがあれば良いわけです。
委 員 事務局としては、非常にありがたいお言葉ですね。
事務局 ありがたいご意見ですが、他府県では、パブリックコメントに用語解説を付けています。事務局としては、付けなくてはいけないかなと思い、進んで来ました。
委 員 ご質問があれば、そういうものを付けますと説明したら良いわけだし、実際、その場に皆さんが居るわけですから、ご質問があれば、それについてはこういう意味ですと伝えて頂ければ良いことだと思うのです。冊子として発刊する時には、あくまでも目的ですから、そこには付けなくてはいけないですが、内容も一部変更ということも起こるわけですから、ある程度、固まってからの方が良いのではという感じはします。そんなに急ぐ問題ではないと思います。
委 員 ありがたいご意見を頂きましたが、事務局でできる限り、形のあるもの、まとまったもので、委員方のご意見を伺えるように努力してくれますか。
事務局 はい。それから繰り返しますが、ご意見等がございましたら、20日までにお願いしたいと思います。
委 員

他に、各委員から今後の進め方等も含め、ご意見、ご質問等がございましたら、お聞かせ賜りたいと思います。

ございませんようでしたら、今日は、これで終わらせて頂きたいと思います。

本日は、大変ありがとうございました。

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