第12回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第12回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第12回和歌山県人権施策推進審議会
日 時 平成15年10月1日(水曜日) 13時~15時半
場 所 和歌山市 アバローム紀の国
議 題

(1)分野別施策の中間取りまとめについて
(2)その他

出席委員

稲垣委員 大畠委員 橘委員 谷口委員 月山委員 辻委員 都村委員
中川委員 中谷委員 中村委員 村田恭委員

配布資料

(1)『和歌山県人権施策基本方針分野別施策(修正案)』
(2)『基本方針分野別施策(中間案)に対する意見及びその対応』
(3)『小委員会所管事項の承認について(案)』
(4)『同和問題に関する実態把握のための実態調査について(案)』
(5)『「人権に関する県民意識調査」単純集計結果』

内 容

委 員

本日は、議題1として、「分野別施策の中間とりまとめについて」のご審議を賜りたいと思います。

なお、分野別施策につきましては、今後、総論との兼ね合いもありますが、一応、朗読させて頂き、本日で中間取りまとめということにしたいと思います。

また、議題2「その他」では、「小委員会所管事項の承認について」及び「同和問題に関する実態把握に対する意見について」のご審議を賜りたいと思います。

そのようなことで出来れば、分野別施策の中間取りまとめについての審議時間は、1時間半にさせて頂きたいと思います。非常に恐縮なお願いですけれども、ご了承頂きまして、実りのあるご審議を賜りたいと思います。

それでは、事務局から分野別施策修正案について、ご説明願います。

事務局

前回の審議会で出されましたご意見について、その後各分科会において協議がなされましたので、その概要をご説明させて頂きます。

まず、「女性の人権」と「高齢者の人権」についてですが、修正はありません。

次に、「障害者の人権」につきましては、「分離教育を推進するというふうな印象を受ける」という意見がありましたので、その部分に、特別支援教育についての記述を追加しています。

また、「社会的入院」につきましては、「社会的入院を無くしていくという方向性を打ち出すのであれば、出来るだけこの言葉を使わない方が良いのではないか」という意見がありましたが、精神障害者の社会的入院に対してようやく関心が向けられ、対策が始められたばかりであり、社会的入院という現実があるということを伝えることが重要であると考えるとともに、法律においても「社会的入院」という言葉を使って表現しているということもあり、この言葉はこのまま使用しています。

続きまして、「さまざまな人権」の構成につきましては、さまざまな人権として「一括りにする」、または、「それぞれを項目立てする」というご意見があったと思います。それにつきましては、やはり、さまざまな人権として、一括りにして記述していくという方向でございます。

次に、環境問題につきましては、この前の審議会では、「(1)総論部分で簡単に扱い、さまざまな人権からは削除する」、「(2)総論部分で一般論的な記述をし、さまざまな人権では、生活環境のように限定した形で記述する」、「(3)環境問題をきちんと扱うならば、かなりの記述が必要となる」とのご意見が出されました。このことを審議した結果、結局、総論部分で環境問題について記述するという、(1)のかたちをとらせて頂いております。よって、さまざまな人権から削除されています。

続いて、被疑者・被告人について、「人権侵害の状況については示されていない」、「記述は必要ではないのではないか」というご意見がありましたが、被疑者・被告人についての記述は残し、人権侵害の状況を追加しています。

それから、公権力による人権侵害につきましては、総論部分で記述することとし、「公権力による人権侵害(受刑者等)についての記述がない」ということにつきましては、「刑を終えて出所した人など」に含めて記述をしています。

また、その他の用語の説明につきましては、全体の骨子が完成した時点で、作成していきたいと考えてございます。

次に、子どもの人権の中での、「児童虐待への取組が非常に具体的であるが、書きすぎてしまうとそれだけかとなる」、「もう少し一般化した捉え方、打ち出し方は出来ないか」、「せっかく県が方向性を打ち出す以上は、ある程度具体化して実現するところに繋げる必要性がある」、「子どもをめぐる状況を象徴的に捉まえるには、児童虐待の問題を取り上げるのが、現状の分析ということで一番適切ではないか」、或いは、「児童虐待そのもの以外の子どもの色々な問題についてもこういうかたちで対応出来ますよということが見えない」、「これだけ取り上げてしまうということにならないか」というご意見につきましては、児童虐待の問題は、子どもの人権分野で特に大きなウエイトを占める問題であり、分科会としてはある程度重点化した考え方で作成しておりますので、原案どおりの項目立てとしてございます。

それから、虐待への対応としましては、専門機関による個別的なケアが求められる一方、未然防止の観点からは一般的な子育て支援の充実が不可欠でありますので、この点を文中に入れ、取組内容に少し幅を持たせています。

さらに、子どもの人権救済機関の設置につきましては、総論及び各分野との関連があるのですが、重要な取組であると考えています。

子どもの関係では、子どもの健全な成長を促す環境づくりのところで、少年非行への対応に更生保護の視点を入れて修正しています。

次に、同和問題につきましては、土地に対する差別ということで、「土地に対する差別、或いは、土地差別という言葉だけでは理解してもらえない。ある程度中身を説明した方が良いのでは」、「意図することがわかりにくい」、「土地の問題というのは、今まで、あまり触れられてこなかった。どのような表現にしていくか」、「土地差別とは土地の価格とかの現象を指しているのかと言えば、そうでもないような感じである。結婚、就職、土地と並列に並べる場合に、誤解が生じるのでは」、「現実に価値が下がるので、区画整理の時などに旧差別された地域と同じ町名になることを拒否するということがあるので、何らかの形で記述することは大切だと思う」というご意見を前回の審議会で頂いてございます。このことにつきましては、土地差別についての内容の説明を入れ、分かりやすくするということで、修正しています。

また、食生活等生活習慣の改善指導などにつきましても、「随分とお節介な話で、これこそ差別ではないかと思う」、「部落の人の食生活が劣悪だという誤解を招くことにもなる」というご意見がありましたけれども、誤解の生じないように修正しています。

次に、ハンセン病の表題の問題でございますが、表題を、「感染症(ハンセン病、HIV等)・難病患者等の人権」に修正しています。

また、「難病患者、家族に関する記述が少ない」というご意見につきましては、HIVに係る説明部分を整理し、難病について新たに書き加えています。

さらにHIVのところへ、母子感染に関する記述を入れています。

続きまして、外国人の人権につきましては、「人種差別撤廃条約の基本理念に立ち、国籍条項の撤廃に向けて積極的に施策を推進するという表現が弱い」、「現状を追認していくという感じが受け取れる」、「国籍よりも地球市民的考えを中心に地方自治を推進していく方が良い」というご意見を頂きまして、人種差別撤廃条約の理念の基に、外国人も同じ地域に暮らす住民として捉まえ、共生社会を築くことを基本として、全体を修正させて頂いてございます。

それから、外国人の難民の問題ですけれども、「難民の取扱がその国の人権方針の軽重を問われ、非常に重要な問題である」、「和歌山県としての意見を述べるべきである」、「国の問題であるので、県が取り扱うのは難しい」というご意見がありました。難民認定については、国レベルの問題と考えますが、地方においては難民登録された人も同じ地域に暮らす住民であるとの視点で捉えるべきと考え、ニューカマーの一部として現状と課題に記述してございます。

また、外国人の参政権の問題につきましては、「参政権は基本的人権である」、「国政の参政権は難しい問題であるが、県だけでも条例をつくればできる問題である。」、「敢えて落とすのは感覚的にも大問題である」というご意見がありました。このことにつきましては、地方参政権を広義な意味で捉え、現状と課題の中で提起するとともに、取組に地方自治への参画として追加記述をしています。

次に、犯罪被害者とその家族の人権につきましては、「具体的なことも付け加え、もう少し詳しく書きたい」、「今後も大きく取り上げる問題である」、「未然に防止する方策も必要である」というご意見を頂きました。犯罪被害者は基本的人権の尊重という観点から支援されるべきとの考えにより、全体をより具体的に修正しています。

そして、現状と課題の中にプライバシーの侵害を、重大犯罪の未然防止措置を取組に追加しています。

また、マスコミ報道の被害抑止効果につきましては、被害者の人権という観点からの問題ではないと考えられますで、取組から削除しています。

次にトラウマとPTSDにつきましては、深刻な精神的被害としての言葉として記述は必要ということで、語句の意味が分かりやすいように修正して記述しています。 なお、語句説明は必要と考えてございます。

同じく毒物混入事件も和歌山県で起きた深刻な精神的被害の実例として必要と考え、現状と課題に記述しています。

以上でございます。

委 員 前回の審議会で頂いた各委員のご意見を、ただ今のご説明のとおり、修正をさせて頂いております。これから修正案を朗読させて頂きますから、ご聴取のほどよろしくお願いいたします。
事務局

それでは、女性の人権から朗読させて頂きます。

女性の人権

(1)現状と課題

日本国憲法はその第14条において「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定め、性別による差別を禁止しています。

私たちは、男性であること或いは女性であることを理由として、自らの能力や個性を制限されたり否定されたりすることなく、自らの意思で社会のあらゆる分野での活動に参画し、その能力を自分のため、または社会のために発揮することのできる機会を持ちます。

昭和54年に国連において採択された「女性差別撤廃条約」では、女性に対する差別が依然として存在していることを指摘した上で、男女の固定的な性別役割分担の変更や男女がともに育児に責任を負うことなどを求めています。特に、固定的な性別役割分担意識や制度のもとで、女性の政策・方針の決定過程への参画が妨げられる、就職や職場において男女間に格差がある、育児や介護の負担が女性にかかるなどの課題があります。

また、ドメスティック・バイオレンス(夫やパートナーからの暴力)、セクシュアル・ハラスメント(性的いやがらせ)、性犯罪、売買春、ストーカー行為などの女性に対する精神的暴力や身体的暴力は、重大な人権侵害です。

さらに、男女が互いの性を尊重し、妊娠や出産をはじめとする性や生殖についてそれぞれの意思を尊重することは男女共同参画の上で重要です。しかし、望まない妊娠や性感染症などの女性の性と生殖に関する権利に対する問題が明らかになってきました。

本県では、平成14年4月に「和歌山県男女共同参画推進条例」を施行し、男女共同参画のための基本理念を定めるとともに、平成15年3月には男女共同参画を総合的・計画的に推進するために「和歌山県男女共同参画基本計画」を策定し、男女の人権が尊重されるふるさとの実現を目指しています。

(2)基本的方向

性別にかかわりなく、女性の人権と尊厳が重んじられ、差別的な取扱を受けず、個人として能力を発揮する機会が確保される社会を実現するためには、女性の社会における活動を制約することがないよう配慮していく必要があります。

和歌山県では「男女共同参画基本計画」の下、男女共同参画社会や人権について啓発や教育を進めるとともに、政策・方針決定過程や働く場、家庭における男女共同参画を推進することで、新しいふるさとづくりを推進します。

女性に対する精神的暴力や身体的暴力は重大な人権侵害です。女性に対する暴力の根絶に向け、相談支援体制の充実を図るとともに、積極的、厳正な対応をしていきます。また、女性の直面するライフサイクル上のさまざまな課題に対する取組を推進します。

(3)基本的なとりくみ

ア 新しいふるさとづくりへの男女共同参画の推進

(1) 家庭や地域、仕事の場などのあらゆる分野で、性別にかかわらず、それぞれの個性と能力を発揮し、互いに支え合う社会づくりを進めます。

男女共同参画への取組を通じ、一人ひとりの人権が尊重され、安心して生き生きと暮らすことのできる新しいふるさとの実現を目指します。

(2) 農林水産業や商工業において、女性は、地域活動や生産・経営活動の中で男性とともに責任や役割を果たしています。しかし、その責任や役割に見合った適正な評価が十分になされていません。地域活動や生産・経営活動における方針決定へ女性が参画できる環境づくりを推進します。

イ 政策・方針決定過程での男女共同参画の促進

(1) 県の設置する審議会等への女性委員の登用が進むよう取組を図ります。また、女性職員の採用・登用等に努め、県の政策・方針決定過程への女性の参画を促し、女性の意見を政策に反映しやすくします。

(2) 県は身近な政策を決定する立場にある市町村の審議会等の政策・決定過程への女性の登用が進むよう、市町村に協力を依頼するとともに、市町村の政策・方針決定過程への男女共同参画の取組を支援します。また、民間企業・団体等の方針決定過程への男女共同参画を促進するために、女性が能力を発揮しやすい環境づくりのための情報提供や啓発を行います。

ウ 男女共同参画に向けての社会的気運の醸成

(1) 男女共同参画に向けての環境を整えるために、必要な取組を把握するために、調査、研究し、その成果を県及び市町村の施策へ反映できるよう努めます。

(2) 男女共同参画について、県民が身近な問題として捉えることができるように広報・啓発活動を進めるとともに、女性の人権に関する相談体制を充実させ、一人ひとりが自らの個性と能力を発揮し社会参画できるための支援に努めます。

エ 働く場での男女共同参画の推進

(1) 雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保を図るために、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるという「男女雇用機会均等法」の基本理念について労働者、事業者双方に周知するとともに、国の関係機関等と連携しながら雇用実態の把握に努めます。

(2) 能力開発や再就職のための職業訓練や相談への対応を通して、性別にかかわらず能力開発ができるよう支援に努めます。また、女性が妊娠・出産を理由に不利益を被らないよう啓発活動や相談体制の整備を図ります。

(3) セクシュアル・ハラスメントのない安心して働くことのできる職場づくりに向けて、啓発や防止に向けた取組を行います。また、県が県内企業のモデルとなるよう職員に対する研修を実施するなど、率先した取組を進めます。

(4) さまざまなライフスタイルや就業ニーズに対応するため、情報技術等を利用した新しい就業環境の整備の促進や新しい就業形態の発展を促すための施策の充実に努めます。

オ 仕事と家庭の両立支援

(1) ライフスタイルが多様化し女性の社会進出が進む中で、家庭生活における責任の多くが依然として女性のみにより担われています。今後は、男性のこれまでの働き方を含め、家庭活動の重要性について改めて考える必要があります。男女がともに、子育てや介護に家族としての責任を果たしながら、働き続けることのできる環境を整えます。

(2) 家庭、職場、地域、学校等が互いに協力しながら、子どもを産み育てやすくするため、保育サービスの質、内容の充実やファミリーサポートセンターの設置、子育て相談など子育て支援策を積極的に進めていきます。

また、育児・介護休業法の周知を図り、労働者が育児・介護休業を取得しやすく復帰しやすい職場づくりや、仕事と子育て・介護を両立しやすくする各種制度の普及・充実に向けた取組を行います。

カ 男性の女性に対するあらゆる暴力的行為の根絶

(1) 男性の女性に対するあらゆる暴力的行為の根絶のために、相談窓口の機能強化や相談機関の連携を強化するなど相談体制の充実を図るとともに、暴力行為への法に基づく厳正な対応、被害者である女性の保護や自立支援を行います。

(2) セクシュアル・ハラスメント防止対策とともに、企業・学校・地域社会を含め、あらゆる機会にセクシュアル・ハラスメントが女性に対する人権侵害であることの啓発を行います。

(3) 性犯罪やストーカー行為などの発生を防ぐ環境づくりと被害者である女性への配慮ある対応を強化し、性犯罪対策を推進します。

(4) 男性の女性に対するの暴力を助長したり、連想させる表現や過度の性的な表現が各種メディアに多く存在するなか、これらの表現が女性の人権を侵害したり、侵害するおそれのあることを周知・啓発します。

キ 男女が互いの性を尊重する意識づくり・健康づくり

(1) 男女互いの性が尊重され、妊娠・出産をはじめ性と生殖に関し、男女それぞれの意見が尊重されることの大切さを啓発するとともに、学童期から妊娠や出産など性についての正しい知識の普及を図ります。

(2) 女性はその生涯にわたり妊娠・出産など男性とは異なる健康上の課題に直面します。女性の健康をめぐるさまざまな問題について、相談体制を整備するとともに、女性の生涯にわたる健康支援を行います。

ク 男女共同参画推進のための教育の充実

(1) 男女共同参画社会が生活の中に定着するためには、女性の人権が正しく認識されなければなりません。学校、家庭、地域における教育や学習の役割は重要です。学校においては、人権の尊重や男女平等についての教育の充実を図るとともに、学校内の慣行を男女平等の視点から見直します。

親や親になろうとする人が男女平等の視点に立った家庭教育を進めることができるよう学習の場を設けます。また、教職員に対する研修等を行います。

(2) 男女共同参画の視点で行動することのできるよう、学習機会の提供に努めるとともに、女性の能力を開発するための支援に努めます。

2 子どもの人権

(1)現状と課題

わが国では、昭和22年(1947年)に児童福祉法、昭和26年(1951年)には「児童憲章」が制定され、すべての子どもの幸福を図るために児童福祉施策が進められてきました。しかし永らく、子どもは未熟な存在であり保護されるべき客体にすぎないと考えられてきました。

平成6年(1994年)「児童の権利に関する条約」が批准され、子どもも大人と同じ権利の行使主体であると同時に成長を保障されるべき権利を有すること、そのために必要かつ重要な子どもの最善の利益を確保するため、子どもには意見表明権があることが明らかにされました。

こうした中、県でも「喜の国エンゼルプラン」や「わかやま青少年プラン」などを策定し、子どもが尊重され、健やかに生まれ育つため育成環境の整備・支援等のさまざまな施策に取り組んできました。

しかしながら子どもを取り巻く環境は依然として厳しく、子どもの人権が十分に保障されているとは言い難い状況にあります。例えば、平成3年度に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談処理件数は1,171件でしたが、平成13年度は23,274件と10年間で約20倍にまで増加しています。県においても児童虐待の増加は大きな問題となっており、「児童虐待の防止等に関する法律」が施行された平成12年度の県内の児童虐待の相談処理件数は一挙に前年度の約2倍の160件にのぼり、依然として現在も深刻な状況にあります。

その社会的背景としては、核家族化の進行など家庭環境の変化や地域社会のつながりの希薄化などが挙げられ、子育て家庭が親族の援助を受けられなかったり地域から孤立することによって子育てへの不安や負担が大きくなっていること、経済的不安定や離婚などにより家庭そのものが崩壊したり親のストレスが増加するなどさまざまな要因が考えられます。一方被虐待経験が少年非行などの問題行動や将来の虐待行動につながる例も少なくないと言われており、児童虐待への取組は重要な課題の一つです。

また、近年少年非行についてもさまざまな議論がなされています。少年非行を起こす子どもについては、育ってきた環境や抱えている問題はさまざまであり一様に捉えることはできませんが、全体的な特徴として規範意識や人とのコミュニケーション能力が低く、感情や行動をコントロールする力が弱いことが指摘されています。また、自己評価が低く人との愛着関係の形成に支障が生じていることがうかがわれ、これらが相互に関係しながら社会への不適応に繋がっているという考え方もあり、子どもの人権という観点からもこの問題を捉えていく必要があります。

さらに、インターネットや携帯電話等の普及と利用者の拡大に伴った児童買春等性的搾取の急増、シンナー・薬物濫用のまん延、学校への不登校、体罰・いじめ、「学級崩壊」といわれる現象やひきこもりなど、子どもの人権を侵害する問題はさまざまな形で現れています。

他方、家庭や地域、学校、また行政の取組において、子どもの意見表明権を含む子どもの参加の権利を認め、尊重するという意識は未だ不十分な状況です。子どもは大人と同じく現在の社会を構成する一員であるのは勿論のこと、さらに環境問題をはじめ私たちの暮らしに大きな影響を及ぼす社会問題の多くは、その解決を、次代を担う子どもたちに委ねなければならない状況にあります。従って子どもたちの意見を、行政の諸分野においてどのように受けとめ対応していくかも課題の一つです。

(2)基本的方向

子どもも大人と同じ人権の享有主体であり、一人の市民として尊重されなければならないことを当然の前提とし、すべての子どもの人権が保障されるとともに、子どもが自分に関わるあらゆることに関し自らの意見を表明し、参加する権利が尊重される社会環境づくりを進めます。

また、すべての子どもが性別、国籍、障害の有無、生まれた環境等にかかわらず、自らをかけがえのない存在であると実感でき、自分の人権の大切さを知ることによってこそ、他者の命の尊さや他人の人権を侵害してはならないという意識をもつことができるのだという認識のもと、子どもの人権についての教育・啓発を進め、子どもが主体性を持って健やかに成長していけるよう、発達段階に応じた総合的な支援を図ります。

そして子どもの人権が侵害された場合には、速やかにその救済を図り、子どもや家族の支援に努めます。

(3)基本的なとりくみ

ア 児童虐待などへの取組

児童虐待の問題に対しては、専門機関等による個々のケースに応じたきめ細やかな支援をより効果的に実施していきます。また、児童虐待の未然防止のためには、育児負担の軽減や育児の孤立化を防ぐことが重要であることなどからも、家庭や地域、学校等のさまざまな場における子育て支援・健全育成施策を推進し、総合的にこの問題の解決を図ります。

(1) 児童虐待に対しては児童福祉法及び平成12年(2000年)施行の「児童虐待の防止等に関する法律」により、児童相談所が救済機関として対応しています。前記のように虐待件数が増加していることなどから、児童福祉司・心理判定員など児童相談所における専門職員の充実を図り、児童虐待の早期発見と救済及び保護者へのカウンセリングの充実による児童虐待の防止に努めます。

また保健・医療・教育・警察など関係機関の連携を強化し、市町村等子どもに身近な地域での児童虐待防止ネットワークづくりを進め、未然防止、早期発見・早期対応に努めます。

(2) 児童虐待や家庭崩壊の増加に伴い、児童養護施設に入所する子どもの数が増加しつつあることから、児童養護施設への心理療法担当職員の配置など職員体制の充実や、プライバシーに配慮した生活空間の確保、各施設で起きた人権問題や苦情に対応するための施設内第三者機関の設置、自立支援など児童養護施設における子どもの人権の尊重に努めます。

(3) 児童虐待などにより、親と暮らすことのできない子どもが家庭環境の中で個別的かつきめ細やかな養育を受けられる点において効果的かつ重要な制度である里親制度の普及、啓発を図ります。

イ 子育てしやすい環境づくり

乳幼児期は、母親や父親など特定の人に対し、人間への基本的信頼関係と愛の感情を育てていく基礎となる強い愛着関係を形成するとともに、複数の人々との関わりを通じて情緒を発達させ人格を形成していく時期であり、この時期における子育てしやすい環境づくりに取り組みます。

(1) 育児に不安や悩みを持つ親が増えていることから、親子が集う場の確保、子育てボランティアや子育てサークル活動の促進など、地域全体で子育てを支援する環境づくりを推進するとともに、子育てに関するさまざまな情報の提供を図ります。また各種相談機関の機能を強化させ、個々の相談により的確に応じる体制の充実を図ります。

(2) 多様な保育サービスの充実や、会員間で相互援助を行うファミリーサポートセンターの整備など、育児と仕事の両立への支援を図ります。

(3) 休日夜間急患センターにおける小児科の診療体制の充実や、小児科医が24時間常駐する病院の確保など、小児救急医療体制の整備を進めます。

(4) 企業の育児休業制度整備や看護休暇制度導入等、職場環境の整備を進め、労使とも子育て中の人を支援することを積極的に取り組む施策を推進しま す。

ウ 子どもの健全な成長を促す環境づくりと子どもの人権についての教育・啓 発

学童期は後の成長の基礎となる多様な知識経験を蓄積する時期であり、また他の人との相互関係の中で社会性を身につけていきます。思春期は子ども期からさらに大人に成長していく移行期であり、自分らしさを模索する時期でもあります。そのため子どもたちが主体性を持って健やかに成長していける環境づくりに取り組みます。

(1) 学校や地域において、子どもの意見表明権と参加の権利が尊重されるよう教職員、民生児童委員はもちろんのこと、県民に対し「児童の権利に関する条約」など子どもの人権についての教育・啓発活動を行います。

(2) 校内暴力やいじめ、不登校、ひきこもりなどの解決やシンナー・薬物依存等の防止・救済のため、学校へのスクールカウンセラー等の配置を進め、また電話相談等による教育相談体制の充実を図ります。

(3) 子どもが命の大切さ、それぞれの個性の尊重及び自分と他人の人権の重要性について十分理解できるよう人権教育を充実させるとともに、一人ひとりの子どもが基礎的な知識・学力を修得できるよう少人数学級制など学校教育における人的物的条件の整備に努めます。

(4) 「遊び」は、子どもが他者とのかかわりや人間関係を学ぶ場であると同時に、「遊び」を通して自ら考える力や身体的能力を高める場でもあります。そこで地域の児童館、社会教育施設、学校施設等の活用などにより、子どもがのびのび遊べる場や交流の場の充実を図ります。

(5) 児童買春・性的いたずら等を含め、犯罪被害を受けた子どもと家族の悩みや問題に対して、警察における少年問題に関する専門組織である「少年サポートセンター」や、学校、児童相談所等関係機関が連携し支援活動を進めるとともに、こうした犯罪の防止に努めます。

(6) 図書、ビデオ、インターネット等による有害情報などから子どもを守るため、関係機関等による環境浄化の取組を一層強化し、非行が芽生えない環境づくりを推進します。また、非行に陥ってしまった子どもに対しては、社会適応能力を高め、社会的自立を果たすため、本人や家族への支援に努めるとともに、このような子ども達の更生が図られる社会意識の醸成に努めます。

エ 子どもの人権救済機関の設置

子どもの人権が侵害された場合、被害者である子ども自身は自ら必要な対応をとることが困難で、どこに相談すればよいのかさえわからないことが少なくありません。

そこで被害者である子ども自身や親、関係者からの被害相談・通告を受け、調査や子どもの人権救済のための活動を行うことができる第三者機関の設置が必要となり、関係機関と連携した迅速な対応に努めます。

3 高齢者の人権

(1)現状と課題

わが国は、平均寿命80年という世界最長寿国となる一方、出生率の低下による少子化傾向も加わり、人口の高齢化は急速に進行し、本格的な少子・高齢社会

を迎えようとしています。

本県における高齢者比率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は、平成5年には16.5%でしたが、平成15年には22.3%へと上昇し、全国的には15番目と、やや高い位置を占め、全国との差は拡大傾向にあります。特に山間過疎地域において高齢化率は高くなっています。今後も高齢化は進むことが予測され、平成19年には約4人に1人が高齢者になると見込まれます。

超高齢化社会を迎える中、高齢者を一括りにした偏見や固定観念、年齢制限等による就業機会の不足や、年齢を重ねることによる高齢者自身の身体的・精神的変化などにより、高齢者の経済的な自立や社会参加が困難となる場合があります。

また、家族の介護力の低下や介護期間の長期化の傾向もあり、介護を必要とする高齢者を抱える家族の心身の負担は、重くなりつつあります。加えて、高齢者に対する虐待や介護放棄、財産・金銭面での権利侵害などの問題も提起されています。

高齢者の方々がもつ豊富な経験と知識が社会の貴重な財産として活かされ、すべての高齢者が社会を構成する一員として尊重されることが大切です。

本県においては、いつまでも健康で長寿を喜びあえる社会、誰もが住んでみたい活力ある和歌山県の実現を目指して「わかやま長寿プラン2003」を策定し、高齢者保健・福祉の向上や介護保険制度の円滑な実施を図っています。

今後も、高齢者が住み慣れた地域で生きがいを持ち、優れた知識・経験等を活かして社会参加し、安心して自立した生活を送ることができる社会づくりを進めていく必要があります。

(2)基本的方向

高齢者の人権を確立するためには、人を年齢で決めつけることなく一人ひとりの多様性を認め合い、すべての人が健康状態や年齢に関わらず社会を構成する一員として尊重されることが重要です。

また、高齢者が培ってきた貴重な経験や知識を活かすことにより、社会に貢献できる立場にあるということについて、高齢者自身の理解が深まるよう広報啓発に努めるとともに、高齢者が家庭・地域・職場等の日常生活において、存在感、充実感を得られるような取り組みが必要です。

さらに、手助けが必要となった状態であっても人としての誇りを保持し、適切な介護サービスを受けられるなど、地域で安心して暮らし続けられるように、地域のみんなで支え合う体制づくりをNPO・ボランティア団体と連携しながら進めていく必要もあります。

このため、高齢者の人権尊重と意識の啓発、世代間の理解の促進、生きがいや自立に通じる就労の機会の確保、ボランティア活動等の地域社会活動への参加促進等、総合的に諸施策を推進します。

また、介護サービスの充実、十分な情報提供と相談体制の確立、権利擁護制度の活用などを推進し、高齢者の人権に配慮した自立支援を促進します。

(3)基本的なとりくみ

ア 高齢者の人権尊重と意識の啓発

(1) 高齢者の人権に対する理解と長寿社会への対応について県民の関心を高めるため、さまざまな機会を通じて広報啓発に努めます。

(2) 高齢者は生き生きと暮らし、社会に貢献することを望まれているため、老人クラブ等における人権学習や啓発活動への取り組みを推進し、高齢者自身の人権意識の高揚を図ります。

イ 世代間の理解の促進多くの人生経験を積んだ高齢者と接することは、特に人格形成期の子ども達の成長過程や環境を豊かにします。子どもの頃から、学校や家庭の中で、高齢者を家族や社会の大切な一員として理解し、敬愛する気持ちを育てることが大切です。そのため、高齢者への理解を深める副読本を作成し、学校授業での活用を進めます。さらに、課外活動を通して地域における世代間の交流活動を促進します。

ウ 高齢者の人権を尊重したサービスの推進

高齢者福祉施設や介護サービス提供事業所で働く人たちは、専門的な知識や技術とあわせて、高い倫理観が必要です。そのため、高齢者の人権尊重やプライバシーの保護についての研修を積極的に行うよう指導する等、社会福祉士や介護福祉士、ホームヘルパー等の資質の向上を図ります。また、施設においては、入居者のプライバシーに配慮したサービスの向上と個室化を中心とした居住環境の整備を促進します。

エ 十分な情報提供と相談体制の充実

高齢者とその家族がいつでも必要な時に、適切なサービスを選択できるように、介護保険やその他の高齢者保健福祉サービスのわかりやすい情報提供に努めます。

また、当事者間では解決困難な福祉サービスに関する苦情等に対しても、相談、調査、あっせん等を行う体制を整備し、適切な苦情解決体制の充実を図ります。

オ 痴呆性高齢者に対する総合的な施策の推進

(1) 判断能力が不十分なことにより日常生活に不安のある高齢者の生活を支援するため、福祉サービスの利用援助や金銭管理の援助等の地域福祉権利擁護事業を推進するとともに、成年後見制度の利用を促進し、地域で自立した生活を送れるよう支援します。

(2) 痴呆に対する正しい理解を促進するとともに、適切な介護についての知識や技術の普及啓発に努めます。

(3) 痴呆性高齢者が、家庭的な環境の中で、より安心して生活できるグループホームの整備を促進します。

カ 高齢者の生きがい対策の推進

(1) 生涯学習を通じて得た知識や技能を意欲や能力に応じて地域社会に活かせるように、ボランティア活動への参加を促進します。

(2) 高齢者が長年培ってきた豊富な知識や経験、能力を活かした就労機会を提供するため、シルバー人材センターの拡充を促進します。

キ 高齢者を介護する家族への配慮

高齢者の虐待につながりやすい状況として、介護による身体的・精神的苦痛やストレス、不安などが報告されています。高齢者を介護する家族が過重な負担を強いられることのないよう、介護保険、その他の高齢者保健福祉サービスの利用促進を図るとともに、家族介護支援対策を推進し、家族や社会全体で高齢者の介護を支え合える環境づくりを進めます。

ク 地域ケア体制の構築とボランティア等による取り組みの促進

高齢者が安心して住み慣れた地域で暮らすことができるように、地域住民やNPO・ボランティア団体の自主的な活動を促進し、地域全体で高齢者を支える取り組みを推進します。また、地域の多様なケア機関をネットワーク化し、必要な情報の共有を図り、高齢者や家族への効果的なサービスの提供を促進します。

4 障害者の人権

(1)現状と課題

障害者の「完全参加と平等」をテーマとした昭和56年の「国際障害者年」や、昭和57年から平成3年における「国連障害者の10年」などの取組を通じて、障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通に生活が送れるような条件を整え、共に生きる社会こそがノーマルな社会であるという「ノーマライゼーション」の理念が次第に定着しつつあります。

わが国においても、「ノーマライゼーション」と「リハビリテーション」の理念のもと、取組が行われてきました。

平成5年に「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正され、精神障害者も、福祉施策の対象としての「障害者」と定義づけられ、障害者基本法の対象となりました。平成12年に、新たに「社会福祉法」が公布されるとともに、「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」、「児童福祉法」が改正されました。これにより福祉ニーズを持つ国民は、福祉サービスを選択することができることとなり、サービス利用者と提供者が対等の立場に立ったサービス利用システムが確立されました。同時に、地域福祉の計画的推進を図ることを目的とした社会福祉基礎構造の改革がスタートしました。これを受けて、平成14年12月には、障害者の社会参加に向けた施策の一層の推進を図るため「障害者基本計画」が策定されました。

本県では、平成6年3月に「紀の国障害者プラン」を、平成10年3月に「紀の国障害者プラン実施計画」を策定しました。この計画に基づき障害者にかかわる啓発・広報活動を展開するとともに、市町村や関係諸機関と連携し、障害者の地域社会での生活支援、教育及び療養の充実、障害者雇用の促進、障害者が生活しやすいまちづくりの推進など、障害者の社会参加と自立に向けた施策を進めてきました。

しかし、現状では、建物の段差等があり自由に移動することができない、生活情報などを十分に入手できない、働く場が少ないなどさまざまな障壁があります。障害者や障害そのものに対する誤った認識や偏見によるこころの障壁も残っています。このようなさまざまな障壁が、障害者の就労や文化活動、地域社会への参加などを困難なものとしています。また、福祉施設や医療機関において、身体拘束や虐待・暴力などの重大な人権侵害や、障害者の財産権を侵すような事例も発生しています。

とりわけ、精神障害者については、社会からの偏見や差別が根強く、また精神科病院における閉鎖的な処遇環境の下で人権侵害事例が生じてきました。現在、特に精神障害者の人権に配慮した適切な施策が求められています。

障害者は自立した主体的存在です、このことが損なわれることのないよう、障害者の人権施策を進めていく必要があります。

(2)基本的方向

障害者の社会への「完全参加と平等」の実現のため、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもと、障害のある人もない人も、すべての人がお互いの人格と個性を尊重し、支え合いながら共に生活できる社会を実現する必要があります。

しかし、社会の中のさまざまな障壁が障害者の社会参加と自立を阻んでいます。地域や日常生活における障壁のバリアフリー化や、障害者に対するこころのバリアフリー化を進めていきます。また、障害者が地域の中で自立し安心した生活を送ることができるように、在宅サービスや保健・医療体制の充実、権利擁護を図ります。

また、教育を通じ障害児一人ひとりの能力や個性、可能性を伸ばしていくとともに、職域の拡大や職業訓練などにより雇用・就労対策を図り、障害者の自立や社会参加を促進します。

精神障害者については、社会参加と自立を図るため社会的入院の退院促進や生活支援などを行うとともに、入院患者の人権擁護と安全で快適な入院生活を確保していきます。

(3)基本的なとりくみ

ア こころのバリアフリー化の推進

(1) 啓発・広報活動の推進

すべての人が相互に人権を尊重し、支え合う共生社会の実現に向け、県民が障害者や障害そのものに対する理解を深められるよう、啓発・広報活動を推進します。また、障害者と地域住民が相互に交流できる機会の拡大に努め、相互理解が進むよう取組を図ります。

(2) スポーツ、文化芸術活動の振興

障害のある人もない人も、スポーツや文化活動を通じて、相互に交流できる機会の拡大に努め、相互理解を促進します。

(3) 福祉教育等の推進

障害者に対する理解と認識を深めるために、学校教育や社会教育において啓発活動を進めるとともに、積極的な相互交流を図ります。

イ 社会参加の促進と能力発揮支援

(1) 教育の推進

特殊教育から特別支援教育への移行を進め、学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症も含め、障害児がその持てる能力を発揮し、将来、社会的・職業的に自立した生活を営むことができるよう、一人ひとりのニーズを的確に把握し、それをもとに適切な支援教育を行います。

障害の重度・重複化、多様化の状況や、それぞれの地域特性を踏まえ、障害児の多様なニーズに応えるため、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談・支援を行う体制整備の充実を図る必要があります。盲・ろう・養護学校などの専門機関が地域の障害児教育のセンター的な役割を果たすことのできるよう体制の整備を図ります。

また、地域における学校卒業後の学習機会の充実のため、生涯学習を支援していきます。

(2) 雇用・就労対策の推進

雇用・就労は、障害者の自立と社会参加のためにも、また自己実現を図るためにも重要です。障害者の職域の拡大及び職業訓練の充実を図るとともに、民間企業への就労を支援するため、就職促進相談員を配置し、必要に応じ職場定着のための相談援助を実施します。

また、就業面と生活面の一体的な支援を行い障害者の雇用を推進します。一方、一般就労が困難な人に対しては、授産施設等の福祉的就労の場や第3セクター方式による重度障害者雇用の場の確保に努めます。

企業等において障害を理由とした雇用差別など人権侵害を受けることがないように努めるとともに、法定雇用率の達成を図ります。

(3) 生活環境の整備

「和歌山県福祉のまちづくり条例」に基づき、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など社会全体のバリアフリー化を進め、すべての人が安心して利用できる環境整備や移動支援を進めます。

障害者一人ひとりのニーズに対応した適切な設備・仕様を有する障害者向けの公共賃貸住宅の供給を図るとともに、バリアフリー化された住宅ストックの形成、住宅のバリアフリー化に対する助成を実施します。

(4) 情報のバリアフリー化の推進

新しい情報技術等を利用した情報のバリアフリー化を推進し、コミュニケーション支援体制の充実を図ります。

ウ 障害者の主体性の尊重及び地域での自立生活支援

(1) 権利擁護の推進

障害者やその家族からの財産・権利などにかかわる問題について弁護士等が対応する「ハートフル110番」など人権擁護のための相談体制の充実を図ります。障害者一人ひとりの権利が守られ、安心して日常生活を送れるよう地域福祉権利擁護事業や成年後見制度の利用促進に努めます。

また、障害者のプライバシーの保護や自己決定権の尊重など利用者本位の考え方にたった福祉サービスが提供されるよう、福祉サービスの評価制度の整備などを通し福祉サービスの質の向上に努めるとともに、福祉サービスに関する苦情解決システムを確立します。

(2) 在宅サービス等の充実

障害者を取りまくさまざまな障壁を取り除くためには、障害者が住み慣れた地域で自立して、地域の人々とともに生活することが重要です。

障害者が住み慣れた地域で生活できるようグループホームや福祉ホーム等の整備、在宅サービス事業などの充実を図ります。あわせて身近な相談支援体制の整備や利用者本位の生活支援体制の整備を図ります。

(3) 障害者施設サービス事業の推進

施設の整備においては、地域的なバランスに配慮しながら、障害者のニーズに対応した必要な施設の整備を図っていくとともに、施設におけるプライバシーの確保、生活の質(QOL)を高めるための整備を図ります。

(4) 保健・医療体制の整備

障害の早期発見や治療、リハビリテーションにより、障害者に対する適切な保健サービスを提供を進めます。また、保健・医療分野との連携による取組を進めます。

エ 精神障害者に対する自立の支援と社会参加等の促進

(1) 啓発・広報活動の推進

精神障害者に対する誤解や偏見が、精神障害者の社会での自立や就労などを妨げています。精神障害者や障害について正しい知識の普及・啓発を行うとともに、ボランティア活動などを支援することにより交流の場づくりを図ります。

(2) 人権擁護の確保

県内のすべての精神科病院に人権擁護委員会を設置し、入院している精神障害者の人権擁護と安全で快適な入院生活を確保していきます。また、精神障害者やその家族、或いは弁護士等病院外の委員の参加により、人権擁護委員会の透明性の確保を推進します。

(3) 社会参加の促進

精神障害者の入院治療については、人権尊重を基本とした適正な医療の提供と、施設における処遇の向上に努めます。また、社会的入院者の退院と地域社会での生活支援を促進し、精神障害者の自立と社会参加への支援を進めます。

(4) 自立生活支援の推進

退院後、地域において生活する精神障害者をより身近な地域できめ細かく支援していく必要があります。保健所、市町村、福祉機関、医療機関など関係機関が連携し、相談や訪問指導などを行います。また、社会復帰施設へのあっせん、調整、在宅福祉事業の適切な提供を行うとともに、通院医療の促進を図るなど必要な医療を提供していきます。

5 同和問題

(1)現状と課題

人類社会の理念である人間の尊厳と基本的人権の尊重が国際的な潮流となりつつあった昭和40年(1965年)に「同和対策審議会答申」が出され、その中で同和問題をこの大きな流れのなかに捉え、「その早急な解決こそ国の責務」であり、「国民的課題」であると位置づけました。その後30数年同和対策事業は幾多の成果をあげてきました。平成8年(1996年)の「地域改善対策協議会意見具申」は、それまでのまとめとして、「同和問題は多くの人々の努力によって、解決に向けて進んでいるものの、残念ながら依然としてわが国における重要な課題」であると規定し、「同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」との認識を述べ、その上で、今後の方向として、「同和問題の解決に向けた今後の取り組みを人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていくという、広がりを持った現実の課題である」と展望しています。

「意見具申」においては、同和問題の解決に向けた今後の主要な課題として、依然として存在している差別意識の解消、人権侵害による被害の救済等の対応、教育、就労、産業等の面でなお存在している較差の是正、などがあげられています。

和歌山県では、昭和23年(1948年)に、国に先駆けた独自施策として「地方改善事業補助制度」を創設し、基本的人権の尊重と同和問題の一日も早い解決をめざし、実態的差別と心理的差別の解消に努めてきました。昭和44年(1969年)の「同和対策事業特別措置法」施行後はさらに、市町村をはじめ県民と一致協力して総合的かつ計画的に同和対策を推進して、大きな成果を収めてきました。

特に、住環境整備については、国、県、市町村が一体となり、地域住民の理解と協力を得ながら推進してきた結果、住宅、地区道路、下水排水路等の劣悪な状況は大きく改善されました。

また、教育や就労については、地域住民の生活基盤に関わる問題であるとの認識のもと、積極的に取り組んできた結果、教育の機会均等や基礎学力の向上等について大きな成果をあげるとともに、若年層の就労等にも明るい兆しが見えていますが、一方では、脆弱さが残る同和地区の生活・経済基盤により、今なお教育や産業・就労面での課題も残されています。

さらに、差別意識の解消に向けた啓発についても、「県民みんなの同和運動」を展開するなど社会教育とともに積極的に推進し、県民の同和問題に対する基本的理解と認識は深まり、人権意識の高揚も進んできました。

このように、同和問題は多くの人々の努力によって解決に向かってはいるものの、今なお結婚等に関する差別事件が発生しており、最近では特にインターネット上での人権侵害等、匿名性と拡散性を特徴とした差別落書が発生しています。

また、企業等に対して不当な要求や不法な行為を行い、結果的に同和問題の解決を妨げている「えせ同和行為」の問題も残されています。

同和問題における結婚差別、就職差別、ならびに不合理な地価の較差に代表されるような同和地区の土地への差別(いわゆる土地差別)などの背景には同和地区、地区住民、地区出身者を避けようとする根強い意識が潜在していると考えられ、それぞれの課題を解決するための努力が必要です。

(2)基本的方向

同和問題の早期解決を図るための特別対策は、大きな成果をあげ、平成8年(1996年)の「地域改善対策協議会意見具申」により、概ねその目的が達成されたとして、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」は、平成14年(2002年)3月をもって失効しました。

しかしながら、同和行政は行政の責務として同和問題の早期解決に向け取り組んできたものであり、また、同和問題に関する人権侵害が今なお発生していることから、一般施策とともに実施された特別措置法の失効のみをもって終了されるものではありません。

今後、同和問題解決のための施策は、同和問題を人権問題という本質から捉え、現在までの成果と現状を踏まえつつ、さまざまな課題に対し、人権尊重の視点に立った取り組みとして実施していくことが重要です。

「依然として根深く存在している」差別意識の解消と、人権意識の高揚のための教育啓発活動に積極的に取り組みます。また、社会構造や住民の意識が多様化しているなかで、地域により抱える課題も多様化していることから、それぞれの地域ごとにその課題に応じた取組を進めます。

しかし教育啓発活動のみでは、人権侵害(差別、虐待など)を防止することは難しく、悪質な差別などの人権侵害や差別助長行為には法的な規制が必要であり、その中で人権侵害は社会的に許し難い行為であることを、明確に意思表示されることが重要です。

教育啓発と悪質な人権侵害等への法的な規制は、人権侵害防止の基本的な施策ですが、それにも関わらず発生してくる人権侵害の被害の救済も重要です。

(3)基本的なとりくみ

ア 教育・啓発の一層の推進

(1) 家庭は、同和問題を真剣に話し合える大切な学習の場であり、同和問題解決のカギは家庭にあるといえます。より一層学習を深めていただけるよう、今後とも広報紙やマスメディア等を活用し、情報の提供を行います。

(2) 地域における啓発活動を担う指導者の充実に努め、住民が自ら進んで学習活動に取り組めるよう、地域の実情に即した学習機会の提供に努めます。

(3) 職場の指導者の養成と資質の向上を図り、明るく働きやすい職場づくりが進められるよう啓発に努めます。また、企業内において、系統的、計画的、継続的な研修ができるよう指導に努めます。

(4) 学校教育では、幼児期から一人ひとりの児童生徒の発達に応じ、人権感覚を育む学習活動の充実を推進し、人権意識の高揚を図り、主体的に考え行動し課題の解決に取り組む態度を養います。また、学力面に課題のある子どもに対しては学校が、家庭、地域と連携を図り、基礎学力の向上に努めるとともに、進路指導の充実を図ります。

(5) 社会教育を推進し、県民の人権意識を高揚し、同和問題をはじめとするさまざまな人権問題についての認識を深めるための教育・啓発の推進を図ります。また、地域の教育力の向上のため、指導者に対する研修の充実に努めます。

(6) 性別・年齢・職業などが違うさまざまな人々が、お互いを尊重しあい、共に地域を創っていけるよう、さまざまな視点に配慮したきめ細かな啓発活動を展開するよう努めます。

(7) 県民の理解と認識が一層深められるよう、「和歌山県人権啓発センター」や関係機関・団体等が連携し、内容・手法等に創意工夫をした啓発活動を推進します。

イ 産業の振興・雇用の促進

(1) 企業の自立意欲を高め、独自の生産、販売、サービス提供手法の開発や内容の質的向上など中小企業振興を図ります。

(2) 企業等に対して同和問題をはじめとする人権問題についての正しい理解と認識を深めるための啓発を行い、本人の資質、能力に関係のない理由による不利益がないよう、職業選択の機会均等を図ります。

(3) 農林漁業について、農林漁家の経営安定を図るため、高品質化、省力化を図りつつ、特に施設園芸の導入や経営の複合化を推進し、小規模農林漁家の自立経営に向けた取組を支援します。

ウ 福祉・保健衛生の充実

(1) すべての人が自分のライフスタイルを選択することができ、明るく、幸せで、いきがいを持って住み続けられる地域社会の形成のため、要援護世帯への支援や子育て支援、高齢者や障害のある人への支援をはじめ、さまざまな課題を持つ人の個々のニーズに応じた福祉サービスの充実に努めます。

(2) 少子高齢化を踏まえた健康増進や衛生についての普及・啓発や、生活習慣を重視した健康づくりを総合的に推進し、地域住民の健康の保持及び増進に努めます。

(3) 地区住民の生活向上や自立促進のための活動に取り組んできた隣保館について、同和問題の解決という本来の目的を踏まえた上で、地域社会全体の 福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となるコミュニティセンターとしての活動推進を支援します。

エ 生活環境等の整備

すべての人が住み慣れた地域で安心して暮らせることが大切です。このため、市町村が行う、周辺地域と一体となった、住民の主体的な参加による、今日的視点での課題意識に基づいた「人権が尊重されるまちづくり」を支援します。

オ 差別事象への対応と差別による被害者の救済

(1) 基本的人権や市民的権利を侵害する就職等における差別、インターネット上の差別落書きなどの悪質な事象が発生した場合は、適切な解決を図ると共に、関係者に対し正しい認識と理解を深めるための啓発活動を行います。

(2) 結婚差別、就職差別、インターネット上の差別落書きなどで、悪質なケースについては法的な規制を国に求めていきます。

(3) 人権侵害(差別、虐待など)の被害を救済する機関の設置を国に求めるとともに、国や市町村と連携し被害者の救済を迅速に行います。

6 外国人の人権

(1)現状と課題

交通手段や情報通信技術の急速な進展により、人、モノ、情報の交流が国境を越えて活発化し、社会、経済、文化の面において、国際的な相互依存の関係が深まる中、定住する外国人は年々増加しています。

日本社会では、在日韓国・朝鮮籍などの人に加えて、1980年代以降、インドシナ3国などから難民として来た人々や国際結婚による定住者、また、日本の労働力不足を補充するために南米から来日した日系二世、三世など、いわゆるニューカマーと呼ばれる人々が増加し、民族、文化、宗教的にますます多様化の様相を呈しています。

本県の外国人登録者数も平成5年末には39か国、6,044人から平成14年末には63か国、6,965人と増加しており、私たちは、学校や職場だけではなく、地域社会における日常生活のさまざまな場面で、外国人と接する機会が増えてきています。

1995年に日本が批准した「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(1996年(平成8年)から日本国内において効力発生)では、人種的相違に基づく優越性のいかなる理論も科学的に誤りであることを明記しており、また、日本国憲法が規定する基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象と解されているものを除き、日本に在留している外国人に対しても等しく及ぶものとされています。

しかし、地域社会では、文化(特に言語、宗教)、習慣、価値観の相違に対する理解不足などから外国人に対する偏見や差別が生じています。特に、日本と朝鮮半島をめぐるさまざまな歴史的経緯から、日本において永住者として生活せざるを得なかった在日韓国・朝鮮人に対する正しい理解と認識は、いまだ十分とはいえない面があります。

また、就労の場では、特にニューカマーの人々が、賃金や労働時間などの点で日本人に比べて不利な条件で雇用されるなどの問題も起こっています。

さらに、定住外国人の公務員への採用や地方参政権の付与に係る国籍要件も問題視されてきています。

本県では、平成10年に「和歌山県国際交流センター」を設置、また、平成15年に策定した「和歌山県国際化推進指針」に基づき、国際化社会に対応した施策を推進するとともに、外国人に対する偏見や差別を解消するための教育・啓発に努めているところです。

今後も、同じ地域に暮らす住民であるとの視点から、外国籍県民も同じ地域社会の一員として人権が尊重され、安心して生活できる共生社会を構築していく必要があります。

(2)基本的方向

国籍や民族に関わらず地域に暮らす住民の一人として外国人も人権及び基本的自由の平等な享有又は行使が保障されているとの認識を深めるなど、国際化社会にふさわしい人権意識を育むことが重要です。

また、日常生活では、外国人を特別視せずに、文化、習慣、価値観等の違いを尊重するとともに、就労の場においても、日本人と平等に扱われ、さらに能力が十分に発揮されるなど、外国人が偏見や差別を受けることなく、地域社会の一員として、生き生きと安心して生活できる社会づくりも大切です。

こうした認識に立ち、外国人の人権尊重のための教育・啓発活動や情報提供、相談事業の充実など、外国人が安心して暮らせる環境づくりを、外国人からの意見を聴くとともに、民間団体等とも連携を図りながら推進します。

また、企業における外国人の適正な雇用の促進や在日外国人の地方自治への参画にも取り組む必要があります。

(3)基本的なとりくみ

ア 人権尊重のための教育・啓発活動の充実

(1) 文化、習慣、価値観の違いなどから生じる外国人に対する偏見や差別をなくすため、教育・学習や地域交流などさまざまな機会を通じて、互いの文化等の理解を深めます。

さらに、在日韓国・朝鮮籍の人々を取り巻く歴史的経緯や環境について、正しい理解と認識のための教育・啓発に努めます。

(2) 外国人の人権が尊重される社会をつくるためには、一人ひとりが暮らしの中の問題として身近なところから取り組むことが必要なことから、財団法人県人権啓発センターなどにおいて、セミナーやワークショップなど、関係団体等と連携しながら啓発活動を展開します。

イ 情報提供、相談事業の充実

(1) 外国語による生活ガイドブックや情報誌の作成、道路標識や公共施設等での外国語併記をさらに進めるとともに、外国語による施設の利用方法や交通アクセスの情報提供に努めます。

(2) 地震や台風等の災害時には、外国人も情報を収集できることが安全確保のために重要なことであるので、緊急時のみならず普段から必要な情報の提供に努めます。

(3) 和歌山県国際交流センターを拠点に、民間団体等と連携しながら、外国人への生活に関する情報の提供に努めるとともに、日常生活におけるさまざまな問題の相談窓口となれるスタッフの配置やネットワークの形成を進めるなど、相談事業の拡充に努めます。

ウ 児童生徒の教育環境の整備

外国人の児童生徒が安心して勉学に励めるような環境づくりを進めるため、日本語教育が必要な外国人の児童生徒が通学する公立小中学校への指導者のきめ細かな配置に努めます。

エ 医療・保健、福祉等の充実

外国人が健康で安心して生活を送ることができるように、外国語に対応できる医療機関の情報提供や緊急時の医療機関との連絡調整など、医療・保健について利用しやすい環境、支援体制の整備を推進します。また、定住外国人が、福祉に関する情報について容易に得られる仕組みを整備する一方、国民健康保険・国民年金の未加入者とならないよう制度の周知に努めます。

オ 適正な雇用の促進

県内で仕事を求める外国人のために、労働局等関係機関と連携を図りながら相談体制の充実に努める一方、民間企業において日本人と平等に扱われないなどの問題が生じないよう雇用主に対する啓発に取り組みます。

カ 定住外国人の地方自治への参画

(1) 幅広い県民の意見を県政推進に活かしていくためには、多様な文化的背景や考え方を持つ定住外国人の意見も求める必要があるため、審議会等の委員の選任にあたっては、審議会等の設置目的を踏まえ、在日外国人も含めた幅広い人材の登用に努めます。

(2) 県職員への採用について、これまでも国籍条項の見直しを行ってきたところですが、今後も公務員の任用に関する基本原則を踏まえつつ、引き続き職務の内容と国籍の必要性を検討し、適切に対処します。

7 感染症(ハンセン病、HIV等)・難病患者等の人権

(1)現状と課題

現在、さまざまな感染症や難病等の病気を抱え暮らしている方々がおられ、患者や家族のなかには、治療等の負担だけでなく、病気に対する誤った知識や理解不足による偏見や差別を受けることがあり、肉体的、精神的な負担が大きくなっています。

ハンセン病はらい菌による感染症ですが、らい菌に感染しただけでは発病する可能性は極めて低く、発病した場合でも現在では治療方法が確立されています。わが国では、特殊な病気として扱われ、「癩(らい)予防法」が明治40年(1908年)に制定されて以来、施設入所を強制する隔離政策がとられ、患者は行動や住居、職業選択、学問、結婚の自由など人間としての権利を奪われてきました。さらに、強い偏見や差別は患者だけでなく家族にまで及び、なかには患者が家族から絶縁されるという状況さえありました。

この強制隔離政策は、その後治療薬ができた後も、「らい予防法の廃止に関する法律」が制定された平成8年(1996年)まで、全国的には続けられるという厳しい状況にありましたが、和歌山県では昭和32年(1957年)ハンセン病専門の相談所として設立した和歌浦健康相談所が中心となり、施設への隔離ではなく患者と家族の立場に立った在宅療養を支援するなど、「救らい県」としての取組を進めてきました。

また、元患者らが長年の国の隔離政策が誤りであり、多大の被害を被ったとして提訴した「らい予防法国家賠償請求訴訟」に対し、平成13年(2001年)5月、熊本地裁で国の責任を認めた原告勝訴判決がなされました。これを契機として、国はじめ都道府県が、患者、元患者の方々への謝罪を行い、これらの方々の名誉の回復と、社会復帰のための施策を進めています。

しかし、これまでの政策や病気に対する誤った知識により、いまだに偏見が存在しています。また、療養所入所者の多くが、長い間の隔離により家族や親族との関係を絶たれていたり、高齢化や病気が完治した後も障害が残っていることにより、療養所に残らざるを得ず、社会復帰が非常に困難な状況にあります。さらに、遺骨の里帰りについての課題も残っています。

次に、HIV感染者に関する人権問題ですが、エイズはHIV(ヒト免疫不全ウィルス)感染という後天的要因により、免疫力が低下し(免疫不全)、さまざまな疾患が生じる病気です。わが国では昭和60年(1985年)、安全対策を怠った非加熱性血液製剤によるHIV感染被害である薬害事象によりエイズ患者が表面化しました。HIVは非常に感染しにくいウィルスですが、当時、簡単に感染し、発病すれば必ず死亡するという誤った知識が広がり、大きな差別が発生しました。

近年、わが国においてもHIV感染者は増加の傾向にあり、感染原因については性行為によるものがほとんどを占めています。また、感染者の年齢構成を見ると、特に10代、20代の若者がその半数を占める状況があるなかで、母子感染を防ぐ点からも、若い世代がエイズの疾病概念や感染経路、そして何よりもその予防法を正しく知ることが重要であるといえます。

現在HIVに対しては、免疫の低下を抑え、エイズの発症をくい止める抗HIV薬が効果をあげており、近い将来特効薬やワクチンの発見も期待され、和歌山県でも県内2カ所に拠点病院を設置し医療体制の整備を進めています。しかしながら、今でも人目が気になるということでエイズ相談や検査を受けられないことや、職場に病名がもれ、差別を受けたり、職場を追われてしまうということを恐れて、感染していることや患者であることを隠さなければならないという状況があります。

また、近年の医療の進歩や衛生水準の向上により、コレラ、赤痢及び腸チフスなど多くの感染症が克服されてきましたが、一方で新たな感染症の出現や既知の感染症の再興、さらに、国際交流の進展による輸入感染症などの問題もあります。

次に、難病等に関する人権問題ですが、難病は原因がわからず、治療法も確立されておらず、生涯にわたって治療・闘病を要します。また、経済的な問題だけでなく、介護等に著しく労力を要するため家庭の負担が重く、精神的な負担が大きくなることもあります。難病は種類も多くさまざまな病気の特性があり、個人差があるため、一見して病気とわかるものもあれば、外見は全く健康な人と変わらないこともあります。

就労については、重症患者など多くの患者が働くことができず、また軽症の人や症状が回復した人で意欲があっても、治療や療養の制約があるため思うように働くことができず、安定した収入のある仕事につけないこともあります。

また、患者のなかには、病気に対する無理解により、心ない言葉をかけられたり、就労の機会が失われることや、本人や家族が結婚差別を受けるということもあり、なかには病気を周囲に隠して生きている人も少なくなく、これら差別や偏見の解消が課題となっています。

このように、さまざまな病気をめぐる状況は、その時代の医療水準や社会環境により変化するものですが、これらの患者の方々の置かれている状況を踏まえ、患者の人権に配慮した対応が求められています。

(2)基本的方向

ハンセン病やHIVなどの感染症については、発生の予防と患者等の人権の尊重の両立を基本とし、個人の意志や人権に配慮し、一人ひとりが安心して社会生活を続けながら、良質かつ適切な医療を受けられ、また、入院等の措置がとられた場合には早期に社会に復帰できるような環境の整備に努めることが必要です。

難病については患者等それぞれの人権が尊重され、安心して社会生活に参加できる環境整備のほか、必要な医療の提供、さらには疾患の克服をめざした研究を推進することも必要となってきます。

このような観点から、ハンセン病やHIV、難病などに対する偏見や差別をなくす正しい知識や理解の普及啓発を図るとともに、適正な医療の確保と患者や家族への支援体制の整備を進めます。

(3)基本的なとりくみ

ア 正しい知識・理解の普及啓発

(1) エイズ予防啓発として、各保健所において研修会を開催し、また「世界エイズデー」(12月1日)などにあわせて、広く県民に対し予防方法や正しい知識について啓発し、正しい理解を求めていきます。

(2) 小学校から高等学校までの学校教育において、エイズを予防する能力や態度を育てるとともに、いたずらな不安や偏見・差別を払拭するため、人権尊重、男女平等の精神に基づくエイズ(性)教育を、学校、家庭、地域が連携して推進します。

(3) 難病やハンセン病等病気に関する正しい知識・理解の普及啓発を行うとともに、誤った知識に基づくいわれのない差別・偏見を防止します。

イ 良質かつ適切な医療の提供

(1) エイズ拠点病院において良質な医療を提供するとともに、HIV診療支援システムで全国の拠点病院と治療方法や治療薬の情報交換を行い、また、カウンセラーを派遣し、患者や感染者に対する精神面のケアを推進します。

(2) 原因不明、治療方法が未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない難病のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重傷度が高いものについて、原因や治療方法究明のための調査研究を進め、また、医療費の公費負担を行い患者負担の軽減を図る特定疾患治療研究事業を行います。

(3) 患者と医療従事者との信頼関係に基づき、最善の医療を提供するため、医療従事者が患者に診療の目的や内容などについて適切な説明を行う一方、患者自身が正確な情報に基づいて、納得した上で、主体的に検査や治療など の医療行為を選択し、決定する「インフォームド・コンセント」を促進します。

ウ 相談・支援体制の整備

(1) ハンセン病療養所入所者の里帰り事業や、高齢のため里帰りの負担が大きい入所者への訪問事業を推進し、社会復帰を支援します。また、遺骨については遺族の同意を得ながら里帰りに努めます。

(2) 在宅で長期療養を続ける難病患者の日常生活の質を向上させるために市町村が実施するホームヘルプサービス、ショートステイ及び日常生活用具給付の事業を支援するとともに、質の高い介護サービスを提供するためにホームヘルパー養成研修を実施します。

(3) 難病患者の在宅療養を支援するため、保健所が中心となって市町村、医師会、福祉関係団体との連携のもとに医療相談、訪問診療等の施策を推進しながら総合的なサービスを提供できる地域支援体制の整備を図ります。

(4) 重症神経難病患者が入院治療を必要とするとき適時に適切な入院施設の確保や、円滑な在宅療養への移行を支援できるよう協力医療機関の確保に努め、医療従事者や在宅支援関係者への研修等を実施するなどネットワークの強化を図ります。

(5) 同じ病気を持つ患者や家族が悩みを分かち合い、情報交換を行える患者会や家族会の活動を支援します。

(6) 子ども保健福祉相談センターにおいて、難病の子どもたちや家族に対する相談支援活動を推進します。

8 犯罪被害者とその家族の人権

(1)現状と課題

平成8年2月に警察庁において被害者対策に関する基本方針を取りまとめた「被害者対策要綱」が制定されるなど、犯罪被害者の人権が大きく取り上げられるようになったのは比較的新しいことです。

犯罪被害者については、基本的な「個人の尊厳」や「プライバシー」などが尊重されなければならないことは当然であり、犯罪被害者は「可哀想だから」保護されるのではなく、基本的人権の尊重という観点から当然支援されるべき立場にあります。

わが国における犯罪被害者数は、平成8年から増加し、平成13年の被害者総数は約240万人となっていますが、犯罪による被害は、直接の被害者だけでなく、その家族などの精神面や生活面にも大きな影響を与えるものであり、これらの間接的被害も含めると被害を受けている方は相当の数になります。

また、性犯罪に係る事件では、被害者のさまざまな心理的要因や再被害を恐れること等により、被害にあっても警察に届けたり、裁判に訴えたりしない場合も相当数あり、実際の数字ははるかに上回るとさえ言われています。

犯罪の被害者は、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、事件に遭ったことによる精神的ショック、失職・転職などによる経済的困窮、捜査や裁判の証人出廷などの過程における精神的・時間的負担、無責任なうわさ話やプライバシーをも侵害しかねない執拗な取材・報道によるストレス・不快感など、被害後に生じる「二次的被害」に苦しめられる場合もあります。

特に、大きな精神的・心理的衝撃を受けることにより、トラウマ(心的外傷)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が残ることもあり、被害者が受ける精神的被害は深刻です。

殊に、和歌山においては、平成10年7月いわゆるカレー毒物混入事件が発生し、被害者及び被害者の家族が生命・身体・財産のみならず、深刻な精神的被害を受け、今なお回復されない状態におられます。

欧米を中心とする諸外国では、犯罪被害者の権利として、(1)個人として尊重されること、(2)加害者の刑事手続等に関与し、知る権利、(3)被害回復を求める権利、(4)物質的・精神的・心理的・社会的支援を受ける権利等を確立し、被害者の法的地位を充実する法制度を整備するとともに、多様な支援を提供できる民間の被害者支援機関が組織され、国と社会をあげて総合的な被害者支援対策を推進しています。

近年、わが国でも、犯罪による被害者の問題に対する社会的関心が高まる中、刑事訴訟法の一部改正や、「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」及び「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」等が施行され、犯罪被害者等の保護や救済が図られてきています。

しかし、欧米に比べ、我が国では犯罪被害者支援対策が相当立遅れているといえます。

犯罪被害者やその家族の人権が侵害されるケースはさまざまでありますが、被害者の人権の尊重を基本とした、被害者が求める各種支援を推進する必要があります。

(2)基本的方向

犯罪被害者に対する支援のためには、まず、被害の救済は被害者の人権に基づくものであり、誰もが被害者になる可能性があるとの認識の上に立って、被害者を社会全体で支え合うことができる社会づくりを推進することが必要であります。

このため、犯罪被害者の現状や支援の必要性について、県民の認識を深めるとともに、犯罪被害者と最も密接に関わる警察や行政職員においては、高い人権意識による被害者の視点に立った対応を徹底します。

また、被害者を総合的に支援するために、犯罪被害者の相談機関、支援関係の諸機関や民間団体等が相互に連携を強化して支援体制の充実を図り、被害者が可能な限り被害を回復し、苦しみから立ち直り、元の生活に戻ることができるよう被害者支援活動を効果的に推進します。

さらに、再被害防止措置や重大な犯罪の未然防止措置にも取り組みます。

(3)基本的なとりくみ

ア 啓発活動の推進

(1) 犯罪被害者が受けている直接的・間接的被害に対する現状や援助の必要性について、体験談や講演等を通じ県民の認識を深めるための啓発活動を推進します。

(2) 犯罪被害者と最も密接に関わる警察や行政職員などの研修を行い、高い人権意識による適切な対応を促進します。

(3) マスコミの過剰な取材・報道による犯罪被害者やその家族への二次的被害については、マスコミに対し、自主規制による対応への理解を求めます。

イ 相談・支援体制の充実

(1) 犯罪被害者が大きな打撃から立ち直り、幸福を求めて再び歩み始められるように、県内の全警察署に被害者の相談窓口を設けていますが、性犯罪相談などの対応を充実するため、各相談窓口への女性の相談員の配置に努めます。

(2) 警察以外のところにも、性的犯罪の相談など被害者が安心して相談できる場所を設置することが必要なため、相談機関、支援関係の諸機関や民間団体等が、相互に連携を強化し支援体制の充実を図り、被害者が求める救済に即した総合的な被害者支援活動を効果的に推進します。

(3) 医師や臨床心理士等のカウンセラーが必要な場合、適切なカウンセリングを受けられるような支援体制を整えます。

(4) 故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病、障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や加害者側からの損害賠償も得られない被害者又は遺族に対して、「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」に基づき、給付金を支給することにより、その精神的・経済的打撃の緩和を図っております。引き続き適切な事務処理を行い、支援を推進します。

ウ 再被害防止措置の確保

犯罪被害者及びその家族が同じ加害者から再度危害を受けることを未然に防止し、安全確保を徹底するため、警察関係機関における防犯指導、警戒措置等の再被害防止措置を強化します。

エ 重大な犯罪の未然防止措置

重大な犯罪が未然に防止できれば、それは最高の犯罪被害者対策とも言えます。

今日、重大な犯罪は家庭内や男女関係の間でも発生することが多く、又、民事上のもめ事からも発生することから、民事不介入や家族問題には立ち入らないとの考え方が、時として手遅れとなってしまうケースもあるため、警察当局は積極的に未然防止に取り組みます。

(1) 犯罪発生後の捜査のためではなく、ストーカー行為や無言電話、その他不審な行動等に対する監視などの防犯活動を強化します。

(2) 被害者相談窓口の充実を図るとともに、被害者支援に関係する機関等と連携を密にして、家庭内や地域における犯罪の芽を早期に発見し、より重大な犯罪による被害発生の未然防止に努めます。

9 さまざまな人権

前述の8つの重点的に取り組むべき人権課題の他にも、次のような人権課題が存在します。

(1) 刑を終えて出所した人など

刑を終えて出所した人は、社会の根強い偏見などのために、住宅の確保や就職など基本的な生活基盤を築くことさえ難しく、本人に真摯な更生意欲があったとしても、その社会復帰は厳しい状況にあります。刑を終えて出所した本人だけでなく、その家族も社会からの偏見や差別を受けることがあります。刑を終えて出所した人が、真摯に更生し、地域社会の一員として生活を営むためには、本人の更生意欲はもちろん、地域社会など周囲の人々の理解と協力が欠かせません。そのため、刑を終えて出所した人に対する偏見や差別意識を解消するために啓発活動を推進していきます。また、更生保護活動を行う民間団体等に対し支援を行っていきます。

被疑者(捜査対象とされているが、まだ公訴を提起されていない者)や被告人公訴を提起され、その裁判が確定していない者)は裁判により有罪であることが確定するまでは無罪の推定を受けます。しかし、刑が確定していない段階で被疑者・被告人を犯罪者のように扱い、本人やその家族の人格を著しく侵害している事例が見受けられます。また、被疑者には不当に身体拘束されない権利などが、被告人には国選弁護権や迅速な裁判を受ける権利などが憲法により保障されています。しかし、被疑者・被告人の諸権利が形式的なものになっているのではないかとの強い指摘もあり、より実質的な権利保障のあり方が議論されています。

受刑者についても、一定の権利の制限はありますが、人間としての尊厳は当然守られるべきであり、最近の刑務所での看守による受刑者に対する不当な拘束や暴力は、人権侵害の顕著なあらわれです。

こうした人々に対する偏見や差別意識をなくすために、関係諸機関と連携・協力しながら啓発活動の推進に努めます。

(2) 野宿生活者(ホームレス)

失業や家庭問題等さまざまな要因により、自立の意思がありながら、特定の住居をもたずに野宿生活を余儀なくさせられている人たちがいます。野宿生活者の中には、衛生状況が悪い、十分な食事をとることができないなど、憲法で保障された健康で文化的な生活を送ることができない人もいます。また、地域社会との間にあつれきが生じたり、野宿生活者への暴力なども発生しています。

平成14年には「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が施行されました。地域社会との協力の下で、職業能力の開発などによる就業機会や安定した居住空間、保健医療の確保などの施策を通して、野宿生活者の自立を促進していくことや、野宿生活者となることを防止するための生活上の支援などについて定めています。

野宿生活者に関する問題について県民の理解を促進するとともに、地域の実情に応じ、必要な施策を行います。

(3) 性同一性障害者

性同一性障害者、からだの性とこころの性が一致しないために自分自身に対し強い違和感を持つと同時に、社会の無理解や偏見或いは日常生活のさまざまな場面で奇異な目で見られることで、強い精神的な負担を受けています。就職をはじめ日常生活の中で、自認する性での社会参加が難しい状況にあるだけでなく、偏見により嫌がらせや侮蔑的な言動をされるなどの問題があります。 性別再判定手術を受けた人については、戸籍上の性別と外観が一致せず本人確認等で問題が生じているため、平成15年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を制定し、家庭裁判所の審判によって性別の変更が認められることとなりました。

性同一性障害者や障害にたいする正しい認識が深まるよう啓発活動の推進に努め、偏見のない社会づくりを進めていきます。

その他にも、アイヌの人々の人権や、中国残留孤児やその家族の人権などがあります。また、医療技術の進展にともない、新たな問題の懸念もあります。

このような、さまざまな人権に関する問題に対して、あらゆる機会を通して人権意識の高揚を図り、差別や偏見をなくしていくための施策の推進に努めます。

また、今後新たに生じる人権問題についても、それぞれの問題の状況に応じた取組を行っていきます。

委 員

ありがとうございました。少し時間が超過しましたけれども、以上のようなことで、各分科会におきまして熱心にご審議賜り、ありがたく存じております。

なお、公権力による人権侵害、環境と人権、情報と人権につきましては、総論部分で検討していくという考えでおりますが、総論部分につきましてなかなか進行が遅く、次回までに果たして各委員にご審議願えるような状況になるかどうか疑問に思っておりますけれども、できる限り努力してまいりたいと思っております。

また、事務局で朗読して頂きました各分野別施策につきまして、時間の関係もございますので、委員がお気づきのことにつきましては、次回審議会までに事務局へお申し出を願いたいと思います。書面でして頂ければ非常に結構ですし、そうでなくても何らかの連絡をして頂ければ、事務局で各委員のご意見をお伺いするように努力させて頂きますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日予定しておりますところの分野別施策のご審議はこれで終わらせて頂きます。

次に小委員会の所管事項について、事務局から説明願います。

事務局 小委員会の所管事項につきまして、「総論案の作成に関すること」は、前に承諾を頂いているところですけれども、「分野別施策案の調整に関すること」、「方針案全体に係る用語の注釈に関すること」、それから「方針案全体に係る表記の統一」、例えば、年号と元号や日本或いは我が国とかの表記のことになると思いますが、このようなことを小委員会にお任せ頂きたいという点を提案させて頂きます。
委 員

事務局案は今のようなことで、最終的には、審議会の決定ということになろうかと思います。それまでの過程におきまして、小委員会で検討するということでございますが、よろしいでしょうか。(はい)

ありがとうございます。

その次の議題について事務局から説明願います。

事務局 同和問題に関する実態把握のための実態調査について、審議会としてどのように考えるかを、この前の小委員会において審議して頂きました。本日、配布させて頂きました資料は、その時の小委員会の統一した意見ということで出させて頂いてございます。これについてご審議をお願いしたいと思います。
委 員 前にも各委員にお諮りしたと思いますけれども、実態調査について、民間団体から県に対する申し出がございました。それにつきまして、これまでの間に県当局と色々と交渉があったようでございますけれども、そこの事情をもう少し簡単におっしゃって頂けませんか。この審議会に対して意見を求めて来られている経緯などを少し説明して頂いた方が良かろうと思うのですが。
事務局

実は、人権問題に対する実態の把握ということは、人権条例にも明記されており、当然、把握については努めていかなくてはならないわけですけれども、それに関して実態調査を行うということ、特に同和問題に対する実態調査を行うことというのは、調査の方法等でかなり困難な状況が予想されるわけです。

現在でも、その方法はきっちり見えていないのですけれども、特に県としましては、実態の把握については、「各部局が事業を行う中で把握する」、「一番身近な市町村から実態把握をする」そして、「地域住民の方々から直接お伺いする中で把握をする」という3つの方法で従来からきました。適切な実態の調査の方法がなかなか見えない中で、「この3つの方法でする」ということで来たのですけれども、今般、特に実態の調査を要請されましたので、そのあり方について、審議会のご意見をお伺いするということでございます。

委 員

前の調査をして7年近くなります。特別措置法も廃止になるなど、当然状況が変わっており、その後の状況を把握するために調査は是非必要です。

大阪では、4、5年前に非常に詳しい調査を行っています。それを是非、参考にされた方が良いと思います。以前から部落とその周辺の一般市民の意識は是非知りたいと思っているのですが、ただ、調査方法が難しいと思います。色々と工夫をしないと、一般市民全般の意見は分かると思いますが、部落周辺の市民の意識は分からない。つまり部落問題に対する市民の認識の仕方の推移が、なかなか分かりにくいということです。そのことが的確ではないと、なかなか上手く手を打てないのではないかと思います。

それから、結婚差別がなかなか解決しないということのネックは何かということに関する部落の中の意識と同時に一般市民の意識についても、何らかの調査が出来れば、非常に良いのではないかと思います。

もう一つ、この文章では、調査の内容を示されていないです。実施すべき時期等を検討されたいと言って、結局、審議会が、調査の内容や時期等を決めることになるのですか。

委 員 今のご意見では、「調査する必要があることは当然である」という前提に立っておられるわけですね。
委 員 そうです。
委 員

その点につきましても、各委員のご意見があれば、伺っておきたいと思います。

まず、実態の調査をする必要が今あるかどうかという点ですが、今のご意見では、「当然、実態の調査をする必要がある」、その前提の上に立って、「周辺地区を含めた意識調査ということについてまで、行う必要があるのではないか」、なお、「大阪の方ではかなりの調査をしておられ、そのようなことをも勘案しながら、行えばどうか」ということです。

このことについて、他の委員はどうですか。条例では、やはり同和問題というものを人権の問題の中で、非常に重要な位置づけをしているということは、間違いのないことであります。

そして、条例の中に、人権問題については施策を行う必要があり、施策を行うことの前提として、調査をすべきであるということも謳っております。従って、通常に読めば、施策をする必要があるということを位置づけし、施策をするについては、実態の調査をする必要があるのではないかと思います。

そのことからすれば、人権問題の一つである同和問題についても、実態調査をする必要があるのではないかということは、当然のように思われるわけなのですが、ただ、実態調査と言いますと、同和委員会で行ってきたところの実態調査があります。

その調査は、各市町村の協力を得ながら、或いはまた、出来上がったものだけを見ましても、非常に分厚い詳細なものになっておるわけで、同和問題だけについて、あれだけの経費を使って、あれだけの詳細のものまでということになりますと、他の分野におけるところの実態の調査ということについて、そこまで、出来るかということもございますので、そういうこととの兼ね合いの問題をも含めまして、調査は必要だけれども調査する方法をどのようにするかということは、十分検討すべきだということを感じます。

事務局

困難が予想されるということを申し上げたのですけれども、困難な状況というのを詳しく言わなかったので説明させて頂きます。先程、言われました大阪の調査というのは、平成12年にされたもの、実は、特別対策の法の期限内でされたものです。

つまり、同和地区の規定も法的にきちんとされている中で実施されたものなのです。

けれども、14年度に法律が無くなった中では、どこを対象に、誰を対象に調査すべきかということが、他にも何を調査すべきかということもあろうかと思いますが、一番大きな困難な状況でございます。

特に、調査対象をどうするかというのが県としても見い出せないという非常に困難な状況の中で、今までどおり、先程申し上げた3つの方法で把握をしていくという方針で望んできたわけなのですが、今般、委員にご意見を頂戴したいのは、その実態調査のあり方についても、今後検討していき、もし、するに当たっても委員にまた、ご意見をお伺いするということになろうかと思いますが、今の時期、実施すべきかどうかということも踏まえて、小委員会で、このような意見の案を作成させて頂いたところでございますので、このことについてよろしくお願いしたいと思います。

委 員

しないよりはした方が良いというスタンスでおるのですけれども、まず一つは、調査の目的と調査の方法、そして調査した後、まとまったものをどのように人権というものに反映させていくかということがあります。ある程度、目標を持ってしないと、ただ、「実施した」、「終わってしまった」では、何かまた、同和問題を再度掘り起こしてしまって、逆の差別的な意識に位置づけられないかと、私自身、今、葛藤しているのです。

することについては良いのですけれども、市町村と連携しながら行っていくということで、この審議会だけでは、とても荷が重いという思いがありますから、これをする上においては、じっくり練らないといけないという気持ちでおります。

以上です。

委 員

調査を実施するのはあくまでも県であり、審議会に調査を委任されているわけではありません。県が実施する調査につきまして、県として色々な状況を考えれば、今、実施するということを民間団体との間で約束することが出来るかどうか。また、約束すべきかどうかということです。

色々な諸情勢や、調査の対象者をどのように選ぶかという問題がございます。かつてのその部落というようなところの地域、それから行政が色々な施策を行うにあたって必要だとして特定した地域があります。そのような地区指定したところの地区というものを中心にしてするか。或いはまた、それより広い意味で、周辺地域までするか。また、対象をどのように選ぶかということもあろうかと思います。同時に、今、委員が言われたのは、私の想像ですけれども、例えば、特定の方に対して、実態を調査する時に「何で、私のところに調査をしに来たのか」という問題もあるだろうと思いますし、そういうことが委員の言われるように、また掘り起こしになったりとか、或いは妙なレッテルを貼ることになったりとかということで、非常に調査のしにくいところがあろうかと思います。

一つには、かつて、特定事業ということで法の後ろ盾があったけれども、今は法の後ろ盾が全然ないわけです。そのような状態の下において、調査ということだけにしたところで、することが非常に難しいという点があることが事実だろうと思うのです。 そういうこと等も含めて、県の方とすれば一応、この審議会に対して、県がすべきであるのかどうかということの意見を求めてきておられるということなのですけれども。

委 員

本日、資料として「人権に関する県民意識調査の単純集計結果」を頂いているのですけども、その意識調査の設問の検討の段階で、なぜ、このようなものが入っているのかなと質問をした時に、意識調査であるけれども、少しは、実態に繋げるような設問を設けたいのだというご説明を頂いたことがあったと思います。それで、見せて頂くと、3ページの人権侵害を受けた経験ということの中で、同和問題が6番目になってきている中で、これだけを取り上げる実態調査を、どのように説明が出来るのだろうかという気もします。

以前、よく実態調査の一つとして、学習実態調査が教育関係で行われていました。その調査の中で、同和地区とか、一人親であるとか、或いは病気とかの分析という中では、今でもそういうことはもしかしたら可能かも知れません。今日、頂いた資料を見て、胸をなでおろしたり、或いは、このまま放っておくというのが良いのか悪いのかまでは突き詰めていないのですが、そのような感想でございます。

委 員 端的に言えばどういうことでしょうか。
委 員 同和問題よりも女性、障害者、子どもの人権、或いは、公権力、医療の現場の方が高いパーセンテージで出ている中で、色々なものを絡めての実態調査であればいいのですけれども、同和問題をするのであれば、もっと、他の実態調査も必要なことになってくるのではないかという気もするのでございますが。
委 員 同和問題についての実態調査は、必要なことは必要だけれども、他の人権問題もあることだから、他の人権問題についての実態調査ということをも十分行って、それと同じようにするということですか。
委 員 そうですね。或いは、もう少し広範な感じの中で、その一つとしての同和ということを言われているのでもないので、少し、熟考を要することではないかと思っております。
委 員

小委員会でご検討頂いた案は、非常に良く考えられて、逆に言うと、こういうことしかないのだろうなという気がします。

つまり、「することは必要である」そして、「することについては、慎重にして下さい」としか言っていないわけです。

具体的にどうするかというのは、実際には色々なことをもう少し詰めながらということになってくるのだろうと思います。だから、審議会としては、することの必要性は認めますが、どのように実施するかについては、慎重に考えて、必要があれば、また審議会に投げかけてほしいということを、もしかしたら含んでいるのかも知れませんが、審議会とすれば、このくらいしか言えないのかなという気がします。

委 員 一応は必要である。必要であるけれども、実施するにあたっては、方法や項目について、十分検討してしなくてはいけないということですか。
委 員 そうです。実際、そこが難しいから、どうしようかという投げかけではあるのだろうと思いますけれども。
事務局

国においても、厚生労働省と解放同盟の中央本部と全隣協の3者で、こういう実態調査について、検討会のようなものが設けられております。

ただ、今まで2回程、全隣協の中の検討会が持たれており、一昨日、厚生労働省を呼んで、3者で検討会を持とうということになっておりました。

しかし、厚生労働省は、実態調査についての考え方が、やはり、先程、言いましたように対象の地域が最大の問題でありますので、まだ、出来ていない状態でした。

そして、一昨日の会議を延期し、全隣協との間で、まず、その素案のたたき台を作ろうなりました。それから後に、今度は運動団体を入れるについても、解放同盟だけではなく、その他の団体も含めて話し合うというようなことが、国の方では進んでおります。

なお、ここ二回までの話し合いの様子を聞きましたら、やはり、実態調査という限りにおいての難しさは、個人情報とかの問題もあり、地域の指定をどうするのかということです。これが非常に大きな問題です。

しかし、実際に部落の実態を知るには、その地域を固定しないと分からないという反面もありますので、この調査を進めるについては、やはり、国辺りがはっきりしたエリアを決めて行うという方針を示さないと、県においても、或いは、市町村においても、なかなか取り組めないのではないかといったような議論がされているような状況があります。

先程、言いましたように、県として非常に難しいという印象を持っています。

委 員

今、国で検討しているということですが、逆に言えば、県独自でやっても良いということがあるわけです。

けれども、そうすると、最初におっしゃった一般的な人権の問題の中の一つとして捉えるのであれば、ここに結果が出ている中で、もっと大きなウエイトを占めている問題もあります。この案には、必要ではないという記述はないので、この案として出されている「実施すべきものと考えるが時期等を検討されたい」しかないかなと思います。場所の特定とかの問題もあるでしょうけれども、しばらく様子を見るという辺はどうなのでしょうかと思うのですが。

委 員

場合によると、実際は難しいのかなと思います。調査の内容の検討というのは、もしかしたら出来るのです。そこから、どういうサンプル、どういう方法という、或いは、従来型では駄目だということも含めて、考えていくということはあるのかなと思います。

今のところ、何もない状態で、するか、しないかですから。むしろ、何を調査して、内容的には「こうです」というのは、一方で着手しながら、それでは、「それをするためにはどうするか」ということを考えた方が、前に進むのかも知れません。

委 員

調査するということは、その結果をどのように活かしていくかということも、やはり、想定しなくてはならないと思います。先程の資料の5ページの関心のあるものがどういうところかという中で、今までと大きく違うのは、やはり、色々な施策がなされて、住宅環境とか、或いは進学率の問題、就職差別の問題などの率が今までは凄く多かったのですが、今は、これはみんな一桁になってきています。こういうところは、色々な施策がなされて、改善されてきた結果だと思うのですが。

むしろ、現在では、もっと精神的、主観的なものとか、或いは人の心に根ざすこととか、そういう非常に掴まえ所のないものにもなってきているので、教育啓発ということに、どのように活かすかということに繋がっていくのでしょうけれども、その辺の難しさも非常に感じますので、作って頂いている案は、非常に良いのではないかと思います。そして、調査をするのであれば、どういう目的、或いは、それをどのように活かすかということも念頭において、考えて頂けなければならないかと思います。

委 員 委員はどうですか。
委 員 特にありませんが、強いて言えば、この回答の一番最後は、「実施すべき時期等を慎重に検討されたい。」ということです。
委 員 内容をよく検討することが大事だと思うのですけれども、内容とそして時期、勿論、対象もそうなのですけれども、特に内容、今までの内容に、あまりこだわらずというようなかたちと思っております。
委 員

各委員の意見を集約すると、基本的には、必要ないというようなことは言えない。

やはり、重要な位置づけをしており、施策は必要である。何が必要かと言えば、必要な施策の内容に応じた調査ということだと当然思われますけれども、要するにそのような調査をする必要がある。

だけど、その調査をするにあたっては、時期、方法などの実施方法について十分、慎重な上に慎重に検討した上で、するべきだということでよろしいでしょうか。

事務局

今、最後のところで、実施すべき時期等についても慎重にということをおっしゃられたのですけれども、この案の中の調査については、同和問題に関する実態の把握となっております。

今、はっきり言いまして、民間団体から言われているのは、あくまでも基本的として、旧の法律に則った特定の地域、特定の個人という、それに関する実態の調査という方面でもって、我々としては要請を受けておるのですけれども、この文面にあります同和問題に関する実態の把握というのを受けての調査というのは、今、私が申し上げました、そういう特定地域、特定個人という、ある意味ではプライバシーにかかる問題であると思うのですけれども、それに限定というか、当然それを含んだ意味でもっての、もう少し広い意味での同和問題に関するという意味か、それともやはり、旧来されてきた調査というものの基本的な原則に則っての調査という意味かということを、お聞きしたいと思うのですけれども。

委 員 質問の趣旨が、少し理解出来ないのですけれども。
事務局

もう一度、申し上げます。従来の法律がある時の実態調査と言いますのは、当然、法の中での地域を指定して、そしてまた、個人というものをある意味で特定した上で、同和地区というものを限定した意味でもっての調査でありました。これが従来の状態です。

それをもって、この文面にあります同和問題に関する実態の把握という、この把握についての調査というのは、当然、今、私が申し上げました、そういう地域特定、もっと言えば、属地属人についての調査について慎重な方法をとりながら調査するという意味であるのか、それとも、もう少し広い範囲での、同和問題に関する実態の把握のための調査という意味であるのかというのが、少し、分かりにくいような気がしたので、お聞きしたいと思うのですけれども。

委 員

私、はっきりしていると思うのです。この案の「このため、同和問題に関する実態の把握」というのは、条例に書いている実態の把握のことを意味していることは、明確になっていると思います。

また、「従来型の実態調査を行うことは多くの問題があり」と書かれており、ここで、こういう従来型の実態調査というものを考えているのではありませんよということも、はっきりしていますので、今、言われるような問題はないように思いますけれども。

委 員

特に、行政が、民間団体とどのような話し合いをしているかについて、私たちは分かりません。

あくまでも、私たちとすれば、「同和問題に対する実態調査の必要があるのかどうか」、「するとしたらどうか」ということについて、意見を求められているという把握に立つわけです。

そのような把握に立てば、同和問題に対する実態の把握については、そのように限定したものでは決してなくて、属地属人とかいうようなことも含めて、全体の広い意味での実態の把握ということを考えているわけです。

だから、従来型の実態調査という表現をされていますが、私は、従来のような実態調査という意味で、しかも、前にもこのようなものがあると言われていますが、多くの問題があると先程言いましたように、例えば調査対象にしたところで、色々な問題があります。調査を受ける人の受けとめ方も時代と共に変わってきております。だから、そのような問題も考慮に入れて、実施するのであれば実施していくべきだということです。

実態調査の問題は終わったとしまして、私が思うのは、同和問題は突出したかたちで捉えられて、施策をやられてきておったということについては、これはかえって、同和問題というものの解決について、果たして、プラスになるのかどうかという点がございました。

そのようなことで、進むべきものではなかろうと、私個人は思いますし、同和問題を突出したかたち、特にまた、民間団体からの圧力を受けたというかたちで、行うということは、非常にまずいとも思います。

それかと言って、同和問題を国も一つの大きな人権問題として捉えており、この条例でも同和問題を解決すべき人権問題として捉えておるということです。

同時に、条例自身もそのような施策をする限りは、実態の把握ということが必要だと決めておるわけだから、やはり、やる必要があるという前提、これは当然のことだと思います。

ただ、しかし、実施については、時代の変わり方、つまり、法的な後ろ盾が、先程も申し上げましたように無くなった点もあります。それから、かつてのように果たして、この組織的といいますか、県が号令をかけて市町村に対してということが、法の後ろ盾が無くなったという点もありますから、実施することには、非常に困難が伴うだろうと思われますけれども、その中でやはり、しかるべき方法を検討して実施されるべきと思います。

ただ、時期の点、調査項目の設定の仕方、対象をどうするかが問題だと思いますけれども、それらについては、行政で検討されて、行われるべきだということです。

それでは、意識調査についてお願いします。

事務局

県民意識調査の単純集計結果ですけれども、1ページのとおり、3,000通を発送し、戻り数と書いていますが宛先不明で戻ってきたものが、45通ございます。それで、実発送数が2,955通となりました。回収数が1,641通、実際はこのあと2通来まして、1,643通が正確なのですけれども、集計した段階では1,641通でございます。そのうち、何も書き込まれていなかった方もございまして、無効票と書いておりますけれども、これは11通ございました。よって、有効回答数が1,630通となり、今のところ55.2%と、事務局の予想をはるかに超えた数字で、安堵してございます。近いうちに、もう少し、クロスしたものをお渡し出来るかと思います。

また先程、言われて気になったことは、例えば人権侵害を受けた、感じたとの項目で、同和問題は11名で7.1%です。ただ、このような場合は分母の関係がございますので、それを考えますと、女性の人権がトップで18.2%になっているのですけれども、実際は障害のある人の人権が大幅に多いのかなと、こういう受けとめ方をすべきではないかなと思います。

委 員 次に、事務局から連絡事項があればお願いします。
事務局

次回の審議会について、ご確認をさせて頂きたいと思います。

次回は、先に、お送りしておりますとおり、10月29日水曜日午後1時から本日と同じ、この会場で予定をしております。また、議題としましては、総論部分についての審議を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

委 員

以上のようなことでございますが、委員の方で特に、この際に、ご意見なりをお出し頂くようなことがございましたら、お願いしたいと思います。

なければ、ここで終了させて頂きます。

どうも、長時間に渡りまして、大変有り難うございました。

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