第9回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第9回和歌山県人権施策推進審議会議事録

第9回和歌山県人権施策推進審議会議事録
日時 平成15年4月23日(木曜日)午後1時から午後3時30分
場所 和歌山市 アバローム紀の国
議題
  1. 刑を終えて出所した人及び犯罪被害者等の人権に関する現状と課題について
  2. その他
出席委員

稲垣委員、大畠委員、谷口委員、月山委員、辻委員、中川委員、中谷委員、村田溥委員、村田恭委員、柳瀬委員、吉澤委員

配布資料

刑を終えて出所した人に関する資料

  1. 社会へのかけ橋として 更生保護施設の現状」法務省保護局
  2. 「明るい社会へ向かって「協力雇用主のしおり」」日本更生保護協会

犯罪被害者支援に関する資料

  1. 「警察による犯罪被害者支援」警察庁
  2. 「こころの扉ひらいて」和歌山県警察
  3. 「被害者の手引き」和歌山県警察
  4. 「交通事故被害者の手引き」和歌山県警察
  5. 「被害者・家族・関係者へのこころの支援」

特定非営利活動法人紀の国被害者支援センター

  1. 「あの顔と生きる」なごみの会
内容

委員

本日は、刑を終えて出所した人及び犯罪被害者の人権に関する現状と課題につきまして、審議をします。

まず、人権施策推進室から、刑を終えて出所した人の人権に関する現状と課題につきまして、説明を行います。

次に犯罪被害者の人権につきましては、人権施策推進室から概要説明を行い、引き続き関係課から現状と課題の説明を行います。

その後、委員からの御質問、御意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いします。

事務局

それでは人権施策推進室から、刑を終えて出所した人の現状と課題につきまして、説明させていただきます。

最初に犯罪の動向ですが、昭和20年代前半は、混乱期で凶悪犯や財産犯などの犯罪が、大変増加した時代でありました。また、30年代に入ってきますと、社会全般は、落ち着きを取り戻しましたが、犯罪は減少せず、その質において凶悪化をしています。40年代以降につきましては、交通事故による業務上過失致死傷事件の激増、あるいは、覚醒剤等の薬物事犯が増加の傾向を見せています。

また、昭和の終わりから平成の始め、近年にかけては、諸外国から最も安全な国という評価もある反面、国際化の進展に伴って、来日外国人等による犯罪の増加、また、オウム真理教事件が発生するなど、社会の動向に呼応して、事件が変化して来ているという部分が見られるかと思います。

矯正施設としては、刑務所・少年刑務所・拘置所・少年院・少年鑑別所・婦人補導院などがあり、日本は昔から一貫して改善更生、社会復帰思想、要するに人道主義に基づいた改善更生を基本として、施設を運営してきているという現状があります。

平成13年度における施設の1日平均収容人員は、6万3,415人であり、これは前年に比べると7.9パーセントの増加となっております。昭和61年に5万5,348人のピークがあり、その後、少しは減少しましたが、平成5年から徐々に増加の傾向になり、現在の行刑施設の8割強が、定員を超過しているという状況になっています。また、新受刑者は平成5年以降増加しており、平成13年は、2万8,469人となっております。近年の新受刑者の収容動向としては、60歳以上の者が増加しており、平成13年度は、総数の8.2パーセントを占めるに至っております。

続きまして、少年非行ですが、主要刑法犯検挙人員は成人を上回っており、少年非行は、社会的条件や環境の変化を敏感に反映している面が見られます。特に、昭和26年、39年、58年にピークを迎えています。非行の特徴としては、覚醒剤の乱用の増加、「甘え型」「遊び型」のような単純な動機から行う初発型非行が、約72パーセントでございます。もう一つの特徴は、非行の低年齢化が進んでいるということであり、14から17歳の割合が、大変高くなってございます。

ちなみに、少年非行の検挙数は、平成12年度、13万2,336人であり、全体の刑法犯の総数は、その時には、30万9,649人でありますので、全体の42.7パーセントを占めています。少年の13万2,336人の内の女子が占める割合は、2.24パーセントという数字になっています。人数にいたしますと、2万9,703名となります。

次に出所受刑者数ですが、現在、満期釈放、仮釈放とも年々増加しています。平成8年における出所者の5年後の平成13年末までの再入状況の割合は、満期釈放者が約6割、仮釈放者が約4割というデータが出ています。これを調べてみますと、出所者全体の約45パーセントの方が、5年以内に再入所するという状況がございます。

今度は、更生保護についてですが、更生の中では、まず一番に、保護司の役割があると考えられます。保護司の皆さま方は、保護観察官の補助という立場でおられるわけですけれども、入所した時点から、マンツーマンで対象者を担当します。ですから、保護観察、これは仮出所で出た場合になると思われますが、その刑が満了するまでの期間、常に月2回の保護司への接触義務があります。保護司の数は、全国では5万2,500名が、定数になります。和歌山県の定数は、670名で、現在、631名の保護司の方が活動されています。また、和歌山県内は、8保護区4支部に分かれていると聞いています。

更生保護の施設につきましては、全国に101の施設があり、その内の1施設が、和歌山県にあります。更生保護施設は、更生緊急保護事業として、宿泊所の提供、食事、衣類の給付、就業の援助及び社会生活の訓練等を行っています。対象者は、再犯の恐れのある者となっています。

次に、就労の面についてですが、協力雇用主という制度があります。これは、犯罪や非行歴のある人たちを差別することなく、積極的に雇用し、その更生を支援する雇用主の皆さまであり、全国に、約4,300名の方がおられます。平成10年5月の調査では、更生保護施設に入ってる方で、協力雇用主の企業へ就職した率が、約65パーセントとなっています。

現在、残っています課題は、本人に更生の意欲があっても、住民の意識の中に根強い偏見、差別意識等があることかと思います。どのような面で現れているかと申しますと、引受人が、大変難しい場合などです。親族でもなかなか引き受けて貰えないこともあるということです。就労の難しさもあります。

その次には、住居の確保、これも大変難しい問題があると聞いておりまして、社会と人々の理解と協力が、欠かせない状況があります。刑を終えて出所した人々の社会復帰に資するための啓発活動を推進する必要があると考えています。

和歌山県の取組ですが、事業費補助を「社会を明るくする運動」和歌山県実施委員会、更生保護法人和歌山県更生保護協会、和歌山県更生保護婦人連盟、和歌山県BBS連盟、和歌山県保護司連合会、更生保護法人端正会に対して、実施しています。

最後に結びとしましては、一つには犯罪者を出さない社会をつくっていく必要があると思います。次に更生や社会復帰をどのようにさせていくかということもあります。このようなことを重点に啓発をしていかなければならないと思います。

また、前回の審議会で公権力という面についてもお話がございまして、確かに、この前から新聞等に刑務所等での話が、いろいろと出ております。公権力による人権侵害として、特に顕著に現れたのは、ハンセン病による絶対的終身強制隔離政策であると思います。

また、刑務官の受刑者に対する人権侵害、一番新しいものでは、名古屋刑務所等であったと思います。刑務所にもランクがあり、重い刑で入る刑務所、軽い刑で入る刑務所が違うということです。名古屋刑務所は、かなり重い刑の方が入る刑務所だと以前に聞いたことがあります。その中で、平成13年12月14日、平成14年5月27日、9月25日に発生した受刑者に対する人権侵害事件などが、新聞等で報道されたところであります。私共で調べました情報は、以上で終わらせていただきます。

事務局

犯罪被害者の支援・救済についての現状と課題については、この後、警察本部警察相談課から説明をいただきますが、これに先立って犯罪被害者の人権について、概要を説明いたします。

まず始めに、犯罪被害者の状況ですが、警察に認知された刑法犯(交通関係業過を除く)の被害者数は、被害者が個人の場合では、近年は、おおむね150万人と横ばいでしたが、平成8年から増加傾向に転じ、13年の被害者総数は、前年比約26万人増、率で12.4パーセント増の240万人となっています。

このうち、生命・身体に被害を受けた死傷者総数は、平成12年に4万人を突破し、平成13年には4万5千人あまりとなっています。

また、窃盗などによる財産上の被害を受けた者の数は、平成10年から増加傾向にあり、平成12年では約200万人となっています。

また、性犯罪による被害者についても近年増加傾向にあり、平成13年では1万1千人あまり、女子人口10万人あたりの被害者数は、17.3人となっています。

これらの数字は、あくまでも警察に認知されたものだけであり、また、一つの事件で複数の被害者がある場合は、主たる被害者のみが計上されていることから、統計に現れていない被害者も多く存在すると思われます。

また、犯罪による被害は直接の被害者だけでなく、その家族などの精神面や生活面にも大きな影響を与えるものであり、これらの間接的被害者を含めると、犯罪により被害を受けている方は、相当の数にのぼると考えられます。

これら、犯罪の被害者に対する救済・支援については、後程、警察本部から詳しい説明があると思いますが、国内においては、昭和49年8月の三菱重工ビル爆破事件を機に、犯罪被害者給付制度の必要性が論議され、昭和55年に「犯罪被害者等給付金支給法」が、制定されています。この法律に基づき、昭和56年には、「犯罪被害給付制度」が発足し、生命または身体を害する故意の犯罪行為によって不慮の死を遂げた人の遺族や、身体に重い障害が残った人に対し、国が給付金を支給する被害者への経済的援助が行われています。

また、国際的には、近年の人権意識の高まりを背景に、犯罪により身体的・精神的に被害を受けた被害者に対して、国家による救済・支援が行われるべきであるとの主張がなされ、1985年(昭和60年)に開催された「犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第7回国連会議」では、「被害者は、その尊厳に対し同情と敬意をもって扱われるべきである」、また、「被害者が必要な物質的、医学的、精神的、社会的援助を受けられるようにし、その情報を被害者に提供すべきである」ことなどを規定した、「犯罪及び権利濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」が採択されています。

直接的な被害に対する救済については、「犯罪被害給付制度」によって経済的援助が行われていますが、犯罪の被害者やその家族は、直接的被害のみならず精神面、生活面、経済面等においてさまざまな被害を受けており、これらの人々の人権が大きな問題となっています。

被害者は、治療や転職などの経済的負担や精神的負担によって、身体の傷は癒えても心の傷は癒えずに残るといった深刻な状況に追いつめられることもあります。

特に、通り魔や殺人など凶悪で被害も重大な事件では、遺族や重傷を負わされた被害者の精神的苦痛は、計り知れないものがあります。心の傷は、簡単に癒されるものではありません。また、被害者が、家計を支える人であれば残された家族の生活にすぐに支障が出るでしょう。

また、事件後の捜査や裁判の過程における精神的・時間的負担によって、精神的な被害がさらに深くなる場合や、社会の偏見やマス・メディアの報道などによって、新たな人権侵害が加わる場合などもあります。

特に、報道によるものは、プライバシーの侵害を始め、過剰な取材などにより不快感を持ったり、ストレスを生じるなどの被害を伴います。また、実名報道などにより、被害は本人だけにとどまらず、家族全体が世間の誤解を受け、私生活に大きな制約が出てきたりするケースなどもあります。

近年、国内では犯罪による被害者の問題に対する社会的関心が高まり、これを受けて国では、犯罪の被害者及びその家族の人権擁護のための二法を整備することとして、平成12年に犯罪被害者の保護を図るための二法が成立しています。

一つは、「刑事訴訟法及び検察審査会の一部を改正する法律」であり、その主な改正内容は、被害者などが証人尋問を受ける際の心理カウンセラーの付き添いや、遮へいの導入など、被害者の負担を軽くするための措置や、性犯罪の告訴期間の撤廃などとなっています。

もう一つは、いわゆる、「犯罪被害者保護法(犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律)」といわれるもので、主な内容は、被害者などの公判手続きの傍聴や公判記録の閲覧・謄写を認めるなど、被害者やその家族らの心情に配慮するものと規定されています。

以上御説明しましたように、刑事司法においては、これまで被害者救済のための取組を行ってきていますが、世界的に見ると、欧米では、1960年代に被害者の法的地位を定める動きが始まったのに対し、日本では、1981年(昭和56年)になってようやく「犯罪被害者給付制度」ができるなど、欧米に対して20年以上の遅れがあるともいわれていますように、今後もさらに、被害者の人権に配慮した取組が求められていると考えます。

また、犯罪被害者を支援する民間団体などと連携し、被害者やその家族が抱える精神的、身体的、経済的問題などに対する支援体制を推進する必要もあります。

さらに、犯罪被害者の現状や支援の必要性について、県民が認識を深めるための啓発であるとか、マスメディアによる人権侵害に関しても、メディア側の自主規制による対応や興味本位的な報道に対し、受け手の私たちが厳しい批判の目を向けられるという様な面での啓発といった、被害者の視点に立った施策をさらに推進する必要があると思われます。

経済が依然として低迷を続け、雇用不安も増大するなど、社会全体が閉塞感を深める中、今後も犯罪の増加傾向や凶悪化が懸念されますし、また、誰もが犯罪被害者の立場におかれる可能性を持っているともいます。

県民一人ひとりが、犯罪被害者の人権を自分の問題と捉え、被害を受けた人たちの思いや希望に対して、謙虚に耳を傾けていくことが大切と考えます。

事務局

先程、人権施策推進室から概要の説明がありましたが、警察相談課からは、警察の犯罪被害者支援に関する現状と課題につきまして、御説明させていただきます。

なお、お手元の方に資料として、警察庁発行の「警察による犯罪被害支援」、当県で発行しております「被害者の手引き」、「こころの扉をひらいて」、紀の国被害者支援センターの資料、被害者の遺族の方のサークル発行の「なごみの和」と手記等を、お手元の方にお配りさせていただいていますので、御参考にしていただきたいと思います。

本日の説明は、警察庁発行の警察による犯罪被害者支援を基にして、説明をさせていただきたいと思います。この冊子は非常に良くできておりまして、この冊子を一読いただければ、警察が今、取り組んでいる状況がほとんど分かると思いますけれども、和歌山県の現状も踏まえまして、説明させていただきたいと思います。

そういうことで、一応このパンフレットを中心に説明させていただきますので、パンフレットの方をご覧いただきたいと思います。なお、説明させていただきます項目につきましては、被害者の現状、犯罪被害者支援の経緯、犯罪被害者支援のための具体的施策という3項目について、重点的に説明をさせていただきたいと思います。

最初に被害者の現状について、先程、人権施策推進室からも説明がありましたが、日本国の犯罪の現状は非常に厳しいものがあり、刑法犯の認知件数が増加傾向にあります。和歌山県におきましても、その傾向は同じであり、ちなみに平成14年中の刑法犯の認知件数は、2万3,638件です。これは、刑法に定める全ての犯罪の認知件数です。この数字は、平成10年に2万件を突破し、以後ずっと高水準で推移しています。ちなみに、平成13年は、2万4,000件あまりで、戦後、最高を記録しました。若干、去年は、やや減少しておりますけれども、やはり高水準であるというような状況です。

中でも、最近は、殺人、強盗、放火、強姦といったような、重要犯罪の件数も増加の傾向にあります。最近は、組織的犯罪といいますか、不良外国人による犯罪も増加傾向にあります。

また一方、交通事故につきましても、高水準で推移しておりますけれども、若干、昨年はやや歯止めがかかったような状況で、本県では、昨年の交通事故による死者は90人で、マイナス前年7人ということで減っています。これは、全国的な傾向と同じような傾向にあります。本年3月末におきましても、交通事故の死者につきましては、二桁以上の減少になっています。このまま推移すれば、交通事故の方については、若干の歯止めがかかるのではないかというような現状です。簡単ですけれども、刑法犯と交通事故の現状でございます。

次に、被害者の現状についてですが、先程も説明がありましたように、犯罪の被害者というのは、さまざまな問題を持っており、ご存じのとおり、お金を奪われる、ケガをさせられる、物を盗まれるというような財産的な被害だけではなく、事件事故にあったことによる精神的ショック、あるいは、医療費の負担等による経済的な困窮、無責任な風評やマスコミの取材、報道によるストレスといったさまざまな問題があります。特に、二次的被害ということにより苦しめられるという状況にあります。

今、開いていただきましたパンフレットの右側の中程に、犯罪被害者実態調査研究会が、平成4年から平成6年までの3カ年に亘って調査しました結果が、グラフで紹介されておりますけれども、被害直後の精神状態では被害者が不安だった、運が悪かった、と思った人が一番多い。遺族の方では、悔しかったがトップになっております。また、二次的被害では、両者とも精神的ショック、一生回復することができないほど深刻だというのが、非常に多くなっております。精神的被害の実態が、クローズアップされているというような状況になっております。

次に3ページの右側の、「(2)犯罪被害者支援の経緯」です。パンフレットは途中、割愛させていただきますのでよろしくお願いしたいと思います。犯罪被害者支援の経緯につきましては、これも先程、若干説明がありましたけれども、昭和49年8月に東京丸の内で発生しました三菱重工ビル爆破事件で死者8人、380人あまりの重軽傷者を出した大きな事件でありましたけれども、これを契機といたしまして、公的な犯罪被害者補償制度の確立の声が高まり、昭和55年「犯罪被害者等給付金支給法」が、制定されました。

そして、殺人や傷害などの生命または身体を害する故意の犯罪行為によりなくなられた方の遺族の方に、国が給付金を支給するという制度が、制定されたわけでございます。これが、被害者への経済的援助の最初だということでございます。その後、平成7年の地下鉄サリン事件などを背景に、この法律が一部改正され、また、平成13年に、制定以来20年ぶりに大きな改正が行われたということで、給付の対象が、重傷病人になった方、あるいは、後遺傷害の拡大、これは等級の拡大ということで、支給の対象が広がったというようなことになっております。

一方、犯罪被害者に対する精神的な支援につきましては、日本は、特に、欧米、アメリカ、イギリスに比べまして、その歴史が浅いということです。この資料の中程に、平成3年に開催されました犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウムでの大久保恵美子さんの発言の要約が載っております。この方は、交通事故により息子さんを亡くされた方なのですけれども、この時に「本当の心の痛みをわかって欲しい。お互いに心の悩みを語り合える。そういう支援をして欲しい」というような訴えがございまして、これを契機に、本格的な被害者支援が、展開されるようになったというのが経緯でございます。

先月、東京で国際シンポジウム「犯罪被害者対策の2003国際シンポジウム」が開催されまして、その時に、この大久保さんが話をしておりましたけれども、「10年前は本当にスタートの段階だった。しかし、この10年間で、おかげさまで大きく進歩した」ということで、この10年間の取組に対しまして、評価をいただいたという発言がございました。

しかしながらも、心の支援というのは、今だに大きな課題として残っているのが現状でございます。警察は、警察法の第2条の個人の権利、自由の保護を責務として、設置されたのでございます。警察といたしましては、当然、この被害者対策も警察本来の業務として捉えております。

そういう基本的な考え方を基に、平成8年「犯罪被害者対策要綱」を制定されました。これにつきましては、後程、説明させていただきますけれども、一方、国際的にも人権意識の高まりの中で、昭和60年に国連総会によって、基本原則の宣言が採択されたというような背景もございます。

そういう経緯を踏まえまして、次のパンフレットの4ページをご覧いただきたいと思いますけれども、「被害者支援の必要性と取組」について、記載されております。

先程、説明させていただいたように、平成8年に制定されました「被害者対策要綱」を受けまして、各都道府県におきましても、被害者支援に取り組んでいます。本県警察におきましても、平成8年4月に和歌山県警察被害者対策要綱を制定しまして、初めて本部内に犯罪被害者対策室を設置しております。

この対策要綱は、警察の被害者支援の基本となるものでございまして、その考え方といたしまして、先程も申し上げました「警察設置目的の達成」に加えまして、「捜査活動への被害者の協力確保と二次被害の防止」「捜査過程における被害者の人権の尊重」という3本柱を基本にしております。

加えまして、平成12年5月には、先程、説明がございましたけれども、犯罪被害者の保護を図るための二法が成立しております。警察の行います被害者対策は、被害の届け出、被疑者の検挙、被害の回復・軽減、再発防止等の面で被害者と最も密接に関わっています。特に、事件が発生して、一番最初に接するのが警察でございます。そういうことから、いつも、被害者の視点に立った施策を推進しようということで、いろいろな施策を行っているという状況でございます。

主な施策といたしましては、次のこのパンフレットの6ページに、「(3)犯罪被害者支援のための具体的施策」と10ページと11ページに書いております。その中に、被害者への情報提供がございます。県警では、被害者の手引きを作成しまして、事件が発生すれば、被害者の方に必ず手引きをお渡しして、その手引きの内容を説明しております。

被害者の方、あるいは、遺族の方につきましては、日頃、なじみの少ない刑事手続き等は、全く知らないということでございますので、私の加害者が、警察でどういうふうな経過を経て裁判までいくのかと、初めてここで関心を持たれるということでございますので、その手続きの流れを説明しております。当然、それまでの間、警察の捜査、情報提供の必要性の高い事案、特に身体犯、殺人、傷害、強姦等の方に対しましては、そのような情報提供を行っています。手引きにつきましては、交通事故用や外国語版も作成しております。

次のパンフレットの7ページの被害者連絡制度でございますけれども、被害者は、捜査の状況や加害者の処分に強い関心があるのが当然でございまして、こういう情報の提供を要望しているわけであります。警察庁におきましては、身体犯、ひき逃げの事故の被害者、交通死亡事故の遺族の方を対象に、その都度、事件が発生しましたら、署員の内の1、2名を被害者連絡担当係に指定しております。担当係は、被害者連絡の実施状況の管理、捜査員との連携、いろいろな連絡の窓口を行っています。

被害者連絡制度の概要につきましては、表のとおりで、チャート図のような流れで、殺人、傷害、強姦等の身体犯の被害者またはその遺族、ひき逃げ事件の被害者もしくは遺族、また交通死亡事故の遺族ということを対象にしているということです。この他に交番・駐在所、地域警察官が、地域で活動しておりますけれども、それらの警察官が、被害者の再被害の予防、不安感の解消のために、被害者宅を訪問したり、更生状況の連絡などをしているところでございます。

特に、近年ではカレー事件の時に、直川地区の交番勤務員が、それらの方のお宅を訪問させていただいて、出来る限りのケアを行っているということもございます。

次に9ページでございますけれども、相談・カウンセリング体制の整備ということで、まさしく心の支援にできるだけ応えていこうということです。県警では、県民からの相談・要望に応えるため、相談課を平成13年4月に新設しました。警察改革の大きな使命を担ってできたのが、この警察相談課でございまして、県民からの相談を直接に受けています。各警察署には、相談係を設置しまして、いろいろな相談に応えています。勿論、中には犯罪被害者の方の相談も多くございます。事件の経過を知りたいという相談が、寄せられているということでございます。そして、この相談ということで、参考まででございますけれども、この相談の専用電話は、プッシュ電話の#9110」ということで、短縮番号を設定しております。ちなみに、「9110」ということもございまして、毎年9月11日は、「警察相談の日」ということで、全国で相談の利用促進を図っているということでございます。

専門的なカウンセリングが必要な場合、警察も今後の課題として、当然、必要なことなのですけれども、常駐として、カウンセラーなり臨床心理士の方を配置まで至っておりませんけれども、このことにつきましては、和歌山県被害者対策連絡協議会というのがござしまして、これも後程、若干、説明させていただきますけれども、県臨床心理士会の方と連携を図りまして、相談に応えられるように紹介したり、場合によっては、直接、面接もしていただこうということで進めているところでございます。

次に10ページの犯罪被害給付制度、これも先程、人権施策推進室の方から概要の説明がございましたけれども、この給付制度につきましては、金銭的な支援ということで、古くは通り魔殺人事件等の事件を発端に、こういう制度がいわれまして、先程、いいましたように、三菱重工ビルの事件をきっかけにできた制度でございます。これについても、先程、説明しましたけれども、制度の拡充も図られまして、身体に後遺症が残られた方にも支援を行っています。これにつきましては、給付金のチャート図がございますけれども、金額をいくらにするかというのは、各都道府県の公安委員会が裁定することになっております。警察の方で受けましたら、その事件の概要、被害者の状況、あるいは給付金を受ける資格など、いろいろと審査をしまして、公安委員会の方に、この件につきましては、いくらいくらですということで、公安委員会で裁定していただくということでございます。本県では、平成10年中2件の給付を行っております。この制度の発足以来、本県でも約60件の給付が、出されているということでございます。これにつきましては、当然、和歌山県に住んでおられる方の遺族は、和歌山県の公安委員会の方へ、他府県の方が和歌山県に住んでおれば、和歌山県の公安委員会に申請できるという制度になっております。その逆の場合も勿論ございますけれども、そういう制度でございまして、資料に書いているとおりでございます。

次に14ページの捜査過程における被害者の負担の軽減ということについて、御説明させていただきます。

捜査の過程で捜査官の言葉、行動が、非常に被害者の心理状況に及ぼす影響が大きいものがございます。被害に会ったのに警察にいったら、余計、二次的ショックを受けた。そんなことをしているから盗まれるのと違うかというようなことで、せっかく被害者でいっているのに、さらに追い打ちされるような言動があったというようなこともございますので、その反省の上に立って、二次被害を受けないように、出来るだけ配慮をしようということでございます。被疑者を逮捕したり厳しく処罰するためには、当然、その被害者の協力が、必要不可欠でございまして、被害者やその家族の方には、先程もいいましたけれども、刑事手続きの流れとか、あるいは捜査の経過とかの説明を行っていきます。そして、刑事手続きの中では、被害者自身が、証人として公判に出廷する場合の負担を軽くするために、証人への付き添い制度とか、証人と傍聴人、被告人との間に遮へいなどをつくったり、ビデオリンク方式ということで、別室でビデオを通して証言をするというような尋問制度です。それから、犯罪被害者保護法の制定ということで、被害者の方などが、公判手続きを傍聴できるように裁判所が配慮されるとされたほか、一定要件を満たす場合には、被害者に公判記録の閲覧・コピーが認められているということでございます。警察にしてみましては、いろいろな実況検分などを含めまして、負担を軽くするように考えているところでございます。

次に、パンフレットの16ページですけれども、「指定被害者支援要員制度」がございます。県警本部、あるいは各警察署には、被害者支援要員を事前に指定しております。警察職員は、約2,300人が居るのですけれども、約1割の230人の者につきまして、被害者支援要員ということで事前指定を行っております。

この支援要員につきましては、殺人や強姦、交通死亡事故など、事件事故が発生した直後から、被害者に対する支援活動を行うわけでございますけれども、任務といたしましては、付き添い・ヒアリング・説明でございます。

本県では、平成14年中の1年間で、115件の支援を行っております。特に、池田小学校の事件は当然ですけれども、被害者多数の場合は、被害者支援班を編成しまして、警察本部からも現場へ派遣するというような用意をしております。そのために事前指定した支援要員につきましては、あらゆる機会を通じて研修を行っています。なごみの和の方の被害者の実際の体験談を聞したりして、被害者の身上を少しでも理解できるように、研修を進めていくということで、警察の方もセンター教養といいまして、警察学校に一時的に集めまして、集中的な教養も行っているところでございます。

次に隣のページに移りまして、被害者の安全の確保でございます。

被害者は、加害者から再び危害を加えられるのではないかという不安を持っています。特に、暴力団犯罪につきましては、いわゆる「お礼参り」されるのではないか、警察に届けたら「お礼参り」をされるのではないか、という不安を常に持っています。それを恐れるあまりに、泣き寝入りをしてしまうというケースもあります。そこで、警察としましては、被害者が安心して届け出ができますように、被害者との連携を密にしたり、自宅や勤務地周辺の警戒を強化したり、「いざという時には押して下さい」という緊急通報装置の貸出を行っております。特に暴力団につきましては、暴力団追放県民センターという民間団体がございますけれども、これらと連携を図りながら再被害、安全確保に努めております。

あと18ページ以下に、「(4)各それぞれの分野における施策」を書いております。量が多くなりますので、中の説明は割愛させていただきますけれども、性犯罪被害者への対応ということで、本県におきましても、現在、女性被害捜査官を24人指定いたしまして、性犯罪への対応を行っています。

21ページの被害少年の保護につきましては、本県警察の少年課に少年サポートセンターを平成13年4月に設置しまして、子供の被害があった場合、指導助言、支援活動を行っております。

最近の例では、岩出署管内で、登校中の子供さんがいきなり暴漢に襲われたという事件がありまして、子供さん自身が登校するのに恐怖感を覚えるというようなことにつきましては、このサポートセンターの職員を派遣しまして、岩出署と連携しながら、通学路の安全確保を行っていくような活動も実際、行っております。少年サポートセンターを本県でも設置しております。

あと、悪質商法の被害者に対する相談、暴力団犯罪に関わる被害者への対応、これは先程いいましたように、暴力団追放県民センターと連携しています。

最後の28ページですけれども、最近、社会問題化をしております、DV、配偶者からの暴力事案、ストーカー事案の被害者への対応ということで、警察本部の生活安全企画課に、ストーカー対策室を設置しました。そこには、女性警察官を含めまして、プロジェクトチームをつくっておりまして、警察相談から受けるストーカー相談を、ストーカー対策室と連携し、被害者の安全確保に努めながら、事件検挙をしていくというようなことで対応しているところであります。

被害者支援につきましては、当然、警察の力だけでは、十分目的が達成することができないと思っております。従いまして、民間団体との連携、特に民間による被害者支援センターとして和歌山県にできております、NPO法人の紀の国被害者支援センターとの連携を強化しながら、一方、和歌山県被害者連絡協議会ということで、県の知事部局を含めまして、いろいろな機関との連絡協議会を結成して情報交換を行っています。あるいは、現在、14警察署が、和歌山県にございますけれども、各署ごとにネットワークを結成しております。警察署被害者支援ネットワークということで、県下14警察署を9つの地域に分けまして、それぞれの地域で県の出先機関を含めまして、お医者さんとか保健衛生士も含めまして、ネットワークをつくっているということでございます。あと、被害者支援だけではございませんけれども、総合的な相談ネットワークということで、相談ネットワーク和歌山を、昨年の7月に、相談関係機関・団体で結成し、多くの関係機関団体の力を得ながら、警察としての被害者支援の目的を達成していこうということでございます。

以上、非常に大ざっぱな説明になりましたけれども、警察の取り組む犯罪被害者対策につきましては、やはり警察だけではなかなか十分なことはできない。特に今、被害者の方は、心の支援というものを強くいわれております。物理的な、手続き的な支援はともかく、むしろそれよりも心の支援を希望されています。これにつきましては、当然、警察の中の対策にも限界というのを私たちも考えながら、その中で新しい施策はないかということで、日々いろいろなことを検討しているところでございます。

以上で、私の方からの説明を終わらせていただきます。どうも、ありがとうございました。

委員 それでは各委員の先生方から、只今の人権施策推進室、警察本部からの御説明につきまして、御質問・御意見等を賜りたいのでございますけれども、事前に事務局の方へ、委員の方から補足的な説明の申し出がございますので、御了承を賜りたいと思います。委員どうぞ。
委員

犯罪被害者の人権の問題ですが、先程からお話いただいたことで尽きているように思うのですが、民間団体である紀の国被害者支援センター、発足当時は、紀の国犯罪被害者支援センターという名の団体が、平成9年5月に設立されました。少し当時を振り返りますと、丁度その1年前、平成8年位に、警察の方に犯罪被害者対策室ができたと思います。その中で、犯罪被害者についての対策、「初めて県警が犯罪被害者に対して目を向けて下さった」ということですが、平成9年に犯罪被害者支援センターをつくりました時の主な対象に考えたのは、女性の性被害の問題が中心で、性犯罪に会った時、どうしても泣き寝入りになってしまう、警察の方に届けに行くとなると、先程もお話がありましたように、どうしてもその時の県警の対応が、警察官が男性ばかりだったと思います。

先程お聞きしたように、女性被害捜査官が配属されて隔世の感あるのですが、そういう形で女性の性犯罪が、警察へ訴えて行きにくいというような形で、二次被害みたいな第二のレイプみたいな形のものがあったりというようなことで、非常に苦しんでおられる方々が、命の電話協会の方に電話相談をする。命の電話協会というのは別にあるのですが、そこへ来る所から、この女性の性犯罪の被害について、何かの形で私たちが力になれないかということから、平成8年にできて、警察の女性犯罪被害者対策室と一体となって、平成9年5月に立ち上げました。

その当時から、相談員による電話相談を受け付けてきました。当時の場合、電話相談は、やはりかなりの数でした。皆さんがいろいろな情報を聞いてきて、女性被害については、イギリスの場合ですと、警察の制度、裁判に訴える前の段階として、民間の中で何か非常に入りやすい、相談しやすいような施設があって、そこに行けば代わって下さるというようなことがある。このようなことから、なんらかの形で力になれないか、ということですが、ほとんどの場合は、心の支援、相談の支援に終始してきたのですが、例の夏祭り毒物混入の事件がありました。和歌山カレー事件といわないのは、この間カレー会社の社長さんとお会いする機会があり、カレー事件といって新聞やテレビに出てくるたびに今もカレーの売れ行きが落ちるのだということで、「講演の中でカレー事件のことを使わないようにお願いします」といわれたので、私もそれでしたら「和歌山といわないで下さい、イメージが落ちる」といって、二人で相談して、「夏祭り毒物混入事件」、何かわからないことをいっていますが、その事件の被害者の方々との交流を通じて、いかに社会全体が、こういった方々に対する支援が足りないかというようなことから、心の支援ではなく、初めてそこから直接の支援に移っていくというような形でして、この被害に会われた方々が、いろいろな話をしていく中でいうと、当時、マスコミの被害が非常に大きかったので、できたら各家庭の買い物に行くだけの代わりぐらいを務めていただけたらというような切実な、一寸商店へ買い物に行って下さる代行みたいな形であってもというような、それを聞いてそれからは電話の応対だけでなく、直接の被害者支援に立ち上がっていこうとのことから、今では公判の傍聴に付き添って行くとか、例の入場券をうまく手にいれるとかというようなことからですが、結局はやはり現実の問題としては、心の中まで非常に入りにくいけれども、特に今の県警がその面に力を入れて下さっているので、この6年になるのですが、随分当時よりは、非常にやりやすくなってきています。

けれども、これを人権の一つの分野として、今、私たちが審議会の中で刑を終えて出所した人の人権、例えば、及び、ポツにして、そして犯罪被害者の人権とこのように一つの人権分野の項目として、中に入れていただいてますけれども、このことは、実は、人権教育のための国連10年の項目にも入っていなく、国の行動計画の中にも入っていなく、平成10年にできた和歌山県の人権教育の国連10年の行動計画の中にも入っていない項目で、それ程、新しいというか、我々がそれに気付かなかったといいますか、そういう意味で、この犯罪被害者の人権についてというのは、今、各都道府県のいろいろの人権の分野を見ても、まだ、そこまで取り上げていない所が多い中で、これをここに取り上げていただくということで、かなり多くの方にこの種の人権侵害があるということを知っていただけるということだけでも、私は非常に大きい進歩であり、あるいは画期的であると思っています。そういう民間団体が、これからいくつか出てくると思うのですが、みんなが一体となりながら、大きな人権侵害というような形で警察と一緒にできればと思っています。

委員

ありがとうございました。それでは各委員の先生方から御意見を賜りたいと思います。

始めに人権施策推進室は、おそらく本人は気が付いていないと思うのですが、最近、犯罪が増えたのは、外国人が増えたからというような意味のことをおっしゃっているのです。本人はご存じないかも知ませんが、気が付いていないかも知れませんが、この非常に人権に対する関係の方でしたら、非常に不用意な、つまり、そういう発言が非常に多いのです。警察の方も、不良外国人暴力団云々という発言をされています。そういう発言が外国人に対する偏見をされている。

もし、いうのであれば、もう少し統計的にいわなくてはならない。全体の犯罪率の中で、外国人の犯罪率はこのようになっているとか。例えば、3年越しにパーセンテージがさらに増えているとか。そういうデータをきちんとしていわないといけない。単に印象的に、当人はどちらかというと外国人の犯罪が目立つようだから、外国人の犯罪が多いというような印象を与える説明が多いのです。おそらく犯罪の数に相応しない位、良く取り上げている感じがするので、是非、これにデータがあればお示し願いたいし、データ無しに印象でおっしゃってるのであれば、今後、御注意願いたいと思います。特に、行政職、公安治安に関係されてる方、特にそういう点は留意されないと非常に一般の人よりは被害といいますか、影響が大きいと私は思います。

次は、公権力の人権侵害、非常におざなりな報告で新聞に書いてあることの一部なのですが、大体、歴史的に見ると、皆さんもご存じかと思いますけれども、人権というものは、元々は公権力の人権侵害に対する反発から出てきた思想というか、そういうものなのです。フランス革命もそうであり、アメリカの独立宣言でも、全部公権力の人権侵害に対して、いかに人権を守るかということが中心であり、現在でもその思想は生きていると思うのです。だから、例えばその点を問題にするのであれば、私は是非問題にして欲しいのですけれども、もう少し統計的にきちんしなければならない。データがあるかどうかは分かりませんけれども、おそらく、行政や警察の方はあまり関心がないと思うのですが、このことは、人権問題を取り上げる以上は、極めて重要なことなのです。人権擁護法案が、まだ継続審議中ですけれども、曲がりなりにも公権力に対する人権侵害に対する擁護ということを取り上げています。

それからもう一つは、23ページの児童虐待の対応に非常に注目したのであります。相談件数が、実際とおそらくパラレルになっていると考えてみますと、特に、平成11年、12年、13年に飛躍的に伸びているわけです。平成6年から見れば12倍です。7年間で12倍に伸びています。だから本当のところは、こういうことの分析を聞きたいのです。なぜ、こういうことになるのか、特にこの3年間で、なぜ飛躍的に児童虐待の相談件数が増えてきたのかということです。相談がしやすくなったということがあるのかも知ませんけれども、それでも実態の反映ではないかと思います。親としては、やはり大きなものとして、子どもの人権があり、特に成長期の子供、次の世代を背負う子供の人権問題、特別に重視しなければならないと思います。この点は非常に説明をあっさりと進められたので、もう少し多めに注意されて説明をいただきたいと思います。

委員

はい、ありがとうございました。

何か今の点について、事務局で先程からの説明に補足されるようなことがあれば、おっしゃっていただけますか。

事務局

外国人の犯罪のことですけれども、近年における犯罪の動向として、日本が経済的に発展していく中で、社会の動向に呼応して事件が変化して来ていることの説明として、言わせていただいたものです。

それと先程の公権力のことですけれども、人権侵犯事件の平成14年中の受理件数は、1万8,323件であり、前年度比543件の増加でございます。その内の公務員によるものは、1,399件起きております。そのことも併せて追加させていただきます。

委員 今の御意見にたいしまして、補足しておっしゃれることがあれば、お願いしたいと思います。
事務局

時間の都合がありますので、割愛した部分もございますけれども、児童虐待につきましては、むしろ警察が最近、積極的に取り組んでいるところです。今までは警察の立場としては、家庭の問題、子供の躾の問題というのは、なかなか入り込むのが非常に難しい問題でありましたけれども、先程のDVと同じように、警察も家庭に入っていっています。

数字的に増えて来ているのは、先程、委員もおっしゃいましたように、相談しやすくなったというのもありますけれども、これは子育てに対するいろいろな今の御両親の考え方なりの問題もあるかと思います。

けれども、警察的に見てみますと、やはり、周りの人が非常に関心を持って見ている。結構、警察の相談にも、「近所の子供さんがよく表で泣いている、あれは児童虐待ではないか」という通報なり、相談が結構あります。それだけ地域の人が、子供さんの行動に関心を持っていただいていることも、多少、増加の背景にあるのではないかと考えています。警察としましては、ともかく、児童虐待についても積極的な取組をしていこうということで、ここにもこういう数字も統計も入れております。

それと話が前後になりますけれども、不良外国人の犯罪と私も説明しましたけれども、一般的な犯罪情勢を説明する中で、最近の犯罪情勢の特徴という中で一寸、触れさせていただきましたけれども、具体的な統計数字が必要でございましたら、資料を作成してございますので、本日は持ち合わせしておりませんけれども、御提供したいと思います。

委員

委員の説明として先程、御指摘いただいたということ自身が、ありがたいことです。他に補足してということはございませんか。

なければ、他の委員の方から御意見・御質問等を賜りたいと思います。

委員

刑を終えて出所した人の人権に関する問題で、気にしていることは、刑を終えて出所した人ではなくて、少年のことです。

御承知のとおり、少年院は刑罰を与える所ではありません。少年の保護、育成のために少年院という一定の施設で過ごして学んでくるところです。それで、そこを卒業して来るのですけれども、ある少年が少年院から出てきて、端正会に入りました。その後、いろいろありまして、親元に戻って、親と一緒に仕事を見つけて働きだしたのです。

ただ、少年院から出てきますと、どうしても保護観察所の指導を受けて、保護司さんが付くのですけれども、先程、保護司さんの数などもおっしゃられてましたけれども、ある時に彼と話をしましたら「保護司さんの所に行くのが嫌だ」というのです。定期的に行かなくてはいけないのだけれども「どうして嫌なの」と聞くと、保護司さんが一番最初に、彼に会った時に「少年院上がり、雇ってくれる所はない」といったのです。「いや、実はこうこうでハローワークで仕事を見つけてきました」、「ほうそうか、そやけど、少年院から出てきて長続きする者もあまり居てへんわな」と、いったというのです。

これは、お母さんも同席している所で聞いていますので、決して誇張ではないのですけれども、勿論、その保護司さんが、悪気があってそのようなことをいっていると私は思いません。今までの何年も保護司をされている、そういう経験の中で、長続きしないとか、なかなか就職先が見つからないと言う意味でおっしゃったのだろうと、善意に解釈すれば解釈できるのですが、誰が聞いても保護司として、不的確な発言になることは明らかであると思うのです。けれども、私が聞いたところでは、その方は保護司さんとして何年もされている方でございます。

保護司さん自体は、別に和歌山県の管轄というわけでもなく、法務省ですから、県についてとやかく言うわけではないのですけれども、刑を終えて出所した人、あるいは少年犯罪を犯して家庭裁判所の審判を受け、時には少年院で学んで出てきた子供たちは、今、経済的な不況の中で就職もなかなか難しい。そういう中で、一生懸命働いてる子供や大人、刑を終えて出てきた人に対する関係で、一般の周りの我々も含めて、一般の市民がきちんとした人権の意識を持てるかどうかということもありますが、やはりそういう職に就いている、つまり保護司さんであるとか、県とか国とか、そういう人たちと接する、そういう人たちをサポートする人たちの中にさえ、まだそのような人権意識のないというか、逆にいうと、子供たちの人権を傷つけるような発言を平気でする人たちが、そういう職に就いているということです。今年になってからの事例です。

このことを知って私は、まだまだ、人権の問題というのが、解決できていない問題であると痛感しました。御報告させていただきました。

委員 先程、説明いただきました28ページのDVの配偶者からの暴力事案の対応というところでの質問なのですが、女性の立場からよく話が出てくるのが、配偶者でなければ対象から外れるのかということです。正式な配偶者、正式な婚姻関係がある者のみを対象にするのかということです。実際はそうでしょうけど、そうではない者に対しての扱いというのは、どのようになっていますか。全くの他人という扱いになるのでしょうか。
事務局 正式な婚姻をしていないという、例えば内縁関係ということでしょうか。例えば、そのような場合も同様に扱っております。一応、DVということで、配偶者になっておりますけれども、法律的な配偶者ではなくても、実質的な家庭生活を営んでおるという中でのことについても、当然、対応しています。
委員 実質的な家庭生活ということの範囲なのですが、内縁関係というのは、婚姻届を出していなくても、一緒に住んでいると世間から認められているというような状況が、内縁関係だと思うのですが、そうではなく、女性の立場でよくいわれてるのが、いわゆる恋人間で、そういうことが起こった時は、世間から認められている関係でなければ、きちんとした対応が得られないのだと聞いたことがあるのですが、その辺は大丈夫なのでしょうか。
事務局

基本的には、警察としましては、どのような場合であっても、例えば暴力事案、男女関係、恋人同士、あるいは夫婦関係であっても、実質的に警察として取り組むべきことは同じです。事件処理についてもそうです。ただ、DVというのは、今まで夫婦喧嘩という形でなかなか警察も手を出さなかったというのですか、そういう時期がありました。それについて、積極的に対応していこうというのが、この背景だと思うのです。

今、いわれたように恋人関係であってもこれは当然、そういう中で事件性があれば、同じように対応していく、これは何も変わりがないと思います。ただ、DVとして捉えるかどうかというのは、また、別の問題だと思うのです。

けれども、警察としましては、いずれの場合でも事件が、被害届がなされれば、当然、どんな関係であっても対応していくということでございます。

ですから、場合によっては、恋人関係であっても、ストーカー事案として捉える場合もございます。女性警察官の問題も先程からいろいろ拝聴してますけれども、そういう問題にも、特に状況を見ながら、女性警察官を対応させていくというのは、別にDVであってもどこであっても何も変わりはないということでございます。

委員 それで、よろしいですか。それに関係する御意見があればどうぞ。
委員

そういうことで対応していただけるということでしたら、それでいいと思うのですが、実際の話はやはり、警察の対応自体が変わるという話は、聞いたことがあるのです。

もし、そういうふうに、いわゆる婚姻関係があると法的に認められている、ないしはそれに準ずるもの以外のものでも同じような扱いがなされるということでしたら、それはそれで良いと思いますが。

それともう一つは、先程は刑を終えて出所した方たちへの再犯を犯すということと、おそらく、就職関係と先程の話にも出ましたが、それについて、社会の意識、その当人の意思があったとしても、社会がそれを受け入れるだけの意識を持たれていないというような話があったのですが、ということは、一般への啓発ということになってくるのですが、その辺の実態についてお聞きしたいのは、啓発がうまくいけば、啓発がある程度、実を結べば、刑を終えて出所した人たちが再び元に戻ることがないという、何か裏付けがあるのでしょうか。その辺をお聞きしたいと思います。

委員 なかなか難しい問題でございますけれども。
事務局

先程、いいましたのはあくまでも現状をいいましたので、5年以内を一応の期間と捉えまして、平成8年に出所した人の調査を行っているわけでございます。13年度で満期釈放者の方で約6割、仮釈放者の方で約4割の人がこの5年の間に、また何か犯罪を犯したということです。

ですから、先程も取り上げさせていただいたのですけれども、犯罪を防ぐという社会づくりが、一番大事です。啓発したことがどれだけ実を結ぶかということよりも、刑を終えて出所した人の人権が守られる社会を目指す必要があると考えます。

委員 刑務所の中にいる間の、例えば精神的なカウンセリングとか更生の教育プログラムとかは、かなり良いものなのでしょうか。その辺が良く分からないものですから。どのような形で、いわゆる精神的な、おそらく、私はカウンセリングのような形で、気持ちを変えていくというのが必要になってくるのだと思うのです。そのような教育プログラムは、かなりきちんとしているのでしょうかということも含めての質問だったのですが。
委員 やはり更生を目指した施設として刑務所がある。その中で、仕事、カウンセリングなど、行っているものと思われます。
委員

今の委員の説明、質問と結局は同じことでしょうけれども、社会がどのように受け入れていくかという問題で、例えば企業などでも障害者や刑を終えて出所した人を企業の中に受け入れていくというようなことは、人権の研修の中でも、いろいろな話が出てくるのですが、その後、最終的にはやはり、人権問題として、一人の人を大切に考える時に、そのひとの今日から未来に向かっての評価をきちんとしていく。過去であるとか、その人の持っているようなものについては、一切それについてのマイナスの扱いは受けないというような形で今を評価し、これから先を評価し、しかもその個人の今の能力とか、あるいは意欲とか、そういったものを評価する社会をつくっていくということにおいては、全て同じ問題であると思います。

同和問題も結局ここに話が繋がっていく問題であろうし、だからどうしても、私たちの人権の啓発の問題という形になっていくような時には、全部が同じこととして、それを社会に訴えていき、そういう社会をつくりあげていくというのが、一番の最終的には予防効果になると思います。

もう一つ、刑を終えて出所した人の人権と書いて、ここへポツを打って、そして、この後ろに犯罪被害者の人権と書きますと、何人かの人から質問を受けました。これは、「正反対の問題をいっているのと違うか」、「加害者と被害者のどちらを守るのですか」というような形の質問を受けたことがあるのです。それをその都度、説明しなくてはいけないので、ここに書くので良いのかどうか、この人権の分野を一つ、分野分けをする時に、ここに書いて良いのかという問題があります。現実に、刑を終えて出所した人の人権というのは、現実にそれを扱っている人がまず一つあり、その次には周りを取り巻く一般住民の意識をどう改革していくかという問題ですが、犯罪被害者の場合には、実は一般の方の意識の改革というような面よりは、特定の人からの、つまり公権力が一番大きいのですが、そのような形での被害という意味で、むしろ一般の方々はあまり嬉しくはないけれども、可哀想・気の毒と思って頑張ってという、お声が全部、この方にとってはマイナスになるのですけれども、そういう意味からすると、犯罪の被害にあった人に対して、人権侵害をしようという社会意識はあまりないということです。ここに置くことの問題で、そのようなものがあるということです。

委員

刑を終えて出所した人だけを取り上げるというのが、どうかなと、少しずつ思ってきました。少年の場合は、刑ではないということも勿論そうですし、例えば被疑者段階、被告人段階、特に身柄拘束されている人の場合、それから受刑者の場合、また執行猶予が付いて裁判を終えた人という人もあるかも分かりませんが、それから出所した人の中には仮釈放の人と満了の人とがあるというふうな中で、特に刑を終えて出所した人だけを取り上げて、それとその犯罪被害者をポツで繋ぐというのは、非常に違和感があります。

今時、流行らないかも分かりませんが、被疑者とか被告人とかの人権というのもやはり、捨て去ってしまって、触れないですまして良いのかなと思いますし、その関係でいいますと、特に犯罪被害者の人権ということがいわれています。例えば公判廷における意見表明権というのが認められています。

ところが、それに対して被告人の方は、反対尋問ができない。一方的に被害者が、「このような被害にあって大変なのです」、「この人のためにこういうふうになりました」と言うことに対して、「それは違います」という質問ができない恐れもあり、まさに被告人の人権と衝突する場面も出てきます。そのようなことを考えてみますと、この2つ、結局、小委員会の方で御議論していただくことになると思いますが、もう少し枠立てを考えた方が良いのかなという気がしました。

それともう一つは、これは事務局の方にお尋ねということになるかも分かりませんけれども、刑を終えて出所した人に対する人権侵害の中で、各種の資格剥奪があります。法律上もあるかも分かりませんが、例えば県の資格を与える調理師試験、そのようなものがあると思うのですが、そういう中で犯罪を犯した人に対する受験資格を認めないとか、入札資格などでも、何かなかったかなと思います。そのような刑罰を受けた人に対する一定の県レベルでの資格制限の法制があると思うのですが、そのようなことも一応、整理して教えていただきたいと思います。満了してしまえば何もなくなってしまうかも知ませんが、仮釈放だと残るのかなと思ったりもします。一度その点は、事実関係を御整理していただきたいと思うのです。ともかく、先程の小委員会の方で何を取り上げるかということを十分に御議論いただきたいという気がしました。

委員

少し一般的な形で、私の感じたことを申し述べさせていただきます。

ずっと、今まで日本がやはり、更生ということに力を置きながら、一人ひとりがそういう刑を犯さずにおれなかったというふうなことを思い、そして以後の人生ということに重点を置いたような刑法についての考え方で来たのですが、やはり最近、凄くそれがぐらついているような感じも受けます。

名古屋の刑務所のことでも、凄いな、人権侵害にあっていながら一寸、耳をすましたら、外国のどこどこの国だったら、刑を犯したらもうすぐに殺される。いろいろそういうふうなことがいわれるような、人権意識が本当に根付いているのかなと思う時もあるのですが、せっかく、日本が固有のそのような人権意識を築いて来たからには、いろいろなことを直感した意見をお互いに討議しながら、今まで築いてきた、ポツで結べるような社会であって欲しいと私は思うのです。

それにはやはり、上滑りにこう来ているから、やはり今までの通りで行かなくてはというのではなくて、いろいろなことを出し合いながら、それでいてやはりこういうふうな人権局ということで組織でも重要視されるという、これを継続していきたい。私は、そういう国民意識を持ち続けたい。だから刑務所は、今後の人生のためという、そういうふうなことであって欲しいと思っております。

そしてもう一点は、具体的になるのですが、この議論はいろいろな分野に分けて考えて、今まで進行していただいて来たのですが、既に子供の人権とか、あるいは女性の人権とか、そういうことでの話は通って来ているのですが、ここでもまた、いくつか重なる問題、先程、出ていたDVの問題、あるいはもっと心痛く受け止めさせていただいたのは、14歳から17歳の犯罪が、非常に増えているということです。

この問題について、私たちは少しのんき過ぎないかなと、あるいは児童虐待の問題、あるいはDVの問題とそれは無関係なのかな、というところの掘り下げは、今、研究はいろいろな所で進んでいるのだと思うのですが、その急務性、あるいは誤判性のある子供たちということについても、もっと心を痛めなければならない、もっと取り組み方によっては、進歩もあるのではないかということを思っております。

そして、家庭内の暴力ということも今の警察で取り上げていただけるということですが、実際に夫婦喧嘩が、DVだということで訴えがあって、110番通報があった場合に来てくれたけれども、「もっと話し合えとか」という話を、あるいは別居している夫婦の片方が押しかけて、ブザーを凄く鳴らすので警察を呼んだのですけれども、「夫婦か、話し合いなさい」。なかなかこれは、その辺の見分けとか、あるいはどこまでがというのがまだ、本当に難しいのだと思うのですが、具体的に凄いこんな事例がありましたとか、あるいはやはり難しいという現状ですね、多分、調書とかもどの程度まできちんと取られていて、あるいはそれは非常に深刻な場合は、どこかへ連絡とか、あるいは地域との関わり合いとか、そういうことまではどうなっているのかとか、そういうことも具体的な質問として心に浮かびましたのでお聞きします。

委員 今の御意見、御質問につきまして、何か事務局の方でお答えいただくことはありますか。
事務局

先程の資格剥奪につきましては、整理しまして後日、報告させていただきます。

それと児童虐待の関係で特に子ども障害者相談センターが、和歌山市と海南市の境目の所にあるのですけれども、通報があれば相談などの対応を行っています。また、DVに関しましても、女性相談所が避難場所的なものとして設置されております。

事務局

DVに関しましては、警察は一応、現場を持っています。110番なりがあって現場に行って、例えば、まさに血を流して何かをしているとなれば、すぐに傷害の現行犯として逮捕できます。

しかし、夫婦間の暴行の事案につきましては、やはり被害者として、はっきりとした意志の明確化をしていない限り、なかなか難しいところもあります。ですから、そこら辺は、相談という中で、現場での実態を見ながら、今、おっしゃいましたけれども、女性相談所という所と連携しながら、取り敢えず保護という形で、対応しています。

しかし、案外現場に行くと、「とにかく止めてもらえれば良いのです、事件化は要りません、被害届は出しません」という場合も結構多いのです。警察も事件とする以上は被害者の明確な被害届を確認した上でないと、それに着手した後、「いや、もういいです。」となってきますと、私共も検察庁とか、いろいろな関係もございますので、現場でのまず状況を制止するということです。

当然、警察官等職務執行法によりまして、警告なり制止をさせていただきます。その後、事件化するかどうかは、やはり家庭の問題というのは複雑な問題でございますので、明らかにそこでは、はっきりした以外は意志を確認します。「ここまでで良いですよ」というのであれば、相談機関を活用しながら対策の助言なりをしています。別に110番をかけていただいても、アドバイスはしております。

それと今、お話がありました非行の低年齢化ですが、14歳を中心にして非行年齢が低年齢化していることは、ここ10年以上いわれてることなのです。最近、先程いいました少年サポートセンターができてますけれども、そこではキッズサポートスクールを行っております。

やはり、ことの善悪とか、非行の芽というのが、それだけ低年齢化するということは、もっと早い段階から手を打つべきではないかということで、少年課の方では、少年補導職員、あるいは学校の先生の協力を得ながら、小学校へ訪問して、そして、学級ごとにそういう教育をしております。子供さんに対して、例えば一つのケースを挙げまして、「プラモデルが欲しかったので、引き出しからお母さんの財布からお金を抜きました」、「これについて皆さんはどう思いますか」というようなことを、意見を出し合いながら、規範意識を高めていく。やはり規範意識そのものの低下というものが、今の非行の低年齢化に繋がっていると思いますので、そういう取組も警察としては、行っておりますので、参考までですけれども報告させていただきました。

委員

犯罪被害者の人権と刑を終えた人の人権の関係ですけれども、中身から見て、別の人権というか、切り離して考えた方が整理されるような感じがします。

今日の議題は、刑を終えて出所した人及び犯罪被害者等の人権となっているのですけれども、2つのテーマを議論するという意味で繋げていると思います。項目として取り上げる場合には、刑を終えて出所した人の人権の問題と、犯罪被害者の人権という、それぞれの項目を挙げた方が良いのではなかろうかと思います。

それから、刑を終えた人以外にも被疑者段階の方、あるいは逮捕されたけれども釈放になった方、いろいろな段階がありますので、どのような方の人権も勿論、大事な人権で、それぞれ侵害されることがあれば、守らなくてはならないのですけれども、和歌山県の行動計画でも、他でも、刑を終えた人の人権という一つの章を設けてきているところから見て、典型的な例として、刑を終えた人の人権を一つの章としてあげるというようなことで良いのではなかろうかと思います。いろいろとそれに付随した人権もあると思うのですけれども、一応、それを典型的なものとしてあげて良いのではなかろうかと思います。

委員

刑を終えた人の気持ちに、ふと自分を置き換えたのですけれども、一般的には、まだまだ市民レベルまで、刑を終えた人とか、被害者に対する思いとかは、全然、無頓着というようなことなのです。例えば、私が刑を終えて出てきた場合、実際に社会が本当に理解して受け入れてくれるであろうか、厄介者にされないかどうか、真面目に働くからということで受け入れてくれるだろうかというような思いで、ずっと考えてきました。

いずれにしましても、刑を終えて帰ってきた場合、御本人に更生意欲があるかどうかによって、人権を自ら擁護するかどうかというようなことになると思います。そうした中で、先程、事務局から、欧米と比べると10年ぐらい遅れているというお話がありましたけれども、どのような内容で遅れているのか、私も理解していないのですけれども、ふと精神障害者問題とこれを比較してみますと、やはり当事者が自らが考えて訴えてこそ、社会が受け入れてくれるというようなことなのですが、刑を終えた人の場合は、一旦レッテルを張られると、果たして本人が勇気を出して人前でいろいろとPR、啓発をできるのかというのが一つあります。

それから、刑を終えた人とか、被害者の家族の人たちに対する心の支援はどうなのか。「こころの扉を開いて」というチラシを、今回、私は初めて見たのですけれども、あまり普及されていない。あまり市民レベルに至っていない。青少年分野でしたらシンポジウムを開いたり、いろいろと訴える場があるのですけれども、御本人からこういう動きがなければ、非常にやりにくい。あまりそれをやりすぎたら、「放っておいて下さい」というようなことにもなりかねない。そのような難しさがあるのですけれども、いずれにしても、被害者になるということは、絶対にないとはいえませんから、そのような面から、いろいろな啓発をするということも必要ではなかろうかと思います。

このことは、具体的には、小委員会レベルでお話していく問題と思いますけれども、刑を終えた人たちの顔が見えない、どのような思いで今後活動していくのかが見えない中で、対応策が非常に難しいという思いがしました。以上です。

委員

先程、おっしゃられた刑を終えた方の資格ということで、今日のことに繋がると思わないで、2日前に会話をしたのですが、産業廃棄物処理場の許可などについては犯罪歴があるということで、確かに明記があります。

なぜなのかということになりまして、我々は凄く単純に再犯率が高いので、最初から資格を剥奪してしまうのではないかということで、それ以上は議論が進まなかったのですが、それで済ませてしまっても良いのかなと今、思いました。

私はいつも思うのですが、人権ということに関して、象徴的に、また、一般的にいわれますことは、被害を受けた人間は、必ず映像としてマスメディアに出る。けれども、加害者であろう方とかは映像として出ない。加害者になった場合に、映像として出る。確実に被害者であるので出るということが、いろいろな意味で人権と直接というよりも、具体例として凄く現れているような気がします。被害に会って、どうしてその家族までが画像として出ないといけないかということです。その方の人権はどうなるのか、肖像権とかいろいろなものがないので、ニュースで流れてしまう。一度あったことですが、女性が事件に巻き込まれて、何気なく聞いていると、画像を見て判断をするのです。「あの親やからあんな娘ができた」というような、実際、全く知らないけれども、人間というのは視覚の中でそういう判断をする。加害者と被害者を一つに並べてしまうとかではなくて、それぞれの違った視点の人権というのをもう一度、見ないといけないと思います。

それと保護司の方のことで、私も現実に遭遇したことがありました。交通事故の被害に会った時、警察から、「この青少年を訴えるかどうか、厳しい処罰にしますか。もしくは穏便にしますか」ということでして、多分そのことによって、「彼のこれからの対処が違ってくるのでしょう」というような話でした。

そして、「保護司が付いて、彼は保護観察処分になると思います」ということでした。私は彼には兄弟もあり、次の子の就職がすぐに決まるというような家庭環境を知っていましたので、社会的にそういうお兄さんがということになると、不利になるという世の中が現実に見えていますので、では穏便にということで警察の方で取り扱って下さいました。

その後、保護司であるという方にお会いした時に「どうせ、ろくでもないから、厳しく訴えたら良かったんや」というような言われかたをしましたので、「あなた、その子の家庭環境、云々というのをご存じないからそういうことをおっしゃるのですね」と言うと、「どうせ、弟も妹も同じようになる」といわれました。保護司の方たちが全て、そうとは思いませんが、やはり悪い者との決め付けではなくて、更生をさせていくという気持ちが必要です。そういう立場にいらっしゃる方も同じように人権についての学習をなさってると思うのです。そのようなこともより一層進めていただきたいと思います。

委員 昔から保護司さんという言葉は、よくお伺いするのですけれども、どのように選ばれて、どれくらいの任期でしていただいているのか。保護司さんは、少年の更生のために凄く重要な役割であり、長くなさって、確かに経験が豊富でいらっしゃると思うのですが、それだけに今の若い子たちと、年代がかなり開いてきて、心を通じ合わすのに、一寸、年代が凄く違うというようなイメージがあります。そのことについて、お伺いしたいと思います。
事務局 任期は、2年となってございます。定年は75歳で、給料は無給です。
委員

保護司の方や同じように活躍されている更生保護婦人団体とか、そういう形で、活躍して下さっている方、確かに非常に地域の中で頑張って下さっているということは確かです。なるべく自分の名前を出さないというような形で、頑張っていただいているということもあるのですが、正義感が強いとか、そういった形で一途にしていただくという側は良いのですが、逆に先程からお話があるように、始めから「犯罪加害者である」とか、あるいは「保護観察処分にある者は、悪い、何かをしでかした」という思いがあって、それを一つこの可哀想・気の毒とこのような形で考えながら、自分は一つ何とかして更生させようという意欲の強さが、逆に言葉の中で非常に沢山出てくるのは、暖かく向かえてやろうということですが、暖かくというのは一寸、言葉としてはあまり良いことではないように思いますが、普通の形で、生活できるということを実現させる、サポートしていくということであろうけれども、先程も話にあった仕事の関係の中でも、「どこか働く所ないかな、一つ頼みます」というような形になってくるから、始めから、やはり人権ということをあまり考えない形で考えていると思われます。

7月には社会を明るくする運動の月間が、毎年、行われています。和歌山県でも行われていますけれども、その時になると運動が高まりますけれども、ほとんど運動の内容からいいますと、そういう形で、最初から悪いという決め付けがあって、それを何とかしてやろうという上下の関係だけで話されていて、この保護観察の中で担当されている方の中で、あまり人権というような形の言葉が、今まで出てきたことがないような感じがするのです。

委員

いろいろ貴重な御意見等をいただきまして、我々とすれば、やはり、人権という立場で、ものごとを考えなければいけないと思います。

先程、いろいろと出ていました刑事法の問題、あるいは刑の目的、また行刑の問題とか、いろいろな難しい問題があります。基本的にはやはり、この最初に出ていましたような人権の侵害、公権力、あるいは民間同士の、そういう所から来るところの、この人たちに対する人権の問題、あるいはまた、今まで出ておりました一つのイメージに基づくところの差別感、そういうことを気にする人権の問題、こういうふうな問題というものを、我々としたら、重要に考えていかなければいけない。そういう所からこれらの2つの問題を、特に、御検討を賜る必要があるのではなかろうかというふうなこと、皆さま方に貴重な御意見を頂きながら感じました。

この問題につきましては、時間の関係もありますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

委員

いろいろ貴重な御意見等をいただきまして、我々とすれば、やはり、人権という立場で、ものごとを考えなければいけないと思います。

先程、いろいろと出ていました刑事法の問題、あるいは刑の目的、また行刑の問題とか、いろいろな難しい問題があります。基本的にはやはり、この最初に出ていましたような人権の侵害、公権力、あるいは民間同士の、そういう所から来るところの、この人たちに対する人権の問題、あるいはまた、今まで出ておりました一つのイメージに基づくところの差別感、そういうことを気にする人権の問題、こういうふうな問題というものを、我々としたら、重要に考えていかなければいけない。そういう所からこれらの2つの問題を、特に、御検討を賜る必要があるのではなかろうかというふうなこと、皆さま方に貴重な御意見を頂きながら感じました。

この問題につきましては、時間の関係もありますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

委員 次に、次回からの進行、今後の進め方等につきまして、事務局から委員にお諮りしたいことがございます。事務局から説明願います。
事務局

説明させていただきます。

お手元の資料の中の平成15年以降の人権施策推進審議会のスケジュールについて(案)を見ていただきたいと思います。

第10回の審議会を5月下旬に、人権に関する意識調査という議題で、お願いしたいと思います。意識調査の調査項目等を審議していただく予定です。

そして、6月からは分科会へ入っていきます。15人の委員が5人ずつの3つの分科会に分かれて、審議をお願いします。

次に、項目の分類ですが、9番目にさまざまな人権があります。また、先程から御意見がありましたように、犯罪被害者とその家族の人権とが8番に入っています。この分類についても、次回、検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

それから分野別施策の素案の組立ですが、「現状と課題、基本的方向、基本的なとりくみ」というまとめ方をしたいと思います。それぞれの項目を合わせていきたいと思ってございます。その点の御了解もよろしくお願いします。

事務局の説明は以上でございます。

委員 例えばこれ以外の個人情報の問題なども今、非常に重要な問題になっております。個人情報の問題についてのこの人権侵害ということも十分考えなければいけない、大きな問題だと思います。さまざまな人権と書いてあるこの項目を、このような十把一絡げで良いのかどうか、また、他等のつり合いもございます。そのようなこととの兼ね合いで、直ちにでなくても結構ですけれども、各分科会について、事務局の組み分けに従っていくことにしまして、この次の各分科会に入っていく前に、各分科会に担当される事項について、もう少し、検討し直す必要があるのではないか。各分科会の割付をし直す必要があるのではないかとも思われます。もし、そういう点につきまして、御意見がございましたら、次の回までに事務局へお願いしたいと思います。それで場合によっては、この配分した事項につきまして、他の分科会の方に割付を変更しなくてはいけないかと思います。
委員 組立についてですが、現状と課題、基本的方向、基本的なとりくみとあります。要するにこれは基本的なことだけをまとめたら良いわけですか。具体的なことは、あまり取り上げなくても良いのですか。
事務局 これは、先に事務局案をこういう形で提示させていただきたいと言うことでございます。
委員 基本的方向、基本的なとりくみとありますから非常に簡単にまとめようと思えばまとまります、基本的方向ですから。どの程度の具体性を付けるかという話をしているのであり、そういうことを含めて事務局が事務局案として提示されるということですか。
委員

側聞するところでは、各分科会に所属する職員を、事務局で一人づつ割り当てるということです。割り当てられた職員が次の各分科会の方に出席しまして、それで各分科会の委員の御意見を伺いながら、どのようにまとめていくかということを検討したい。

どのような検討をするかの素案としまして、こういうふうな3項目を中心にしてよろしいかということだと思います。

委員

もう少し、はっきりします。簡単にいえば、誰を対象にしてつくられるかという問題です。これは県の人権施策だから、担当する行政の人を中心に分かる程度の内容なのか、広く県民にも配って、県民にも理解を得るというふうなものとしてつくられるのかどうかということで、内容が違ってくると思うのです。

実際問題としては、あまり基本的な方向ばかりだと県民も分からないと思うのです。

事務局 これは当然、県民向けのものでございまして、これを受けて県としてどのような施策を打っていくかということにつきましては、これの下に施策の実施要領なりを作成していくのかなと考えてございます。
委員 一般県民に対する啓発をも兼ねたといった方が良いのではないでしょうか。
委員 現状と課題、基本的方向は良いが、とりくみには基本的というのは要らないと思います。とりくみというのが具体的で、現実、取り組むものをとりくみというのであり、基本的なとりくみなどという、いい加減なものはないです。だから、とりくみとは、例えば当面やれるものと3年先までに完結するものと、これは5年以上かかるものみたいな、内容としては具体的になってきます。叩き台を持ってきて、あとは各分科会の中で自由に検討する時の対象教材という程度でよろしいか。
委員

私は、事務局の考え方を推測して申し上げるのですけれども、各分科会でまとめ上げていただくにつきまして、現状と課題、基本的な方向、取り組み方というふうな3つくらいに分けてつくりあげていくという方向で良いだろうか、どうだろうか、そういうことに一応、ここで御承認賜れば、3つの分科会があまり異なった進み方ではなく、同じような方向でまとめていけるのではないかということでお図りしているのだと思います。

できれば、そういう方向でやっていくということにつきまして、御承認賜り、あとは各分科会の方で他の分科会とも調整しながら修正していただくというふうな方向でお願いできればと言うことだと思います。これは違っていますか。

もし、そういうことで良ければ、そういうふうな方向で御承認賜って素案づくりはそういう方向で進めさせていただきたい。これは決して素案ができたから、その方向ということで固まってるわけではありませんので、各分科会の方で適宜御修正いただくということは勿論結構です。中身は勿論、各分科会の方でつくりあげていただくというふうに事務局も考えていることだろうと思います。

委員 要するに協力して、共同してつくるということですね。これは一番最初に事務局がそうおっしゃいました。他の審議会では、たいてい素案が出てきて、少し修正した程度で終わりなのです。そうではなく、「事務局と委員が共同でつくりあげる」とおっしゃったから、これはなかなか、腰を入れているという感じはしました。そういうことなので、だからあくまでも我々は素案全部を書き換えるということは実際できません。膨大な資料から苦心してつくるわけですから。だけどどうしても足らないという所があります。それはそれでいろいろと討議して補っていく。要するに協力してより良いものをつくるということが根本です。勿論、協力性を多いに私は持っているつもりです。
委員

おそらく事務局の方はそういうことでやはり、5人の委員が集まっていろいろな問題を検討していただくことにつきまして、一応、叩き台といいますか、叩き台とさえならないかも知れませんけれども、そのような素案があった方が御審議賜りやすいということだと思うのです。あくまでも中身は各委員が補充して行っていただくということが基本だと思います。

おそらく県の方では、過去における国連10年の県の行動計画とか、あるいはそれの手引きとかを基本にして、素案づくりをされていくのではないかと、想像されますが、それからさらに進んでいかなくてはいけない点が多々あると思います。時代の条件によって考え方の基本が変わってきている点もありますし、また新しい分野、新しい人権の問題が起こっていると思いますので、そういう所につきましても委員の方で補充し、深めていっていただくということが必要だと思います。そういう意味で御了解賜りたいと思いますが。御承認いただけますか。(委員御承認)

ありがとうございます。そういう方向で事務局の方で進めさせていただくようにします。

長時間に渡りましてありがとうございました。本日は終わらせていただきます。

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