ごみ散乱状況調査とごみ箱設置社会実験に基づくごみの散乱防止効果の分析

公開日:2022年4月12日

代表研究者
所属機関 和歌山大学 システム工学部
氏名 吉田登
e-mail yoshida@wakayama-u.ac.jp

令和2年度

概要

令和2年4月に施行された「和歌山県ごみの散乱防止に関する条例」では、ごみの散乱の防止に関する広域的かつ総合的な施策を策定することとされているが、県内市町村では、公衆用のごみ箱設置に関する情報が不明確であり、設置に取り組むことが困難である。ごみ箱設置を進めるには、「散乱ごみ発生の要因」と「ごみ箱設置の費用対効果」に関する情報が不可欠である。

令和2年度の研究では、文献調査および自治体へのヒアリングを通して、ごみ散乱への対応策を把握する。また、和歌山市等の特定美観地域およびその周辺をウォークスルー調査(令和2年10~11月)し、ごみの散乱状況をごみの種類別にヒートマップで可視化した。

分析結果

  1. 文献調査により、ごみ散乱防止へ向けた、これまでのアプローチに関する知見を整理した、その結果、1つは心理学にもとづく応用行動分析的アプローチで、学習による行動変容を促すもの、もう1つは社会学等にもとづく環境犯罪学的なアプローチで、ソフト・ハードの両面から捨てさせない環境づくりを目指すもの、という2つのアプローチがあることが分かった。
  2. ウォークスルー調査により、ごみ散乱の状況と要因を把握した。散乱ごみとして、たばこの吸い殻、次いで菓子類等の容器包装(プラ・紙)が突出して多かった。
  3. 自治体ヒアリングに基づき、和歌山市では令和3年度の社会実験対象やシナリオのポイントの1つとなる、アダプション・プログラムの指定場所、年次についての情報を得ることができた。倉敷市での調査により、ダストボックス設置の効果を知ることができた。また、街路、公園、ごみ箱の管理を組み合わせることが重要であるとの認識を得た。
  4. 和歌山市の一部の街路では、たばこの吸い殻の散乱密度が平均的な水準を大きく超えていた。また公園については、場所による差が大きく、アダプションなどの公園への関与が影響していることが示唆された。
  5. 今年度の知見をもとに、令和3年度に向けて、ごみ箱設置の社会実験へ向けたシナリオを検討した。

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 吉田 登 和歌山大学 システム工学部
研究分担者 佐久間 康富 和歌山大学 システム工学部
研究分担者 中尾 彰文 和歌山大学 システム工学部

令和3年度

概要

令和2年度の研究では、文献調査および自治体ヒアリングによりごみ散乱への対応策を把握した。また、ウォークスルー調査を実施して、ごみ散乱の状況と要因を把握した。その結果、和歌山市内の散乱ごみとして、街路ではたばこの吸い殻、公園では菓子類等の容器包装が多いことを確認した。
この結果を受け、令和3年度は、ごみ箱設置によるごみの散乱防止効果を検証するため,以下の社会実験を実施した。
  1. たばこの吸い殻の散乱密度が高い和歌山市新内の柳通りに投票灰皿を設置し、毎朝投票本数(吸い殻本数)を計測した(期間は令和3年9月6日~10月4日)。
  2. 菓子袋等の容器包装の散乱密度が高い和歌山市新南公園、および散乱密度は高くないが、現地で清掃活動が行われているなど将来的に維持管理の担い手が存在する向之芝公園に菓子袋回収用の木箱を設置した。設置期間は、新南公園は令和3年9月11日以降(協力いただいた小学校や連合自治会の意向もふまえて継続実施中)、向之芝公園は令和3年10月21日~12月28日である。
また、自治体のごみ散乱条例制定やごみ箱設置の意向を把握するために、和歌山県内の各自治体美化担当にアンケート調査を実施した。

分析結果

  1. ごみ箱(投票灰皿・木箱)設置によるごみ散乱防止効果については、街路(投票灰皿設置)では明確に確認することができた。一方で、公園(木箱設置)では一部のごみでは確認できたが、全体としては明確に確認することができなかった.それには様々な要因が考えられる(コロナ禍、雑草繁茂、リバウンドなど)。
  2. KDDI株式会社と技研商事インターナショナル株式会社が共同で開発したKDDI Location Analyzerを使用して、投票灰皿周辺の人流データを調べた結果、投票吸い殻本数と人流との間には正の相関があることが明らかになった。一方で新型コロナ感染者数や設置後の経過日数(認知などの累積的な効果)について統計的に有意な結果はみられなかったが、このような社会実験に対する定量的なデータ利活用の可能性や方法論を提示した。
  3. ごみ散乱防止効果以外の成果として、ごみ箱(灰皿・木箱)設置をきっかけに、関連主体(街路ではアロチ商店街、公園では紀陽情報システム、新南小学校、新南地区連合自治会)との繋がりができ、社会実験継続が期待されることとなった(アロチ商店街主体での灰皿設置、新南地区連合自治会による毎週の木箱ごみ回収)。今後、関連主体による管理をもとに、ごみ箱設置の効果を長期的に見ていくことが有効ではないかと考えられる。また、社会実験の過程において、利用者にごみ散乱防止への意識が醸成されたと考えられる(柳通り沿いの飲食業者による清掃への動機づけ、新南小学校生徒による美化ポスター作成、木箱へのごみ投入増加など)。
  4. 自治体への意向調査の結果、すでに現在、公園にごみ箱設置をしている自治体が複数あること、また将来的にごみ箱設置を検討予定の自治体もみられた。また、本社会実験の結果について、関心を寄せられた自治体が複数みられた。

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 吉田 登 和歌山大学 システム工学部
研究分担者 佐久間 康富 和歌山大学 システム工学部
研究分担者 中尾 彰文 和歌山大学 システム工学部

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