和歌山県で行うワーケーションの効果

公開日:2022年3月31日

代表研究者
所属機関 富士通Japan株式会社
氏名 桝野弥千雄
e-mail masuno.michio@jp.fujitsu.com

概要

令和2年10月15日、和歌山県と富士通株式会社は、地方創生や地域課題の解決、地域の産業活性化などを目的に、相互の連携・協力を通じた持続可能な地域社会の構築を目指して、ワーケーション・移住の包括協定を締結した。この中で、ワーケーション推進による関係人口の創出の取り組みのひとつとして、「サスティナブルエコツーリズム」のトライアル実施が挙げられている。これは、富士通の従業員が現地での体験や交流を通じて新たな知見を獲得することを目的に、「サスティナブルエコツーリズム」をテーマにしたワーケーションプログラムをトライアル実施し、共同で効果測定やプログラムの改善を行っていく、というものである。

これを受け、本研究では「サスティナブルエコツーリズムをテーマにしたワーケーションプログラム」において、ワーケーション受け入れ側である和歌山県の視点と、ワーケーション実施側の富士通社員の視点で、ワーケーションプログラムの効果を検証し、改善点を明らかにする。

ワーケーションには、富士通社員18名が参加した。男女別では、男性11名/女性7名、居住地別では、関東圏10名/関西圏8名である。

分析結果

  1. ワーケーション受け入れ側の課題
    関東圏・関西圏からのアクセスについては、関東圏の参加者の6割、関西圏の参加者の4割が「アクセスが良い」と評価した。また、自宅からワーケーション実施場所までの所要時間は、関東圏・関西圏ともに3時間20分と同じであるのに、関東圏と比較して関西圏の評価が低かった。これは、飛行機の搭乗時間(1時間)とJRの乗車時間(2時間20分)の差が原因と推察する。関東圏の参加者からの評価は高かったものの、さらなる改善点として、1日3便の飛行機の増便もしくは座席の増、空港設備の充実が挙げられる。
    ネットワーク環境については、参加者の8割が「ネットワーク環境に問題ない」と評価している。ワーキングスペースで実測したネットワークの通信速度の結果を見ても問題はなかった。なお、通信環境が悪い特定の部屋が存在する可能性があるため、その部屋の特定と環境の改善が必要である。
    業務実施に十分な設備が用意されているかについては、参加者の7割が「業務実施には十分でない」と評価した。ホテルの部屋に設置されていた机と椅子の高さがデスクワークに適していなかったことが主な理由である。また、隣室の話声が聞こえることがあり、防音強化も改善点として挙げられる。
    和歌山県への再訪については、参加者の9割が「和歌山県を再訪したい」と評価していた。和歌山県の自然や文化、特に今回訪れた熊野の魅力を感じ、体験できたことが主な理由である。
  2. ワーケーション実施側の課題
    創造力の喚起については、普段と比較して創造力が喚起されたと評価した参加者は5割であった。評価した理由は、普段とは異なる「環境」や「新たな人との交流」が挙げられている。改善点としては、十分な時間の確保、創造力を喚起するプログラムの提供、が挙げられる。
    仕事に対するモチベーションについては、普段と比較して「モチベーションが上がった」と評価した参加者は4割、「普段と変わらない」という評価が5割だった。モチベーションが上がった人は理由として、「新たな人との交流が刺激」を挙げている。体験プログラムで時間や体力が取られ、仕事のモチベーションが上がるには至らなかったという声が多く、体験プログラムと業務の両立を図ることが改善点である。
    ワーケーションの良さの実体験については、ワーケーションをまた実施したいと評価した参加者は9割であり、今回のワーケーションにより、ワーケーションの良さを体験できた。ワーケーションを実施する条件として「体験プログラムと業務を同じ日に実施しない」、「会社制度における費用面のサポート」、「ワーケーション非参加者のワーケーションへの理解」が挙がっている。

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 桝野 弥千雄 富士通Japan株式会社
 

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