和歌山県における地域経済ハザードマップの開発

公開日: 2021年7月08日

代表研究者
所属機関 名古屋大学 減災連携研究センター
氏名 山﨑雅人
e-mail yamazaki.masato@nagoya-u.jp

概要

工業統計や産業連関表、民間データ等を用いて県内製造業のサプライチェーンを分析し、経済活動上の重要度を数値化・可視化するとともに、自然災害のハザードマップと対応させ、地域経済ハザードマップを作成する。また、特に重要かつリスクの高い事業所について、県内外の取引先を含めたサプライチェーンマップを作成する。

分析結果

和歌山県産業連関表を用いて和歌山県内の各エリアの経済活動をサプライチェーン上の重要度に応じて重み付けし、これを自然災害のハザードマップと対応させることで県内地域経済の自然災害リスクを分析した。

全体として、和歌山県経済は沿岸部に経済活動が集積しており、その間を主要交通インフラが敷設されている。一方で強い地震動や液状化リスク、津波浸水リスクはこうした経済や交通インフラの集積地帯で高く、南海トラフ巨大地震は和歌山県経済にとって重大なリスクとなる可能性が高い。

和歌山市直川エリアには複数の業種の事業所が立地しているが、業種ごとの従業員数を該当の前方連関指標で重み付けし足し合わせた場合に、重み付けしない場合すなわちそのエリアの総従業員数よりも数値が大きかった。このことは同エリアに立地する業種に相対的にサプライチェーンの川下に影響力を有する業種が多いかあるいは川下に影響力を有する業種の大きな事業所が存在する(多くの従業員数が存在する)事を示唆する。同エリアのハザードを確認すると、理論上最大で想定された「南海トラフ巨大地震」が発生した場合、同エリアは震度6強の揺れに曝される。また、歴史上発生した南海トラフ地震の中でも最大クラスの地震が発生した場合には、同エリアは震度6弱の揺れに曝されると想定されている。揺れに伴う地盤の液状化も懸念される。道路貨物輸送業の事業所が立地するエリアはPL値で計測された液状化指数が中程度以上となっており、液状化の危険性は高い。

橋本市隅田町真土エリアには、金属製自動車部品や金属製建築部品を製造している事業所が立地している。主たる理由として、金属製品製造業は後方連関指標の高い鉄鋼業の製品を素材として利用しているため、後方連関指標が高い。同エリアの南海トラフ地震に関するハザードを確認すると、理論上最大クラスの「南海トラフ巨大地震」では震度6弱が想定されており、既往最大クラスでは震度5強が想定されている。液状化指数の値は低い。内陸部にあるため津波浸水のリスクも無い。ハザードの面だけから評価すると必ずしも危険なエリアではない。

和歌山市西浜エリアは、県内でも有数の従業員数を抱えるエリアである。同エリアの震度は理論上最大クラスの「南海トラフ巨大地震」の場合に震度7、既往最大クラスでも震度6強である。また液状化指数も非常に高い上に津波浸水リスクも極めて広域に渡る。巨大地震に対しては極めて脆弱なエリアである。このエリアに従業員数が多いのは、同エリアに港湾がある事や広い敷地が利用できる事と切り離して考える事はできない。経済性を考慮すれば従業員を津波から避難させるための施設を十分に用意し、災害後の早期再建を被災前から計画することも重要である。

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 山﨑 雅人 名古屋大学 減災連携研究センター

関連リンク

このページの先頭へ