和歌山県における食品ロスの削減に向けて

公開日: 2020年10月05日

平成30年度和歌山県データを利活用した公募型研究事業

代表研究者
所属機関 和歌山大学 データ・インテリジェンス教育研究部門
氏名 吉野孝
e-mail yoshino@wakayama-u.ac.jp
 

概要

「小売業における食品の見切りが、消費者の予定しない購入に繋がり、その結果、賞味・消費期限の短さや予定外の購入、予定以上の購入などの理由により、家庭における食品ロスの増加に繋がる」という仮説を立て、実際の「POSデータ」を用いて「見切り」に着目し、検証を行った。
<和歌山県データを利活用した公募型研究(平成30年度・31年度)>

分析結果

主に次の4つ分析研究を実施し、報告書を作成した。

  • アンケート調査
    購買層、食品廃棄の内容、購入した見切り食品の内容、食品ロスに対する意識等の調査を実施
  • POSデータを用いた分析
    株式会社オークワから提供されたPOSデータを用いて、売上げ・見切り・廃棄との相関関係や購買層を分析
  • 国勢調査を用いて店舗と消費者の分析
    各店舗周辺の在住者と各店舗の消費者との関連性、食品ロス削減に向けたアプローチする対象を分析
  • 賞味期限切れ賞品の調査及び魅力商品の発見手法
    購買層、見切り品の購入及び廃棄、廃棄理由を調査するとともに、廃棄の少ない見切り商品を分析

研究課題における分析研究項目

  1. 食品ロスのアンケート調査(オークワパームシティ店頭アンケート調査)
  2. 食品ロスのアンケート調査(和歌山県職員のアンケート調査)
  3. 食品ロスのアンケート調査(県民の友)
  4. 食品ロスのアンケート調査(ヤフークラウドソーシングアンケート、和歌山県のみ)
  5. 食品ロスのアンケート調査(ヤフークラウドソーシングアンケート)
  6. POSデータを用いた見切販売の分析
  7. POSデータを用いた見切商品を購入する消費者の分析
  8. POSデータの分析結果をもとにしたパームシティでの店頭販売の結果
  9. 国勢調査分析を用いたオークワ店の周囲在住の人とオークワ店舗との消費者の分析
  10. 家庭にある賞味期限切れ商品の調査
  11. POSデータを用いた食品ロス削減をもとにした魅力商品の発見手法

報告書「POSデータを用いた見切販売の分析と家庭系食品ロス削減の可能性」

研究体制

研究代表者・分担者の別 氏名 所属機関
研究代表者 吉野 孝 和歌山大学 データ・インテリジェンス教育研究部門
研究分担者 松山 浩士 株式会社サイバーリンクス クラウド基盤管理室
研究分担者 大西 剛 株式会社オークワ 情報管理部
研究分担者 貴志 祥江 株式会社オークワ 情報管理部データ分析課

解説

研究仮説

 本研究では、「小売業における食品の見切が、消費者の予定しない購入につながり、その結果、賞味・消費期限の短さや予定外の購入、予定以上の購入などの理由により、家庭における食品ロスの増加につながる」という仮説を立て、その検証を行う。従来にない視点としては、実際の「POSデータ」を用い、「見切」に着目している点である。

研究成果

 オークワ店舗前やヤフークラウドソーシングを使ったアンケート調査等を実施したが、ある程度、仮説を支持する結果もあった。しかし、十分に仮説を支持するものは得られなかった。

 当初の研究仮説を実証する「2.10家庭にある賞味期限切れ商品の調査」で行った方法を考えつき、賞味期限切れの商品の調査を行うことができた。上記の2.10節の3回目の実験にも記載しているが、表2.10.35から、「値引きされている商品を購入したが食べるのを忘れてしまった」が19%、「買いすぎてしまって使いきれなかった」が31%と、研究仮説を支持する結果が集まった。つまり、「小売業のおける食品の見切が、消費者の予定しない購入につながり、その結果、賞味・消費期限の短さや予定外の購入、予定以上の購入などの理由により、家庭における食品ロスの増加につながる」は成立する。表2.10.43の回答者が見切品を廃棄する割合では、10%程度と回答した人が回答者の半分存在した。22%の人は、見切品を廃棄することはないとも回答している。但し、この数は、今回のクラウドワークスに応募した人(廃棄するものをもっている人を対象)が対象のため、必ずしもすべての人に当てはまる結果ではないため、解釈には注意が必要である。

 賞味期限近くのものを安くすることで、小売店内の食品ロスの削減にはつながっている。本研究の着眼点は、上記の手法は、小売店内の食品ロスの削減にはつながっているが、食品ロスそのものが、家庭に移動している点である。実際に、移動して一定の割合で食品ロスにつながっていることは確認できた。賞味期限に近い商品の販売の場合には、家庭内での食品ロスにつながらないような、周知が必要であると考えられる。

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