平成11年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十四番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 西口知事が就任されて、早くも四年の歳月が経過をいたしました。知事としての激務、何かとご苦労さんでございました。ご慰労を申し上げたいと思います。ただ、県政に対する評価を大きく異にするところでございますので、そういう立場からこの四年間をどう総括されておられるか、お尋ねを申し上げたいと思います。
 この期間と言えば、国の政治の貧困の中で地方政治としても何かとやりにくい期間であったと察するところでありますが、百三十六の抱負を掲げてきた知事として、所期の目標との関係で見ていかなる四年間として総括されているか、まず概括的な所信をお聞きしたいと思います。
 次に、個別に幾つかお尋ねをいたします。
 まず、電源立地についてであります。
 この期間にあって知事は、和歌山火力発電所、御坊第二火力と、二つの火力発電所の立地を認可いたしました。和歌山火力については、住友の公害除去のための埋立地であったところへの新たな公害発生源の誘致として地元の人々の大きな不安と怒りを呼んだところでありましたが、今なおそれは変わっているわけではありません。特定の民間企業が公の海を埋め立て、所期の目的が喪失したから別の民間企業に譲渡するなど、我々には考えられない大企業の横暴でありました。もちろん、社会の変動の中で埋め立て目的がなくなっていくということは起こり得ることだと思いますが、それはその企業の責任に属することであって、営利目的の転売などは到底許されるものではありません。民間企業同士がさっさと談合して、県がそれを違法ではないからと追認していく姿は、まことにもって残念という言葉以外に見当たりませんでした。知事にあっては、西防沖埋立地の転売、LNG火電の誘致の経過、結果を含めて今どのようにお考えになっておられるか、お示しいただきたいと思います。
 次に御坊第二火電についても、大きな反対運動あるいは認可を延期してほしいという要望が起きておりました。理由は、梅の生育不良と御坊火力の排気との関係が疑われ、その解明がなされていなかったからであります。オリマルジョンの不安についても、それは残されたままでした。しかし、知事は立地に向けて早々と許可をいたしました。議会の中にも早期の認可を求める声のあったことも確かですが、生育不良の原因解明より電源立地が優先されたことだけは確かでした。その解明を待てないほど電源立地を急がなければならないという理由はなかったと思います。急いだからよかったという思いを今でもお持ちになっていますか。
 次に、雑賀崎埋め立て問題についてお聞きをいたします。
 私は、この計画に反対の立場で再三質問をいたしておりますので、繰り返すつもりはありませんが、幾つかの問い残している点をお聞きしておきたいと思います。
 一つは、最初の計画が新聞に抜かれるまで、なぜ秘密裏に事が運ばれていたのかということです。開かれた県庁を標榜して当選された知事の仕事とは思えない。なぜそんなに秘密にされたのか。そういう進め方が正しいやり方だったと、今も考えておられますか。
 次に、計画の変更についてです。国の港湾審議会で意見が付されました。それに基づいて、その後短期間に第二次の計画が作成されました。住民のためを思って計画変更したという評価も当然あろうと思いますし、知事自身もそういう思いでされたのかもわかりません。それならなぜ、反対意見が早くから出ており、十万人の署名まで寄せられていた時点での計画変更がされなかったのかと思うんです。結局、国からの指摘で初めて変更に傾いた。やはり地元の声よりも国の声──知事の姿勢を残念に思います。私が特にそんな感じを抱いたのは、このプロジェクトの費用対効果の質問をした際、今の段階ではできないという当局の答弁でした。ところが、その答弁の十日もたたないうちに、見事に費用対効果は計算され発表されたのであります。なぜできたかと言うと、国がしなさいと言ったからということでした。議会質問にはできないと答え、国の方から指摘されればさっさと出す。おかしいとは思いませんか。お答えください。
 この際、いま一度お聞きしておきます。これは土木部長に尋ねておきますが、雑賀崎沖の埋め立てを含めた港湾整備の事業費は幾らぐらいを予測しているのですか、お答えをいただきたいと思います。
 次に、同和行政についてお伺いをいたします。
 一昨年、国も同和対策を基本的に終了いたしました。しかし、県の方は従来とほとんど変わらないペースで同和事業推進プランを作成し、基本的に終了するというのではなくて推進という姿勢を示されました。私はしばしばこの問題を取り上げているので詳しく触れませんが、同和事業の目的、水平ならしめるという目的はもう基本的に達成されたと思っています。地域改善などの事業として残っているものも、特別対策でというより一般対策でというのが一般地域と比較して筋が通ります。産業や就労問題でも、この不景気の中で同和地区もそのほかとももう区別はありません。学力、進学の問題でも同様で、若干の格差も視点を変えれば、あちこちにある格差です。同和地区と行政的に線を引いて、そこだけ特別対策をするということは現在の段階では水平ならしめるという目的から外れてきています。そういう段階での特別対策は、社会に人為的にいつまでも同和地区を残すということにつながりかねません。この四年間を振り返ってどういう所信をお持ちですか。
 次に、財政問題でございます。
 県債残高が膨大なものとなり、この六月現在で約六千四百億円になってしまいました。このうちの約二千億円は、西口知事の時代になってつくられた借金であります。その伸び方は急カーブを描いていきました。そのため公債費も年々増加し、県民福祉を圧迫する状況となり、財政健全化のプランを新たに作成しなければならない事態にさえなっています。借金をしながらでも必要な事業は進めなければなりませんが、不要不急のものは当然排除しなければなりません。この四年間とりわけ目立ったものは、国の経済対策にこたえた公共事業、県単独事業の増加でした。国が強くそれを求めてきたことが大きな理由でしょうが、そこにはおのずと分に応じた節度が求められるところです。公共事業を中心にした景気対策が、その波及効果において期待するほどには働かず、景気対策イコール公共事業と図式的に対応することなどは大いに反省すべき点ではなかったかと考えます。この期間の大型建造物であったビッグホエール等も、必ずしもこの財政難の時期にあえて建てなければならなかったものかどうか、大いに総括されるべきであろうと思います。この四年間の財政運営等にいかなる所信をお持ちでしょうか。
 以上が、知事に対する質問でございます。
 続いて教育長に、国旗、国歌の問題について質問をいたします。
 この問題は去る六月議会においても質問をしたところですが、その後法制化されたということもあり、過日の議会で議論し尽くせなかった点などもありますので、再度質問をさせていただきます。
 一番目は、君が代の歌詞の解釈まで時の政府が定め、学校においてかく指導すべしとまですることは、学校教育に対する時の権力の不当な介入ではないかという問題であります。
 政府によれば、君が代の「君」とは象徴天皇のことであるとされました。さらに「君が代」とは、「象徴天皇を国民の総意としていただく我が国」のことだとされました。「君」が象徴天皇のことだとすれば、「君が代」とは象徴天皇の国または時代ということになり、「象徴天皇をいただく我が国」とは国語的には到底成り立たないことは、素直に読む限り明らかであります。明らかに無理な政治的解釈がここではつけ加えられました。なぜなら、「象徴天皇の国」というだけでは主権在民の思想に反するからです。ところが学校教育に当たっては、政府の下したこの解釈のとおり指導しなさいということにされています。まず一つ、ここに無理があります。
 この歌詞の歴史をたどりますと、大方の皆さんは既にご承知のことでございますが、そもそもは恋する人への、あるいは親しく尊敬する人へのことほぎの歌であったということであります。それが、明治、昭和期に入ってから、時の政権によって「君」とは大日本帝国の天皇の意味とされ、「君が代」とは文法上は何の矛盾もなく天皇の国とされたわけであります。そして、天皇賛歌として歌われたという長い歴史を持ちます。戦後は、君が代は学校教育から一時的に姿を消すことになりますが、再び学習指導要領に登場してまいります。しかし、その際は「君」とはだれか、「君が代」とはだれの世かについては政府の方でも特定はしませんでした。あいまいな時期が長期にありました。「君」とはあなたであり、あるいは国民全体を指すものだと言われたりいたしました。そして、さきに述べたように、今回政府が「君が代」とは、日本の国語の文法では到底理解できない「象徴天皇をいただく我が国」とされて、学校教育でかく指導すべしとされたわけであります。
 このように見てまいりますと、君が代の歌の解釈は時の政治によって変わっているわけであります。歌詞の解釈は時の政権によって定められるというものでしょうか。「君が代」というわずか三文字を日本語として到底無理な解釈、「象徴天皇をいただく我が国」と解釈させ、それを教育に持ち込むというのは、余りにも乱暴な政治の教育への介入ではないでしょうか。
 次に、国旗、国歌と内心の自由に関係してお尋ねをいたします。
 教育長は、さる議会で、教育公務員たる者は、みずからの信ずるところとは異なっても指導要領には従う義務があるという意味の答弁をされたところです。きょう、私はそれに至るまでの問題、すなわち学校教育の国旗、国歌の扱い次第ではその指導が内心の自由を侵す危険があるという、そもそもの問題を提起して教育長の所信をただしたいと思います。
 私は、国旗、国歌の一般的指導を否定するものではありません。ここで問題にしたいのは、学校の儀式あるいは行事で、校長あるいはその任を帯びた教師によって起立斉唱を命じること、またそれによって教師並びに児童生徒がその命に服さなければならないということについてであります。
 国民全体がそうであるように、教師にあっても、日の丸にどれだけの敬意を抱くか、君が代をどのように解釈し、その思想にどの程度共感し、あるいは共感しないかは、憲法第十九条に保障された個人の内心の自由の問題であります。これは大方の一致するところで、国会論議でもそういう形で議論されました。したがって、その思いをどのように表現するかは、それぞれに当然違いが生まれてまいります。起立斉唱を命じる行為事態が、その人の内心と一致していればそれはよいでしょうが、そうでないと、その人の内心の自由、基本的人権を侵すことになります。しかも、今回のように君が代の解釈に大きな無理があり、それが主権在民の思想との乖離を感ずる者にとっては、内心の葛藤は一層増幅されることになるでしょう。事は、憲法で定められた思想・信条の自由の問題ですが、その自由の鼻先に指導要領が対置され、憲法を超えて権力的運用が教育公務員なるのゆえをもって強制される、そこに最大の矛盾があります。私は、このような教師の憲法的権利を阻害する指導要領のその条項の存在そのものが問題だと思います。近代民主主義を経験した主要な国家が、教育の中に国旗、国歌の一律的な指導を掲げていない理由もそこにあるとされています。
 去る七月三十日、日本教育学会が──この組織は日本の教育研究団体では最大のもので、大きな権威を持っていると言われている団体でありますが──国会審議に当たっての要望書を発表しました。その一節に、次のような文言があります。すなわち、「「日章旗」と「君が代」とをいかなる意味で教育、特に学校教育の場において受け止めるかは、本来、校長・教師など学校教育当事者の専門的判断にゆだねられるべきものであります。その判断の基礎は「教育の自由」に属すべきものであり、さらに、両者の意味をどう捉え、どのような指導を行うかも、教育当事者の「学問の自由」及び「思想・良心の自由」と深く関わるものであります」と論じて、法制化後の画一的、権力的指導の強化を憂えて、教育はそこから自由であるべきだとしているところであります。
 国旗、国歌の教育が子供の内心の自由を侵すことがあってはならないということも、国会議論の中でも大方の一致するところでした。児童生徒への対応はその発達段階に対応してさまざまでしょうが、いずれにしても強制があってはならないものであります。政府答弁でもしかりでありました。しかし、起立斉唱の命は実質的強制に通じます。中学生ともなると個人差はあるでしょうが、社会一般についても自己の主張をはぐくみ始めます。高校生になればなおさらでしょう。当然、国旗、国歌についてもそれなりの思想・信条として抱いています。起立・国歌斉唱の号令が下ったときどうなるか。その命と心とが一致していれば、それは結構なことであろうかと思いますが、恐らく全員がそういう状況になるということは、まずないでしょう。疑問を抱いているまじめな生徒は、生徒は教師の指導に従うべしという一般的な倫理との間での葛藤が生まれ、苦しむことになるでしょう。豊かな個性の育成という教育の理念が、ここでは思想・信条への画一的な指導で説明のつかぬ矛盾に遭遇することになります。小学校の低学年は、恐らく何のことかわからないままに先生の指導に従おうとするでしょうが、父母との心は必ずしも一致いたしません。
 国会の、強制はだめだが指導はすべきだとの議論の中で、強制とは、口をこじあけてまで歌わせたり、苦痛を感じるほど長時間指導することだとの政府答弁がありました。それは強制というより拷問というのがふさわしい状況で、答弁した政府の知的水準に私は疑問を感じたものでしたが、一般的に言って、教師の子供に対する指導には、社会通念上、先生の言うことは聞くものという、緩やかであっても強制的性格が内包されています。まじめで従順と評価される児童生徒ほど、みずからの信条と一致しない場合は、それを押し殺すことになるでしょう。国会論議の中で、一度目の指導は内心の自由を侵さないが、二度目はその可能性があるという答弁もありましたが、児童生徒にとっては一度でも二度でも教師の指導というのは重く心に届くものです。さきに紹介した教育学会の文書は、「教育当事者の側におけるこれらの自由が制約される場で、はたして児童・生徒たちの内面の自由が保障されるか否か、少なからず疑問をもたざるを得ません」と述べているところであります。子供の権利条約は、ここではほとんど機能しないでしょう。
 いろいろ申し上げたましたが、質問はただ一つです。思想・信条の自由を保障した憲法の存在にもかかわらず、教育公務員を現実的に拘束している指導要領の国旗、国歌の起立斉唱を命じる指導条項こそ教師、児童生徒の内心の自由を奪う大もとになっている現実を、教育長はどのようにお考えになっておりますか。
 三番目の問題は、学校の儀式や行事をどのように行うかは全国一律のものではなく、校長を含めた全教職員の総意、さらには児童生徒を含めた総意によって行われるべきではないかということです。日の丸、君が代がなければ卒業式も入学式も値打ちがないというものではありません。思想・信条に触れるものを持ち出して、そこに新たな葛藤を生みながら、そこに焦点を当てて儀式を行うことが子供たちの成長にどんなプラスがあるというのでしょうか。かつての日の丸、君が代を義務づけた学校儀式が、果たしてどれだけ子供たちの心に国際理解や世界平和の思いを育てたでしょうか。戦中、最も恐れ多いとされた教育勅語の朗読が果たしてどれだけ児童生徒の心をはぐくんだか。私の聞くところによれば、儀式の苦痛だったということ、その後配られた紅白のまんじゅうの喜びという笑い話があります。日の丸、君が代がその政治力によって強引な解釈と意義づけで学校行事に持ち込まれるならば、学校の儀式や行事が単なる儀式となり、教育的豊かさを喪失していくのではないかと憂えます。教育長は、本当に卒業式に君が代の斉唱がないと卒業式の価値が薄れると思いますか、学校の儀式や行事は学校の裁量に任されるべきだろうと思いますが、いかがでしょうか。
 続いて、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 雇用問題に関係して、今次議会の議案ともなっております緊急雇用特別基金について幾つかのお尋ねをいたします。緊急雇用対策として千二百五十人を六カ月の期限つきで雇用しようとするものですが、果たしてそれが有効に働くかという懸念と、よりよく雇用問題の解決に役立ってほしいという思いから質問いたします。
 大半が民間委託ということもあって、その確実な遂行が保障されていないという問題があります。企業によっては、首切りのかわりに一時的にこの資金で六カ月だけをつなぐということもあり得るわけで、そういうことなら全く新規雇用にはつながらず、また市町村にあっては、急な事業でもあり、万全の受け入れ体制があるというわけではありません。もともと基金の創設自体が新たな就業への中継ぎというようなものでありますが、本来はそれが新たな雇用と連動することが望ましいわけで、そういう努力を雇用する側にも積極的に求めたいところであります。この制度の積極的な活用をどう考えておられますか。
 また、この基金のちょうど半分が千二百五十人の人材育成に充てられております。技術の習得がその後の就職に即結びついていけばいいのですが、そこのところが何も保障されておりません。制度自体はいいのですが、その点に不安が残ります。雇用の開拓が独自の課題として残りますが、そこをどのように開いていくかをお示しください。
 十分の宣伝が行き渡れば、この事業に応募枠以上に応募があったり、あるいは六カ月を超えてその仕事を続けたいと願う人もたくさんいると推定されます。その願いに県独自の施策でこたえてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 実は、この事業の市町村が扱う分野で、和歌山市が六事業、金額にして約一億円の申請をしております。ところが、採用されたのは三事業、金額にして約三千四百万円にしかすぎませんでした。不採用の理由もそれなりにあるようですが、事業そのものは和歌山市にとっても必要なものでした。採用されるのが望ましいものばかりであります。他の市町村でも、求めたものの半分あるいは三分の一の採択だったそうでありますが、この事例からもわかるように、要望は相当大きいと思われます。国の枠は決まっておりますが、現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、この制度、あるいはこの種の制度の県独自の施策の拡大を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、住友金属の新たな経営プランの発表に関連して、雇用や関連企業への影響についてお尋ねをいたします。
 この件についてはさきに質問もございましたので、やや重複があるやもわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 発表によりますと、住友金属全体で来年度で二百億円の黒字を見込みたいとして、和歌山製鉄所で今年度より約二百億円のコスト削減を図りたい、そのために企業内の労働生産性を向上させること、発注形態のあり方を含めた外注政策を抜本的に改め、外注作業費、物流費を徹底的に切り下げていくというものであります。また、それにより人員削減も全体で七百人に及ぶとされております。事の重大さから、知事みずからが県下の経済に悪影響を及ぼさないように申し入れを行ったと本会議でもお聞きしたところでありますが、住友金属の社長さんが語ったという共存共栄は果たして実行されるのでしょうか。
 雇用を和歌山関連で四百人削減されるとしていますが、聞くところによりますと、同社の人減らし合理化は極限まで追求され、労働災害が頻発する状況にあり、本年も二件の死亡事故があったと聞きます。四百人の削減は退職者等による自然減に待つという報道もありましたが、従来の手法は必ずしもそうではありません。配転、出向等によってやむなく退職せざるを得ないというような事態が生まれ、実質的な解雇ということは珍しくありませんでした。新たな失業者が増加する可能性が出てまいります。
 さらに、外注政策の抜本的転換は、同社に関連した中小零細企業に大きな不安を与えています。外注費三〇%ダウンというのは、まさに下請企業の息の根がとまるほどのものです。下請への被害をできるだけ小さくという話もあったように聞きますが、しかしその過酷な外注コスト削減政策は既に始まっております。ある運輸関係企業は、既に七月から一〇%前後のダウンを求められておりましたが、さらに来年二月に五%、四月にはさらに三%の価格ダウンを求められており、大変な事態だと、そこに働く人たちに大きな不安を抱かせていますが、その方々の話によりますと、労働者だけではなく、当然のことですが、経営者側も同様な不安、この状態では経営が続けられないのではないかという悩みを語っているという事態さえ生み出しているそうであります。恐らく、この運輸関係だけではなく、その他の関係企業のところにも同様の事態が進行しているところだと思われます。
 住友金属の方は来年度で二百億円の黒字を目指しての二百億円の経費削減ですが、下請関連にとっては一方的な単価切り下げでしかありません。とても、共存共栄の事態ではありません。企業が利益を追求するのは当然のことでしょうが、地域に大きな影響を持つ大企業は、そこにおのずからの節度がなければなりません。大企業の社会的責任が求められるところであります。住友への申し入れに対する回答、それは県民にとってどう評価されるものかをお示しください。
 さらに、この事態が進行すると、下請企業の経営とそこに働く人々の雇用を含めた暮らしの問題が大きな問題となってくるでしょう。当局として、事態の推移を十分に調査しつつ、住友金属に対して下請企業の経営と労働者の生活を守る立場から適宜申し入れをされることを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、来年春卒業する高校生の就職状況についてお伺いをいいたします。
 新しく社会に巣立っていく若者の前に大変な就職難が待ち受けていると言われております。卒業を前にして何かと不安を抱いているだろうと思いますが、何とか全員が希望するところに就職ができるようにと父母の気持ちもさらなるものであろうと推測いたします。関係する当局の雇用先の開拓、密なる学校との連携が強く求められるところでありますが、現在の状況、今後の展望をどのように持っておられ、さらにいかなる努力をされようとしているのかお示しをいただきたいと思います。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 私の四年間を振り返っての総括的なことでございます。
 まず、四年間を振り返ってみますと、初登庁のその日から始めたきのくにホットラインの開設、女性一〇〇人委員会の設置、動く県庁などの開かれた県政を心がけてまいりました。ふるさとに自信と誇りを持とうと訴えたことに多くの県民のご理解がいただけたことを大変うれしく思っております。また、近畿自動車道紀勢線や京奈和自動車道を初めとする基盤整備、県立医科大学の統合移転整備完了、福祉のまちづくり条例の制定など医療福祉の充実、産業情報センターの整備など産業の活性化、和歌山ビッグホエールのオープンや県立橋本体育館の設置など、文化、スポーツの推進といった一三六のプロジェクトを初めとして、各分野で数々の成果を得ることができました。さらに、全国高校分校サミットやアジアこどもフェスティバル、あるいは一昨日無事成功裏に終了することができた南紀熊野体験博など、本県独自の取り組みによりまして、全国さらには世界へ和歌山県を情報発信することができました。これらの成果のすべては、県民の皆さんのご理解とご協力のたまものと感謝をしてございます。
 次に、電源立地についてのご質問であります。
 和歌山発電所計画及び御坊第二発電所計画につきましては、これまで議会でも再三お答え申し上げてきましたけれども、電源立地の基本的な考え方に基づいて、地域振興の立場で対応してまいりました。両発電所計画につきましては、埋立地利用計画の変更や梅の生育不良の問題など慎重に検討を重ねた結果、一昨年の電源開発調整審議会に際して、私は県議会の推進決議がなされたこと、関係市町の同意を得たこと、環境保全対策の適正な実施と安全対策の徹底が図られること、さらには地域の活性化に寄与する計画であること等から、総合的に判断をいたしまして、電源開発基本計画に組み入れることへの同意の回答を行ったものでございまして、適正に対応してきたと考えてございます。
 次に和歌山下津港の計画でございますが、先ほども申し上げましたように、私は就任以来、広く県民の意見を施策に反映するために開かれた県政を心がけてきたところでございます。和歌山下津港港湾計画の改定につきましては、平成四年から和歌山下津港港湾整備構想調査委員会において、地元代表としての関係市町や学識経験者、さらには県内関係団体のご意見を伺いながら検討を進め、平成九年八月及び九月の県内各界の委員を中心とした地方港湾審議会の審議を経るなど、一連の手続を踏んで策定をされました。しかしながら、平成九年十一月の国の港湾審議会での意見や広く県民からの賛否両論の意見をお聞きし、またかねてから本県のすばらしい自然、歴史、文化と経済発展のための基盤整備をいかに共存させ共生させていくかを考え、議会においても港湾計画の見直しについて柔軟に対応すると明言をいたしまして、担当部局に指示して取り組んできたところでございます。
 具体的には、昨年より景観検討委員会を設け、景観の保全に対する検討に入りました。委員会では、地元自治会の代表を初め、旅館組合や経済団体などの意見を聴取いただき、また私自身も直接地元の方々とお会いをして、その他にも手紙、ファクスなど、さまざまな方法、機会を通じて意見をいただいてまいりました。さらに、委員会や審議会の公開などにも努めてまいったところであります。こうした中で、今回の変更計画は、景観保全に最大限配慮するとともに、国際物量拠点形成のかなめとなるものでございまして、私といたしましては、行政が県民各層の皆さんの意見をお聞きをし、感じ取ったものを計画に反映した結果であると考えております。
 次に、同和行政についてでございます。
 これまで生活環境の改善を初め、各分野で大きな成果をおさめてきたところでございますが、この間、国におきましては、地対財特法の一部改正や人権教育のための国連十年国内行動計画の策定、人権擁護施策推進法の制定がなされました。このことは、同和問題の早期解決を図るための新たな段階に対応したものであり、またすべての人の基本的人権の尊重に向けた取り組みへの契機となったものでございます。県としては、同和地区において教育・啓発、産業・就労等になお課題が残されていることから、和歌山県同和行政総合推進プランに基づき、一日も早い解決に向け取り組むとともに、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画を積極的に推進することにより、一人一人の人権が保障された差別のない社会の実現を目指してきたところでございます。今後とも、その推進に努力をしてまいりたいと思っております。
 次に、財政硬直の進行についてでございます。
 累次の景気対策の結果、地方財政において硬直化が進んでいることは事実でありますけれども、景気対策の重要性にかんがみればやむを得ないところと考えてございます。また、景気対策の実施に当たりましては、県民ニーズや費用対効果等を十分勘案しながら、二十一世紀に向けた県土づくりのため適切な事業を選択してきたところでございます。もとより、中長期的な観点から財政の健全性を確保することの重要性は十分に認識をしており、近年における歳入動向や基金残高の状況を踏まえ、歳出構造の見直しに取り組み、重点的、計画的な財源配分と効率的な行政運営により一層努めること等を通じて、今後とも県勢の発展と県民福祉の向上に最善を尽くしてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 和歌山下津港計画について、ご指摘の費用対効果につきましては全国でも計画段階で算出した例はありませんでしたが、運輸省より六月議会と時を同じくして港湾整備事業の費用対効果算出マニュアルが出されたのを受け、その内容を至急入手し、詳細な調査、設計等がなされていない計画段階での概算ではございますが、このマニュアルに基づき、参考として費用対効果を試算いたしました。この試算に当たっては、費用として見込む対象事業の範囲を設定の上、先ほどお尋ねのあった事業費を約五百億円と見込み、費用と便益を比較しております。
 費用については、この事業費を現在価値に換算するため、社会的割引率四%を考慮して約三百五十億円と見込みました。これに対し便益については、陸上輸送コストの削減効果、建設残土やしゅんせつ土砂の輸送コストの削減効果、土地の残存価値等の総和を費用の場合と同様に社会的割引率四%を考慮して現在価値に換算すると、約七百億円となりました。便益が費用の二倍程度になるとの結果を得ております。いずれにしましても、この事業費や費用対効果分析結果は計画時における参考値であり、今後、地質調査等の諸調査、修景効果に配慮した緑地や護岸の検討、さらに建設コスト削減などについて十分検討してまいります。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 緊急雇用対策の五項目についてお答えします。
 まず、緊急雇用特別基金を確実な雇用につなぐためにということについてでありますが、緊急地域雇用特別交付金は六月に国の産業構造転換・雇用対策本部において決定された緊急雇用対策及び産業競争力強化対策に基づき、国において補正予算措置されたもので、本県には十五億二千二百万円が交付される予定であり、今回必要な補正予算等をお願いしているところでございます。この交付金を活用する事業計画の策定に当たっては、教育委員会を含む各部局や市町村に積極的な取り組みを依頼し、緊急性や雇用効果などについて検討した結果、市町村事業を含め、平成十一年度から十三年度にかけて四十二事業を実施する計画を策定したところであります。その雇用効果といたしましては、事業実施による雇用・就業と人材育成事業を合わせて二千五百人を見込んでおり、できるだけ多くの雇用・就業機会を創出するよう事業を委託する企業等に求めていくなど、新たな雇用・就業の機会の創出に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、雇用期間の延長や県独自の事業拡大についてでございますが、国において事業の実施期間は平成十三年度まで、雇用期間は六カ月未満と限定したものであり、本県においてもこの方針に基づき事業を実施するものでございます。県独自の施策につきましては、財政状況等から極めて厳しいものがあり、この交付金を最大限に活用して事業効果を高める努力をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、人材育成事業をどのように新規雇用につなげるかについてでありますが、今回実施する人材育成事業は、介護保険制度導入に向けたホームヘルパーの育成や南紀熊野体験博でも提唱した体験型観光に従事するインストラクターの育成といった、今後雇用・就業機会の拡大が見込める分野の人材を育成するものであり、新たな雇用・就業の機会につながるものと期待してございます。
 次に、住友金属の経営プランとその影響と対策についてでありますが、去る九月一日に住友金属工業より発表されました経営改革プランには、和歌山製鉄所の人員削減、関係協力会社に対するコスト削減などが盛り込まれており、県といたしましても地域経済に及ぼす影響を懸念しているところであります。このことから、知事は住友金属工業の社長に対し、下請関連企業の経営安定への配慮について強く要請したところであります。また九月十三日には、副知事を座長とする特定企業対策連絡協議会を開催し、雇用面への配慮や下請関連企業の個々の実情に対する配慮などについて、再度和歌山製鉄所に対し要望いたしました。住友金属としても、和歌山製鉄所の存続及び地元との共存共栄を図るべく、自助努力を含め多額の投資も行ってきており、県民の理解を得られるものと認識しておりますが、今後、協議会としては、関連企業等の動向を把握するなど情報の収集を図り、当面する問題について、その都度対応してまいりたいと考えております。
 最後に、新高卒者への求人の現状と対策についてでありますが、本県の来春高等学校卒業予定者に対する求人数、推薦数は、八月末現在四千六十二人と前年同期に比べ四一・一%の大幅な減少となっております。一方、学校、職業安定所の紹介による就職を希望する生徒は二千二百七十一人で、前年同期に比べ一三%の減少となっております。この結果、応募できる求人、推薦数で見ますと求人倍率は一・七九倍となり、前年同期の二・六四倍に比べ〇・八五ポイント低下し、その就職環境は厳しい状況にあります。
 これまで県といたしましては、七月に三十人以上の企業約千百社に対し求人依頼を行うとともに、八月には各職業安定所長に対し、新規学卒者対象の求人開拓の実施について指示を行い、現在、各高校の進路指導担当者と連携をとりながら、所長を筆頭に積極的な求人開拓に努めているところでございます。また、九月十六日より選考が開始されたところでありますが、就職未内定生徒の就職支援策として未充足求人企業の把握に努め、十月一日現在の求人事業所一覧表を作成し、各高校を通じて提供するなど、未就職者を出さないよう努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 国旗、国歌に関する質問にお答えいたします。
 国歌・君が代の歌詞の意味につきましては、「日本国憲法の下において天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」とする文部省見解に基づいて指導してきたところであります。今回の法制化に際し、国歌についてこうした解釈を踏まえた形で政府見解が示されたところであり、今後ともこれを基本として指導してまいる所存でございます。
 次に、学習指導要領は、全国どこの学校にあっても同じ水準の教育を保障することをねらいとして、国旗、国歌を初め、教育活動全般にわたって児童生徒の学習する内容やその基準を示したものであります。こうしたことから、教職員にあっては、学習指導要領等の関係法令にのっとって教育を行う責務があり、その職務の執行に当たって、個人の思想・信条を持ち込むことは慎まなければなりません。しかし、このことは個人としての思想、良心の自由を拘束することにはならないと考えております。また、児童生徒に対する指導においては、その内心にまで立ち入って強制するものではないと理解しています。
 最後に、入学式や卒業式等の学校行事を含めた教育課程につきましては、学習指導要領にのっとり、教育委員会の指導、助言のもとに、地域や学校の実態及び生徒の特性等を考慮して学校長が編成するものであります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 商工労働部長に要望をいたしたいと思います。
 今回の住友の経営プラン、これが今言われているとおり進行いたしますと、和歌山県内の中小零細企業に与える影響には非常に大きなものがあると思います。それで、知事初め関係者が住金の方へ申し入れをされたということでありますが、それで事が解決をしたということにならない問題なんですね。もちろん民民の問題ですから、行政としてどうこう強制的にできるという問題ではありませんけれども、事は一つの大企業と中小の零細企業との関係の中で進みます。一方は二百億円の黒字を目指して、そのために和歌山工場関係で二百億円の経費削減をしていくという問題ですけれども、一方はとにかくカットされるばかりなんですよね。そこに大きなギャップがありまして、このままほうっておきますと本当に大変なことになってくると思います。共存共栄というのはそういう関係ではないと思いますので、ぜひとも機会を見つけてできるだけ綿密にその影響を調査しながら、そしてまた先ほどの話と重複いたしますけれども、必要な項目については中小企業やそこで働く労働者の立場に立って住友金属への申し入れをやって、それを効果のあるものとしてやっていただきたいことをお願い申し上げたいと思います。
 それから、緊急雇用対策の基金の問題で、和歌山にもそれに類似する制度を設けて拡大してはどうかということについて、財政難という理由でございました。わからないことはありませんけれども、今の雇用問題の深刻さというのは、本当に今までの歴史に見ない深刻さを持っています。県独自のそういう対応があってもしかるべきではないかと思いますので、ぜひとも雇用を守る立場からの独自の対策を進めていただきたいと思います。
 教育長にも、意見と要望を申し上げます。
 教師は指導要領を遵守すべきだと、したがって教師個人の思想及び信条をそこへ持ち込んではいけない、これは、思想、良心を制約するものではないというお話でございました。指導要領の思想・信条の自由を拘束するような、その存在のところから考えを進めればそういうことになるわけですけれども、私はもう一つ先の問題として、時の権力から教育現場に思想・信条にかかわる問題が持ち込まれたと、そういう問題があるときの対応してどうしたらいいのか。そうすると、教育長の言われるような考え方もありますけれども、そういうことを持ち込むこと自体の方が問題ではないかということを私は申し上げているわけです。
 指導要領の果たすべき役割等、今おっしゃられたような全国水準の基準を示すというようなことについては、私はその意味についてはわかっておりますが、思想・信条に関係をするというようなものが指導要領の中に含まれていて、それが教師の前に憲法を乗り越えて適用されるというところは、これは改めるべき問題だと思います。
 君が代がいかに政治的なものであったかということについては、先ほどその扱われ方の歴史を申し上げましたけれども、とにかく時の政権によって意味が変わってくるわけですね。これは政治利用ということであろうと思いますので、適切なことではない、不当なことだと思います。
 それから、子供の内心の自由の問題について少し申し上げておきたいと思います。
 こういうことを考えていただけませんか。自分の子供が、その思いと異なった歌を先生の命によって一生懸命に歌っている。教育長がその子の親としたらどういう思いを抱くか。私は、自分がそういうことになったらどういう思いを抱くかということから、そこの思想・信条の自由が侵されていることに胸を痛めるものです。あるいは子供の側から言えば、先生ににらまれたら悪いからここはそうしておこうという形で斉唱に参加するということであれば、それは教育者としても指導を一番したくない面従腹背の態度を養うことにもなるだろうし、卑屈さを養うことにも通じてまいります。そういうことさえ生みかねない問題であるということで、教育の中における国旗、国歌の扱い、とりわけ起立斉唱を命ずるというような行為はふさわしいことではないと思いますので、十分お考えをいただくようにお願いをして、要望としておきます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午後零時二分休憩
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