平成11年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

平成十一年九月 和歌山県議会定例会会議録 第四号

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議事日程 第四号
 平成十一年九月二十一日(火曜日)午前十時開議
  第一 議案第百三号から議案第百十七号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第百三号から議案第百十七号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十六人)
     一  番       新   島       雄
     二  番       山   田   正   彦
     三  番       佐   田   頴   一
     四  番       松   本   泰   造
     五  番       阪   部   菊   雄
     六  番       堀   本   隆   男
     七  番       門       三 佐 博
     九  番       坂   本       登
     十  番       小   原       泰
     十一 番       大   沢   広 太 郎
     十二 番       木   下   善   之
     十三 番       宇 治 田   栄   蔵
     十四 番       尾   崎   要   二
     十五 番       宗       正   彦
     十六 番       橋   本       進
     十七 番       谷   本   龍   哉
     十八 番       原       日 出 夫
     十九 番       永   井   佑   治
     二十 番       谷       洋   一
     二十一番       小   川       武
     二十二番       高   瀬   勝   助
     二十三番       木   下   秀   男
     二十四番       町   田       亘
     二十五番       山   下   直   也
     二十六番       玉   置   公   良
     二十七番       神   出   政   巳
     二十八番       野 見 山       海
     二十九番       吉   井   和   視
     三十 番       向   井   嘉 久 藏
     三十一番       平   越   孝   哉
     三十二番       下   川   俊   樹
     三十三番       江   上   柳   助
     三十四番       金   田       眞
     三十五番       森       正   樹
     三十六番       冨   安   民   浩
     三十七番       新   田   和   弘
     三十八番       中   村   裕   一
     三十九番       井   出   益   弘
     四十 番       大   江   康   弘
     四十一番       高   田   由   一
     四十二番       中   山       豊
     四十三番       飯   田   敬   文
     四十四番       鶴   田   至   弘
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       村   岡   キ ミ 子
     四十七番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     八  番       西   本   長   弘
説明のため出席した者
     知事         西   口       勇
     副知事        高   瀬   芳   彦
     出納長        中   山   次   郎
     理事         藤   谷   茂   樹
     知事公室長      大   平   勝   之
     総務部長       稲   山   博   司
     企画部長       安   居       要
     生活文化部長     大   井       光
     福祉保健部長     小   西       悟
     商工労働部長     上   山   義   彦
     農林水産部長     島   本   隆   生
     土木部長       大   山   耕   二
     企業局長       白   井   保   世
     教育委員会委員長   安   藤   精   一
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   高   垣       宏
     警察本部長      樋   口   建   史
     人事委員会委員長   青   木   孝   祐
     代表監査委員     宮   市   武   彦
     選挙管理委員会委員長 谷   口   庄   一
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       新   谷   哲   朗
     次長         蓮   池   康   宏
     議事課長       佐   竹   欣   司
     議事課副課長     井   田   光   三
     議事班長       松   谷   秋   男
     議事課主査      井   口   好   晴
     議事課主事      安   井   伸   彰
     総務課長       西   野   光   彦
     調査課長       湯   川       忠
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主査      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課速記技師    保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第百七号、議案第百八号は、いずれも職員に関する条例の改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、ご了承願います。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
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  【日程第一 議案第百三号から議案第百十七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百三号から議案第百十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三番佐田頴一君。
  〔佐田頴一君、登壇〕(拍手)
○佐田頴一君 おはようございます。
 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 西口知事には、知事就任以来、県政の重要課題解決のため誠心誠意取り組まれ、和歌山県の発展のため尽力されてきましたが、阪和銀行と県商工信用組合の破綻、浅川組の倒産、産業廃棄物処理場をめぐる問題、ダイオキシン汚染、長引く不況と雇用の問題、不振続きの農林水産業など暗い話題が続く中、わずかに明るいニュースが流れた南紀熊野体験博も閉幕し、残り任期もあとわずかとなりましたけれども、私たちはどうしても再度西口知事に県知事として第二期県政を担当していただき、和歌山県民の幸せと二十一世紀への明るい豊かな元気和歌山、福祉の町づくり建設のため、健康に留意され、さらなるご努力を賜りますよう、ここで切にお願いをいたしまして、質問に入ります。
 来年四月一日から実施される介護保険制度の現状認識と今後の重要課題の解決についてであります。
 いよいよ高齢化社会の到来で福祉の進むべきあり方が問われるときにあって、だれもが豊かで安心できる老後の社会システムを確立するために介護保険制度は極めて重要な制度であります。この制度導入の目的は、今までの福祉中心の自立支援と家族介護から社会全体で支える仕組みへと移行し、新たに福祉財源の確保を補完すべく、四十歳以上の全国民にその負担を強制し、六十五歳以上の高齢者からも保険料と利用料を徴収する新しい制度をつくり、経済的弱者であるお年寄りのための恩恵の福祉、お世話する福祉から、すべての人に権利と義務と選択を与え、国からの福祉でなく、これからは市町村が自立を支援し、住民が決める分権の福祉に変化させ、特定の人の福祉からだれもが支援を受けることができる権利を与えられた自己責任、自己負担重視の新制度となっていることを、まず我々として理解する必要があるのではないでしょうか。
 このため、介護保険があって介護なしとならないように、介護保険制度の事業主体となる市町村に早急な整備を強く求められています。県としても、この事業が新たに負担を県民に求める制度である限り、緊急避難的な対応でなく、将来に悔いを残さないため、新発足に当たり、高齢者の立場に立った新制度であることを見きわめ、問題点を整理し、謙虚に耳を傾け、問答無用の押しつけでなく、県民へ十分な理解浸透ができるようその配慮をお願いするとともに、市町村への基盤整備などを含めて、この新制度実施に当たっての現状認識について、まず西口知事のご所見から承ります。
 次に福祉保健部長に、今後の具体的課題について質問をしていきます。
 まず、自立と認定された人への対応と支援についてであります。
 この件については、既に十七日、村岡キミ子議員より質問があり、県当局から答弁もありましたが、私からも再確認する意味で質問をさせていただきます。
 介護が必要かどうか認定する手続の中で自立と認定されれば、既に特別養護老人ホームに入所していても在宅でも介護サービスがストップとなり、介護が受けられない仕組みとなっています。特養ホームの場合は五年の経過措置がありますが、五年を経過すれば、どんなにいたくても出ていかなければなりませんし、在宅支援のヘルパーの派遣も打ち切られるため、今の制度では自分の家族や自助努力で埋めるしか方法はありません。今のところ一割程度の人が自立と認定されると予想されていますが、家族もなくひとり暮らしの老人で何事もできない人たちはどうなるのでしょうか。
 介護制度の枠から外れる高齢者の救済をどうするのか、各市町村の大きな課題であり、県はこれらの人たちをどう救済し、市町村に対しどう支援、指導するのか、お聞かせください。
 次に、保険料の市町村格差と利用料負担、低所得者への軽減措置についてであります。
 和歌山県の場合は、六十五歳以上の人の保険料は県平均で二千九百二十三円、全国平均二千八百八十五円を若干上回っている状況でありますが、県内の市町村の最高と最低の額はどの程度の金額の差があるのか。これで、まず市町村間の介護サービスの度合いや格差を見てみたいと思います。
 広域事務組合をつくって保険料を郡で統一する動きもあるが、保険料格差は是正されても、各市町村間の介護サービスの度合いが違うため、介護サービスの低い市町村の人たちは高い保険料を支払わされることになりかねず、受益者負担の公平の原則が崩れることにならないか。また、利用料負担についても疑問があります。
 国の決めた標準メニューサービス量や種類を追加し、サービスを用意したり、給食配達サービス、紙おむつ支給などを無料で実施すると、利用者と実施市町村のみの負担となるのかどうかであります。既に現在、ひとり暮らしの老人のため、毎日、朝夕ホームヘルパーを派遣している市町村もあり、その七〇%の家庭が無料のサービスを受けています。特別養護老人ホームの入居者も八〇%が低所得の人たちであると聞いていますが、新制度が発足すると有料化となり、せっかく介護認定を受けても一割の利用料を支払わなければ介護サービスが受けられません。現在まで無料か少額で介護支援を受けていた人たちへの特別な配慮が必要であると考えますが、用意されているのだろうか。
 次に、既に介護保険サービスの限度額と報酬単価も決められているが、例えばAさんが要介護三、限度額二十七万四千円と決定した場合、この金額に対する介護サービスの中身の度合いが高いか低いかの問題となります。介護する場所には、在宅の場合、お年寄りしかいない人、家族がなくひとり暮らしの場合、介護サービスの中身が決められてあっても、実際にそのとおり実施されているのかチェックをする人がなく、この中身のチェックをだれがするのか、チェック体制の機能が不明であります。また、介護サービスの中身を苦情として訴える人も出てくることも予想されるが、その受け皿はどうなっているのだろうか。
 次に、ケアマネジャーの資格取得問題についてであります。
 県は、去年十月と本年七月、二回にわたり介護支援専門員実務研修受講試験を実施し、この結果千六百五十一人が合格しているが、市町村や事業者、介護施設者、県民に対する指導、この制度の説明責任を果たすために、県職員として何人がこの試験を受けられ、何人合格しているのか、お教えください。なぜなら、無資格者が有資格者を指導しても責任ある指導ができないと思うからであります。
 介護施設や在宅介護、介護事業者も含めた人材確保と育成も大変重要な課題であります。特に、土、日曜日と夜のヘルパーの派遣をどうするかが問題であり、間近に迫った段階での諸準備に万全な状態であるかを総点検し、新制度スタートに備えていただくことをお願いして、次の項目の質問に移ります。
 次に、進まぬ県内八農協合併構想について質問を行います。
 農協合併については、先日、木下善之議員からも質問があり、既に答弁をいただいていますが、私も紀の里農協合併の立会人であり、県農協出身者で組合員という立場上、農協の将来について大変不安を抱いていますので、私からも再度質問をさせていただきます。
 全国にある単位農協千八百を二〇〇一年三月末までに五百程度に減らし、現在の町、県、国の三段階ある組織を二段階に再編し、スリム化を図り、非常に厳しい農業環境の中にあっても、規模拡大による経営合理化のメリットを生み出し、物資の安価な供給や生産物の高価な販売ができる仕組みに再編を求められており、金融面も含めた単位農協として生き残りをかけた大規模合併への道を進めなければならない状況に追い込まれています。このため、県農協中央会では、八五年に合併推進本部を設置し、八六年十二月に現在市町村単位にある県下五十農協を郡農協の八組合に合併再編する構想をみずから打ち出し、八八年十一月の県農協大会で三年以内に広域合併の実現を図る特別決議をしている。既に奈良県は、いち早く本年四月に県内一農協としてまとまり発足している。和歌山県の場合、毎年のようにJA大会で決議ばかりをしているが、約束は守られず、合併を先送りしながら八農協にまとまっていないのが現況であります。経営規模が小さく、体力の弱い市町村の農協では、金融の自由化もあり、今後経営危機に追い込まれることも予想される中にあって、地域経済に不可欠な農協基盤強化安定に向けての強力な合併を推進し、その努力を促す強力な行政指導がぜひ必要であると思いますが、なぜ和歌山県が進まないのか、進まない理由を農林水産部長にお尋ねします。
 次に、合併を推進するための金融財務強化の県の支援策についてであります。
 地域経済の重要な役割を担っている農協金融の経営体質強化を促すには、資本力を増強して大規模化し、金融ビッグバンに備えるためには合併しか選択の道はないと考えます。都市銀行はもとより、地方銀行も、公的資金を注入したり、大規模な合併を進めたりして経営基盤の強化を急いでいるが、農協としても小規模農協では組合員の立場から地域金融の抜本的な不安解消にはつながらないし、ペイオフ(預金一千万円しか保証しない制度)の凍結解除が迫っている今、地域経済を担う金融機関としてより強力な農協を目指した金融部門の再編が求められています。今後、二〇〇一年四月に予定されるペイオフが凍結解除されると、自己責任の原則により元金さえ戻らない、保証のない時代に突入します。このため、銀行、信用金庫、郵便局、農協等の選別はますます強まることが予想され、農協預金の大量流出を防ぐ手段としても合併を早く実現することを真剣に考えざるを得ない時期になっています。
 ここで、ペイオフ解除までの八農協合併推進について、JA大会の決議どおり、今度は本当に紀元二〇〇一年(平成十三年)四月までに完全に郡農協八組合合併ができるのかどうか、県の見通しをお尋ねいたします。
 さらに、合併を進めるための財務強化支援の具体的な施策についてお尋ねいたします。
 合併が進まないのは、組合の役員や組合員の反対ばかりでなく、銀行と同じように不良債権問題が合併する障害になっていないかであります。他府県では、合併を推進する際、不良債権を償却した農協に対し合併支援基金などを取り崩して支援している道県があります。九八年の支援額は三百四億四千万円の公的資金が導入されています。和歌山県の場合、不良債権を処理したときの支援策をお教えください。
 県農協中央会に八五年に合併推進本部を設置してもう十四年も経過していますが、これまでの合併推進の努力が適切であったかどうかも検証が必要であるし、県の指導責任も明確にする必要があると思います。また、信用組合に対する監査は現在都道府県が担当しているが、二〇〇〇年四月からその権限が逆に国に移管することが決まっています。農協も、従来どおり県と農協中央会が年一回確実に監査を実施し、もっと強力な監査体制と責任の明確さをきちんとしなければ、他府県の例でわかるように、そのツケはすべて行政と組合員、県民に回される結果となります。
 そこで農林水産部長にお尋ねしますが、農協の監査体制を強化する必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
 次に、農業共済組合の合併と県下一組合への再合併推進についてであります。
 天候に左右される農業とはいえ、台風などにより農産物のでき、ふできが生じ、価格や量産に影響させられています。そこで、台風等の災害結果を見て共済加入者には共済制度により共済金が支払われていますが、現在の農家は米の生産者を除き共済制度そのものを十分認識していない面があり、共済加入面積は極めて少ない状況が続いています。しかし、今後も農業生産に意欲を燃やして農業を続けていくためには、この共済制度の維持は必要不可欠の事業であります。このため、全国の農業共済組合が現在取り組んでいる地域再編整備は、郡単位の共済組合をさらに大規模化し、郡の区域を超え、かつその事業規模点数十万点以上の新広域組合に生まれ変わらせ、将来にわたって農業共済組合の安定的、効果的な事業が実施できる事業基盤と事業実施体制の確立を目指し、現在の全国四百四十八組合を合併完了時点には二百九十六組合に合併すべく推進されています。
 そこで、和歌山県もこの方針に従い、現在の八共済組合を三組合にすべく、県の指導により合併が進められ、この十月一日より県下三組合として発足する予定になっています。私の住む那賀地域は、和歌山市、那賀郡、橋本市、伊都郡の二市二郡の和歌山北部農業共済組合として十月一日から発足します。しかし、この合併により組織のスリム化や効率化ができても、合併をよしと快く考えてくれる農家の人は何人いるのか、甚だ疑問が残ります。今までのように人と人との人間関係は通用せず、市町村の協力も期待できず、これからは共済組合単独で事業を推進しなければなりません。さらに、この合併により農家の引き受け面積が減少に進むのではないかと心配をしています。このため、新共済組合の組織や活動内容、事業内容に全く影響が出ないようにするためには、今後の運営についてもさらに十分検討すべきであると思います。私も先日まで那賀郡共済組合の役員でしたが、現在の姿で和歌山、那賀、伊都の三組合を合併する仮定でシミュレーションをつくってみますと、合併第一年度で数千万円の赤字でありました。これでは組合員に合併の説明ができないとして、合併しても赤字を出さないよう組合員からの賦課金をアップし、職員の退職などにより人件費を減らし、収支とんとんの経営になるような事業計画をつくったのであります。農家から当然、何ゆえに合併すれば賦課金が高くなるのかとの疑問を抱かれています。
 そこで、この新組合に対する支援策を農林水産部長に質問していきたいと思います。
 まず、合併前には市町村からも助成金を受けていた組合もありましたが、今後も引き続き新組合に補助金が受けられるよう市町村に対し指導してくれるかどうか。和歌山北部共済組合の場合は、数百万円の補助金であります。また、新組合の合併には第一年度のみ国から二千万円の助成があると聞いているが、今後国は毎年〇・六%、三億円の事務費を減額すると言っており、合併二年目から問題となります。新しい組合の経営が赤字となった場合、県が合併を指導した立場上、支援策をどう検討してくれるのか、まず支援策からお尋ねします。
 次に、これから共済組合を将来にわたって維持していくためには、県下三組合ではいずれ経営が行き詰まってしまうことになります。現在の組織は、単位共済組合、県連合会、国という三段階制による危険分散、事業実施体制を基本として維持されているが、地域の意向も踏まえて二段階制による事業の実施の道を開くと農林水産省は認めています。今回は、既に地域再編整備計画で県下三組合と決められていたが、今後さらに合併を進めて県下一組合を誕生させ、県連合会の権利義務を引き継ぎ、連合会の機能もあわせ持つ特定組合につくりかえる方法、これしか将来にわたって共済組合として生き残る道はないと思います。私の県下一組合の提案について、知事のお考えをお聞かせください。
 次に、広域ごみ焼却施設の新設計画と今後の進め方についてであります。
 厚生省は、九七年、一般廃棄物の焼却施設を市町村で設置する場合は、ダイオキシン類の排出量を減らすために一般廃棄物の焼却施設の一日の処理量を百トン以上とし、百トン未満は国庫補助を適用しないと都道府県に指示しています。このため、市町村が独自でごみ処理施設を設置しても百トン規模に満たないため、国庫補助金も交付税の上乗せも受けられないとして、県は原則として今後施設を新設する場合は、郡単位以上の単位で広域化を進め、焼却施設を共有する広域化計画を打ち出しています。私の住む那賀郡も、一市九町から成る海南市・海草郡・那賀郡広域ごみ処理施設建設協議会を発足させて、一日百トン、完全燃焼可能な焼却炉の設置を進める方針を打ち出し、八百度以上の高温で二十四時間燃やし続け、ダイオキシン類を抑えるための施設をつくろうと計画しています。
 ところが、最近、厚生省の考え方、指導方針が急変し、現実には全国に百トン未満の施設が七二%もある事実を認識して、百トン未満の施設でも技術開発が進んだ今日、ダイオキシン類の排出量を減少させることができるようになったとして、従来の方針を撤回し、市町村からの要望があれば小規模施設でも補助すると大きな方向転換を打ち出していることであります。
 そこで、大規模処理施設をせずとも、従来どおりの考えで設備の更新時期が来ている市町村では、小規模施設についても十分研究し、再検討すべきでないかと考えます。大規模施設の場合は、幾つかの大きな障害を乗り越えていかなければなりませんし、なかなか完成までに時間がかかり、大きな資金も必要になってきます。その理由の一つとして、まずごみ建設予定地の立地条件の問題があります。ごみ焼却施設は迷惑施設として位置づけられており、小規模でもなかなか設置場所の了解が住民よりとりにくいのに、大規模になるほど土地価格が下落するなどの理由で地元周辺地域の見返り要望の整備にも対応が必要となり、ごみ処理施設以外の費用にも莫大な費用が必要とならないかどうかであります。
 次に、新設に対する費用の負担金にも市町村間での格差問題が起きます。例えば、焼却施設の建設費は規模や性能により異なるが、数十億円から数百億円の資金がかかると言われ、今の厳しい財政事情を抱える市町村にとって大きな財政負担となります。特に、施設が老朽化し、耐用年数も経過した施設の更新時期が迫っている市町村は何をおいても早く設置しなければなりませんが、既に立派な施設を新設した市町村にとっては、既存施設の起債償還と新たな新設負担金など二重の負担を強いられることになります。この場合、全体の中でどのようにその負担額を調整するのかどうかであります。
 また、ごみの運搬方法にも問題があります。一日百トン以上のごみの量は人口十万人分のごみの量であり、それだけのごみを一カ所に集めて処理することは大変な仕事で、運搬方法、運搬時間や距離、搬入道路、各市町村でのごみ収集方法も異なるため、その調整も大変難しく、さらにごみの運搬中継基地建設も新たな課題となります。一トン積みのパッカー車で遠い場所まで運搬できないため、十トントラックに積みかえるための一時ごみ保管中継基地が各市町村に必要となり、人里離れた山の中に中継所をつくるわけにもいかず、運搬上どうしても便利な土地とならざるを得ないし、不燃物の処理もあり、蚊やハエがごみと一緒に集まり、洗濯もできない問題も起こって、その解決にも時間がかからないかどうかであります。
 次に、リサイクルの推進運動が始まっています。電動式生ごみリサイクル機が発明され、既にごみ減量対策として市町村による購入助成制度があると言われており、一家庭に大容量一日一・五キログラムの生ごみを分解し、バイオの力で分解され、有機肥料となり、その機械の販売価格も六万円前後で農協で販売されています。このような機械が普及されると、ごみの量が減ったりして地域の実情が変わり、遠くまで運ぶ必要もなくなります。大規模な施設の経費、人件費、運搬車両費などのランニングコストも、今よりずっと高くなる心配があります。私は経費の面でコンパクトの方が低コストと思いますが、どうでしょうか。
 以上の理由から、大規模施設建設に大金をかけることは大きな危険があり、疑問があると思います。国の考え方も方向転換している中にあって、各市町村に応じた比較的簡単な小規模の施設も含めて、県の指導方針を考え直し、大小含めたむだのない新設計画を再検討してはどうかと思いますが、生活文化部長に今の県の考え方をお聞かせください。
 最後に、障害者が働く小規模作業所の支援についてであります。
 県は平成十年、紀の国障害者プラン実施計画を策定して各種施策に取り組み、西口知事を先頭に完全実施に努力されていることに対し、お礼を申し上げます。
 小規模作業所については、二十年前には県内に六作業所しかありませんでしたが、現在、私の知る限りでは四十一作業所に増加していると聞いています。いずれも自立に険しい作業所の経営実態であり、資金難にあえぐ多くの作業所が維持できるかの岐路に立っているのが現状であります。今、法人化できないこれらの作業所に支援する対策を検討することは介護保険制度導入の時期に際して極めて重要であると考えます。高齢者ばかりでなく、知的障害者も地域の中で一般の人と同じような当たり前の血の通ったぬくもりのある生活ができる環境づくりが必要であり、単なる障害者の人たちの居場所ではなく、自立する人たちのための重要な作業所を見直すときであるからであります。これから養護学校を卒業している子供たちや障害者のことを考えると、両親が近くにいる住みなれた地域で働きたい、友達がたくさん欲しいなどの願いを受け入れ、自分の力も発揮したい、みんなのため、人の役にも立ちたいとの願いは、すべての人と同じであります。この願いをかなえるように、大切に支援していかなければなりません。
 例えば、粉河町にある若葉作業所は在宅の障害者のための小規模作業所で、作業訓練を通じて一日も早い社会復帰や社会参加を目指し、十一年にボランティアの方々の温かい支援を得て家族会が運営主体となって運営を行っております。ことしからは以前より少し広い建物に移転していますが、法定施設と比較して著しく立ちおくれており、障害者を抱える家族を中心に、新しい施設建設のための資金集めの目標を立てて頑張っておられます。この施設の経営内容を平成十年度の歳入歳出決算書で見ると、公的補助金が八百二十二万円、ウエスの販売等の事業収入等で三百十四万円程度、歳入合計で一千百三十六万円、これが現在の小規模作業所の実態であります。
 そこで、最近、那賀郡で小規模作業所から法定施設になった作業所がありますが、この作業所の前と今とを比較してみますと、定員十七名が三十名に、職員三名が九名になり、面積も一人二畳が十畳の広さになり、運営補助金も八百万円であったのが措置費として五千五百万円になり、施設としても、食堂、広い作業所、更衣室、相談室、調理室、事務所、会議室などが整備されています。だから、これを見る限り、小規模作業所よりも法定施設にした方が施設もよくなり、不安定な経営からも脱却できることはだれもがわかっていても、現在の経営で手いっぱいであり、広い場所に移りたくても資金手当てもできず、どうしようもできないのが現況であります。
 しかし、初めに述べたとおり、高齢化社会に向けたお年寄りの介護制度に、その措置費として一人四十数万円も使っていることを考えれば、障害者への支援は余りにも少ないのではないかと思います。学校を卒業すれば、障害の重い子供たちは、働く意欲を持ちながらも仕事がなく、働く機会さえ数少なく、生まれてきて本当によかったと言える暮らしにはなりません。二十一世紀も障害者が安心して暮らせる社会に向けた良好な環境づくりを支えるのも、私たちの義務であります。このためにも思い切った支援策を考え出し、財政援助をもっと強化すべき時期だと思います。
 そこで、まず知事に障害者の働く小規模作業所に対するご所見をお聞きし、続いて福祉保健部長にお尋ねしていきます。
 まず、小規模作業所に対する運営補助は近畿地区では低い部と聞いているが、他府県と同様の補助金をお願いしたいこと、また小規模作業所の運営の安定に向けての支援策として、運営を支える職員の待遇改善を図るための人件費補助のアップ、学校の校舎等の公的施設を作業所に利用するための方策についてもお尋ねします。
 弱い立場の人たちが、家庭の中にあっても保護者に犠牲を強いることなく、安心して生きがいを持って暮らせる和歌山にするため、県のさらなるご支援を検討していただくようお願いして、質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの佐田頴一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 佐田議員のご質問にお答えをいたします。
 まず、介護保険制度でございます。
 介護保険制度も、いよいよこの十月から準備要介護認定が開始されることとなりまして、実質的なスタートを切ることとなります。また、法が成立して以来、短期間の中で介護サービス基盤の整備あるいは公平な介護認定への取り組みなど、多岐にわたる準備作業を市町村と密接な連携をとりながら実施してまいりました。この間、相当な成果をおさめてきたものと思いますが、中でも市町村におかれましては、限りある人員の中で厳しい作業環境であったものと思われ、大変なご苦労があったことと感謝を申し上げたいと思います。
 県といたしましても、各種団体等への数多くの説明、協議を行うとともに、県民への各種メディアを活用した啓発活動などによりまして、本制度がかなり浸透してきたものと思ってございます。今後とも、さらに県民の理解を深めるための啓発に努めるとともに、必要な介護サービス量の確保や低所得者へのきめ細かな配慮などについて国に働きかけを強く行いながら、市町村の支援に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、農業共済組合の合併についてでございます。
 組合の経営基盤強化を図るために、これまでも県農業共済組合連合会と連携をしながら推進をしてきたところでございます。特に平成十年度から、県下八組合を三組合に合併する構想の実現に向けて具体的な取り組みをしてきたわけでございます。合併の進捗状況につきましては、お話のように、海草、有田地区が本年七月一日に和歌山中部農業共済組合として合併したところであり、和歌山市、那賀、伊都地区が和歌山北部農業共済組合として、日高、西牟婁、東牟婁地区が和歌山南部農業共済組合として、本年十月一日に合併が予定されておるところでございます。
 県といたしましては、合併三組合の経営安定を図ることが当面の最重点課題であると考えておりますので、議員のお話の県下一組合構想につきましては、ぜひ必要なことではございますが、今後国や県内三組合の動向を踏まえながら連合会や各組合と協議を進めてまいりたいと考えてございます。
 最後に、小規模作業所──ただいま若葉作業所の写真を拝見させていただきましたが、小規模作業所が地域における障害者の働く場、活動の場として重要な役割を果たしてきておることは、よく存じてございます。利用される方々の障害の種別や程度に合わせた自主的で柔軟な運営が可能であるなど、大きな特色を持っておるわけでございます。障害のある人々が、住みなれたところで地域の人々とともに生活をし、社会参加していくことは、大変重要なことでございます。今後とも、障害者の働く場として小規模作業所の環境の整備や充実に努めるとともに、さらに運営の安定を図るために、授産施設などの法定施設化に向けての指導をしてまいりたいと考えてございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 佐田議員ご質問の、介護保険制度の現状認識と重要課題の解決についての五点にお答えを申し上げます。
 まず、介護保険給付の対象とならない高齢者に対する施策についてでございますが、五年間の経過措置後の施設面での対策といたしまして、高齢者生活福祉センター等の整備を促進することとしております。また在宅面では、在宅高齢者保健福祉推進支援事業により、在宅高齢者の生活支援対策、生きがい対策、及び保健予防対策等を地域の実情に応じて市町村が取り組めるよう総合的に推進してまいります。
 次に、保険料、利用料の低所得者への軽減措置についてお答えを申し上げます。
 一号保険料と介護サービス水準の市町村での差異についてでございますが、保険料につきましては、七月二十七日に発表した一次試算では、県全体で二千九百二十三円、最高は三千四百十三円、最低で千九百九円となっております。なお一号保険料については、住民のサービスの利用意向及び供給量から算定されるものであり、開始時には若干の差異が生じることとなります。現在、県としても、各自治体が策定中である介護保険事業計画の中で、近隣市町村が同一の水準になるよう、市町村とともに十分な連携を図ってまいりたいと考えております。
 利用料負担に対する軽減につきましては、所得に応じた高額介護サービス費の上限額の設定や災害等の場合の軽減措置により対応することとなっており、また生活保護受給者については介護扶助が全額支給されることとなっております。
 次に、標準サービス以外で市町村が独自サービスを展開される場合、配食サービスなどのいわゆる横出しサービスを市町村特別給付等で実施する介護保険による方法と国庫補助事業の一般施策で実施する方法等があります。いずれにしましても、これらの附帯サービスについては一号保険料の高低と密接に関連するものであり、現在審議されている市町村の介護保険事業計画策定委員会等で見きわめられるものと考えており、市町村とその内容について協議を進めてまいりたいと考えております。
 次に、介護サービスの中身のチェック体制についてでございますが、高齢者に対するサービスが適切に提供されているかどうかを確認するための人材として、介護支援専門員がその役割を担うこととなっております。県といたしましては、現在その介護支援専門員の養成の中で、公平性の確保、サービス内容の吟味など、チェック体制のあり方等を含めて研修を実施しているところであります。また、介護サービスの内容や質に関しての苦情の受け皿につきましては、市町村において対応が困難な場合は国民健康保険団体連合会が受け付けをし、サービス事業者に対する調査、サービス改善に関する指導及び助言を行う苦情処理制度が定められております。このような状況から県としましても、苦情発生に備えて、市町村、国民健康保険団体連合会の三者で八月に苦情処理業務検討会議を設置し、相互に連携が図れるよう対処方策を検討しているところであります。今後の進め方としましては、関係機関と協議しながら、苦情処理が円滑また迅速に遂行できるよう苦情処理のマニュアルを早急に作成してまいりたいと考えております。
 次に、県職員における介護支援専門員の試験合格者数につきましては、二カ年で二十六名と把握しているところであります。そのほか、介護支援専門員の指導者としては、平成九年度から四名の専任者を養成している状況にあります。
 介護支援専門員は、介護サービス計画の作成や訪問調査など介護保険制度の中心的な役割を発揮していただくこととなっており、県としましても、介護保険業務に従事している職員が市町村、民間事業者等への適切な指導をしていく観点から、今後とも介護支援専門員の資格取得など推奨してまいりたいと考えております。
 最後に、介護施設、在宅介護、介護事業者等の受け入れ側の体制についてでございますが、福祉、保健に係る人材の確保とその資質の向上が大変重要であると認識してございます。県といたしましては、和歌山ビッグ愛に設置しております福祉保健研修人材センターにおいて、事業者への情報提供や職業紹介、福祉保健従事者の研修等を実施しております。今後、研修人材センターの一層の充実を図りながら促進してまいります。また、二十四時間対応ヘルパー事業につきましては、現在二十五市町村で実施しておりますが、今後すべての市町村で対応できるように指導してまいります。県といたしましても、介護保険制度への円滑な移行を行われるよう、住民のニーズを踏まえ、基盤整備の一層の充実を図るように市町村に対し働きかけてまいります。
 次に、障害者が働く小規模作業所についての二点にお答えします。
 小規模作業所は、在宅の障害者が五名以上で週五日以上利用する就労の場でございます。小規模作業所に対する支援につきましては、県において運営の安定化と職員の待遇改善を図るため、昭和五十四年以来、市町村が行う補助の二分の一を補助しております。補助額につきましては年々その増額を図ってきており、平成十一年度も約五%増額したところであります。運営補助は全国と比べてもほぼ平均的な補助額となっておりますが、今後とも増額について努力してまいりたいと考えております。また、国においては障害者団体を通じて補助金が交付されておりますが、補助額の大幅な増額などを国に対し要望しております。
 また、小規模作業所の運営の安定を図るため、昭和五十四年度から平成十年度までに授産施設十三施設、入所更生施設一施設が法定施設化し、平成十一年度開設した授産施設三施設につきましても、小規模作業所から法定施設化に向けて指導してきたところでございます。今後とも市町村と連携しながら、障害者の社会参加を進める上でも、障害者の働く場の確保について支援してまいりたいと考えております。
 最後に公共施設等の利用についてでございますが、学校の校舎等、公共施設の小規模作業所への利用につきましては、現在、小規模作業所四十一カ所のうち市町村からの土地の貸与が十三カ所、建物の貸与が十カ所という状況でございます。また、法定施設の中には用途廃止になった教育施設等を授産施設に転用した事例もございます。今後とも、市町村や関係機関と協議の上、授産施設や小規模作業所への公共施設等の活用を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 佐田議員にお答え申し上げます。
 まず、県内八農協合併構想の実現についてでありますが、議員ご指摘のとおり、ペイオフ凍結解除に備えて、貯金者の信用を維持するためにも重要なことであり、県といたしましては、農林水産部の重要施策として積極的に指導、支援してまいりました。
 本年十月一日には、海南、海草地域と有田地域において、それぞれ広域合併農協JAながみねとJAありだが誕生します。また、伊都地域と東牟婁におきましても、期間内の合併実現に向け具体的な取り組みが行われておりますが、八農協合併構想の完遂ということでは、農協間の財務格差や合併メリットの不透明性などの合併阻害要因があり、厳しい状況にあるのではないかと考えてございます。
 また、農協系統組織の再編整備のもう一つの取り組みである二段階制でありますが、共済事業につきましては、全国組織への統合が既に決定されております。また信用事業、経済事業につきましては、全国的な動向を把握し、指導、助言してまいりたいと考えております。
 続きまして、農協の合併を進めるための財務強化支援策についてでございます。
 県といたしましては、農協合併を推進するため、未合併農協に対する指導等、組織整備の推進を行う農協財務健全化事業や合併阻害要因の一つである不良債権の償却を支援する社団法人紀の国農業振興基金に対する資金貸し付けを行うとともに、広域合併農協に対し営農指導強化対策を実施するなど、指導、支援を行ってまいりました。今後とも、農協合併の推進につきまして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に農協検査についてでありますが、平成十年度から組合検査室を新設し、県農協中央会と連携のもと、早期是正措置が導入されたことに伴い、従来の検査項目に加えて資産査定などに重点を置いて検査を行い、組合の執行体制の確立、自己資本の充実、経営の健全性の確保などの指導を行っているところでございます。また、地域に密着した金融機関である農協の経営の健全性、安定性を高めることが急務となっていることから、平成十一年度からは検査体制の強化を図るとともに、検査の精度を高めるため、公認会計士二名を嘱託検査員として採用し、きめ細かな検査を実施しているところでございます。
 次に、農業共済組合合併後の新組合に対する県の支援策の検討についてでございますが、先ほど知事が申し上げたとおり、合併後まず組合の経営安定を図ることが最重点課題であると考えますので、運営に支障が出ないよう指導してまいりたいと考えてございます。
 また、市町村に対する助成指導についてでございますが、現在県下におきまして農業共済組合への助成は一部の市町村で実施されているところでございます。しかし、広域合併により市町村の役割が薄れることから継続助成や各市町村への協力要請は大変難しいところでありますが、関係団体等とも協議をしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 佐田議員ご質問の、広域ごみ焼却施設の新設計画と今後の進め方の三点について回答申し上げます。
 まず、広域化計画の見直しでございますけれども、ごみ処理広域化計画は、ごみの排出量増大に伴う最終処分場の確保難、リサイクルの必要性の高まり、ダイオキシン対策等の高度な環境保全対策の必要性等、市町村が抱える一般廃棄物処理に係る課題を解決するため、ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン及び厚生省通知により、ごみ処理の広域化が必要であるとの基本方針が示されているところであります。県におきましても、この国の基本方針に従って、市町村と意見交換を重ね、国と協議をし、おおむね十万人規模以上を一つのブロックとした七ブロックのごみ処理広域化計画を策定したものでございます。
 議員お話しの市町村の財政負担問題、焼却施設の立地問題、既存施設の更新時期の違い、収集運搬の問題等、広域化を進めるためには、さまざまな乗り越えるべき困難な課題が多くあることは理解いたしているところであります。しかしながら、ごみの広域化は国の方針に従って進めているところでございますので、ごみ広域化計画を見直すことは困難であります。今後、県といたしましては、ごみ処理広域化計画を円滑に推進できるよう、国に強く働きかけてまいりたいと考えております。
 なお、厚生省が百トン未満の小規模施設に対する補助について検討しているとのお話でありますが、これは広域化に至るまでの過渡期の措置として老朽化に伴う小規模施設の更新に対する財政支援であり、ごみ広域化計画を見直すものでないものと認識いたしております。
 続きまして、焼却施設建設予定地の地元了解を含む諸問題についてでございます。
 これにつきましては十分承知いたしておりますが、現在、海南、海草、那賀広域ブロックで協議会を設立し、協議をしているところでございます。県といたしましては、協議会の議論の過程で検討されるさまざまな問題につきまして必要な助言や指導を行ってまいりたいと考えてございます。
 三点目のランニングコスト、費用面の検討についてでございますが、一般的には施設規模を大きくすることにより処理能力当たりの建設費が安くなると言われておりますが、反面、輸送距離が長くなることによる輸送費の増加も考えられます。ランニングコストを設定する際には、こうした要素を総合的に検討する必要がありますが、現在のところ、海南・海草・那賀広域ごみ処理施設建設協議会におきましては具体的な検討の段階に至っておりません。市町村財政が非常に厳しい状況にあることは認識いたしておりますので、今後コスト面につきましても建設協議会において十分検討されるよう指導してまいります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、佐田頴一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十四番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 西口知事が就任されて、早くも四年の歳月が経過をいたしました。知事としての激務、何かとご苦労さんでございました。ご慰労を申し上げたいと思います。ただ、県政に対する評価を大きく異にするところでございますので、そういう立場からこの四年間をどう総括されておられるか、お尋ねを申し上げたいと思います。
 この期間と言えば、国の政治の貧困の中で地方政治としても何かとやりにくい期間であったと察するところでありますが、百三十六の抱負を掲げてきた知事として、所期の目標との関係で見ていかなる四年間として総括されているか、まず概括的な所信をお聞きしたいと思います。
 次に、個別に幾つかお尋ねをいたします。
 まず、電源立地についてであります。
 この期間にあって知事は、和歌山火力発電所、御坊第二火力と、二つの火力発電所の立地を認可いたしました。和歌山火力については、住友の公害除去のための埋立地であったところへの新たな公害発生源の誘致として地元の人々の大きな不安と怒りを呼んだところでありましたが、今なおそれは変わっているわけではありません。特定の民間企業が公の海を埋め立て、所期の目的が喪失したから別の民間企業に譲渡するなど、我々には考えられない大企業の横暴でありました。もちろん、社会の変動の中で埋め立て目的がなくなっていくということは起こり得ることだと思いますが、それはその企業の責任に属することであって、営利目的の転売などは到底許されるものではありません。民間企業同士がさっさと談合して、県がそれを違法ではないからと追認していく姿は、まことにもって残念という言葉以外に見当たりませんでした。知事にあっては、西防沖埋立地の転売、LNG火電の誘致の経過、結果を含めて今どのようにお考えになっておられるか、お示しいただきたいと思います。
 次に御坊第二火電についても、大きな反対運動あるいは認可を延期してほしいという要望が起きておりました。理由は、梅の生育不良と御坊火力の排気との関係が疑われ、その解明がなされていなかったからであります。オリマルジョンの不安についても、それは残されたままでした。しかし、知事は立地に向けて早々と許可をいたしました。議会の中にも早期の認可を求める声のあったことも確かですが、生育不良の原因解明より電源立地が優先されたことだけは確かでした。その解明を待てないほど電源立地を急がなければならないという理由はなかったと思います。急いだからよかったという思いを今でもお持ちになっていますか。
 次に、雑賀崎埋め立て問題についてお聞きをいたします。
 私は、この計画に反対の立場で再三質問をいたしておりますので、繰り返すつもりはありませんが、幾つかの問い残している点をお聞きしておきたいと思います。
 一つは、最初の計画が新聞に抜かれるまで、なぜ秘密裏に事が運ばれていたのかということです。開かれた県庁を標榜して当選された知事の仕事とは思えない。なぜそんなに秘密にされたのか。そういう進め方が正しいやり方だったと、今も考えておられますか。
 次に、計画の変更についてです。国の港湾審議会で意見が付されました。それに基づいて、その後短期間に第二次の計画が作成されました。住民のためを思って計画変更したという評価も当然あろうと思いますし、知事自身もそういう思いでされたのかもわかりません。それならなぜ、反対意見が早くから出ており、十万人の署名まで寄せられていた時点での計画変更がされなかったのかと思うんです。結局、国からの指摘で初めて変更に傾いた。やはり地元の声よりも国の声──知事の姿勢を残念に思います。私が特にそんな感じを抱いたのは、このプロジェクトの費用対効果の質問をした際、今の段階ではできないという当局の答弁でした。ところが、その答弁の十日もたたないうちに、見事に費用対効果は計算され発表されたのであります。なぜできたかと言うと、国がしなさいと言ったからということでした。議会質問にはできないと答え、国の方から指摘されればさっさと出す。おかしいとは思いませんか。お答えください。
 この際、いま一度お聞きしておきます。これは土木部長に尋ねておきますが、雑賀崎沖の埋め立てを含めた港湾整備の事業費は幾らぐらいを予測しているのですか、お答えをいただきたいと思います。
 次に、同和行政についてお伺いをいたします。
 一昨年、国も同和対策を基本的に終了いたしました。しかし、県の方は従来とほとんど変わらないペースで同和事業推進プランを作成し、基本的に終了するというのではなくて推進という姿勢を示されました。私はしばしばこの問題を取り上げているので詳しく触れませんが、同和事業の目的、水平ならしめるという目的はもう基本的に達成されたと思っています。地域改善などの事業として残っているものも、特別対策でというより一般対策でというのが一般地域と比較して筋が通ります。産業や就労問題でも、この不景気の中で同和地区もそのほかとももう区別はありません。学力、進学の問題でも同様で、若干の格差も視点を変えれば、あちこちにある格差です。同和地区と行政的に線を引いて、そこだけ特別対策をするということは現在の段階では水平ならしめるという目的から外れてきています。そういう段階での特別対策は、社会に人為的にいつまでも同和地区を残すということにつながりかねません。この四年間を振り返ってどういう所信をお持ちですか。
 次に、財政問題でございます。
 県債残高が膨大なものとなり、この六月現在で約六千四百億円になってしまいました。このうちの約二千億円は、西口知事の時代になってつくられた借金であります。その伸び方は急カーブを描いていきました。そのため公債費も年々増加し、県民福祉を圧迫する状況となり、財政健全化のプランを新たに作成しなければならない事態にさえなっています。借金をしながらでも必要な事業は進めなければなりませんが、不要不急のものは当然排除しなければなりません。この四年間とりわけ目立ったものは、国の経済対策にこたえた公共事業、県単独事業の増加でした。国が強くそれを求めてきたことが大きな理由でしょうが、そこにはおのずと分に応じた節度が求められるところです。公共事業を中心にした景気対策が、その波及効果において期待するほどには働かず、景気対策イコール公共事業と図式的に対応することなどは大いに反省すべき点ではなかったかと考えます。この期間の大型建造物であったビッグホエール等も、必ずしもこの財政難の時期にあえて建てなければならなかったものかどうか、大いに総括されるべきであろうと思います。この四年間の財政運営等にいかなる所信をお持ちでしょうか。
 以上が、知事に対する質問でございます。
 続いて教育長に、国旗、国歌の問題について質問をいたします。
 この問題は去る六月議会においても質問をしたところですが、その後法制化されたということもあり、過日の議会で議論し尽くせなかった点などもありますので、再度質問をさせていただきます。
 一番目は、君が代の歌詞の解釈まで時の政府が定め、学校においてかく指導すべしとまですることは、学校教育に対する時の権力の不当な介入ではないかという問題であります。
 政府によれば、君が代の「君」とは象徴天皇のことであるとされました。さらに「君が代」とは、「象徴天皇を国民の総意としていただく我が国」のことだとされました。「君」が象徴天皇のことだとすれば、「君が代」とは象徴天皇の国または時代ということになり、「象徴天皇をいただく我が国」とは国語的には到底成り立たないことは、素直に読む限り明らかであります。明らかに無理な政治的解釈がここではつけ加えられました。なぜなら、「象徴天皇の国」というだけでは主権在民の思想に反するからです。ところが学校教育に当たっては、政府の下したこの解釈のとおり指導しなさいということにされています。まず一つ、ここに無理があります。
 この歌詞の歴史をたどりますと、大方の皆さんは既にご承知のことでございますが、そもそもは恋する人への、あるいは親しく尊敬する人へのことほぎの歌であったということであります。それが、明治、昭和期に入ってから、時の政権によって「君」とは大日本帝国の天皇の意味とされ、「君が代」とは文法上は何の矛盾もなく天皇の国とされたわけであります。そして、天皇賛歌として歌われたという長い歴史を持ちます。戦後は、君が代は学校教育から一時的に姿を消すことになりますが、再び学習指導要領に登場してまいります。しかし、その際は「君」とはだれか、「君が代」とはだれの世かについては政府の方でも特定はしませんでした。あいまいな時期が長期にありました。「君」とはあなたであり、あるいは国民全体を指すものだと言われたりいたしました。そして、さきに述べたように、今回政府が「君が代」とは、日本の国語の文法では到底理解できない「象徴天皇をいただく我が国」とされて、学校教育でかく指導すべしとされたわけであります。
 このように見てまいりますと、君が代の歌の解釈は時の政治によって変わっているわけであります。歌詞の解釈は時の政権によって定められるというものでしょうか。「君が代」というわずか三文字を日本語として到底無理な解釈、「象徴天皇をいただく我が国」と解釈させ、それを教育に持ち込むというのは、余りにも乱暴な政治の教育への介入ではないでしょうか。
 次に、国旗、国歌と内心の自由に関係してお尋ねをいたします。
 教育長は、さる議会で、教育公務員たる者は、みずからの信ずるところとは異なっても指導要領には従う義務があるという意味の答弁をされたところです。きょう、私はそれに至るまでの問題、すなわち学校教育の国旗、国歌の扱い次第ではその指導が内心の自由を侵す危険があるという、そもそもの問題を提起して教育長の所信をただしたいと思います。
 私は、国旗、国歌の一般的指導を否定するものではありません。ここで問題にしたいのは、学校の儀式あるいは行事で、校長あるいはその任を帯びた教師によって起立斉唱を命じること、またそれによって教師並びに児童生徒がその命に服さなければならないということについてであります。
 国民全体がそうであるように、教師にあっても、日の丸にどれだけの敬意を抱くか、君が代をどのように解釈し、その思想にどの程度共感し、あるいは共感しないかは、憲法第十九条に保障された個人の内心の自由の問題であります。これは大方の一致するところで、国会論議でもそういう形で議論されました。したがって、その思いをどのように表現するかは、それぞれに当然違いが生まれてまいります。起立斉唱を命じる行為事態が、その人の内心と一致していればそれはよいでしょうが、そうでないと、その人の内心の自由、基本的人権を侵すことになります。しかも、今回のように君が代の解釈に大きな無理があり、それが主権在民の思想との乖離を感ずる者にとっては、内心の葛藤は一層増幅されることになるでしょう。事は、憲法で定められた思想・信条の自由の問題ですが、その自由の鼻先に指導要領が対置され、憲法を超えて権力的運用が教育公務員なるのゆえをもって強制される、そこに最大の矛盾があります。私は、このような教師の憲法的権利を阻害する指導要領のその条項の存在そのものが問題だと思います。近代民主主義を経験した主要な国家が、教育の中に国旗、国歌の一律的な指導を掲げていない理由もそこにあるとされています。
 去る七月三十日、日本教育学会が──この組織は日本の教育研究団体では最大のもので、大きな権威を持っていると言われている団体でありますが──国会審議に当たっての要望書を発表しました。その一節に、次のような文言があります。すなわち、「「日章旗」と「君が代」とをいかなる意味で教育、特に学校教育の場において受け止めるかは、本来、校長・教師など学校教育当事者の専門的判断にゆだねられるべきものであります。その判断の基礎は「教育の自由」に属すべきものであり、さらに、両者の意味をどう捉え、どのような指導を行うかも、教育当事者の「学問の自由」及び「思想・良心の自由」と深く関わるものであります」と論じて、法制化後の画一的、権力的指導の強化を憂えて、教育はそこから自由であるべきだとしているところであります。
 国旗、国歌の教育が子供の内心の自由を侵すことがあってはならないということも、国会議論の中でも大方の一致するところでした。児童生徒への対応はその発達段階に対応してさまざまでしょうが、いずれにしても強制があってはならないものであります。政府答弁でもしかりでありました。しかし、起立斉唱の命は実質的強制に通じます。中学生ともなると個人差はあるでしょうが、社会一般についても自己の主張をはぐくみ始めます。高校生になればなおさらでしょう。当然、国旗、国歌についてもそれなりの思想・信条として抱いています。起立・国歌斉唱の号令が下ったときどうなるか。その命と心とが一致していれば、それは結構なことであろうかと思いますが、恐らく全員がそういう状況になるということは、まずないでしょう。疑問を抱いているまじめな生徒は、生徒は教師の指導に従うべしという一般的な倫理との間での葛藤が生まれ、苦しむことになるでしょう。豊かな個性の育成という教育の理念が、ここでは思想・信条への画一的な指導で説明のつかぬ矛盾に遭遇することになります。小学校の低学年は、恐らく何のことかわからないままに先生の指導に従おうとするでしょうが、父母との心は必ずしも一致いたしません。
 国会の、強制はだめだが指導はすべきだとの議論の中で、強制とは、口をこじあけてまで歌わせたり、苦痛を感じるほど長時間指導することだとの政府答弁がありました。それは強制というより拷問というのがふさわしい状況で、答弁した政府の知的水準に私は疑問を感じたものでしたが、一般的に言って、教師の子供に対する指導には、社会通念上、先生の言うことは聞くものという、緩やかであっても強制的性格が内包されています。まじめで従順と評価される児童生徒ほど、みずからの信条と一致しない場合は、それを押し殺すことになるでしょう。国会論議の中で、一度目の指導は内心の自由を侵さないが、二度目はその可能性があるという答弁もありましたが、児童生徒にとっては一度でも二度でも教師の指導というのは重く心に届くものです。さきに紹介した教育学会の文書は、「教育当事者の側におけるこれらの自由が制約される場で、はたして児童・生徒たちの内面の自由が保障されるか否か、少なからず疑問をもたざるを得ません」と述べているところであります。子供の権利条約は、ここではほとんど機能しないでしょう。
 いろいろ申し上げたましたが、質問はただ一つです。思想・信条の自由を保障した憲法の存在にもかかわらず、教育公務員を現実的に拘束している指導要領の国旗、国歌の起立斉唱を命じる指導条項こそ教師、児童生徒の内心の自由を奪う大もとになっている現実を、教育長はどのようにお考えになっておりますか。
 三番目の問題は、学校の儀式や行事をどのように行うかは全国一律のものではなく、校長を含めた全教職員の総意、さらには児童生徒を含めた総意によって行われるべきではないかということです。日の丸、君が代がなければ卒業式も入学式も値打ちがないというものではありません。思想・信条に触れるものを持ち出して、そこに新たな葛藤を生みながら、そこに焦点を当てて儀式を行うことが子供たちの成長にどんなプラスがあるというのでしょうか。かつての日の丸、君が代を義務づけた学校儀式が、果たしてどれだけ子供たちの心に国際理解や世界平和の思いを育てたでしょうか。戦中、最も恐れ多いとされた教育勅語の朗読が果たしてどれだけ児童生徒の心をはぐくんだか。私の聞くところによれば、儀式の苦痛だったということ、その後配られた紅白のまんじゅうの喜びという笑い話があります。日の丸、君が代がその政治力によって強引な解釈と意義づけで学校行事に持ち込まれるならば、学校の儀式や行事が単なる儀式となり、教育的豊かさを喪失していくのではないかと憂えます。教育長は、本当に卒業式に君が代の斉唱がないと卒業式の価値が薄れると思いますか、学校の儀式や行事は学校の裁量に任されるべきだろうと思いますが、いかがでしょうか。
 続いて、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 雇用問題に関係して、今次議会の議案ともなっております緊急雇用特別基金について幾つかのお尋ねをいたします。緊急雇用対策として千二百五十人を六カ月の期限つきで雇用しようとするものですが、果たしてそれが有効に働くかという懸念と、よりよく雇用問題の解決に役立ってほしいという思いから質問いたします。
 大半が民間委託ということもあって、その確実な遂行が保障されていないという問題があります。企業によっては、首切りのかわりに一時的にこの資金で六カ月だけをつなぐということもあり得るわけで、そういうことなら全く新規雇用にはつながらず、また市町村にあっては、急な事業でもあり、万全の受け入れ体制があるというわけではありません。もともと基金の創設自体が新たな就業への中継ぎというようなものでありますが、本来はそれが新たな雇用と連動することが望ましいわけで、そういう努力を雇用する側にも積極的に求めたいところであります。この制度の積極的な活用をどう考えておられますか。
 また、この基金のちょうど半分が千二百五十人の人材育成に充てられております。技術の習得がその後の就職に即結びついていけばいいのですが、そこのところが何も保障されておりません。制度自体はいいのですが、その点に不安が残ります。雇用の開拓が独自の課題として残りますが、そこをどのように開いていくかをお示しください。
 十分の宣伝が行き渡れば、この事業に応募枠以上に応募があったり、あるいは六カ月を超えてその仕事を続けたいと願う人もたくさんいると推定されます。その願いに県独自の施策でこたえてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 実は、この事業の市町村が扱う分野で、和歌山市が六事業、金額にして約一億円の申請をしております。ところが、採用されたのは三事業、金額にして約三千四百万円にしかすぎませんでした。不採用の理由もそれなりにあるようですが、事業そのものは和歌山市にとっても必要なものでした。採用されるのが望ましいものばかりであります。他の市町村でも、求めたものの半分あるいは三分の一の採択だったそうでありますが、この事例からもわかるように、要望は相当大きいと思われます。国の枠は決まっておりますが、現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、この制度、あるいはこの種の制度の県独自の施策の拡大を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、住友金属の新たな経営プランの発表に関連して、雇用や関連企業への影響についてお尋ねをいたします。
 この件についてはさきに質問もございましたので、やや重複があるやもわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 発表によりますと、住友金属全体で来年度で二百億円の黒字を見込みたいとして、和歌山製鉄所で今年度より約二百億円のコスト削減を図りたい、そのために企業内の労働生産性を向上させること、発注形態のあり方を含めた外注政策を抜本的に改め、外注作業費、物流費を徹底的に切り下げていくというものであります。また、それにより人員削減も全体で七百人に及ぶとされております。事の重大さから、知事みずからが県下の経済に悪影響を及ぼさないように申し入れを行ったと本会議でもお聞きしたところでありますが、住友金属の社長さんが語ったという共存共栄は果たして実行されるのでしょうか。
 雇用を和歌山関連で四百人削減されるとしていますが、聞くところによりますと、同社の人減らし合理化は極限まで追求され、労働災害が頻発する状況にあり、本年も二件の死亡事故があったと聞きます。四百人の削減は退職者等による自然減に待つという報道もありましたが、従来の手法は必ずしもそうではありません。配転、出向等によってやむなく退職せざるを得ないというような事態が生まれ、実質的な解雇ということは珍しくありませんでした。新たな失業者が増加する可能性が出てまいります。
 さらに、外注政策の抜本的転換は、同社に関連した中小零細企業に大きな不安を与えています。外注費三〇%ダウンというのは、まさに下請企業の息の根がとまるほどのものです。下請への被害をできるだけ小さくという話もあったように聞きますが、しかしその過酷な外注コスト削減政策は既に始まっております。ある運輸関係企業は、既に七月から一〇%前後のダウンを求められておりましたが、さらに来年二月に五%、四月にはさらに三%の価格ダウンを求められており、大変な事態だと、そこに働く人たちに大きな不安を抱かせていますが、その方々の話によりますと、労働者だけではなく、当然のことですが、経営者側も同様な不安、この状態では経営が続けられないのではないかという悩みを語っているという事態さえ生み出しているそうであります。恐らく、この運輸関係だけではなく、その他の関係企業のところにも同様の事態が進行しているところだと思われます。
 住友金属の方は来年度で二百億円の黒字を目指しての二百億円の経費削減ですが、下請関連にとっては一方的な単価切り下げでしかありません。とても、共存共栄の事態ではありません。企業が利益を追求するのは当然のことでしょうが、地域に大きな影響を持つ大企業は、そこにおのずからの節度がなければなりません。大企業の社会的責任が求められるところであります。住友への申し入れに対する回答、それは県民にとってどう評価されるものかをお示しください。
 さらに、この事態が進行すると、下請企業の経営とそこに働く人々の雇用を含めた暮らしの問題が大きな問題となってくるでしょう。当局として、事態の推移を十分に調査しつつ、住友金属に対して下請企業の経営と労働者の生活を守る立場から適宜申し入れをされることを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、来年春卒業する高校生の就職状況についてお伺いをいいたします。
 新しく社会に巣立っていく若者の前に大変な就職難が待ち受けていると言われております。卒業を前にして何かと不安を抱いているだろうと思いますが、何とか全員が希望するところに就職ができるようにと父母の気持ちもさらなるものであろうと推測いたします。関係する当局の雇用先の開拓、密なる学校との連携が強く求められるところでありますが、現在の状況、今後の展望をどのように持っておられ、さらにいかなる努力をされようとしているのかお示しをいただきたいと思います。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 私の四年間を振り返っての総括的なことでございます。
 まず、四年間を振り返ってみますと、初登庁のその日から始めたきのくにホットラインの開設、女性一〇〇人委員会の設置、動く県庁などの開かれた県政を心がけてまいりました。ふるさとに自信と誇りを持とうと訴えたことに多くの県民のご理解がいただけたことを大変うれしく思っております。また、近畿自動車道紀勢線や京奈和自動車道を初めとする基盤整備、県立医科大学の統合移転整備完了、福祉のまちづくり条例の制定など医療福祉の充実、産業情報センターの整備など産業の活性化、和歌山ビッグホエールのオープンや県立橋本体育館の設置など、文化、スポーツの推進といった一三六のプロジェクトを初めとして、各分野で数々の成果を得ることができました。さらに、全国高校分校サミットやアジアこどもフェスティバル、あるいは一昨日無事成功裏に終了することができた南紀熊野体験博など、本県独自の取り組みによりまして、全国さらには世界へ和歌山県を情報発信することができました。これらの成果のすべては、県民の皆さんのご理解とご協力のたまものと感謝をしてございます。
 次に、電源立地についてのご質問であります。
 和歌山発電所計画及び御坊第二発電所計画につきましては、これまで議会でも再三お答え申し上げてきましたけれども、電源立地の基本的な考え方に基づいて、地域振興の立場で対応してまいりました。両発電所計画につきましては、埋立地利用計画の変更や梅の生育不良の問題など慎重に検討を重ねた結果、一昨年の電源開発調整審議会に際して、私は県議会の推進決議がなされたこと、関係市町の同意を得たこと、環境保全対策の適正な実施と安全対策の徹底が図られること、さらには地域の活性化に寄与する計画であること等から、総合的に判断をいたしまして、電源開発基本計画に組み入れることへの同意の回答を行ったものでございまして、適正に対応してきたと考えてございます。
 次に和歌山下津港の計画でございますが、先ほども申し上げましたように、私は就任以来、広く県民の意見を施策に反映するために開かれた県政を心がけてきたところでございます。和歌山下津港港湾計画の改定につきましては、平成四年から和歌山下津港港湾整備構想調査委員会において、地元代表としての関係市町や学識経験者、さらには県内関係団体のご意見を伺いながら検討を進め、平成九年八月及び九月の県内各界の委員を中心とした地方港湾審議会の審議を経るなど、一連の手続を踏んで策定をされました。しかしながら、平成九年十一月の国の港湾審議会での意見や広く県民からの賛否両論の意見をお聞きし、またかねてから本県のすばらしい自然、歴史、文化と経済発展のための基盤整備をいかに共存させ共生させていくかを考え、議会においても港湾計画の見直しについて柔軟に対応すると明言をいたしまして、担当部局に指示して取り組んできたところでございます。
 具体的には、昨年より景観検討委員会を設け、景観の保全に対する検討に入りました。委員会では、地元自治会の代表を初め、旅館組合や経済団体などの意見を聴取いただき、また私自身も直接地元の方々とお会いをして、その他にも手紙、ファクスなど、さまざまな方法、機会を通じて意見をいただいてまいりました。さらに、委員会や審議会の公開などにも努めてまいったところであります。こうした中で、今回の変更計画は、景観保全に最大限配慮するとともに、国際物量拠点形成のかなめとなるものでございまして、私といたしましては、行政が県民各層の皆さんの意見をお聞きをし、感じ取ったものを計画に反映した結果であると考えております。
 次に、同和行政についてでございます。
 これまで生活環境の改善を初め、各分野で大きな成果をおさめてきたところでございますが、この間、国におきましては、地対財特法の一部改正や人権教育のための国連十年国内行動計画の策定、人権擁護施策推進法の制定がなされました。このことは、同和問題の早期解決を図るための新たな段階に対応したものであり、またすべての人の基本的人権の尊重に向けた取り組みへの契機となったものでございます。県としては、同和地区において教育・啓発、産業・就労等になお課題が残されていることから、和歌山県同和行政総合推進プランに基づき、一日も早い解決に向け取り組むとともに、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画を積極的に推進することにより、一人一人の人権が保障された差別のない社会の実現を目指してきたところでございます。今後とも、その推進に努力をしてまいりたいと思っております。
 次に、財政硬直の進行についてでございます。
 累次の景気対策の結果、地方財政において硬直化が進んでいることは事実でありますけれども、景気対策の重要性にかんがみればやむを得ないところと考えてございます。また、景気対策の実施に当たりましては、県民ニーズや費用対効果等を十分勘案しながら、二十一世紀に向けた県土づくりのため適切な事業を選択してきたところでございます。もとより、中長期的な観点から財政の健全性を確保することの重要性は十分に認識をしており、近年における歳入動向や基金残高の状況を踏まえ、歳出構造の見直しに取り組み、重点的、計画的な財源配分と効率的な行政運営により一層努めること等を通じて、今後とも県勢の発展と県民福祉の向上に最善を尽くしてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 和歌山下津港計画について、ご指摘の費用対効果につきましては全国でも計画段階で算出した例はありませんでしたが、運輸省より六月議会と時を同じくして港湾整備事業の費用対効果算出マニュアルが出されたのを受け、その内容を至急入手し、詳細な調査、設計等がなされていない計画段階での概算ではございますが、このマニュアルに基づき、参考として費用対効果を試算いたしました。この試算に当たっては、費用として見込む対象事業の範囲を設定の上、先ほどお尋ねのあった事業費を約五百億円と見込み、費用と便益を比較しております。
 費用については、この事業費を現在価値に換算するため、社会的割引率四%を考慮して約三百五十億円と見込みました。これに対し便益については、陸上輸送コストの削減効果、建設残土やしゅんせつ土砂の輸送コストの削減効果、土地の残存価値等の総和を費用の場合と同様に社会的割引率四%を考慮して現在価値に換算すると、約七百億円となりました。便益が費用の二倍程度になるとの結果を得ております。いずれにしましても、この事業費や費用対効果分析結果は計画時における参考値であり、今後、地質調査等の諸調査、修景効果に配慮した緑地や護岸の検討、さらに建設コスト削減などについて十分検討してまいります。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 緊急雇用対策の五項目についてお答えします。
 まず、緊急雇用特別基金を確実な雇用につなぐためにということについてでありますが、緊急地域雇用特別交付金は六月に国の産業構造転換・雇用対策本部において決定された緊急雇用対策及び産業競争力強化対策に基づき、国において補正予算措置されたもので、本県には十五億二千二百万円が交付される予定であり、今回必要な補正予算等をお願いしているところでございます。この交付金を活用する事業計画の策定に当たっては、教育委員会を含む各部局や市町村に積極的な取り組みを依頼し、緊急性や雇用効果などについて検討した結果、市町村事業を含め、平成十一年度から十三年度にかけて四十二事業を実施する計画を策定したところであります。その雇用効果といたしましては、事業実施による雇用・就業と人材育成事業を合わせて二千五百人を見込んでおり、できるだけ多くの雇用・就業機会を創出するよう事業を委託する企業等に求めていくなど、新たな雇用・就業の機会の創出に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、雇用期間の延長や県独自の事業拡大についてでございますが、国において事業の実施期間は平成十三年度まで、雇用期間は六カ月未満と限定したものであり、本県においてもこの方針に基づき事業を実施するものでございます。県独自の施策につきましては、財政状況等から極めて厳しいものがあり、この交付金を最大限に活用して事業効果を高める努力をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、人材育成事業をどのように新規雇用につなげるかについてでありますが、今回実施する人材育成事業は、介護保険制度導入に向けたホームヘルパーの育成や南紀熊野体験博でも提唱した体験型観光に従事するインストラクターの育成といった、今後雇用・就業機会の拡大が見込める分野の人材を育成するものであり、新たな雇用・就業の機会につながるものと期待してございます。
 次に、住友金属の経営プランとその影響と対策についてでありますが、去る九月一日に住友金属工業より発表されました経営改革プランには、和歌山製鉄所の人員削減、関係協力会社に対するコスト削減などが盛り込まれており、県といたしましても地域経済に及ぼす影響を懸念しているところであります。このことから、知事は住友金属工業の社長に対し、下請関連企業の経営安定への配慮について強く要請したところであります。また九月十三日には、副知事を座長とする特定企業対策連絡協議会を開催し、雇用面への配慮や下請関連企業の個々の実情に対する配慮などについて、再度和歌山製鉄所に対し要望いたしました。住友金属としても、和歌山製鉄所の存続及び地元との共存共栄を図るべく、自助努力を含め多額の投資も行ってきており、県民の理解を得られるものと認識しておりますが、今後、協議会としては、関連企業等の動向を把握するなど情報の収集を図り、当面する問題について、その都度対応してまいりたいと考えております。
 最後に、新高卒者への求人の現状と対策についてでありますが、本県の来春高等学校卒業予定者に対する求人数、推薦数は、八月末現在四千六十二人と前年同期に比べ四一・一%の大幅な減少となっております。一方、学校、職業安定所の紹介による就職を希望する生徒は二千二百七十一人で、前年同期に比べ一三%の減少となっております。この結果、応募できる求人、推薦数で見ますと求人倍率は一・七九倍となり、前年同期の二・六四倍に比べ〇・八五ポイント低下し、その就職環境は厳しい状況にあります。
 これまで県といたしましては、七月に三十人以上の企業約千百社に対し求人依頼を行うとともに、八月には各職業安定所長に対し、新規学卒者対象の求人開拓の実施について指示を行い、現在、各高校の進路指導担当者と連携をとりながら、所長を筆頭に積極的な求人開拓に努めているところでございます。また、九月十六日より選考が開始されたところでありますが、就職未内定生徒の就職支援策として未充足求人企業の把握に努め、十月一日現在の求人事業所一覧表を作成し、各高校を通じて提供するなど、未就職者を出さないよう努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 国旗、国歌に関する質問にお答えいたします。
 国歌・君が代の歌詞の意味につきましては、「日本国憲法の下において天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」とする文部省見解に基づいて指導してきたところであります。今回の法制化に際し、国歌についてこうした解釈を踏まえた形で政府見解が示されたところであり、今後ともこれを基本として指導してまいる所存でございます。
 次に、学習指導要領は、全国どこの学校にあっても同じ水準の教育を保障することをねらいとして、国旗、国歌を初め、教育活動全般にわたって児童生徒の学習する内容やその基準を示したものであります。こうしたことから、教職員にあっては、学習指導要領等の関係法令にのっとって教育を行う責務があり、その職務の執行に当たって、個人の思想・信条を持ち込むことは慎まなければなりません。しかし、このことは個人としての思想、良心の自由を拘束することにはならないと考えております。また、児童生徒に対する指導においては、その内心にまで立ち入って強制するものではないと理解しています。
 最後に、入学式や卒業式等の学校行事を含めた教育課程につきましては、学習指導要領にのっとり、教育委員会の指導、助言のもとに、地域や学校の実態及び生徒の特性等を考慮して学校長が編成するものであります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 商工労働部長に要望をいたしたいと思います。
 今回の住友の経営プラン、これが今言われているとおり進行いたしますと、和歌山県内の中小零細企業に与える影響には非常に大きなものがあると思います。それで、知事初め関係者が住金の方へ申し入れをされたということでありますが、それで事が解決をしたということにならない問題なんですね。もちろん民民の問題ですから、行政としてどうこう強制的にできるという問題ではありませんけれども、事は一つの大企業と中小の零細企業との関係の中で進みます。一方は二百億円の黒字を目指して、そのために和歌山工場関係で二百億円の経費削減をしていくという問題ですけれども、一方はとにかくカットされるばかりなんですよね。そこに大きなギャップがありまして、このままほうっておきますと本当に大変なことになってくると思います。共存共栄というのはそういう関係ではないと思いますので、ぜひとも機会を見つけてできるだけ綿密にその影響を調査しながら、そしてまた先ほどの話と重複いたしますけれども、必要な項目については中小企業やそこで働く労働者の立場に立って住友金属への申し入れをやって、それを効果のあるものとしてやっていただきたいことをお願い申し上げたいと思います。
 それから、緊急雇用対策の基金の問題で、和歌山にもそれに類似する制度を設けて拡大してはどうかということについて、財政難という理由でございました。わからないことはありませんけれども、今の雇用問題の深刻さというのは、本当に今までの歴史に見ない深刻さを持っています。県独自のそういう対応があってもしかるべきではないかと思いますので、ぜひとも雇用を守る立場からの独自の対策を進めていただきたいと思います。
 教育長にも、意見と要望を申し上げます。
 教師は指導要領を遵守すべきだと、したがって教師個人の思想及び信条をそこへ持ち込んではいけない、これは、思想、良心を制約するものではないというお話でございました。指導要領の思想・信条の自由を拘束するような、その存在のところから考えを進めればそういうことになるわけですけれども、私はもう一つ先の問題として、時の権力から教育現場に思想・信条にかかわる問題が持ち込まれたと、そういう問題があるときの対応してどうしたらいいのか。そうすると、教育長の言われるような考え方もありますけれども、そういうことを持ち込むこと自体の方が問題ではないかということを私は申し上げているわけです。
 指導要領の果たすべき役割等、今おっしゃられたような全国水準の基準を示すというようなことについては、私はその意味についてはわかっておりますが、思想・信条に関係をするというようなものが指導要領の中に含まれていて、それが教師の前に憲法を乗り越えて適用されるというところは、これは改めるべき問題だと思います。
 君が代がいかに政治的なものであったかということについては、先ほどその扱われ方の歴史を申し上げましたけれども、とにかく時の政権によって意味が変わってくるわけですね。これは政治利用ということであろうと思いますので、適切なことではない、不当なことだと思います。
 それから、子供の内心の自由の問題について少し申し上げておきたいと思います。
 こういうことを考えていただけませんか。自分の子供が、その思いと異なった歌を先生の命によって一生懸命に歌っている。教育長がその子の親としたらどういう思いを抱くか。私は、自分がそういうことになったらどういう思いを抱くかということから、そこの思想・信条の自由が侵されていることに胸を痛めるものです。あるいは子供の側から言えば、先生ににらまれたら悪いからここはそうしておこうという形で斉唱に参加するということであれば、それは教育者としても指導を一番したくない面従腹背の態度を養うことにもなるだろうし、卑屈さを養うことにも通じてまいります。そういうことさえ生みかねない問題であるということで、教育の中における国旗、国歌の扱い、とりわけ起立斉唱を命ずるというような行為はふさわしいことではないと思いますので、十分お考えをいただくようにお願いをして、要望としておきます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午後零時二分休憩
     ─────────────────────
  午後一時三分再開
○副議長(宇治田栄蔵君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十八番原 日出夫君。
  〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 それでは、議長の許可を得まして早速質問したいと思います。
 私の今議会の質問は、一つ目は、梅の生育不良の原因解明を県行政と関係市町村、生産農家と力を合わせて解明していこうという課題です。二つ目は、それに関係してではありますが、梅研究センターの設置こそ梅立ち枯れ原因究明の早道、西口知事二期目の重点施策として知事の決意を伺いたいということです。三つ目は、南紀熊野体験博百四十四日間が終わってすぐですが、私は丸二年間直接かかわった一人として、近く県として総括する上での参考意見として問題提起したいと思っています。四つ目は、個性を伸ばす高校教育について質問したいと思います。
 早速ですが、「梅の生育不良の原因を県行政、関係市町村、生産農家が力を合わせて解明するために」をテーマに、県当局にご質問いたします。
 その前に、六月議会でお願いした副知事の現地踏査について、足早ではありましたが実現していただきましたことについて、壇上をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
 生産農家は、今、だれかにすがりたい思いです。副知事が見えてくれたことで、県当局はこれを機にさらに原因解明のため積極的に対応してくれると期待しています。
 なお、二つ目の「梅研究センター設置こそ梅立ち枯れ原因究明の早道、西口知事二期目の重点政策として知事の決意を伺いたい」については、私は、一回目の質問に対する当局の見解を聞いた上で再質問の中で提言させていただき、知事の所見をお聞きしたいと思っておりますので、ご了承ください。
 ことし十一年七月末の梅の生育不良の調査結果を見て、現場を歩いてきた以上にこの数字の大きさと広がりに、事態の深刻さに胸の痛い思いをしています。田辺市だけを見てみますと、ことしの新規だけでも一万八千八百七十八本で、昨年の一万二千百五十二本を大きく上回り、被害面積は二百七十一・六三ヘクタールと、全体千二百八十一ヘクタールの二一・二%が被害を受けてきている実態であります。これまでの被害総本数は八万一千四百九十本で、被害額に換算すると約二十五億、これは一本当たりの生産額を三万円とした場合の概算でありますが、このような状況に立ち至っております。
 梅生育不良については、田辺市では昭和六十一年ごろ秋津川の一部の園で発症が報告され、その後平成二年ごろより被害が顕著に拡大し始め、現在でも新たな地域で拡大が続いております。被害の発症については、当初は上芳養、秋津川、上秋津等の標高の高い山間地が中心でありましたが、最近では稲成、長野、三栖地域などの平たん地にまで発症が拡大しています。また、周辺町村とりわけ南部川村、南部町においてはその被害が拡大しており、深刻な状況となっております。
 今年度の生育不良発症の傾向は、春先より新規発症が確認され始め、特に五月の連休明けには一気に拡大しました。また、収穫直前まで健全であっても急激な衰弱に陥った木も多く、例年と比較した場合、特徴としては急性の生育不良が増加したように見受けられます。地区別では特に上芳養地区、三栖地区が増加しており、過去に発症が認識されていなかった園地での発症も相当ふえてきております。また、当初より被害のひどかった秋津川については依然として発症しており、被害率はもう七一%にも及んでいる状況であります。
 和歌山県は梅の生産量、生産額は日本一であり、既に六百億円産業で、ことしは七百億円産業になると言われております。しかし、生産農家の現状の認識は、これ以上に毎年梅の立ち枯れが発症するなら梅産業自体立ち枯れし、一般商品の購買力、雇用、金融、建設、燃料、資材、運送、旅行、飲食、サービス業、公共事業など、すべてが枯れてくるのではないかと心配しております。生産、加工、流通、販売の梅産業が立ち行かなくなるのは目に見えています。梅日本一の和歌山にとって唯一の地場産業であり、基幹産業が冷えるとしたら、住友の合理化計画以上のものであります。まさに、和歌山県の浮沈にかかわります。和歌山県行政の責任は大変重いものがあると考えます。
 そこで、梅の生育不良の原因解明を県行政と関係市町村、生産農家と力を合わせて解明していくために、私は六月議会において、梅の生育不良に対する県の取り組みとその問題点、並びにこれからの解決の方向を提起してまいりました。そこで今回、次の点について当局の見解を求めたいと思います。
 まず一点目は、平成十年十一月の中間報告とフローチャート、平成十一年五月のうめ対策研究会の報告とりわけ県の栽培管理マニュアルについて、県はこれだけに固執せず、生産農家、研究会以外の学者の考え方を含め、広くあらゆる調査に試行錯誤して研究と実証をすべきであることを申し上げたところ、副知事及び農林水産部長は、より総合的な幅広い視野で今後研究に取り組んでまいりたいとのことであった。県行政として具体的に、今までより幅広い課題研究についてどんな方針をお持ちなのでしょうか。
 二つ目は、原因究明をしていく上で、県行政と市町村行政、梅生産農家の協力体制で原因究明を進めること、そのための体制の確立が必要であることを提起しました。県当局や関係者にはまことに失礼ですが、農林水産部、果樹園芸センター、暖地園芸センターでは、梅に関する専門的知識や経験、実践の蓄積が浅いのであります。数十年の梅づくりの生産農家、梅の研究普及に努め、みずから生産農家としての篤農家の方たち、梅の立ち枯れ以降涙ぐましい努力や研究をしながら生産している農家の人たち、またその人たちと一緒に実践研究しているJAの指導員、この人たちが今の時点では梅に関する専門家なのであります。この人たちに頼り、この人たちとともに県行政が研究実践、学んでいく姿勢と体制にならない限り、展望は開けないと私は思います。
 県行政は、私が言いました一つ目の研究課題を含めたこの立場に立つのか、立てるのか、お聞きしたいと思います。
 三つ目は、梅の立ち枯れと山桜、桜の立ち枯れの原因実証について、研究会、学者の見解でなく、県の見解として改めてその原因を述べられたいと思います。
 その一つは、県林業センターの平成十年度県下における山桜の衰弱及び枯死被害の見られる林分は、田辺市で九一%、川辺町で八五%、南部川村では五七%と発表され、その要因は、平成六年、七年の干ばつ、土壌の浅い場所などは水分ストレスの影響、桜は日光を受けて育つ植物で、カシやシイなどの広葉樹で光が遮られて生存競争に敗れたと説明しております。これは、科学的実証の上での県の見解なのかどうかお聞きしたい。
 その二つは、梅の立ち枯れについて、県の主体的な立場での原因は今まで──先ほど言いました平成十年と十一年の研究会の発表、マニュアル等──の見解に変わりはないのでしょうか。
 三つ目は、南部川村うめ21研究センターでは、梅生育不良の研究で、最初は病虫害があると思い、樹体、枝葉、細根、土壌など全部徹底分析したが、直接原因となる病原体や害虫は発見されなかったこと、また県の中間報告に対する疑念も強いことから、うめ21研究センターの研究データも提供していると聞いておりますが、どう活用されているでしょうか。田辺市など、JA紀南を中心とした梅生育障害対策研究会の調査報告などについて県はどのように活用されているのでしょうか。まずお聞きしたいと思います。これについては農林水産部長のご答弁をお願いしたいと思います。
 次に、一昨日の十九日に百四十四日間の長いイベントが終わったわけでありますが、県当局初めこれに携わった関係者の皆さんには大変ご苦労だったと思います。この場をおかりして感謝と敬意をあらわしたいと思います。本当にご苦労さまでした。
 南紀熊野体験博実行委員会の中で平成九年十月に作成された「実施計画書」には、その開催目的として、「「ひと」と「自然」が共生し、現代人の疲れたこころとからだを癒し、充たし、新たな活力を生み出す、二十一世紀にふさわしい新しいリゾートライフを提案する」と同時に、「南紀熊野地域の豊かなリゾート資源の高度な活用を図り、活力に富んだ個性豊かな地域経済社会の実現を目指すとともに二十一世紀へ向けた飛躍のステップとする」としています。また、基本方針としては、「イベントの広域・複合展開」、「住民主導を基本とする」、「統一的構成をとる」という三つの基本的な方針を設け、従来にない広域オープンエリアにおける住民主導によるイベントが最も重要なものとして位置づけております。これらの大きな命題を具体的に展開していく上でも、また展開してきた中でも大変な事業であったことは事実です。初めての命題とこれを実行する人たちの初めての体験、地域の自然、文化、歴史、地域産業を再発見、再構築して市町村地域の活性化を目指すことや、十六市町村がイベントによっては提携し、市町村の区域を超えた広域ネットワークづくりを目指すことに大きな課題があったと思います。そのため、県と市町村、民間との関係がともに今までの枠を外さないことにはこの南紀熊野体験博のコンセプトに基づく成功はないと考えていました。
 私は南紀熊野体験博をテーマに挙げさせていただいたのは、十九日に閉幕して間もなく具体的な総括を求めるために取り上げたものではありません。県当局はこの体験博をあらゆる角度から総括されて今後に生かしてくださるという前提で、私は以下の点について総括会の参考にしていただくための提言として申し上げますので、ご理解いただきたいと思います。
 南紀熊野体験博百四十四日間を終えて、体験博のコンセプトを高く評価しながら、かつて経験しなかった非囲い込み型オープンエリア方式のイベント実施の結果を総括的にどう見ますか。例えば一つは、全体的に見てイベントは成功であったのでしょうか。二つ目は、地域の自然、文化、歴史、地場産業を再発見し、内外に情報発信するリゾート体験イベントはどうだったでしょうか。三つ目は、集客を中心にしたミニリゾート博的内容になったシンボルパークはこれでよかったのでしょうか。四つ目は、テーマイベントについてどう評価しているのでしょうか、ということであります。
 大きい二つ目は、南紀熊野体験博を通じての教訓と課題であります。
 企画段階での問題点を少し提起だけしておきたいと思います。
 熊博って一体何なの、市町村は何をしたらいいの、十六市町村の県民はどうかかわったらいいの──これは大変なことでした。担当する人たちは、あらゆる角度から地域を再発見し構築する中で、体験イベント、地域イベント、地域の物産の再発見と掘り起こしなど、官民が知恵を出し合って協力してきました。そういう意識で取り組んできたが、当初、県の推進局とプロデューサーが目指してきたのは南紀リゾート博的なものであった。一方、西牟婁・東牟婁振興局サイドでは、市町村や民間団体では、方向がより熊野体験博のコンセプトに沿ったものと考えていました。こうなるためにはかなりの時間を要したため、最後まで、南紀リゾート博なのか熊野体験博なのか結論が出ないまま来たことが幾つかの課題になったと思われる。熊博の結果から見ても、多くの来場者が望んでいたのは熊野博であったことは、各種イベントの実績から見ても明らかであります。
 総合プロデューサーが一貫した南紀熊野体験博の理念を追求し切ったかが大きな問題になっています。会期中に直接対象地域で行われているイベントはすべて熊野博のイベントであるとプロデューサーが定義したことによって、博覧会そのものの焦点がメニューの多さでぼかされてしまったと思われる。むしろ、熊野の文化や歴史、自然を生かした博覧会にふさわしいものだけを厳選して熊野博のイベントと位置づけるべきではなかったかと思います。余りにも広域的、同時多発的なイベント開催が来訪者を惑わせたこと、実行委員会職員ですらイベントの多さでもってどこで何が行われているかわからない状況に陥ったことも事実であります。むしろ、市町村ブロックの特異性を生かしたものに集中分担することや、市町村のリレーイベント形式で時期を調整したり各市町村の役割分担を明確にした組み立てをした方が来訪者にも担当者にもわかりやすい熊野博になっていたと考えるわけであります。
 次に、広報戦略に問題点はなかったのかということであります。これは、詳しくは言いません。
 次に、県実行委員会(県推進本部)と市町村実行委員会との関係からの教訓でありますが、テーマイベント、体験イベント、地域イベントを企画実践していく中で、各地域のイベント内容の情報交換、協力体制を取り合うため、並びに体験博を成功させるため、県実行委員会及び総合プロデューサーと関係する地域実行委員会が県と地域間の連携を図りながら、民間の方たちを含めて連絡協議会を組織して実践していく必要があったのではないかというふうに考えます。
 大きい三つ目ですが、地域イベントでは関係市町村のネットワークができているものの、継続について、体験イベントで成功したメニューをどう今後継続させ、全国へ発信させていくかどうか、南紀熊野体験博後をどうするか、県当局は以下の点についてどのようにお考えでしょうか。ここでは、熊野体験博後をどうしていくのかということであります。
 一つは、十六市町村がそれぞれの歴史、文化、自然を生かしたイベントを実施してきたが、その投資効果は百四十四日間の結果でなくスタートとして位置づけ、南紀熊野体験博後も地域を主体にした重要イベントを地域の活性化への役割として位置づけるべきであります。これを県としてどう支援していくのでしょうか。
 二つ目は、県実行委員会主催のテーマイベント、特に十万人の熊野詣は熊野古道を全国にアピールし、大勢の来訪者を迎え、意義のあるイベントでありましたが、南紀熊野体験博後も継続していくのか。また、歴史文化遺産である熊野古道の保存整備も含め、関連市町村との連携をどう図っていくのでしょうか。
 南紀熊野体験博は「いやす」、「みたす」、「よみがえる」をキャッチフレーズとし、自然との共生をテーマに情報発信してきました。このかけがえのない財産である南紀熊野の自然を二十一世紀に継承し、保全していくための具体的施策をどう考えるのでしょうか。生活文化部長の答弁を求めますが、知事におかれても、所見がありましたらお願いしたいと思います。
 次に、個性を伸ばす高校教育についてであります。
 和歌山県は、先駆けて文部省の方針に基づく教育を実践されております。私は、文教委員長神出議員の指導を得て、和歌山高校総合学科を見学してまいりました。私が年がいもなくまず感動したのは教師と生徒が一緒になっていること、生徒自身自分の将来を見詰めて選択科目を選び、自分が選んできた学校、自分が選んだ科目という自覚と教師の指導の姿を見たとき、これからの教育にこのような場が与えられるならばと思うと、中学校の教師も父兄も生徒も何か救われるような感激を受けました。
 紀南の中学校教育の現状と課題の中で、中学生の生活の現状はゆとりのない生活──学校での生活、塾や自宅などでの勉強にかなりの時間をとられ、ゆとりのない忙しい生活を送っています。テレビなどのマスメディアとの接触にかなりの時間をとり、疑似体験や間接体験が多くなる一方で、生活体験、自然体験が不足し、家事の時間も少ない状況であります。社会性の不足や倫理観の問題、社会ルールの問題、自立のおくれ、健康・体力の問題というものを抱えております。しかし、その中学校教育を目指しつつも中学校教育に避けられない高等学校入学者選抜については、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化、推薦入学の改善など、さまざまな改善が進められてはいますが、いまだ狭い意味での学力の評価に重点が置かれており、入学高校、学科の序列での悩みや問題を中学校や父兄、生徒は深刻に受けとめています。
 そこで私は、本来、中高一貫教育──子供たちが心身の成長や変化の著しい多感な時期にある中等教育のあり方の改善策の一つとして、中学校教育と高等学校教育とを入学者選抜を課することなく接続し、六年間の一貫した教育を行うことが望ましいと考えます。しかし、それは現実的に難しい状況の中で、中学校段階から高等学校段階へ進むにつれてますます多様化する生徒の能力、適性、興味、関心に対応し、さまざまな教科・科目の中から生徒の主体的な選択を可能にするという観点からいけば、高等学校に総合学科を設置することはそれらの期待にこたえるものと思います。
 そこで、私は県教育委員会にお尋ねします。
 県教育委員会は、個性を伸ばす高校教育を充実させるため、平成元年から平成十一年まで個性を伸ばすための学科改編に努力され、既に三十八校中延べ二十三校で二十九の学科改編を実践し、全日制三十四校で延べ二十二校が二十八の学科改編を実施されています。この努力を高く評価したいと思いますが、この学科改編によって高校教育の内容にどのような変化や効果があったのでしょうか。また、生徒の動向はどうでしょうか。とりわけ、総合学科を平成六年に一校、平成九年に一校を新設されました。この総合学科の高校教育の果たしている役割、効果はどうでしょうか。
 次に、先ほども述べたように、中学生は、自分の将来や自分の特性に確たる目的を持つにはまだ十分でない発達段階だと思います。紀南に総合学科の設置を願う中学校や父兄の期待にこたえていただけないでしょうか。教育長の所見をお伺いします。
 なお、定時制昼間部の紀南への設置についても要望したいと思います。
 以上で、第一回目の質問を終わらせていただきます。
○副議長(宇治田栄蔵君) ただいまの原日出夫議員の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 原議員のご質問にお答えをいたしたいと思います。
 南紀熊野体験博は我が国でも初めてのオープンエリア方式で開催をし、熊野の魅力を全国に打ち出すことができました。また、地域の資源をさまざまなイベントとしてつくり上げ実施したことは、まさに住民参加の博覧会であったと、高い評価をいただいているところでございます。今後は、こうした成果を生かしていかに博覧会後の活性化を図っていくのかが地域の重要な課題であるととらえております。
 そこで、博覧会の開催を通して地域に芽生えたさまざまな地域おこしについて、市町村の自主的な取り組みを尊重しながら、熊野古道や世界押し花会議といった広域的な取り組みについても、博覧会の開催効果を地域に定着させ、継続させ、地域の活性化に資するといった考え方に基づいて、県としても今後関係市町村と協議しながら検討を続けてまいりたいと考えております。
○副議長(宇治田栄蔵君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 原議員の、梅の生育不良の原因解明に関してのご質問にお答えいたします。
 まず、梅の生育不良に対する幅広い研究課題についてであります。
 総合的な視点から研究を進める必要があると考えてございまして、これまで実施している暴露実証試験や栽培管理試験などに加え、今後は梅の養水分吸収等生理生態や土壌環境面での研究を強化することとしてございます。
 さらに、六月県議会でもご質問のありました樹体の成分分析につきましては、かねてから和歌山県うめ対策研究会の委員など専門家の中で議論してまいってございまして、由来の特定は困難と言われておりますが、土壌と樹体内の成分の比較など、実施可能な課題については取り組む方向で検討をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、梅問題に係る関係者の協調体制についてでございます。
 これまで、県、市町村、農協や生産農家も参画している地域対策協議会などの協力のもと、試験研究や現地実証に取り組んできたところでございます。
 今後とも、原因究明のための試験研究や、今議会でお願いしているうめ総合実証園の設置・運営に当たりましては、生産農家や農協はもとより、関係機関とより一層の連携を図りながら取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、山桜の枯死に関する県の見解でございます。
 県林業センターがまとめた「ヤマザクラ等の衰弱、枯死に関する調査結果」につきましては、これまで山桜が集団で見られる八百八十四の林分について調査を行い、約二七%に当たる二百三十四カ所で衰弱や枯死が見られました。
 平成六年、七年の干ばつや水分ストレス並びに広葉樹の被圧など、その幾つかの要因につきましては、これら被害の発生した林分や被害木について追跡調査や現地調査を行ってまいりました。その中で、土壌の状況や樹木の生理生態的な特質、気象や病害虫などのデータをもとに、国の研究機関である森林総合研究所の協力を得ながら、これまで培ってきた研究や技術の上に立って総合的に判断をしたものでございます。
 今後とも、定点観測による被害の推移や原因究明等の調査を引き続き実施してまいりたいと考えてございます。
 次に、生育不良に対する県の見解についてでございます。
 梅の生育不良対策試験については、大気環境、気象、栽培、土壌及び病理面の視点から取り組んでいるところでございます。さきの中間報告や第五回の県うめ対策研究会での報告につきましては、暖地園芸センターや普及センターのこれまでの試験結果を踏まえ、委員の専門分野からの指導助言や評価を通じてまとめたものであり、現段階における県の見解でございます。
 次に、南部川村うめ21研究センターの研究データの活用についてでございます。
 普及センターや暖地園芸センターも参画し、町村、農協、生産者で組織している南部郷梅対策協議会において検討され、広く活用されてございます。
 例えば、暖地園芸センターや普及センターも加わって、南部川村市井川や熊瀬川地区において現地実証試験が実施されてございまして、樹勢回復効果など得られた成果やデータについては栽培管理マニュアルの作成に反映するとともに、農家指導に役立ててございます。
 次に、JA紀南を中心とした梅生育障害対策研究会の研究資料の活用についてでございます。
 紀南農協と関西電力が設置している梅生育障害対策研究会に県はオブザーバーとして参加をしておりまして、その内容については承知しております。
 今後、調査データが公開された段階において十分活用し、梅生育不良の原因究明と対策に役立ててまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 原議員ご質問の南紀熊野体験博百四十四日を終えての二点のうち、まずオープンエリア方式のイベント実施の結果を総括的にどう見るかというご質問であります。
 この南紀熊野体験博はオープンエリア方式かつ体験型の博覧会であり、地域の人々の創意工夫により生まれたイベントや率先して取り組んでいただいたイベントを初め、従来の囲い込み型の博覧会と比較して多岐にわたるイベントが実施されました。地域の人々に積極的に取り組んでいただいたリゾート体験イベントや地域イベントの実施を通してこの地域の魅力の掘り起こしや再発見がなされ、またその過程で得られたノウハウは今後の地域の活性化や発展に役立っていくことと確信してございます。
 テーマイベントの十万人の熊野詣、あるいは黒潮マリンスポーツフェスティバル、黒潮自然ふれあい王国の実施に際しては、南紀熊野体験博実行委員会と関連する県下の市町村が協力して取り組み、その結果、熊野古道や南紀の海が、心の時代とされるこれからの時代に和歌山県が誇り得るすばらしいリゾート資源であることを内外に広くアピールできたと考えてございます。
 田辺と那智勝浦シンボルパークは、この体験博の中で全体の情報拠点として位置づけるとともに、地域の人々を初め、来場された大勢の方々に博覧会を楽しんでいただく機能を果たしました。
 各イベントを個々に見てまいりますと課題や反省点もございますが、総じて成功であり、南紀熊野地域に象徴される和歌山県が心をいやす、満たす、よみがえらせるこれからの時代のリゾートとして広く認知され、博覧会の所期の目的は達成されたものと考えてございます。
 続きまして二点目の、南紀熊野体験博を通じての教訓と課題でございます。
 この体験博は新しい試みの博覧会であり、当初想定していなかった課題もございました。
 まず、一般の方々にとって博覧会というものは、どうしてもパビリオンがある従来の囲い込み型をイメージするものであり、新しいタイプである体験博のコンセプトが十分に伝わらなかった面がございます。それがイベント実施者や一般住民、来訪者にとって、わかりにくさ、あるいは戸惑いといった形で出たのではないかと考えております。
 また、広報展開の難しさもございまして、マス媒体等からの注目やその活用により南紀熊野の魅力や体験博のPRは広く全国に浸透したものと考えますが、この体験博が広域オープンエリア型であり、南紀熊野の随所でさまざまなイベントが数多く実施されたため、それぞれのイベントを広く、きめ細かく広報宣伝することは大変困難でありました。
 さらに、この博覧会がジャパンエキスポとして各地域の統一性が求められる反面、地域主導という概念からは各地域の個性を重視しなければならないという二面性を持った構成であったため、当初、県、市町村、地域住民等の役割分担やその調整が非常に難しく、地元の方々の思いや考えを十分に反映できなかった面もありました。その後、お互いに協議を重ねて努力していくことにより地域イベントやリゾート体験イベントといった形で実を結び、南紀熊野体験博の成功につながったわけでございます。
 このように県、市町村、さらに地域住民が連携して一つの大きなイベントをつくり上げて成果を上げた今回の経験は、今後の新たな地域づくりに生かされていかなければならないと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 個性を伸ばす高校教育についてお答えいたします。
 まず、専門学科の新設・改編につきましては、高校教育改革の大きな柱と位置づけ、時代と社会の変化や生徒の多様な学習ニーズへの対応、専門性の向上等の観点に立って実施してきております。
 こうした専門学科では入学希望者が多く、そこで学ぶ生徒は高い目的意識や学習意欲を持ち、それぞれが身につけた専門性を生かした進路を見つけております。また、学習活動だけでなく、クラブ活動や学級活動など、さまざまな分野においてリーダー的存在として活躍する生徒が多く、各学校の活性化という点でも大きな効果を上げております。
 次に、議員ご指摘の総合学科につきましては、生徒一人一人が普通科目と専門科目にわたる幅広い選択科目の中からそれぞれの適性や興味、関心に応じた科目を選択し、自分の進路を視野に入れながら生き生きと学習しております。中途退学者も、以前に比べ、これらの学校では著しく減少してきており、こうしたことは総合学科設置の大きなねらいである、生徒のさまざまな個性に応じた教育の結果であると考えております。
 総合学科設置に係る国のプランでは、当面、通学範囲に少なくとも一校整備されることを目標にするとしております。県教育委員会といたしましては、和歌山高校、有田中央高校の成果、地域の状況や学校の主体的な取り組みを考慮しながら、国の方向をも踏まえ、全県的な視野に立って総合学科の設置を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 一点目の梅の件については、後で再質問したいと思います。
 南紀熊野体験博について、ご答弁ありがとうございました。私は個人的には大成功だったと思います。百四十四日間という期間だけの評価にする人たちもたくさんおられますが、内外に情報発信し、体験していただいたことによって、これから毎年効果をじわじわとあらわしていくことも一つの大きな投資的役割ではないかと思っておりますので、私なりの考えを述べておきたいと思います。
 次に、総合学科並びに定時制に昼間部をつくってほしいということです。
 私、その質問要項を出した後、たまたま西衆議院議員の「高校入試はもういらない!」という本を見せていただいて、まさに中高一貫教育──私たち地域で考えている、中学校の先生方や子供を持つ親の願いがここに集約されているというふうに感じました。また、九月二十日月曜日の朝日新聞、それも全国版の社会面で、和歌山県の県立青陵高校における定時制昼間部での非常にすばらしい活動を紹介されておりました。これについても、地元紀南でも定時制に昼間部を欲しいという願いは、実践を通じて証明されていると思います。教育委員会ではかなり苦労はされると思いますが、知事部局においても、人を育てるという意味ではその投資を怠らないで、積極的に教育の部門に投資していただきたいと考えております。
 一点目の、梅についての再質問です。
 前回と比べてかなり前進的な、幅広い視野に立って今後研究課題に取り組んでいただくということについては評価したいと思います。
 そこで、私なりの考えを述べながら、今後原因究明していく上での参考にしていただければと思っております。
 梅の立ち枯れと原因で、問題点といいますか今後考えていただきたいのは、一つは、平成十年、十一年にかけての農林水産部長の、今答弁がありました原因が主たる原因であるのかどうかについては現段階での判断だと理解しておりますので、原因がかなり究明されてくる段階では、それが主たる要因にならないかもしれない。そういう意味での幅広い視野に立ってご検討していただきたいということがあります。
 田辺市、南部町、南部川村、印南町、上富田町への立ち枯れの広がりは、被害場所そのものが一定の方向を向いているからとか、標高が高いとか低いとか、風が当たるとか当たらないとか、日が照るとか照らないとか、水があるとかないとか、土の質がよいとか悪いとか、いろんな条件のところで、そういうことに限定されないで、しかも急激に発症している、一気に何十本も枯れているという、今までにないことが起こっているのが事実であります。
 せんだっても木下議員さんが、紀北でももう枯れてきているように発言されておりました。だから、今後、全地域的にこの発症が起こってくるのではないかという心配もしております。しかも、県の現段階での見解でいくならば、うめ21研究センターの実証園で数十本だと。私自身現地へ行きまして、三十本を超える梅が立ち枯れをしている事実を見てきました。実際にそこでは、日高の普及員やうめ21研究センターの職員の皆さんが水をやり、もうひどいぐらい大きな強い剪定をし、そして肥料は、つかむとすばらしい肥料をやって土壌をつくっております。そこが少なくとも三十本以上枯れてきているという事実を見るならば、余りにも今までの見解との違い──自分たちが、水も土も、強い剪定もしながら実証してもこの結果が出ているということですから、やはり現場をきちっと認識した上で今後判断していかないと、原因究明の本当の力というか基礎につながっていかないのではないか。
 私が六月議会で質問してから三カ月の間でも、各地で起こっている現象でことごとく県の考えが崩されているにもかかわらず、もしこのままその範囲内で押し通すとしたら問題の解決の方向に進まないと考えるわけであります。
 私たちは今、梅枯れの原因解明のために取り組んでいますが、県当局と梅生産農家との見解が相違する中での解明のための力の結集ができ切れていない状況を見ますと、歴史的にさかのぼって、松枯れの原因解明の運動の経緯とその成果に県当局と私たちは学ぶ必要があるのではないでしょうか。歴史の過ちを繰り返さないためにも、松枯れの原因解明の歴史を教訓とするなら、今の時点ではっと──私自身も思い当たりましたが、今のままではいけないことに気がつきます。
 私は今から問題提起しますが、松枯れ原因は何かの論争をしかけるのではありませんから、誤解のないようにしてください。
 一九七三年ごろから松枯れが進む中、松枯れのひどい兵庫県高砂市民から全国的に解明の運動が広がり、多くの科学者が参加して二十年間続く中で原因が科学的に実証されてきました。
 一九七三年(昭和四十八年)の国会審議の中における当時の三木武夫国務大臣の答弁、一九七八年(昭和五十三年)の当時環境庁長官の石原大臣の答弁、それから一九九四年の日本環境学会、一九九六年の日本生態学会シンポジウムを初め、内外の学会、ヨーロッパ、アメリカにおける見解は、松枯れの主要因は大気汚染による松の木の衰弱で、その衰弱した木にマツノマダラカミキリ、マツノザイセンチュウが寄生して枯死させるとしています。とどめを刺したのは寄生虫ですが、ピストルの引き金を引いたのは酸性雨を中心とする大気汚染が主たる要因であるとする考えが、科学的または歴史的に証明されています。国会でも、二人の大臣がこれと相違のないことをきちっと言っているわけであります。にもかかわらず国はまだ素直に認めておらず、地方自治体へは今までの虫因説、松くい虫説をおろしているのです。社会的に究明されてもなおかつ固執しているこの官の態度、姿勢にも、私たちは学んでいかなければならない。
 今、梅の立ち枯れの解明の中で出されている幾つかの問題点が、いみじくもこの運動の過程でも同じことが言われております。温度が高いから、雨が降らないから松枯れがふえているんだと。そして、土や木の手入れをしていない、いわゆる管理不足だと。このことも、一九七三年ごろからずっと言われてきた政府のお抱え学者の言い分でありました。しかし、全国の学者、大臣までが、それが原因ではないと言うほど科学的に証明されてきたわけであります。これは、私たちに何を教えているのでしょうか。梅の原因解明で言われていることと同じことが言われております。今私たちはこのことに学ぶべきではないでしょうか。
 私たちは、過去の幾つかの問題点について、例を挙げながら学んでいかなければならない。行政当局が、その委託した学者の考えが正しいんだということに非常に固執する余り、環境や医療で過去幾つかの誤りを繰り返しております。
 例えば、一九五三年から五九年にかけて水俣病が発生しましたが、工場排水の海への垂れ流しで、魚介類を食べたことによる影響から、そのメチル水銀が原因と判明しても県はなかなかそれに同意しない。しかし、長い年月にわたる裁判の闘いの中で原因がはっきりしてきた。結果がはっきりしてきた。
 一九八三年の二月、薬害エイズで問題になった非加熱製剤を厚生省は認可した。この非加熱製剤の投与は、薬害エイズをさらに拡大させた。翌月の一九八三年三月には既にアメリカで一部回収するなど、非加熱製剤の投与の危険性が指摘されていた。にもかかわらず非加熱製剤を認可した厚生省は、その危険性を知りながら十年も対応を改めなかったというのは大きな教訓であります。行政当局と当局側の医師のとった行動がどれほど人の生命にかかわったことかと、私は感じるわけであります。
 今、ダイオキシンや環境ホルモン、地球環境、化石燃料の大量使用による大気汚染と地球温暖化、それによる人や動植物の生態系への影響、また環境庁が示す環境ホルモンに疑わしい化学物質は六十七種類と言われ、さらに一千種類以上の化学物質が既に疑われてきております。こういった歴史的教訓から、梅の立ち枯れの原因解明には、私たち行政当局、いわゆる官と生産農家である民とが対立の構図では解決しない。しかも、狭い視野では解決しない。原因解明へ向けて官と民がお互いに力を結集することが解明への大きなパワーにつながると思います。
 過去の例を挙げたのは、そういった運動の過程で企業や官が余りにも事実を隠したことによってこういう結果を招いたからです。梅については、原発に賛成か反対か、火力発電所に賛成か反対か、埋め立てに賛成か反対かという論争ではありません。お互いに力を合わせて梅の原因究明をすること。この力を合わせる目的は一緒なんです。ひとつも対立の構図にないわけであります。狭い視野であってはならないんです。そういう意味でも解明の努力をお願いしたいと思います。
 最後になりますが、梅研究センターの設置こそ梅立ち枯れ原因究明の早道、西口知事二期目の重点政策として知事の決意を伺いたいわけであります。
 南部川村では、村長は広報「みなべがわ」八月号で梅の生育不良への取り組みの見解が掲載されています。あらゆる研究に努力をしているが決め手がない、村独自で別の道を探りたい、費用はかかるが他の経費を節減してでもこの調査に振り向けたいと、村の存亡をかけています。田辺市でも、各組織で研究・実証しているが解明への道がつかめない中で、市長がリーダーシップを発揮して、市が主体性を発揮して解明に努めたいとも述べております。
 和歌山県の基幹産業を守るために、経済の中心を失うことにならないように、県が全力を挙げることの重要性は知事が一番理解してくださっているというふうに私は考えます。市町村が独自で頑張る努力を評価しながらも、市、町、村個々の研究を統括する意味からも、これからの梅産業を発展させる意味からも、ぜひ梅の総合研究センターを建設してください。
 今、原因究明をしていますが、最も基本的な、梅の木に対する基礎データがないのです。ミカン、カキ、桃、野菜、水稲については研究を尽くされ、新しい品種が次々と出ています。梅については、最も新しい南高梅が出てからでももう既に三十五年たっています。
 梅の生理生態のデータ──梅の木は根から何を吸収して、台木、枝、葉は大気から主に何を吸収してどう育っているのかということについての基礎データが全くないわけであります。自然環境との関係での梅の生理生態、変化といった基礎データを研究しないことには、梅の生育不良対策は困難であります。今までのような改植、土壌改良、客土事業では根本的な解決にはならないし、またその手だてで回復、解明ができておりません。ますます広がっている事実から、どうしてもこの研究が必要です。しかも、データ収拾だけでなく、品種改良や台木の試験、さらに栽培整理、加工まで研究できる施設が梅全国一の和歌山県に建設されるのは当然ではありませんか。厳しい財政事情からでも、箱物は金が要るという考え方ではなく、これが生産性を生み、雇用を生み、地域経済を支え、梅立県和歌山県としての評価が生まれるのです。また、国から派遣されている研究員の方も現場を含めた総合的な研究に取り組めると思いますが、いかがでしょうか。
 私たち梅生産農家は今、梅に最も理解のある西口知事にすがる以外ありません。私たちは、本当に西口知事の二期目を期待しています。西口知事しか梅のことを理解できない。この知事を我々は支えながら梅についての理解を深め、どうか私たち梅生産農家、紀南の梅産業、県下の梅産業を発展させるためにこの梅研究センターの設立をぜひ急いでいただきたい。このことに対する知事の決意をお伺いしたいと思います。
 終わります。
○副議長(宇治田栄蔵君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 原議員のお説を拝聴いたしました。大変貴重なご意見を賜りまして、本当にありがとうございます。平常のときなら私の考え方も十分申し上げたいわけでありますけれども、ちょっと体調の関係で一応原稿どおりに言わせていただきたいと思います。
 梅産業は、紀南地方はもとより本県の地域経済を担う重要なものと認識をしておりまして、梅の生育不良の問題については、私も本当に心を痛めてございます。
 こうしたことから、ご承知であろうと思いますけれども、暖地園芸センターに梅対策チームをつくったり、あるいは研究体制の充実強化などを図ってきたところでございます。
 特に、お話ございましたように、本年四月からは国の専門家の派遣を受ける中で、梅の生理生態面を含めて総合的な研究に取り組んできたわけでございます。
 今、切実な思いを述べられた議員ご提言の梅の研究センターの設置につきましては、私も同地方の出身ではございますが、今後、試験研究組織のあり方を研究する中で検討をしてまいりたいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、梅生産農家の不安な心情を察するとき、原因の早期究明と対策の確立が重要でございますので、今後とも議員各位を初め多くの方々のご協力を得ながら、関係者が一丸となって取り組んでまいりたいことを申し述べさせていただいて、答弁にいたします。
○副議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「農林水産部長」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宇治田栄蔵君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 梅の立ち枯れ問題の原因解明についての、力の結集に関するご質問にお答えいたします。
 この問題に対する今後の取り組みでございますが、現在、原因の究明に至ってはおりませんが、さまざまな要因が考えられますことから、幅広い視点に立ち、総合的な角度から原因の究明と対策の確立に当たることが重要と考えてございます。
 今後とも、日本一の梅産地を守るため、生産者や産地からの情報、ご意見を十分お聞きしながら県議会や国の支援をいただき、試験研究や現地指導の充実強化を図ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 全体を通じてですが、いろいろ答弁をいただきましてありがとうございます。知事には、一番わかっていただいているということの中で、あえて決意を述べてもらいましたが、私たち生産農家を含め、皆さん一生懸命ともに頑張っていきますので、今後ともご指導をお願いしたいと思います。
 梅を通じての県当局と生産農家との関係、南紀熊野体験博を通じての県と市町村、民間との関係で、最後に一つだけ。
 知事の出馬あいさつの中でも、県知事自身、県と市町村が一体になって今後県政のために頑張っていかなければならんという決意を述べられておりましたが、私は、今後県がこういう行政課題に取り組む上で、県当局の職員が市町村や民間の上に立つのではなくて、全体の事業を成功させるためのリーダーでもありながらコーディネーターという役割、いわゆるそれをひっつけて力を発揮させていくコーディネーターの役割をぜひ今後とも続けていくならば、かなり能率が上がって行政課題の効率よい実践に取り組んでいけるのではないかということをいろいろ経験を通じて感じましたので、今後ご指導のほどをお願いしたいと思います。
 終わります。
○副議長(宇治田栄蔵君) 以上で、原日出夫君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十三番木下秀男君。
  〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 一般質問も終盤に入りますと重複すること多々ございますけれども、人それぞれ見方が違いますので、重複を承知の上で私は質問をしてまいりたいと思います。
 まず松くい虫の防除対策について伺うわけですが、今もその解説がございました。
 私が住んでおるのは天下に誇る美浜町煙樹ケ浜のあの松林の隣でございまして、毎朝夕浜を通りますので、目をつぶってでもわかるほどであります。その松枯れが最近特にひどくなってまいりましたので、煙樹ケ浜の松くい虫防除対策についてお伺いいたします。
 もみじの秋に先駆けて美浜町にある煙樹ケ浜の松林は、八月の終わりから九月初めにかけて松が色づき始め、今流行しておる茶髪のような色になりまして、松があちこちで枯れ始めております。これは例年のことでございますけれども、ことしも例に漏れず、松林から三尾に行く本ノ脇、もちろん三尾の海岸、日高町の阿尾海岸から産湯、比井と、この海岸も小径木を含めてすべて枯れている現状でございます。
 この松くい虫防除については、地元の美浜町、町議会、そして地域住民を挙げて取り組み、県にもその対策を強く申し入れておるところでありますが、県議会に対しましては、昨年の九月に住民から請願書が提出されております。県当局も種々対策方法をつくり、ことし十一年の六月には国の専門技官や学者一行六名の現地調査団を派遣いただいて防除戦略の策定に取り組んでおりますけれども、被害はますます広がるばかりでございます。特に、空中散布による防除が中止されてからひどくなる一方であります。この状態が続くならば十年後の平成二十年には煙樹ケ浜の松が全滅するであろうというような勢いでございます。
 そこで、次の二点を提言し、その実施を求めるものであります。
 まず第一点は、薬剤散布の徹底であります。方法は、人家のある県道側は地上散布のスパウダー散布、高いところへクレーンでつり上げて消毒するクレーン散布、海岸べりにおいてはリモコンによるヘリコプターでの空中散布であります。これを徹底することによって虫がなくなるであろうと予測されてございますが、林野庁は空中散布をしないようにという指導をしております。被害を受ける現地にあっては何が一番効果があるか。これをするべきであろうと思いますので、提言するものであります。
 第二点は、保安林の植栽事業を取り入れて補植を徹底することであります。県の林業試験場で新品種として松くい虫に強い改良品種が育っていると聞いてございますが、この苗を伐倒木の跡地や空き地に密植することであります。私は素人でございますので詳しくはわかりませんけれども、なぜ密植を提言するかと申しますと、松林の近くにある松原小学校、松原幼稚園、大和紡績付近は民家がありますので消毒はいたしておりませんけれども、そこに補植した木は大変樹勢が強く、成長も早く、効果が上がっておるからであります。もしもこの松林が枯れてしまったとすれば、民家はもちろん、日高町、美浜町、川辺町、御坊市の農家が受ける被害は甚大であります。国に相談をするとか補助がつかないとか言っておるときではありません。かくすればかくなるという実例を被害地である和歌山県が中心になってつくり上げて国に補助制度を認めさせるぐらいの気持ちで取り組み、撲滅を図らなければならないと思います。二十年から四十年の松も、松くい虫に食いつかれたなれば二年で枯れてしまいます。農林水産部長の積極的な取り組みを期待して答弁を求めるものであります。
 続いて、梅の生育不良対策であります。これは私の選挙の公約でありますので解明するまで言い続けなければなりませんし、先ほどの原議員の質問にもありますが、和歌山県の農業の主産物でありますから徹底して解明しなければなりません。私は、今回のこの問題について少し視点を変えて質問をいたします。
 二十一世紀の梅産業を考える上でどのような対策を講じれば維持発展させていくことができるのか。六月議会終了後、南部川筋、切目川筋、日高川筋の各梅畑を見てまいりました。四月に和歌山県へ赴任された平岡技師にも同道いただきまして、現地を見ていただくことと状況を知っていただくために一週間ほど各梅畑を回りました。農家の皆さんと胸襟を開いて語らう中で、農家の皆さんはこの問題に対していろいろな見解をお持ちであるということを再認識したのであります。語らいの中から出てきた多くの意見をまとめて質問いたします。
 まず第一点は、県の指導で水が不足と言われておるが、水をやる手だてがないことであります。それで、小規模な水源確保対策についてであります。
 農業にとって水が大切であることは農家の皆さん方も十分承知しておりますが、現地の声を聞くと、南紀用水はありがたい、一日でも早く利用できるようにしてほしいとの強い要望がありましたので、南紀用水の改良区の事務所に参りまして、理事長にできるだけ早く使用できるようにということで、ことしの夏は使用できた地域も随分とふえておるはずでございます。しかしながら、山の上の園地まで水を運ぶことは至難のわざであります。例えば、河川の上流部の一部をせきとめて調整池をつくり水源とするなど、何とか工夫できないものでございましょうか。どのような方法でもよいので、小規模な水源対策を土木部河川課と協議しながら考えてほしいのでありますが、その見解をお尋ねするものであります。
 二点目は、土壌、土質についてであります。
 現地を見てみますと、山あり谷あり、そして傾斜地あり水田ありと、非常に複雑であります。梅の植えられている園地を見ても、保水力のある水田土壌から開畑パイロットのような未熟な土壌まで、これまた非常に多様であります。このような複雑な立地条件のもとでは生育不良の発生要因も微妙に異なるのではないかと考えたわけであります。
 そこで、農家の皆さんに聞いてみました。自分の園地の土壌の状態や土質についてどのように調べているのか、調べてあればどのような処方をしているのかと尋ねました。しかし、ほとんどの農家の皆さんの答えは、知らないということであります。県当局も土壌分析に努力されていると聞いてはおりますが、いま一度原点に立ち返って全梅畑を調査すべきと思います。県の意向を伺うものであります。
 梅はミカンやリンゴに比べて学問的にはマイナーな品目でありまして、生理生態面でのデータも少なく、未知な部分が多いのが実情でありますが、中でも苗木そのものの問題が指摘されております。現地で植栽される苗木には、苗木業者が育成したものと農家がみずから育成したものがあり、その台木となりますと、ミカンのからたち台のように固定されたものではなく、千差万別の状態になっております。南高梅一つをとってみても台木はまちまちであり、樹勢の強いものから弱いもの、着果のよいものから不安定なものまで種々ございます。
 梅の生育不良を考えた場合、急がば回れではありませんが、育種面にいま一度目を向けて、国にお願いすることは国にお願いし、県としても台木の系統選抜を初め育種面に腰を落ちつけて取り組む時期に来ていると思うのでありますが、いかがなものでございましょうか。農林水産部長にお伺いいたします。
 次に、雇用対策についてであります。これについても二人、三人と質問されましたが、私も、この春卒業する高校生の失業難という記事をたびたび新聞紙上で見ておりましたので、このことに質問を集中しております。
 バブル崩壊後の労働者の雇用形態が、終身雇用から契約、派遣社員、パートというような安定から不安定へと変化し、雇用の質の低下が懸念されるような社会状態となり、若者が将来に夢を持てず、あえてリスクに挑戦することもなくフリーターや失業に甘んじる社会は沈滞していくと思うものであります。また、過日東京池袋で発生した事件のように、相次いで起こる二十代の凶悪犯罪の発生に高失業時代のもたらす社会に不安を感じるのは、私一人ではないと思います。現在の雇用問題で最も深刻なのは中高年の失業でありますが、高齢化社会の進展の中で若年雇用の問題が見過ごされ、余り取り上げられていないようにも思うのであります。
 総務庁が発表した全国の完全失業率は四・九%と六月に続いて二カ月連続で過去最悪を記録し、七月の有効求人倍率については五、六月と同じ〇・四六倍と、過去最低の状況が続いております。中でも、近畿圏の四月から六月の完全失業率が六・一%、七月の有効求人倍率が〇・三八倍と、いずれも全国のブロック別では最悪となるなど、非常に厳しい状況であります。
 また、新規学卒とりわけ新規高等学校卒業予定者の七月時点における全国の求人倍率が〇・六二倍と、過去最悪の状態にあるとの報道もなされてございます。本県における七月の有効求人倍率は〇・四六倍と全国平均と同水準で、近畿府県では最も高い求人倍率でありますが、厳しい状況に変わりはなく、雇用の場の確保を図ることが県の重要な課題であると考えるものであります。
 このような中、今月一日、唐突に住友金属工業株式会社が経営改革プランを発表いたしました。同プランでは、和歌山製鉄所の現在三千二百人いる従業員を二〇〇四年を目途に約二千八百名に削減することが盛り込まれています。また、関連会社にもコスト削減を求めており、三〇%のコスト削減をしなければ取引停止になるなどの話が下請業者に出回り、関連会社の従業員の間にさらなるリストラに対する不安が広まっていると聞いております。
 このような厳しい状況の中で住友金属工業が合理化案を実施していくとなれば、より雇用情勢が悪化すると考えられますが、県としてどう対応する所存か、伺うものであります。
 若者の就職は、かつては金の卵ともてはやされ、先生や級友に励まされて就職列車で旅立ったのも遠い昔の語りぐさとなりました。来春卒業する高校生、中学生の就職試験が今月の九月十六日から始まっております。九月十日に発表された労働省の調査によると、求職者数二十六万六千人に対し求人者数十六万六千人であり、求人倍率が〇・六二倍と、十人に四人が職がないという非常に厳しい状況であります。これは、調査開始以来最低の水準だそうでございます。
 このように若年層の就職難は深刻な問題でありますが、これらの現状について日本女子大学の大沢真知子教授が次のように分析をしております。
 一番目には、就業形態の多様化であります。企業が就職経験のない労働者の採用を抑制し、コスト削減の目的で派遣、パートジョブ等非正規な仕事を急激にふやしているということであります。二番目には、経営環境の変化を言っております。日本の就業形態は、長期的視野で終身雇用制度と年功的な賃金体系でありましたが、最近は収益重視の短期的な視野へと経営戦略の変更を余儀なくされていると指摘しております。三番目は、若者の職業観の変化を挙げてございます。仕事の内容や職種にかかわり、自分に合わない仕事や職場に不満があれば簡単にやめてしまって転職を肯定する若者が四五・七%あるとしてございます。この背景には、経済の情報化が進展する中で採用対象者が高学歴化していること、訓練コストを節約するため経験者はスキル──技能のことであります──を持っている労働者を中途採用するようになったこと、学校教育年数の短い熟練度の低い若年労働者の仕事が長期勤務のパートに代替されたことを挙げ、この傾向は九〇年代に急上昇していると指摘しております。実例を挙げますと、文部省が発表した平成九年三月の高校卒業者の学科別就職状況は、工業系が九六%、水産が九四%、商業が九二%、普通は最低であって八六%となっております。
 以上申し上げました点について、雇用全般については商工労働部長、若年層については教育長に、特に高校生の求人状況について、また高校の技術学科の充実についての所信を伺うものであります。
 最後に、住友金属工業株式会社の経営改革プランについて。
 この件につきましては、我が党の吉井議員を初め、先ほどの鶴田議員も質問をされましたが、ちょうど私も今議会の質問として若年層を含めた雇用問題を考えていたところこの計画を知り、取り上げたものであります。質問項目も、あえて吉井議員と同じようにしました。
 私が友人からの電話でこのことを知ったのは、八月十九日の早朝であります。話を聞いてまず感じましたのは、これで和歌山の工業形態が変わる、そう思ったのであります。戦後五十年余り「北高南低」と言われてきたことが崩れてくるのではなかろうかということであります。
 下津港からツバメのマークの丸善が撤退して久しく、また和歌山港から井げたのマークの住金の本拠が鹿島港に移転し、和歌山県の企業が年々縮小され、細るばかりであります。そこへもって八月十八日に住金和歌山工場関係協力会社に提示されました内容は、今後住友金属収益改善のため和歌山の協力会社にも市場原理を導入し、各社競争することで価格の引き下げを図るとして、次の二点を申しつけております。一点は、各社ごとに希望値として三〇%の低減を図る、二番目として、本提示に乖離していると判断した場合、これまでの実績とか枠を超えて別途他社──これは地元以外ということであります──に対し再見積もりをとり、新規会社との契約も視野に入れるとしております。端的に申せば、言うことを聞き入れないものは来るな、やめろと、こういう通告であります。
 今月の十日、小島社長が知事に面会を求め、正式に住金側のリストラ計画を説明したようであります。この後の合同記者会見の席で、高村幸一総務部長が──多分和歌山工場の総務部長であろうと思います──地元関連企業に三〇%のコスト削減を期待値として提示した、人員削減については採用抑制と出向などで対応し、三千二百人から四百人減を目指すと下請関連企業に提示したことを記者会見で公表してございます。私の心配しておりました雇用問題にさらに輪をかける出来事でありました。
 今回の住金のとった一連の行動は、知事を初め県を無視した大企業の横暴以外何物でもありません。経営者としての先見の明もなく、経営能力のなさを棚に上げて下請泣かせ、切り捨て御免のこの行為は大いに恥じるべきであります。
 今回の小島社長の訪問は、休養をとっていた知事が全快して公務に復帰したお祝いと二回目の知事選に立候補表明したことの激励に来るのだということを仄聞しておりました。ところが会ってびっくり、先ほど申し上げたとおりであります。わかやま元気宣言をし、来るべき知事選に第一歩を踏み出した西口知事に冷や水を浴びせに来たようなものであります。
 私は、決してリストラを否定するものではありません。時代の先取りをする見通しも改革も、大いに結構であります。しかし、今度の和歌山県や知事に対してとった行動は、絶対に許されるべきことではありません。
 住金創業の歴史を振り返ってみれば、戦前、戦中のことは別として、戦後五十有余年、県は共存共栄を基本として住金に対し最大の協力をしてまいりました。事業所拡張に際しての埋め立て、公害防止計画、西防の埋め立て、沖出し移転の見直し、西防埋立地の用途変更等々無理難題を持ち込み、特に西口知事には公害防止の沖出し中止、西防埋立地の用途変更と、一度ならず二度も苦渋の選択をさせたのも住金であります。倫理観の全く持ち合わせていない経営陣であります。この計画を知ったときの知事の心中は、筆舌に尽くしがたいむなしさを感じたと推察するものであります。
 ここで、同じように企業進出してリストラによって和歌山から撤退した大企業がとった実例を申し上げます。
 由良町に進出した三井造船であります。世界的な不況と海運業界の変革により再編計画を作成して由良工場は撤退を余儀なくされ、今年三月末をもって三井造船の看板をおろし、独立した会社を設立して、以前と変わりなく大型の船が出入りをし、同じように操業をいたしております。このリストラ案発表に当たって、立地町である由良町へ由良工場担当の常務取締役を代表に関係役職員が訪れ、町の三役、担当課長、議会の正副議長に、今日までの撤退計画を練ったその経過と再編計画、また残された工場の処理方針、下請企業や地元雇用した社員の処遇を細やかに説明し、立地町の納得の上で記者発表して惜しまれながら撤退した三井造船とこのたびの住金のとった一連の行為を比較して、かくも違うものかと感じ入った次第であります。
 そこで、次の三点についてお伺いいたします。
 第一点は、県当局がこの事実を知ったのはいつでございますか。できるだけ詳しくお答え願います。
 第二点は、この改革プランが実施された場合、県の受けるダメージはどれくらいか。また、下請、中小、零細企業の受けるダメージはどれくらいか。
 第三点は、県はこれを受けて特定企業対策連絡協議会を編成し、本件に対応すると聞き及んでおります。高瀬副知事を座長に各部局長が入っているそうでありますが、これからの取り組みと決意のほどを副知事にお伺いするものであります。
 これで、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(宇治田栄蔵君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 副知事高瀬芳彦君。
  〔高瀬芳彦君、登壇〕
○副知事(高瀬芳彦君) 木下秀男議員ご質問の、住友金属工業の経営改革プランについての四項目について一括してお答えをいたします。
 去る九月一日に、住友金属工業より経営改革プランが発表されました。この件について八月三十一日に連絡を受け、直ちに和歌山製鉄所の幹部を呼び、事情を聞いたところであります。ニュー和歌山体制は、和歌山製鉄所の存亡をかけてここ数年にわたって多額を投資をしてきており、二十一世紀に確固たる地位を築くための方策と認識しておりますが、しかしこのプランには、住友金属工業の期待値として関係協力会社に対する三〇%のコスト削減が提案されていることから、関係企業や下請企業約百五十社に与える影響を懸念し、知事から住友金属工業の小島社長に対し、下請関連企業の経営安定への配慮について厳しく要請をしたところであります。
 また、私が座長を務めている特定企業対策連絡協議会を九月十三日に開催いたしまして、雇用面への配慮やコスト削減に伴う下請関連企業の個々の実情に対する配慮などについて再度和歌山製鉄所に対し要望いたしました。
 今後、協議会として関連企業等の実情を把握するなど、多方面からの情報収集を行い、下請企業等への影響を最小限にとどめるよう努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 木下秀男議員のご質問にお答えをいたします。
 まず、煙樹ケ浜松林の松くい虫防除についてでございます。
 煙樹ケ浜の松林は、背後の市街地や田畑を潮風などから守る保安林として古くから大切に育てられてきた重要な松林でございます。
 松くい虫被害対策につきましては、これまで空中散布、伐倒駆除、樹種転換等を実施してまいりましたが、空中散布は、国の指導もあり、平成九年度からは地上散布に切りかえ、鋭意取り組んでいるところでございます。
 今後ともより健全な松林として育てるため、今年度から、被害の要因に基づく効果的な防除の方法について、国営により調査が行われているところでございます。これらの調査結果を踏まえながら、西山地域での樹種転換のほか、地上散布については、松の先端にまで十分薬剤散布ができるようクレーン車やスパウダー等消毒機材の使用法の検討など、より効果的な事業実施に努めてまいります。
 続いて松林への補植についてでありますが、集団的な枯損で保安林機能の低下が懸念される場所については、これまでも保安林改良事業や保育事業で植栽や下刈りを実施してまいりました。また、部分的な枯損の場合は、管理者である町やボランティアによる植栽等が実施され、近年その取り組みも活発化してまいりました。
 今後、保安林機能維持増進のため、枯損箇所に抵抗性松苗等の補植を行い、適正な管理に努めるとともに、植栽については専門知識を有する森林組合作業員等による技術指導を行ってまいりたいと考えてございます。
 また、町では松林を守り育てるための啓発活動や林内清掃などボランティア活動が行える事業に取り組んでいるところでもあり、今後、県といたしましても、行政と地域住民が一体となった松林の保護育成に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、梅生育不良の対策についての三点のご質問にお答えをいたします。
 まず一つ目の、かん水施設の設置についてでございますが、渓流に小規模な堰を設置し、下流の維持流量や既得水理に影響を及ぼさない範囲で取水や貯留することが可能な場合もあります。しかしながら、貯水量や事業費等は現地の地形条件に大きく左右されますので、事業対応が可能かどうかを含め、具体的な内容をお聞きして検討してまいりたいと考えております。
 次に土壌検査についてでありますが、梅にかかわらず、農作物の栽培に当たり土づくりの重要性は基本と考えております。県下の梅園地を見てみますと、さまざまな園地条件で栽培されておりまして、園地の実態に応じた管理が重要と考えられます。特に、永年性作目である梅等果樹にあっては改善効果が直ちにあらわれがたく、毎年の取り組みが重要であります。これまで普及センターや農協を中心に土壌調査を実施し、園地ごとの土壌カルテづくりを行ってございますが、今後とも土壌分析等による梅園地の実態把握に努め、よりきめ細かい指導、助言を行ってまいりたいと存じます。
 三点目の育苗についてでありますが、議員お話しのとおり、現在流通している梅の苗木はいろいろの特性を持ったものが植栽されていると考えられます。こうしたことから、暖地園芸センターでは、平成八年より五品種の台木による特性調査等、鋭意研究を進めてございます。また県農植物バイオセンターでは、台木の選抜やクローン苗木の増殖技術の開発など、優良種苗の供給体制を整えつつあります。
 梅はもとより農作物を栽培するに当たり、まず優良種苗の導入が不可欠であることから、県といたしましては、国の協力、支援をいただきながら、優良台木や品種の探索、選抜に積極的な取り組みを行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 雇用対策についてのうち、募集の状況についてお答えします。
 議員ご指摘のとおり、本県の雇用・失業情勢は非常に厳しく、雇用の場を確保することが重要な課題であると認識しております。このため、県といたしましては、各職業安定所長を筆頭としたローラー作戦による求人開拓を行っているところであります。また、人材Uターンフェアや合同選考会、ミニ選考会等を定期的に実施するなど、再就職の促進に努めているところであります。さらには、地域の完全失業率の悪化に伴い発動された緊急雇用創出特別基金の活用により新たな雇用創出を図るとともに、各種職業訓練制度の効果的な運用を図り、労働市場のニーズに合った技能者を育成することにより失業者の雇用支援に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 高校生の就職問題に関するご質問にお答えいたします。
 近年の不況が長引く中、昨年度末の就職決定率は八五・八%と、昭和五十一年度に調査を開始して以来最も低い数値となっております。また本年八月末現在の求人数も、昨年同期に比べ四〇%程度も減少するなど、かつてない厳しい状況がございます。各学校においては、生徒の学力の充実を図り、目的意識の向上や職業観の確立、さらには各種の資格取得等に取り組むとともに、新たな求人の開拓に懸命に努力しているところでございます。
 こうした中にあって、専門的な技術、技能を身につけることのできる工業系の学科などに対する求人及びその就職決定率は、他の学科に比べかなり高くなっており、産業教育とりわけ工業教育の重要性を改めて認識しているところでございます。
 本県では、平成元年度以来、職業系高校十三校において電子機械科や情報処理科を初め二十の学科を新設・改編するとともに、幅広い職業系の科目を持つ総合学科を二校設置してきております。
 今後とも、時代と産業界の動向を初め、生徒や保護者、地域のニーズ等を見きわめながら職業学科の改編や施設設備の充実等を進め、職業教育の一層の充実発展に努力してまいる所存でございます。
○副議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十三番木下秀男君。
○木下秀男君 ご答弁、ありがとうございました。
 今、教育長から答弁をいただきましたが、教育委員長、教育長、これから言うことに来年から十分取り組んでほしい。
 私どもが高等学校に在席する時分には、四月の学級編制後、就職担当の先生が直ちに就職希望者を調査した上で、自分たちが送り出した子供たちの就職先、そしてまた地元からよそに出て成長された企業などを訪問して、自分たちの預かる子供たちの就職受け入れを要請して回ってきたことを記憶してございますが、最近の就職担当の先生は、職業安定所から求人数を持ってきて、それを割り振りして試験を受けさせに行くというだけだと、こういうことを聞きます。もうことしは遅過ぎますが、来年からは就職担当の先生──何名置いてあるか知りませんけれども、職場訪問をする中で自分のところの子供たちの行き先、募集枠を広げてもらうという努力をするようなお取り組みをしていただくことを強く要求しておきます。
 それと、農林水産部長の件でございますが、細部については農林水産委員会において質問いたします。
 ここに一通の文書がございます。副知事も見られたと思いますけれども、時間がございませんので急いで読みます。「住金和歌山の立上げからここまで住金と協力会社が一体となって頑張ってきたがここにきて、対前年比二〇%以上の受注量減の中で、非現実的とも思われる位のコスト削減の住金からの提示は協力会社各社とも、一様に会社経営に不安を抱き、進退の領域での判断を迫られているのが現実である。そしてまた元請はもとより下請け、二次下請けの従業員の雇用問題、家族への波及等々を考えたときに、状況が伝わっている範囲ではパニック状態になっている」と。私どもも「住金との連携は各社とも確保していきたいの気持ちを持ちながら、この状態を乗り切るための諸施策を模索しているが、数値があまりにも大きいのと、これまでのさみだれ式のコスト合理化協力と各会社毎の合理化も相当底をついていることと、経済の先行きも不透明な現状からこれまた最悪の状況である」、「今日の住金の経営の悪化は、協力会社並びに下請けの責任では全く無い。これまでの住金自身の見通しに問題がある。指示に従って協力してきた協力会社にその責任の一部を担わす事は不条理である」。こういうことを下請の皆さん方、孫請の皆さん方が考えておる現実を知って、副知事を中心にしたこの連絡協議会が中小零細企業に働く労働者の皆さん方の期待にこたえて住金に強く当たっていただくことを要望するものであります。
 最後に、「自然との共生」をメーンテーマに、日本で初めてのオープンエリア方式で開催されたジャパンエキスポ南紀熊野体験博も、参加者目標を百万人も上回る約三百万人が海、山、川の大自然と熊野の歴史遺産を体験し、二十一世紀のリゾートのあり方を提言して、盛会裏に百四十四日間の幕を閉じました。本博覧会の提唱者であり実行委員会会長である西口知事も、さぞご満足であろうと思うのであります。ご成功を、心からおめでとうと申し上げます。
 辛い評論で有名な竹村健一先生は、オープン型エリアの中で自然というものを取り入れたこの博覧会が今世紀における最後の博覧会として成功したことは喜ばしいと評論をされてございますし、和歌山出身で慶応義塾大学の教授をなさっている竹中平蔵さんも、NHKの深夜放送の中で、和歌山で生まれ育ったのは短いけれども、この体験博を通じて私の育った和歌山県が人間と自然との調和した二十一世紀に求められる和歌山であることを初めて知った、大変誇りに思うという評論をなされてございました。
 今議会終了後は、知事選挙でございます。この上は知事には健康にご留意されて、那智勝浦町のシンボルパークでともされた二十一世紀の希望の灯を高々と掲げて二十一世紀の扉をあけてください。西口知事のご奮闘を祈念申し上げまして、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(宇治田栄蔵君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時五十分散会

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