平成11年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(江上柳助議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
  三十三番江上柳助君。
  〔江上柳助君、登壇〕(拍手)
○江上柳助君 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 このたび、県民、市民の皆様のご支持をいただき、多くの先輩議員の皆様が営々と築いてこられた歴史と伝統ある和歌山県議会に初めて参画させていただきました。先輩議員の皆様、県当局の皆様にご指導、ご鞭撻をいただきながら、微力ではございますが、私の青年時代、多くの人々にお世話になり過ごさせていただいたこのすばらしきふるさと和歌山の県勢発展のため、県民福祉向上のため、一生懸命に取り組んでまいる決意でございます。何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
 最初に、介護保険についてお尋ねいたします。
 和歌山市出身の作家の有吉佐和子さんは、一九七二年(昭和四十二年)、小説「恍惚の人」で痴呆性老人の介護問題を取り上げて世に警鐘を鳴らしました。翌年の一九七三年を「福祉元年」と言われて久しいわけであります。
 最近、還暦を前にした作家と妻が九十二歳と八十七歳の父母を介護する内容を描いた作家の佐江衆一氏の著書、小説「黄落」を読みました。おむつの交換、食事、入浴の世話、妻は介護に疲れ、腰痛になってしまい、作家も仕事が手につかない、自分の両親を妻に世話させている負い目もあり、いらいらが募り、夫婦仲は険悪になり、作家はついに離婚を決意します。小説の中で作家は、「私と妻は高齢の両親というハエ取り紙に絡めとられた蠅のようではないか。もがきながら、いがみあっている初老の蠅だ」と述べております。「黄落」は木の葉が黄ばんで落ちることでありますが、老いていくのは親だけではありません。
 厚生省の国民生活基礎調査では、寝たきりの高齢者を介護する人の三人に一人以上が六十五歳以上の高齢者であることがわかりました。高齢化が進み、六十代の人が八十代の親を介護することも珍しくなくなりました。一方、仕事をしながら高齢者の家族を介護した人の二割が仕事をやめていたことが、介護問題に関する厚生省の調査で明らかになっております。さらに、ひとり暮らしの高齢者、老夫婦のみの世帯もふえています。家族だけに頼る介護は限界に近づきつつあるのではないでしょうか。
 私は、何よりも高齢者が安心して年をとれる、家族が介護などに疲れることなく生きがいを感じながら幸せに生きていける社会、まさに「幸齢化」社会にしなければならないと思うわけであります。そのためにも、だれもが長生きできて本当によかったと実感できる豊かで活力ある高齢化社会を強力に推進しなければならないと考えるものであります。
 いよいよ来年四月から介護保険制度がスタートいたしますが、行政や施設関係者からは依然として「第二の国民健康保険になる危険が大きい」との指摘が続いております。また、利用者側からは、介護施設の整備やホームヘルパーなどのマンパワーの確保のおくれから要介護者の介護が追いつかない心配があり、「保険あって介護なし」との声が多く出されております。最近、国会の与野党内でも介護保険の実施先送りや見直し論まで浮上している現状であります。
 私は、保険原理の適用が適当ではないと言われる介護保障については、改めて税方式への転換の検討も進め、介護サービスを可能な限り同じ条件で受けられるようにすべきであると考えます。しかしながら、現在、来年四月の介護保険の実施に向けて県当局並びに県下市町村において準備が着々と進められておりますので、以下、五点について知事並びに関係部長にお尋ねいたします。
 第一点目は、介護保険の実施先送り・見直し論についてのご見解を承りたいと思います。また、高齢化率の高い本県では介護保険料の推計額は幾らで、保険料と介護サービスの地域間格差を解消する方策について何か妙案はあるのか、お考えをお聞かせください。
 第二点目は、本県のように都市部だけではなく過疎地域を多く抱え、しかも高齢化率三八%を超える古座川町、三七%を超える美里町などの地域を考慮すれば、要介護認定のための介護認定審査会は広域事務組合などの広域で実施すべきであると考えます。市町村介護認定審査会の広域化の現状と今後どのように広域化を推進するお考えか、お伺いいたします。
 第三点目は、介護認定審査会委員の報酬は、国の概算要求では一時間半で九千円、その二分の一が国庫負担であります。実際は、医師の審査会委員報酬は二時間で二万七千円、三万五千円とも言われております。国の基準を超える分は事務組合や市町村の持ち出しとなります。県で適正な委員報酬を指導すべきであると考えますが、いかがでしょうか。また、過疎地域での介護認定審査会委員の確保及び質を高めるための研修にどのように取り組まれるのか、お聞かせください。
 第四点目は、過疎地域でのケアプランを立てる介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーの確保とケアマネジャーの研修をどのようにされるお考えか。
 また、ホームヘルパーの本県の老人保健福祉計画における平成十一年度末目標量は一千五百二十四人であります。これに対して十年度末達成量は九百八十五人で、六四・六%の達成率であります。ホームヘルパーの達成及び潜在的な人材を掘り起こすためホームヘルパーの待遇改善にどのように取り組むお考えか、また二十四時間巡回型のホームヘルプサービスの体制はできているのか、お聞かせください。
 第五点目は、介護保険法案及び介護保険施行法案に対する衆参厚生委員会での附帯決議では、難病患者を含む若年障害者に対する介護サービスについて、介護保険給付と遜色のないものとなるよう障害者プランに基づきその拡充を図るとともに、その確実な達成のため、障害者基本法に基づく市町村障害者計画がすべての市町村で策定されるよう地方公共団体に対して適切な指導を行うこととしております。市町村障害者計画の策定状況と県当局の対応についてお答えください。
 以上、五点についてお尋ねいたします。
 次に、元気な和歌山づくりについてお尋ねいたします。
 知事は本年初頭、わかやま元気宣言をされました。平成十一年度の県予算で非常に厳しい財政状況の中、県勢活性化に向けて枠外要求を認める元気予算八十億円を計上されました。元気な和歌山を築いていくためには、過去の歴史と先人たちの知恵に学ばなければならないと思うわけであります。
 ここで、かつて運輸省におられた新井洋一氏が書かれた「港からの発想」という本の和歌山下津港のくだりの一部をご紹介させていただきます。
 「いま和歌山は──黒潮海道、東海海道、瀬戸内海道の──三海道が交わる枢要な場所として発展したその歴史的な経緯を踏まえ、海の可能性を取り込んだまちづくりを推進している。港湾では木材、鉄、石油、電力と日本の高度経済成長を支えてきた工業機能に加え、流通港湾としての機能の強化を図るべく整備が進められ、さらに、市民に親しまれる港づくり、にぎわいと交流の拠点づくりを目指し、スポーツ・レクリエーション施設の整備も急ピッチで進めている。──中略いたしまして──鉄砲、みかん、大がめ。──これは、鉄砲が種子島から本州に最初に着いたのが和歌山だと言われております。そしてミカンは、紀伊国屋文左衛門が江戸にミカンを東海海道を通して運びました。それから大がめ、これは人間が一人入るぐらいの大きさの備前焼のかめが根来寺からたくさん見つかりました。かつて、ここに菜種油を入れて全国の需要を満たしておったという歴史がございます──鉄砲は黒潮海道の、みかんは東海海道の、そして大がめは瀬戸内海道の、三海道それぞれの象徴的貨物であった。これらのものの間に脈絡はないようにみえるが、いずれも、港まちの経済・社会・文化を特徴づけ、その発展を促した、海からの大切な贈り物ではなかっただろうか。この三海道の拠点たる港まちの文化を次代に継承すべく、いまも新たな試みが行なわれている。」と記述しております。これらはかつて海の道、すなわち港によって和歌山が大きく飛躍発展してきたという歴史であります。
 現在、南紀熊野体験博が開催されておりますが、熊野古道は豊かな自然と歴史、文化の山の道とも言えるでしょう。戦後は陸の道、内陸開発重視の時代で、道路、鉄道を整備し、いかに東京との時間的な距離を短くするかということが最重要課題でありました。この陸の道づくりに本県がおくれをとり、国土幹線軸から大きくかけ離れてしまったため、本県発展の阻害要因となってきました。近年にかけては、空の道、飛行機の時代で、空港を整備してより速く人、物、情報の交流が促進される時代となりました。
 本県では、海の道のための港の整備が進められようとしております。港づくりには、地域の特性や歴史的な目配り、環境への配慮、さらには地域への貢献が大切であることは申すまでもありません。陸の道については、紀淡連絡道路や京奈和自動車道、紀伊半島を一周する高速道路も実現に向けてその構想が着々と進められております。一方、空の道としての関西国際空港の二期工事は、本年七月をめどに着工されると仄聞しております。いよいよ関空は全体構想の実現に向けて動き出しました。
 紀淡連絡道路や京奈和自動車道、千四百トンの貨物を時速九十三キロで運ぶテクノスーパーライナーの母港化や関西国際空港の整備等によって、本県は陸・海・空の交通結節機能を備える要衝の交流拠点都市として大きく発展していく可能性を秘めているわけであります。特定重要港湾であります和歌山下津港の和歌山港区は、四年前から韓国釜山港との定期コンテナ船の就航が実現し、外貿としての機能も整備されつつあります。外貿の機能とあわせ、和歌山港区は昨年、植物検疫指定港に続き動物検疫指定港に指定され、県民生活に直結した流通港湾としてその役割が大いに期待されているところであります。
 現在、県当局においてFAZ導入可能性調査が平成七年度から実施されております。皆様ご承知のように、FAZとはフォーリン・アクセス・ゾーン、すなわち輸入促進地域のことであります。この輸入促進地域は、県で地域輸入促進計画を策定し、主務大臣の承認を受けることによって決められるわけであります。FAZの承認を受けますと、港湾または空港及びその周辺地域において、我が国を取り巻く国際経済環境の変化に対応した輸入の促進と地域振興、輸入促進に寄与する事業の支援など、輸入品流通の円滑化を図るためにインフラが集中的に整備されるのであります。
 以上のことから、知事並びに関係部長にお尋ねいたします。
 第一点は、知事は「「輝きの県政」実現のために」の中で、「関西国際空港、テクノスーパーライナーの拠点港湾、太平洋新国土軸の陸・海・空の輸送の結節ポイントに国際的な物流基地を整備します」と提言されておられます。この構想の内容とその実現の見通しについてお聞かせください。
 第二点目は、紀淡連絡道路、京奈和自動車道建設への取り組みと見通しについてお聞かせください。
 紀淡連絡道路を一日も早く実現させるために、また岩出方面の渋滞を解消するためにも、京奈和自動車道の紀北西道路十二・二キロメートルについて早期に都市計画の決定を行い、先輩議員の飯田敬文議員も提案されておりますように、岩出方面から和歌山市域側の近畿自動車道二・三キロメートルの早期事業着手を紀北東道路の事業化とあわせて国に強く要望すべきであると考えます。ご見解を承りたいと思います。
 第三点は、平成七年度からFAZ導入可能性調査を実施されておりますが、その調査の概要とFAZ導入のための地域輸入促進計画の策定がおくれている理由についてお聞かせください。あわせてFAZ導入の時期はいつごろになるか、お答えください。
 以上、三点についてお尋ねいたします。
 次に、教育問題についてお尋ねいたします。
 名君・徳川吉宗公の時代、室鳩巣をして「紀州の学問は諸国一」と感嘆せしめたその伝統のしからしむるところでありましょうか、とにかく昔から文化の人材の山脈を連ねてきたのが本県であり、実業界から政界に至るまで多士済々であるのが目立っております。「紀州の学問は諸国一」と言わしめたその要因は何か。
 元和歌山大学教授・松下忠著「紀州の藩學」によりますと、「和歌山県は各界に人材を輩出している。その原因を尋ねると、紀州文化の伝統と旧藩時代の文教に深い関係があると私は思う」、そして「問題を紀州の藩学に限定して考察すると、紀州藩の儒学は大局的・自主的で自由で、仙台藩や肥後藩のような一大雄藩も官学たる朱子学の域を出なかったが、紀州藩は朱子学も古義学も復古学もすべて自主的に自由に摂取して遂には紀州藩折衷学とも云うべき学風を生み、多くの創造的な業績を挙げている。その由って来る所以は第一には親藩という家格の致す所と考えられる。恰も水戸藩が尊王の首唱者となったように将軍家に対しても憚る点が少く、学問の自由を十分保持し得たことである。第二は学問の中心たる上方文化(京都・大阪)に近く、その位置その家格より、近世日本の儒学全般の変遷に対して自由敏感に順応した結果と考えられる。而して学問の採用方針が大局的・根本的であったことは各学派を代表する──本居宣長などの──一流の学者を招聘禄用した事でも証明できる」と述べております。さらに、「紀州藩漢文学の隆盛は藩主の好学に関係するところが多かったと考えている」、また、藩主の学問奨励は東照公・南龍公以下代々の遺制遺訓であり、紀州藩の伝統であった。そして「正徳三年、藩主吉宗が初めて藩立學校を置き、之を講釋所と稱し、後講堂と改稱して斯學を教授した」と記述しております。
 また、紀州藩時代は、藩主の学問奨励に呼応して多くの人材を登用して産業の振興にも力を注ぎました。例えば、新田開発を進め、新田には米よりも経済効果の高い作物を植え、また紀州の名産品を殖産興業として他国に高く売れるように奨励策を講じるなどして、財政を黒字に切りかえたのであります。
 教育、学問は人づくり、地域づくり、国づくりの基本であり、未来への先行投資でもあります。また、個人が豊かで質の高い社会生活を営むための基礎的要素であり、無形の財産でもあります。教育の充実に真剣に取り組む国は、紀州藩時代の文教の隆盛がそうであったように、必ず発展と繁栄の時代を迎えています。教育の積み重ね、充実による人づくり、人材という知的資源を生かしていくことによって本県のさらなる発展と繁栄を築いていくことができると思うわけであります。
 もちろん、教育は一人一人の将来をつくる営みであるだけに、全魂の情熱を込めて教えようとするし、生命の炎を燃やして学ぼうとする弟子、いつの時代にあっても教育は、この師と弟子の真摯にして全力を尽くした錬磨によってこそ、なし遂げられていくものであります。
 以上の観点に立って、知事並びに教育長にお尋ねいたします。
 第一点は、紀州藩の伝統であった藩主の学問奨励に対する知事の所感と現代の藩主とも言える知事の教育の充実・振興に取り組む決意をお聞かせください。
 第二点は、和歌山県行政改革大綱に基づく定員管理計画では、教育委員会は平成十一年度から平成十五年度までの実施期間で、児童生徒数の減少による教職員の適正配置を進めることにより約五百名の削減を行う、教職員以外の職員についても抑制に努めるとされております。もし少子化や学校の統廃合等で過員があるとするならば、三十五人学級、三十人学級の完全実施やチームティーチングを大幅にふやそうとされないのか、五年間で教職員を約五百名削減する合理的理由は何か、教育長にお尋ねいたします。
 第三点は、教育現場での学級崩壊の実態をどのように把握されているのか、お答えください。
 また、六月九日、文部省の諮問機関・生涯学習審議会は学習塾を学校外の学習の場と位置づけ、協力していくべきだとする答申を文部大臣に提出しました。塾容認を答申したことで、公教育の敗北宣言ともとれるとの声や、学校の授業がわからない子供が多いから塾が盛んという現実を直視すべきだとの批判がありますが、教育長のご見解を承りたいと思います。
 第四点は、我が国社会は情報化社会を迎え、世界の人々とインターネットで情報を交信できる時代になりました。教育の分野においても教育用パソコンの整備が促進され、現在、県下の高校ではマルチメディアを活用した教育が実施されております。教育の情報発信基地であります県教育研修センター、紀南教育研修所でのパソコン研修やインターネット、マルチメディア教育の研究及び研修を充実し、教育現場で情報化教育に積極的に取り組むべきであると考えます。教育長のご見解を承りたいと思います。
 以上、お尋ねしまして、第一問といたします。ご答弁のほど、よろしくお願い申し上げます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの江上柳助君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 江上議員にお答えをいたします。
 今般、中央政界等で介護保険制度についてさまざまな議論がなされていることは承知しているところでございます。私といたしましても、本制度があらゆる議論からさらに充実した内容に発展することを強く望んでいるところでございます。
 しかし、一方で、日々介護に携わっている多くのご家族が平成十二年四月一日からのこの制度のスタートを切実に待ち望んでおり、また事業主体である市町村では制度の円滑な導入を図るために今日まで数多くの準備事務を遂行しているところでもございまして、予定どおりスタートすることは大きな意義があると考えてございます。
 また、介護保険料の推計につきましては、今のところ、国から示された簡易な試算方法では全国試算の金額二千八百三十二円とほぼ同額となってございます。
 次に、保険料と介護サービスの地域間格差を解消する方策についてでありますが、県介護保険事業支援計画を策定する過程において、市町村との意見交換をしながら圏域での調整を図り、できるだけ地域間格差が出ないよう努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、国際的な物流基地構想であります。
 私は、本県が太平洋新国土軸のかなめとなる紀淡連絡道路の整備により大阪湾環状交通網の一端を担う地域になるという利点、大阪湾ベイエリアのフロンティアに位置し、外洋に面する港湾を有する優位性や関西国際空港への近接性など、陸・海・空の交通の結節点であり、国際的な物流拠点としての発展の可能性があると考え、国際物流ターミナル基地の建設を提案してきたところでございます。
 県といたしましては、紀淡連絡道路の道路網の整備、ベイフロンティア構想を念頭に置いた和歌山下津港の整備、関西国際空港全体構想の推進などの条件整備を全力を挙げて行っていく中で、国際的な物流基地の実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。
 紀淡連絡道路につきましては、太平洋新国土軸の中枢をなす重要な道路であり、新全国総合開発計画及び新道路整備五カ年計画に「構想を進める」と明確に位置づけられたところでございまして、現在、早期実現に向けて建設省と協力して調査を重点的に実施してございます。
 また、京奈和自動車道につきましては、事業促進の前提となる紀北西道路の都市計画決定を早期に進めていくとともに、議員のご提案を十分踏まえまして、紀北西道路と紀北東道路をあわせ、効果的、効率的な整備を進めていくように国へ強く働きかけてまいりたいと思います。
 次に、教育の問題でございます。
 文教と学問の奨励についてお話がございましたように、紀州藩の時代におきましては、すぐれた伝統が形づくられてございます。江戸時代の初め、初代藩主の徳川頼宣は、正直や親孝行を徳とする心得「父母状」をつくり広く普及させました。これは現在における心の教育に通じるものであり、大いに注目すべきことでございます。また、五代藩主・吉宗は学問所を設立し、身分の別を問わず、志ある者に対して教育の門戸を広く開放いたしました。このように、学問を尊重する気風は歴代の藩主に受け継がれ、その後も医学館や学習館の設立など、藩学の基盤整備が図られてまいりました。教授陣には本居宣長を初めとする高名な学者を招聘するなど、そのレベルは当代をリードするものであり、リベラルでアカデミックな学問風土が培われました。その結果、多くのすぐれた人材を輩出し、藩政の振興に大きく貢献をいたしました。
 議員ご指摘のように、いつの時代にあっても、郷土の豊かな発展のためには人材の育成が肝要であり、教育の果たす役割にはまことに大きなものがございます。こうした先人が築いた輝かしい教育風土を継承し、本県を全国に誇れる教育立県にしていく必要があると考えてございます。そのためには、県政の柱に「心豊かで個性輝くひとづくり」を掲げて教育を最重点施策の一つに位置づけ、その充実・振興に鋭意取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 介護保険についての四点にお答えをいたします。
 まず、介護認定審査会の広域化の現状と対応についてでございます。
 介護認定審査会の広域化を図ることは、委員の確保や審査判定の公平性の観点から、地域によっては意義あるものと考えております。そのため県では市町村の意向を十分酌み取り、協議を重ねた結果、現時点では県全体で八地域の三十六市町村で広域化が図られているところであります。今後は、市町村の地域実態や意向を踏まえながら、本年度に圏域単位で設置する介護保険地域推進会議を十分活用し、さらなる広域化についてもきめ細かな対応を図ってまいります。
 次に、介護認定審査会委員の適正な報酬と研修についてでございます。
 介護認定審査会委員の報酬につきましては、本審査会は地方自治法に基づく附属機関であり、その委員報酬は市町村のそれぞれの条例の範囲内で設定することとなっております。しかしながら、円滑な導入に向けて、県としましては国の概算要求の単価や昨年度の介護認定モデル事業の単価を参考に提示させていただいたところであり、今後とも市町村において均衡ある設定となるよう、さらなる周知を図ってまいりたいと考えております。
 次に、過疎地域での介護認定審査会委員の確保につきましては、単独で委員の確保が困難な町村については複数の市町村による介護認定審査会を共同で設置することにより委員の確保を図っているところでございます。また、委員の資質向上のための研修につきましては、国において示されるマニュアルに基づき、公正・公平に要介護認定が実施できるよう努めてまいります。
 次に、過疎地での介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーの確保についてでございます。
 県では昨年度から介護支援専門員の試験を実施し、十年度では千七十七人の合格者を得ており、そのうち実務研修修了者は千四十五人となっております。全国的に見ましても平均を上回る合格率であり、実務研修の実施も、休日等を駆使し、短期間で多くの修了者を得たところであります。地域的に見ましても、過疎地域を含め、おおむねバランスのとれたケアマネジャーの確保ができたものと考えております。
 現在、一部の地域ではケアマネジャーの方々がお互いの資質向上を目的としての自主研修がなされており、県においてもこうした自主研修の動きが広がるよう支援しているところでございます。また、本年も七月二十五日に介護支援専門員試験を実施する予定であり、引き続き本制度の重要な調整役であるケアマネジャーを増強してまいりたいと考えております。
 次に、ホームヘルパーの確保についてでございます。
 本県の老人保健福祉計画におけるホームヘルパーの達成率は、六四・六となっております。しかしながら、研修期間を二十六カ所にふやして養成を行った結果、潜在的なホームヘルパーは約二千二百人いると見込まれます。介護保険制度導入に伴うホームヘルパーの需要に対応するため、今後も引き続き養成を行ってまいります。あわせて待遇改善も必要と考えており、国に対して要望しているところでございます。また、二十四時間対応ヘルパー事業につきましては、現在二十五市町村で実施されております。
 いずれにいたしましても、介護保険制度への円滑な移行には両事業は重要であると考えており、今後、市町村と協力しながら推進してまいります。
 次に、市町村の障害者計画についてであります。
 平成十一年三月末現在の策定状況につきましては、和歌山市初め四市町が策定済みであり、平成十一年度中に二十市町村、平成十三年度までに全市町村の七割に当たる三十五市町村が策定の見込みとなってございます。計画の早期策定につきましては従来から市町村の福祉担当課長会議等において指導しているところでございますが、特に平成十年十月には県障害者施策推進本部長である副知事名での文書要請も行っております。今後とも、あらゆる機会をとらえて積極的に指導してまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 私からは、元気な和歌山づくりの三点目、FAZ導入の見通しについてのご質問にお答えいたします。
 平成七年度から九年度にかけまして、本県におけるFAZ導入の可能性を探るための調査を行いました。その結果、本県FAZの基本的方向としては生活に関連した地場産業基盤の確立とし、特に木材加工と食品加工を中心とすることが望ましいこと、また、その推進については官民一体となった体制の確立やキーテナント企業の発掘が重要であるとの調査結果を得ております。調査の中では事業者に対する利用意向調査も実施しておりますが、外貿コンテナ施設の整備、定期航路の就航、保税保管施設の基盤整備が利用する上での条件であるとの結果も得ております。そのため、県といたしましては、FAZを導入している他港の状況についても把握しながら、その得失とメリットを明らかにし、民間の理解をより一層深めるよう広報啓発に努めて検討を進めてまいりたいと考えてございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 江上議員ご質問の教育問題、三点についてお答えいたします。
 まず今後の教職員定数についてでありますが、平成十一年度から十五年度までの五年間に児童生徒数が大幅に減少することに伴い、小・中・県立学校合わせて五百人程度の減少が見込まれます。教育委員会といたしましては、現在進めておりますチームティーチング等、指導方法の工夫改善やいじめ、不登校対応等の個に応じた指導のための定数を確保し、より一層効果的に活用するとともに、適正な教職員配置を進め、本県教育の充実に努めてまいりたいと考えております。
 なお、議員ご提言の三十人学級、三十五人学級に関してでありますが、現在、国において平成十三年度以降の教職員定数や学級編制基準のあり方について検討が行われているところであります。今後、国の動向を見守りながら本県としての対応を考えてまいる所存であります。
 次に学級崩壊と言われることについてでありますが、本県では、一部の小学校において授業中数名の児童が教室を歩き回るなど、授業が成り立ちにくい状況が生じております。こうした学校においては、校長、教頭の指導や他の教員の協力のもと、学級運営の改善に取り組んでおります。
 続いて学習塾についてでありますが、先日出されました生涯学習審議会の答申において、体験活動などを取り入れた学習塾などの民間教育事業に対しては、学校外での学習環境の一つとしての役割を果たしていることについて一定の理解を示しております。しかしながら、過度の学習塾通いやその低年齢化などは、感性豊かでたくましく生きていく望ましい人間形成にとって悪影響を及ぼすおそれがあると懸念をいたしております。
 学校教育において、各学校が、子供一人一人が学ぶ喜びとわかる楽しさを実感しながら、そのよさを伸ばし、力をつける教育を実現することが大切であると考えます。そのため、あらゆる教育活動にさらに創意工夫を加え、学校、家庭、地域社会が連携協力して一人一人の児童生徒が光り輝く教育の推進に努めるよう指導してまいります。
 最後に情報教育の推進についてでありますが、これからの社会を生きていく子供たちに豊かな情報活用能力を身につけさせることは極めて大切であると考えております。先般告示されました新学習指導要領においても、情報通信ネットワークを積極的に活用した学習活動の充実が強く求められております。
 本県においては、これまでコンピューター等の整備に努めるとともに、教員の指導力の向上に向けた各種の研修講座のほか、情報コミュニケーション推進事業などを通してインターネット等の活用に関する幅広い実践的な研究を行ってきたところであります。さらに、本年度新たに和歌山市と橋本市の小・中・高等学校等十五校で衛星通信ネットワークの活用に係る研究開発に取り組むこととしております。また、教育研修センターにおいても、これまでのパソコンや情報処理の講座に加え、ネットワーク活用に関する講座を開設することとしております。
 今後とも、情報化社会に対応した研修や実践研究の一層の充実に努め、二十一世紀にふさわしい情報教育を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十三番江上柳助君。
○江上柳助君 ただいま、知事並びに関係部長からご答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
 介護保険の実施先送り・見直し論につきましては、知事から、本制度があらゆる議論からさらに充実した内容に発展することを強く望んでいるところであるが、制度のスタートを切実に望んでおられる方がいらっしゃる、また市町村で準備が進められている、予定どおりのスタートをすることは大きな意義があると考えているとのご答弁をいただきました。私も、現段階においては、さまざまな問題を排除して介護保険が円滑にスタートできるように総力を挙げるべきだと思います。
 一方、介護保険に対する県民の不安を解消する努力も怠ってはならないわけであります。介護保険料は幾らでどのように徴収されるのか、介護サービスはどのようになるのかといった介護保険に関する情報をわかりやすく県民に提供する介護保険制度の普及啓発、この点は強く要望させていただきます。
 介護認定審査会委員の報酬についてでありますけれども、先ほど福祉保健部長から、市町村において均衡ある設定となるようさらなる周知を図ってまいりたいと考えているとのご答弁をいただきました。市町村だけの問題ではないと私は思います。したがって、市町村の持ち出しとならないように、適正な委員報酬が定められるように関係方面、特に医師会にひとつ要請、ご指導をしていただきたい。この点も強く要望させてもらいます。
 次に、二十四時間ホームヘルプサービスについて福祉保健部長に再質問いたします。
 新聞報道によりますと、大阪府枚方市では、国が来年四月からの介護保険導入を前にしてヘルパーの補助制度を人件費から派遣回数に応じた出来高払いに変更したことによって、ヘルパーの二十四時間派遣事業から撤退していたことが明らかになりました。残念なことに、介護保険導入で事実上、福祉が後退したことになります。これから新規に二十四時間巡回型のホールヘルプサービスの事業を実施しようとする県下市町村に影響があるのではないかと懸念をいたしますが、保険料を徴収すれば当然に権利義務が生じるわけであります。二十四時間巡回型のホームヘルプサービスの体制の整備について本県は大丈夫なのか、問題はないのかどうか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
 次に、国際的な物流基地構想について知事に再質問をいたします。
 国際的な物流基地の整備について、第一問では、条件整備を進める中、その実現に向け全力を挙げて取り組んでまいりたいと知事からご答弁をいただきました。どうか、本県の発展と活性化のために物流基地の整備を現実のものにしていただきたいと思うわけであります。
 多くの県民、市民からも、和歌山で働く場所が欲しい、子供が学校を卒業したら和歌山に帰ってきてくれない、若者の働く場所が欲しいといった声をたくさんお聞きしております。西口県政はこれだ、この方針で和歌山を伸ばす、若者が定住できる産業を興す、和歌山県にどの産業が適しているかということをはっきりと見きわめて、国のあらゆる援助を頼んでここに一大産業を興すという決意こそが、私は知事の知事たるゆえんであると思うわけであります。また、物流拠点の整備が陸の道である太平洋国土軸、紀淡連絡道路の建設を促進するための合理的理由の一つになり得ると思うわけであります。
 先ほどもFAZ導入のお話がございましたけれども、実は、和歌山下津港本港沖の埋め立て、いわゆる雑賀崎の埋め立てについては、貴重な県民、国民の財産を失うことになるわけであります。したがって、その代償として県民に展望のあるプロジェクトを推進していかなければならない、このように思うんです。したがって、もうこのFAZ導入とか流通業務地区、流通業務団地の都市計画決定とかいったことはひとえに知事の決断にかかっていると、私はこのように思います。ですから、国際的な物流基地を一カ所に大規模なものをつくることが難しければ、最初は規模は小さくてもいいわけでありますから、まず物流基地構想を前に推進すべきであると。そのためにも、庁内の物流に関係している港湾課、総合交通政策課、商工振興課、都市計画課などから成るプロジェクトチームを編成して全庁的に取り組むべきだと考えます。知事のご決意についてお聞かせ願います。
 最後に教育の充実につきまして、先ほど知事の方から、紀州藩主の学問奨励にまさるとも劣らぬ並々ならぬ教育にかける意気込みをお聞かせいただきました。ありがとうございました。
 幾多の人材を輩出した本県にあって、和歌山の歴史、文化、伝統を大切にしながら一人一人の個性を重視した人間教育向上への息吹が満ちてまいりますならば、さらにどれほどの人材が本県から輩出するかと大きな期待を寄せるものであります。
 最後に、教育長にお尋ねをしたいと思います。
 先ほど、定数管理──まあ、随分ご苦労されたと思うんです。和歌山県定員管理計画の中で、児童生徒数の減少による教職員の適正配置を進めることによって約五百名の削減を行うと、「削減」という表現をされております。
 教職員の定数は昨年からことしにおいても自然減がありまして、定数は毎年変動しているものです。本来の「削減」とは、辞書にもありますように「現にあるものを意図的に削り減らす」と。文部省の第六次定員管理計画には──ここにありますけれども──どこにも「削減」と書いていないんです。自然減です。そういう「削減」という言葉は一切使われておりません。
 県教育委員会は「削減」とされておりますので、この標準法に定められた定数から教職員を削り減らす、いわゆる真水の削減は何人あるのか、一度明確にお答えいただきたいと思います。そうしないと、報道でも「削減」、本議会でも幾人かの先輩議員方が「削減」問題を取り上げていらっしゃる。新聞報道でも「教員五百人削減」と、大変なことなんです、これ。「削減」じゃないんです。
 ですから、こういった混乱、また不安を抱いている方がたくさんいらっしゃると思いますので、教育長は「削減」という意味をどのようにとらえていらっしゃるのか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。まあ、これは随分ご苦労されたのかなというふうに私は推察いたしますけれども。
 以上、再質問といたします。明快なご答弁をよろしくお願いいたします。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 江上議員の再質問にお答えをいたします。
 国際的な物流基地を整備するために庁内のプロジェクトチームの編成などであります。
 正直言いまして、現状から見ますと大変厳しい状況でございます。しかし、本県の置かれております、特に和歌山下津港を中心とした関空、京奈和道路、将来の紀淡連絡道路、そういうふうな立地条件からいたしますと極めて優位な地域にあることは間違いのないことでありますので、その辺のところを生かした構想というのを関係部局で十分検討すべきだということで、国際物流基地の構想というものを立てたわけであります。そのことの研究のために、これから前向きな積極的な取り組みをしていきたいと思っております。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 再質問にお答えを申し上げます。
 議員ご指摘の枚方市の場合でございますが、独自で緊急時に備えて宿直体制をとっていたところでございますけれども、利用者の需要が少ない、また宿直体制がとれないということで、利用者の状況に応じた形での深夜、また夜間、早朝だけの派遣に変えたというふうに聞いてございます。
 二十四時間ホームヘルパーにつきましては、利用者の状況に応じて計画書を作成しまして、これに基づき夜間、深夜、早朝のサービスを提供することとなってございます。本県においては、二十四時間ホームヘルプーサービスを実施中の二十五市町村におきまして、今後とも継続して実施することとなってございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 江上議員の再質問にお答えいたします。
 教職員の定数につきましては、先ほどお話がありましたように、標準定数法と申しております法的裏づけがございますので、それに基づいて各年度ごとの定数の計算をしていくわけでございます。
 ただ、最近の定数を決める際には、先ほども答弁で申し上げましたように、例えばチームティーチングとか、コンピューター対応とか、不登校対応とか、さまざまな種類の教員の配当計画もございます。それらをあわせながら、全般的な生徒数の増減、それに伴う学級数の増減、県単独措置の状況、いろんなものを加味しながら最終的にその年度その年度の教職員定数が決まっていくわけでありまして、お話のありましたように、標準定数法に定められている水準以下に切り下げるという意味で私は申し上げてはおりませんので、先ほどのご答弁で申し上げたように、トータルでいけばそれぐらいの減少になるという意味で申し上げているところでございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、江上柳助君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十五分休憩
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