平成11年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(馬頭哲弥議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 16番馬頭哲弥君。
  〔馬頭哲弥君、登壇〕(拍手)
○馬頭哲弥君 「残り物に福あり」という言葉がありますが、私は余りこのことを信用しておりません。初日から熱心なご論議がございまして、大方の材料は既に調理されました。私の場合は、ほとんどこれはもうがらに等しい、いいスープがとれるかどうか甚だ心もとない次第でございますが、一般質問も千秋楽でありますから、ひとつ打ちどめの最後まで、皆さんご寛恕をお願いいたしたいと思います。
 私は、一議員としてこの期間主張してまいりましたことへのおさらいも含めまして、数点お尋ねをしていきたいと思います。
 まず最初に、知事にお尋ねをいたします。
 西口知事は、戦後歴代知事の中でも極めて苛烈・激動の中で県政を担当されるという役目を担われ、日夜苦闘を続けられております。今議会一般質問を閉じるに当たりまして、その労苦に対して敬意を表したいと思います。
 特に、経済の動乱が始まって不況、不景気のあらしがやむことなく、既に十年を経過いたしました。梅は咲いたが桜はまだかといった春のぬくもりを肌で感じるような状況にはほど遠い昨今経済の冷え込みであります。
 西口知事は四年前、就任されるに当たって本議会から、勇気を奮って県政に取り組むことを訴えました。勇気こそ地の塩なりとする知事の哲学をこの言葉で表現されたものと思います。そして今、一期の大半を経過して、元気宣言をされております。この言葉は、今のような時代にこそ、みずからに対し真に元気を奮い立たせ、むち打つ気概をあらわしたものと受けとめます。元気の「気」はチャンスの「機」に相通じ、新予算に盛られた各般の施策が最大級の機能を果たすようにという熱い思いも秘めてであると思います。
 大いなる歴史のただ中に生まれ合わせた我々世代として、二十一世紀への引き継ぎの役目というのを立派に果たすことが我々の使命であって、ほかに何もないわけであります。我々は今、新たにめぐり来る千年世紀の潮目に立っておることを自覚いたします。
 この必死のとき、私は詩人・高村光太郎の「必死の時」という格調高い名詩を思い浮かべます。「必死にあり。その時人きよくしてつよく、その時こころ洋洋としてゆたかなのは われら民族のならひである。」、これは、戦時の最中においてなお民族の誇らかな気概を高村光太郎は歌ったのであります。
 私は、この詩をこのように読みかえてみました。「我ら今 激動ただならぬとき 必死にあり。その時人きよくしてつよく、その時こころ洋洋としてゆたかなのは われら和歌山県人のならひである」と。
 知事は、この一期を顧みるとともに、新しい時代意識をどのように決意されているか、お気持ちを述べられたいのであります。
 金融問題に移ります。
 さきに申し上げましたように、経済は長い冬の時代が続いております。中でも、田辺に起こった阪和銀行、県信用組合という二つの金融機関が破綻、閉鎖いたしましたことに伴い、えらいことが起こっております。阪和は七十一年、県信は四十五年の歴史を持ちながらついえたのであります。この二行ともに、健全であるときには文字どおり地元に支えられ、ローカル金融の役目を果たしておりました。経営破綻の論議はおくとして、このことについて世情どなたといえども、これは認めておるところであると思います。
 田辺市周辺における現下の深刻な金融状況は、最近NHKでも全国放映され、反響を呼びました。経済不況、銀行倒産、整理回収という二波、三波の追い打ちに今まさに悲鳴が上がっております。これは、田辺市地元のみならずであります。中小零細の企業や個人商店では、経済不況という大津波の前になすすべなき日々であります。汗とあぶらで築いてきた商売の命脈を絶たれた上に、血と涙をもってあがなえというに等しい整理回収銀行の強い圧力の前に打ちひしがれざるを得ぬ、そういう気持ちで必死になって闘っております。
 知事も、新年度予算を編成するに当たって引き続き経済の立て直しを第一義に置いておられることを見ても、常に心を痛め、真剣な対策を進めようとしておることがわかるのであります。しかし、阪和の場合を申し上げてみますと、倒産、そして取引停止、金融不能のプロセスは今時点で当局も十分承知されているとして、私がここで取り上げたいことは、整理回収銀行の、目的のためなら手段を選ばずといった、そしてその結果は関知しないんだと、こういう無責任というか、血も涙もないやり方について、私はこの機会に一言しておきたいと思います。
 確かに、阪和の倒産は経営者の無能きわまるところにもあった。それは言えると思う。しかし今度、役者がかわって整理回収銀行のとる方法は、長年支えられておった優秀なお得意さんや株主さん、いわば銀行に対する支持者、恩人に寸毫の容赦もない取り立てぶりであります。「地獄で仏」と言いますけれども、地獄で鬼につかまったようなものです。このことは、日本の政治、行政の木を見て山を見ぬ本末転倒の論議に根本的な責任があります。
 しからば、我々は何の反論もできず、ただ手をこまねいておれるのか。私は、阪和銀行倒産の引き金を引いた理不尽なる大蔵省に対し、「一寸の虫にも五分の魂」という気持ちをぶつけてみました。しかし、大蔵省はびくともいたしません。微動だにしないのであります。それどころか、手のひらを返して今度は、すべての銀行を助けなければと言って、国民にいろいろ議論がある中でも、公的資金を銀行に対してつぎ込まなければと言う。そういう一方で、中小企業はすりつぶされにかかっておる。まことに相矛盾することをやりながら、いまだになお責任のなすり合いが続いておる。こんなことがまかり通るなら、世の中やみですよ、皆さん。麻酔なしで生身を切るに等しいことを今やっておる。
 まあしかし、全国にあまた知事さんある中で、うちの知事さんほどこんな苦渋をなめた人はいないのではないかと思うぐらい、和歌山県は今、経済の分野において実に惨たんたる気分にあるわけであります。
 そこで、知事としては、紀南地方の金融事情及び整理回収銀行の回収実態についてどのように認識しておられるか、お尋ねするものであります。
 次に、県信のこれからについては野見山議員の質問にもありましたので省略いたします。県信問題は、いわばこれからが本番であります。これも、阪和同様、大同小異の出来事が展開されると思うんです。県信経営の特徴は、中小企業、小売業の方々が対象で生まれました。組合設立の精神は、商売人の方々を何とか小口の金融でもって助けていかなならんということから始まりました。しかし、ここまでやってきたけれども、刀折れ矢尽きた。地方町村にまで支店を持っていた県信は、小口金融の細かいところまで機能していたという証拠であります。
 そこで起こってくる心配な問題は、紀陽銀行に移管されるというが、紀陽銀行と県信では網の目が違うということなんです。網の目が違いやせんのか。そこに心配がある。取引の対象にならんのではないか。このことに対する見通しも伝わってこないのは、県の情報公開が懇切でないように思う。皆、知らんのです。大丈夫なんだということを保証する言葉が足りないのであります。
 そこで、田辺では、みんなの力で金を集めて、ひとつ新たに信用組合をつくろうじゃないかという意見が持ち上がってきています。既に資金調達の方法も検討されておるようであります。一つのことが終われば新しい芽が吹いてくるのは、自然の原理であります。ましてや、自由主義経済は死なず。これを貫こうとする商魂に対して県はどうこれを受けとめて対処されるか、伺っておきたいのであります。
 次に、少子化についてお尋ねをいたします。
 私が本議場で少子化問題を提起したのは平成三年九月の本会議であります。随分たちます。日本の国家社会最大の危機は少子化だと、そのときに訴えました。時を同じくして、厚生省も少子化について注目し始めていたころであります。その後でデータが出ておりました。
 当時、仮谷知事さんはその答弁の中で、有識者による懇談会を設置すると約束をしてくれました。それがその後、多少のもたつきはありましたが、和歌山県子育て環境づくり推進協議会という子育て支援の会が平成七年三月に発足されます。私はしかし、これらの支援措置の効果がその後どれだけ上がっているのか、その数値を当局に尋ねておりません。尋ねるのが何か怖いような気がしたからであります。
 ちなみに、そのとき川端企画部長は、人口千人当たりの県内出生率は平成二年時点で全国九・九に対し本県は九・五であると答えております。減少の原因も、若者の定着度の問題や人口が流出するとかいう問題、高齢化社会の問題あるいは非婚の問題というふうなことをその理由として述べておられました。
 しかし、あのときも私は申し上げたんですが、赤ちゃんを産んでもらうという主目的が一番の柱なんです。産まれてきたら何とかするよ、支援するよということも必要であるけれども、これは勝手な一方通行と言われても仕方がない表現であります。産んでもらうためにどうするかという、まずスタートポイント、これを私はこの議場からも訴えておきたいのであります。このポイントを避けて通ってはならんのです。どうして子供さんをつくる気になってもらうか。ここなんですよ。産まれたらどうするということは、その後なんです。
 動物生存の原理は理屈じゃないんです。中山先生、そうでしょう。理屈じゃない。とりわけこの場合、人類の新たな生命誕生のドラマをどう展開させるのか、知事の言われる勇気づけていくのかということは、技術や施策の問題じゃない。本能の問題なんです。本能主導の世界なんです。だから私は、あとう限り現役の男女に子供をつくってもらうための知恵をおかりなさい、彼らの発言を高く評価しなさい、こう言うておいたんです。その後で施策あり。
 門議員は先ほどここへ座ってから私に、ゆうべ地区懇談会をやられたと言う。熱心に地区懇をやっておられるようであります。その席で、多くの女性の方々から、子供を産むのにいろんな手だてを門先生しっかり頑張ってくださいと、強い要望があったということをお聞きいたしました。門先生は、おまえの発言でそのことをついでに述べよとはおっしゃっておりませんが、これは確かに今時点のホットニュースであります。私は、これから皆さんが選挙に臨んで地区懇に出たときに、こういう問題が必ず提起されるであろうと期待をしておるのであります。今、一方ではまた、環境ホルモンの分野で非常に悪さをする要素、人間精子の数が減少しておるとかいった心配な学説が飛び交っております。子供の数が年々減るその一方で、急速に高齢化が進んでまいります。あと二十年もたたない間に国民の二五%以上が六十五歳になる。私も、ことし六十五歳になるわけであります。現在既に、六十五歳以上の人口が将来の労働力の中核となる十五歳以下の人口より、もうふえたんです。超えたんです。この時期に至ったとき、減少した労働力、これから産まれてくる実に若い世代が社会を支え高齢者を擁護することは、物理的にも心理的にも私は不可能だと思う。少数の納税者が多数の高齢者を支えるとは、とても思えぬのであります。そんなことがあろうはずがない。
 したがって、今からでも県はまず順序を踏んで、子育て懇談会のメンバーを変えるべきです。結婚したてのばりばりの県職員や、これから結婚しようとする意気盛んなる青年たちをもって正規の委員とされたいのであります。委員の数もふやしなさい。種まく力のない人を委員にしたってしようないというんです。
 また、県勢の助っ人への感謝の印をどう表現されるか。子供を社会の宝、和歌山県の宝として社会的に認め合う方法など、課題はいっぱいあるが、既に県下十六町村では村長さんも町長さんも、ない金をやりくりしてご褒美を出しておる。知事さんもひとつ考えられたらいかがでありましょうか。これは、お答えは結構です。まあ、生きたことに金を使えということですよ。
 どうぞ今後、県内のインターネット、「県民の友」なども、赤ちゃんを産もう運動の意気盛んな記事が躍っているようにひとつ──そうでないと、知事の言う元気出せ和歌山は絵そらごとに終わってしまうという懸念を持つものであります。いかがでありますか。
 新白浜空港の課題を一つ、二つ申し上げます。
 一つは、空港のネットワーク化についてであります。
 新空港は、平成四年から工事にかかって七年に完成をいたしました。現在、東京往復の二便、それから広島への一便であります。二千メートル滑走路工事の途中にありますけれども、YSからジェット化いたしまして便利になりました。しかし、これから二千メートルになりますと、機材ももう一つ大きくなります。期待もいたしておりますが、積極的にネットワーク化を急がなければ、この空港、宝の持ちぐされになるとやじる週刊誌まで出てまいりました。新しい需要を喚起するための手だてが必要であります。
 ごく最近、企画部による県政中期展望の中にもこのことが盛り込まれておるようですが、何が何でもという気迫がいま一つ感じられないように思うのであります。知事は既に、アジアに和歌山県発展の手がかりを得ようと香港事務所まで開設された。しからば、アジアの諸国との空のルートがあってもいいじゃないか。当然、そこに──歩いて来れぬのですから──そういうルートが考えられていいのではないか。ましてや観光立県和歌山の揺るぎない基盤づくりのためにならば、国内外の新ルート開設をどう想定されているか、我々は聞かないではおれないのであります。また、これからの空港の機能整備、例えばターニングパッドなどどういうふうにお考えであるか、お尋ねをするものであります。
 次に、農業振興への提言を一つ申し上げたいと思います。
 私は、農林水産委員会に所属をさせていただいて、もうどれくらいたったのかわからないほどここに置いていただいている。本当にばかの一つ覚えのように農林水産委員会で、当局の皆さんともども苦労を分かち合ってまいったと自負いたしておるものであります。
 日本の農業が、外国で沸き起こる日本たたきのウルグアイ・ラウンド問題なども含めて、内政的にも、農業自体、足場から行き詰まりが随所に見られるようになりました。新農業基本法も制定間近でありますが、この中に食糧安保が初めて明記されました。農業に限らず、すべてのことに言えるわけでありますけれども、突き当たったら一に戻れ、万法帰一、突き当たったら初めへ戻れという、ここからいきますと、中でも長年農家の勤勉に耐え続けた土は今や酸化し、地力は低下していることを思いますとき、これからの農業発展の展開が実に心配であります。
 そこで、先祖伝来の田畑を新しい土づくりで活性化させようではないかというのが私のささやかな提案であります。簡単なことです。大した資金も要りません。だれにでもできます。土を土にするのではなくて、他のものを土に変えていく。土生産であります。
 ふるさとを表現する言葉に「風土記の丘」とか「風土」という言葉を使います。この言葉は今でも生きておりますが、「風」は気候とか季節、風とか空気とか酸素という言葉だと思います。「土」は生命の源であります。当然、ここに新しいいい水がなければなりません。それが風土の精神であります。
 そこに生きる和歌山県民が健康である証拠を私は、こうして新しい土をどんどんつくって疲れた土を活性化していくという、こういう土の力で健康和歌山を表現したいと思うんです。するべきだと思うんです。あたら天与の食べ物を廃棄物と称するような思い上がりを戒めて、あらゆる食品のかすとか生ごみのたぐい、家畜ふん尿、魚介類、山から出るあらゆる有機素材を集めて土を生産することによって、我が県農業は名実ともに日本一になると私は確信いたします。環境浄化もできて一石二鳥であります。
 そこで私はお伺いするのでありますが、市町村や農協とも協調して県下河川の流域ごとに土壌肥料、土肥製造センターをつくったらどうかと、こういうことを申し上げたいのであります。農林水産部長のご答弁をお願いするものであります。
 次に、和歌山県の情報化推進についてお伺いをいたします。
 現在の情報、通信分野における技術進歩は、インターネットに代表される情報通信ネットワークの急激な広がりをもたらしております。このネットワークの広がりは、時間と距離の制約を縮小して、地理的条件に恵まれない地域においても情報の獲得と発信が可能になって、電子空間の中に新しいコミュニケーションの場が形成される。産業、教育、文化など、多様な面で人間の諸活動を大きく変換させる可能性を持っておると思うのであります。
 本県でも、情報化の推進については、新しい長期総合計画において「『新時代』を拓く戦略的構想」における重点施策と位置づけられておりますことはご同慶にたえません。こうした情報化の推進は、地理的に半島というハンディを負っている和歌山県では特に重要になってくると考えますけれども、そのための基盤整備はもとより、多くの人々がだれでも、和歌山県の田舎へ行ってもコンピューターの一つぐらい使いこなしておるよ、その風土に最新の技術であるコンピューターを駆使する県民たちがいるよということは、すごい下支え、基盤になると思うんです。そういう人的基盤を基盤整備と呼んでほしい。そうして、それぞれの立場でネットワーク機能を十分に活用できるようにしていただきたい。能力の向上や人材育成は、当然の必要事項であります。これに対して助成措置を講じることも有効適切であると思います。
 そこで、県民各層が情報ネットワーク機能を使いこなして活用する力、つまり情報リテラシーを向上させるために普及啓発、人材育成を具体的にどう進められていくか、企画部長にお尋ねをいたします。
 また、リテラシー向上や人材育成につきましては、さまざまな分野、方策が考えられますが、その中でも学校教育が大きくその役割を果たすことに期待をいたします。今朝来のニュースでも、高校の新学習指導要領の中にこうしたことが柱として取り上げられております。
 現在、インターネットの利用者は既に全国で千二百万人に達するとも言われ、なお著しい普及率の増加を見ていくと思います。こうした状況に代表されるような急激な情報化の進展に対して、学校における情報化教育についても思い切った充実強化を図っていくべきだと考えます。県も財政当局も、これを思い切って支援してもらわなきゃならない。具体的な取り組みなどについて教育長のお考えをお聞きいたしたいと思います。
 これで私の質問は終わりますが、季節の春はそこまで来ておりますけれども、おのおの選挙区では選挙という試練が確実に迫り来っております。戦いに臨んで、勇気りんりんたる気持ちとそくそくたる気分が交錯するを覚えます。来期再び本議会に相集い、県勢発展の論議が活発に展開されるよう議員各位のご健闘を衷心お祈り申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの馬頭哲弥君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 馬頭議員にお答えをいたします。
 新たな千年紀を迎える潮目に立って我々はいかにあるべきか、大変貴重なお話をいただきました。私も常々、この歴史的大転換期、百年単位のみならず新たなミレニアム、千年紀を迎えるときに、大変厳しい試練のただ中にはございますけれども、たまたま県政を預かる者として、県民の皆さんには安心して新しい千年紀を迎えていただけなければならないと考えてございます。
 思い起こせば平成七年十二月六日でありますけれども、この議場で激しい知事選挙を終えて知事就任後初めて私は、どの地域にある人も、どんな立場にある人も、すべての県民の皆さんが和歌山県に住んでよかったと言えるぬくもりのある和歌山県を築くことを究極の目標として全力を挙げて県政に取り組んでまいりたい、そういう決意を申し述べたわけでございます。自来、開かれた県政を実現するためのさまざまな取り組みを進める一方で、基盤整備、産業振興、福祉対策など、二十一世紀の故郷(くに)づくりを着実に推進してきたつもりでございます。
 しかしながら、議員も述べられましたように、バブル経済崩壊後の出口の見えない経済不況、二十一世紀を目前にした世紀末のさまざまな社会不安は本県において例外ではございませんで、各般にわたり断腸の思いに駆られる出来事も数多くあったわけでございます。
 しかし、こうした中にあっても、明るく元気な和歌山県を取り戻し、次の世代に輝かしいふるさとを引き継ぐために、私は県民の皆さんとともに心機一転して元気を出して故郷(くに)づくりを進めようと、元気宣言を行ったところでございます。本年四月から開催する南紀熊野体験博もぜひ成功させて、これを実のあるものにしてまいりたいと考えてございます。
 私は、まことを信条に、勇気を奮い、身を挺して県政の運営に当たり、輝く和歌山県の新時代を築いてまいりたいと考えてございます。馬頭議員からは、高村光太郎の「必死の時」との名詩のご披露がございました。趣は異なりますけれども、私も時折、孔子の言葉「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず」、この言葉を思い起こしております。とりわけ苦難なときであります。「勇者は懼れず」の気概を持って苦難を切り開いていきたい、そのように考えてございます。
 次に、金融問題に関するお尋ねであります。
 我が国経済は、平成九年度に二十三年ぶりにマイナス成長を記録いたしまして、金融システム面におきましても、都市銀行や長期信用銀行までが経営破綻するという従来では予想もできなかった事態が起こったわけでございます。そういった中で、本県におきましては阪和銀行、県商工信用組合と、短期間に田辺を発祥の地とする金融機関の破綻が相次いだわけでございます。このことによって田辺以南では合計十八店舗が消滅することになり、地元中小企業の方々の利便性や資金繰りには大変厳しい状況があるものと考えてございます。
 県といたしましては、特別対策資金融資制度の創設、不況対策特別資金の拡充などにより取引中小企業者に対して可能な限りの資金繰り支援を行っているところでございまして、平成十一年度も引き続き取り組むこととしてございます。
 また、先ほどご指摘がございました整理回収銀行の回収につきましては、基本的には返済意欲のある債務者に対しまして、状況に応じ個別相談で対応していると聞いてございます。
 なお、整理回収銀行につきましては、本年四月に住宅金融債権管理機構と合併をして整理回収機構に再編される予定となってございます。今後、整理回収機構の活動方針などにも十分関心を持って対応してまいりたいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、地元中小企業者が生き残れる配慮が必要でありまして、県といたしましても、今後とも金融対策に努力をしてまいりたい決意でございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 金融問題のうち、県信のこれからについてお答えします。
 県商工信用組合につきましては、議員お話しのように、事業譲渡に伴う中小企業者の手形決済など、資金繰り対策はこれから重要な場面を迎えると考えております。県といたしましても、地域の中小企業の方々が厳しい状況に置かれていることを十分に踏まえ、商工金融課及び各振興局に設置している金融相談窓口において積極的に相談に応じ、県信対策特別資金などの制度融資を活用するとともに、信用保証協会を初め各金融機関に対しても最大限の協力を要請するなど、県信の貸出先ができるだけ他の金融機関に移行できるよう支援してまいりたいと考えております。
 新たな信用組合の設立につきましては、具体的な相談があれば地元中小企業者の現状及び中小金融機関の必要性を十分踏まえた中で対応することになりますが、法に定められた要件の適否、早期是正措置における自己資本比率の確保、また全国的に信用組合の経営破綻が続いている状況において、現在進行中の金融システム改革に対応した健全かつ永続性のある金融機関として経営の見込みがあるかどうかなど、厳しい条件もあり、さまざまな観点から検討することが必要になると考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 少子化問題に係る子育て支援と子づくり支援についてでございます。
 少子化の進行は、将来の我が国の社会経済の根幹にもかかわる深刻かつ緊急な課題であり、国においても平成十年版の「厚生白書」や総理大臣が主宰する少子化への対応を考える有識者会議が昨年十二月に出した提言において、若い世代が結婚や子育てに夢が持てる社会を築いていくための環境整備が必要であるとされております。
 若い世代が結婚しない、あるいは子供を産まないという背景にはさまざまな要因がありますが、仕事と子育ての両立が難しい、子育ての経済的、精神的負担が増加しているなど、結婚や子育てによって失うものが大きいと感じられるようになってきていることが指摘されております。
 こうした中で、少子化対策については、保健福祉サービスの充実といったことだけではなく、女性の自己実現を妨げている現在の男女の固定的な役割意識の見直し、職場優先の企業風土など働き方そのものの見直しなど、成熟社会に至った我が国の家族、社会全体のあり方にもかかわる大変大きな問題であります。
 県におきましても、平成三年の議員のご指摘を受け、子育て中の方々や有識者の方々のご意見も伺いながら喜の国エンゼルプランを取りまとめ、平成九年度からの十年計画で、低年齢児保育など保育サービスの充実や子育てに対する相談体制の整備、子育てに対する経済支援などを進めているところです。
 しかし、このプランを実効性のあるものにするためには、推進に当たって、ご指摘のような若い世代を含めたさまざまな方のご意見を伺うことが重要であり、子育て環境づくり推進協議会においても若い男女を積極的に委員として選任するとともに、啓発の方法なども工夫しながら、若い世代が結婚や子育てに夢が持てるような環境づくりを進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 馬頭議員にお答えいたします。
 新白浜空港の二点の問題でございます。
 まず観光和歌山の発展へ、国内外のネットワーク化というご質問ですが、南紀白浜空港は平成八年三月にジェット化開港して約三年が経過しておりまして、現在、滑走路の二千メートル化工事を進めているところでございます。また、県外におきまして、観光キャンペーンとあわせ、南紀白浜空港の利用をPRするなど、空港の利用促進に努めているところでありますが、新規路線の開設につきましては地域の活性化を促進する上で必要不可欠なものと認識しており、今後もさまざまな機会を通じて航空会社に働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 また国外については、いずれも韓国でありましたが、新空港開港以来五回の国際チャーター便運航が行われております。このような実績の積み重ねと滑走路の二千メートル化を踏まえ、さらなる運航先拡大の可能性を探ってまいりたいと考えております。
 二点目の、新空港の機能を高めよとのご質問でございます。
 現在、先ほど申し上げましたように、二千メートル化の工事を行っておるわけでございますが、この滑走路の二千メートル化により、今後予想されます中型機の運航について万全を期すためには、議員ご指摘のターニングパッドが必要となることから、現在、関係機関と協議をしつつ検討を進めているところでございます。
 また、国際化に対応するため空港に出入国機関をとのことでございますが、現在は国際チャーター便が運航されるたびに国から職員を派遣していただいております。現状ではこうした方法によらざるを得ないと考えておりますが、将来、本格的な国際路線が運航されるような状況となった場合には関係機関に出入国機関の設置を要望していく必要があると考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長尾崎武久君。
  〔尾崎武久君、登壇〕
○農林水産部長(尾崎武久君) 馬頭哲弥議員ご質問の、農業振興への提言についてお答え申し上げます。
 議員お話しのとおり、農業は環境問題と深くかかわりがございまして、その中でも土壌は農業生産の基礎でございまして、生産力の向上、農業経営安定のためには土づくりによる元気のある土壌の維持増進を図ることが最も重要であると認識してもございます。このため県といたしましては、農業団体とともに土づくり対策協議会を設置し、毎年十月を土づくり月間と定めまして、ポスターの配布などの啓発活動に取り組むとともに、堆肥製造施設の設置に対する助成なども行っているところでございます。
 しかしながら、原材料の確保の困難性、堆肥の低コスト化、施設の周年利用などの多くの課題がございます。今後、有機農業を進めるための土づくりにおきましても、家畜ふん尿や食品残渣などの各種有機物を原料として使用することにより、環境も土壌も改善され、一石二鳥と考えております。
 なお、農林水産総合技術センターでは、十一年度元気予算により各試験場の総力を結集して有機物のリサイクルと施用の省力化技術の開発に取り組むこととしてございます。一方、国におきましても、農政改革大綱の中で自然生態系と調和した持続的な農業の重要性が位置づけられているところであり、ご提案の件につきましても、議員お話しの趣旨を踏まえ、関係機関、関係部局とも協議しながら研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長中村協二君。
  〔中村協二君、登壇〕
○企画部長(中村協二君) 馬頭議員にお答えをいたします。
 コンピューター先進県を目指した情報化の推進について、情報リテラシーの向上と人材育成とバックアップ策についてでございます。
 議員お話しのとおり、情報化につきましては、基盤整備の促進とともに人材の育成が重要な課題であると考えております。したがって、県の長期総合計画や地域情報化推進計画におきましても高度情報化社会の形成を施策の柱といたしまして、産業、医療福祉など幅広い分野で情報化を進めることといたしております。中でも、年齢や性別のいかんを問わず、情報リテラシーに富む人材の育成は、それぞれの分野における情報化の進展を左右するものであり、民間の人材育成支援も含めまして、各分野で鋭意取り組んでまいりたいと存じます。
 現在の急速な情報化の進展の中にあって、さまざまな分野での情報化への取り組みが急務でございまして、公的関連機関におきましてもそれぞれの諸施策を実施いたしているところでございます。議員ご提言のバックアップ策の観点にも配意いたしまして、今後とも関係部局と連携しながら人材育成に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 学校における情報教育についてお答え申し上げます。
 情報化社会における教育のあり方につきましては、系統的な指導を通して子供たちに情報活用能力を身につけさせることが極めて重視されるべきであると考えております。
 ご指摘のように、本県の地理的条件のもとでは、学校教育の充実を図る上で、情報通信ネットワーク等の活用は極めて大きな役割を果たすものと考えております。
 生徒の学習用コンピューターの整備状況は、現在、県立学校で約九〇%、小中学校は約五〇%となっております。インターネット等の導入とあわせ、鋭意情報教育の基盤整備に努めているところであります。
 こうした中で、過日開催いたしました研究発表会では、環境問題等についての情報の収集、授業の公開やリアルタイムでの意見交換、海外の姉妹校との交流、天文台の望遠鏡を遠隔操作しての天体観測など、インターネットを活用したさまざまな実践が報告されております。また、今春から和歌山市と橋本市の合計十五校で衛星通信ネットワークの活用に関する研究開発に取り組むことといたしております。
 教育委員会といたしましては、こうした取り組みをより幅広く推進できるよう教員の指導力の向上を図るとともに、子供たちのさまざまな直接体験を重視しながら、知識、技能だけでなく、今後の新たな情報化の進展に対応できる豊かな創造力と感性を兼ね備えた児童生徒の育成に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 再質問がございませんので、以上で馬頭哲弥君の質問が終了いたしました。
      ──────────────────
○議長(下川俊樹君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
      ──────────────────
○議長(下川俊樹君) 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
      ──────────────────
  【日程第三 請願付託】
○議長(下川俊樹君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
      ──────────────────
○議長(下川俊樹君) 次に、お諮りいたします。三月三日から三月五日までは、常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、三月三日から三月五日までは休会とすることに決定いたしました。
 なお、各常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
○議長(下川俊樹君) 次会は、三月八日再開いたします。
      ──────────────────
○議長(下川俊樹君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午前十一時三十二分散会

このページの先頭へ