平成10年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(中山 豊議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番中山 豊君。
  〔中山 豊君、登壇〕(拍手)
○中山 豊君 けさ、議場に来て議席に着こうとして前を見たら、もう幹部職員が一人も欠けずに座っておられる。中でも、知事の健康な姿に接しながら、ふと思ったところですが、十二月議会というのは、西口知事が選挙に当選され知事に就任されて、ちょうど三年目を迎える議会ですよね。そのとき、知事が議会へ出てこられてされたあいさつに、振り返ってみれば、和歌山市内の投票結果から見たら西口知事にとっては大変厳しい選挙だったという認識を持ってご発言されたに違いないであろうということを思いながら、初心を忘れず頑張ってくれと言うたことを今のようにして思い出したところであります。皆さんも、そういうふうにお受けとめいただいたのではないかと思います。副知事を辞して、知事選挙とはいえ、一年県内を歩いてみた、その結果わかったことだけれどもというふうにして申されたことは、きのうのように思い出されてなりません。その気持ちを常に大事にしながら初心を忘れず頑張ってくれとこの壇上で申し上げたことを鮮明に記憶しているところです。
 そういうことを思いながら、県下の市町村のやる気を引き出し、それを激励するという立場と、さらに国の出方を常に待つのではなくて、和歌山県の独自性を発揮するような県政を創造してもらいたいという願いを込めて、以下、通告に基づき四点にわたってご質問を申し上げてまいります。
 一つ目は、食料・農業・農村基本問題最終答申に関連して、新農業基本法が年明けの国会で提案され審議されることになるであろうと見通しながら、以下質問を続けてまいりたいと思います。
 ことし、台風七号及び十号で受けたダメージは極めて大きかった。これを通して、地域農業がここまで弱体化しているのかということを改めて思い知らされた感じであります。稲が倒されたまま刈り取りもされずに放置されて、穂から芽を出し、刈り取った後にひこばえというのが生えてきて、田のもを緑に覆い尽くしてしまうという状況があります。倒れた稲の株から芽が出てきて、ひこばえのような形で生えているのと同時に、倒れた穂先のもみから芽を発して田植えをされたように田んぼが緑に包まれるという、こういうふうな状況があります。ある田では、刈り取りもされないで、雨が降り、気温が高くなるところから、もみが発酵して酸っぱいにおいが田んぼからにおってくるということさえあったようであります。こんな田んぼを至るところに見受けることができました。
 これらの実態をつぶさに見るにつけて、折しもの食料・農業・農村基本問題調査会の答申に目を流してみたわけであります。実態に照らして思うところを幾つか申し上げたいのであります。
 調査会の会長・木村尚三郎は、議論が大詰めに至った本年五月段階の会議で、いざというときに我々はどうやって自分の身を守るのか、その緊迫感が足りないとして、我が国の食糧安全保障政策の今後のあり方に苦言を述べたと、「農業新聞」で見ました。答申の食糧政策についての目標は、食糧の安定的な供給を確保するとともに、我が国農業の食糧供給力を強化するとしています。よく見れば、国内生産と輸入と備蓄を適切に組み合わせて食糧供給をしていきたいという考えのようであります。国内生産と輸入と備蓄を適切に組み合わせるということであって、世界の食糧需給が中長期的には逼迫すると見ながら、国内生産の生産拡大目標数値を答申では明らかにされておりません。目標数値がないところに具体的な振興策は望めないのではないかと見たわけであります。いわば、これほど弱体化した地域農業を立て直す策は答申を見る限り望むべくもないというふうに私は見たわけであります。それが一つ。
 二つ目は、農村中山間地の対策について、極めて明確でない答申の内容とお見受けしたわけであります。翻って和歌山県の農業を考えるときに、この視点から目を離すわけにはいかないわけであります。さきにも述べたとおり、安定した食糧供給を国産食糧と輸入食糧と組み合わせて確保するというだけで、国内生産体制をいかにするのか、姿が鮮明に出ていないわけであります。農地の総量が将来幾ら必要なのかという基本的なところが浮かび出されていないわけであります。国内生産量が数値として出されてこそ、それに必要な農地面積が割り出されていくというものでしょう。そこが不明確だから、その影響を最も強く受けるのは中山間地域と見なければなりません。
 こうして見ると、和歌山県農業は、新農業基本法に何を期待していいものなのか、明確でないわけであります。一九九〇年の農業センサスを見ても明らかなように、農地放棄率──耕しもしない、物をつくらないという、農地を放棄している率は、中山間地域に多く進んでいるというふうにあらわされておるわけであります。もちろん、この答申を得て、政府は新農業基本法の具体化に取り組まれるのであろうけれども、答申を見る限りでは、以上申し上げたとおり、大変心もとない話であります。県は、この最終答申を受けて、先月、農政フォーラムを開くなど、それなりの姿勢をうかがわせる取り組みもされていましたけれども、何か期待するものがあったのでしょうか。
 新農基法が本県農業にとってどうなのか。期待するとしたら、どういうことなのか。冒頭に述べた、地域農業の弱体化した状況に再建の望みを持つことができるのかどうか。このまま推移すれば、木村会長が申されているとおり、いざというとき我々はどうやってみずからの身を守るのか。言いかえるならば、どうやって食っていけるのか、食糧についての不安をどう取り除いていくのか、本県農業の基本に係るところについてお伺いしたいわけであります。
 次に、環境問題として通告しているわけですが、海を埋め立てたり山を削ったりするたぐいの問題とは異なり、ここで取り上げようとするのは、倫理的、道徳的というか、人間のマナーにかかわる観点からの発想で提起をしてまいりたいと思います。
 現状というか、実態から申し上げましょう。まず一つは、公営の釣り場ではない、だれもが何の制限もない釣り場でのことであります。残ったえさを放棄したり、釣り途中にこぼしたえさの片づけをしないで、それが腐って周辺地域に悪臭を充満させるというふうなこと。釣り糸をみだらに放置し、野鳥の足や体に巻きついて生命を絶つ原因ともなっているような日常茶飯の姿、弁当の食べ腐しやナイロンの袋をみだりに放置したり、あまつさえ係留している船舶に用便をするなどという、考えも及ばないようなことが起こっているようであります。これは、海に係留されている船にだけ許されていいものではないと思います。
 次に、夏場に多くの人が山間地の渓流に涼を求めて入ってきます。ここでも、さきに述べたようなことがなされているわけであります。これのみか、民家の庭や軒先に確保している薪を抜き取って炊飯に利用したり、あまつさえガスボンベを抜き取って使ってそのまま放置して帰るなどという、とんでもないことが起こっているわけであります。
 十月十日、貴志川町で貴志川清流サミットが開かれました。これは以前に開かれた全国ほたるサミットの発展などと同じものでしょうが、貴志川流域にホタルの飛び交う環境復元を願ってのことと受けとめたわけであります。やがて、ここに結集した関係自治体の皆さんは力を発揮していくことになるのでしょうけれども、これら自治体や住民の努力を支援する立場から、県は、環境基本条例をより中身のあるもの、実効性のあるものにしていくための努力をすべきではないか。そういう県の努力が関係自治体の皆さんのやる気を起こさせ、地域住民の県政への期待と結集力を強めていくことになるのではないかと思われますので、そのあたりに踏み込んだ答弁をお願い申し上げたいと思います。
 次に、道路問題であります。例によって、欠かさず取り上げる道路問題の一つであります。
 四百二十四号は、さきの議会で厳しく問いただしました。用地問題に話がつき、契約さえ済ましているのに、何ゆえ着工できないのか。その後の取り組みをつぶさに見ていくことにして、今回は県道海南金屋線整備についてだけお尋ね申し上げます。
 先般、四百二十四号整備につき建設省に陳情を申し上げた折、金屋の町長が、「中山はん、有田の方はかなり進んでまいりました。私たちは、彦ケ瀬を越えて海南、和歌山へとおのずから足が向くのです。おかしなもので、同じ郡内でも海南の方が近くに感じるので、これをしっかりやってもらいたいんや」と申されていました。そんなものかなと思った。有田川の上流域の住民は、有田郡内の湯浅あるいはまた有田市の方よりも、むしろ山を越えて海南の方へおのずから足が向くのが習慣になっているというお話のようです。有田地域の県道海南金屋線、四百二十四号線の整備促進率に非常に高いものがうかがえるのは、そういうものの反映かなと思ったりするわけであります。
 先般来、重根バイパスについて、地元での説明会を持たれたと聞くわけですが、その進みぐあいと今後の取り組みについて詳しくお述べいただきたいわけであります。
 あわせて、さきに申し上げたことがあるけれども、別所、田津原、重根と、朝の出勤時に交通渋滞が激しく、勤め人は始業時まで勤め場所に入れないというような苦情が寄せられているわけであります。今日、交通渋滞に巻き込まれておくれるなど信じられないと、勤め先の管理者、上役からよく言われると言うわけです。その時間帯の交通規制をと言われて関係機関に働きかけてみたこともあるけれども、これは大変困難だと、こういうお話のようであります。これらの事情を思いはかればはかるほどに、この道路の整備促進が急がれなくてはならないと思うわけであります。
 どう見ても時間規制が難しいのであれば、さらに拍車をかけてこの道路の整備促進方を求めておきたいのですが、その事情なり決意のほどをお聞かせください。
 最後に、地場産業の廃棄物処理の問題についてお尋ね申し上げます。
 一年前の清掃法いわゆる廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正に伴い、特にダイオキシン対策についての規制が厳しくなったことに関連して、以前にも日常家庭品業者の自己焼却によりダイオキシン被害を受けている婦人の問題を取り上げたことを思い出しました。これに対する取り組みを要請したことがありました。ともすると、一般ごみ処理に関心が偏り過ぎた感は免れなかったことを反省しながら、きょうは特に地場産業からの廃棄物処理についての県の対応をいま一度確かめておきたいと思います。
 地場産業、中でも日常家庭品業界は、専らこれの対策に明け暮れているというのが実態ではないでしょうか。平成十四年の規制の実行に対応するため、廃棄物排出を減量し、リサイクルを追求しつつも、処理場の建設、最終処分場の確保等、業界だけではどうなるものではないように思われるようなお話をよく聞かされるわけであります。対応する自治体の問題でもあるでしょうが、県としてもこれが業界の活性化にブレーキがかかるようなことがあってはならないと私は思います。対応する自治体の問題のみならず、県はどう支援をなさろうとお考えなのか、お聞かせください。
 とはいえ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律が改正され、本年十二月一日施行のことゆえ、当局に実態把握──すなわち、どんな問題が具体的に存在し、発生するのか、あるいはまた発生しようとしているのか、把握されているところにないのではないかと思いますから、今回は提起にとどめておきます。業界の活性化のため支援方を求めるにとどめておきながら、以後、この問題を重ねてお尋ね申し上げ、地場産業の活性化にいささかも陰りを来すことのないようにこの問題が正しく解決されることを望み、お取り組みをお願いして、私の第一回目の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの中山豊君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長尾崎武久君。
  〔尾崎武久君、登壇〕
○農林水産部長(尾崎武久君) 中山議員にお答え申し上げます。
 新農業基本法についてのご質問でございますが、内閣総理大臣の諮問を受けて検討を進めてきた食料・農業・農村基本問題調査会は、平成十年九月十七日に最終答申を行いました。国は、この答申を受け、新農業基本法案を来年の通常国会に提出し、あわせて食糧自給率の目標、品目別の生産努力目標、農地面積の指標等の検討を進めると聞いてございます。
 中山間地域が大半を占める和歌山県といたしましては、最終答申において中山間地域の維持保全が新しい視点として取り上げられたことは意義深いものであり、平地地域とは異なった観点からの施策の構築を国に対し要望したところでございます。
 また、和歌山県の地域農業の主力である果樹、野菜、花卉等の生産振興にかんがみ、国内農業生産の維持拡大を図る上で、政策目標の設定に当たっては、単にカロリーベースでの自給率設定にとどまらず、園芸作物の振興にも十分配慮されるよう、あわせて要望したところであり、今後とも環境と調和した収益性の高い農業の推進に一層努める所存でございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 中山豊議員ご質問の、環境問題における良好な環境条件を守るための工夫についてお答え申し上げます。
 健全で恵み豊かな環境を適切に保全し、将来の世代に引き継いでいくことは、私どもの重要な責務であります。このため、県では、自然と人間の共生の確保を基本理念の一つとした和歌山県環境基本条例を制定いたしました。この条例をより具体化し、実践するために和歌山県環境基本計画の策定を進めておりますが、この計画が実効あるものとなるためには、県民の方々の参加と協力が重要であります。
 このような趣旨のもと、県では新県民運動感動和歌山21の一環としてネイチャーフレンドシップ運動を展開し、自然景観地でのごみの持ち帰りや草木の乱獲の禁止を訴えるため、パンフレットやごみ袋等を配布し、利用者のマナーの向上に取り組むとともに、魚釣り場におけるマナーについても掲示板の設置を行う等、意識向上に努めているところであります。
 今後とも、自然と触れ合い、自然に親しむ思想の普及啓発について、関係部局や市町村と連携しながら、より効果的な対策を進めていきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 中山議員のご質問にお答えいたします。
 県道海南金屋線のうち、特に重根バイパスについてのご質問でございますけれども、この重根バイパスにつきましては、測量設計が終わり、用地測量も一部を残し完了いたしましたので、十一月十六日から四回にわたり、地元の関係する方々に工事や用地買収の進め方などについて説明を行ったところでございます。この結果、事業についておおむね了解されましたので、早期に用地買収に着手してまいりたいと考えております。今後とも事業進捗に努力してまいります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番中山 豊君。
○中山 豊君 二、三点、ご要望申し上げたいと思います。
 新農業基本法がやがて通常国会に提案をされてくるであろうということとのかかわり合いでのお話をいただいたわけですけれども、その中でも特に中山間地域農業に、答申を見る限り期待できるような趣のご答弁もありました。どんな基本法が提案されてくるのか見守りながらも、特に、冒頭に申し上げましたように、国の施策を待つのではなくて、それを創造的にどう発展させるかというふうな立場で和歌山県農業の取り組みに今後ともご尽力をお願いしたいというのが一つであります。
 二つ目は、環境問題についてのお話です。あれこれと努力はなさってくれているんだろうけれども、実態として実効が上がっていないということを僕はお示しをさせてもらったわけであります。そういうことにかんがみて、一つ踏み込んで、掲示板などを設置をしてというお話もありましたけれども、人の目の届かないところで人間が仕方もないようなことをしでかすというのは、まさに人間の道徳性、倫理性の欠落している部分のあらわれだと思うんですね。そういうふうなことなれば、その人たちのおのずからの行動に期待するということではおぼつかないと思いますので、特にそういうふうに汚され、あるいはまた乱される地域を特別に調査をしていただいて、そういう地域では、掲示板もさることながら、現地を見回るというのかな、監視をして回る、ご指導していただくということにかかわって啓発をしてもらうという対策について、市町村などと連絡を取り合いながらやってみてはどうだろうか。さらには、予算の関係も伴うてくるので踏み出しにくいとするなれば、ボランティアでご協力をお願いするという方法もあっていいのではないか。こういうふうな点を申し上げて、ご検討をお願い申し上げたいと思います。
 やがて来年は熊野体験博だということで全国にアピール、発信をしているわけなんですけれども、裏へ回ってみたら仕方もないようなところもうかがわせてもろうてきたよと、こういうふうな恥ずかしい実態だけはつくりたくないという気持ちからの問題提起でもあります。裏も表もきれいだった、やっぱり和歌山県だったと言うてもらえるような状況をどうつくるか、創造するかと、こういうふうな意味合いで僕の提起を受けとめていただきたいなと思います。
 さらに県道海南金屋線については、用地の問題で買収にかかれるというふうなお話を伺ったわけですけれども、まだそんなには簡単にいくという状況でもなかろうと思う。しかし、道路の問題というのは用地問題が解決したらもう九十何%か解決したようなものだとよく聞かされるわけなんですけれども、用地問題のあれこれについては、ただ単に議会で、早くやれ、早くやれということを当局にお願いするだけが僕らの立場ではありません。地域の発展と活性化のためには当局の皆さんと力を合わせて地域の皆さんにご協力いただく、こういうこともあえてお約束申し上げながら、促進方をお願い申し上げたいと存じます。
 以上です。ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中山豊君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十四分休憩
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