平成10年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時三分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(下川俊樹君) この際、知事から発言を求められておりますので、これを許可いたします。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 議長のお許しをいただき、一言申し上げます。
 去る二十五日、本県選出の世耕政隆参議院議員が逝去されました。
 先生は、昭和四十二年、衆議院議員に初当選、昭和四十六年には参議院議員に当選され、以来五期二十七年にわたり国政に尽くされてまいりました。その間、自治大臣、裁判官弾劾裁判所裁判長などの要職を務められるとともに、和歌山県の発展にも大いに尽力賜りました。
 また、近畿大学総長として、我が国の教育、文化の分野においても大きな足跡を残されました。本県におきましても、近畿大学生物理工学部の開学など、数多くのお力添えをいただきました。そのご功績はまことに偉大であり、これからも大いにご活躍されるものと期待いたしておりましただけに、大変残念なことでございます。
 先生の長きにわたるご功績に対し、百八万県民を代表いたしまして心から感謝を申し上げますとともに、衷心よりご冥福をお祈りいたします。
 以上であります。
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  【日程第一 議案第百八号から議案第百三十七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百八号から議案第百三十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 44番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 ただいま西口知事からもお言葉がございましたが、和歌山県選出の世耕政隆参議院議員のご逝去に対し、長年のご活躍に心から敬意を表し、心からお悔やみを申し上げる次第でございます。
 以下、通告に従いまして一般質問を申し上げてまいります。
 まず最初に、工場等制限法についてであります。
 九月七日付毎日新聞には、長年、大都市圏に工場や大学の新増設を制限してきた工場等制限法が抜本的に見直されることが報じられております。それによりますと、この法律は首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律と近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律の総称で、昭和三十年代の高度経済成長期に成立しました。目的は首都圏と近畿圏への人口と産業の過度なる集中を防止するためでありまして、首都圏は東京二十三区と横浜・川崎両市の約半分、近畿圏は大阪市の大部分、京都と東大阪両市の一部などに制限区域を設け、一定規模以上の工場、大学などの新増設を原則禁止といたしました。
 ところが、今日、我が国を取り巻く社会経済環境は大きく変化しました。そこで、産業界や大都市からの工場、大学を大都市圏に戻せの声に押されて、現在国土審議会が法律の抜本的な見直しを審議中で、今年度中にも結論を出すとのことであります。
 そもそも、明治以来、我が国は中央集権体制のもとで富国強兵を目指して、また戦後は平和国家として経済原則を最優先させ、大都市に産業の過度の集中を行ってまいりました。その結果、確かに我が国は世界に冠たる経済大国になり、不況とはいえども、総じて国民も比較的豊かに暮らしております。しかし一方、国内ではとんでもないアンバランスも生んでしまいました。過疎・過密の問題であります。この問題は人口の増減だけではなく、富の再配分や都市文化の優越性、人が人らしく生きるための環境など、さまざまな課題を抱えており、しかも阪神・淡路大震災で過密の恐ろしさをまざまざと見せつけられても、依然、過疎・過密の傾向は変わらないのであります。
 私たち地方の政治家が地域振興を叫び、地方自治体が過疎対策に力を注いでいるにもかかわらず、なかなか過疎はとまりません。それは我々の力不足というだけではなく、よく考えてみると過密を抑制する方法がないからであります。ただ一つあるのが、実はこの工場等制限法であります。狭い国土に人以外に有効な資源のない我が国において、繁栄を求める道は技術を生かした物づくりしかありません。その富を生む工場を都会にばかり集めて、地方分権など決してあり得ません。
 そこで、この見直し問題に対し和歌山県としていかに取り組むか、知事よりお聞かせいただきたいと思います。
 次に、地域防災計画についてであります。
 今議会では、私のほかに二人の議員の方々から防災関連の質問がありました。お二人に敬意を表し、今後とも議員各位の活発な議論を期待する次第でございます。
 しかしながら、残念なことに、あの六千人余の死者と何万人という負傷者、莫大な被害を出した阪神・淡路大震災でさえも、既に世間では忘れ去られようとしております。本県ではあの南海道地震からはるか五十年余も経過し、しかも時代は情報化社会を迎えて便利になった反面、大量の情報が流れる中で、何が正しく何が大切か、かえってわかりにくくなっている状況にあります。それゆえ、行政の責務はまことに大きく、万全の備えをしながら常に世を覚せいし続けなければなりません。
 東大地震研究所の阿部勝征教授の言われるように、政治家や行政担当者が地震の本当の姿を知ったらそのために何万人という人々の生命が救われるということを肝に銘じ、転ばぬ先のつえをつき続けてくださることを念じつつ、以下四点について質問いたします。
 まず第一に地域防災計画についてでありますが、全体的な印象として、以前のものに比べて随分改善され、現実的なものとなっております。しかし、依然実行性の乏しいところがあり、特にせっかくシミュレーションを行っているにもかかわらず、被害予測についての記述があいまいでわかりにくい表現になっております。最悪の事態を想定し、それに基づいて最大限の対応策を準備しておくことは、まさに危機管理の原理原則であります。ですから、被害予測を積極的に明らかにすることは、地域防災計画の実行性の担保となるだけではなく、問題の重要性を県民の皆様にお知らせし、日常を優先するのか、それとも危機を優先するのかといった究極の選択をゆだねるという意味においてもぜひ必要であると考えます。県としてどのようにお考えでしょうか。
 関連して、二つ目は予防施策についてでありますが、被害予測が明らかでないゆえ、むしろ当然の帰結ではありますが、ABCという重要性認定制度の導入はあったものの、被害予測に即した予防施策となっていないのではないか。余りにもやらなければならないことが同列上に多過ぎて、どれを優先させてやるのかはっきりしません。少ない費用で最大限の効果を上げるためには、従来の政策決定理由に新たに防災の視点も加えるなど、より一層精度の高い政策決定システムの導入が必要と思いますが、何と考えておられるのでしょうか。
 さらに三つ目は、県地域防災計画に基づき策定されるべき市町村防災計画の見直しは進んでいるのか、またその内容は充実したものとなっているのでしょうか。
 四つ目は、日々刻々変化し続ける防災を取り巻く環境を読み取り、防災計画の見直しを図りつつ、突発的に起きる災害に迅速に対応するためには広く知識や経験を積んだ、とっさの判断のできる防災のエキスパートの養成が必要となります。加えて、防災担当部局の権限を強化し、防災関連政策を優先させ、責任の所在を明確化する必要があると考えますが、どうでしょうか。
 最後に、合併処理浄化槽の普及についてであります。
 法律では、生活排水の処理は市町村の事務であることがうたわれております。しかし、公共下水道の普及を含め、汚水衛生処理率の低さを県のみに責任があるかのごとき議論を聞くのは、全くもって心外であります。その意味で、市町村長よ頑張れと申し上げたい。同時に、市町村を指導監督しなければならない立場の県当局にも、同様に頑張れと申し上げなければなりません。
 先般、大井部長より合併処理浄化槽の普及の大切さが述べられましたが、県下の汚水衛生処理率向上のためにも、合併処理浄化槽の特性を考えていかに普及させるべきか、県の方針をお示しいただきたいと思います。あわせて、昨年度の設置基数、補助実績、それぞれの累計についてご報告いただきたいと思います。
 さて、その普及に大きな期待がかかる合併処理浄化槽ではありますが、どんな機械や設備でも、当然のことながら、完全永久のものはありません。やはり、適正に設置されているのか、ちゃんと機能しているのか等々、チェックをしなければなりません。
 そこで、浄化槽法では、いわゆる施主において、第五条において施工前に設置の届け出を、同法施行規則第三十六条第一項において使用開始の日から三十日以内に使用開始の報告を、同法第七条において使用開始後六カ月を経過した日から二カ月の間に水質に関する検査を、同法第八条において保守点検を、同法第九条において清掃を、同法第十一条において毎年一回水質に関する検査をしなければならないこととなっております。しかしながら、浄化槽法が一般的に知られていないことや罰則の軽さなどから、このことがなかなか守られていないと聞きます。
 そこで、本県ではこれらの各種検査の実施率は果たしてどれぐらいなのか、また全国での順位はどうなっているのでしょうか。そして、平成八年には行政監察により指摘も受けましたが、その後どのような改善策をとったのか、また効果が上がっているのか、お答えいただきたいと思います。
 さらに、浄化槽設置後、つまり行政の手を離れて後、増改築が行われたり建物の使用目的が変更されたため浄化槽を改修しなければなりませんが、放置されている例が散見されます。どのような指導及び取り締まりを行っているのでしょうか、お答え願います。
 以上、積極的なご答弁を期待し、私の質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの中村裕一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 中村議員にお答えをいたします。
 近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律についてのご質問でございます。
 本法律は、京阪神大都市部を中心とする工場等制限区域において、大規模な工場、大学などの新設あるいは増設を制限し、既成都市区域への産業及び人口の過度の集中を防止することを目的として制定されたものでございまして、地方への新たな産業立地などに寄与してきたところであると考えてございます。
 議員ご指摘のように、大都市地域の自治体、経済界では、このような施設の郊外やあるいは地方への分散に伴う遊休地の発生など、いわゆる空洞化現象などからいたしまして、この法律の廃止を含めた見直しについて議論されているところでございます。
 本県といたしましては、本法律が本県の産業集積あるいは高等教育機関の立地を促進し、地域の雇用や学習の場を確保する上で重要な役割を果たすとともに、国土の均衡ある発展に大きく寄与するものであると認識をしてございます。国を初め、国土審議会等、関係機関に対し、本制度が引き続き維持されることを要望しておるところでございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長藤谷茂樹君。
  〔藤谷茂樹君、登壇〕
○総務部長(藤谷茂樹君) 中村議員にお答え申し上げます。
 地域防災計画に関して、まず被害予測についてでございますが、災害予防計画の策定及び災害時の的確な応急対応を図ることを目的に、前もって被害を予測し、その結果を県地域防災計画に反映させております。
 被害予測は、過去の事例を参考として統計的に人的被害や建物被害など、それぞれの被害に関する傾向値を示すものであることから、県地域防災計画では一キロメートル四方ごとの被害の発生率等といったような形で、被害の種別ごとに特に大きくなる地域等を記載しております。
 予測結果を反映させた県地域防災計画につきましては、報道関係者を含めて広く防災関係者に配布して周知を図っておりますが、県民の方々への周知につきましては市町村と調整しながら進めてまいりたいと存じます。
 次に予防施策についてですが、河川や地すべり、急傾斜地、海岸など、それぞれの部門において防災上の対応が必要な箇所を地域防災計画に位置づけて、年次計画に基づき、順次防災事業を実施しているところでございます。今後も、事業の防災上の効果を考慮しつつ、地域の意見や地元市町村、関係省庁とも協議しながら予防施策を効率的に実施してまいりたいと存じます。
 次に市町村防災計画の見直しについてですが、阪神・淡路大震災後の国の防災基本計画の修正を受けて、平成七年六月に県内を一巡して市町村防災担当課長会議を開催し、初動体制の確立、救援物資集積場所の確保、防災訓練の実施、危険箇所のチェック等々、十八の項目について見直しを指導いたしました。その後も毎年、市町村防災担当課長会議を開催して早期の見直しを指導しているところであります。現在、県下市町村の見直しの状況は、見直し完了が二十市町村、修正協議中が八町村で、残りの二十二町村の大半の十七町村が本年度中に見直しを行う予定となっております。今後とも、県計画と整合を図る中で、県、市町村が一体となって防災体制の一層の整備充実に努めたいと存じます。
 最後に防災エキスパートの養成についてですが、地震、津波、台風、豪雨等、災害の対応は多岐にわたっており、また一たび発生すれば迅速な対応を要することから、防災対策は専門的な知識と習熟を要する業務であります。このため、本県では消防庁等主催の防災安全中央研修会や各種の防災セミナー等に積極的に担当職員を参加させるなど、資質の向上に努めているところであります。
 また、全職員を対象とした緊急参集訓練の実施や防災ハンドブックの配布等を通じて県職員の防災意識を高めるとともに、災害担当週番制を採用して組織全体への防災意識の徹底を図り、災害時に備えて平時から防災体制の構築を推進しているところであります。
 なお、災害時には被害の状況に応じて、副知事を長とする災害対策連絡室、知事を本部長とする災害対策本部を設置して防災対策を効率的に実施することといたしております。
 提案政策の優先性につきましては、昨年から導入した組織横断型予算編成において防災を重点課題の一つと位置づけて推進を図っているところであります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 中村議員ご質問の合併浄化槽の普及についての三点の質問についてお答えいたします。
 まず、県下の汚水適正処理率を上げる上での合併処理浄化槽の役割についてでございますが、現在、河川や湖沼等の水質汚濁の原因として一般家庭から排出される台所や洗濯等の生活雑排水が大きくクローズアップされ、社会的課題となっているところでございます。
 その対策といたしまして、公共下水道や農業集落排水等による集合処理と合併処理浄化槽による個別処理が考えられますが、とりわけ合併処理浄化槽は、下水道並みに高度な処理が可能であることや、また人口が密集していない地域や下水道整備が行き渡るまでの補完として、生活排水対策上適していると考えられます。
 そのため、県といたしましては、合併処理浄化槽整備事業の国庫補助制度あるいは県独自の補助制度についての情報を広報するとともに、本年十月二十日に開催する和歌山の生活排水を考えるシンポジウムでの啓発等、各種の機会をとらえまして合併処理浄化槽の設置の推進を図ってまいる所存でございます。
 次に、昨年度の合併処理浄化槽の設置基数でございますが、三千三百二十三基が新設され、うち二千二百四基が補助によるものでございます。また、累積設置基数は約二万一千基となってございます。
 次に開始届についてでございますが、建て売り住宅のように、設置されてから使用開始までの期間がある等の場合には、使用者から届け出がなされにくい状況にあります。しかしながら、使用開始届は浄化槽の維持管理の始まりを把握するための重要な届け出でございますので、和歌山県浄化槽協会の協力を得て使用者等に啓発を強化してまいりたいと考えてございます。
 次に、浄化槽法第七条、十一条の法定水質検査についてでございますが、平成八年度における本県の七条検査の実施率は九三・一%であり、全国で十五位となってございます。全国平均の六〇・三%を大きく上回ってございます。しかし、十一条検査の実施率は四・九%で、全国で三十四位となってございまして、全国平均の一二・三%を下回っているのが現状でございます。
 次に、保守点検及び清掃の実施状況につきましては、平成九年度まで報告の義務がございませんでしたので把握いたしておりません。しかし、平成十年二月に和歌山県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の改正を行い、平成十年度より浄化槽保守点検業等の実施状況の報告を義務づけましたので、今後把握できるものと考えてございます。
 設置された浄化槽の初期の機能を維持させていくためには適切な維持管理が必要であり、今後より一層浄化槽管理者への周知を行い、受検率の向上を図ってまいりたいと考えてございます。
 最後に、平成八年度の行政監察を受け、どのような施策を行ったか、その結果についてでございますが、平成八年四月から七月にかけて実施されました行政監察で、浄化槽の維持管理の適正化、法定検査の受検率の向上と検査結果に基づく改善指導の実施が指摘されてございます。
 浄化槽の維持管理を適正に行うためには、法定の水質検査──通称「十一条検査」と言われますが──を年一回受けなければならないことになってございます。その実施率は平成九年度末で五・五%と、残念ながら低い状況にございます。そのため、テレビスポットの放送、平成八年度からは「県民の友」による広報、さらに浄化槽協会、清掃連合会、水質保全センターの協力のもとに、パンフレットの配布など啓発を行っているところでございます。
 また、平成十年度から定期検査受検案内状発送事業として、補助合併事業により設置した浄化槽管理者に対して、県合併処理浄化槽普及促進協議会において年三回、はがきによる法定水質検査受検案内状を送付し、受検率の向上を図っているところであります。
 第一回目の発送を八月に行いましたが、発送三千百四十七件に対し申し込みが約七百五十件ございました。今後もこうした事業を粘り強く進め、受検率の向上に努力を重ねてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 中村議員の合併浄化槽の普及の問題のうち、建築確認申請後、変更があった場合どうするのかという問題についての答弁をいたしたいと思います。
 合併浄化槽につきましては、まず衛生上支障がない構造のものを設置しなければならないというふうになっておりまして、建築確認申請時などにこういうことについては審査を行っております。
 議員ご指摘の問題ですが、その後、建築物の改造などを行って、浄化槽の構造が衛生上問題であることが明らかとなった場合には、浄化槽の改造等の指導を行っているところでございます。このような事例を含む違反建築物対策の実効性の確保が図られるように建築基準法が本年六月に改正されまして、一年以内に施行するというふうになったところでございます。
 今後とも関係部局と連携を図りながら、浄化槽を含めた建築規制の適正な運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 再質問がございませんので、以上で中村裕一君の質問が終了いたしました。

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