平成10年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(井出益弘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 通告に従いまして、二つの問題に絞って質問をしてまいりたいと思います。
 まず、介護保険制度の当面する重要課題について質問をしてまいります。
 介護保険法が平成十二年四月一日から施行されることが決まり、現在、保険者となる各自治体ではその準備が開始をされています。介護保険の特徴は三つあると思います。
 第一は、介護を必要とする高齢者の自己決定権を明確にしたことであります。当事者の意見が福祉サービス提供の際に決定権を持つことは、与えられる福祉から権利としてサービスを受けることを制度的に保障されたものであり、今までのシステムが一歩前進した制度となっています。
 第二は、地方分権の試金石とも言える市町村が実施主体となっていることであります。全国に三千余りの介護保険会社ができたのであります。道路を隔てた隣の町のサービスと自分の町のサービスについて大幅な格差が生じないかという危惧はありますが、ある意味では自治体間の競争が生じ、サービスの向上が図られると思います。サービスのおくれている市町村の首長は選挙で落選をさせられるかわかりません。
 第三は、サービスの提供主体を民間などの参入を広く求めている点であります。今までは、サービスを実施するのは行政ないし措置を委託された公益法人という公的部門が中心でありました。介護保険法では、事業者にはほとんどが民間の企業やNPOなどによって占められることになるとされています。このことは、営利、非営利を問わず、民間の創造的なサービスが多彩に登場することになるという意味では画期的であります。それゆえに、公的部門の役割もより一層重要になるとも考えられます。
 介護保険法は、まだ多くの問題点を抱えた法律でありますが、一九八〇年代末から始まった福祉改革の集大成とも言える社会保障制度と福祉制度の構造改革の新たな始まりであると評価をするものであります。私は、豊かで安心できる社会システムの確立に当たって、公的な介護保険は極めて重要な制度であると認識し、介護の社会化の具体化に向けて大きな一歩を踏み出したものとして、この介護保険法を評価する立場から質問をしてまいりたいと思います。
 平成十二年四月の施行に向けて、国と県の支援体制と市町村の施行体制の整備が求められています。とりわけ介護基盤整備は、介護保険制度が十分に機能するための最も重要で緊急な課題であります。介護保険制度では市町村が保険者でありますが、サービス事業者の指定、介護保険事業支援計画の策定、公費負担など、県としての役割も重要な課題であります。
 以上を踏まえて、当面の重要課題についてのみ質問をしてまいります。
 まず第一は、介護保険事業計画に広く県民の皆さんの意見を取り入れるため、市民参加を図るよう徹底されたいことであります。その方法としては、当事者、その家族、高齢者介護にかかわってきたボランティア、住民参加型事業体等、介護の現場にいる方々の参加を促すことであります。介護保険事業計画は、地域ケアシステムの設計図であり、五年を一期とし、三年ごとに見直すこととされています。したがって、平成十二年三月までに平成十二年度から平成十六年度の五カ年計画を策定いたします。市町村ごとに、支援の必要な人、介護の必要な人たちがどれだけ存在し、どのようなニーズを持っているのかを調査し、必要なサービスを計画的に調達するとともに、どれだけの財源が必要なのかを計算して、六十五歳以上の第一号被保険者の保険料を決定するもので、我が町をどのような福祉の自治体に育て上げていくのかという基本が決まる大変重要な計画であります。また、介護保険法は、衆議院の修正で保険者たる市町村に介護保険事業計画への被保険者の意見反映を義務づけていることを念のため申し添えます。
 第二点目は、県の介護保険事業支援計画策定への市民参加を保障することとあわせて、市町村の介護保険事業を円滑に実施するためには、県からの広域的な支援措置や人材確保、育成などの措置が重要であるため積極的な支援措置を図られたいことでございます。
 第三点目は、介護支援専門員の確保と育成についてであります。来る十月四日に県内では約二千五百人の応募の中で試験が行われ、厚生省が合否を決めるとされていますが、実際のケアプラン作成の中心を介護支援専門員が担うことになるため、その質が問われてきます。そして、その合格者に対する実務研修が予定されていますが、大変重要な意味を持っていると思います。県段階での現状把握と認識について伺いたいと思います。
 第四点目は、県に設置される介護を必要とする人の認定に関する不服審査会及び国保連合会に設けられる苦情処理の機能充実と市町村の相談窓口との連携強化など、住民サービスの向上に努められたいことであります。
 第五点目は、在宅サービスの質的、量的向上を図るため、多様な事業主体の参入を促進することであります。とりわけ、各市町村社会福祉協議会への支援を促進し、公的部門の充実を図ること。
 第六点目は、平成十一年度を目標年度とする現行の老人保健福祉計画の完全達成に向け、ホームヘルパー等の介護、福祉関連の人材確保、育成などを積極的に推進すること。
 最後の第七点目は、介護保険だけでは提供することができない福祉のニーズがあることを認識し、自治体は責任を持ってサービスの提供を図ることを徹底されたいことであります。これは、給食の配食、人を運ぶ移送サービス、要介護、要支援とならない高齢者の家事援助や話し相手、社会参加等、福祉ニーズのある市民の生活向上へ向けて積極的に取り組んでいくべきであると思います。そして、平成十一年に策定が進められています新老人保健福祉計画には、広く市民のニーズを反映させるため、介護保険事業計画同様、市民参加を積極的に進められたいし、介護保険除外のサービスを提供する非営利事業体、住民参加型事業体への支援を考慮に入れられたいことであります。
 以上七点でありますが、全国的にも高齢化率の高い私たちの和歌山県、中央とは違った地域の実情に応じたきめ細かなシステムをつくることが当然必要になってきます。そうした立場に立った県当局の答弁を求め、介護保険制度に関する質問を終わります。
 続きまして、南紀熊野を世界遺産にランクアップし、その中で二十一世紀の健康福祉タウンの実現を目指すことについて県知事の見解を求め、質問をしてまいります。
 私は、県会議員に当選以来、南紀に住む人々の生活向上とその環境整備に取り組んできました。中でも福祉施策の充実や福祉大学、専門学校の南紀地域への整備等について、本会議の場で県当局のご見解をお伺いしてまいりました。幸いにも、西口知事初め県当局のご理解により、さまざまな施策として実現しているもの、また前向きなご答弁をいただいたものが多く、感謝申し上げます。来年には南紀熊野体験博が開催されますが、南紀地域のスケールの大きい大自然を二十一世紀、そして未来へ、親から子へ、子から孫へと保全していくためにも、この博覧会を起爆剤として地元が今後どのような取り組みをしていくのかが大きな課題であると考えています。
 このような基本的な考え方をもとに、私自身を含めて地元住民の熱心な議論により、南紀熊野体験博後の南紀を考え、その大いなる価値の認識と恩恵を満喫する健康福祉タウン構想を取りまとめております。この構想の内容に対して、ぜひとも県当局のご理解をいただきたいと考えております。さらに、今後の構想実現に向けてのさまざまな取り組みに対する県当局のご支援をいただきたく質問をするものであります。
 まず、健康福祉タウンの中身についてであります。
 南紀の現状について、次のように私は考えております。
 高齢化が全国より二十年早く進んでいる。言いかえれば、二十年先を行く健康福祉政策を立て、進めていくことが必要である。
 二つ目は、若者の大学県外進学率が九〇%を超えており、その多くは地元へは帰ってこない。
 三つ目は、観光の面で言えば、高速道路が御坊まで南伸してまいりました。大変ありがたいことですが、その反面、便利になったことで宿泊客が減少しているというデメリットもあります。もっと、南紀の今後の観光のあり方を根本に見直さなければならないこと。
 四つ目は、開発の手が余りつかなかった地域という逆のメリットを十分生かし、二十一世紀において国際的に通用する地域づくりができる潜在能力を持つ地域であること。
 これらのことを十分認識し、南紀を発展させるかぎは、この地域が持つ豊かな、そして奥深い自然を生かした産業の振興とともに、健康、福祉、環境といった二十一世紀の町づくりの基本となる施策を組み合わせることにあると考えています。
 ご存じのとおり、今や世界は砂漠化が進み、残された緑の地帯は地球規模で保全し、破壊から守ろうという動きが大きくなってきています。我が和歌山県は、その規模においても、その懐の深さにおいても、ほかの地域の自然を凌駕する自然遺産や文化遺産を持っています。このことを誇りと思い、これを二十一世紀に生きる人々に寄与すべき行動を始めるべきだと思います。つまり、和歌山県の南紀地域は、かつての単なる開発ブームの対象となった小さな自然ではなく、地球上の存在すべき人類の宝、世界遺産なのであります。独特の海岸美や熊野の神秘的な森林は、太古の昔から大自然がつくり上げた人類の偉大な宝であります。これらにはぐくまれた熊野古道を初めとする歴史、文化を人類の宝物として未来へ引き継いでいくために必要なことは、南紀の大自然と文化と歴史を単に地元のみならず、日本の、そして世界においてかけがえのないものとして守らなければならないと思います。
 今や、地方自治体は財政難で、国の公共事業にどっぷりとつかって、地方分権とは名ばかりになっています。今後も、国の財政を期待できる状況は大変難しいと考えられます。これからの時代には、地方自治体なりの創意工夫で財政を健全化させ、その地方の価値を再認識し、引き出し、それをもって世界に発信し、国内はもとより外国からの観光客等を誘致するとともに、その資源を守っていくのが地方自治体の責務だと思います。
 世界遺産登録運動は、日本国内だけでなく、これを世界的な運動として昇華することによって、二十一世紀の地球が人類に求めている地球環境への取り組みの具体的一歩が、つまり京都会議の趣旨が日本の和歌山から始まるのであります。知事が先頭に立って、世界遺産を守ろうと訴えようではありませんか。そして、いろんな世界の動き、そういう環境団体の会合へも積極的に参加していこうではありませんか。この世界遺産登録について名乗りを上げていく、その旗振り役を知事にお願いをするものであります。
 次に、健康福祉による町おこしとして、国連大学、福祉系大学院、専門研究施設を誘致し、福祉実践の場として地域住民を含めた一大健康福祉タウンを誕生させようと考えております。これは、世界の人々が大いなる研究心を持って集まる国連大学、福祉大学院等をつくり、これらを核として医療、保健、福祉、さらには観光などの産業がそれらをバックアップしていく総合的な町づくりを考えております。これが構想の基本であります。国連大学や福祉大学院はどのような機能を果たすのか。大きく言えば、二十一世紀のこれからの人間の生き方をきわめるような場所にしていけないかと思います。もっと具体的に言えば、この南紀熊野地域は、心のいやしとか精神のいやしとかを昔から持っている地域でございます。今問題になっている心の介護とか家族間の断絶等、そういったいろいろな問題について具体的なアドバイスをしていく、つまり臨床心理センター的なものをつくれないかと思っています。このような機能を持つところへ、心のいやしを求めて世界から人々が訪れる。なおかつ、この機能を学習、即実践できる環境を地元のネットワークの中でつくり上げていくことを考えているわけであります。また、環境産業というのを南紀の地につくっていきたい。先般行われたシンポジウムの先生方から、南紀は最適地であると言っていただきました。これらの経済波及効果は、定住人口がふえること等により、一過性の公共投資より継続的に多大なものと見込まれます。この構想を和歌山県の今後をどう考えるかという地域振興のあり方の選択肢の一つとして、知事初め県当局のご理解を得たいと考えております。
 知事に見解を求める第一点目は、南紀熊野を世界遺産に登録していく運動についてであります。
 世界遺産とは過去から引き継がれてきた人類の宝物であり、今日私たちがともに生き、そして未来の世代にそのままの価値を引き継いでいかなければならないものであります。世界遺産は、普遍的な価値を有している文化遺産、自然遺産及び複合遺産に分けられ、一九九七年十二月現在、登録された文化遺産は四百十八、自然遺産は百十四、その両者に当てはまる複合遺産は二十の合計五百五十二に上ります。国内では、自然遺産として屋久島や白神山地の二カ所、文化遺産として法隆寺地域の仏教建造物、古都京都の文化財、原爆ドームなどの六カ所が登録されております。自然遺産と文化遺産をあわせ持つ、日本で初めての複合遺産としての南紀熊野を世界遺産として登録すべきであると考えておりますが、知事のご見解をお伺いします。
 ユネスコ関係者のお話では、世界遺産に登録されたところは国際的な認知が非常に高くなるので、観光客が大きくふえるというのはどこの遺産地域でも起こっているということであります。日本の世界遺産だけでも二千億円以上の経済波及効果があると言われています。遺産に指定されることにより、いろいろマスコミが取材に来ます。それが相乗効果となって自分たちの遺産を守ると同時に、世界の観光客が大きくふえ、かけがえのない遺産を守ってくれるのであります。いろいろな人が来ることによって、人類の知恵が吸収され、国際化につながっていきます。また、郷土愛や愛郷心、愛着が生まれ、Uターン現象や過疎化の解消などが始まっているのであります。人口の減少がとまり、若い人たちが地域に誇りを持って暮らしていけるということであります。
 続いて見解を求める第二点目は、世界遺産の指定にふさわしい健康福祉タウン構想の実現とそれに向けての調査研究を進めていただきたいことであります。
 従来の地域振興の発想は、企業誘致や公共事業の投資等による活性化を求めてきた傾向にあります。一企業に頼る町づくりや一過性の投資に頼る町づくりは、全国各地においてその限界が明らかになってきております。これからの町づくりを考えていくために、一人一人が町づくりの主役になるということが一番大切だと思います。そして、誇りを持って我々の知恵と発想によって、南紀の地をどのように守り、どのように発展させていくのかを考えなければならないと思います。今までの地域開発というのは、えてして地元の地域事情を十分理解していない開発業者により、その企業倫理が優先して行われてきました。住民の間に利害対立が生まれて、地元住民が当然享受できるはずの豊かな生活と充実した福祉が遠ざかっている嫌いがあります。それによって、開発への不信感が募るという悪循環が生まれ出ています。行政は、従来の開発のあり方と住民感情との関係にさらに留意をし、新しい開発行政に取り組むべきではないでしょうか。
 二つ目は、ここに住んでいる人々が利益を得なければならないということであります。地元住民であるなら、だれしもが開発によって受けられるはずの生活の向上や福祉の充実が理想や施策どおりには働いていないという現実があります。これまでの開発という名の歴史を振り返ってみますと、ごく一部の開発業者及びその周辺に利益が集中しがちの構図がつくり上げられるという見方を住民が根強く持っているという現実があります。不特定多数の小さな声しか持たないが、ふるさとをこよなく愛し、その情熱においては人一倍の責任と実行力を持った住民にその恩恵が及ばないのはおかしいと言わざるを得ません。行政を行う者にとって猛反省すべき開発の実態であります。こうした点を踏まえ、この世界遺産に登録する動きを契機として、開発行政に大胆にメスを入れ、転換をすべきだと思います。
 三つ目は、南紀の自然、歴史、文化をどのように上手に利用し、生かしていくかが大事だと思っております。もっともっと多くの世界の人々に南紀熊野地域を訪れてもらって、人々との交流によってこの地域が栄えていく、そんな町にしていきたいと思います。そして、その核となるのが国連大学、福祉系大学院、研究施設等であります。健康、福祉、医療の既存施設や地域とのネットワークを構築することにより、日本一安心して暮らせる地域を目指したいと考えております。これらを実現していくことにより、この地域への居住者がふえるとともに、大学関係者や学生、福祉関連産業の従事者、さらには福祉工学関係産業の振興による従事者の増加等が波及的に起こり、確実に定住人口がふえることを予測しております。大阪地方自治研究センターの永峰幸三郎先生の試算によりますと、これらの経済波及効果は生産額の増加で二千四百四十六億六千二百六十六万円、粗付加価値額の増加で一千百九十八億五千九百六十万円、さらに雇用開発効果で三万五千九百六十一人の増加と試算がされています。このような町づくりを地域住民とともに考え実行していきたいと考えておりますが、県当局のご見解をお伺いしたいと思います。
 去る七月二十五日に、白浜町で二十一世紀を担う健康福祉タウン構想シンポジウムが実行委員会方式で開催され、三百五十人余りの参加者で盛り上がりました。シンポジストには、南紀熊野体験博実行委員会を初めユネスコの世界遺産担当者等、関係各方面の専門家が集まり、熱心に南紀の地域振興について意見や提言を多くいただきました。また、参加者へのアンケートの結果によりますと、この構想への興味と今後の行政等の取り組みに対する期待が多く寄せられておりました。この構想について準備会やシンポジウムを開催してきましたが、住民の意識の変化を感じ、驚いています。町づくりや開発の主人公は地元に住んでいる住民なんだ、そういった意識になっているということであります。これまではともすれば、行政がやってくれる、任せておけば大丈夫、また大きな企業が来てくれる、私たちは何もしなくて大丈夫、そういった考えがありました。しかし、リゾート開発等による利害対立などにより、みずから住む地域をどう開発するかは地元の住民がみずから考えなければならないことを教えられました。この反省により、誇りを持って、地元の知恵と発想を持って、南紀の地を守り発展させていこうという気概が満ちてきています。先祖が残してくれたすばらしい南紀の自然、歴史、文化を壊さず、守り残していくことがいかに大切であるかを感じています。この考え方が、世界遺産登録運動を初め、世界遺産にふさわしい町づくりを始めようという意識に昇華してきております。また、ユネスコ関係者や福祉大学関係者は南紀について大変注目しております。この十月には、第三回目の地元での集会も予定されております。今後、この構想を具体的に煮詰め実現をさせていくためには、県当局のご理解とご支援が不可欠であります。南紀が活性化すれば、和歌山県全体が活性化します。
 現在の地方行財政制度の中でのやりくりには限界があります。これからは、積極的に和歌山を売り出す、自分で稼ぐ、知恵を出して自分たちの和歌山県自身を高く売れる方法を考える時代であります。私たちの和歌山県は世界に売れる目玉を持っているのであります。そのためにも、世界遺産にふさわしい南紀の町づくり構想を考えるための調査研究を進めていただきたい。また、南紀熊野体験博後の地域の将来像を考えるためにも、実現に向けての方策を検討していただくよう県当局の見解を求めます。そして、この構想によって、南紀のすばらしい遺産をよみがえらせ、生き返らせ、地元住民主体でこの町づくりをしていけるよう県当局のご理解を求めて、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(井出益弘君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 玉置議員にお答えをいたします。
 まず、南紀熊野を世界遺産に登録とのご提言でございます。
 お話にもございましたけれども、本県の南部を占める熊野地域は、古代より豊かな大自然を崇拝し、信仰の対象となった霊場でございまして、日本を代表する独自の宗教圏を形成していると思っております。特に平安中期以降、来世の救済を求める浄土信仰の高まりとともに、神仏習合の形となって熊野権現を祭る熊野三山が成立をいたしまして、多くの人々が心のよりどころとしての聖地に参詣をしたわけであります。熊野参詣道に沿う熊野九十九王子、また熊野三山には信仰が生んだ精神文化が連綿と受け継がれてございまして、一千年の歴史を持つ有形無形の文化財が数多く残され、歴史の重みを感じさせるわけでございます。これらの文化財の保存と活用が地域の活性化、中でも町づくりの上で大きな資源となることは議員ご指摘のとおりでございまして、明年、南紀熊野体験博を開催する目的の一つでもございます。
 今、南紀熊野古道を世界文化遺産にという民間団体の盛り上がりもあるわけでございまして、南紀熊野体験博の開催を機会にいたしまして、世界文化遺産登録あるいは地域活性化等につながる諸施策を研究してまいりたいと考えております。
 十月に、世界文化遺産でもあるサンティアゴの古道との友好提携を締結する予定にしておりますけれども、このこともその一つにつながるものと思っております。
 次に、健康福祉タウン構想についてであります。
 今日の高齢化社会の進展とライフスタイルの多様化の中で、地域づくりに大変意義のあるものと認識しておるわけでございまして、これからの町づくりの主役は一人一人の住民であるという議員のご指摘につきましては、私も常にその主張を繰り返しておるわけでありますが、住民が自由な発想のもと、自分の意思と責任において地域づくりに参画することが重要であろうと思うわけであります。都会に住む勤労者が自然豊かな田園で老後を過ごしたいという願望、あるいはこういった環境の中で人生を送りたいという人々が大変増加をしておるわけでありまして、こうした社会変化をとらえて、私も和歌山の変革と発展を目指すプロジェクトの中に太陽の街建設構想を提唱しておるわけでありますが、実現のためにはなかなか困難な点もたくさんございますけれども、ただいまの健康福祉タウン構想も参考にさせていただきながら、調査研究を進めてまいりたいと思っております。
 以上であります。
○副議長(井出益弘君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 玉置議員ご質問の、介護保険制度についての七点にお答えをいたします。
 まず、介護保険事業計画策定につきましては、地域住民にかかわる問題であり、そのため行政機関だけではなく、福祉、保健、医療等の関係者や被保険者代表の積極的な参加を求め、事業計画策定を進めていくことが大変重要なことと認識しております。
 こうしたことから、市町村に対し、事業計画策定に際しては広く住民の意見を反映できるよう強く働きかけてまいりたいと考えております。また、県で策定する介護保険事業支援計画につきましても、現在、策定検討組織の設置に向け鋭意検討中でございますが、その構成員として市町村同様、被保険者代表の参加は不可欠であるとの認識をしております。
 次に、市町村への支援につきましては、平成十二年度の円滑な実施に向け、公平厳正な介護認定を行っていくための要介護認定モデル事業の実施、介護保険事業計画策定のための調査経費、事務処理システム構築への支援などさまざまな支援措置を講じており、その中で訪問調査員、介護認定審査会委員など、介護保険に携わる人材の育成にも努めているところであります。
 次に、介護支援専門員の確保と育成についてでございますが、議員ご指摘のように、さまざまな役割を担う重要な人材であると認識しております。十月四日に実施する第一回目の介護支援専門員実務研修受講試験は二千四百三十九名もの多くの受験生を数えており、その合格者に対して実務研修を順次実施していくこととしております。実務研修は演習を主体とした科目構成となっており、また受講者も介護サービス計画を作成する居宅介護支援事業者に従事する予定の者から優先的に対象とすることとしております。介護支援専門員は広範な医療、保健及び福祉分野に精通した貴重な人材であり、制度実施までにはでき得る限り多くの有為な人材を育成確保したいと考えております。
 次に、県の介護保険審査会、国保連の苦情処理機関、市町村の相談窓口との連携強化などにつきましては、介護保険制度では要介護認定、保険料の賦課徴収等に関する不服審査機関として、県に介護保険審査会が来年秋には設置されることとなっており、その際、身近な市町村の相談窓口と密接な連携が図れるよう、その設置形態を考慮しながら機能の充実に努めたいと考えております。また同時に、国保連に苦情処理制度が創設されますが、住民が迅速かつ適切にその制度の効能を享受できるよう関係機関を指導してまいりたいと考えております。
 次に、在宅サービスの質的、量的な向上についてでございますが、現在、ホームヘルプ事業、デイサービス事業、ショートステイ事業などの在宅福祉サービスには、社会福祉協議会を初めとする社会福祉法人、医療法人、それに農業協同組合などが参入しておりますが、今後、民間活力も積極的に活用してまいりたいと考えております。また、市町村社会福祉協議会につきましては、介護保険だけではなく、生きがい対策等さまざまなサービスが必要であり、その役割も大きくなると思われますので、県としては和歌山県社会福祉協議会と連携を強めながら在宅福祉の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、人材確保についてでございますが、ホームヘルパーの平成十一年度の目標は約千五百人であり、平成九年度末では八百八十人という状況でございます。県といたしましても、ホームヘルパーの確保のため養成研修を実施しているほか、知事が指定を行っている十六の関係団体等の実施する研修により、現在では合わせて約二千四百人の方々が研修を修了しております。今後とも、ホームヘルパー養成研修を積極的に推進してまいりたいと考えております。このほか、介護福祉士等介護サービスにかかわりの深い人材についても、今後とも確保育成に努めてまいりたいと考えております。
 最後の、介護保険制度対象外のサービス提供についてでございますが、介護不安の解消のためには、介護保険制度に基づく基本的なサービスを早急に確保するとともに、要介護状態にならないための予防策も重要であります。高齢者の生きがいとなる社会参加活動の促進や健康増進を図る老人保健事業の充実、また配食サービス等の保険給付以外の事業、あるいは市町村社会福祉協議会や民間ボランティア団体等が行う地域の助け合い活動等を組み合わせる工夫が必要と思われます。そのため、平成十二年度を初年度とする新しい老人保健福祉計画では、これらのことを考慮しながら、介護保険給付対象のサービスとそれ以外のサービスを適切に組み合わせ、住民のニーズ、地域の実情に即した総合的な計画となるよう検討してまいりたいと考えてございます。
 また、計画の策定に当たっては、介護保険事業計画と同様、住民の参画を図る予定としてございます。この計画を推進するに当たり、市町村は責任を持ってサービスを提供する必要があり、このサービスを提供する事業者の一つとして民間ボランティア等の住民参加型非営利団体の活用も必要であると考えております。
 以上でございます。
○副議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 26番玉置公良君。
○玉置公良君 答弁ありがとうございました。
 三点についてのみ要望を申し述べて質問したいと思います。
 一つは介護保険制度でございますけれども、当面、一番重要課題になってくると思います介護保険事業計画の策定計画であります。
 今、「市町村に対し、事業計画策定に際しては広く住民の意見を反映できるよう強く働きかけてまいりたい」という答弁をいただきました。とりわけ和歌山県は、人口が比較的多い北部と過疎化してきた南部では当然幾つか異なった形態があると思います。そういった意味においても、肩書の代表ばかりだけでなく、私が先ほど言いましたように、当事者や家族の方、ボランティア団体など介護の現場にいる市民の参加を強く要望しておきたいと思います。
 二点目は、知事の方から世界遺産登録運動についての答弁をいただきました。南紀熊野体験博の開催を機会に世界遺産登録を視野に入れて取り組むという答弁であったと思います。
 今、南紀熊野体験博を成功させるために一生懸命それぞれが取り組んでおります。先ほども知事の方から若干ご紹介ございましたけれども、世界遺産登録運動に多くの民間の方々の運動も広がっております。先ほど知事が申されました熊野古道を世界遺産に登録するプロジェクト、そして先日、貴志川町にお住まいの樫葉好次さんという方が、世界遺産に登録されることを願って「熊野路旅情」を作詞作曲されまして、ボニージャックスの皆さんが歌われるということを聞いております。このように南紀だけでなく紀北の方からも、和歌山県全体でこの南紀熊野体験博を盛り上げていこうという輪が着実に広がってきていると思っております。
 来月、スペインの方へ行かれて姉妹道提携の調印を行っていただくと聞いておりますけれども、熊野古道や南紀熊野を世界に十分PRする絶好の機会であると思いますので、そういった意味において、ご苦労でございますけれども、世界遺産に向けてよろしくお願いをしたいと思います。
 最後に三点目、健康福祉タウン構想について答弁いただきました。県が行った最近の一番新しい県民意識調査で、高等教育機関の中で一番多い要望が福祉関係でございました。健康福祉タウン構想もその中に中心として取り入れておるわけでございますけれども、どうか今後の南紀の町づくり、和歌山全体を考えてもそういった視点でよろしくお願いを申し上げまして、質問を終わります。
○副議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
      ─────────────────────
○副議長(井出益弘君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四十六分散会

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