平成10年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(新田和弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番新田和弘君。
  〔新田和弘君、登壇〕(拍手)
○新田和弘君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問を行います。
 まず初めに、毒物に対する健康危機管理体制の整備についてお尋ねをいたします。
 去る七月二十五日、和歌山市園部で起きた毒物混入事件は、自治会の夏祭りでカレーライスを食べた人たちが次々と異常を訴えたため、食中毒のような症状者として各医療機関に搬送され、その対応がなされてきました。翌二十六日の午前三時三分に自治会長さんがお亡くなりになり、死因は青酸化合物とのことでありましたが、後に鑑定の結果、砒素化合物が検出され、本県のみならず全国を震撼させる事件となりました。この事件は、四人のとうとい命を奪い、六十三人の方々が中毒症状で入院、通院され、今なお砒素中毒症状による後遺症の不安が残されております。不幸にしてお亡くなりになられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被害者の皆様の一日も早い回復を願う次第であります。また九月二日には、残念なことに事件発生から連日連夜休みなく捜査に当たられた警察官一名が急逝されたことは大変遺憾なことであり、ご冥福をお祈り申し上げます。
 本県においては、事件発生より県警による懸命の捜査活動や県立医大病院において毒物中毒患者の治療が行われ、事件の翌日には西口知事が現地に行かれ、七月二十七日には庁内に健康危機対策連絡会議を設置し、事件の対応に当たってきました。具体的には、毒物及び劇物並びに農薬等の適正な取り扱いの徹底についての通知や児童生徒の安全の確保についての通知を行う一方、毒物、劇物販売業者等への立入検査の実施、和歌山市へ保健婦、精神保健福祉相談員の派遣等を実施してきました。八月十八日には、知事が和歌山市長とともに厚生大臣に尿の砒素検査費用の医療保険適用及び心のケア事業に国庫補助の要請を行いました。今日までの知事初め県警、医大、関係各部の皆様のご苦労に対しまして、心より敬意を表するものであります。
 今回の事件は、毒物に対する健康危機管理体制が厳しく問われた事件であります。私は、この事件を通じて幾つか問題点を感じた次第です。
 第一点目は、事件発生が七月二十五日の午後六時ごろで、市消防局から東警察署に連絡があったのが午後七時三十二分、被害者を病院に搬送した旨、市の保健所に連絡が行われたのが午後七時四十五分、県立医大病院が最初に被害者の受け入れの要請を受けたのが午後八時二十分と聞いています。しかるに、県の生活衛生課が事件を確認したのは午後九時三十分と、東警察署が情報を受けた二時間も後となっていることです。今回の事件に対して、和歌山市では十一台の救急車をフル活動し、受け入れ医療機関にも恵まれて二時間程度で被害者全員を病院に搬送できたと聞いています。緊急時における初動体制及び県、市、関係機関の連携の大切さを実感した次第であります。
 二点目は、厚生省が平成九年一月に厚生省健康危機管理基本方針を、同年三月には健康危機管理実施要綱を策定し、O157食中毒、インフルエンザ、血液製剤によるHIV感染などの健康危機に適切に対応できる体制の構築に取り組んできています。しかし、厚生省において毒物中毒症に対する健康危機管理対策が講じられず、平成六年六月の松本サリン事件で七人の死亡者と五十九人の重軽症者を出した猛毒サリンによる中毒死事件の教訓が生かされていなかったことが甚だ残念に思いました。
 三点目は、毒物の検査について、犯罪捜査を目的とする警察庁の科学警察研究所や県警の科学捜査研究所で実施され、県民の健康を目的とする県衛生公害研究センターでは毒物の検査が行われなかったことを大変残念に思う次第であります。「厚生白書(平成九年版)」に「松本サリン事件を振り返って」と、山本国立衛生試験所化学物質情報部主任研究官が手記を寄せております。「平成六年六月二十七日深夜に松本市で発生したサリン事件は前代未聞の事件だっただけに十分な情報がありませんでした。二十八日長野県衛生公害研究所(衛公研)では原子質量計で採取試料中にサリンと一致する物質を検出しましたが、物質の特定のためには、標準品が入手不可能なため文献情報と比較して確認するしかありません。その日夜遅く、衛公研の丸山さんから私にサリンについての情報を至急送ってほしいとの電話が入り、すぐに療品部の佐藤さんに連絡して衛公研にファックスしてもらいました。試料中の物質はその文献情報ともよく一致し、その後の原因物質特定の一助となったわけです」と述べています。松本サリン事件では、毒物の特定を県衛生公害研究所が行っているところが注目に値します。
 また、八月二十日付の読売新聞の「論点」に、「毒物の救急体制整備急げ」と題して、日本医科大学高度救命救急センター長の山本保博教授は「原因不明の中毒事件が起きた時、どんな毒薬物が含まれているか分析する体制も、日本の医療機関では十分整っているとは言えない。(中略)米国では州ごとに一か所以上の中毒情報・分析センターがあり、依頼に応じて数時間単位で迅速な分析を行い、治療に役立てている。 日本では、警察庁科学警察研究所や各都道府県警の科学捜査研究所が分析を行っているが、医療機関との連携は義務付けられていない。今後は、警察の各研究所と医療機関が十分な連携をとるとともに、高度救命救急センターに迅速分析ができる機能を持たせることが重要だ」と述べています。山本教授の論によると、今後は警察の各研究所以外にも毒薬物の分析できる機能の必要性を強調されていると思った次第であります。
 四点目は、今回の事件では、当初、医療機関では食中毒の対応が行われ、毒物中毒症に対する適切な処置が行われなかったことであります。さきに紹介した山本教授は、「原因不明の化学毒物混入事件として、治療に当たる側から(中略)数分間で嘔吐、下痢、けいれんを伴う急性中毒は、毒薬物の可能性がきわめて高い。細菌性の食中毒症状としては、出現があまりにも早いからである。 中毒を起こす毒薬物は十数万種類もあるとされるが、すべてに解毒、中和作用を持つ薬があるわけではない。しかし、急速に死に至らしめる毒物はそれほど多くない。代表的なのは青酸化合物、ヒ素、サリンなど有機リン系化合物などであろう。 青酸化合物の解毒剤としては、亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムが、有機リン系化合物にはPAMや硫酸アトロピンによる治療法が確立されており、ヒ素にはBALというキレート剤が有効と言われている。これらの薬の中には市販製剤となっていないものもあり、常備が義務付けられているわけでもない。しかし、比較的設備の整った三次救急医療機関である全国百四十二か所の救命救急センターには常備し、緊急時にいつでも使用できる体制を整えておく必要がある」と述べています。
 厚生省は、国民の生命と健康を守る健康危機管理は厚生行政の原点であると位置づけています。それであるならば、毒物に対する健康危機管理体制が整備され、県、市町村、関係機関の連携や毒物情報、検査体制、さらに解毒剤の常備など、今回の事件を教訓にぜひとも整備を願うものであります。
 そこで、西口知事は、今回の事件や全国で発生している毒物連鎖事件をどう受けとめているのか、また本県における毒物に対する健康危機管理体制の整備をどう進められるのか、お尋ねいたします。
 次に、関係部長にお尋ねいたします。
 一、毒物中毒事件発生時における初動体制並びに連絡体制をどう整備し、マニュアルづくりをするのか。
 二、緊急時の毒物検査及び特定する体制をどう整備し、医療機関との連携をどう確立するのか。
 三、健康危機管理を担う人材の養成確保にどう取り組まれるのか。
 四、毒物に対する解毒、中和作用を持つ薬等を緊急時にいつでも使用できる救命体制の整備はどう図られるのか、また県立医大病院の救急体制はどうか。
 五、県民の不安を解消し、安心して生活を送るためにも、犯人逮捕による事件解決を強く望むものでありますが、捜査の状況はどうか。
 六、本県の毒物カレー事件より始まった一連の毒物犯罪の連鎖は極めて憂慮すべき状態にあります。続発する毒物犯罪を今後どう阻止するのか。
 七、被害者及びその家族に対する支援及び心のケアに対して、県はどう対応するのか。
 以上七点、お尋ねをいたします。
 次に、産業廃棄物処理の対策についてお尋ねをいたします。
 我が国では、経済成長や国民生活の向上などに伴って廃棄物が大量に排出される社会構造になっています。他方、廃棄物を適正に処理するために必要な最終処分場等の廃棄物処理施設については、近年の廃棄物処理によるダイオキシンの発生、不適正処理に対する住民の不安や不信感の高まりを背景として、設置や運営をめぐる紛争が多発し、その確保がますます困難となっています。また、産業廃棄物の不法投棄も後を絶たず、その解決が強く求められています。
 こうした状況を踏まえ、廃棄物の減量化、リサイクルの推進、廃棄物処理に関する信頼性及び安全性の向上、不法投棄対策を三つの柱とする総合的な対策を講じ、廃棄物の適正処理の確保に向けた対策を積極的に推進する目的で、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正が平成九年六月に成立いたしました。
 改正の主な点は、一、廃棄物の再生利用について、許可にかわる認定制度の新設、二、廃棄物処理施設の設置に関して、生活環境影響調査書の添付、及び申請書の告示・縦覧、関係市町村の意見聴取、三、マニフェストのすべての産業廃棄物への適用、四、不法投棄に対する罰則の強化、五、原状回復のための措置、六、処分場のすそ切りが廃止され、ミニ処分場も規制される等の改善がなされました。
 本県では、法改正により規制基準等が強化されたことから、廃棄物処理業者や産業廃棄物処理施設の設置者に対して改正内容の周知を図るとともに、適正処理に関する啓発を行っております。また、不法処理を防止するために、県、県警、和歌山市、社団法人県産業廃棄物協会の構成による産業廃棄物不法処理防止連絡協議会、及び県地方機関、関係警察署、関係市町村の構成による地域産業廃棄物適正処理連絡会議により産業廃棄物処理に関する連絡調整、パトロール等を行ってきています。さらに、公共関与処理として財団法人和歌山環境保全公社は、平成八年九月からフェニックス計画処分場へ紀北地域の廃棄物の搬出を行い、同年三月から和歌山市西浜地区において陸上残土の受け入れと建設廃材の破砕処理を行ってきております。
 そこで、西口知事並びに生活文化部長にお尋ねいたします。
 一、平成六年四月に廃掃法第十一条第一項の規定に基づいて、第三次和歌山県産業廃棄物処理計画が策定されております。この計画期間は、平成五年度を基準に平成六年から平成十年までの五年間としております。県においては、この計画の見直しを行うため、平成九年度には基礎資料とする産業廃棄物排出状況の実態調査を行ってきています。平成十年度の当初予算においても、計画推進事業費六百三十七万円余が計上されています。加えて、平成九年六月に廃掃法の大幅な改正がなされたことを受けて、第四次の県産業廃棄物処理計画が策定されなければならないと考えますが、知事はいつ行うのか、お尋ねいたします。
 二、今回の改正により、すべての処分場が規制の対象となり、排出者にはすべてマニフェストが必要となります。他方、住民の環境への関心の高まりの中、廃棄物の不適正処理や処理施設等の安全性の問題など、一段と県民からの行政に対する要望が増加するものと考えられます。そのため、廃棄物行政に携わる本庁及び各保健所の体制の充実が必要と考えられますが、どう対応されるのか。
 三、廃棄物処理施設の設置に関しては、本年の六月十七日以降は生活環境影響調査書の添付、申請書等の告示・縦覧、関係市町村長の生活環境の保全上の見地から意見を聞かなければならないものとする、また昨年八月からは三千平米以下というすそ切りが廃止され、ミニ処分場も規制されることになったわけであります。こうした改正等を受けて、廃棄物処理施設の設置の申請を受けているものに対して県はどう対処していくのか、またミニ処分場への対応はどうか。
 四、和歌山市本脇地区で産業廃棄物最終処分場の設置許可申請が昨年十月三日に和歌山市に対して行われ、同年十一月十八日に許可がおりたわけでありますが、その後、地元自治会から強い反対があり、和歌山市議会三月定例議会で反対決議が採択されました。和歌山市長は、本年六月に許可の取り消しを決定しました。取り消しを受けた業者は、本年七月二十三日に県に対して行政不服審査法に基づく審査請求がなされています。知事は関係市町村長の意見を尊重する考えであると伺っていますが、知事の見解はどうか。
 五、県警の資料によりますと、一般廃棄物及び産業廃棄物の不法投棄等の検挙状況は、平成八年三十七件、平成九年三十三件、平成十年八月末現在で既に十九件に上っています。廃掃法の改正により、本年十二月からマニフェストの適用範囲をすべての産業廃棄物に拡大するとともに、厚生省で定める期間保存することを義務づけられました。さらに罰則の強化として、一般廃棄物の場合は一年以下の懲役または三百万円以下の罰金、産業廃棄物の場合は三年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金、法人に対しては最高一億円とされています。「ジュリスト」の平成九年十月号によると、不法投棄の内訳は、排出者四〇%、無許可業者が一三%、許可業者が六%、あとは不明その他となっています。本県の不法投棄の現状とその対策はどうされるのか。
 六、マニフェストの適用拡大に対して、排出事業者の中にはマニフェストとは何ですかと言う事業者もあると聞いていますが、県は排出事業者、産業廃棄物処理業者に指導徹底を図り、排出事業者からマニフェストを県に提出させるとともに、廃棄物処分業者へ照合を行って不適正処理をなくすべきであると考えますが、マニフェストの適用拡大にどう対応されるのか。
 七、最終処分場等の産業廃棄物処理施設は排出事業者や処理業者により整備されるのが望ましいわけですが、民間のみではその十分な確保が困難な状況となっています。そのため、公的関与により住民に理解を得やすい形でその整備を図っていくことも必要であります。平成三年の法改正では、第三セクターの民法法人を都道府県ごとに一つに限り廃棄物処理センターとして指定する制度が創設され、本年四月現在、岩手県、兵庫県など八県で指定が行われています。本県においても、財団法人和歌山環境保全公社を廃棄物処理センターに指定を行って中間処分場の機能を備えることにより民間処理場を補完し、最終処分場への産業廃棄物の減量化を図られてはと考えるが、どうか。
 八、不法投棄等の原状回復のための措置については、より迅速に原状回復を可能にするため、行政代執行法の手続を経ることなく、都道府県が原因者に費用負担を求めることができるものとするとともに、不法投棄者不明や原因者の資力不足の場合に、原状回復を行った県に対して、国の補助及び事業者の自主的な出捐による基金で活動する産業廃棄物適正処理推進センターから資金を出捐すると定めています。橋本市における産業廃棄物撤去については、法改正後の平成九年七月から九月に五千万円、平成九年十二月から平成十年四月に一億円が環境保全公社から支払われています。県は、産業廃棄物適正処理推進センターに資金を出捐を求められてはと考えますが、どうか。
 九、ダイオキシン対策として、本年十二月より民間の焼却施設に対しても八十ナノグラム以下にすることとなりました。本県において、廃棄物処分場や自社処理を含めたミニ処分場等の焼却施設のダイオキシンの基準値達成に今後どう指導し、対応されるのか。
 以上、九点をお尋ねいたしまして、第一問を終わらせていただきます。当局のご答弁を求める次第でございます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの新田和弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 新田議員にお答えをいたします。
 最初に、毒物混入事件についてであります。
 今般の和歌山市の毒物混入事件のように、飲食物に毒物等が混入され、不特定多数の方々が犠牲になるという犯罪は極めて卑劣でございまして、断じて許せるものではございません。また、これを模倣した事件が新潟県、長野県などで発生して社会を不安に陥れている事実を憂慮いたしますとともに、一日も早い解決を望んでいるところでございます。
 次に、健康危機管理体制の整備についてのご質問でありますが、地方で取り組めることと国の段階で取り組むこともございますので、財団法人日本中毒情報センターの充実、あるいは救命救急センターの役割の明確化等につきましては、引き続き国に要望を続けてまいりたいと思っております。
 県といたしましては、今回の事件を重く受けとめまして、それぞれの課題について健康危機発生時の被害者の搬送から、治療、心のケアに至るまでの一体的な管理体制マニュアルの整備に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、産業廃棄物問題でありますが、第四次県産業廃棄物処理計画の策定についてでございます。
 産業廃棄物処理計画は、産業廃棄物の発生から処分に至る過程における関係者の役割と責任を明らかにするものでございまして、県における産業廃棄物の適正処理のための基本指針となるものでございます。第四次計画につきましては、昨年度に排出状況実態調査を実施いたしまして、現在、計画素案を作成中でございます。今後、施設設置の際の手続、罰則の強化等、規制強化が盛り込まれた法律改正があったこと、環境保全に対する県民意識の動向などを踏まえて関係機関との調整を行い、環境審議会の議を経まして平成十一年度のできるだけ早い時期に策定をしてまいりたいと考えております。
 次に、法改正に伴う本庁及び保健所の充実でございます。
 昨年は、保健所の組織を見直すなど整備を図ったところでございますが、引き続き法改正に伴う事務量などを勘案しながら検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、和歌山市の産業廃棄物審査請求に対する私の見解ということであります。
 審査請求に対する知事の見解につきましては、和歌山市の許可取り消し処分については県に対し行政不服審査請求が提出されてございまして、和歌山市からの弁明書が既に提出をされてございます。現在、これに対する事業者の見解を求めておるところでございます。双方の言い分を十分聴取の上、処分の妥当性について県としての判断を示していきたいと考えております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 新田議員ご質問の毒物に対する健康危機管理体制の整備についての五点にお答えいたします。
 まず、発生時における初動体制及び連絡体制についてでございますが、今回のように多数の被害者が発生した場合、行政、消防、警察、保健所、医療機関等との連絡体制の整備を初め、集団救急搬送につきましては、各消防本部とのより一層の連携を図ってまいります。また、複数の医療機関に収容された場合、患者の症状及び治療情報を一元化し、医療機関の間での応援体制や適切なアドバイスができる体制が不可欠でありますので、県立医科大学、和歌山県赤十字救命救急センターを核とした情報ネットワークづくりを検討してまいります。
 次に、毒物検査後の医療機関との連携についてでございますが、毒物反応検査の状況を即時に関係医療機関に通報するとともに、県立医科大学、和歌山県赤十字救命救急センター、財団法人日本中毒情報センター等との連携を図りながら、臨床指導できるよう体制づくりを検討してまいります。
 次に、健康危機管理を担う人材の養成確保についてでございますが、健康危機管理に当たっては、医療機関の医師等医療従事者の役割が重要であり、県医師会及び県病院協会に対し協力の申し入れを行ったところであります。また、県における健康危機管理にあっては、事務、技術の職種の別にかかわらず、すべての職員がその役割に応じた対応を適切に行うことが必要で、中でも保健所、衛生公害研究センター等における医師、保健婦、検査技師等の技術職員の役割が重要でありますので、各種研修の場等をとらえて専門能力の向上に努めてまいりたいと考えております。
 次に、解毒剤等の整備につきましては、現在八カ所の医療機関で購入済みであり、そのほかに県病院協会では三カ所に配置しております。なお、県といたしましては、恒久的な備蓄体制についてマニュアルに盛り込むべく作業を進めております。また、緊急時の解毒剤等の搬送につきましては警察及び消防機関と協議中でございます。
 最後に、被害者等への支援及び心のケアへの対応についてでございますが、今回のような毒物混入事件の被害者やその家族に対する精神面の支援として心のケアは重要なものと考えております。心のケアに関しましては、県としても和歌山市保健所に対し、保健婦、精神保健福祉相談員延べ四十九人を派遣し相談等の支援を行ったところであります。今後、同種の事件、災害等が発生した際には、地域の精神保健の拠点である保健所等において積極的に心のケアの対応を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 新田議員ご質問の毒物に対する健康危機管理体制の整備についてのうち、毒物の検査体制及び特定する体制の整備についてでございます。
 さきの質問にお答えいたしましたとおり、保健所長からの申し入れにより、県衛生公害研究センターで各種の分析を行うこととしてございますが、十月中の策定を目途として取り組んでいる体制整備マニュアルづくりの中でさらに検討してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、産業廃棄物処理対策につきましての六点のご質問にお答えいたしたいと思います。
 まず、産業廃棄物処理施設及びミニ処分場への対応につきましては、今回の法改正に伴い、産業廃棄物処理施設の許可申請書に生活環境影響評価書の添付が義務づけられ、焼却炉と最終処分場については、これらの図書の告示・縦覧、利害関係者、市町村長及び専門家の意見聴取の手続が必要となりました。現時点では新しい制度に基づく許可申請書は提出されてございませんが、事前調査段階の施設が十一件ございますので、許可申請書が提出されれば改正法に基づき厳正に審査してまいる所存でございます。
 なお、従来、許可対象となっていなかったミニ処分場につきましては、法改正の周知を図るとともに、無許可設置を見逃すことのないよう監視してまいります。
 続きまして、不法投棄の現状とその対策についててございますが、産業廃棄物の不法投棄と認められた事例の件数は、平成八年度二十五件、平成九年度二十件、本年八月末現在で二十四件となってございまして、不法投棄等の不適正処理を発見したときには不法処理防止連絡協議会等で対応を協議し、警察、関係市町村、関係部局が連携して環境保全上の支障の除去に努めているところでございます。不法投棄対策は、早期に発見し、小規模のうちに対応することが最も有効であると考えてございますので、市町村の協力を得て、環境月間あるいは環境衛生週間に一斉パトロールを実施するほか、さまざまな機会をとらえて管内をできるだけきめ細かくパトロールすることとしてございます。
 続きまして、マニフェストの適用拡大への対応についてでございますが、マニフェストにつきましては、従来、感染性廃棄物等の特別管理産業廃棄物にしか義務づけられておりませんでしたが、法改正により、本年十二月からすべての産業廃棄物に義務づけられることとなりました。関係部局、関係団体の協力を得て排出事業者に対する周知を図るとともに、実施状況を抜き打ち検査するなど普及に努めてまいる考えでございます。
 続きまして、廃棄物処理への公的関与についてでございますが、紀北地域につきましては、フェニックス計画への参加により公共関与の最終処分を実施いたしております。フェニックスの最終処分場で埋め立てられない産業廃棄物、例えば家屋の解体廃棄物のように木くず等が混入したものや、水面に浮くプラスチックなどにつきましては一定の前処理を行う必要がありますので、中間処理機能の整備が課題となっております。また、紀中、紀南の最終処分機能につきましても課題となっているところであります。こうした課題に対処するためには一定の公共関与が必要であると考えてございますので、財団法人和歌山環境保全公社の将来構想とも連動しつつ、廃棄物処理センターに求められる機能の整備について検討してまいりたいと考えております。
 続きまして、産業廃棄物適正処理推進センターへの請求についてのご質問でございますが、株式会社日本工業所の事例は、地元からの強い要求により焼却中止を要請指導したため、廃棄物が未処理のまま現場に残されることになりました。そのため、これを搬出・処分する必要が生じたことから、財団法人和歌山環境保全公社の協力を得てその費用の一部を支援したものでございます。
 産業廃棄物適正処理推進センターからの出捐を求めるのは、法による措置命令を執行し、事業者が応じない場合に県がかわって措置する場合となりますが、今回のケースはこれに該当してございません。
 最後に、民間焼却施設のダイオキシン対策についてでありますが、産業廃棄物処理施設として設置許可した焼却炉は十七施設ございますが、今回の法改正により小規模施設も許可対象となりましたので、既設の小規模施設は許可されたものとみなされることとなり、その結果、現在二十九施設が法対象となってございます。これらの施設は、本年十二月までにダイオキシンの測定を実施し、十二月以降の規制をクリアする必要がありますので、現在、設置者に対し早急に測定を実施するよう指導しているところでございます。
 なお、測定結果を報告させ、基準を超えている場合には必要な対策を指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 医科大学学長山本博之君。
  〔山本博之君、登壇〕(拍手)
○医科大学学長(山本博之君) 新田議員のご質問のうち、県立医科大学における救急体制についてお答えいたします。
 医科大学附属病院では、現在、救急処置室二室と救急ベッド四床を確保し、救急患者に対応してございます。今回は、各病棟のベッドも有効に活用いたしまして、搬送されてまいりました十七名の患者さん全員を受け入れました。現在、災害等を含め、救急患者が集中して多数搬送されてくることなどを想定いたしまして、マニュアルづくり、体制づくりを行っているところでございます。
 なお、来年五月に開院いたします新医大附属病院では、救急医療体制の充実を重要な柱の一つと考えてございまして、組織上、救急・集中治療部を整備し、専任スタッフを増員するとともに、救急ベッドは十五床に、救急処置室も四室にふやし、充実強化してございます。
 次に、附属病院の毒物中毒への体制でございますが、今回の事件では、最初に搬送されてまいりました患者さんの症状や問診から農薬中毒を疑いまして、胃洗浄を行うとともに、パラコートと有機燐の検査をいたしました。しかし、農薬は検出されませんでした。毒物中毒の多くの場合はその原因毒物がわかっておりまして、その治療薬として、議員ご指摘の亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、PAM、硫酸アトロピン、BALなどを常に備えてございます。しかしながら、今回の事件のように原因毒物が不明である場合には、その毒物を迅速に特定することは困難でございます。
 今後、県立医科大学といたしましては、関係諸機関と連携し、本学の有する機能を最大限に活用し、毒物中毒の救急体制の充実に寄与してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 警察本部長米田 壯君。
  〔米田 壯君、登壇〕
○警察本部長(米田 壯君) 新田議員のご質問にお答えをいたします。
 第一点目、事件の捜査状況でございますが、先ほど小川議員にお答えをいたしましたとおりでございまして、現在、和歌山東警察署に刑事部長を長とする二百四十六名体制の捜査本部を設置し、鋭意捜査を行っております。現在まで、関係者約三百十名から事情聴取を得、また県内外から約七百五十件の情報が寄せられております。警察といたしましては、引き続き強力に捜査を推進し、残虐きわまりない本事件の早期解決に向け全力を尽くす所存であります。
 第二点目は、類似事件の発生をどう阻止するのかというご質問でございますけれども、園部地区及びその周辺におきましては、同種事件の再発防止と県民の不安感の解消を図るため、発生現場を管轄する有功交番に制服警察官を増員して体制強化を図るとともに、地域警察官の勤務体制を三交代制勤務から二交代制勤務に変更し、制服警察官による見せる警戒活動を強化しております。県内の警察署におきましても、同様に勤務体制の変更や祭り等の催し場所での警戒活動を強化するとともに、関係団体である地域安全推進員、少年補導員、交番駐在所連絡協議会、自治会等と連携を図り、パトロール等を強化しているところであります。
 また、全国的に続発しております毒物等混入事件の再発防止対策につきましては、各警察署においてスーパー店頭、街頭等における広報啓発活動やパトロールの強化等に努めているほか、県下の大型量販店防犯連絡会、コンビニエンスストア防犯協議会、清涼飲料水自動販売機業者等の代表者との連絡会議を開催するなど関係業界とも連携を図っているところであり、今後も引き続き再発防止に努めてまいる所存であります。
 三点目の、被害者及びその家族に対する支援及び心のケアに対して警察はどう対応するのかというご質問でございますが、警察といたしましては、被害に遭われた方々などの精神的被害等の軽減、解消を図るためには、一日も早く事件を解決することが何よりであると思っております。
 今までとりました具体的な被害者対策といたしましては、事件発生当初の七月二十七日、毒物混入事件被害者対策班を編成し、被害者の方々の相談に備える体制を整えたところであります。また、同種事件の再発防止と住民の方々の不安感の除去を目的として、有功交番の警察官を大幅に増員するとともに、ホットライン有功一一〇番を設置したほか、被害者家族宅を訪問するなどして各種相談窓口や犯罪被害給付制度等の説明を実施しております。さらに、被害者対策に当たる警察職員や関係団体の担当者に対しまして犯罪被害者に対するカウンセリングについての研修を実施するなど、関係機関、団体との連携をとりながら、被害者の視点に立った諸対策の推進に努めているところであります。今後も、被害者等のニーズに沿った対策を確実に推進してまいる所存であります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 38番新田和弘君。
○新田和弘君 簡潔に、二点だけ要望させていただきたいと思います。
 まず一点目でございますが、毒物カレー事件に対しまして、関係の皆さんが大変なご努力をされておるわけでございますが、今回の事件を教訓にいたしまして、この危機管理体制の確立をぜひともやっていただき、県民の生命と健康を守っていただきたいことを要望いたす次第でございます。
 あわせて、県民のこの不安を解消するためには犯人逮捕による事件解決ということが強く県民の願うところでございますので、県警の皆さんのさらなるご努力を要望いたしたいと思う次第でございます。
 二点目でございますが、先ほど生活文化部長から、橋本の産業廃棄物の撤去に関しまして、産業廃棄物適正処理推進センターへの請求については、今回の場合は該当しませんというお答えでございました。これは、地元住民の早急に解決をしてほしいということの中でとられた措置であったかと思うわけでございますが、この環境保全公社からのお金を県に寄附金ないしは繰入金として受け入れて県が支出をする、そして業者に対しては措置命令を出すことによって撤去をさせる形をとった上で県が撤去しておれば、適正処理推進センターに対して請求ができたのではないか、そうすれば一億五千万の半額が県に返ってくる、こういうことができたのではないかと思いますので、今後こういった不適正処理の原状回復等に当たりましては県の費用をできるだけ少なくできるように、当局としても十分勘案をして対処されることを要望いたしておきます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で新田和弘君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) この際、暫時休憩いたします。
  午後零時七分休憩
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