平成10年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(小川 武議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
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  【日程第一 議案第百八号から議案第百三十七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百八号から議案第百三十七号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 3番小川 武君。
  〔小川 武君、登壇〕(拍手)
○小川 武君 九月定例会一般質問の冒頭に質問の機会を与えていただきました先輩・同僚議員に感謝いたしたいと思います。
 議長のお許しをいただきまして、最初に、本年七月二十五日、和歌山市園部の自治会夏祭り会場において発生した毒物混入事件についてであります。
 この事件では、第十四自治会の谷中会長さんを初め四人の方のとうとい命が奪われ、六十三名の方が入院あるいは通院を余儀なくされるという痛ましい惨事となりました。また九月二日には、この事件の中核として捜査指揮に従事していた村井警視が過労により倒れ、死亡するという悲しい出来事も発生しており、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、入院、通院の被害に遭われました皆様方に心からお見舞い申し上げる次第であります。
 全国的に地域の連帯感が薄れていると言われている昨今、園部第十四自治会では、夏祭りを通じて自治会の親睦と連帯感を深めようと、数年前から夏祭りを計画し、実行してきたと聞いております。自治会の多くの皆さんが楽しみにしていた夏祭りで提供されたカレーに毒物を混入し、それを食した方々が大変な被害をこうむるという無差別殺人をねらった悪質きわまりない犯罪に対し、私は強い憤りを感じるものであります。
 県議会といたしましても、七月三十一日、県議会毒物混入事件対応連絡会議を設置し、各関係機関等と協議を重ね、その対策に全力を尽くしているところであります。地域社会の安全がかくももろく崩れていくことは、これまでにも阪神・淡路大震災、堺市における病原性大腸菌O157中毒等、前例となる大事件があり、その都度県は、地域防災体制、O157等病原性大腸菌対策等、体制整備を行ってこられたところであります。しかし、今回の事件はさらにいろいろな問題点が浮かび上がっており、県行政としてもこのことを真摯に受けとめ、早急に問題点を整理し、反省すべき点、改善を要する点を明らかにする必要があると思います。
 そこで、事件発生以来、県としてどう対応してきたのか、これを教訓として今後どう対応するのか、知事のご所見を承りたいと思います。
 この事件では、発生直後から和歌山東署に捜査本部を設置し、多数の捜査員を投入して被疑者検挙に向け懸命の捜査を続けていると伺っております。私は、警察捜査というものは、マスコミ報道と異なり、人権に対する配慮から安易に捜査状況を発表しないことが当然であると考えますし、また何ら語らなくとも着実に捜査を進めているものと確信しております。一部マスコミの報道では、発生当初の警察の初動措置がおくれたのではないか、さらには砒素検出まで時間がかかり過ぎたのではないか等の警察への批判も聞かれるところであります。
 そこで、警察本部長に質問いたします。
 一点は、警察の初動措置はどうであったか。
 二点は、砒素検出まで相当の時間を要しているが、なぜもっと早い段階で検出することができなかったのか。
 三点は、毒物混入事件のこれまでの捜査状況はどうか。
 以上三点についてお伺いしたいと思います。
 次に、事件の推移に従って、私が把握している問題点を指摘してまいりたいと思います。
 まず、消防隊は、集団救急事案について、全救急隊十一隊を出動させ、延べ五十人が十二医療機関に搬送されました。事件発生が土曜日の夕方であったにもかかわらず迅速な搬送と医療機関の受け入れがスムーズになされたことは、和歌山市における救急医療体制がうまく機能した結果と考えられます。しかし、もし同規模の事故が県下のほかの地域で発生した場合、同じ対応が可能だったかどうか疑問が残るわけであります。
 そこで、搬送体制と受け入れ医療体制について今後どう取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
 次に、搬送された患者の治療についてでありますが、運ばれた患者がどんな状態であるかは医者が患者の様子を見て判断するわけでありますが、このような多くの患者が発生し、複数の医療機関にわたったという特異なケースについて、治療過程において医療機関相互の情報交換や効果的な処置方針の伝達など、今後どのような体制が考えられるのか、関係部長の答弁をお願いいたします。
 さらに、今回のような毒物事件の場合、県衛生公害研究センター、県警察科学捜査研究所、市衛生研究所などの検査研究機関の連携や役割分担についてどのように考えているのか、お伺いいたしたいと思います。
 次に、原因物質が特定されれば、治療のためどのような薬品を投与するかでありますが、ある病院では解毒剤を調整できたが、他の医療機関では確保するのに大変時間がかかったと聞いております。県の病院協会では、いち早く当面の対応として解毒剤を県下三カ所に配置されたと聞いておりますが、有効期限が約半年と短いものがあり、県は解毒剤等の備蓄についてどのように考えているのか、お伺いいたしたいと思います。
 最後に、事件に巻き込まれた人はもちろんでありますが、その家族や地域の住民の方々にとってもこのような事件は大変大きなショックで、心に受けた傷はなかなかいやされることはないわけで、心のケアが重要であり、県も専門職員を応援要員として派遣したようであるが、このような人材の育成についてどう考えているのか、お伺いいたしたいと思います。
 以上、数点にわたる質問をいたしましたが、何よりも事件が早く解決し、地域住民が安心して暮らせる日が一日でも早く訪れることを祈念いたしております。
 次に、経済問題に移ります。
 アジアの経済を初めとする国際経済が危機的な状態と言われる中で、日本経済も四月から六月期の国内総生産(GDP)が年率換算で三・三%減少し、戦後初めて三、四半期連続のマイナス成長を記録したとの発表がされております。また、九月八日の関係閣僚会議で堺屋太一経済企画庁長官は九月の月例経済報告書を提出し、景気の現状は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況との総括判断を行い、前月の「甚だ厳しい」を「極めて厳しい」に表現を改め、より厳しさを強調したところであります。さらに、世界的な株安など金融市場が不安定な中で、経済の先行きに対する不透明感の高まりから企業の設備投資や個人消費の落ち込みに拍車をかけ、デフレスパイラルには入っていないが、そのわきを通っており、吸い込まれる危険があると表現し、日本経済が非常に暗い時期に入ったことを指摘しております。
 私は、本県の経済を考えますと、国の判断よりも増して、さらに一段と厳しい状況に置かれているのではないかと推察するものであります。それは、一昨年の平成八年十一月の阪和銀行の業務停止に始まり、本年三月の和歌山県商工信用組合の紀陽銀行への事業譲渡の発表という、本県経済の発展を牽引してきた二つの県内大手金融機関が相次いで破綻したということであります。そしてこの七月には、大阪証券取引所一部上場の浅川組が負債六百三億円を抱えて会社更生法の適用を申請し、事実上倒産するという事態にまで発展いたしております。そのほかにも、金融機関の貸し渋りによる倒産という話も聞こえてくる中、本年一月から八月までの一千万円以上の負債額で倒産した業者は百二件、負債累計額は一千五百四十七億円を超し、これは昨年一年間の負債総額の約四倍にも当たる数字であり、和歌山県は大変深刻な状況に陥っているのではないかと考えるところであります。
 そこでまず初めに、県経済の状況をどのように認識しておられるのか、また地場産業を中心に中小企業の活性化を図るためどのような施策を講じてきたのか、また今日までのような本県の産業構造を継続していくとなればさらにその先行きが大変懸念されるが、今後どのような施策を講じる必要があるのか、知事にお尋ねしたいと思います。
 次に、一連の経済情勢を踏まえて、現在、中小企業者は資金繰りに苦慮している状況であるが、県は不況対策特別資金の融資枠について、四月から五十億円の融資を実施し、六月補正ではさらに五十億円増額いたしました。そして、今議会において百億円の融資枠拡大とのことでありますが、現在の融資の利用状況はどのようになっているのか、また今後の見通しはどうか、それから浅川組または浅川道路と取引のある下請業者など関連企業に対する金融対策にどのように取り組んでおられるのか、また県の融資制度は信用保証協会の保証つき融資となっているが、この信用保証協会の保証取り組みはどのようになっているのか、商工労働部長にお伺いしたいと思います。
 次に、先ほども触れました浅川組に関してであります。
 九月十日に会社更生手続開始決定を受けたことに関連して、まず他府県の同様の例に比べ早期に開始決定されたことについては、関係者のご努力、ご協力があったことが推察できます。関係された方々に対し、私は個人的にも感謝いたしたいと思います。しかしながら、こうして最悪の事態を避けられたことは、不幸中にも歓迎すべきことでありましょうが、それでもなお経済状況が依然として厳しい状況にある本県の経済に与える影響は、心理面だけを考えても大きいものがあるかと思われます。県としては、この大変な状況にある県の経済にできる限り影響を及ぼさないようにするため、浅川組に対して今後いかなる対応をされるのかについてお聞かせいただきたいと思います。
 具体的には、現在、県は浅川組に対して、公共工事の指名を行っていないと聞いております。浅川組の更生管財人も言っておりますように、会社再建のために公共工事、特に県内の大型事業の受注を期待しているとのことであります。この浅川組が再スタートすることによって浅川組の多くの下請業者、関連業者が経営正常化することにより、県の景気浮揚、雇用対策にも影響が見込まれると思われますので、浅川組に対し、県は今後いつ指名を、どのようにして再開するのか、具体的な時期を含めて説明されることを求めます。
 次に、旧南紀白浜空港跡地への航空工学系大学の立地構想についてお尋ねいたします。
 本構想につきましては、去る九月十四日、九月定例議会開会日において、西口知事みずから積極的に推進していく旨を明らかにされたところであります。その後、このニュースは、県内はもとより全国的に大きな反響を呼んでおります。特に県民の間では、暗いニュースが続く中、久々の明るい話題として好感を持って受けとめられ、また本県の経済の活性化に貢献するものとして大きな期待を寄せられているところであります。
 現在、全国で航空工学系の学科を持つ大学は十一大学があり、毎年約七百名余りの卒業生を輩出していると聞くところであります。欧米先進国に比べ比較的低い水準にある現在の日本のこの分野での技術向上と、今後ますます需要が見込まれる航空産業を支える人材が必要になってくると思われます。
 西口知事のご説明では、構想の詳細については今後の検討協議により具体化させていくということでありますが、県民の期待の大きい問題であるだけに、基本的な部分について、現在可能な範囲で明らかにしていただきたいと思います。
 まず、本構想が実現した場合の、本県そして地域に与える影響についてであります。どのような効果をもたらすものと考えておられるのか、改めて西口知事にお尋ねいたしたいと思います。
 また、新たな学校法人の設立、及び大学の開学の時期はいつごろとお考えなのか、またそれに至るスケジュールはどのようなものかについて、企画部長にお答えいただきたいと思います。
 次に、財政問題を取り上げたいと思います。
 近年、地方財政はまさにあえいでいる状況であります。新聞紙上でも「あえぐ地方財政」と題して、全国の市町村や府県の危機に瀕した財政状況が報じられております。不交付団体として富裕県の代表と言われた、あの大阪府が非常に苦しい財政状況に陥っているという例のように、自治体の財政事情が深刻化しているのを目の当たりにいたしますと、本県の財政運営に対し重大な関心を持たざるを得なくなった次第であります。
 もとより、財政はあくまでも行政目的を達成するための手段であり、財政の健全化そのものが目標になってはならないわけであります。地方自治体は、地域住民の生活に密着した行政サービスを日々提供しなければなりません。県財政が破綻するようなことになれば、県民生活への影響は甚大であります。県民に対し財政の現状を率直に開示し理解を求めていく中で、時には必要な痛みを県民とともに分かち合うことも必要であろうと思います。財政危機を克服し、行財政を再構築することにより、我々の子孫に豊かで活力のある社会を残していくことが今日の政治の大切な役割であると思います。我が県は比較的堅実な財政運営を心がけてきたと思いますが、今日のように財政事情が悪化してしまった理由は何でありましょうか。
 財政悪化の直接の原因は、税収の伸び悩みと公債費の増大に集約されると思います。このうち公債費の増大は、もとをただせば平成五年度以降講じてきた累次の景気対策のために公債を大量に発行してきたことが主たる原因と思われます。現下の経済情勢には、確かに厳しいものがあります。ただ、財政政策が実体経済に対する正常な波及効果を回復するためには、まずもって不良債権問題の解消と金融機能の回復を図ることが不可欠であります。残念ながら、これは一自治体レベルで対応し得る問題ではありません。むしろ、二十一世紀においてますますま増大が見込まれる、地域の生活に密着した政策課題を着実にこなしていくことこそ自治体の基本的な役割であり、県財政に与えられた本来の使命であることを想起するならば、財政は政策の持続が可能なように節度を持って運営されるべきものであると考えるのであります。高齢化と少子化が同時進行していく中で、後世代のためにいかにして豊かで活力のある社会をつくっていけばよいのか、そうした社会を希求しながら財政のあり方を議論しなければならないのではないかと私は考えるのであります。
 そこで、まず知事に二点ばかりお伺いしたいと思います。
 まず一点は、私は県の財政事情について非常に厳しいという認識を持っておりますが、知事はどのように考えておられるか。
 また、財政の現状を踏まえ、今後の財政運営について、どのような基本的な考え方で取り組まれるおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 次に、先日発表された九年度決算についてでありますが、見かけ上の収支は七年度、八年度は赤字であったが、九年度決算では二十四億円の実質単年度収支が黒字に転じております。しかし、これをもって財政事情が改善したと判断するわけにはいかないのではないでしょうか。私は、実態は八年度よりもむしろ悪化しているのではないかと見ているわけであります。財政当局はどう分析されているのか、お伺いしたいと思います。
 次に、九月補正予算を取り上げたいのであります。
 今般の補正予算は、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、七十四億円の経済対策を講じる内容となっております。中小企業に対する金融対策等、適切な措置と評価はいたしますが、しかし私はあえて歳入を取り上げたいと思います。
 歳入補正の内容を見ますと、県税及び地方交付税について七十億円もの減額補正が行われております。九月補正予算でこれだけの減額補正が行われるのは極めて珍しいことではないかと思いますが、これは税収動向が厳しいことを率直に示したものであると重く受けとめております。ここで懸念されるのは、果たして十年度の収支見通しは立っているのかどうかという点であります。財政調整基金をさらに取り崩さなければ歳入欠陥を生じてしまうのではないかとも心配されるのであります。当局としては、十年度の収支について現段階ではどのような見通しを持っておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
 最後に、今後の財政見通しについて議論しておきたいと思います。
 私は、率直に申し上げて、今後ともしばらくは税収は伸び悩むのではないかと予想しております。他方で公債費負担はますます高まり、歳出を一段と圧迫すると思います。このままでは、これまで収支不均衡を埋めてきた財政調整基金は激減する一方であり、我が県が財政調整機能を喪失するのも秒読みの段階ではないでしょうか。したがって、一刻も早く今日の歳出構造を見直していかなければならないのではないかと考えます。
 そこで、当局は中期的な財政見通しについてどのような展望を持っておられるのか、あるいは危機感を抱いておられるのか、以上の点について総務部長にお伺いいたします。
 大阪府では、我が県よりも一足早く危機的な財政状況を迎えており、歳出削減と負担増を徹底的に実行することにより、この危機を克服しようとしております。私は、これはこれで一つの答えの出し方であるとも思いますが、我が県といたしましては、事態がここまで深刻化する前に財政再建に精力的に取り組んでいくべきであると思います。和歌山新時代を担う後世代のために、財政危機の克服を通じて新たな時代の要請に柔軟かつ的確に対応できる行財政を再構築していくことが急務であります。大変な時代であり、このようなときに難局を乗り越え、新時代を切り開くことができるのは、長年の経験、果敢な決断力、県政への情熱、そして和歌山県をこよなく愛する心を備えた西口知事、あなたです。百八万県民とともにご期待を申し上げて、質問を終わらせていただきます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの小川武君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 小川議員にお答えをいたします。
 最後に激励をいただいて、ありがとうございます。
 まず、毒物混入事件についてでございます。
 今般の事件につきましては、私も、亡くなられた四人の方々、それぞれ弔問をさせていただき、また入院、通院の方々には県からもそれぞれお見舞いを申し上げたところでございます。
 この事件につきましては、大変強い怒りを覚えると同時に、二度とこのようなことを起こしてはならないと痛感している次第でございます。
 県といたしましては、発生当初から情報の収集を開始するとともに、庁内に副知事をキャップとした健康危機対策連絡会議を設置いたしまして、和歌山市の対策本部が適切に対応できるよう全面的な支援体制をしくとともに、再発防止のために関係機関等に対しまして注意の喚起、毒物、劇物の適正な取り扱いの徹底を図るための立入監視指導、心のケア支援のために専門職員の派遣等を行ってまいりました。私自身も、厚生大臣に尿中砒素濃度測定検査費用の医療保険適用と心のケア事業を国庫補助事業としての採択を要望したところでございまして、厚生大臣からは即時に決定及び採択していただいたところでございます。また、被害者の方々や地域住民の方々の心身両面にわたるご負担を軽減するために、和歌山市が取り組みをしている諸事業をバックアップするため一千万円の支援金を今議会に提案させていただいておるところでございます。
 今後の対応についてでございますけれども、本庁及び地方機関別の危機管理体制、搬送、医療機関での受け入れ、毒物検査、解毒剤の備蓄、専門職員の派遣等の体制整備マニュアルづくりにつきまして、関係機関、団体との調整を図りながら、十月中の策定をめどに取り組んでいきたいと考えてございます。
 次に、県経済の現状をどう見るかというご質問でございます。
 議員からご指摘がございましたように、我が国の経済は昨年から急激な景気の後退が始まってございまして、個人消費の低迷、企業収益の低下、また雇用環境の悪化等、非常に厳しい状況にございます。さらに、アジア経済危機あるいはロシアの株安の問題などの影響を受けまして各種経済指標がマイナスに推移しているわけでございまして、大変深刻な需要不足に陥っているわけでございます。
 本県産業につきましても、従来から鉄鋼、石油などの基礎素材型産業のウエートが大変高いわけでありまして、また繊維、生活雑貨等の生活に関連した地場産業が中心となっておるわけでございます。そういった関係から、本県経済が一段と厳しさを増しているという認識を持ってございます。また、県内の金融機関の破綻などによりまして、中小企業に対する影響につきましても大変懸念しているところでございます。
 このような厳しい経済情勢に対応いたしまして、国におきましては、種々の議論の末、財政構造改革法を一時凍結したわけでございまして、さらに過去最大規模の経済対策を実施しておるところでございます。本県におきましても、経済の活性化を最重点の柱に据えまして、中小企業対策の充実、県単独事業や公共事業の追加など、積極的な補正予算措置を講じておるわけであります。
 ただいま小渕総理が渡米中でありますけれども、小渕総理とクリントン大統領の会談が大きな成果を上げられればと、個人的には大変期待をしておるところであります。
 次に、中小企業の活性化についてであります。
 ただいまの景気が非常に苦しいということに関連をいたしまして、我が地場産業を中心とした中小企業の活性化を図るために、現在の目まぐるしい経済変化に耐え得る後継者の育成、新商品、新技術の開発や新たな販売ルートの開発など、創造的な中小企業への創造活動に対しまして、中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法いわゆる創造法でありますが、この法律による企業認定を行いまして、技術面、資金面から支援を行ってまいりました。現在まで、三十三の企業に認定を行っておるわけでございます。また、今年度から地域産業資源創出枠を創設いたしまして、リサイクル技術などの環境を考えた技術開発に対する支援を積極的に行いまして、新たな環境ビジネスの産業創出を図っておるところでございます。
 一方、和歌山大学システム工学部、近畿大学生物理工学部など理工系の高等教育機関が大変充実をされてきておりますので、その中で地域産業の高度化を支援する機関として県工業技術センターの充実、あるいは海南にございますデザインセンターの設置を図ってきたところでございます。
 今後、教育研究機関の充実を踏まえて、産業界、経済団体も含め、いわゆる産・学・官の総合的な連携を図りながら、産業の高度化、高付加価値化を生み出す新しい産業の創出などの施策に取り組んでまいりたいと考えております。
 経済評論家の説によりますと、今の不況を脱するには新しい産業の創出しかないという論もございます。
 次に、旧白浜空港跡地の航空大学立地構想であります。
 旧南紀白浜空港跡地への航空工学系大学の立地構想については、本議会の冒頭に申し上げたところでありますけれども、県、白浜町、そして日本航空学園の三者が協力して新たな学校法人を設立し、航空機の設計・開発、航空運輸システムの計画・運用に係る最先端の技術、知識を集約した国際的にも誇り得る大学を開設しようとするものでございます。
 この構想の実現による本県にとっての効果といたしましては、まず県内の大学の収容力の向上、とりわけ理工系大学への進学機会をふやすことになるわけであります。また、地域産業界への高度な技術や知識の還元によりまして地域産業の発展につながるものと期待をしてございます。
 次に、施設建設に伴う経済波及効果はもちろんでありますけれども、多くの教職員や学生が居住すること、また大学の運営管理に伴う雇用機会や消費需要が生まれることなどによる継続的な経済波及効果があるものと考えてございます。また、研究者や民間企業関係者、学生や学生の保護者、航空博物館への来訪者など、県外や海外との交流人口の増加、それに伴う新南紀白浜空港の利用増進、地域の知名度の向上、こういったことが期待できるものと考えております。こうした継続的な地域の活性化につながる本構想の実現のためには多くの課題が残されてございまして、これらを克服していく必要がございますけれども、関係諸機関との協議を進めながら積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 最後に、財政問題についてであります。
 県財政の現状認識と今後の財政運営の基本的な考え方でありますが、長引く不況とそれに伴う税収の低迷が長期化する中で、今まで積み重ねてまいりました景気対策などの財源として大量発行を余儀なくされた県債の本格償還が始まったことなどによりまして、近年、財政の収支不均衡が拡大していることは事実でございます。今後も引き続き県税等の画期的な増収が望みがたい状況の中で、公債費などの義務的経費の急激な増大が確実に見込まれることからいたしまして、この不均衡は今後一段と拡大する見通しでございます。
 他方で、こうした毎年度の歳入、歳出のギャップにつきましては、従来、税収の好調な時期に積み立ててまいりました財政調整基金等の取り崩しにより埋め合わせてまいったわけでありますけれども、その頼みの綱の基金は既に十一年度の不均衡を調整するにも不足する水準にまで落ち込んでございまして、十二年度以降は基金依存型の財政運営からの脱却を余儀なくされておるわけでございます。
 地方公共団体の財政悪化は本県のみの問題ではございませんで、他府県の一部では既に事実上の財政破綻の状態に陥っているところもございます。議員ご指摘のように、県財政が破綻するようなことになれば県民生活に与える影響ははかり知れないものがございますので、そのような最悪の事態となる前に構造的な収支不均衡を解消し、財政を立て直して、二十一世紀に向けて財政の対応力を回復していかなければならないわけであります。
 しかしながら一方で、現下の極めて厳しい経済情勢のもとでは、景気への配慮もまた財政運営上の重要な課題でございます。したがいまして、当面する十一年度の財政運営は、二十一世紀に向けて財政の対応力の確保を図りながら、当面の経済情勢にも可能な限りの配慮をしていくという大変難しい課題を背負ったものとなるわけでありますが、文字どおり全力を傾注して取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長藤谷茂樹君。
  〔藤谷茂樹君、登壇〕
○総務部長(藤谷茂樹君) 小川議員にお答え申し上げます。
 まず、毒物混入事件における搬送体制についてでございますが、被害者六十七人のうち五十人を救急搬送するという、今まで例を見ない集団救急事案でございました。和歌山市消防局全救急隊十一隊が出動し搬送業務を遂行したところですが、このような事案が他の市町村で発生した場合、単独の消防本部では対応が非常に困難なことと認識いたしてございます。現状では、近隣市町村との応援協定による他の消防本部への出動要請がありますが、県といたしましては、より効率よく搬送するため、それぞれの他の地域での実情に即した集団救急体制等の見直しなどを図り、マニュアルづくりを進めることが大事なことと考え、去る九月九日に県消防長会と共同で県内消防関係者を対象に研修会を開催し、これらの推進を指導しているところでございます。また、消防の広域化や自主防災組織の育成等に力を注ぎ、危機管理体制の強化に努めてまいりたいと存じます。
 次に、財政問題でございますが、まず九年度決算についてでございます。
 過日公表いたしましたものは、一般会計と企業会計を除く特別会計とを合わせた普通会計ベースでの決算状況を示したものでございまして、自治省が毎年実施しておりますいわゆる決算統計に用いる本県の決算分析結果でございます。これによりますと、九年度の実質単年度収支、これは当該年度の収支決算から前年度からの繰越剰余金、年度中の財政調整基金の積み立てや取り崩し、県債の繰り上げ償還といった実質的な黒字要素や赤字要素を控除した単年度の収支状況を示すものでございますが、九年度は約二十四億円の黒字となっており、七年度、八年度の連年の赤字から一転して黒字となっております。しかしながら、決算統計上の実質単年度収支には財政調整基金と同様に財源不足を補うために活用している県債管理基金の取り崩しが反映されない仕組みになっておりますので、県財政の収支実態を明らかにするためには、これも赤字要素としてカウントする必要がございます。このような観点から再計算いたしますと、議員お見込みのとおり、九年度決算における収支実態は約百二十五億円のマイナスとなっており、八年度は三十一億円のマイナスでございましたので、財政状況は著しく悪化してございます。
 次に、十年度の収支見通しについてでございます。
 まず、当初予算の段階で約二百六十億円の収支ギャップがございましたが、これに対しては財政調整基金と県債管理基金を充当したところでございます。また、六月及び九月補正予算における追加財政需要、税及び交付税の減収見込みにより、新たに約四十二億円の収支不足が生じておりまして、この補てん措置として減収補てん債の発行、財政調整基金の取り崩しをこの補正予算に計上しているところでございます。
 今後も税収の動向には予断を許さないものがあることから、追加財政需要のいかんにもよりますが、現時点における見通しとしては、本年度は最終的には三百億円を上回る収支不均衡になるものと見込んでおり、この収支ギャップは基金のさらなる取り崩しと県債の発行により埋め合わせをせざるを得ないと考えてございます。
 次に、県財政の中期的見通しについてでございますが、今申し上げましたように、県財政の現状を踏まえますと、次年度も県税など歳入面での増収に大きな期待がかけられない一方で、公債費などの義務的経費の増大が確実に見込まれるため収支ギャップはさらに拡大し、政策的経費を自然体で見積もった場合には、粗っぽい計算ですが五百億円近い一般財源の不足が生じるものと推計しております。また、十二度以降も当分の間はこのような状態が続くものと思われます。
 これに対しまして、財政調整基金と県債管理基金の十年度末残高はこの九月補正後時点では約三百五十億円と見込まれますので、この二つの基金による財源調整機能は十一年度予算限りになるものと申し上げざるを得ない状況にあります。したがって、次年度以降の財政運営は、近時例を見ないような困難に直面するものと覚悟せざるを得ず、見込まれる収支ギャップのできる限りの縮減と財源対策について、今後あらゆる方策を検討し、懸命に努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 小川議員ご質問の、毒物混入事件についての四点にお答えいたします。
 まず、同規模の事件が他の地域で発生した場合の受け入れ医療機関についてでございますが、救急医療機関の受け入れ体制につきましては、救急告示病院等と二次医療圏単位の病院群輪番制病院で患者を受け入れる体制づくりを行っております。また、二次救急医療機関では対応が困難な重篤救急患者には、和歌山県赤十字救命救急センターや県立医科大学附属病院の高度医療機関で受け入れることとなっております。医療機関の少ない地域におきましては、その少ない医療資源を最大限に活用すべく、医師や医療従事者の応援体制など、医療機関相互の連携をより一層図れるような体制づくりを考えてまいります。
 次に、多くの患者が発生し、複数の医療機関にわたったというケースの今後の体制についてでございますが、このような特異な事件で多数の患者が複数の医療機関に収容された場合、患者の症状及びその治療等の情報を一元化し、適切なアドバイスができる体制が不可欠となってまいります。県といたしましては、県立医科大学、和歌山県赤十字救命救急センターを核として、国の研究機関等とも連携を図りながら、適切な対応が図れるような情報ネットワークづくりを検討してまいります。
 次に、毒物に対する解毒剤の確保につきましては、県内九十四病院の解毒剤等の保有状況を調査したところ、現在八カ所の医療機関で購入済みとなってございます。そのほかに、県病院協会では三カ所に配置を行っております。なお、配備状況につきましては、医療関係機関に対し情報提供を行ったところです。
 県といたしましては、このたびの毒物混入事件を念頭に置いて、恒久的な備蓄体制について健康危機管理に関するマニュアルに盛り込むべく作業を進めてまいります。
 最後に、心のケアについてでございますが、地域住民を巻き込んだ大規模犯罪事件や大規模災害等の発生時には、心的外傷後ストレス障害いわゆるPTSDを防止するため、被害者等地域住民に対する心のケアが重要であります。
 今回の毒物混入事件におきましては、心のケアに関し、和歌山市保健所が保健婦による訪問相談、現地に設置した相談窓口における医師、精神保健福祉相談員等による相談等を行っており、県としても同保健所に対し、保健婦、精神保健福祉相談員延べ四十九人を派遣して支援を行ったところであります。
 今後、同種の事件、災害が発生した際の地域住民に対する心のケアにつきましては、地域の精神保健の拠点である保健所を中心として行うことが適当であると考えており、国が主催する専門研修への派遣や研修会の開催等により、医師、保健婦、精神保健福祉相談員等の保健所職員に対する研修を実施し、専門的対応能力を有する職員の育成に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 小川議員ご質問の毒物混入事件のうち毒物検査体制についてでございますが、警察本部及び和歌山市との連携や役割分担につきましては、ただいま知事からお答えいたしましたとおり、十月中の策定を目途として取り組んでおります体制整備マニュアルづくりの中で検討してまいりたいと考えてございます。
 なお、保健所政令市である和歌山市は別途協議することとし、県の毒物検査体制につきましては、患者を診察した医師からの通報に基づき、その医師と保健所長が協議の上、毒物の疑いがある場合には県衛生公害研究センターにおいて分析することといたしております。
 なお、分析をする際には、関係各課で構成する毒物検査検討会及び県衛生公害研究センターの各部長から成る緊急対策会議を開催することといたしてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 景気対策と浅川問題のうち、三点についてお答えします。
 まず、不況対策特別資金の利用状況についてでございますが、八月末現在、融資申し込みベースで八百三十八件、百三十五億円に上り、融資実績は百億円を超える状況となってございます。今後も、現在の景気動向などから不況対策特別資金の需要も当分続くものと予想され、その動向を十分注視しながら、県制度融資を初め、政府系金融機関、信用保証協会等、関係機関と連携を密にし、中小企業者の資金需要にこたえてまいりたいと考えてございます。
 次に、浅川組に関連する中小企業金融対策でございますが、不況対策特別資金は倒産企業と取引のある中小企業者も対象としており、浅川組関連を条件とした融資申し込みは、八月末現在で二十九件、約四億五千万円となっております。浅川組の会社更生法申請後、融資相談などについては速やかに取り組むよう各振興局へ指示するとともに、浅川組が八月四日、通商産業省の中小企業信用保険法に基づく倒産事業者の指定を受け、取引のある中小企業者に対し信用保証の別枠保証が適用されたことから、その周知などの対応を図ってきたところでございます。
 次に、信用保証協会の保証取り組みについてでございますが、保証協会は厳しい経済状況の中、中小企業者の資金需要にこたえるため、より弾力的かつ迅速に取り組んでございます。その保証実績といたしましては、八月末現在、対前年同月比一二〇・七%、特に八月の一カ月間では一六〇%となっております。さらに、国においては政府系金融機関の融資制度の拡充を図るとともに、信用補完制度の拡充を図るための中小企業信用保険法の改正法案を提出するなど、中小企業金融対策を初め保証協会の経営基盤の強化策等が講じられているところであります。県といたしましても、その動向も見きわめつつ、引き続き関係機関と連携を密にして、県内中小企業者の金融の円滑化に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 小川議員の浅川問題についてのご質問にお答えいたします。
 株式会社浅川組につきましては、会社更生法の適用を申請するという事態になったところでございますけれども、議員ご指摘のとおり、去る十日に更生手続が開始決定されたところでございます。県といたしましては、この影響を最小限に抑え、株式会社浅川組が再建に向けてスタートできるよう、法的にできる範囲で対応してまいります。
 既に株式会社浅川組が受注している県発注工事につきましては、下請業者及び関連業者等のご協力を得てすべて再開し、順調に工事を進めておりますが、今後、施工能力や経営状況等を客観的な指標で評価する経営事項審査及び今後の経営方針等のヒアリングを行い、これらをできるだけ早期に行うことにより、十月中をめどに入札参加資格の再認定を行い、新規の受注への道を開きたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長中村協二君。
  〔中村協二君、登壇〕
○企画部長(中村協二君) 小川議員のご質問のうち、旧南紀白浜空港跡地への航空工学系大学の立地構想に関するご質問にお答えをいたします。
 まず、開学の時期につきましては現在検討中であり、未確定でございますが、今後行うべき主な作業を申し上げますと、現在進めております施設計画や運営計画等の調査検討を行い、本年度内に基本構想を作成したいと考えております。
 次に、新たな学校法人を設立するための準備団体を設置する必要があり、この設立準備団体が文部省に対し学校法人の設立及び大学の開設に係る認可申請を行い、当該認可を受けて大学を開設することになります。
 以上のような作業とそれに要する時間等を勘案いたしますと、大学の開学までに最低でも四、五年の期間を要するものと考えてございます。
○議長(下川俊樹君) 警察本部長米田 壯君。
  〔米田 壯君、登壇〕
○警察本部長(米田 壯君) 小川議員のご質問にお答えをいたします。
 第一点目は、警察の初動措置はどうであったのかというご質問でございますけれども、警察が本事案を認知いたしましたのは当日の午後七時三十二分、消防からの園部地区で食中毒が発生した旨の通報が最初であります。
 通報受理後、直ちに警察官を関係病院並びに現場に派遣し、現場観察、自治会役員等から事情聴取を行っていたところ、搬送される患者が続出いたしましたので収容先の病院等にも警察官を派遣し、患者、医師などから事情聴取を行いました。
 その結果、各病院の医師は、病人の症状については、いずれも食中毒である旨の説明でありましたので、警察としては食中毒事案として情報収集を開始したのであります。
 午後十時二十四分ごろ、消防救急隊員から、一部の医師が毒物の可能性もあると話している旨の電話通報がありましたので、捜査員を収容先の病院に派遣し、毒物の可能性について医師、患者などから事情聴取を行ったところ、ほとんどが食中毒であるということでありましたけれども、毒物の可能性もあるとの情報もありましたことから、収容先の病院等から嘔吐物の提出を受け、科学捜査研究所職員により検査を行うとともに、現場においてカレールー、カレーなべ等の押収、及び実況見分を行ったのであります。
 翌午前五時三十分になって青酸反応を検出したことから、人命第一と判断し、直ちに収容先の全病院に架電し、直結医師に通報するとともに捜査本部を設置したのであります。
 警察としては、食中毒発生の通報を受けた段階から、現場臨場の上、自治会関係者、医師等からの事情聴取、証拠品の押収、薬・毒物の検査等を行ったもので、初動措置は適切に行われたものと確信しております。
 第二点目の、砒素をなぜもっと早く検出できなかったのかというご質問でございますが、一般的に申し上げまして、あらかじめ特定の毒物の含有が予想される検体であれば、その毒物に着目した検査手順、検査器材を用いることが可能であることから比較的短時間に鑑定できるのが通例でありますが、何が混入されているか全くわからない場合には、あらゆる毒物の可能性を視野に入れながら一つ一つ検査していく必要があるため、物質の特定をするのにかなりの時間を要するものであります。
 本事件につきましては、当初、毒物の中でも最も毒性が強いとされる青酸反応が検出されたことから、青酸反応の有無を重点的に鑑定資料の分析、検査を行ったところ、処理すべき鑑定資料が多数に上ったことから、青酸に係る詳細な検査、また他の毒物の可能性に係る検査については高性能の検査装置を有する警察庁科学警察研究所に検査を依頼したもので、所要の時間内であったと理解をしております。
 第三点目は、毒物混入事件のこれまでの捜査状況についてのご質問でございます。
 当初、病院等から提出があった嘔吐物等を検査した結果、青酸反応を検出したことから、直ちに和歌山市園部における毒物混入事件として和歌山東警察署に刑事部長を長とする百五十名体制の捜査本部を設置し、その後、体制を二百四十六名に増強し、関係者からの事情聴取、現場付近の検索、聞き込み、毒物の入手経路の割り出し等の捜査を行っております。現在までの事情聴取は、自治会関係者、被害者など約三百十名から聴取をしております。また、一般の方々から捜査本部に寄せられた情報件数は県内外から約七百五十件で、そのほとんどが犯人像や薬・毒物に関するものであります。
 警察といたしましては、捜査環境の厳しい中ではありますが、引き続き目撃情報等の収集に努めるとともに、犯行の原因、動機、さらに毒物の入手可能な人物を中心に捜査を進め、残虐きわまりない本事件の早期解決に向け全力を尽くす所存であります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 再質問がございませんので、以上で小川武君の質問が終了いたしました。
○議長(下川俊樹君) この際、申し上げます。
 当局の答弁は、要を得て簡単明瞭に行うよう留意を願います。

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