平成10年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(森 正樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時一分開議
○副議長(阪部菊雄君) これより本日の会議を開きます。
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  【日程第一 議案第八十二号から議案第百四号まで、及び報第一号から報第三号まで】
  【日程第二 一般質問】
○副議長(阪部菊雄君) 日程第一、議案第八十二号から議案第百四号まで、及び地方自治法第百七十九条の規定による知事専決処分報告報第一号から報第三号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 36番森 正樹君。
  〔森 正樹君、登壇〕(拍手)
○森 正樹君 皆さん、おはようございます。
 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従って質問を行います。
 地方分権が議論されてもう久しくなりますが、その歩みは遅々として進まず、地方主権の確立を願う者にとっては切歯扼腕の日々でございます。ただ、まことに緩やかではありますけれども、確実にその方向に向かいつつあることもまた事実であり、この流れに一点の光明を見出しつつ、私たち関係者は二十一世紀のために、次の世代の人々のために地方主権の確立のための努力を惜しんではならないと思います。
 ところで、国会を初めとして、各方面において首都機能移転の問題が取り上げられております。現に国会等移転調査会の報告では、移転の時期の目標として「世紀を画する年までに建設を開始」とうたっているのであります。ここで言う「世紀を画する年」とは、まさか二一〇一年の、百年先のことではないと存じます。すなわち、ここ数年の間に、国会等の首都機能を移転し建設を開始できるよう、用地買収や条件整備を早急に進めなければならないところまで来ているのであります。
 我が国における巨大プロジェクトの場合、用地買収と移転補償、損害補償に莫大な費用と長い期間を要し、当初の計画が大幅におくれるのが常識のようになってしまっているのであります。国会等移転調査会がリストアップしている北東地域、東海地域、三重・畿央地域の三つの候補地も、広さという点では申し分のないところではございますが、仮に首都機能移転用地と決まってからが大変で、用地買収やさまざまな補償がすべて解決するのに果たして何年、いや何十年かかるのか、だれも予測すらできないというのが我が国の実情ではないでしょうか。
 ところで、戦後、我が国が急激な経済成長を遂げる中、政治、経済等、あらゆる機能が過度に東京に一極集中した結果、さまざまな弊害やひずみを生んでしまいました。この首都へのあらゆる機能の一極集中というのはアジアに極めて特徴的な傾向でございますが、それはさておき、このことへの反省から、今、我が国は首都機能の分散・移転が迫られているのであります。
 そんな折、西口知事も参加されて、先般、すばるサミットが開催されました。別名「関西サミット」とも称されていたようでありますが、関西二府七県三政令市のトップと関西経済五団体のトップが一堂に会して開かれたこのサミットの開催に至る経緯は、平成九年五月、新宮康男住友金属会長が関西経済連合会の会長に就任されたとき、関西の広域連携を呼びかけたことを受けて関経連内に関西広域連携委員会が設置されたことがきっかけとなったと聞いております。その後、同年六月、近畿二府七県三政令市で構成する近畿開発促進協議会が広域連携の検討に取り組むことに合意。同十月、広域連携をテーマにすばるフォーラムが開催されました。そして本年二月には、関西財界セミナーで近畿二府七県三政令市と関西広域連携組織を設立することについて合意がなされ、事務レベル等での準備や意見調整が進められ、五月七日のすばるサミットの開催に至ったのであります。
 ところで、このすばるサミットの席上で西口知事は、「オリンピックの誘致や紀淡連絡道路の建設など、二十一世紀に向けて夢のある計画の実現を目指すことが関西全体の浮上にもつながる。和歌山の役割は、物流などの都市機能とともに、歴史・文化・自然を生かした観光リゾート機能をさらに充実させることであると考えており、来年には南紀熊野体験博を開催する。これまでも三重県、奈良県との三県による半島サミットや、今年は大阪の南の地域と和歌山の北の地域による紀泉フォーラムを開催するが、こうした府県境を越えた取り組みが今後ますます重要になってくる」と発言されております。
 今後、仮称のとれた関西協議会が、「関西は一つ」を合い言葉に、それぞれの個性、特質を生かしつつ、関西復権のために共同歩調をとっていくことが確認されました。私は、関西九府県の官民が一体となって、府県や地域といった狭量なエゴや確執を捨て、「関西は一つ」という共通認識のもと一致団結して関西復権に共同で取り組むことはすばらしいことだと思います。そして、そうすることが、ひいては関西のそれぞれの府県や地域が発展していく近道でもあると言えるのではないでしょうか。
 そこで、以上幾つか申し上げた点を踏まえて、和歌山県勢の発展のために、そして関西の復権のために一つの提案を申し上げたい。それは、大阪空港を廃止して、その跡地に首都機能を移転させることであります。ただし、その条件として、一、関西国際空港の全体構想の実現を前倒しして促進し、アジアのハブ空港としての地位の確立を図る、二、大阪湾ベイエリア構想と紀淡海峡大橋構想等の実現による関西全体の交通網の整備促進を図る、三、テクノスーパーライナーの実現を見据え、関西全体の海の玄関として和歌山下津港をTSL基地と位置づけ、関連施設の整備や交通アクセスの整備を促進することを関西全体の取り組むべきテーマとして認知されるよう、明年開かれる関西協議会において西口知事の口から提言し、あわせて各方面にも働きかけていただきたいのであります。
 大阪空港は三百十七ヘクタール、周辺整備機構等が所有している空港周辺の移転跡地八十四ヘクタールを合わせると、計四百一ヘクタールであります。一方、私の試算によれば、東京永田町霞ケ関に分布する首都機能は、国会議事堂、衆参両院議員会館、首相官邸、国立国会図書館を初め、大蔵省、外務省、法務省など各省庁はもちろん、最高裁判所などまで含めて、ほぼ百ヘクタールの中におさまっているのであります。国会等移転調査会の報告の中でも、首都機能の移転で発生する跡地を、関連施設等を含めて最大二百十ヘクタールとしているのであります。
 ところで、同調査会は移転先候補地の選定基準として、一、東京からの距離が鉄道で一、二時間のおおむね六十キロメートルから三百キロメートル程度の範囲であること、二、広大な用地の迅速かつ円滑な取得が可能な地域で第一段階だけで約二千ヘクタールの土地、三、政令指定都市級の大都市からは十分な距離を保つなどの東京中心の発想や実現困難な選定基準を挙げておりますが、そのほかに、一、国内各地からのアクセスに極めて大きな不均衡が生じない場所、二、欧米主要各国の元首専用機等が発着可能な滑走路を有し、四十分程度以内で到達可能、三、災害により都市活動に著しい支障を生じないよう十分配慮、四、極端に標高の高い山岳部や急峻な地形の多い場所は避けるといった条件を挙げているのであります。
 大阪空港跡地はこれらの選定基準に照らしてみてもぴったりであり、我が国の場合、巨大プロジェクトを実施するとき必ずネックとなる用地買収や移転補償といった難問題を簡単にクリアできる最適地であると私は申し上げたいのであります。
 ところで、大阪空港はなぜ廃止すべきなのか。それは、来るべき二十一世紀の航空需要には到底対応できない欠陥空港であるからであります。すなわち、一、夜間の離着陸が不可能なこと、二、一日の発着枠にも厳しい制限があること、三、将来の需要増に対応すべき新滑走路やターミナルの拡張が無理であること、四、騒音問題等についての周辺地域及び住民の根強い抵抗があること等々の理由により、大都市圏、関西の空の表玄関とはなり得ないからであります。それであれば、他の用途への転換が得策ではないでしょうか。ひいては、大阪空港廃止を声高に叫びながらも、同空港による経済効果、恩恵を受け、騒音問題などをてこに国から補償費等を引きずり出すことに躍起となってきた十一市協や騒音公害訴訟団などをも満足させることができるのであります。
 ちなみに、平成元年から九年までの九年間に同空港周辺に投じられた補償費は、住宅防音工事、教育施設等防音工事、移転補償、緩衝緑地帯整備など、合わせて実に七千四十五億二千二百万円にも上っております。これは地方空港、例えば運輸大臣設置の第二種空港で平成五年供用開始の広島空港クラスであれば、同空港が総事業費七百五十億円ですから九つ以上つくれることになり、第三種空港の南紀白浜空港クラスであればほぼ十四カ所も建設できるほどの膨大な費用であります。いかに大阪空港が我が国の空港網整備をおくらせてきたかが、この事実一つをとっても明々白々であります。
 私が何度も何度も、大阪空港は欠陥空港であり廃止すべきだと叫んできたのも、ここに大きな理由があるのであります。しかしながら、このような地域も関西の中の一つでありますので、これらの地元を納得させ、関西復権のビッグプロジェクトに協力させるためにも、明年に開かれる関西協議会において、再度申し上げますが、私が申し上げた諸点について、ぜひとも知事の口から提言していただきたいと存じます。知事のお考えと決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
 第二点、和歌山大学新駅設置問題についてお尋ねをいたします。
 この問題の発端は、昭和五十九年、和歌山大学が和歌山市高松と同吹上地区から栄谷地区へ統合移転されるに当たり、当時の仮谷知事、和歌山市長、和歌山大学長の三者の皆さんが南海電鉄株式会社に対して新駅設置を要望したのが始まりでありました。平成三年八月二十六日には、運輸省幹部を迎えて南海本線新駅設置促進大会が開催されました。平成四年九月、南海電鉄から和歌山市長に対し、請願駅方式を前提に新駅設置についての諸条件の整備等協議したい旨の意思表示があり、和大新駅設置についての方向性が定まったのであります。その後、請願駅方式との南海電鉄の意思に関しての公的担保を図るため、和歌山市から和大新駅設置促進協議会に対し、区画整理事業方式の提示が行われました。これを受けて和歌山大学周辺地区土地区画整理組合設立準備会が発足、平成八年二月、和歌山市和歌山大学前駅周辺地区土地区画整理組合設立準備組合が発足、翌九年四月、開発審査会において市街化調整区域での本区画整理事業の推進について許可が出されました。そして本年三月三十日、和歌山大学駅設置検討調整会議の第三回会議が開かれ、和歌山県、和歌山市、南海電鉄株式会社、土地区画整理組合設立認可申請予定者の四者による南海本線和歌山大学新駅整備に関する合意書の締結に至ったのであります。なお、先月二十二日には、県市間で和大新駅設置推進調査事業に関する協定書の締結も行われております。
 以上、極めて簡略に和大新駅をめぐる動きを申し上げてまいりましたが、同新駅周辺では日本航空の従業員宿舎が開設されて以来満杯の状態で、現在八百人の方々が生活をされていると聞き及んでおります。しかし、関西空港へのアクセスは国道二十六号線しかなく、バスでの通勤は、大阪府内での渋滞のため一時間半もかかるということでございます。本来、同宿舎は二期、三期の拡張計画が予定されておりましたが、今のところめどが立っていないというのが実情のようでございます。
 一方、和歌山大学も平成八年度にシステム工学部が開設され、総合大学化へのスタートが切られました。現在、学生や教職員を合わせると四千人規模の大学へと発展してきておりますが、近い将来、大学院も設置される方針と聞きます。しかし、同大学へのアクセスは和歌山バスのみであり、朝夕のラッシュ時には積み残しの出るのが常であるとのことでございます。このほか、ノーリツ鋼機など、同地区への通勤・通学の不便は想像するに余りあるのでございます。加えて同地区は、ニュータウンの形成や種々の要因による将来の需要増も見込まれ、和大新駅の実現がもたらすメリットははかり知れないものがあると思います。
 知事がかつて提唱された紀泉百万都市構想や太平洋新国土軸、紀淡海峡大橋、大阪湾ベイエリア構想、第二阪和国道とのリンクも考え合わせ、県としてこの問題にどう取り組もうとしておられるのか。また、新駅設置に関する費用負担はどうなるのか。区画整理事業に係る将来の見通しはどうか。また、県が取り交わした合意書、協定書の意図と中身は何であるのか。知事、企画部長のそれぞれのご答弁をお願いしたいと思います。
 次に第三点目、公的介護保険制度に質問を移します。
 昨年五月、介護保険法案が自民、社民、さきがけ三党の賛成によって衆院で可決され、同十二月には参院でも可決され成立し、二〇〇〇年からスタートすると聞いております。厚生省の説明によれば、保険者は市町村、財源は国二五%、都道府県と市町村各一二・五%、保険料五〇%、対象者は六十五歳以上の第一号被保険者と四十歳以上六十五歳未満の第二号被保険者で、前者の保険料は収入に応じて五段階に設定し、主に年金から徴収、後者の保険料は医療保険の保険料に加算して徴収、給付は、在宅ケアがホームヘルプ、訪問看護、訪問入浴、訪問・通所リハビリサービス、デイサービス、ショートステイ、居宅療養管理指導などで、一方の施設ケアは特別養護ホーム、介護療養型医療施設、介護老人保健施設の三施設ケア、手続は、まず要介護度を認定し、給付額を確定してもらい、ケアマネジャーと相談して自分に合ったケアプランを作成し、費用の一割を自己負担して必要なサービスを選択するなどとなっております。
 この介護保険制度について、昨年九月に日経産業消費研究所が日経リサーチの協力を得て、全国三千二百五十五市区町村の高齢者福祉担当課を対象にアンケート調査を実施いたしました。回収率は五六・二%、千八百二十九の市区町村が回答を寄せておりまして、十分に信頼するに足る調査と言えると思います。
 調査の第一点目、同法案が参議院で継続審査となっていることを尋ねる質問に対し、「早急に実現すべき」はわずかに八%、これに対し「福祉サービスの供給体制が整ってから実現すべき」が五〇・二%、「不明な点が多く法案を出し直すべき」が一三・八%、「保険でなく税金で賄うべき」が一六・一%となっており、合計すると実に八〇・一%の自治体が同法案に対して批判的、否定的な意思表示をしているのであります。これを回答市区町村の人口規模や高齢化率で細かく見ていくと、人口規模の小さい市区町村ほど慎重論が強く、また高齢化率の高い市区町村でも同制度の導入に否定的であることがはっきりと数値にあらわれているのであります。現に、二〇〇〇年度末までの福祉サービスの整備目標を掲げた老人保健福祉計画について、「ほぼ予定どおり達成」はわずかに一五・七%足らずであり、「ほとんど」、あるいは「一部達成できない」とするところが八二・八%にも達するのであります。
 三つ目に、「介護保険を所轄する組織を設置しているか」という設問に対し、「既に設置している」はわずかに一・九%、「今後設置する予定」は四二・九%であるのに対し、「今のところ設置の予定はない」と答えた市区町村は五四・三%に上っているのであります。
 四点目に、要介護者のケアプランを策定するケアマネジャーの確保の見通しを聞く質問では、「確保できる見通しがある」はわずかに一八・五%、これに対し「見通しが立たない」は二三・一%とこれを上回っており、残る過半数の自治体は、「確保の見通しが厳しいので各機関・団体に養成を依頼する」と回答しているのであります。
 以上、このアンケート調査の一部を見ただけでも、実際に窓口となって同制度の実施に当たる市区町村がいかに批判的、否定的であるか、しかも調査対象者が現場の高齢者福祉の担当者であることに着目をすべきだと思います。現場を預かるプロがノーと言っているのであります。これはまさに介護保険制度がいかに現場の実態を無視して作成されたものであるか、言いかえれば厚生省がいかに現場を知らないか、実態を把握していないかを図らずも証明したことになるのではないでしょうか。
 例えば、新ゴールドプランでは二〇〇〇年までに全国で十七万人のホームヘルパーの確保をうたっておりますが、九六年度末でのヘルパー数は十万人、しかもその八割がパートの非常勤ホームヘルパーであるという推計があります。厚生省は、パートだろうと何だろうと頭数さえそろえばいいと真剣に考えているようでありますが、介護保険制度がスタートしても、これでは適切なサービスを提供することは不可能であることが明白と言わざるを得ません。
 一方、特別養護老人ホームの場合、新ゴールドプランの目標値である二十九万人は達成可能な状態と言われておりますが、整備目標値がもともと低過ぎるという専門家の指摘があるとおり、例えば和歌山市の場合、目標値はほぼ達成していると言いながら、本年四月一日現在、特養入所者八百七十七名に対して待機者は五百六十名にも達し、中には数年も入居待ちしている人もいると聞いております。このような現状のまま介護保険がスタートしても、保険あって介護なし、負担あって適用なしの結果は目に見えていると言わざるを得ません。
 そこで、当局の見解をお伺いいたします。
 一、医療保険と異なり、保険料を払っても実際の適用者は六十五歳以上の人口の約一〇%であり、しかも介護の必要な加入者がすべて恩恵を受けられるかどうかわからないとされています。このような状態で、果たして保険制度としてなじむと言い切れるのか。
 二、要介護認定などの手続が煩雑な上に時間がかかると言われており、困ったときにすぐ必要なサービスが受けられません。ケースによっては申請からサービス開始まで四十日程度要するという試算もありますが、これでは介護保険の名が泣くのではないか。
 三、介護サービスの整備が十分な市区町村と未整備のところでは、同程度の要介護度であっても判定に極端なばらつきが出るおそれがあります。公平さを欠くことになれば、制度そのものの根底を揺るがすことにならないか。
 四、要介護認定に対する不服申し立て(審査請求)ができることになっていますが、制度の欠陥からして不服申し立てが続出するのは明らかであります。都道府県の介護保険審査会が審査を行うことになっていますが、裁決が出るまでに数カ月かかるなど現場は大混乱することも十分考えられますが、いかがでしょうか。
 五、現在、市区町村の国保収納率は全国平均九三%で、国保料の減免措置適用者は四百六十万世帯に達し、ますます増加の傾向にあります。これに介護保険料が上乗せされれば、国保も破綻のおそれが十分にあります。加えて、保険料を払っても介護が受けられないとわかった人たちが支払いを拒否するケースもかなりあるという指摘もあり、未納者、滞納者が急増することが専門家などから警告されており、介護保険制度の行き詰まりにつながるのではないか。
 六、要介護認定を行う人が特定されていないため、一応市区町村の保険者やホームヘルパー協会、ケアマネジャーなどが候補に挙がっていますが、要介護者の日常生活動作によって主にランクづけが行われてしまう危険性があり、その人の病歴や予後が無視されるのではという指摘がありますが、どうか。
 七、ホームヘルパーが一日に介護する人数は八人を予定されております。したがって、一カ所の介護時間はせいぜい十五分から三十分。これでは満足な介護ができないばかりか、重度の人を切り捨て、軽度の人だけを対象とするような現象が起こりかねないと言われていますが、いかがでしょうか。
 八、介護保険制度を確立させ、医療保険や年金と明確に区別することは新たに膨大な事務量を生むことになり、ひいては社会保障費をさらに増嵩させることにならないか。
 九、たとえ要介護度五と認定され、月三十万円分のサービスが利用可能となっても、本人が月一万円の利用者負担しかしなければ十万円分のサービスしか利用できないことにこの制度ではなっております。すなわち、低所得者を切り捨てることにほかならないと思いますが、これが公的介護制度と言えるのか。
 十、都道府県は介護保険事業支援計画を策定することとされていますが、本県の場合どうなっているか。
 ほかにもまだまだ問題点は多数ありますけれども、特に疑問のある点を列挙いたしました。この公的介護保険制度が希代の悪法、制度であることを申し添え、十点にわたる質問への答弁を福祉保健部長に求めます。
 最後に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)についてお尋ねをいたします。
 去る四月十九日、「紀伊民報」紙上で、八〇年ごろに消滅したはずの神経難病、筋萎縮性側索硬化症(略称ALS)が再発生していることが判明したと報じられております。この神経難病は、我が国では和歌山県南部を中心とした紀伊半島南部に高い発症率が見られることから通称・牟婁病と呼ばれており、また太平洋を挟んで遠くミクロネシア諸島のグアム島及びニューギニア島でも同様の症状が報告されているということであります。この不治の病について、一九六〇年代から七〇年代にかけて我が国と米国の双方で大規模な調査が実施されましたが、結局原因究明には至らず、環境要因の影響が強いということが報告されるにとどまったとのことでありました。
 我が国での最初の記録は、足なえ病として一六〇〇年代に症例が報告されているそうであります。長年の研究にもかかわらず、いまだに有効な治療法と薬も見出されておらず、平均で発病から二年ないし四年で死亡に至るとのことであり、進行の早い患者の中には数カ月で亡くなった例もあるとお聞きしております。
 ところで、ここに「まぶたでつづるALSの日々」という本があります。私も最近この本を知りまして、和歌山県内の本屋では一冊も入手できなかったので、昨日大阪まで買いに行ってきました。この本を書かれたのは土居巍さん、土居喜久子さんというご夫婦ですが、奥さんの方がこの筋萎縮性側索硬化症で闘病されております。そのご主人との闘病記録をつづった本でございます。その最初にこういうふうに書かれております。「命を大切に生きたい 私は 呼吸器につながれて 生かされています 喋ること 食べることもできず 手も足も全く動かない 丸太ん棒人間ですが 神様は たった一つ 動く機能を 残して下さいました 目の動きの正常なことを 知られた 山本先生から──山本先生というのはこの人を最初に診た主治医で、大分協和病院の医長である山本真という先生であります──目で打つ ワープロがあるから挑戦してみませんか とのお話があり まばたきで あいうえお版の文字を拾い 漢字に変換しながら 意志の伝達手紙などを打ち 希望をもって 忙しく生きております たった一つ 残された機能が これほど逞しく働くのですから 私自身 驚きです 今を全力で生きることの 大切さ 命の尊さを 実感しながら 私を支えてくれるワープロに ウインク送り 同病の方へのお便りや ご声援下さいます皆々様に 心のメッセージなどを打ち 時間の許す限り 努力を重ね 精一杯頑張って生きる日々を 過ごしています」。これは、この人が機能の中でたった一つまぶたを動かすことだけができるのですが、実際にその人が打ったワープロの原稿でございます。
 そこで、お尋ねをいたします。
 この牟婁病のことについて、国指定特定疾患に指定されていると思うが、県はこの患者の実態を把握しておられるのか。また、この病の克服のために徹底的な原因究明と治療法や特効薬の開発が待たれるところでありますが、このことについて今後どう取り組んでいかれるのか。福祉保健部長の答弁を最後に求めまして、質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの森正樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 森議員にお答えをいたします。
 関西サミットに関連してのご質問であります。
 国際化の進展あるいは地球規模の地域間の大競争時代に対応して関西全体の発展方策、諸問題の解決を図るために、関西の二府七県三政令市と経済界の協調・連携による新しい組織となる関西協議会を平成十一年春を目途に設立することが去る五月七日の関西サミットにおいて合意されたわけでございます。
 議員ご指摘のように、関西国際空港の全体構想につきましては、関西のみならず我が国の将来の発展にとって不可欠なプロジェクトであり、国際ハブ空港に育成していくために早急にその推進を図っていかなければならないと考えてございます。また、太平洋新国土軸や大阪湾環状交通体系のかなめとなる紀淡連絡道路の促進、TSLの活用を含めた港湾機能の充実などにつきましても、広域かつ官民一体となって取り組むことが関西の総合力を高める上で極めて重要であると考えてございます。関西圏における本県の役割も含め、先日の関西サミットにおいても私の意見を申し上げてまいりましたけれども、来春設立予定の関西協議会を初め、機会をとらえて主張してまいりたいと考えております。
 また、首都機能の移転につきましては、国土の均衡ある発展あるいは地方分権の推進、さらには新しい経済社会システムへの転換を図るための契機として大きな役割を果たすものであると考えてございます。その移転先につきましては、本年一月の国会等移転審議会の移転調査対象地域の一つに選定された三重・畿央地域を含む国土の中央部への移転を促進していくことが関西サミットにおいても決議されたところでありますが、首都機能移転に伴う波及効果を最大限に享受できるよう、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 お話のございました大阪国際空港への首都機能の移転につきましては、長年にわたって空港問題に携わってこられた議員が、かつて関西国際空港立地に対し現大阪国際空港との関連が強く議論された経過を熟知された上でのご発言であろうと存じております。ご熱意のあるご提言として心に受けとめさせていただきたいと思います。
 次に、和歌山大学新駅についてであります。
 和歌山大学等へのアクセスとして大変重要な役割を担うとともに、紀泉南丘陵地域の振興のかぎを握る重要なプロジェクトの一つであると思っております。したがって、このプロジェクトの進展が、緑豊かな紀泉丘陵に産・学・住の機能を複合的に整備していく紀泉百万都市圏構想を初め、ひいては大阪湾ベイエリア構想、太平洋新国土軸構想の推進にもつながっていくものと考えてございまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上であります。
○副議長(阪部菊雄君) 企画部長中村協二君。
  〔中村協二君、登壇〕
○企画部長(中村協二君) 森議員の和歌山大学新駅設置問題のご質問のうち、新駅設置に関する費用負担についてお答えをいたします。
 和大新駅の設置につきましては、これまで和歌山市を中心として南海電鉄等の関係機関に強く働きかけてまいった結果、県、市、開発事業者、それに南海電鉄の四者で新駅設置の進め方について合意したところでございます。この中で、和大新駅の設置は紀泉南丘陵地域の振興のための重要プロジェクトとの観点から、県と市は国の制度である住宅宅地供給総合支援事業に基づく補助金の導入に努め、開発事業者の負担の軽減を図ることといたしました。今後は、新駅の概略設計を実施し、事業費を把握した上で積極的に事業の推進を図ってまいりたいと存じます。
 次に、区画整理事業に係る見通しについてでございます。
 和大新駅の設置は土地区画整理事業の手法を用いることとしており、この区画整理事業は組合設立が前提となっております。設立認可申請書は認可権者である和歌山市に提出されておりますが、現在、解決すべきさまざまな課題について整理を進めているところであると聞いてございます。
 次に、合意書、協定書の意図と中身についてでございます。
 南海本線和歌山大学新駅整備に関する合意書につきましては、県、市、開発事業者、南海電鉄の四者が新駅整備を推進していくことを確認したものでございます。その内容につきましては、県、市は国の補助事業の導入に努めること、概略設計を実施し、概算費用の決定を行うこと、新駅設置は区画整理事業の手法を用いることを合意したものでございます。
 次に和大新駅設置推進調査事業に関する協定書についてでございますが、この協定書は、県、市が新駅の駅利用者の需要予測に関する調査を共同して実施することを定めたものでございます。その内容は、調査費用を県、市が同額ずつ負担し、市において調査を実施するというものでございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 森議員にお答えをいたします。
 公的介護保険制度についてでございますが、ご質問が多岐にわたっておりますので、まず制度の仕組みの一、八、九についてまとめてお答えをさせていただきます。
 本制度は、老後の最大の不安要因である介護を社会全体で支える仕組みとして創設されたものであり、給付と負担の関係を明確にし、かつ介護を医療保険から分離した新たな社会保障構造改革の第一歩であると認識しております。そうした中にあって低所得者につきましては、保険料は五段階の所得別に設定し、また利用料負担については高額介護サービス費の設定をするなど、低所得者に配慮した制度となっております。しかしながら、具体的な設定については今後の政省令にゆだねられており、さらに低所得者の負担が軽減されるよう国に要望してまいります。
 また、七のホームヘルプサービスの形態につきましては、あくまでも本人の意思に基づいて介護サービス計画が作成されますので、要介護度により適切なサービスが確保できるものと考えております。
 次に、二、三、六の要介護者認定等の一連の手続につきましては、公平・公正となるよう、全国一律で認定基準が提示されることとなっております。また、訪問調査員、要介護認定に係る委員等の研修を実施するとともに、本年度全市町村において実施する要介護認定モデル事業を通じて、均質な判定となるよう市町村とともに努力してまいります。いずれにいたしましても、全国一律の認定基準により訪問調査の結果をコンピューターで分析する一次判定を経て、かかりつけ医の意見書を踏まえて、保健、医療及び福祉の専門職で構成される介護認定審査会でさまざまな角度から判定されるものであります。
 なお、要介護者の状態によっては早急なサービスを必要とする場合があり、暫定介護サービス計画を作成するなど、必要な措置をとることとなっております。
 また、四の不服申し立てでございますが、県で設置する介護保険審査会の運営を効率的かつ機動的にすることにより対処してまいりたいと考えております。
 次に、五の滞納の問題でございますが、本制度導入の趣旨について県民にご理解を求めていくとともに、市町村に過重な負担とならないよう国に支援強化策を要望してまいります。
 最後に十の、県の介護保険事業支援計画につきましては、平成十一年度までに策定することとなっておりますが、現在、その基礎となる市町村の事業計画策定のため、高齢者の実態調査、在宅・施設の需要調査が間もなく開始されることとなっております。県といたしましても、市町村介護保険事業計画を踏まえ、支援計画を策定してまいりたいと考えております。
 次に、筋萎縮性側索硬化症についての三点でございます。
 議員ご指摘のいわゆる牟婁病とは、筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる病気で、国の特定疾患治療研究事業に指定されている難病でございます。症状は、筋萎縮と筋力低下が特徴で、病気が進行すると言語障害、呼吸障害や舌の筋萎縮等により固形物や液体が飲み込めなくなる等、運動機能の著しい低下が見られる原因不明の病気でございます。
 この病気の状況につきましては、厚生省の平成八年度の資料によりますと、全国で四千百十九件、そのうち本県で六十一件となってございます。これを人口十万人に対する比率で見ると、全国的に高い数値にあります。県内の保健所別に見ますと、御坊保健所管内から以南がほかの管内に比較して多い傾向にございます。
 次に、この難病に対する原因の究明につきましては、現在、国において研究班を設置し、種々調査研究を重ねておりますが、議員ご指摘のとおり、これまでのところ原因究明の特定には至ってございません。また、治療法や特効薬の開発につきましても、国の方で特定疾患治療研究事業の中で鋭意取り組んでいるところでございます。しかし残念ながら、現在のところ効果的な治療方法が示されていないのが実情でございます。県といたしましては、現在、患者負担の軽減を図るため、治療費の公費負担をするとともに医療相談、患者訪問診療を実施しているところでございます。
 今後とも、地域の実情に応じた専門の医師、理学療法士、保健婦等をメンバーとするチームによる医療相談、患者訪問診療の充実に努めてまいるとともに、県立医大の神経病研究部等の意見も伺いながら、また国の特定疾患の調査研究の推移を見きわめながら対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番森 正樹君。
○森 正樹君 知事の、行間に深い決意とお考えがにじむ答弁でありました。私は、日ごろこういうお世辞めいたことは一切言わないのですが、本当にぜひともこの問題を進めていただきたい。なぜならば、我が国の場合、先ほども申し上げましたけれども、巨大プロジェクトが行われる場合に、必ず用地買収、移転補償、損害補償等で計画どおり進んだためしがないんです。もし巨大プロジェクトで計画どおり進んだというのがあれば、聞かせていただきたい。それほどこれは我が国の際立った特徴でございまして、この首都機能移転は国会等移転調査会が考えている三カ所ではそう簡単に進まないと思います。そういう意味で、この大阪空港を廃止した後に持ってくれば、広さ的にはもう全然問題がありませんから。用買も要りませんし、移転補償も何もないわけです。すぐ、あしたからでもできるわけです。しかも、これをやることによる、関西はもとより我が国にもたらす大きな波及効果というのははかり知れないものがあると言えます。そうした意味で、ぜひともこれを実施していただきたい。
 特に今、我が国は大変な不況の中にあります。一九二九年の世界大恐慌以来ではないか、「平成大不況」ということで、それに匹敵するのではないかというぐらい言われておりますが、これが実現すればそれに歯どめをかけて、一気に景気の好転にもつなげることができるのではないかと。そういう意味で知事、ぜひとも粘り強く働きかけをお願いしたいと思います。要望でございます。
 和大新駅でございますが、この問題はもう和田正人先生が地元議員として長年取り組んでこられたことで、関係者の努力によって今ここまで進んできたわけです。今後幾つかクリアしなければならない問題もございましょうが、河西地区十万人の新都心の核になり得ると僕は思います。第二阪和とか新太平洋国土軸などとリンクさせることによって新しい副都心になっていくのではないか。そういう意味で、ぜひとも今後前向きに取り組んでいただきたい。これも要望でございます。
 介護保険について。部長は、お立場上、大変答弁しにくい苦しい部分もあるというのはよくわかります。市町村と国のはざまに立って大変答弁がしにくいというのもわかりますが、部長の答弁の中で幾つか納得できないので再質問します。
 モデル事業のことをちょっと言われました。厚生省が一九九六年十二月から翌年の二月にかけて、全国約六十の地域で要介護認定のモデル事業をやった。最初の一次判定はコンピューターでするわけですが、二次判定は医者の診察とかいうものになるわけです。その間で、実に二七・六%の変更しなければいけない乖離があったわけです。そういうのがモデル事業で出ているわけです。それで厚生省は、やっぱりこういう数字が出たらまずいというので、次の年にまた第二回目のモデル事業をやりました。そのときには、記入のための詳しいマニュアルをつくった。調査員による結果のばらつきを抑えるために、事前にそういう大変な工夫をしたんです。そうしてやったにもかかわらず、ここで出た一次と二次の判定で一致したのは七五・三%にとどまったわけです。ということは、残りが食い違ったわけです。再調査とか認定の食い違いが二三・二%と一・六%と、合わせて二五%近い二四・八%、四人に一人という、やはり食い違いが出ているわけです。これは結局、制度そのものの欠陥がこういう問題を生んでいるわけですよ。いかに何と言おうとこの制度が──先ほども私が「希代の悪法だ」と申し上げましたが、医療保険が赤字である、財政的に大変厳しくなってきた、だから切り離して介護を保険でやれ、広く薄く庶民から金を集めれば何とかなるだろうと。机の上で考えた発想から出たんだと思いますが、そういうスタートの間違いがこういう結果を生んでおるわけです。このことについて、もう一遍ちょっと部長、こんな乖離をどうするのかお答えいただきたい。
 それから、国保に上乗せすることになるわけですが、例えば和歌山県の例を言いますと、県が出した資料によると「実質的な単年度収支では次の四十三保険者が赤字であり」ということで、和歌山市から始まって県内五十市町村のうち四十三市町村が単年度収支で赤字なんです。その内容はだんだん悪くなっております。決して好転はしておりません。例えば和歌山市なんかは、平成八年度の数字ですけれども、実に六十八億八千六百七万円の累積赤字があるんです。もうまあ財政破綻と言ってもいいんじゃないですか。毎年、和歌山市民の貴重な税金から、一般会計から繰り入れをして何とかつじつまを合わせていますけれども、この上にまた介護保険が上乗せされたらもう財政破綻も当然だし、この介護保険という制度そのものの破綻につながるんじゃないかと、僕はそういうふうに厳しい指摘をしておきます。これもちょっと答弁してください。
 それから三点目、ホームヘルパーの数ですけれども、絶対数が不足しているというのはさっき申し上げました。全国的に見ると、和歌山県の場合はまだましです。ホームヘルパーの数が八百八十人で、そのうち常勤が四百二名、非常勤いわゆるパートタイマーの方が四百七十八人という数字になっておりますが、ただ非常に特徴的なのは和歌山市でして、常勤が三十七名に対して実に三百六名が非常勤なんです。八九・二%、ほぼ十人に九人は非常勤の方で何とか賄っているという実態なんです。別に僕は、パートのホームヘルパーさんを否定するのではありません。そうじゃありませんが、この介護保険の一番の眼目は介護サービスですから、介護サービスをする、在宅の方を訪問して、ホームヘルパーの皆さんがやる仕事が非常にふえてくる。その負担度は大きいのですが、その皆さんをパートタイマーの方でほとんど賄わなければならないという実態。これでは、とてもじゃないが、先ほども申し上げました「保険あって介護なし」という実態になり得ると厳しく申し上げます。これについても、もう一度答弁をお願いしたいと思います。
 保険料を払い続けても四十歳から。いざ自分が六十五歳になって介護が必要になった、介護を受けたいというときにすぐにサービスが受けられないケースが出てくると言われております。それが一つ。非常に手続が煩雑で、申し込みからサービス開始まで三十日も四十日もかかる。これで本当に介護保険ですか。これが介護サービスですか。それが二点目。それから、同じ要介護度であるのに隣の市町村同士で、片一方はサービスの体制が整っているから、例えば要介護度三と認定される。ところが、もう片一方の隣の市町村では、同じ障害の程度であるのにサービス体制が整ってないから、あなたはだめだと拒否される。こんなケースが絶対出てきます。これが本当に介護サービスですか。介護保険ですか。同じ程度であるのに。この人がもし友達とか親戚だったらどうします。大変な問題になりますよ。それでなくても、もちろん問題ですけれども。そういうことが必ず起こってきます。
 ほかにもたくさんありますけれども、今、三つ申し上げました。そういうことからして、この介護保険というのは制度の根幹にかかわる問題をいっぱいはらんでいて、私ははっきり申し上げて、いずれ近い将来破綻するんじゃないかと、そのように厳しく申し上げたいと思います。
 厚生事務次官が依命通知ということで全国の都道府県知事に通達を出しておりますが、この中で、「国民の共同連帯の理念に基づき、社会全体で介護を必要とする者の介護を支える新たな仕組みとして介護保険制度を創設する」──うたい文句はいいですよね。だれもが必要な介護サービスを受けることができる新たな仕組みだと言っているんですが、中身はそうじゃありません。
 「ノーマライゼーション」と、最近よく障害者の問題、福祉の問題等で言われます。「ノーマライゼーション」というのは、辞書を引けば正常化という意味でございますが、県が出されている紀の国障害者プランの実施計画の中にも、そのことをはっきりうたわれております。「障害者の社会への『完全参加と平等』の実現のため、ライフステージのすべての段階において全人間的復権を目指す『リハビリテーション』の理念と障害者が障害のない人と同等に生活し、活動する社会を目指す『ノーマライゼーション』の理念のもと」と、このようにうたわれております。そのとおりなんですよね。ところが実際、この介護保険というのはそうはならないという大変な欠陥を多くはらんでおりまして、私は素朴な疑問として、この介護保険は欠陥である、希代の悪法であると再度申し上げたいと思います。
 あと、二分あります。──最後にALSのことでございますが、先ほど紹介した本の中に、お医者さんの感想といいますか、寄稿が載っています。その中で、大分県立病院の院長である永松啓爾先生という方が言われております。アメリカではこの難病のことを別名ルー・ゲーリック病と言っているんです。それはなぜかと言うと、有名な野球の打撃の神様と言われたルー・ゲーリックがこの病で倒れたからそのように言われておりまして、アメリカ人はみんな知っております。それはさておき、この病の対処法について、この中で永松先生がはっきり言われております。先ほど部長の答弁の中にもありましたが、日本ALS協会の強い要望がもとで、平成八年にALS患者等の療養環境整備に関する研究班というのを発足しました。その中で今いろんな作業をされておるわけですが、この先生が具体的な対策として、「長期入院病床の確保(二床を有する個室)、人工呼吸器等高額医療機器・設備の整備、入院管理料の増設や長期入院時の入院管理料逓減性の見直し、看護婦等の人的補充面などでの公的支援、在宅医療に対しては支援医療機関の設備、バックアップ体制の充実、改築等療養環境整備に対する助成制度──これは土木部になるんじゃないですか──医療機器の貸与、看護・介護体制の充実、介護手当増額などがあげられる」と、このように言われております。これは、ALSの患者をずっと診てこられ、ご自身も研究なさっておっしゃっている先生の意見でございまして、参考にできると思います。ぜひとも県でそういう対策、支援をしていっていただきたい。和歌山は他県に比べて非常に発生率が高いわけでありますから、この方は大分ですが、ある意味で全国のモデルにならなければいけないんじゃないでしょうか。また、その使命があるんじゃないでしょうか。そういう努力をぜひともしていただきたいことを、これは要望として申し上げます。
 以上です。
○副議長(阪部菊雄君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 森議員の再質問にお答えを申し上げます。
 まず一点目の、介護認定に係るモデル事業での一次判定と二次判定の乖離でございますが、モデル事業を実施した中では、議員ご指摘のとおりの乖離が出たということで受けとめてございます。それを受けて本年、平成十年度に全市町村において改めてモデル事業を実施するということになってございますが、調査事項についても二回のモデル事業を踏まえて調査項目を七十三項目にふやすとか、また質問の仕方についても検討を加え、一次判定と二次判定に乖離が出ないようにということで今実施を進めているところでございます。
 平成十二年に本格的な実施となるわけでございますけれども、そういう乖離が出ないような形で、県としても国に対し、また市町村ともども努力してまいりたいと考えております。
 二点目の保険料の収納率等につきまして、国保財政状況についても非常に赤字財政ではないかというご質問でございますが、これにつきましては、介護保険における第二号被保険者である四十歳から六十四歳の被保険者に実質的に負担が生じてまいります。
 これに伴って国保保険料の収納率等が低下するのではないか、また介護保険料の上乗せによる収納率の低下があるのではないかということかと思いますけれども、これにつきましては、収納率等の低下が顕著である場合については、市町村国保に対して国費による助成を行うなどの所要の措置を講じることとなってございます。また介護保険料につきましては、県において財政安定化基金というものを設けた中で、保険者である市町村に対して保険料等の収納率の低下に起因するかどうかという点について、交付または貸し付けをするということになってございます。
 三点目のホームヘルパーの実態等についてでございますけれども、和歌山県の保健福祉計画の中で、平成十一年度末までにホームヘルパーについては約千五百人という目標数値を決めながら取り組んでいるところでございますが、平成九年度末においては約八百八十人ということで、議員ご指摘のとおり、人の問題、また常勤・非常勤の問題等々ございます。これについては、市町村ともども、介護保険制度が導入される平成十二年までに介護保険の趣旨によるサービスが受けられるよう鋭意努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、森正樹君の質問が終了いたしました。

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