平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程   第六号   平成十年三月十六日(月曜日)
                  午前十時開議
  第一 議案第一号から議案第八十一号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第一号から議案第八十一号まで(質疑)
   二 一般質問
出 席 議 員(四十七人)
     1  番    大    沢    広太郎
     2  番    木    下    善    之
     3  番    小    川         武
     4  番    吉    井    和    視
     5  番    下    川    俊    樹
     6  番    井    出    益    弘
     7  番    藁    科    義    清
     8  番    門         三佐博
     9  番    永    井    佑    治
     10  番    新    島         雄
     11  番    向    井    嘉久藏
     12  番    佐    田    頴    一
     13  番    和    田    正    一
     14  番    阪    部    菊    雄
     15  番    西    本    長    弘
     16  番    馬    頭    哲    弥
     17  番    谷         洋    一
     18  番    山    下    直    也
     19  番    高    瀬    勝    助
     20  番    松    本    泰    造
     21  番    堀    本    隆    男
     22  番    宇治田    栄    蔵
     23  番    宗         正    彦
     24  番    橋    本         進
     25  番    神    出    政    巳
     26  番    玉    置    公    良
     27  番    上    野    哲    弘
     28  番    東    山    昭    久
     29  番    尾    崎    要    二
     30  番    野見山         海
     31  番    木    下    秀    男
     32  番    町    田         亘
     33  番    中    山         豊
     34  番    井    谷         勲
     35  番    鶴    田    至    弘
     36  番    森         正    樹
     37  番    村    岡    キミ子
     38  番    新    田    和    弘
     39  番    平    越    孝    哉
     40  番    森    本    明    雄
     41  番    長    坂    隆    司
     42  番    冨    安    民    浩
     43  番    飯    田    敬    文
     44  番    中    村    裕    一
     45  番    松    本    貞    次
     46  番    大    江    康    弘
     47  番    和    田    正    人
欠 席 議 員(なし)
説明のため出席した者
     知 事     西    口         勇
     副知事     山    下         茂
     出納長     高    瀬    芳    彦
     知事公室長   野    見    典    展
     総務部長    中    山    次    郎
     企画部長    藤    谷    茂    樹
     生活文化部長  中    村    協    二
     福祉保健部長  小    西         悟
     商工労働部長  上    山    義    彦
     農林水産部長  平    松    俊    次
     土木部長    長    沢    小太郎
     企業局長    佐    野    萬瑳義
     教育委員会委員長
             山    本         昭
     教育長     西    川    時千代
     公安委員会委員 中    尾    公    彦
     警察本部長   米    田         壯
     人事委員会委員長
             若    林    弘    澄
     代表監査委員  宮    市    武    彦
     選挙管理委員会委員長
             谷    口    庄    一
     以下、各部局次長・事務局長・財政課長
職務のため出席した事務局職員
     事務局長    西    畑    彰    久
     次  長    前         晴    夫
     議事課長    佐    竹    欣    司
     議事課副課長  島         光    正
     議事班長    松    谷    秋    男
     議事課主査   川    崎    良    雄
     議事課主事   大    浦    達    司
     総務課長    塩    路    義    和
     調査課長    湊         孝太郎
 (速記担当者)
     議事課主任   吉    川    欽    二
     議事課主査   鎌    田         繁
     議事課速記技師 中    尾    祐    一
     議事課速記技師 保    田    良    春
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  午前十時二分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
      ─────────────────────
  【日程第一 議案第一号から議案第八十一号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(木下秀男君) 日程第一、議案第一号から議案第八十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 20番松本泰造君。
  〔松本泰造君、登壇〕(拍手)
○松本泰造君 おはようございます。
 議長のお許しを得て質問をさせていただくに先立ち、去る二月八日から四日間にわたり、メキシコ・シナロア州友好提携答礼団の一員として訪墨をさせていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 今回の視察については、去る十三日、向井議員が答礼議員団を代表して詳細報告をしていただいたところでありますけれども、私も簡単に感謝の気持ちを申し述べたいと思います。
 我が国が開国以来、最初に平等条約を締結した国がメキシコ合衆国であり、ことしは条約締結百十周年に当たり、さらに昨年は和歌山県の移民団が最初にメキシコに移住してから百年。こんな記念すべき年に答礼団の一員としてシナロア州の主要都市を訪問し、州議会や市議会並びに農漁業や大型リゾート等の実態を視察し、経済人との意見交換や交流、メキシコ県人会主催の移住百周年記念祝賀会にも出席する機会に恵まれました。州を挙げての熱烈歓迎、人々の活気や明るさ、日系人の活躍ぶりや日本人としての誇り、信用度の高さ、日本に対する期待感等々、じかに感ずることのできた極めて有意義な視察と交流を体験させていただきました。この貴重な体験を今後の議員活動の中に何らかの形で生かしてまいりたいと感ずるとともに、答礼団の一員として参加させていただけたことに心から感謝を申し上げる次第であります。
 それでは、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 なお、一般質問も五日目ともなりますと、かなり重複する部分や内容もあろうかと思いますが、お許しをいただきまして、せっかくつくった原稿どおり質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、国の大型補正予算に関連してと題し、質問をいたします。
 今議会に上程をされておる平成十年度の県一般会計予算は、歳入面では長引く景気低迷のあおりで法人税収が急激に減少する一方、歳出面ではバブル時代に手がけた大型起債の元利償還がピークを迎えて九・六%増の六百億円を超えるなど、県財政は新たな試練の時代を迎えたと言えます。こうした厳しい財政事情の中にあっても、景気対策として商工費で三・六%の増や福祉施策充実に向けた福祉保健費四・六%の伸びなど、県内の景気動向や県民生活の現状と将来に向けた予算編成努力を高く評価するものであります。
 一方、投資的経費の面では、公共事業の縮減等で七・七%の減であります。もちろん、財政深刻化の問題もさることながら、国の公共事業七%カットの方針が足かせとなっているものと推察しますけれども、公共事業を頼りにせざるを得ない県内の土建・建設業界にとっては、まさに死活問題であります。
 こうした中、国では長引く景気低迷に対し、三次、四次の景気刺激策を講じておるにもかかわらず、景気回復の兆しさえ見えない中で、先月ロンドンで開催された主要七カ国によるG7の場においても、日本に対する内需拡大要求が共同声明に盛り込まれたり、あるいは米国からの経済政策変更の要求等、外圧も加わり、さらに国内からも、経済界に限らず、多くの国民が早い時期での大型補正予算の編成に大きな期待を寄せている状況下にあり、橋本政権は、財政再建路線に基づく緊縮政策を堅持しつつも、臨機応変に大型の景気対策を打ち出さざるを得ないところまで来たと言えます。今や、九八年度予算編成中にかかわらず、大型補正予算の編成が当然と判断される状況下にあります。
 そこで、まず第一点として、県内の深刻な景気低迷にかんがみ、平成十年度の県当初予算のできる限りの前倒し執行や、国の大型補正予算決定後は県予算においても可及的速やかな対応をお願いしたいのでありますが、知事のお考えをお示しいただきたいと思います。
 二点目として、国における十兆円規模の大型補正予算の編成を前提に、その中身についていろんな議論や調整が云々されている状況下、和歌山県内の深刻な不況実態からして国の大型補正予算に対し和歌山県知事として一体何を望むか、県内の景気対策としてどんな施策を推進すべきか、知事としての所見をお伺いしておきたいと思います。
 次に、振興局の機能と権限委譲等について質問をいたします。
 議会冒頭の知事説明によると、「新時代を支える基盤づくり」の中で、「二十一世紀は、地域の主体的な活動が強く求められる時代であります。各地域は、それぞれが持つ歴史、文化、自然、産業などの地域資源を活用し、独自の機能を備えることにより、他の地域とは異なる個性、魅力を発揮して多くの人々を引きつけ、他地域との交流連携を深めていくことが重要となります。このためには、地域住民の主体的な取り組みにより、新しい発想で地域に内在する資源を発掘・再評価し、それらを積極的に活用していくことが不可欠であります。 市町村、各地域の発展なくして県全体の発展はあり得ない」というみずからの信念に基づき、平成十年度から振興局を設置して、「地域の持つ特性を十分に発揮し、地域主導のふるさとづくりを推進する」と述べられ、また、先般県民に配布をされた「県民の友」二月号では、県内七地域に振興局を設置し、「各地域において県民の皆さんや市町村の要望に総合的に対応するとともに、それぞれの地域の特性に応じた行政を迅速に行うことができる体制を確立するために、県事務所、土木事務所等の出先機関を統合」すると広報しております。振興局の組織は県民行政部、健康福祉部、農林水産振興部、建設部の四部制とし、その業務については、県民行政部は地域の振興、生活や文化、商工労働、県税に関する業務などを所掌し、健康福祉部は現在の福祉事務所と保健所に関する業務を行い、農林水産振興部は農林水産を振興するための業務を、そして建設部は道路、河川、港湾など県土の基盤づくりや公園、下水道、公営住宅など生活環境の整備に関する職務を行うとのことであります。
 さて、現在、県内の各地域においては、それぞれの市町村が単独の自治体だけでは対処し切れないさまざまな課題、例えば一般廃棄物の問題、社会基盤整備の問題、介護保険への対応、農漁業問題、青少年の健全育成など、山積をしています。このような中で、知事の権限に属する地域の事務を総合的に分掌させるため、新たに七つの振興局を設け、横断的、広域的かつ総合的な行政が展開され、従来の縦割りで専門化された行政の弊害が今後解消されるものと期待をするのでありますが、振興局への移行が目前に迫った今、次の諸点について質問をし、確認をしておきたいと思います。
 まず、西口知事にお伺いいたします。
 今回、県内七つの地域に振興局を設置することにより、地域の各自治体が抱えるさまざまな課題に対しどう取り組んでいくのか、また地域住民の利便性等がどのような点で高まるのか、具体的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
 次に、従来の県事務所や土木事務所などの地方組織が行っていた業務に加え、新たに権限が委譲されることとなれば、振興局で取り扱う業務は相当な量になると思われますけれども、人的な補強等についてどんな対応になるのか、伺っておきたいと思います。
 次に、総務部長にお伺いをしたいと思います。
 まず、さまざまな地域課題に振興局が自主的にかつ責任を持って取り組んでいくためには振興局に相当の権限や予算が与えられなければ困難ではないかと考えますが、振興局にはどのような権限とどの程度の予算が付与されるのか、伺いたいと思います。
 二点目として、振興局の所管区域には郡部だけでなく市部も含まれることになっていますが、従来、本庁が直接行っていた市に対する業務がすべて振興局に移管されることになるのかどうか、また、本庁に権限を残し、市と本庁との間に振興局を置くのであれば二度手間になるようなことがないのかどうか、伺いたいと思います。
 次に、通告の三番目、農産物価格暴落に対する県の対応についてであります。
 去る一月二十日付「日本農業新聞」によると、広島県では、一九九七年産温州ミカンは生産量が多く、その一方で消費の落ち込みもあって価格が前年の三分の一程度で推移し、農家手取りも同様に四分の一となるおそれが出ており、県産ミカン価格の暴落に対応し、翌年への再生産を確保すべく、関係機関とも連携し、ミカン農家の経営安定に向け低利融資の緊急対策に乗り出すとのことで、同県では、既存の農業振興基金全体の中で融資枠を調整して六億円を確保、経営安定資金の対象を拡充して県、市町村がそれぞれ〇・五%の利子補給を二月から実施するとの記事が掲載されてありました。また、和歌山県とはライバル関係にある愛媛県においても、特別融資の利子補給が実施されるとのことであります。
 さて、前段申し上げた広島県や愛媛県の例を挙げるまでもなく、昨年のミカン農家の経営実態は、ミカンの里有田においても例外ではなく、先日の吉井議員の質問のとおり極めて深刻であり、農薬や肥料代金を含め清算できない農家が出てくる可能性があることや、組合員から融資を求める声の高まりの中で、有田地方のJAがそれぞれの市町村に対してかんきつ農家経営安定化のための農家経営維持資金を創設するにつき、農家負担の軽減と農業振興の見地から利子補給を強く要請し、関係各自治体とも基幹産業の非常事態打開と再生産確保の見地から一%利子補給を約束せざるを得ず、とりあえず新年度に予算計上しているようであります。
 ところで、和歌山県の平成十年度予算では中小企業向け融資枠の拡充など不況対策が講ぜられており、そのこと自体高く評価するものでありますけれども、ミカンの価格暴落により有田地方の零細中小の小売店では深刻な連鎖不況に陥っていることもまた事実であります。
 そこで、農林水産部長にお伺いをいたします。
 まず第一点、和歌山県では八七年のかんきつ価格低迷時に農家経営維持資金の市町村利子負担分の二分の一を県が負担した経緯があります。本県では常に果樹生産高日本一を誇りにしておりますけれども、誇りにしている産業が極めて深刻な状態に陥ったとき、県の姿勢として市町村とともに手を差し伸べる、そんな姿勢が必要だと思うのでありますが、県としての支援策についてお伺いをいたしたいと思います。
 二点目として、昨年十一月十四日、大阪のプラザホテルで開催された京阪神の市場関係者とのミカン販売促進懇談会の席上、ある青果市場の社長から「ハウスミカンが終わってからわせミカンが出回ってくるまでの間、つなぎとして登場してくる極わせミカンがハウスミカンに比べて酸味が多く、秋口の出ばなでミカンの印象を悪くした。温州ミカンの価格に悪影響を及ぼしており、極わせミカンのあり方を見直すべきだ」との指摘がありましたが、県として市場関係者からのこうした声をどう受けとめ、今後の行政指導に生かしていくつもりであるのか、伺っておきたいと思います。
 次に、毎度のことで恐縮でありますけれども、国道四十二号、有田市から海南市間の渋滞解消問題についてであります。
 この問題については、去る三月三日、建設省和歌山工事事務所と和歌山県が共同で通勤者等のアンケート調査を朝六時から四時間にわたり実施をされたところであります。この調査は、交通容量拡大対策検討の基礎データを得るためのものと伺っておるのでありますが、昭和六十年代初頭から今日に至るまで精力的に陳情や運動を展開してきた地元の下津町及び有田市にとっては、やっと我々の声が国に届いたのかということで、一つの節目を迎えたと認識をし、今日まで長期にわたる県当局の並々ならぬご努力に心からの感謝を申し上げる次第であります。
 さて、国道四十二号・有田下津海南間整備促進協議会では、去る二月十二日、近畿地方建設局長に対し、とりあえず平成十年度に下津・海南間四車線化への調査費の枠取りを願いたいと陳情を行い、かなりよい感触を得たと聞いておるのでありますが、県として把握している現在の見通し等についてお伺いをいたします。
 最後に、有田市内の問題について三点ばかり実態を訴え、要望を申し上げておきたいと思います。
 まず、逢井への新たなトンネル計画についてであります。
 陸の孤島であった有田市逢井集落にトンネルが開通して以来、はや四十数年が経過し、最近では老朽化が激しく、毎年のように補修工事が実施され、特に北海道におけるトンネル崩落事故後の強度検査では危険度の高さが指摘され、今も補強工事が実施されつつあります。
 トンネルを抜けると前面に湯浅湾が広がり、名物の八角網では間もなくサクラダイが水揚げされるこの浜には数軒の観光旅館があるものの、トンネルの幅員は一車線。通学道路であり、生活道路であり、産業道路であり、このトンネルが生活のすべてを担っているにもかかわらず、前後の道路アクセスも狭隘なため大型車両や観光バスの乗り入れは不可能であり、地域住民はもちろんのこと、観光業者や漁協関係者から新しいトンネルの設置を求める切実な声が高まっています。
 ついては、逢井トンネルの現状をご認識の上、市が要望してくるであろう新たなトンネル計画については県として前向きに協力を願いたく、要望しておきたいと思います。
 第二点目は、安諦橋下流左岸側の河川敷整備についてであります。
 この付近の河川敷には、車の廃車や廃船、さらには遊漁船の係留等々、極めて乱雑な状態が放置されたままであり、平成五年にはマスコミで批判されるなどの経過を経て、河川課、港湾課、湯浅土木、有田市が協議の上、平成六年度より湯浅土木において測量調査、七年度には設計委託、平成八年度より基本設計委託等が実施され、古江見船だまり整備計画が作成されたものの、その後、具体的な進展が見られていません。今後、補助事業の選別、関係機関との調整等々、まさに組織横断的な取り組みを要するところであります。
 また、有田大橋下流右岸側、三菱電線沿いの護岸の改修についても同じであります。石積みの護岸はかなり崩れてきており、しかも護岸敷が低く、台風来襲時には越波する波としぶきで県道が通行不能に陥るなど、危険な状態にあります。当該箇所も河川と港湾の区域であるとともに、護岸上の県道は都計の計画路線であり、河川・港湾・都市計画各課、湯浅土木、有田市の協議が先決であります。
 以上、二つの箇所とも今後は組織横断型の協議の中で前向きな取り組みについて、強く議会の場で要望しておきたいと思います。
 以上で演壇からの質問を終わりますが、誠意のある答弁を求めます。
○議長(木下秀男君) ただいまの松本泰造君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 松本議員にお答えをいたします。
 国の大型補正予算に関連してのご質問でございます。
 まず、十年度予算の前倒し執行につきましては、年度間で切れ目のない事業発注を行っていくために、二月補正予算におきまして債務負担行為、いわゆるゼロ国債を活用した公共事業の前倒し執行を既に措置しているところでございますが、現下の経済情勢にかんがみまして、新年度発注分についても積極的な施行促進を図り、事業効果が早期にあらわれるように努力をしてまいりたいと考えております。
 また、景気対策としての国の補正予算への対応につきましても、国の政策動向を見きわめながら、これと軌を一にした適時適切な対応を図ってまいりたいと考えてございます。目下のところ、国政の場において種々議論されておるところでございますけれども、できるだけ早期に国の抜本的な方針が固められるように強く期待をしておるところでございます。
 次に、補正予算での景気対策の内容につきましては、ただいま申し上げましたように国の方針によるわけでありますけれども、本県の実情を踏まえますと、将来にわたって活力ある県勢を維持向上させていくためにはその基盤づくりが極めて必要であろうと思いますので、道路ネットワークを初めとした社会資本整備をこの際できる限り前進させ、県内景気の着実な回復につなげてまいりたいと考えております。
 次に、振興局設置に係る取り組みについてでございます。
 今日、行政需要は複雑化、高度化してございまして、各行政分野ごとに相互に調整しなければ対応できない課題も増加をしておるわけであります。こういった状況に対処をするためには、各行政分野にまたがる地域課題に対して総合的に調整をし、迅速に対応することが必要であると考えまして、各地域に設置している地方機関を組織的に統合する形で、本年四月から振興局を設置することとしたものでございます。
 このことによりまして、議員からご指摘のございました社会基盤整備の問題、生活環境の問題などの課題に対しまして、それぞれの振興局長のもとで総合的かつ計画的に取り組んでいけるものと考えてございます。また、地方分権の考え方も取り入れて振興局の設置に合わせて権限委譲を行うことによりまして、住民に身近な行政課題に対してはできる限り住民に身近なところで迅速に処理ができるようにしてまいりたいと考えております。
 次に、振興局に対する人的な補強についてでございます。
 原則的には現行の体制で対応すべきものと考えておりますけれども、振興局に権限委譲を行うことに伴って振興局の責任が増すこととなりますので、振興局の幹部職員の配置については十分配慮をしてまいりたいと考えてございますし、今後、振興局に権限や事務を委譲していく過程で必要に応じて職員の配置についても検討していきたいと考えております。
 この際、お願い申し上げたいわけでありますけれども、何分振興局制度は新しくスタートする制度でありますので、議員各位の温かいご指導を賜りますようにお願い申し上げます。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 振興局の機能と権限委譲についての二点にお答え申し上げます。
 まず、振興局に対する権限と予算の付与についてでございます。
 振興局の設置は、地域住民や市町村の要望に総合的に対応するとともに、それぞれの地域の特性に応じた行政を迅速に行い得る体制を確立することを目的としており、できる限り本庁から振興局への事務や権限の委譲を図ることとしてございます。具体的には、許認可に関することや県単独補助金の交付決定など、可能な範囲で振興局で処理できるよう準備を進めているところでございます。
 また、予算面におきましても、振興局ごとに調査研究や計画策定などを独自に行うことができるふるさと未来づくり調整事業、及び市町村や民間の地域づくり団体等が行う個性的で魅力ある地域づくり事業に対するふるさと未来づくり補助事業として、総額一億五百万円の予算を計上、提案しているところでございます。
 次に、業務分担によって二度手間を生ずることはないかということについてでございます。
 振興局の設置の目的の一つが、市部と郡部を一体的にとらえて広域的な観点から地域振興を図っていくことにあることから、和歌山市に係る業務の一部を除き、従来本庁が直接行っていた市に関する業務についても振興局が担当することといたしました。振興局設置後は、議員ご指摘のような二重行政とならないように十分留意してまいります。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
  〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 農産物価格暴落に対する県の対応についてのうち、県としての支援策についてということでございます。
 お話しのように、県では昭和六十二年産かんきつの価格低迷に対応いたしまして、かんきつ経営安定対策特別融資として昭和六十三年度に〇・七五%の利子補給を行ってございます。当時の金利状況を見ますと、基準金利が六・七%と高く、農家経営の安定を図る観点から、他の融資利率等も勘案し、末端金利は三%としております。しかしながら、現在の低金利時代の中で、今回、市町村、農協が実施している利子補給に伴い末端金利が一%程度でございまして、農家が利用しやすい低金利となってございます。
 県としましては、こうした状況も総合的に考え合わせ、先日、吉井議員にもお答えいたしましたように、ミカン価格の回復を図るため、国と協議の上、ジュースなど加工用の緊急枠として新たに二千トンの枠を確保し、それに要する事業費六千六百万円のうち県負担分として千六百五十万円を二月補正予算として今議会にお願いしてございます。
 いずれにいたしましても、温州ミカンは本県果樹の基幹品目でございますことから、国に対して本県の厳しい実情を訴えるとともに、機会をとらえ、減収農家に対する必要な措置等について要望してまいりたいと存じます。
 次に、極わせミカンのあり方についてでございます。
 議員お話しのように、平成九年産の極わせミカンにつきましては品質に問題があり、市場価格を形成する上でマイナス要因となったとの厳しいご意見のあることも承知してございます。県としてはこれまで果樹の周年供給基地づくりに取り組んでおりまして、その一翼を担う極わせミカンも重要な地位を占めているものと考えてございます。今後より一層、消費者ニーズを勘案しながら、極わせミカンも含め、優良系統への早期更新やマルチ被覆など、天候に左右されない栽培等を積極的に推進し、高品質生産に努めてまいります。
 また、販路拡大対策につきましては、県産農産物PR促進対策事業等により、テレビ等の広告宣伝、アンテナショップの開設、新幹線沿線での野立て看板の設置等を進めるとともに、昨年十一月の羽田空港における「平成版紀伊国屋文左衛門 紀州和歌山みかんPRキャンペーン」の開催や県香港駐在員のあっせんによる香港向け輸出ミカンのテスト販売の実施など、販路拡大に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。
 今後も、ニーズに適した生産振興とあわせて積極的な販路拡大対策を進めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 松本議員の国道四十二号の渋滞解消問題に関するご質問にお答えいたします。
 国道四十二号有田・海南間の交通渋滞対策につきましては、県議会のご協力もいただきながら、地元市及び町で構成される国道四十二号・有田下津海南間整備促進協議会と一丸となって、抜本的整備に向けての国の調査費を強く要望しているところでございます。現時点ではその見通しは明らかではございませんけれども、地域の切実な声が国に届き、十分手ごたえがあったと、そういうふうに感じているところでございます。
 今後、当面の対策として進められている交差点改良工事の促進とともに、抜本的対策の早期具体化について国に強く働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 20番松本泰造君。
○松本泰造君 答弁、どうもありがとうございました。
 まず、国の大型補正予算に関連してという質問に対する知事の考え方を聞かせていただきました。財政硬直化の中にありましても積極的な姿勢で知事が頑張っていただけるものと意を強くしたところでありまして、改めて本県経済活性化のためにもよろしくお願いをしたいと思います。
 二点目に振興局の件でありますけれども、もちろん、私たち議員も振興局制度については十分理解と協力をさせていただかねばならんと考えておりますけれども、私は振興局がスムーズにうまく機能するかどうか、若干不安な点も感ずるんです。特に、本庁を含めて職員の皆さん方の理解と協力がなかったら振興局が下請のような存在になってしまわないかと心配をするのでありますけれども、こうした点、県職員全体の意識改革を進める中で、みんなでこれを守り立てていくということに意を用いていただきたいなと思うところであります。
 次に、農林水産部長から、ミカン対策としてジュース加工枠の拡大などについて答弁をいただきました。先日の吉井議員の話にもありましたけれども、ジュース用のミカンがコンテナ一杯わずかに三十円、軽四にいっぱい積んで運んでもたばこ五つも買えない。しかしながら、捨てる場所がないので運ばざるを得ないというふうな、農家の本当に切実な状況はどうも事実のようであります。したがいまして、私は、ことしのミカン価格は当初の予想をはるかに超えた安い価格で、農家の中には実際生活に困っておる面も出てきており、例年にない厳しい状態を実感しているところであります。
 ミカンは本県産業の基幹であり、今後もミカン農家が頑張りと意欲を持って農業に取り組めるように支援することが重要であります。このため、改めて農家の経営や生活の安定に向け、低利の緊急融資なども含め、幅広い対策を講じられるよう強く要望しておきたいと思います。
 最後に、四十二号線の渋滞解消問題については引き続きご尽力を賜りますようにお願いを申し上げまして、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松本泰造君の質問が終了いたしました。
○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 35番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問並びに質疑を行わせていただきます。
 まず最初に、和歌山下津港の問題についてでございます。
 一番目、和歌山下津港の本港沖地区の新たな港湾建設でございます。
 国が第九次港湾建設を発表して以来、新たな港湾建設が全国的なラッシュとなっております。本県の周辺を見渡すだけでも、神戸港、大阪港を筆頭に姫路、小松島、今治、高知新港、まさにバブルを想起させるありさまであります。和歌山に水深十四メートルのバースが必要かどうかの議論は別としても、この状況は無視することはできません。
 一方、外国貿易は必ずしも大きな伸びは見せておらず、地方港の外貿コンテナ事業は、一時期大きな伸びを見せたものの、早くも下降線をたどり始めておると言われており、海運会社でつくる日本コンテナ協会では地方にそんなに需要があるとは思えないと、バースの利用者自身が表明している状況にもあります。
 最も最近の調査では、一部マスコミでも報道されましたが、日本開発銀行大阪支店の調査が注目されます。この調査は神戸港という国際港に視点を当てたものではありますが、日本の港湾の抱えている問題をリアルに論じているという点では私たちの和歌山下津港を考える際の一つの資料になるかと思いますので、少し紹介いたします。神戸港にしろ、大阪港にしろ、予想どおり貿易量が伸びたとしても新たなバースをつくらなくても十分対応できると、そういうふうに結論しています。そして、地方の大深水バースの整備についても、コンテナ船の大型化を認めつつも、なお、欧米基幹航路の寄港地は主要港では博多以外にわずかしかなく、地方港が水深十四メートルの整備を進めるのは多分に先行投資的ではないかと論じているわけであります。
 全体として建設ラッシュで供給過剰の可能性のあることについては大方の一致するところと考えられますが、港湾建設が自治体の思惑から発想されて無政府的なラッシュが生じ、莫大な財政の浪費になる可能性があります。港湾建設は、少なくとも近畿圏あるいは四国東部を含めての広域的な連携、総合的な計画があってしかるべきではないでしょうか。そうでないと、全国的に見れば数百億円の釣り堀がさらにふえることになりかねません。過剰投資ではないか、広域的に港湾建設をすべきではないかという思いを私も抱くものでありますが、当局の見解を示してください。
 二番。本港沖の十四メートルバース建設の主要な論拠は、外貿コンテナ船の大型化、神戸・大阪港の過密化、和歌山向け貨物の和歌山港でのキャッチとなっておりますが、先ほど述べたように、神戸・大阪港は十分のゆとりがあります。そういう前提で、問題は四万、五万トン級の船舶が和歌山港を利用するだけの港湾需要を生み出せるかという問題があります。
 一つの論拠に、運輸省の予測に八十万トンの潜在需要があるという見通しです。しかし、これには十分の根拠が見出せません。現在の和歌山港でのコンテナの扱い量は年間六千TEUしかなく、大型コンテナ船の一隻分にしかすぎません。週刊「東洋経済」の二月七日号に「せっかく投資したのに取扱量の少ない地方港湾」という記事が掲載されておりましたが、その中に和歌山下津港も残念ながらランクされておりました。
 バースの稼働率が統計的にまとまっていないので推定ですが、まだまだ需要にこたえる余裕があるとみなせるのではないでしょうか。そして、目下西浜バースを水深十三メートルで建設されています。コンテナ十五万トン以上がここで陸揚げされるという目算に立ったものですが、稼働率を上げることによってさらに機能を発揮できるものと考えられます。
 和歌山港のもう一つの特徴は、輸入に比較して輸出の少なさです。大型コンテナ船であるほどに、往路・復路の貨物の保障が必要となってまいります。帰路の貨物がなければ船舶企業の採算にかかわるからです。それだけのものを保障できる後背圏を和歌山港は持っておりません。
 さきにも述べましたように、企業の方に既に地方港の大型バース不要論が出ている中で、生産・消費の大規模な後背圏を持たない地域に巨額な投資を必要とする大規模バースは不必要だと考えるものでありますが、財政難の折から、巨大な港湾施設の建設がさらなる財政難を引き起こす可能性があるのではないでしょうか。港湾課の職員がポートセールスマンになって駆けずり回る姿と、閑散とした巨大バースの風景が脳裏をかすめます。そのようなことは無用の心配、杞憂であると言われるならば、その論拠をお示しいただきたいと思うわけです。
 三番。当局の作成した文書の中に、西浜泊地を最大限利用しても、船舶回頭などから水深十四メートル岸壁が精いっぱいであるという文言があります。すなわち、西浜に水深十四メートルバースが可能だということです。しかし、そこには十三メートルバースが建設されつつあります。水深十四メートルが必要なら、そこに当初からその規模のものをつくればよいと素人の私は考えてしまいますが、なぜ十三メートルをまず建設して次に新たに十四メートルというふうになるのでしょうか。十四メートル建設論は、現在建設中の西浜バースの事業化の当初の段階で既に出ていたはずです。むだを重ねることにはなりませんか。
 四番。港湾建設をめぐって景観問題も含めてさまざまな議論が起こっているところですが、最も説得力のあるはずの当局の話が、疑問の提出者を納得さし得ていません。提出される情報が少な過ぎるからであります。この際、この港湾計画に至る調査結果の一切と港湾審議会の議事録を公開されることを求めます。審議会について言えば、出席者の固有名詞はあえて必要ではありません。
 五番目。私は、県民の多くに疑問を抱かせたまま新しい港湾計画の事業化を望むものではありませんが、当局の意思が別のところにあるとき、一部見直しと事業化へのプログラムを策定されているのではないかと推測をいたします。事業化に向けてどのようなプログラムを持っているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 なお、この際、残土に一言つけ加えるならば、雑賀崎沖の埋め立てを絶対化しないで、さらなる研究を要望しておきたいと思います。
 続いて、同和問題で質問をいたします。
 私は、幾度かこの場から、現在進められている同和行政を一日も早く終わらせ、一般地区との間の同和の垣根を取り払うことを訴えてまいりました。それは、今のような行政を続けるならば、わずかに残された問題も解決しないだけでなく、新たな差別を生み出しかねないと考える立場からのものでありました。今回も、改めてそれをただしたいと思います。
 一番。当局は二〇一〇年を目標年度とする長期総合計画を策定いたしましたが、その中に改めて同和対策を総合的・計画的に推進していくとして、従来掲げてきた課題をほとんどそのまま列挙しています。そして一方で、新たにこの一月、同和推進プランなるものを策定して同和行政の推進をうたっております。そして、九八年度も九十六億円もの同和関係予算が提案されているところであります。
 国が九七年度をもって同和行政を終了させたのは、基本的には同和問題の解決を見たとの判断からでした。残事業の措置も、限定された課題の一日も早い終了を旨としたものでした。それにこたえて、幾つかの町が既に同和行政の終了を宣言し、数多くの市町村が同和対策の終結を準備中であります。来年度も幾つかの市町村が終結を予定しています。
 そのような流れの中で、県がどうしてこれから十四年の長期の計画に同和行政を積極的推進の立場から位置づけなければならないのでしょうか。なぜ、わざわざ総合的同和政策の推進プランが必要なのでしょうか。今必要なのは推進のプランではなく、いかに終了するかという終了プランではないのでしょうか。この調子で進めば、際限のない同和行政になってしまう危険を感じます。当局の見解を伺います。
 二番。私はこのような当局の態度の根底に、若干の格差イコール同和問題イコール同和行政という考え方があるのではないかと推測いたします。私は、今統計上にあらわれた若干の格差は必ずしもいわゆる部落問題としてだけではとらえられない、現在の政治が社会全体に生み出している矛盾の一つだと考えています。このことは、幾度もこの場で主張してきたところであります。
 同和問題での格差の一つと言われる産業の問題、就労の問題などはまさに県下の過疎地域全体に及び、中山間地はコミュニティー自体の成立が危ぶまれるほど深刻なものになっております。学力、進学率の問題でも、いわゆる同和地区全般に及ぶものではなく、ごく特定の地域に限られ、社会全体の問題である単親家庭、生活苦等が基底に流れています。このような問題を同和の視点だけで見るならば同和行政十四年の長期のプランになるでしょうが、視点を変えれば一般行政として全体として底上げしなければならない重要な課題として見えてくるはずであります。いわゆる若干の格差問題を同和の問題としてだけ見るのではなく、全体の問題として広くとらえ、一般行政として施策を広く及ぼす立場に転換されてはいかがですか。そうでないと、ますます逆差別を生む可能性があります。
 三番、幾つかの残事業についての取り組みについてお尋ねをいたします。一つは、残事業の中になぜ新しい事業が組み込まれるのかという問題です。
 昨年の残事業の中には姿を見せなかった幾つかの共同作業場の問題、あるいは水産同和、農林同和が新たに来年度予算案の中に見られます。また、昨年から問題になり出した和歌山市の二カ所の共同作業場は、和歌山市が周辺の地価とかけ離れた倍近い価格で土地を購入、総事業費六十八億円として進められていますが、協同組合も雇用対策も持たず、予想されたとおり、ストップしたままと聞きます。和歌山市の共同作業場は、あと一カ所を含め、総額八十七億円を超え、周辺からの厳しい批判の声も上がっております。
 以上、いずれも県が国との関係で仲立ちをし、みずからも補助金を出しているところです。まだ県とすり合わせの段階だそうですけれども、総事業費十四億円を超える企画も別に進行していると聞きます。まさに際限がないのではないかと、そういう感じを免れません。残事業計画の中になかったもの、ずさんな計画で見通しのないもの、住民が必要としていないものなどは、改めて打ち切りを前提に見直すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 子ども会についても、一言触れておきたいと思います。
 既にこれについては幾度か申し上げたところでありますが、ある地区だけになぜ子ども会があるのか。子供たちは口にしませんが、年長になると不思議に思っています。ある町の子供たちのバスツアーで、子ども会に参加している子供たちにだけお菓子が配られました。大人たちも説明のしようがなかったと聞きます。
 子ども会は周辺地区の子供たちと一緒にやっているところもありますが、何の格差もない子供の世界に同和子ども会のある地域とない地域があるのは子供にとって理解しがたいことです。進学率一〇〇%の地域でも開かれているところがあります。同和地区の子供、いわゆる部落の子供の自覚を強く促す子ども会もあります。いずれにしろ、子供の世界に垣根をつくることは、新たに差別感情を醸しかねません。
 そもそも子ども会は、教育委員会社会教育課の指導手引によれば、地区の著しい貧困と生活環境の劣悪さの中でせめて楽しい遊び場を与えたい、学校教育も満足に受けられない子供たちにせめて読み書きの力の補充をとの願いのもとに設立されたのだとされています。
 しかし、事情は一変しました。所期の目的は既に達成されています。子供たちの間に垣根になっている、あるいはその可能性のあるものは速やかに取り払うことが差別の残りを除くためにも必要だと思います。そういう思いから、同和子ども会の廃止を決めたところが数多く出てまいりました。県もこの制度を廃止し、市町村のこの機運を促進すべく手だてを尽くすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 五番。市町村の同和行政終結に向かう自覚的な動きを県は十分に尊重すべきだという思いから質問をいたします。
 先ほどからも申し上げたとおり、市町村の段階で、子ども会を初め同和室の廃止など、各種の同和事業が終結し、終結の道を歩み始めています。終結を宣言した町も数町生まれました。県はそれらの自発的な動きを歓迎されておられますか。必ずしもそうでないような気配が感じられます。とりわけ県と市町村の共同の同和事業などでは、なかなか厳しく存在の方向の指導があると聞きます。県の指導とは、市町村の明らかな法的誤りや余りにも民意からかけ離れているところへの指導や判断しかねているところへの助言などに限るべきで、いやしくも多数の民意のもとで自主的になされている行政については、これは強く尊重されなければなりません。市町村の同和行政終結の動きに対し、その主体性を尊重されるように求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 六番。人権と同和啓発について触れたいと思います。
 法の終了後、同和啓発が大きくクローズアップされてきました。差別的言辞がわずかであっても存在していることは私も承知しておりますが、しかし、これをもって全県民を対象にした大がかりかつ強力な同和啓発が必要な時代では既になくなったと考えます。特別なことをしなくても、自然な交流がおくれた意識を解消させる時代ではないでしょうか。
 元小学校の校長が、「啓発講座に職務上よく出たが、差別の実態が見当たらないときに差別があると殊さらに強調することに違和感を感じた」と述懐をしておりましたが、長期総合計画や推進プランを見てみますと、そのような事態の大規模な再現が起こるのではないかと思われます。
 差別に対する無関心層が増大していると、そのような危惧も表明されておりますが、実態を反映して差別意識の希薄になっている状況を無関心と決めつけるのは、逆差別に対する批判をねたみと決めつけるのと似ていないでしょうか。人権問題が同和の視点から、あるいは同和を中心にして語られるのは、国連人権十年の思想にも合致しません。実態に合わない同和啓発の強調よりも、日本国憲法の基本的人権の思想を学び合う環境の提供こそ行政の責務ではないでしょうか。それこそが、わずかに残された差別意識の解消に最も有効な手だてではないでしょうか。見解を聞かせてください。
 最後に、教育問題についてお尋ねをいたします。
 まず、国の財政構造改革の本県の教育行政への影響についてであります。
 国の教育予算は、全体として〇・五%削減されました。結果、教職員定数改善計画の二年間の延長や私学助成の抑制、高校の危険建物改築と大規模改築事業の廃止など、教育条件の整備という国の責務の放棄の面が色濃くあらわれておりました。そのほか、不登校問題に重要な役割を果たしている養護教員やカウンセラーの増員も極めて低く抑えられ、県民の立場からしても歓迎すべからざる状態になっていると危惧するものであります。
 提出された一般会計予算案が二・七%の伸びに対して教育予算の伸びは一%で、伸びの中心的なものは医大関係と養護学校建設にとどまり、教育関係の全般には相当厳しいものとなっているのではないかと推測するところでありますが、教員定数を初めとした諸施策にいかなる影響があったのか、また国の措置をいかが評価されているのか、お示しをいただきたいと思います。
 二番目。小・中学校の荒れや不登校問題、あるいは学習効果と教員の定数の関係についてお尋ねをいたします。
 学校教育の困難がさまざまに語られる昨今であります。学校の荒れ、不登校の問題、学習についていけない三分の一の子供たちの存在、いずれを見ても極めて深刻な問題であります。県下においてもその例を挙げれば切りがないほどでしょう。しかし、それも教育行政上の問題としては、つまるところ学習指導要領や教員定数の問題に突き当たってまいります。指導要領の問題については十二月の議会で中山議員がただしたところですから、私は教職員定数についてお尋ねをいたします。
 学級編制基準三十人が、そして差し当たり三十五人が全国的にも教職員や父母の大きな要望となり、県下でも四万四千五百人の署名を添えて陳情あるいは請願をされたところであります。学習の内容の高度化、過密化、子供を取り巻く社会の複雑化、それに対応し切れない子供自身の悩み、教師はそれに的確に適切に対応してゆかなければなりません。
 しかし、それも限界に来ているようです。あのおぞましいナイフの事件があった後、あるアンケートに答えた子供たちの声は、「事件を起こした子供の気持ちを理解できる」としたのが八〇%にも達したそうであります。そして教職員の声は、「子供たちの心がなかなかつかめなくなってきた」というのが数十%となっていました。子供の苦しみ、教職員の苦しみがこれほどにもなってきています。学習面でも、生活指導の面でも、子供の一人一人に対応し切れずに教職員は今疲労こんぱいのありさまではないでしょうか。
 学級編制基準四十人では対応し切れない現実があります。それはもう、間違いのない事実だと思います。しかし、世界の趨勢は既にその編制基準についてはクリアをしています。イギリスの中学校では三十人、フランスの小学校では二十五人から三十人、西ドイツでは小学校で二十四人、中学校では二十八人、アメリカは小・中とも三十一人となっていますが、アメリカは小学校低学年をことしから十八人とする施策が明らかにされました。
 そんな流れの中で、我が国は依然として四十人です。チームティーチングで若干の措置がとられていますが、それすら財政構造改革の名のもとに後年度に追いやられている始末です。父母や教職員が切望する三十人学級あるいは三十五人学級について、教育委員会はどのように考えておられますか。どのような展望を持っておられますか。県独自にどのような努力をされようとしていますか。考えをお示しいただきたいと思います。
 さて、来年は生徒の減少に伴い、国の基準に従って本県でも小中学校で百十三人の教員が削減される予定であります。俗な言い方をいたしますが、百十三人分の人件費が浮いてくることになります。教育界の緊要さにかんがみ、この百十三人を削減しないで、緊急度の高いところから三十五人学級に向けて配置できないでしょうか。和歌山県教職員組合の一つの試算によりますと、既にさまざまな形で加配が行われていることを前提にすれば、一年に五十人から六十人を増員すれば六年間で三十五人学級が実現いたします。もちろん、細部の検討は必要でしょうが、貴重な方向を示唆していると思われます。国の負担分を県が負担するという問題は差し当たりクリアできないということであれば、従来の県費負担からだけでも始めることは可能であります。それだけでも六十人近い教員を確保することができます。生徒の減少期にある現在では、学級編制基準引き下げのまたとない好機であります。高知県では、五年間で県単独で三百人の教員をふやす計画だそうであります。我が和歌山県もできないことはないはずです。要は、教育委員会と財政当局が事の緊要性をどう自覚されるかにかかっていると思います。所信を聞かせてください。
 次に、同和教育についてお尋ねをいたします。
 私は、幾度かこの問題について質問してきたところですが、人権教育が改めて広く提起されているときに当たり、いま一度質問をいたします。
 「和歌山県の教育」という教育委員会の手による冊子を見ますと、その冒頭とも言えるところに同和教育方針が掲げられています。教育委員会の同和教育への意気込みがうかがわれるところであります。しかし、この同和教育方針は一九七三年に作成されたもので、以後、二十五年間の歳月と地区の人々、関係団体、行政の努力によって地区は大きく変貌し、同和問題は基本的には解決したと言われる状況になっております。教育方針も、抜本的に見直すときに来ています。しかし、そこにはほとんど変化がなく、二十五年一日のごとく、同和教育が建前どおり進められています。
 教育委員会は、学力、進学率の格差の存在を理由にその必要性を主張されていますが、それらの若干の格差もまさにわずかの特定地域に限られ、いわゆる同和地域に広く存在するものではありません。それは、現在社会が生み出した貧困や単親家庭などに起因する社会一般共通の問題であります。
 教員の加配については、三十五人学級の先鞭という意味においてのみ評価しますが、いわゆる同和地区だから配置するというのではなく、全県の学力問題を含めて教育困難校へ順次配置すべき時期ではないかと思います。和歌山市内のある同和地区を含む小学校では百五十七人の生徒に対して十五人の教員が配置され、同じ市内の百十九人の学校には前者の半分にも満たない七人の教師しか配置されていないなどというのは現在の同和教育行政の典型的な一例ですが、周辺の父母から理解を得るものではありません。
 同和推進教員の役割も既に終了したと、多くの職場では語られる状況になりました。その多数は一般の授業に参加していますが、県教育委員会の指導で同和問題に専任するよう指導があったりして新たな矛盾を生んでいるところも出ています。
 あるとき、生徒が学校で習った賎称語を、全く他を差別する意図もなく使用したことに対して、それが学校の大問題となり、全教員に伝えられ、同和委員会、市教委、PTA会長、地区同和推進協議会会長、子ども会会長に伝えられ、生徒に対しては担任教師、学年担任、同和推進教員、校長からの事情聴取と指導が行われ、生徒の父母には啓発が行われ、その間、学校内外で幾度となく会議が行われ、最終地域の同和推進協議会学習会で報告されることになりますが、この間、二十日の間に、日曜も含め十六日間はこの問題にかかわる何らかの取り組みが行われました。簡潔に率直に指導すればよいことに、こんな事態になってしまいました。そして、同和教育はかくあるべしということになっています。これが一つの実態であります。どうお考えでしょうか。
 教育委員会の社会教育講座というものがあります。一九九五年の統計ですが、それはこの年に六百六十四回開催され、約九万八千人の受講者がありました。しかし、このうち同和関係講座が五百七十六講座、割合にして八七%、参加者九万四千人で、その割合九六%となっており、圧倒的に同和関係講座が占めています。社会教育は多角的に行われていますので、この講座だけで評価するつもりはありませんが、少なくともこの分野においては著しくいびつになっています。
 私は、従来からの同和教育の成果を高く評価をしているものでありますが、しかし、現在、以上幾つかの例を語りましたように、同和教育という教育━━━━━━━━をいつまでも固定化させておくことは、身分差別の残りを一掃する上で障害になっている面が生まれていると思います。現段階では、人権を同和の視点から発想するのではなく、憲法と教育基本法の立場から幅広く学び合うことが正道であろうと思います。そうすることこそが、身分差別の残りを一掃する力を子供たちにも大人たちにも育てる最短の道であるとも考えるわけです。
 子供の世界全体に、教育上、実に深刻な問題が渦巻いています。いわゆる同和地区と一般地区との格差だけをクローズアップする立場を排して、全体に厚く対応しなければならない時期に来ていると思うわけであります。そういう立場から、同和教育の制度自体も廃止する時期に来ているのではないかと思いますが、教育委員会の答弁を求めて、私の第一回目の質問を終わります。
○議長(木下秀男君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
  〔「議長、議事進行。47番」と呼ぶ〕
○議長(木下秀男君) 47番和田議員。
○和田正人君 ただいま鶴田議員から、同和問題に関連をして、幾つかの質問、ご意見、また提言がございました。
 我が和歌山県は、同和問題の課題の多い中で今日まで、満点と言えないまでも、先進県としてその解決のために努力を続けてきた歴史があります。
 ちょっと、耳が悪くて聞こえなかったのかもわかりませんが、その発言の中に、特に教育問題に関連をして──同和教育のところでございます。「ザンサイ」という表現を使われたのか、「ザンシ」という表現を使われたのか。もし「ザンサイ」ということであれば、彩りを残すという言葉も漢字で書けます。しかし、発言の趣旨からいけば、「残りかす」という意味の「残滓」という字になります。もしそうであるならば、今日までの歴史、そして努力の評価が大きく変わるというふうに受けとめました。
 そういうことで、私は、自分の聞きようが間違っていたのかどうかわかりませんが、ご提言のあった内容で確かに傾聴する部分もございました。そういう意味で、「残滓」という言葉がそのままこの議場で認知をされるということであれば、大きくその評価が変わる部分もございます。
 そのために、あえて議事進行として、ただいまの鶴田議員の議事録精査、そしてその発言内容がどうであったのか、私の聞き間違いであれば私の誤りとして、鶴田議員にあえて議事進行をかけたことを謝らしていただきます。しかし、そういう「残滓」という表現でもし使われていたとすれば、同和問題に対して大きな問題点を提起することになりかねませんので、議長の取り扱いでよろしく善処をお願いしたいというふうに思います。
○議長(木下秀男君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十二分休憩
      ─────────────────────
  午後三時十七分再開
○議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(木下秀男君) 都合により、この後の議事は明日に譲り、明日も定刻より会議を開きます。
○議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後三時十八分散会

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