平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(飯田敬文議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(阪部菊雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(阪部菊雄君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番飯田敬文君。
  〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、順次質問をさせていただきます。
 初めに、県の長期総合計画が審議会の答申を受けて策定されており、中身は、平成九年度を初年度とする十四年間の展望を想定し、基本方向や諸施策を明らかにしております。その中から私が問題意識を持った事柄について質問をさせていただき、当局の考えをお伺いいたします。
 我が国は今、大きな変化のさなかにあり、いかにしてこの難局を乗り切り、安定した、また安心して暮らせる社会を築いていけるか模索しております。我が和歌山県も例外ではなく、景気の落ち込みの中、中小企業の倒産に始まり、銀行の不信感や多発する凶悪事件に県民の不安感が増大しているところであります。県としても、この不安感を早期に取り除くため懸命のご努力を傾注していただいておるところではございますが、急激に変化する社会に対応できていない場面が多く感じられます。
 そんな中、新しい長期総合計画が策定され、進むべき和歌山県の基本的な方向を示されました。しかし、全体的な感想を述べるとすれば、これまであった推進施策なり事業をただ網羅したにすぎないものであり、重点のぼやけたものになっているように思われるところであります。特に和歌山県は北と南に長く分かれており、生活様式が異なることから、南北別施策推進を明確に打ち出し、地域相互の進むべき方向を示すべきであります。
 また、このような混乱する時代にあって、我が和歌山県が単独で発展浮揚することが困難であることは明白であります。すなわち、地方分権を踏まえ、私がいつも申し上げているとおり、近隣諸県さらに近畿地域が一体となった中において和歌山県の果たす役割を定めるとともに、関西地域をリードする施策なり働きかけを早急に行い、和歌山県、特に北部を中心とした関西地域の発展を提起すべきであります。
 また、計画期間を十四年間と定めていることから長期的な計画であると認識しておりますが、進捗状況がわかりづらいため、三年ぐらいの周期で具体的な計画の作成とそれに伴う財政計画の点検及び報告を県議会にしていただきたいと考えるわけであります。
 さらに、計画の中に出ている人口見通しなど具体的な目標数値を挙げておられますが、例えば県民所得や下水道整備、ホームヘルパーなど、どのような根拠を持って数値目標を挙げられたのか、また本当に達成できるのか。現状を見ておりますと、絵にかいたもちになると思えてならないわけであります。
 そこで、知事及び企画部長にお聞きいたします。
 まず、新しい長期総合計画における二十一世紀の和歌山県のあり方、目指す方向をお聞きしたい。特に、関西地域の中で我が県の果たす役割を明確にした上で近隣諸県への対応を知事にお聞きいたします。
 それから、長期総合計画の短期的な進捗と点検、報告、数値目標の定め方、また達成可能なのかどうか、企画部長にお聞きをいたしたいと思います。
 次に、長期総合計画では地域計画の中で地域整備の基本方向が示され、住民主体による地域づくりといった観点から地域がより重要視されたことは、地域を取り巻く社会構造の変化により望ましいことと評価するところであります。この中で圏域設定がございますが、和歌山県を六つの圏域に割り、それぞれの圏域において特色ある地域の整備を行うとなっておりますけれども、これで本当の意味での生活ゾーンの設定とはなっておらないと思うわけであります。
 例えば那賀郡を取り上げてみますと、人口増加もさることながら、地域の開発が進み、郡民の多くは大阪、泉南地域への交流が多く見られ、また消費活動や進学なども大部分は北へと向いておるわけであります。また、那賀郡と隣接する美里町や野上町などの住民の方が那賀郡を通って大阪側へと向いていることも、事実であります。前にも述べさせていただいたとおり、那賀郡は大阪の玄関口として重要な地域であります。そういった意味で、那賀郡ばかりではなくほかの地域も、時代とともに生活圏域が大きく変化をしているところであります。
 また、圏域設定には医療及び福祉、教育、文化、安全など生活に密着した設定があり、地域計画の中でも圏域の一体的な整備をうたっておりますように、より広域の総合的な取り組みが必要であります。今回の地域圏域設定では、例えば和歌山圏域は、和歌山市、那賀郡、海南市・海草郡がすべて含まれ、一つになっております。また保健・福祉・医療圏としては、和歌山、海南・海草、那賀の三つに圏域が細かく分割されているのが現状であります。また、行政圏としては和歌山海草県事務所、那賀県事務所の二つに分かれているということで、それぞれの分野においてばらばらの圏域設定となっておるのが現状であります。このほか、御坊・日高と西牟婁郡の長計の圏域と行政圏域が一致しておらず、西牟婁郡、東牟婁郡も一部違いがあるところであります。私は、具体的な個別の圏域については、生活実態に即した整合性を図り、時代に対応した行政区域と統一した設定をするべきであると考えます。
 こうしたことを考慮した上で、新しい長期総合計画における圏域設定は、南北別施策推進を踏まえて、現行の六圏域ではなく、大きく南と北の二つの圏域にするべきではないかと考えるところであります。例えば、新しい長期計画の中で述べられている紀北地域は関西地域の一翼として、知事も述べておりますとおり紀泉百万都市構想を中心とした都市づくり、また紀南地域は、その自然と環境を生かしたリゾート、観光都市づくりを軸として特色ある和歌山県の創出を推進するべきと思います。長期総合計画における地域圏域の設定と福祉・医療圏域及び行政の圏域との整合性について、また和歌山県圏域設定の考え方について、西口知事及び企画部長にお聞きをいたします。
 次に、安心して暮らせる町づくりについてお尋ねいたします。
 まず、福祉のまちづくり条例についてであります。
 福祉のまちづくり条例が平成八年十月に交付され、だれもが自由に出かけられ、快適に過ごせる優しい町をみんなでつくるという目的のために施行されました。当局もその目的に向けた取り組みを着実に推進されておるところだと存じますが、予想を上回る急激な高齢化や身体のご不自由な方々の早急な要求にこたえたものとなっているのか、甚だ疑問に思うところであります。
 施設の改良は県関係の施設から改良するということで、県庁のエレベーターの設置をいち早く決定されましたが、他の施設の改良状況は余り聞こえてこないのが現状であります。例えば、県民文化会館の階段や県道等における段差の解消など、この一年間でどれくらい改善されたのか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、県下市町村は現在の厳しい財政状況にあって進捗が見られないと聞いておりますが、県の市町村への福祉のまちづくり条例への指導が徹底されているのか、また具体的な措置が講じられているのか、疑問に思う県民が多数に上っております。県の福祉のまちづくり条例の現在の進捗と取り組み、市町村への働きかけ及び指導の具体的な計画をお聞かせ願いたい。
 次に、介護保険の課題と対応についてお尋ねいたします。
 出生率の低下による少子化によって拍車をかけられる超高齢化社会の到来に向かって、寝たきり、痴呆者がふえることが予想される現在、だれもが公平な介護サービスが受けられるようにと、公的介護保険制度が導入されることが国において決定されたところであります。我が国の高齢化は確実に進んでおり、世界と比較して人口割合では二〇二〇年に二五・二%と世界のトップになり、二番目のスウェーデンを大きく引き離すと予想されています。社会福祉の充実は、我が国全体の重要な課題として、また地域の一人一人に公平で安心して暮らせる町づくりの上からも重要であります。ここでは、平成十二年四月施行の介護保険のあり方、また問題点を指摘させていただき、当局のお考えをお聞きいたします。
 さて、皆様も既にご承知であり、当議会においてもしばしば提起された介護保険の導入は、病院などの施設からより人間的に過ごせる家庭において介護しようという理念のもと、福祉の充実を図ったものであります。しかしその中身は、現行の福祉・医療制度がこのままではパンクしかねないということに対しての財源確保が本質であり、その理念から遠くかけ離れたものであるように思われます。
 確かに、四十歳以上の全国民がひとしく保険料を負担し、相互扶助の精神のもと福祉社会の安定を全国民が担うものとして、導入に当たり敬意を表するところではありますが、導入に際してあらゆる問題点が指摘され始めております。
 まずその一つは、介護を受ける側の問題であります。現在までの方法では、あらゆる福祉サービスをある程度の自己負担によりだれでも受けることができる仕組みとなっておりましたが、介護保険の導入により、一人一人の介護度合いによって認定をされるところから、受けられないサービスが発生をいたします。もちろん全額自己負担で受けることができますが、今までよりさらに多くの負担の増大が予想され、サービスの内容にも影響しかねない不安を感じております。また、現在受けているサービス、例えば特別養護老人ホームに入所している要介護者は基準が厳しくなることによって施設から出ていかなければならないこと、あるいは認定に際して正確な判定ができるのか、不安感が大きく募っております。
 二つ目は保険を負担する側の問題ですが、国民一人一人が応分の負担を分かち合うことに異存はないにしても、世界的な景気の低迷を受け、失業の危機を肌で感じる現在、保険料の負担ができるのか、また負担ができない者は介護を受けることができないのではないかという不安を感じております。
 三点目は、介護保険の事業を主体的に推進する市町村の問題であります。主体的に推進をされる市町村の現状は、導入に当たり、調査、医師の確保、審査認定を行う認定員の選定、認定基準の設定、保険料の徴収など行政事務がふえ、要介護者との直接応対など、責任が重い作業が待ち受けております。市町村は介護保険の実施に係る事務や財政負担が増大し、より以上の財政の逼迫は目に見えております。
 以上の事柄は、単に導入により行政事務がふえることだけが問題ではなく、例えば保険料を払うことが困難な生活保護者や低所得者、年金生活者、身体障害者などは介護保険が受けられず、切り捨てされることとなっているとお聞きをいたしました。このようなことでは、高齢者や社会的に弱い人々を守るという福祉の理念に相反し、福祉全般の後退につながるもので、許すことのできないことであります。さらに、認定の基準設定による認定漏れの要介護者の処置など、問題の多い保険であり、だれでも受けることのできる介護の平等性の確保が確実にできないのではないかと危惧するところであります。また、おのおの市町村の判定にばらつきができないのか、市町村の財政など、事情による対応やこれを行う体制をつくり上げることができるのか、甚だ疑問であります。介護保険の導入に係る福祉の後退認識や導入の是非について、県当局の認識をお聞かせ願いたいと思います。
 また、個々の問題として、保険料を払うことの困難な者の救済や認定基準から漏れた要介護者への対応、事業主体の市町村の体制づくりや保険料徴収、認定などの作業に対する県の認識する問題点と助成及び指導のあり方についてお聞きをいたします。
 次に、介護保険のところでも申し上げました高齢化は、私たちの想像を超える勢いで進展しております。日本の老人人口の全体の人口に占める割合が七%からその二倍の一四%になる年数は一九七〇年からたったの二十四年と見られ、早急な対応が必要であります。そのため、国では一九九八年に高齢者保健福祉推進十カ年戦略を策定し、全国市町村はそれをガイドラインとして市町村老人保健福祉計画を策定いたしました。その中に、デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホーム、老人保健施設、在宅介護支援センターなどの施設づくりを計画し、高齢者福祉の観点から、だれもが安心できる活力ある福祉社会の実現に取り組んできました。県は、長期総合計画の中で、広域的な観点から適正な配置を目標に圏域を設けてその計画を推進してきたところであると述べられております。しかしながらこうした計画にしても、策定から既に十年近くも経過しているにもかかわらず、今なお特別養護老人ホームなどの設置の指標としているところに問題があるのではないでしょうか。
 例えば、同一の圏域の中において特別養護老人ホームなどの設置に町ごとのばらつきがあったり、広域圏での推進と言いながら関係市町村との十分な話し合いがなされないまま推進するという経過があります。特に那賀郡では人口増加が著しく、社会情勢は計画当時と大きく変化をしており、施設の設置に関しては、やはりその時点の地域事情に合ったものでなければ真の広域的な観点からの適正な整備を推進することはできません。県民にとりましても、他町にあって我が町にないといったことの不安も生じているわけであります。
 圏域の安定した開発や福祉行政の適正配備は、まず地元での意見調整などの条件整備が大事であろうと考えていますが、県当局の考えをお聞かせ願いたい。
 また、介護保険が導入され、社会情勢の変化が進む中、より細やかな福祉の充実のために福祉の圏域設定はおのおの市町村で設定されるべきであると思いますが、県の考え方、さらに那賀郡における今後の福祉関連施設の整合性と公平性、平等性と条件整備についてお伺いをいたします。
 次に、戦後半世紀が過ぎ、人々が幸せに暮らせる条件が変化する中で変わらなく求められているものが衣・食・住であり、近年、衣・食はある程度足りてきておりますが、住は島国日本の基本的な決まりなのか、今なお不足しているところであります。また、大部分の国民は一戸建ての個人住宅の入手に困難を来し、安くて便利のよい公営住宅への入居を希望しております。そんな中、低所得者に安く賃貸するため、自治体が建設・管理する公営住宅法が新しく改正され、家賃が各世帯の所得に応じて決められることが決定したところであります。
 これまでの家賃設定は各団地ごとに一律でありましたが、法の改正によって収入により個別に決められることとなり、一定以上の収入がある住民の退去を求められる動きがあります。また公営住宅は、低所得者やそれに準じた住民に安く住宅を供給するため政策的に建設されたという経緯がございますが、新家賃は、入居者の収入によっては従来の家賃以上の高額になる見通しで、家賃をめぐるトラブルが県内各地で起きてくる可能性を含んでおります。現に県内外の市町村で、条例の制定をめぐってトラブルが起こってきておるのも事実であります。社会福祉の充実を目指し、福祉のまちづくり条例など諸施策を打ち出して、安心して快適に暮らせる町づくりを推進するということからも逆行するのではないかと思うわけであります。
 私は、安心して暮らせる町づくりを念頭に、県議会の場において数回の質問をさせていただきました。県民が快適に生活できる地域づくりに、県当局の協力を得ながら推進してきたところであります。県は段階的に運用すると考えているとお聞きしておりますが、入居者への周知を含め、また公営住宅建設の目的と福祉社会の充実を念頭に置いた公営住宅の運用を強く希望するものであります。公営住宅法の改正を受けて、福祉社会の充実を前提とした県民に対する公営住宅施策についてお伺いをいたします。
 次に、安心して暮らせる町づくりに欠かせない問題は、救急業務の拡充であります。住民の命を根本から守ることは言うまでもないことでありますが、万一の病気や事故から県民の大切な命を守ることも重要であります。県下の救急車による搬送件数は、昨年で二万九千三百六十二件を数え、年々増加の一途をたどっているとお聞きしております。なお、救急車で運ばれる患者は、近年増加している心筋梗塞や脳出血などの重病人が多く、治療に一刻を争う患者ばかりであり、救急業務の充実が急務と考えるところであります。
 そこで、県下の救急業務の現状を確認しながら問題点を明らかにし、早急な改善を希望するものであります。
 まず第一に、救急車による救急出動件数の増加と搬送中における心肺停止などの重症患者に対する救命率の向上の一環として、救急車内において救命行為の高度化が叫ばれてきております。
 平成三年、救急車内で特定の医療行為ができる救急救命士制度が法制化され、それらの医療行為ができる医療機器を搭載した高規格救急車とあわせて救急高度化事業が消防機関において取り組まれておりますが、救急救命士が県下で多数不足している現状があります。救急救命士の養成が急務であるにもかかわらず全国で養成施設が五、六カ所と少ない現状は、法が制定されて既に七年を経過しており、行政の怠慢としか言いようがありません。また、消防機関の勤務体系は三交代勤務であり、一勤務につき三人の人員が必要となっていることを考えますと、人員配置にも特別な配慮が必要であります。
 なお、救急業務の高度化はこの二点だけではなく、これに全消防機関に最低一台の高規格救急車を早急に配備することによって実現をいたします。全県下を含め、特に那賀郡の救急高度化事業の現在までの進捗状況とともに、救急救命士の養成に係る県としての養成施設の建設並びに人員、高規格救急車の配備計画をお伺いいたします。
 第二に、救命士や高規格救急車がそろっても、受け入れ体制の整った医療機関と救急救命士の救命処置に対する医師の指示体制が不足しております。
 県下で唯一の日赤救命救急センターは、二十四時間受け入れの体制にありますが、収容不可能時があると聞いており、医療体制の不備が指摘をされております。きょうの新聞でも出ておりましたように、和歌山市の女児が日赤の医師の不備による緊急医療のミスで死亡し、裁判で和解をされたと聞いておりますけれども、たらい回しと言われている現実があるわけであります。
 また、私たちの住む那賀郡は、緊急の場合に和歌山市内への道のりに時間がかかり過ぎて助かる命までも助からない現状では、ないに等しいことと、体制づくりに対する姿勢に疑問を感じてなりません。一方、救急車の郡外搬送の割合が全体の四五%にも上る状況は異常であります。また、医師の指示体制においても、二十四時間カバーできる体制になっておりません。例えば、医療圏の問題と絡めて那賀郡を和歌山市の圏域から独立させ、現在建設中の那賀病院を二十四時間対応の救急救命センターとして整備を推し進めるとともに、各消防本部単位において施設を推し進めるべきであります。なお、医師の指示体制は県下全体一カ所のセンター方式を取り入れたものとすべきであります。また、傷病者の生存にかかわる時間的な短縮は、消防機関の救急業務だけではなく、傷病者の家族や発見者による早急な人工呼吸や応急処置によって高い確率で生存することがわかっているところから、県民に対する救命の啓発や人工呼吸、応急手当ての講習を行い、意識を高めることが望ましいと考えます。消防本部単位の受け入れ体制における早急な施設づくりと救命士への医師の指示体制の整備について、また県民に対する実地講習や啓発の推進についてお伺いをいたします。
 最後に、教育問題について質問をいたします。
 昨今、子供のいじめ問題に始まり、昨年五月、神戸市須磨区の児童連続殺傷事件、本年一月、栃木県黒磯市の女性教諭殺害事件や、本年二月、東京亀戸の警官襲撃事件などの中学生による殺傷事件が相次いで起きております。この問題については同僚議員や先輩議員が何回か質問をされておりますけれども、私は別の角度から問題を提起したいと思う次第であります。
 青少年非行の凶悪化や薬物乱用は、一部の教育関係者のコメントを聞く限り、自己中心的でせつな的な行動によるものと判断され、憂慮すべき現状であります。我が和歌山県におきましても、かつらぎ町の小学生自殺事件に始まり、粉河町の小学生殺害事件など、極悪非道な青少年に関係する事件が最近相次いで起こっており、社会に大きな不安を巻き起こしております。今、青少年が何を思い何を考えているのか、混迷する社会にあって多様な価値観の選択に苦慮し、悲鳴を上げている姿ではないかと考えるところであります。
 戦後半世紀が過ぎ、国際社会における現在的人権の認識の変化や生涯学習の視野に立った学校制度の現在的発展、また教育における公共性のあり方などをめぐって教育の理念を現在的な視点から問い直す議論が、今緊急に必要であると考えます。確かに、国においては中央教育審議会による新しい取り組みが提言されておりますが、真に青少年、特に小学生から高校生の少年少女の声を反映したものとなっていないように感じるわけであります。
 現在、青少年を取り巻く社会の変転は、私たちが考える以上に強烈で、また速い速度で変化をしております。教育者による犯罪が後を絶たない社会の構造は、学校教育現場の混迷を通り過ぎ、荒廃へと流れているように思われてなりません。このことは、今を生きる青少年だけの責任でありましょうか。社会は、政治的にも政策的にも、また経済的にも混迷をきわめ、子供の手本であるべき大人社会の著しいモラルの低下、例えば教員による子供に対する事件や情報機器の普及と浸透による間接体験や疑似体験、テレビゲームなどにより地域社会の人間関係の希薄化を生み出し、他人に対して無関心で自己主張の強い青少年をつくり上げてきた我々大人の責任であり、猛省をするところであります。
 本年一月から二月にかけて発生したバタフライナイフを使った少年犯罪事件の対応は、大人の視点で、問題の本質や子供たちの心の真相を見詰めないままつけ焼き刃的対応としか考えられない持ち物検査の実施の是非という一時しのぎの対応しか議論されなかったことを見てみますと、教育現場のこれまでの反省が全く生かされていないと思うわけであります。今こそ、真の教育改革を早急に行うときであります。
 また、新聞報道にありましたように、文部省が一九九六年に全国の公立、市立高校を対象に調査した中途退学者が十一万人もの数に上っており、中退者比率で二・五%と、過去最悪を記録しております。その中身は、進路変更が最も多く、これに次いで学校生活や学業への不適応が三割を占めております。この現象の持つ意味を、ただ子供たちの学業嫌いからくるものととらえるのは早計であります。例えば、学校側に魅力が感じられないとか教師に対する不信感等、さまざまなことが想像されます。
 一方、教職員の側にも、実態はよくわからないわけですけれども、私の知っている教師の中にも、教員採用の競争に打ち勝って晴れて教師となったにもかかわらず中途で退職する教師が最近激増しており、教育に対する展望のなさや無力感、教育行政への不満などによりこのことが発生してくるのではなかろうかと考えるところであります。またこのことは、現行の教員採用のあり方に大きな欠陥があるのではなかろうかと思えてなりません。教職員になるためには、厳しい選考基準を突破しなければならないところであり、そのために偏差値教育を受け、ペーパーテストの結果だけを重視し、人間教育に欠けていた面も指摘されております。教員もまた、被害者であります。
 私は、多様化する社会の中で、試験選考への偏重主義やA合格、B合格などとわかりにくい採用制度となっている採用形態を抜本的に改革することを強く望むものであります。日本の将来を担う青少年の人間教育に向けての情熱ある教員の育成は、これからの進むべき方向にとって、また青少年の将来にとっても重大な問題であり、見過ごすことのできない課題であります。
 そこで教育長にお聞きいたしますが、これからの教育のあり方、さらに教育行政の現在の姿への考え方を含めて、教員の資質にかかわる教員採用の方法と改善についてお伺いをいたしたいと思います。
 また、凶悪事件多発の中、和歌山県で起こっているかつらぎ町小学生自殺事件や粉河町小学生殺害事件に関して、教育の立場としてどのような課題があったのか、またその原因と背景は何であったのか、その後の解明の進捗はどのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
 以上、数点にわたり質問をいたしましたが、県当局の積極的な答弁を期待して、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 飯田議員にお答えをいたします。
 二十一世紀の和歌山県のあり方と目指す方向についてのご質問であります。
 二十一世紀は世界との結びつきがより深まっていくと思いますが、その中で、地球時代の故郷(くに)づくりを基本姿勢として、その上で本県が目指す方向として、豊かな自然と歴史、その中ではぐくまれた個性的な文化や産業などを守り生かすとともに、国内外との活発な交流を通じて新しい文化や産業を創造することにより県民一人一人が真の豊かさを実感することができる和歌山県を目指し、「ゆとりと充実 輝く和歌山新時代」を基本目標に掲げたところでございます。
 関西地域において本県の果たす役割でありますが、基本的には京阪神大都市圏、さらには全国、世界を視野に入れたゆとりと安らぎの提供ということではないかと考えております。その具体的な展開としまして、太平洋新国土軸構想、あるいは関西国際空港の二期事業、さらにベイフロンティア構想等を念頭に置いて、自然と調和した質の高い居住、あるいは都市近郊型リゾート、企業立地、複合物流などの機能を担ってまいります。また、本県が誇るべき豊かな自然、歴史、文化を生かし、ゆとりと体験と交流を基本とした多様な観光リゾート地域の形成を図り、交流の拡大と地域経済の活性化に結びつけていきたいと考えております。
 以上の点を踏まえての近隣府県への対応であります。紀北地域におきましては、大阪府、特に泉南地域との緊密な連携のもとに紀泉地域として一体的な整備を図っていく必要があると考えており、関西圏南部地域の拠点としての役割を担うべく検討を進めていきたいと思います。また、紀伊半島全体の一体的、総合的な振興を図るために、三重、奈良及び和歌山の三県で、吉野熊野地域を舞台に、すぐれた自然、歴史、文化を生かしたイベント等の実施あるいは情報発信に努めているところでございます。
 次に、長期総合計画における地域圏域の南北二大圏域の設定についてのお話であります。
 県土全体のあり方を長期的に見定める上でより大きな視点から和歌山県をとらえることは、大変重要なことであろうと考えてございます。そのため新しい長計では、北部は、大阪府南部あるいは奈良県等と連携して広域的な都市圏を形成することにより、京阪神地区に集中する都市機能を分担することを主たる発展方向として都市機能連携ゾーン、また南部は、紀伊半島各地域との広域的な連携を深めるとともに、国内外との観光リゾートによる幅広い交流によって活性化を目指すことを主たる発展方向とする多自然歴史文化交流ゾーンとして県土づくりの方向性を特徴づけたところでございます。なお、こうした基本的な方向性を踏まえて六圏域を設定し、圏域別計画を作成したところであります。
 細部にわたっては、関係部長から答弁いたします。
○副議長(阪部菊雄君) 企画部長藤谷茂樹君。
  〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 飯田議員にお答え申し上げます。
 新しい長期総合計画の短期的な計画と点検、報告についてでございます。
 本長計の計画期間が十四年間という長期にわたりますので、議員ご指摘のように、より短い期間で区切った実施計画を策定し、それに基づいて適切な進行管理を行う必要があると考えております。そのため、財政の中期展望と整合を図りながら三年を計画期間とする中期実施計画を策定し、主要な施策、事業の具体的な内容や実施スケジュールを盛り込むこととしており、進捗状況を報告してまいりたいと考えております。
 数値目標の定め方及び達成可能性についてでございますが、例えばご質問の県民所得は、本長計による施策効果を勘案し、推計した本県経済の見通しに基づいて算出しております。下水道等の整備率は、下水道、農業・漁業集落排水施設及び合併処理浄化槽の各整備計画目標に基づいて設定したものでございます。またホームヘルパー数は、平成二十二年の高齢者推計人口からホームヘルプサービスの必要量を推計し、ホームヘルパー数を算出したものでございます。
 数値目標の中には、県民ニーズの高さ、重点的な取り組みの必要性等を考慮し、高目のハードルを設定したものもございますが、県民の皆様のご理解とご協力をいただきながら、その達成に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、長期総合計画における圏域設定と福祉・医療圏域、行政圏域との整合性についてでございます。
 県の行政区域につきましては、県が担当する行政分野が多岐にわたっており、各分野に応じた適切な行政サービスを提供するための区域設定を行っております。一方、長計における圏域につきましては、一部行政区域と異なるところもございますが、県民の皆様の日常生活圏を基本としながら、市町村による広域的な取り組み状況等も総合的に勘案し、設定したものでございます。いずれにいたしましても、圏域や各行政分野の区域は県民の利便性等を考慮した行政サービスの提供といった観点から定められるべきものと考えております。
 また、和歌山圏域につきましては、日常生活圏として考えた場合、和歌山市、海南市・海草郡及び那賀郡は相互に結びつきが強く見られ、また和歌山県全体の発展を図る上でも中核的な圏域として戦略的な整備を進める必要があるため、一体的な圏域としたものでございます。その上で、那賀郡及び海南市・海草郡がそれぞれに特性や課題等を持った地域でもあることから、圏域別計画では圏域全体の将来像とともに二つの地域についても将来像と整備方向を記述し、主要施策を位置づけたところでございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 飯田議員ご質問の、安心して暮らせる町づくりについての四点にお答えいたします。
 まず福祉のまちづくり条例について、第一点として県の取り組み状況でございますが、平成九年度における県有施設の整備につきましては、現在工事中の県庁本館、東別館のエレベーター設置に加え、交通センターや医大紀北分院へのエレベーター等の設置を実施したところでございます。また、県が管理する道路の歩道の段差解消や誘導ブロックの設置については、八十八カ所の改善をいたしました。
 なお、平成十年度は本格的な取り組みを実施すべく、今議会で予算をお願いしている福祉のまちづくり県有施設整備事業により、不特定多数の県民の方が利用する施設や障害者、高齢者の方々が利用する施設を中心に、エレベーターや障害者用トイレの設置など計画的に十五施設の整備を進めるとともに、道路についても現況調査を行い、整備計画を策定の上、だれもが安心して通れる、人に優しい道づくりに取り組んでまいります。
 二点目として市町村に対する指導でございますが、平成九年度において福祉のまちづくり条例設計マニュアルの説明会や福祉担当課長会議を実施し、施設改修等への取り組みの理解と協力を求めてきたところでございます。また、高野町、白浜町が実施するモデル地区整備計画策定事業に補助を行い、市町村における福祉の町づくりの面的な整備を促進することとしております。平成十年度は、市町村施設の整備状況についての調査を行い、実態を踏まえた中で積極的な整備促進を図るべく指導してまいりたいと考えてございます。あわせて、既存民間建築物の整備の促進を図ることも重要であり、事業者に対する整備補助事業の予算を今議会にお願いしているところであります。
 いずれにいたしましても、障害者や高齢者の方々が主体的に社会参加ができ、快適に暮らせる福祉の町づくりを進めるためには、県、市町村、事業者、県民がともに力を合わせ、一体となって取り組んでいくことが必要であると考えてございます。
 次に、介護保険についてお答えをいたします。
 急激な高齢化の中で老後の最大の不安である介護問題を社会全体で支え合うとの理念のもと昨年公布された介護保険法は、我が国にとって大きな意義を持つ施策と考えております。しかしながら、議員ご指摘のように法案の段階からさまざまな問題提起もあり、種々議論が行われてきたことも事実でございます。県といたしましても、国に対し、これらの意見を集約する形で県議会と歩調を合わせながらその趣旨をお伝えし、実施主体である市町村や国民にとってよりよい制度となるよう要望してまいったところであります。
 国会におきましても、これらの重要性にかんがみ、十九項目に及ぶ附帯決議を行っていただきました。現在、国においては、議員からお話のあったサービス内容、認定にかかわる問題、保険料負担のあり方や実施主体である市町村への財政支援及び低所得者や障害を持つ方々への施策等について、政省令で決定すべく作業が行われていると聞いております。県といたしましても、だれもが公平で安心してサービスが受けられ、過重な負担とならないものであるよう、引き続き市町村の指導はもとより、国に対しても積極的に働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 次に高齢化社会の施設づくりにつきましては、和歌山県老人保健福祉計画に基づき、整備を推進してきたところであります。特に特別養護老人ホームの整備につきましては、各圏域単位で目標量の確保を目指し、建設計画の条件整備が整ったものから、県本庁において適正配置等を検討の上、順次整備を図ってまいりました。その結果、現在目標を超えた整備状況となっているところでありますが、より急激な高齢化に加え、半島性、過疎などにより介護力不足という課題を抱えている本県にとってさらなる整備が必要と考えてございます。
 この設置箇所の選定に当たりましては、平成九年度からより公平で透明性の高いものとすべく、地元の意見に重点を置いた選定条件に改めたところでございます。今後も、施設整備に当たりましては、圏域内での公平性の観点から、在宅福祉施設も含め、バランスのとれた配置に努めてまいります。
 また、介護保険制度導入に当たっての圏域についてでございますが、サービスの受け皿となる基盤整備を充実することは不可欠であり、在宅福祉サービスは基本的には市町村単位で、施設福祉サービスは広域的な観点からの充実も必要であると考えてございます。
 いずれにいたしましても、より住民に密着したサービスが提供できるような体制整備を行ってまいりたいと考えてございます。
 最後に、救急医療対策についてでございます。
 初期救急医療については休日急患センターや在宅当番医制で対応し、入院治療が必要な二次救急医療については病院群輪番制病院や救急告示病院で対応してございます。重篤救急患者等の三次救急医療については、日本赤十字社和歌山医療センターの救命救急センターが受け持つこととなっております。また、新築後の県立医科大学附属病院においては、重篤患者等に対する救急医療も大きな柱として取り組むこととなってございます。
 なお、那賀地方におきましては、来春に国保那賀病院が新築され、当地方の基幹病院として、二十四時間体制で脳卒中や心筋梗塞の重篤救急患者にも対応できるよう充実が図られることとなってございます。県といたしましては、今後も救急患者の受け入れ体制の充実に向けてなお一層努めてまいります。
 次に、救急救命士に対する医師の指示体制についてでございます。
 平成四年に県救急業務検討委員会を設置し、救急業務の高度化推進について検討を重ねてきたところでございますが、平成七年に救急隊員の教育訓練と救急救命士に対する指示医療体制についての検討結果を取りまとめ、関係機関に通知を行ったところでございます。県といたしましては、これらを踏まえ、各二次医療圏の基幹病院及び中核病院、もしくは病院群輪番制参加病院や消防機関と協議しながら、収容病院や当番病院の医師からの指示体制について整備充実を図ってございます。
 議員ご指摘のセンター方式につきましては、有効な方法ではありますが、医師の確保や機器の統一整備等の課題があり、大変難しい状況でございますので、今後とも引き続き検討してまいります。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 飯田議員の公営住宅法に関する問題についてお答えいたします。
 公営住宅につきましては、急速な高齢化など大きく変化する経済社会情勢に対応し、高齢者や障害者など真に住宅に困窮する世帯に対して、良好な居住環境を備えた公営住宅の的確な供給を図ることが一層必要となってきました。今回の法改正は応能応益方式と言われており、家賃改定は入居者の方々の支払い能力に応じたものとなり、入居者の方々に過重な負担とならないようにと改定されてございます。また、収入超過者や高額所得者に対しましては、当該地域の住宅事情を勘案しつつ対処してまいりたいと考えております。
 なお、これまで入居者の方々に十分な理解を得るため、法改正の周知を図ってきたところでございます。
 今後、この公営住宅法の改正の趣旨を踏まえ、市町村とも十分連携を図りながら、高齢化社会を迎える二十一世紀を見据えて、県民の皆様方が安心して暮らせる町づくりに向け、公営住宅の適正な供給に努めてまいります。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 救急業務の高度化についてお答えします。
 救急高度化事業の進捗状況についてでございますが、まず救急救命士養成については、今年度末には七十八名となり、県内二十一消防本部すべてに救急救命士が配置されることになります。本県においては小規模消防本部が多く、一度に多数の養成派遣が困難等の理由により、毎年二十名程度の養成となってございます。県といたしましては、できるだけ早期に県内四十五消防署すべての救急隊に常時救急救命士が配置されるよう努力してまいりたいと考えてございます。
 次に高規格救急自動車につきましては、今年度末で十五消防本部二十一台の配備予定であり、平成十一年度末までに全消防本部に少なくとも一台が配備できるように努力してまいりたいと考えております。
 また、那賀郡の状況でございますが、今年度末には救急救命士が七名になる予定であり、高規格救急自動車については現在で二台配備を行ってございます。今後とも、県内の救急体制の充実強化についてより一層努力してまいります。
 次に救急救命士養成施設の建設についてでございますが、平成三年の救急救命士法制定に伴って国において各都道府県単位で整備を図ることは、教員となる医師の確保や養成所建設費等において非常に困難であるとの判断のもと、各都道府県の共同出資により救急振興財団を設立して救急救命士の養成所が建設されたところでございます。現在、定員八百名のところ、平成十年度から二百名増員となることもあり、近隣政令都市への養成依頼の働きかけを含めて、各消防本部の養成要望にはほぼこたえられるものと考えてございます。
 次に県民に対する応急手当ての講習や啓発の推進についてでありますが、救急隊員の救急現場到着前において居合わせた住民による適切な応急手当てが行われることは、傷病者の救命率の向上につながるものでございます。現在、県内では自動車運転免許取得時や日赤支部の応急手当て講習により普及啓発が図られておりますが、消防機関においても、三百九十名の応急手当て指導員により、これまでに三万人の住民に対して講習を行ってございます。今後とも、毎年一万人を目標に応急手当ての講習を実施するよう各消防本部を指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題二点についてお答えいたします。
 まず、教員の資質向上と採用についてでございます。
 現在、児童生徒にかかわって、いじめ、登校拒否を初め、青少年による事件の多発など多くの課題があり、憂慮される事態にございます。学校教育において直接指導に当たる教員が一人一人の子供の悩みを真っ正面から受けとめ、自分自身の問題として学校全体で積極的に取り組むことが求められているところでございます。また、家庭における親と子の心の触れ合いや地域社会の教育力も欠かすことができないものであります。
 現在提起されている諸課題を解決するには、教員の資質、力量によるところが極めて大きく、現職教員の資質向上と優秀な人材の確保が重要であると考えます。さらに、学校教育だけで対応することには限界があり、大人たちが一体となって取り組むときではないかとも考えます。教育委員会といたしましては、従来の研修に加え、平成八年度から教員を企業や社会福祉施設等に派遣する長期社会体験研修を実施し、社会の構成員としての視野を広げるなど、現職教員の資質向上に努めてございます。
 また、教員採用に当たっては、人間性豊かで幅の広い人材を確保すべく、筆答検査の成績に偏らず面接検査や実技検査を重視し、教員として個性豊かで情熱あふれる人材を採用するよう努力しているところであります。今後ともさらに研究を重ねながら優秀な人材の確保に努めてまいります。
 次に、青少年事件についてであります。
 中学生による殺傷事件等が全国的に相次ぎ、大きな社会問題となっておりますが、昨年、本県で起こったかつらぎ町での小学生の自殺、粉河町での少女殺害事件は、教育に携わる者として大きな衝撃を受け、当該町教育委員会と連携し、再発の防止に取り組んできたところであります。
 かつらぎ町におきましては、その直後から原因の究明にすべての関係職員が全力を挙げ、全児童からの聞き取り調査、作文による情報収集、情報箱の設置、全児童への家庭訪問、遺族、育友会、子ども会、スポーツ少年団関係者からの情報の収集などを繰り返し行ってまいりました。しかしながら、こうした努力にもかかわらず、原因についてはいまだ解明できておりません。
 こうした事件を二度と繰り返さないために、学校、家庭、地域が一体となって子供にかかわっていかなければならないとの認識に立ち、校長、教頭を初め生活指導担当者などの研修を重ね、また児童生徒から応募した標語を下敷きに印刷配布し、命を大切にする呼びかけをしてまいりました。さらに、子ども会指導者研修会や町内全地区での地区懇談会等を開催するとともに、その標語を印刷したタオルを各家庭に配布するなど、かつらぎ町を挙げて再発防止に努めてきております。教育委員会といたしましても、町教育委員会と連携を密にし、その取り組みを支援してまいりました。また、市町村教育長会議や青少年問題を考える緊急フォーラム等においてかつらぎ町から報告を求め、その経験を教訓として県内全市町村に広めてまいりました。
 粉河町の事件につきましては、顔見知りの近隣者による事件という、教育だけでは解決できない困難な問題であることから、事件発生後、直ちに通知を出し、教育関係機関やPTA等が連携を図り、地域社会全体で取り組むよう指導いたしました。粉河町教育委員会では、管内の小中学校長会において、子供の安全の確保等について繰り返し徹底を図るとともに、警察等、関係機関との連携を深めてございます。さらに、子供や高齢者などの生活の安全確保のため、町独自の施策を検討中と聞いております。その取り組みについても、町の施策が具体化するのを待って各市町村に広めてまいりたいと考えます。
 今日生じているナイフ等の問題に対応するためにも、かつらぎ町や粉河町における痛ましい教訓をむだにすることのないよう、継続的に取り組んでまいる所存であります。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 43番飯田敬文君。
○飯田敬文君 ご答弁をいただきました。時間が来ておりますので、端的に要望をしてまいりたいと思います。
 まず第一に、介護保険の導入についての問題点でございます。
 当局からお話ございましたように大変大きな問題をたくさん抱えておりまして、介護保険を受ける国民、県民にとって介護保険が受けられるように、ひとつきちっと対応していただきたいと思うわけでございます。
 特に、これは市町村が担当の窓口ということで、対応しなければならない課題が大変たくさんあるわけでございます。そういった意味で、圏域を設定し、圏域の中での市町村間の公平性、平等性ということも十分頭に入れていただきまして、保険あって介護なしということにならないよう、県当局の一層のご指導をお願いいたすところでございます。
 それから、相次ぐ青少年問題についてでございます。
 教育長から答弁をいただきました。私は、今回の相次ぐ青少年事件は教育委員会だけの問題ではないと感じております。特に、社会全体が引き起こした矛盾のあらわれであるということを強く認識しなければ解決しないのではないかと思うわけでございます。いつ我々の子供や家族がそういったことを引き起こしたり、あるいは被害者になったりするかもわからないという危機感を我々全体で持っていかなければ、教育長が答えたからこれで解決するという問題でないということを強く申し上げたいと思うところでございます。
 そして、かつらぎ町の問題に関係して言わせていただくならば、原因がわからないということでございまして、原因がわからなければ二度と再びこのような事件を起こさない対策は難しいわけでございます。そういった問題は非常に難しいと思いますけれども、我々の地元、和歌山県で起こっておる事件でございます。その起こった原因がわからないということでは、青少年問題がいろいろ相次いでいる中、非常に危惧をするところでございます。これはひとつ教育委員会だけではなしに、知事が対策本部長となり、知事部局も先頭になってこの問題をとらまえていただくという視点でこれから取り組んでいただきたいということを強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で飯田敬文君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は三月十六日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(阪部菊雄君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時八分散会

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