平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(吉井和視議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(阪部菊雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(阪部菊雄君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 4番吉井和視君。
  〔吉井和視君、登壇〕(拍手)
○吉井和視君 それでは、一般質問をさせていただきます。
 「地方の時代」という言葉が言われて、大変長い時間がたちます。もう四半世紀以上たつのではないかと思うわけでありますが、その地方の時代という提唱のもとに、時代の大きなうねりの中で地方分権が叫ばれ、これからは自治体の一つ一つがみずからの顔を持つという認識のもとで現行の地方自治を変えるため、中央に集まった財源、権限、人間の「三ゲン」を地方に戻す必要があるということで地方分権推進法が制定されたわけであります。地方から国の推進計画策定に向けて一日も早い真の地方分権を推進するため、地方分権に関しての質問を、これで四回目になりますが、させていただきます。
 九五年七月に地方分権推進法が施行され、推進委員会の第四次勧告が昨年十月に橋本総理に提出されております。これまでの四次にわたる勧告により、地方分権推進法で示された地方分権推進のための課題のすべてについて具体的指針が一通り明らかにされたことから、政府は閣議において、次の通常国会が終了するまでのできるだけ早い時期に地方分権推進計画を作成し、地方分権を総合的かつ計画的に推進することを決定、これにより実行の段階に移そうとされております。
 中央集権システムの中核であった国の機関としての機関委任事務の廃止が実現する運びとなり、自治事務と法定受託事務に整理されるわけであります。国の機関委任事務五百六十一件のうち、大部分の三百九十八件がいわゆる自治事務となったわけで、これは地方自治法の大改正であり、また我々地方議会の権限もこれからは物すごく大きくなってくると想像されます。そしてまた我々の責任も、それに比例して大きくなるものと想像されるわけであります。
 機関委任事務が廃止され、自治事務と法定受託事務になるわけでありますが、我々が分権の中で問題としてきたのは国から地方への財源移行の問題であります。地方財源の問題については、分権が推進される中で具体化していかなければならないと考えます。地方分権は、地域の問題は地域住民の選択と意思で決めることであり、自分の住んでいる町づくり、福祉、文化、教育といったいろいろなあり方を住民が最終的に決めるシステムをつくることであります。私たちが望んでいた地方分権は、地域住民が自分たちの考え方で、地方に合った発想で自治体の運営ができるということであります。
 地方自治法の大改正による事務、権限の移譲に伴って国庫補助負担金制度が廃止されることになるだろうと思いますが、地方の一般財源がどのように確保されるのかが非常に心配であります。地方公共団体が自主的、主体的な財政運営をしていくことができるような地方財政制度をつくるよう、我々は要求していかなければなりません。機関委任事務廃止に伴う財政運営、すなわち地方財源の安定的確保の動きはどうなっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 次に、分権推進計画の中で、各省庁で実施される補助金事業及びその補助金制度がどのように整理されるかがこれからの地方分権にとって大変重要な問題であります。
 かつて伊藤光晴京都大学名誉教授は、補助金の現状と廃止の間で弊害を少なくする現実方法として、一件ごとの補助金制度を、目的別あるいは省庁別に補助金を束にして、その内部であったなら何に使おうと自由、その使用は地方の判断に任せる一括補助金制度または総括補助金制度を提唱したことがありました。また、補助金を地方交付税による一般財源化とする方法でも、とにかく、補助金事業でない、地方の裁量で支出できるような財源の移行をするのが地方が望む本当の地方分権であります。
 こういう問題について、地方六団体や全国知事会等で議論されていると思いますが、知事はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
 地方が望んでいるような地方分権が果たしてこれから行われるのかどうかという前に、将来の地方分権に向けての対応をする必要があります。すなわち、分権に対応できる自治体づくりであります。今まで、国の補助金行政を続けさせる理由の一つとして、地方、市町村には行政能力が十分でないため補助金によるコントロールが必要であるということが言われております。各省庁が分権に抵抗する理由は、多くの自治体が弱体であり、仕事を任せられないというものであります。そこで市町村の合併ということが問題提起され、必要になってくるわけであります。
 明治二十年の合併で、全国で七万一千五百市町村から一万五千九百団体に、そして昭和三十年に行われた昭和の大合併で約三千三百団体に統合されました。今、第三次の市町村合併、平成の大合併が各界で論議されております。また推進委員会の第二次勧告の中でも、市町村合併について、今まで以上に積極的に市町村合併を推進するとして、都道府県等の役割が大きく提言されております。内容の一つとして、合併推進のため、都道府県は広域市町村圏や老人保健福祉圏域などを参考に市町村合併のパターン提示、先進事例の紹介などの助言、調整というものを提言しております。小沢一郎議員は全国三百市への統合、日本青年会議所は四百から五百市という藩構想を提案しております。また元出雲市長の岩国議員は、千団体程度を目標に合併推進すべきであると提案しております。最近、自民党本部が五百から七百程度の市町村合併を検討しているということであります。このように、合併に対する提案が各方面から出され、市町村の財政難からも全国的に論議されているところであります。
 さきの議会答弁で知事は、市町村の合併については市町村の自主的な判断に任せるということでありますが、地方分権について急展開されておる今日、その受け皿づくりとしての市町村についてどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
 また、地方の問題で一番深刻な過疎・高齢問題があります。本県の高齢化率は一八・八%であります。かつて私が質問をしたときには、二〇%以上の市町村がたしか二十四市町村であったわけでありますが、今は三十七市町村が二〇%を超えておるわけであります。そのうち半数の十九市町村が二五%、そしてまたその半数近くの十町村が実に三〇%の高齢化率を示しておるわけであります。非常に高い数値であり、村落の崩壊あるいはまたコミュニティーの崩壊という危機がここ十年もすればやってきそうであります。いかに人口の流出を食いとめ、若者を定着させ、産業を生き返らせ、この危機を救うかという対策がなされているが、もうそれぞれの町や村だけの力では困難な状況であろうと考えられます。
 また、平成十二年に実施される介護保険についても、市町村が保険者となっていろいろの仕事をやっていくわけでありますが、問題とされる要介護認定という作業は、小さな自治体で対応するのは非常に困難と予想されております。これも、広域的な取り組みが必要とされております。また、水や緑の環境問題等、広域的な対応が欠かせないことについても、住民に最も身近な市町村が基礎体力をつけることが重要であります。
 私は、過疎・高齢対策、環境保全を含め、合併による方が効果があるように思うのでありますが、県はどのように考えているのか、今後どのように取り組むのか、お伺いいたします。
 次に、ミカン対策について質問をさせていただきます。
 私も初めは楽観しておったわけでありますが、最近、有田川農協における有田管内の融資の申し込み状況を見ると六百件以上出ておるという状況にかんがみまして、このミカン対策について質問をさせていただきます。
 昨年産のミカンは本当にめちゃくちゃな値段で、友人の農家の話では、肥料や農薬代を払ったら手元に何も残らない始末で、一年間全くただ働きであったのではないかと、そのように嘆いております。もっとひどいのでは、市場への輸送費と段ボール代を支払ったら何も残らないという話もあります。
 私もミカン取りのアルバイトをしたことがありますが、かつて、ミカン取りの作業中の人と話をする中で、こんな話がありました。私は、ミカン取りの作業自体大変しんどいでしょうという話をさせていただいたら、ミカン取りは、一年間苦労してようやく収穫できる時期であるので、この作業がつらいという農家はおりませんよという話であります。しかし、ことしのように手元には何も残らないという中でのミカンの集荷・出荷作業は本当につらく、コンテナいっぱいにもぎ取ったミカンの重さは手がちぎれる思いで、ふだんの年であれば一年じゅうで最も楽しい、期待に膨らんだ時期であるはずが、ことしのミカン取りは非常につらいものであったという話でありました。
 ミカン価格が超安値であった原因については、まず景気の低迷、昨年は一段と景気が冷え込んだこと、次にわせミカンの出足の味が悪かったこと。中ごろから味も乗ってきてまあまあの味であったわけですが、初めの味不足が最後まで足を引っ張ったようであります。また、豊作で過剰生産となったことが大きな原因であったと思われます。このように、トリプルの悪要因が昨年産のミカン暴落を誘ったものであります。
 農家は、自然相手によいミカンをつくるため努力をしているわけでありますが、適正な生産調整ができなかったかと、今さらに思うわけであります。そのことをお尋ねいたします。もし適正な、十分な生産調整が県あるいはまた国でできておったならばこういう安値がなかったのではないか、もしそういう調整ができておらなければこれは人災であると、私はそのように思うわけであります。
 また、ジュースの加工用ミカンはコンテナ一杯で三十円程度にしかならず、ガソリン代にもならなかったため、畑や川に捨てたという人が相当多かったように思います。せっかく一年間手間暇かけてつくったミカンを捨てなければならないということは、大変つらい、惨めなことであろうと思います。こんなことを少しでも解消してほしいという切なる要望が充満しておる昨今であります。
 そこで、農林水産部長にお伺いいたします。果樹農家が安心してミカンづくりに励めるような今後の対策について、お聞かせ願います。
 次に、国道四百八十号・旧県道有田高野線について質問させていただきます。
 旧有田高野線が国道四百八十号に昇格されて数年たち、徐々に改良が進んでおるものの交通量が大変多く、土曜・日曜は大変なもので、渋滞箇所がふえております。特に現道を変更すべき箇所として清水町三田バイパスについては、間もなく着工されようとしております。特に清水町の自然景観を損ねないように計画されておると聞きますが、その実施計画をお聞かせ願います。
 次に、バイパスが必要という地元から熱い強い要望のある箇所は、金屋町岩野河付近であります。区間は八百メートル程度でありますが、特にこの付近は道路幅が狭く、普通車同士の対向も不十分であります。付近には家並みがあり、どうしてもバイパスが必要と考えられます。このバイパスはどのぐらいのめどで計画されるのか、お聞かせください。
 また今、公共事業、特に道路関係予算が削減される状況でありますが、特にこの路線は過疎に悩む中山間地域への路線であり、特別の配慮が必要と考えられますので、何とぞよろしくお願い申し上げまして、この路線の中長期的な計画をお聞かせください。
 以上で質問を終わるわけでありますが、ついでに要望させていただきます。
 ついでに要望というのは、実は有田高野線の中で岩野河付近のバイパスについて地元の人がよく言うわけでありますが、もともと予算がついておったが、ある国会議員がその予算を回したからできないんだということがまことしやかにうわさされている状況であります。私は、そんなことは絶対ありませんよという話をしているわけでありますが、とにかくこういう道の問題になると、特に衆議院選挙前になると、すぐできますよというような話の中で、そういういろんな誤解が誤解を生んで話が出てくるわけであります。そういうことで、そのようなことがないようにこの計画について明快な答弁を求めて、私の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの吉井和視君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 吉井議員にお答えをいたします。
 まず、地方財源の安定的確保の動きと、これに関する私の所見についてのご質問でございます。
 ご質問にもございましたように、四次にわたる地方分権推進委員会の勧告によりますと、国庫補助金と国庫負担金については原則的に廃止、縮減、重点化を進める一方で、地方税財源については充実・確保を図るという基本的な方向が打ち出されてございます。地方の自主的、主体性を高めるという意味においては、その基本的な考え方は容認できるところでございます。
 しかしながら、その具体化に際しては、今後、二つの大きな問題を解決する必要があるものと考えてございます。一つは、国と地方との税源配分のあり方についての抜本的な見直しを前提とした地方税体系を新たにつくり上げることであります。二つ目は、地方交付税については地方自治体が関与できる機会をつくって、算定方法の簡素化を進めることにより地方自治体の自主的、主体的な財政運営を可能にすることであります。こうした二つの考え方に基づき、あらゆる機会をとらえて訴えてきたところでございますけれども、今後も全国の自治体との連携・協力により、国に対して早急かつ抜本的な取り組みを行うよう強く求めてまいりたいと考えてございます。
 次に、地方分権に関連して、市町村合併についてということであります。
 地方分権の推進という時代の大きな流れの中で、住民の方々に身近な地方公共団体である市町村がその行財政能力を強化していくということは、議員のご指摘のように大変重要な課題であろうと思っております。今後の市町村の行政体制の整備のあり方につきましては、市町村合併もその選択肢の一つとして議論することがまた必要なことであろうと思っております。しかしながら、合併という問題につきましては、これまでも申し上げてきましたように、個々の市町村の住民の方々が各地域の地理的、歴史的条件を踏まえながら判断することが大切でございます。もちろん、現実の問題としては、自主的に推進するには具体的にいろいろな困難なこともあろうかと思いますけれども、原則としては、今申し上げましたように自主的な合併が基本であると考えてございます。
 県といたしましては、これまでも広域行政推進セミナーなどを開催して情報提供を行ってきたわけでありますけれども、今後も引き続き情報の提供を行うとともに、地方制度調査会などの動向もしっかりと見守りながら、広域行政推進事業の一つとして市町村の行政体制整備のあり方について調査研究を行ってまいりたいと考えております。
 以上であります。
○副議長(阪部菊雄君) 農林水産部長平松俊次君。
  〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) ミカン対策でございます。
 果樹農家が安心してミカンづくりに励める生産対策等についてでございますが、全国的に適正な需給関係を回復することが第一であろうかと考えてございます。現在、国では果実需要の長期見通しに照らして全国の適正生産量を百四十万トンとして、春先の開花時期から収穫期にかけて生育段階に応じた生産量予測を三回実施してございます。これに基づいて、適正生産量を上回る場合には強力な摘果や出荷調整等を内容とする生産出荷安定指針が発動されることになってございます。
 九年産につきましては、当初百四十万トン前後が見込まれたことからこの指針の発動には至りませんでしたが、県といたしましては、高品質果実生産のためのきめ細かな摘果推進等の技術指導に取り組んだところでございます。しかしながら、その後の気象条件等もあり予想を上回る状況となったことや景気停滞等によって、お話のような価格の低下を来したものと考えてございます。
 こうした中で、県といたしましては、ジュースなど加工用として、通常枠一万七百トンに加えて緊急枠一万一千七十三トンを確保してございましたが、農家経営の安定とミカン価格の回復を図る観点から、国と協議の上、さらに二千トンの増枠を確保し、それに要する経費を今議会にお願いするなど、積極的な取り組みを行っているところでございます。
 今後とも全国的にきめ細かな対応を行い、適正な需給バランスが図られるよう、制度の円滑な運用について、全国みかん生産府県知事会議等を通じて国に働きかけるのはもちろんのこと、関係府県との連携をより緊密にして対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 吉井議員の、国道四百八十号の整備に関するご質問にお答えいたします。
 まず一点目の国道四百八十号の三田バイパスについてでございますが、現道拡幅部五百四十メートルを含む千五百メートルを平成四年度に事業化し、本年度には現道拡幅部が完成する予定であります。
 来年度から用地買収に着手するバイパス区間は、美しい扇状台地で知られる蘭島棚田の背後を通ることから、学識経験者及び地元代表者等で構成される国道四百八十号景観委員会でその対策の検討を行ったところであります。その結果、アーチ橋と箱げた橋の二つの橋梁で有田川を横断することとし、その色彩は薄い緑を採用することによって周囲の風景に溶け込むよう、景観に配慮した計画となっております。今後、この委員会の意向に沿うよう関係機関と事業計画の協議を行ってまいります。
 次に金屋町の岩野河地区につきましては、これは有田川右岸堤防を利用したバイパス計画として計画しておるものでございますけれども、こういう場合に準拠しなければならない河川の工作物設置許可基準というのが改正されたこともございまして、以前に実施した予備設計の見直しを行っております。今後、この作業を急ぎ、さらに詳細な設計を実施するなど、早期事業着手に向けて努力してまいります。
 三点目の、全体の今後の中長期計画についてでございますが、国道四百八十号は、三・五軸広域幹線道路網の東西五軸を構成する重要な路線として位置づけております。その整備につきましては、公共事業を取り巻く環境は、現行において非常に厳しいものがありますけれども、今後とも必要な予算を確保し、まず事業中の区間を早期に完成させるとともに、引き続き未改良の区間についても順次事業に着手していきたいと考えておるところでございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(阪部菊雄君) 再質問がございませんので、以上で吉井和視君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(阪部菊雄君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時三十一分散会

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