平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森 正樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時三分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(木下秀男君) この際、報告いたします。
 お手元に配付のとおり、監査委員から監査の結果報告がありました。
 以上、報告いたします。
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  【日程第一 議案第一号から議案第八十一号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(木下秀男君) 日程第一、議案第一号から議案第八十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 36番森 正樹君。
  〔森 正樹君、登壇〕(拍手)
○森 正樹君 おはようございます。
 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
 「地方分権」と「規制緩和」、この言葉が今、語られない日はないと言っても言い過ぎではないほど人々の話題に上り、かまびすしく論じられております。テレビ、新聞などのマスメディアが地方分権、規制緩和を取り上げない日はなく、これをテーマとするシンポジウムもあちこちで開催され、書店には地方分権、規制緩和に関する書籍があふれているのであります。
 私は今回、この問題を取り上げるに当たり、「地方主権の実現を目指して」というテーマで通告を提出いたしました。繰り返しますが、「地方分権」ではなく「地方主権」であります。
 この「地方主権」という言葉は、何も私が今初めて言い出した言葉ではございません。既に、地方財政論の専門家や知事などの地方政治家数人が使っておられますし、我が公明も党の政策の中で正式に言葉として最近使用し出しました。
 それでは、なぜ地方主権なのか。皆さん、日本国憲法の前文を思い出していただきたいと思います。「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである」と、明確に規定されているのであります。
 経済学者であり、一九七五年から三期十二年間、島根県知事を務められた恒松制治さんも「憲法の前文には、国民に主権が存することを前提としてこの憲法をつくると書いてあります。そう考えますと、国民に主権があるわけですから、従っていわば行政の権限であるとか、あるいは政治のしくみであるとかっていうのは、住民にもっとも近いところの政府にある、と解釈することはけっしてまちがった解釈ではないと思っています。それが地方主権という考え方です」と、あるシンポジウムの席上でかつて述べておられました。
 「地方分権」という言葉には、権力、権限は本来国のものであるが、この際少し地方に分け与えてやろうというニュアンス、においがしてならないのであります。確かに、第二次大戦後、敗戦の瓦れきの中から驚異的な復興を遂げた背景に、国民の勤勉さがあずかって大きかったことは異論のないところでありますが、一方で、優秀な官僚による官僚機構が機能的に働き、一定の効果を上げたことも否定すべきではないと思います。
 しかし、時代は動き、変わろうとしています。二十一世紀まであと三年。本来の国民主権、地方主権が認められるべきときが到来していると私は申し上げたい。繰り返しますが、主権は国民にあるのであり、地方、地域にこそ存在するのであります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 第一に、今私がるる申し上げた地方主権について、西口知事はどう考えていらっしゃるのでしょうか、基本的認識をお伺いしたい。
 第二に、西口知事は一貫して職員の意識改革と組織改革を主張してこられましたけれども、これは時代の要請であるとともに、来るべき地方主権の時代に対応するための施策であると明言されたと思います。一方、北川三重県知事や平松大分県知事など、ユニークで大胆な改革に取り組もうとしている例にもかんがみ、知事は地方主権の実現のために今後どのような構想のもとにいかに行動するおつもりであるのか、忌憚のないご意見をお聞かせいただきたいと思います。
 第二に、職員の意識改革と県庁組織の改革・改組についてお尋ねをいたします。
 もちろん、この点について議論を進めるに当たりまして、二十一世紀の早い段階で地方主権の時代がやってくると確信しつつ申し上げることを初めにお断りしておきたいと思います。というよりも、知事を初めとする三役の皆さんも、ひな壇に居並ばれている幹部職員の皆さんも、我々議会人も、一日も早い地方主権の到来のために努力を惜しんではなりませんし、一致協力してその実現に取り組むことが求められているのであります。今までのように、何か難しい問題が起こると中央省庁に相談したり省令や通達を判断の基準にして指示を仰ぐということは、許されないのであります。みずからの責任と判断において、自信を持って事務事業に取り組まなければなりません。今までは、ともすると一部に省庁や通達を盾にして責任を回避する姿勢が見受けられたのであります。県民の信託を受けて重い責任と的確な判断に基づいて事務事業を執行していく能力と積極性が強く求められていることについて、一人一人の職員にその意識は果たして浸透しているのか、全体の奉仕者としての自覚は大丈夫か、ごく一部の職員の中にはどのように甘く採点しても到底不合格としか言いようのない者もいることを、残念ながらこの際あえて指摘をしておきたいと思います。職員の質的向上について、道のりは大変厳しいものがあると思われますが、知事におかれてはこの点について今後どう取り組んでいかれるのか、そのご存念を承りたいと思います。
 二つ目に、西口知事は常々、職員の意識改革を叫んでこられました。昨年末、十二月二十六日の仕事納めの知事訓示の中で、不適正支出のことに関しての発言の中でありますが、明治維新の志士たちの例を引きながら、「今、幹部の職にある我々が勇気を持って立ち向かい、改革をなし遂げていかなければ、二十一世紀に生きる県民の皆さんにも、また県職員の皆さんにも、永久に悔いを残すということになる」と述べておられました。また、「最も大事なことは、行政を預かる私たち一人一人が与えられた仕事を、どんな小さなことであってもベストを尽くすことが県勢発展につながる」とも言われました。──そうですね、知事さん。間違いございませんですね。
 私はその場に居合わせたわけではございませんが、後で西口知事の訓示を聞かせていただきまして、全く同感であり、感動を覚えました。これは決してお世辞でも、お追従でもございません。なぜなら、知事の並々ならぬ決意のほどを感じたからであります。
 あの幕末激動の時代、圧倒的な軍事力、産業力を誇る欧米列強の包囲網の中で、久坂玄瑞や高杉晋作、西郷隆盛や坂本龍馬ら志士たちの獅子奮迅の活躍が明治維新という革命を成功させ、明治国家の成立に大きく貢献したことに思いをはせるとき、志士たちのほとんどが維新の途上に倒れ、そのしかばねの上に明治新国家が欧米列強の占領の危機を回避して成立したことに着目し、身を挺して勇気を持って行動に当たることの重要性を知事が訴えられたからにほかならないと思います。
 そこで、問題になるのは、西口知事の意を体してどれだけ多くの職員が知事と同じ決意と行動に立てるかであります。知事がいかに笛を吹いても、職員が同じ気持ちで踊ってくれなければ何事も実行は不可能であります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。知事が職員の意識改革を説いて三年、その浸透度、進捗状況はどうか、率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
 三つ目に、機構改革について。
 これまで知事は、福祉保健部、生活文化部の編成と振興局長の発令を実施されました。また、新年度からは振興局の設置などの組織改革に着手することになります。これら機構改革の実は上がっているのか、また今後どのような改革を進めていこうとされているのか。一部に言われているような親方日の丸的な組織から、真に機能的な組織への改革・改組が望まれていると思うのでありますが、この点についての知事の率直なご存念を承りたいと思います。
 四点目に、人材の確保と登用についてであります。
 新しい時代の要請に対応して有能な人材の確保が不可欠でありますが、本当に仕事のできる、やる気と能力にあふれた人材を確保するために、これまでの筆記試験重視の採用試験だけではなく幅広い人材確保のあり方が求められていると私は考えますが、いかがでありましょうか。知事のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 また、従来言われてきました年功序列による登用ではなく、能力主義に基づく思い切った人材登用に努めるべきであると思いますが、この点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
 五点目に、財政緊縮の状況と時代の要請の中で、小さな政府で大きな仕事が求められているわけでございますが、職員定数の見直しと削減に取り組むお考えはないか、総務部長にお尋ねをしたいと思います。
 第六点目として、外郭団体の件についてお尋ねをいたします。
 つい先日、財団法人和歌山県交通公園の解散と他法人への移管のニュースが報じられておりました。そこでお尋ねをいたします。現在、県が出資する外郭団体は幾つあり、その中に休眠法人はないのか、さらに、今後これら外郭団体の整理、統廃合を進め、あわせて人員の削減を図るべきであると思いますがどうか、総務部長の答弁をいただきたいと思います。
 最後に、職員研修のあり方についてお尋ねをいたします。
 このことについては、従来、職員研修所のもとで内部研修や外部講師を招いての研修が毎年行われてきました。昨日も先輩議員から質問のあったところでありますが、別の観点から申し上げたいと思います。
 先ほど紹介した年末の知事訓示の冒頭で西口知事は、一昨々年、仕事納め式を取りやめにした経緯に触れ、長引く不況の中で年末の三十一日まで仕事に汗を流す県民がいることを挙げ、「我々は二十六日で仕事が終わるが、年末ぎりぎりまで一生懸命働いている県民に思いをいたせ」ということを述べておられました。これは、まことに大事な視点であると私は思います。ともすれば官庁のぬるま湯的な体質が指摘される昨今でございますが、不況の荒波をまともに受けている民間企業等の苦しみ、痛みに触れ、社会の現実に直接肌で触れることも含めて、民間企業等への派遣研修をもっとふやすべきであると、そのように私は思います。このことについて知事、ぜひとも早急に人数、対象企業を大幅に拡大して取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか、決意をほどを聞かせていただきたいと思います。
 次に、南紀熊野体験博についてお尋ねをいたしたいと思います。
 いよいよ、南紀熊野体験博の開催まであと一年有余と迫ってまいりました。従来のジャパンエキスポは、いずれも一定地域に集中してパビリオンを設置して短期間──通常、二、三カ月でございますが──に多数の人を集めることを競うのが当たり前でございました。それに対して南紀熊野体験博は、南紀熊野という広大な地域を舞台として、和歌山の自然、文化、歴史、人情に触れていただこうという、いわゆる非囲い込み型オープンエリア展開の全く新しいタイプのジャパンエキスポであります。それだけに全国から注目も集めておりますが、前例がない分、成功に向けてのシナリオづくりに関係者の皆さんの苦労がしのばれます。一方で、二十一世紀に向けての本県発展の起爆剤とするためにもぜひとも成功させなければならないという重い責任も課せられているのであります。
 そこで、成功のキーポイントはどこにあると考えておられるのか、まず初めに知事の所見をぜひともお伺いしたいと思います。
 第二に、従来型ではない博覧会である分、成功に向けてのノウハウは新しく模索していかなければならないと言えます。まことに失礼な言い方でありますが、このひな壇に居並ばれている幹部の皆さんは大体五十代あるいは六十代。もう頭もかたいし、目まぐるしい時代の流れにもついていくことが非常に厳しいと申せると思います。もちろん、これは我々も含めてでありますが、決して役に立たないとは申しませんが、体験博向きではないと、そのように申し上げたいと思います。
 そこで、一つの提案でございますが、新しいパターンの博覧会の成功のために、若々しい行動力、柔軟な発想と知恵を生かすために、二十代、三十代の若い職員の思い切った登用で対応・推進すべきではないかと思います。若い職員の皆さんに責任を持たせ、やわらかい頭で新時代のニーズに応じた知恵と思考力でさまざまなアイデアを出してもらうことが必要ではないでしょうか。西口知事の所見をぜひともお伺いしたいと思います。
 三点目に、南紀熊野体験博ほど、グリーンツーリズム、エコツーリズムの精神に合致するイベントはないと思います。
 聞きなれない言葉でございますので、改めて紹介しますが、グリーンツーリズムとは、都市生活者が農村で滞在型の余暇を過ごそうという旅行形態で、ドイツやフランスを中心にヨーロッパでは長期にわたるバカンスを農家民宿で過ごすグリーンツーリズムが定着していると聞いております。我が国でも農林水産省が一九九五年、農山漁村滞在型余暇活動促進法を施行しておりますが、税の減免措置などが盛り込まれていない点、ヨーロッパに比べておくれているところだと言われております。
 しかし、日本古来の農村風景を守り、都市生活者と農村との交流を深めるとともに、農家の助成と農村の活性化を図る絶好の機会でもあります。同法に定められている県基本方針の策定は済んでおりますけれども、その基本方針にのっとっていかに具体的な施策を進め、活発なグリーンツーリズム運動の確立を図るかが大事であります。そして、このことが南紀熊野体験博の成功にもつながると確信をしますが、いかがでございましょうか、農林水産部長の見解をお尋ねしたいと思います。
 一方、エコツーリズムとは、旅行を通じて環境保護や自然保護の理解を深めようという考え方であり、環境保護と地域経済の発展の両立を図ることを目的とするものであります。既に日本保護協会ではエコツアーのガイドラインを作成しておりますし、日本旅行業協会でも「地球にやさしい旅人宣言」を決議していると聞いております。具体的には、専門家が同行したり、現地の自然保護のボランティアとの交流や実践活動を行うことなどに重点が置かれていると聞きました。
 そこで、提案でございますが、ホエールウオッチング、イルカウオッチング、植林ツアー、リバーカヤック、シーカヤック、森林浴ツアー、サバイバルレースなどを企画してみてはいかがでございましょうか。旅行会社やボランティア団体の協力と参加を得てぜひとも実施すべきだと思いますが、生活文化部長のお答えをいただきたいと思います。
 このほか、エコツーリズムの範疇には入らないかもわかりませんが、南紀熊野の自然を生かしたイベントとして、マラソンやトライアスロン、カヌートライアル、マウンテンバイクなどのスポーツイベントの開催を検討してもいいと思います。このこともあわせてお答えをいただきたいと思います。
 次に、南紀熊野の地は、奈良・平安の昔から大宮人の熊野もうでの地であり、数多くの歌人によって幾多の和歌等が詠まれてまいりました。「磐代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば また還り見む」、「家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る」、この二首は、いずれも悲劇の皇子・有間皇子の詠んだ歌として余りにも有名であります。
 西暦六五八年、大化の改新の少し後、朝廷の中の権力争いに巻き込まれ、陰謀によって無実の嫌疑をかけられ、傷心落胆の旅の途中暗殺されてしまうのでありますが、その直前に詠まれた歌と言われております。この有間皇子の一生は、十九歳で生涯を終えますが、波乱万丈、悲劇の一代叙事詩であります。万葉の権威・犬養孝先生も、大阪大学や甲南女子大学で教鞭をとっておられるときに、何度も南部町岩代や海南市の藤白坂などの有間皇子のゆかりの地を多数の学生を伴って訪れておられます。
 なお、「万葉集」だけでも、和歌山県で詠まれた歌は百三十首と言われておりますが、これらのゆかりの地を訪ねる万葉ツアーを、犬養孝先生のような万葉研究の権威に案内役になっていただいて企画してみてはどうかと思います。今も書店には「万葉集」を扱った多くの本が並び、隠れたベストセラーと言われておりますし、また全国には万葉ファンが大変多いと聞きます。これら「万葉集」などに詠まれた和歌等の歌碑を整備し、周辺の修景にもあわせて取り組むべきと思いますが、この点も含めて生活文化部長から一括してお答えをいただきたいと思います。
 この項の最後に、南紀熊野体験博の成功・失敗はPR宣伝が重要なかぎを握っていると私は思います。現在、テレビの各チャンネルで行われている女優の中村玉緒さんを起用したスポットコマーシャルが大変好評を博していると聞いております。新聞広告も、過日見ました。今後も種々のPR宣伝を大々的に展開していくべきだと考えますが、この点について生活文化部長、商工労働部長のそれぞれからお答えをいただきたいと思います。
 最後に、関西国際空港についてお尋ねをいたします。
 第一に、先般行われました実機飛行テストの調査結果が公表されました。それによりますと、実際に関西国際空港に離着陸する航空便とテスト機の間に離陸重量の面で隔たりがあることが明らかとなりました。県の問い合わせに対して運輸省は、離陸重量の違いによる騒音値への影響はほとんどないとの回答でありましたが、運輸省の言うとおり全く問題はないのか、企画部長の答弁を求めたいと思います。
 第二に、大川地区での測定値のうち一回が予測値を大きく上回り、七十一デシベルを示しておりました。このほかにも予測値を上回る測定値を示した地点が県内で二カ所あった事実について、同じく県から運輸省への問い合わせに対する回答によりますと、一様に「おおむね予測の範囲内」という言葉で、幾つかの理由をつけられておりますが、片づけられております。本当に全く問題はないと言えるのか、企画部長のお考えを承りたいと思います。
 第三に、一回の実機飛行テストだけで結論を出すのは私は無理だと思います。第二回、第三回の実機飛行テストの必要性について県当局としてどう考えておられるのか、また運輸省の方針はどうなっているのか、わかればあわせて企画部長にお尋ねをしたいと思います。
 次に、二期事業用土砂採取についてお尋ねをいたします。
 各方面からの情報を仄聞するところによりますと、関西国際空港用地造成会社と土砂採取に当たる企業や地方公共団体との間で、単価交渉が暗礁に乗り上げていると聞いております。このまま推移しますと二期事業全体の工事のおくれにもつながりかねず、ひいては二〇〇七年の二本目の滑走路の供用開始にも影響が出ることが心配されますが、いかがでありましょうか。企画部長の把握しておられる範囲内で、現状の報告をお願いしたいと思います。
 もう一点、一期事業パート二の中で行われているスポット整備が着々と進んでいると聞いておりますけれども、これが早期完成が最大の離着陸回数の実現に不可欠であることにかんがみ、現空港の能力が今ほぼ限界に近づいていることを考え合わせて、現状と今後のスポット整備の進みぐあい等について、企画部長からお答えをいただきたいと思います。
 以上で、第一質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの森正樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 森議員にお答えをいたします。
 まず、地方主権についてのご質問でございますけれども、地方主権あるいは地方分権ということについては、さまざまなご意見があることも承知をいたしております。
 私は、主権であれ分権であれ、目指しておるところは、基本的に地域住民の自己決定権の拡充を図り、あらゆる階層の住民参加の拡大による民主主義の活性化ということであろうと思いまして、国民主権をより具体化することであろうと思っております。
 いずれにいたしましても、地方自治体が権限と責任を持って主体的に住民ニーズに応じた施策を展開できる体制を実現していくことであろうと考えております。
 次に、地方主権実現のためにどう行動するのかということでございます。
 議員ご提言の地方主権の時代にあっては、地方自治体の自己決定権が拡充するとともに自己責任が拡大することとなりますので、このことに対応できる行政体制の整備を進めるとともに、時代の変化に対応できる創造的能力あるいは政策形成能力を有する意欲ある職員の育成に努めていかなければならないと思っております。また、地方分権、地方主権にいたしましても、住民にとって実のある内容でなければならないと思いますので、その財源問題なども含めて全国知事会を通じ、強く要請をしていきたいと考えております。
 次に、職員の質的向上のための取り組みについてであります。
 ご指摘のように、地方分権が真に実を上げるためには、職員一人一人がこれからのふるさとはみずからがつくっていくんだという強い意欲を持っていくことが必要になってまいります。そこで、本年の仕事始めにおきまして、これからの地域づくりを進めるためには、いわば一つの国をつくるんだという気持ちが必要だということを訴えました。「二十一世紀の故郷(くに)づくり」は新しい感覚と発想で取り組むことを提唱したわけでありまして、この趣旨のさらなる徹底を図ってまいりたいと考えております。
 次に、意識改革についてでございます。
 私は、知事就任以来、意欲と行動力あふれるたくましい県庁を目指しまして、そのために職員に対して意識改革の必要性を訴えてきたところでございます。これによりまして、現地主義の重要性の認識、いわゆる現地を見ることの大事さ、あるいは先例にとらわれることのない業務遂行、いわゆるスリーSの浸透を訴えてきたところでありますけれども、ある程度は浸透してきていると思っておりますし、職員一人一人が意欲と誇りを持っていることの手ごたえも感じているわけであります。
 しかし、繰り返し申し上げますが、現状に満足することなく、さらに一層の意識改革を進めるために「二十一世紀の故郷(くに)づくり」は新しい感覚と発想でということをテーマにして、さらに努力を積み重ねていきたいと考えております。
 機構改革に関しましては、今回の行政改革における組織見直しにおいては地方分権への対応を念頭に、縦割り行政の問題点を除き、部局間の従前の概念にとらわれない総合行政を推進することを大きな目標として取り組んできたわけでございます。平成十年度からは、これまでの本庁の再編に続き、住民に身近な行政は住民に身近な場所で処理し、地域の課題に総合的に対処するために、全国的にはまだ数県でありますけれども、振興局制度をスタートすることにいたしております。これらの機構改革の趣旨を職員に徹底することにより、実を上げていきたいと考えてございます。
 次に、人材の確保についてであります。
 県民のニーズが多様化・複雑化してまいります一方で、行財政改革等によってより効率的な行政運営を求められる中で、熱意と能力のある職員の確保が重要であると考えてございます。そのためには、ご指摘のように、筆記試験による学力のみに偏らない幅広い優秀な人材の確保に努める工夫をしてまいりたいと考えております。また、人材の登用につきましても、県行政の積極的な展開のために適材適所を基本とした職員の登用を行ってございますけれども、今後とも能力主義による人材配置を積極的に進めていきたいと考えております。
 また、職員の民間企業等への派遣研修についてであります。
 来るべき地方分権の時代と厳しさを増す財政状況に対応して今後行政運営を進めるためには、みずから主体的に考え実行する、最少の経費で最大の効果を上げるという経営感覚が従来に増して必要となってまいります。この意味で、議員ご提言のとおり、職員を民間企業に派遣して民間の経営感覚を習得させることは大変有意義なことであると考えまして、平成八年度からは民間企業二社への派遣を実施してございます。今後とも機会あるごとに、民間企業のみならず国あるいは他の公共団体を含めた積極的な職員派遣に努め、新しい感覚と発想を持った人材の育成を行ってまいりたいと考えてございます。
 次に、南紀熊野体験博に関してであります。
 南紀熊野体験博の開催意義は、一つには歴史、文化、風土といった熊野地域の魅力を私たち自身が再認識するとともに、その魅力を広く国内外に伝えていくことにあると思います。そのために地域の人々、特に若い人々が主役となって体験博に積極的に取り組んでいただくとともに、さまざまな広報宣伝媒体を活用して熊野地域の魅力を余すところなく訴えていくことが大変重要であると考えております。
 また、もう一つの意義といたしましては、実際に熊野地域を訪れた人々に、この地が心と体をいやし、満たし、そして新たな活力を生み出す安らぎの地であることを実感していただくことにあろうと思います。そのために、当体験博では地域の人々と来訪者がじかに触れ合う体験イベントあるいはネットワークイベントといったものを企画してございますけれども、こうしたものを通じて交流を重ねていく上で最も大切なことは、この地を訪れた人々に対するもてなしの心を持つことではないかと考えております。もてなしというのは、単にお茶の接待ということではなくて、その土地を十分案内できる心構え、心といったものも大事だと思っております。
 いずれにいたしましても、体験博の成功に向けて、県民の皆様のご理解とご協力をいただきながら全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 最後に、若い人の起用の問題であります。
 ご指摘のように、今回の南紀熊野体験博は、従来の囲い込み型博覧会とは異なりまして、各地の特性やリゾート資源を活用しながら熊野地域全体を広域展開していくオープンエリア型博覧会ということであります。
 ご指摘のように、前例のない新しいパターンの博覧会の成功のために、全国からも注目をされておるわけでありますので、ぜひ若々しい行動力と柔軟な発想が必要であり、意欲のある若手職員を登用し、企画運営に参画をしていただき、地域の若い人々と一緒になって体験博に取り組んでもらうことが重要であろうと考えてございます。そして、このことが二十一世紀における和歌山県の地域づくりを担う人材の育成にもつながるものと考えてございます。
 ただ、年齢にかかわらず柔軟な頭脳を持つ者もおりますので、その辺をうまく組み合わせてまいりたいと思っております。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 職員の意識改革と県庁組織の改革・改組についての中の二点にお答えします。
 まず、職員定数に関してであります。
 今日的課題である高齢化社会への対応、県内交通網の整備、南紀熊野体験博の実施など、新たな行政需要に対応していくために、スクラップ・アンド・ビルドを基本に、総定員の中で適正な定員管理に努めているところでございます。本県においては、昭和五十年以来削減に取り組み、知事部局では四百四十五名を削減したところでございますが、職員定数の問題については大きな課題として検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、外郭団体の統廃合等に関してでございます。
 県が五〇%以上出資している法人は二十五法人ございますが、これらの法人については積極的な活動を行っているものと認識してございます。このうち、財団法人和歌山県交通公園については、ご質問にもございましたように、類似の業務を行っている法人については統合するという方針に基づき、今年度末をもって解散し、公園管理業務を財団法人和歌山公園緑地協会に委託することとしたところでございます。
 これらのいわゆる外郭団体は、効率的、機能的な運営のもと、行政と一体となって県土の開発と県民福祉の向上に寄与することを目的として設置されたもので、さまざまな行政分野で県政の一翼を担ってきたところでございます。
 しかしながら、社会経済情勢の変化に合わせ、今後、各団体の設立目的、活動実態等について見直しを行い、より一層の運営の効率化、活性化を図っていきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
  〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 南紀熊野体験博の成功を目指してのうち、グリーンツーリズムの推進で体験博を成功に導こうということでございます。
 昨年八月、農山漁村滞在型余暇活動促進法に基づく県の基本方針を策定して市町村への周知を図りまして、農林漁業体験民宿の登録を推進したところでございます。
 議員ご提案のとおり、南紀熊野体験博と、農林漁業体験を通じて長期に農山漁村で余暇を過ごすグリーンツーリズムの精神とは同じくするものと考えてございます。今後ともグリーンツーリズムの趣旨をさらに啓発し、体験民宿の登録拡大に努めるとともに、これまで整備しました宿泊・体験施設の活用促進を図るなど、南紀熊野体験博に向け、より一層取り組みを強めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 生活文化部長中村協二君。
  〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 南紀熊野体験博の成功を目指してのご質問にお答えいたしたいと思います。
 まず、エコツーリズムあるいはスポーツイベントについてでございますけれども、今回の体験博のイベントの基本は、子供からお年寄りまで、幅広い年齢の来訪者に熊野地域のすばらしい自然環境の中でさまざまな体験型のイベントを提供することにありまして、まさしくグリーンツーリズム、エコツーリズムの具体化に通じるところがあると考えてございます。
 議員ご提言の各種のイベントのうち、植林ツアーやホエールウオッチングにつきましては既に熊野古道における植樹イベントや体験イベントの中で実施に向けて具体化しているところであり、また自然と触れ合い親しむイベントについても検討しているところでございます。さらに、スポーツイベントについてはテーマイベントとしてマリンスポーツフェスティバルの実施を計画しているところでございますが、マラソンなどにつきましても、安全性の確保など多方面から検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、万葉ツアーの企画とゆかりの地の整備を進めよというご提言でございますけれども、和歌山という地名からも推しはかれますように、本県においては、いにしえから数多くの和歌が詠まれております。とりわけ「万葉集」には、和歌山にちなんだ歌が、議員ご指摘のとおり数多くおさめられており、その故地・旧跡も数多くあり、この貴重な資源を生かして本県の活性化と文化振興を図ることの必要性を痛感いたしております。
 現在、和歌の浦や藤白の地などで万葉を訪ねるハイキングが催されていることを踏まえ、議員ご提言のこうした歴史的・文化的背景に配慮したイベントを南紀熊野体験博においても検討してまいりたいと存じます。
 また、県といたしましては、万葉ゆかりの施策として、紀伊風土記の丘における万葉植物園の整備、紀州おもしろブック「いい碑旅立ち」の発刊、片男波公園における万葉館や万葉の小路の建設、そして現在の女性の思いをつづった「平成女性和歌集」の編さんなど、各種の施策を実施してきたところでございますが、今後とも活力と文化あふれるふるさとづくりに向け、「万葉集」等の貴重な資源の活用についてさらに検討してまいりたいと存じております。
 次に、体験博の成功はPR・宣伝が重要なかぎを握るのではないかというご指摘についてであります。
 この博覧会の目的の一つは、熊野地域を象徴的に取り上げ、本県のすばらしいリゾート性を国内外に広くPRしていくことにあります。したがって、広報宣伝活動はこの体験博の中でも特に重要な柱であると認識しており、庁内の推進本部における広報宣伝部会と実行委員会とが一体となって積極的に取り組んでまいりますとともに、情報提供には市町村とも十分連携を図ってまいります。
 なお、今後の具体的展開でございますが、まず四月二十九日に一年前プレイベントを開催するのを初め、県民意識の高揚を図るイベントや全国展開の誘客キャンペーンを予定しております。また、現在姉妹提携を進めておりますスペインのサンティアゴへの道と関連づけた熊野古道展を、開幕前に合わせて東京、名古屋、大阪等において実施していきたいと考えております。
 さらに、各種マスメディアを活用した広報展開を行うほか、公式情報紙や公式ガイドブックを発行して、県民の方々の参加機運のさらなる盛り上がりと県外からの誘客に一層積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 以上であります。
○議長(木下秀男君)  商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 商工労働部における南紀熊野体験博関連のPR事業についてお答えいたします。
 商工労働部といたしましては、観光客のより一層の誘客を図る上において南紀熊野体験博が大きな誘因になると考え、関連PR事業を実施することとしております。
 今後のPR・宣伝につきましては、まずテレビコマーシャルを新たに制作し、京阪神はもとより、首都圏、中京圏でも放映を実施してまいりたいと考えております。さらに、このテレビコマーシャルをこれらの地域の街頭大型ビジョンでも放映し、相乗効果を高めてまいりたいと考えております。
 また、JRや私鉄の大規模車内広告などを実施するとともに、従来からの大型観光キャンペーンであるふれ愛紀州路・心のふるさとキャンペーンなどの観光PRとあわせ、機会あるごとに南紀熊野体験博のPRを積極的に行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
  〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 森議員にお答え申し上げます。
 関西国際空港問題に関する諸問題のうち、先般行われました実機飛行テストにおける調査機の重量差による騒音測定値への影響についてでございます。
 実機飛行調査に用いられた機材は、国際線を代表する機種であるボーイング七四七・四〇〇型機で、その離陸重量は着陸の際に脚が耐えられる最大重量に飛行中に消費する燃料を加えた約三百九トンでございました。これに対しまして、同機の実際の運用時における最大離陸重量は約三百六十三トンでございます。この重量差は約五十四トンありますが、運輸省によりますと、これらの重量による騒音ピークレベルは、測定地点から調査機までの距離を八千フィート──約二千四百メートルでありますが──とした場合に、重量約三百六十三トンで予測値六十九デシベル、重量約三百九トンで予測値六十八デシベル程度ということであり、重量の違いによるピークレベルの差は一デシベル程度で、ほとんど影響がないとのことでございました。この点につきましては、三月十日から十七日の間、運輸省が友ケ島での現行経路により実際に運用されている航空機ごとの騒音値等を調査いたしますので、その結果を見てまいりたいと考えてございます。
 次に、この飛行テストにおいて一部地域の測定値が予測値を上回っていたこと、及び二回目の実機テストについてでございます。
 実機飛行調査の騒音測定の結果、和歌山市大川など一部地点で運輸省の予測値を上回る測定値が観測されましたが、運輸省の説明によりますと、一般に風が強いときには音の変動が大きくなり、また風下の方が遠方まで音がよく到達すること、調査日の早朝においては西北西の強い風が吹いていたため、調査機の風下に当たる測定地点では騒音値の変動が大きかったものと考えられるとのことであります。さらに、運輸省から示されていた予測値は騒音ピークレベルの平均値的な値であるということからすると、一回目の調査結果はおおむね運輸省の予測範囲内であったと考えられますが、強い風の影響により測定値にばらつきが見られたこともありますので、ご指摘のように、一回だけの調査で結論づけるのではなく、より多くのデータを収集する必要があると考えてございます。
 運輸省としても二回目の実機飛行調査を実施する意向であり、四月中にも実施できる方向で検討しているとのことでございます。県といたしましては、関係市町村の意見も聞いて総合的に判断していきたいと考えてございます。
 次に、本県からの土砂採取につきましては、株式会社青木建設と鹿島建設株式会社が協力して取り組むことになってございますが、現在は事業の実施計画等について二社で協議調整を続ける一方、環境アセスのための現況調査等を進めると同時に、関西国際空港用地造成株式会社と土砂単価等についての協議を行っていると聞いてございます。
 県といたしましては、用地造成会社と事業者との間で進められている協議の経過に十分注意を払いつつ、平成十年度末現地着工、平成十九年供用開始という二期事業のスケジュールを踏まえ、本県からの土砂供給が遅滞なく実施されるよう指導してまいりたいと考えてございます。
 次に、関西国際空港につきましては、近畿圏における航空需要の増大に対応して、年間離着陸回数を十二万回から十六万回にふやすため、平成七年度から既存施設の能力増強等──いわゆる一期パート二事業でありますが──を進められてございます。
 議員ご指摘の駐機場整備につきましては、現在五十四スポットで運用されておりますが、平成八年度から実施中の北地区での四スポットの整備、及びこれに伴う旅客ターミナルビルの拡張工事が近く完了し、本年六月ごろの供用により五十八スポットとなる予定でございます。また、平成十年度においては百三十九億円の事業費が政府予算案で認められており、南地区の四スポットの整備及びこれに伴う旅客ターミナルビルの拡張工事を実施いたしますが、その後さらに貨物四スポットの整備を行い、合計六十六スポットを整備する計画でございます。
 県といたしましては、県民の利便性の向上を図るとともに、関西国際空港が国際ハブ空港としてその機能を十分発揮できるよう、一期パート二事業の円滑な推進に向けて今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 36番森 正樹君。
○森 正樹君 数点、申し上げたいと思います。
 まず、地方主権ということについてであります。
 実は、先ほど申し上げました元島根県知事の恒松制治さんは、本の中でこういうふうに言われております。これは共著なんですが、「現行憲法の中には第八章に『地方自治』という一章を設けております。その最初の条文第九二条に『地方公共団体の組織及び運営に関する事項は地方自治の本旨にもとづいて、法律でこれを定める』と書いてあります。(中略)一つの法律という枠内のなかでしか、地方自治を認めませんよということを憲法がうたっているわけです。地方自治という一章を設けながら──そんなにたくさん章はございません。その中で第八章として一章を設けながら──そういうことをうたっていること自体がもうすでにおかしいんではないかと、これは地方自治の本旨にそわないとさえ思っております」と、そういうふうにおっしゃっておりました。
 それから、中央が地方を規制することのばかばかしさを、こんなふうにも言われております。島根県で知事をされているときに、ある年、大変な冷害があって、そのときに県下全部を回られたら、同じ気候条件であるのに、そこそこ平年並みの米ができている田んぼもある。ところが、片方では全くやられてしまってだめなところもある。それで知事が不思議に思って、何でこれだけ作柄に違いが出るんだということを地元農民に聞かれたそうであります。そうしたら、そのときに地元の人がいわく、「それはやる気の相違です」と。「米作りというのは、ただ単に天候が悪いんじゃなくて、天候が悪ければ、それに対応したような努力をし、土作りをし、あるいは管理をよくするということで、不作を絶えず少ない範囲でとどめることができるんですよ」と、こういうふうにある農民に言われた。きちっとそういう管理をされて、土づくりからいろんな汗を流して努力された結果、平年に近い作柄を守ることができたと農民の方が言われているわけです。
 ところが今、東北なんかでもそうですけれども、青立ちといって、もみの中に実が入らない。真夏日が一日もなかったなんていうことが岩手県でもあったことがありますが、そういう中で、農家が非常に農業に対するやる気をなくしている。それはなぜそうなるのか。そのことを恒松さんは、減反政策に原因があると。「自分のたんぼで、自分の労力で、自分の資本で耕そうと思っているのに、そこを耕してはいけないといわれる。これほど農家のやる気を失わせるものはないだろう」と。「そういういらざる規制を政府がやりすぎることがいかに、私たちの社会を貧しいものにして行くかということを、この事例で知ることができるわけです」と結んでおられます。
 私も記者時代に、秋田県の大潟村──あの八郎潟という大きな湖を干拓して、塩抜きをして、あそこを日本ではかつてない大型農場にするということで、全国から農業に意欲を燃やす若い夫婦がたくさん応募して、大変な競争の中であそこに入植されました。ちょうどそのとき私は記者時代で、取材に何回か行ったことがあります。
 数年かかって塩抜きをやって、やっと来年から米をつくるというときに政府が何をやったか。減反政策であります。北は北海道から南は沖縄まで、みんな農業に意欲を燃やして、農業に夢をかけてあの大潟村に入植したんです。ところが、立派な農場が目の前に──本当にすごい、延々見はるかす田んぼでありますが、いよいよ来年から米ができるというときに減反政策なんですよね。こんなばかなことを中央が地方に押しつけること、これは本当に僕は問題だと思います。
 そのときに取材で、大潟村でこれから希望に燃えて農業をやろうといういろんな農家の方に話を聞きましたが、皆さん大変な怒りをぶつけておられました。もう二十年以上前の話ですが、そのことは今でもありありと覚えております。──そうですよね、農林水産部長。
 農業問題をここでは語るあれではないので、これ以上は申し上げませんが、だからこそ「地方主権」なんです、知事。「地方分権」じゃないんですよ。やっぱり「地方主権」なんです。本来、主権は国民なんです。県民にあるんです。市民にあるんです。だから、その一番近い政府──市町村とか県に主権があって当たり前なんであります。そういうことをこの際、改めて訴えたいと思います。
 それから、職員研修で、先ほど知事は答弁の中で、現地を見ることの大切さ、重要さを訴えてきたとおっしゃっておりました。まさにそのとおりであります。民間企業への派遣研修をぜひともふやしていただきたい。
 知事が年末の訓示の中で、三十一日まで働いている人がいるんだ、この不況の中で汗を流している県民がおることに思いをいたせと言われた。あのことを職員の皆さんがどこまで覚えているか。私は、あれは本当に大事な視点だと思います。そういう他人の痛み、苦しみがわかる行政マンでなければならない、そのように思います。
 したがって、そういう意味で、現地を見ることの大切さを知事が言われました。一年でも二年でも結構だと思いますが、やはり民間企業なりいろんなところへ行ってそういうものを肌で感じてくる。我々も、例えば海外へ行きますけれども、幾ら本で何百冊読んでもわからない、現地に足を踏み入れて、その土を踏んで初めてわかることというのはあるんですよね。これは皆さん経験があると思います。そういう意味で、民間企業への派遣研修はぜひとも大幅にふやしていただきたい。机上での空理空論をもてあそんでも、全く意味がないとは言いませんが、それよりも僕は現場を踏んでの派遣研修が大変大事だと思いますので、よろしくお願いします。
 それから、組織の縮小、改革・改組と人員削減であります。
 先ほど挙げられた外郭団体以外にも、いっぱいあると思います。県がいろんな許認可を与えている中には休眠状態のものもあると聞いておりますが、まあそのことは申し上げません。
 ただ一点だけ例を挙げますと、県印刷所、これなどは今、果たして機能をしているのかと。全くしていないとは言いませんが、やはりこういうところを一つ削っていくことによって──大変な痛みを伴います。痛みを伴うことではありますが、二十一世紀に向かって、百八万県民のためにそういうところをある程度削減、縮小整理することが本来の県民福祉の増進を確保することにもつながります。そういった視点で、ぜひとも厳しく取り組んでいただきたいと思います。
 それから、僕は決してひな壇におられる方がすべて頭がかたくてもう使い物にならんと言っているのではなくて、やはり人間の体というのは生理的に、四十代、五十代、六十代になると、当たり前のことなんですが、どうしても発想も古いし、頭も回転しにくくなると。そういう意味で──このままいくと県庁組織のピラミッド型がこの体験博の推進機構になると思いますが、そういうここにおられる部長が主催者になって会議をやっても、若い職員が意見を出しにくい場合もあるわけですよ。だから、そういう意味で、思い切って若い人たちだけに声を出す場を与えてあげて、いろんなアイデア、知恵を出してもらうということが大事だと思います。それは、職員だけじゃなくて、先ほど知事もちょっと言われておりましたけれども、広く県民の中にもそういうアイデアを募ってやっていくことが大事だと思います。というのは、そういうアイデアを出したり参加することで、県民の間にも主催者意識といいますか、参加意識が芽生えてくるんです。それが非常に僕は大事だと思います。そういう意味で、ぜひともこれも取り組んでいただきたい。
 それから、万葉ツアーについて一つだけ申し上げます。
 犬養孝先生の本の中に、こんな部分がありました。先ほど私が読み上げた歌についてですが、「この歌に出てくる磐代という地名を考えてみましょう。問題の所は、和歌山県日高郡南部町大字岩代小字西岩代という所です。この磐代という地はどういう所かといえば、ここは”熊野”に入る口元にあたる大事な所です」と、そういうふうに言われております。
 いわゆる大宮人というのは奈良あるいは京都にあって、海のない地域におる人ですよね。そういう人が初めてあの太平洋の大海原を目の当たりにして、感動するわけです。だからこそ、そうした歌がいっぱい生まれたわけです。「その海のない人々がこの紀の国の海、熊野などの海に出てきて、そのみごとで男性的な景観を見て、ものすごく感激するわけです。だから『万葉集』の紀の国の歌、約一三〇首ほどの歌を見ると、南へ行けば行くほど、景観と共に心躍る歌ばかりになる。初めて海を見るような人達ですから、その南国的な景観に夢中になるんです。今、旅人が、磐代の所へ来たら、黒潮の風に揺れている海岸の松の枝を見ただけでも『ワァー、すばらしいなあ』と、身にしみて思うに違いありません」と、このように本の中で言われております。
 私は昔、NHKが企画した万葉ツアー──犬養孝先生が引率をされておったんですが──が放映されているのを見ました。幅広い年齢層のいろんな人が参加をされておりました。やはりそれだけ根強いファン、人気があるんですよね。そういう意味で、ぜひともこれは実現をしていただきたい、そのように申し上げます。
 最後に、グリーンツーリズムについて。
 日本とフランス、ドイツなんかとの決定的な違いは、ちょっと第一質問の中でも申し上げましたが、実は税の減免措置のあるなしなんですよ。幾ら法律をつくっていろんな企画を出しましても、やはり農家から考えますと、そうした税の減免措置なんかがなければ実際にはできないんです。だから日本では、農林水産省が数年前に法律をつくっても余り乗ってきてくれる農家がないというのが現状なんです。それに対して、フランス、ドイツではこれはもうきっちりと国民の間に定着をしている。それはやはり、税の減免措置があるからなんです。
 そういう意味で、ぜひとも農家民宿に取り組む農家に対する税の減免措置などを国に対して強く働きかけを今後していただきたい、そのように申し述べたいと思います。
 以上、すべて要望でございます。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森正樹君の質問が終了いたしました。

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