平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(新田和弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番新田和弘君。
  〔新田和弘君、登壇〕(拍手)
○新田和弘君 議長からお許しをいただきましたので、議案に対する質疑並びに一般質問を行います。
 まず初めに、平成十年度当初予算と景気対策に関連してお尋ねをいたします。
 平成十年度当初予算は、予算編成の基本的な考え方に示されているとおり、厳しい財政事情を踏まえ、施策面での根本からの議論を積み重ね、これまでの制度、施策の見直しを行う一方、その必要性、緊急性、優先順位等を十分精査しながら各分野にわたる施策を積極的に進めるとしています。注目されるのは、重点化調整枠の設定や組織横断型予算編成手法を導入した点で、「心豊かで個性輝くひとづくり」、「豊かさを実感できる暮らしづくり」、「創造力あふれる産業づくり」、「新時代を支える基盤づくり」の四つの施策目標の実現に向けて的確に対応したところであると説明し、その結果、平成十年度一般会計五千九百六十四億八千九百三十三万五千円、対前年伸び率二・七%増となり、公債費と諸支出金を除いた一般歳出ベースでは一・五%減となり、地方財政計画の一・六%減とほぼ同じ水準となっております。また、特別会計は九百三十四億六千八百二十一万五千円、地方公営企業特別会計は二百二十七億六千三百七十六万一千円であります。
 国の平成十年度当初予算も県の十年度当初予算も、当然のことながら国の財政構造改革を受けて編成されたものであります。しかるに日本経済は、昨年秋以降、金融機関、証券会社の相次いだ経営破綻により、企業の投資意欲に水を差す格好となりました。加えて、円安を背景に好調だった輸出も、アジアの通貨・金融危機の拡大で韓国やタイ向けを中心に停滞を始め、シナリオに狂いが生じて、このままでは日本の金融システムの崩壊や経済失速が世界恐慌の引き金になりかねない状況に直面しました。アメリカの強い要請もあり、「君子豹変す」の言葉どおり、橋本総理は、二兆円減税の継続と十年度当初予算に加えて、景気対策として公共事業等を軸にした十兆円を上回る大型補正予算を当初予算成立後直ちに国会に提出し、赤字国債の大量発行により資産デフレ、財政デフレの解消に乗り出す方針であります。当然のことながら、大型の財政出動に踏み切った場合、赤字国債の発行額を前年度比マイナスとすることを定めた財政構造改革法との整合性が問題となります。
 本県でも、国の大型補正予算を受けて補正予算を計上する場合、県の財政の中期展望に大幅な変更があるか、もしくは先送りが生じるのではないかと思われます。また、今日の経済危機は金融デフレであるとの指摘もあります。二年半にも及ぶ超低金利にもかかわらず、金融機関の不良債権処理は進まず、大蔵省の昨年九月末集計によると国内金融機関の不良債権総額は二十八兆七千八百億円となりましたが、金融機関の自己査定に基づいた回収に支障の出るおそれのある灰色債権を含めると実に七十六兆円に上ることが明らかになり、これは昨年三月末に公表した不良債権額の約三・五倍になります。さらに、本年四月に日本で導入される早期是正措置は、海外業務を行う銀行は自己資本比率が八%以上、国内業務だけの銀行は四%以上と義務づけており、これが達成できない場合は経営計画の改善や新規業務への進出が禁止され、ゼロ%以下であれば業務の停止もあり得るという内容であります。各金融機関では、自己資本比率の基準達成のために貸し渋りどころか貸し出し回収を行うなど、信用収縮で不況の深刻化を招き、ついには資金ショートを起こして企業倒産に追い込まれるという悪循環が生じております。政府は、金融不安、金融機関対策として十兆円の国債と二十兆円の政府保証を加えた三十兆円の公的資金を投入して、預金者保護と金融システムの安定化を目指す二法案を成立させたところであります。これを受けて、この三月四日には大手十八行と地銀三行が公的資金投入による自己資本比率増加を目的に、優先株や劣後債の発行を決めたところであります。
 そこで、西口知事にお尋ねをいたします。
 一、平成十年度当初予算における景気対策はどう対応したか。
 二、景気対策として十兆円を上回る国の大型補正予算を受けて、本県の大型補正予算を計上する場合、県の財政の中期展望の変更が余儀なくされると思われますが、景気対策も考慮して知事の考え方はどうか。
 以上二点、お尋ねをいたします。
 金融機関の貸し渋りや融資選別の影響等により平成九年は企業の倒産件数が史上最高を記録し、本県においても百六十七件の倒産があったところであります。金融機関の貸し渋り等に対する本県の対応について、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 次に、昨年実施した予算執行状況調査により不適正支出の指摘が行われ、県当局は不適正支出額に利息を含めた十四億円余を返還するとともに、所要の改善がなされてきました。平成十年度当初予算においても不適正支出の改善の一環として、議案第四十三号職員等の旅費に関する条例の一部を改正する条例、及び議案第四十四号職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例が提案されております。また、予算計上においても事務費など改善に努められたと伺っております。
 そこで、総務部長にお尋ねいたします。
 一、平成十年度当初予算において不適正支出の改善のためどう対処されたか。
 二、現在、国において公務員の倫理のあり方が指摘され、公務員倫理法の制定が議論されております。本県においても、公務員の倫理の確立に対してどう対処されるか。
 以上二点、お尋ねをいたします。
 次に、ナイフ等による青少年の凶悪事件に関連してお尋ねいたします。
 昨年、神戸市須磨区で十四歳の中学生が児童連続殺傷事件を起こし、世間の人々に大変なショックを与えましたが、いまだこの事件の余韻が消えないうちに、本年一月、栃木県黒磯市の黒磯北中学校で一年生の男子生徒が女性教諭をナイフで刺殺する事件が起き、その五日後に東京都江東区で中学生の警察官襲撃事件が発生しました。続いて、神戸市兵庫区の郵便局へ中学生が旅行の金欲しさのため包丁を持って押し入り、強盗未遂事件を起こすなど、中学生の凶器を使った事件が相次いで起こり、大きな社会問題となっています。
 本県においても、ナイフ等は使っていませんが、和歌山市内の中学三年生の男子生徒が先月二十七日、校長室に押しかけた上、熱湯の入ったやかんを校長に投げつけ、右腕に一週間のやけどを負わせた疑いで、和歌山北署が三月六日にこの生徒を逮捕したとのニュースは、県民に大きな衝撃を与えました。
 警察庁のまとめによると、平成九年の刑法犯として補導された少年で、十四歳から十九歳は十五万二千八百二十五人に達し、前年に比べ一万九千二百四十四人、一四・四%増と二年連続の増加となっています。少年非行の総数自体は昭和五十八年から六十三年まで高原状態が続いた後、急激に減少し始め、その傾向は平成七年まで続きましたが、八年から再び上昇に転じてきております。少子化現象にもかかわらずこの状況が続けば、戦後、第四のピークになると危惧されております。
 中学生が女性教諭を刺殺した事件により家裁へ送致された男子生徒の処分を決定する第二回少年審判が二月二十四日に宇都宮家裁で開かれ、島田裁判官は、いまだ事件の重大さ、深刻さを十分理解できていない面が見受けられると、生徒を教護院へ送致する保護処分を言い渡しました。宇都宮家裁が少年審判としては異例の要旨公表に踏み切ったのは、事件が全国の教育現場や家庭、地域に大きな論議を呼び起こしたため、昨年の児童連続殺傷事件で神戸家裁が処分要旨を公表したことに準じ、原則非公開の少年審判の概要を明らかにすることで被害者の遺族や社会の知る権利にこたえようとしたと考えられます。
 日本家庭教育学会副理事長の川越淑江氏は産経新聞で、「近来の学歴重視の社会構造からくる知育偏重の教育は、人間の価値を知的な面に置き、学習水準の到達度によってのみ評価しがちです。これが続く限り、子供の問題行動は多発します。 中学生期は精神的には第二の誕生期といわれ、自尊心が強くなり、この自尊心を認めてもらいたいと思うようになります。しかし、学業不振で劣等感を持ったり、何らかの欲求不満により挫折感を持った子供たちが虚勢をはったり反抗したりして自己の存在を顕示するために問題行動を起こすのです。 学習の到達水準の低い子供であっても、ほかの面で優れていれば、その能力を伸ばし、それをもって社会に貢献するよう育てるならば、子供の挫折は起こらず、それが彼らを救う道です」と述べております。
 国際日本文化センター所長の河合隼雄氏は、「個人主義時代の子育て」と題して、「子供を伸び伸び育てる基盤としての家庭というものは、これまでに比べて何倍も大切なものになるだろう。昔に比べて、父親、母親の役割が非常に大きくなったことを認識しなくてはならない。昔の親は、この点についてはもっと楽だった。親の役割など余り考えなくても、社会全体として子育てをする仕掛けをたくさん持っていたのである。個人主義になって自分が昔よりは好きなことができるようになった分だけ、自主的な個人としての子供を育てる責任も大となったことを覚悟して、大人がもう少し反省することが中学生の問題を解決する早道であると思う」と述べています。
 本年二月、栃木県鹿沼市の東中学校では、新年度から中間、期末の定期テストを全面的に廃止する方針を決定しました。同校では、既に昨年四月から美術などの四教科について定期テストを廃止してきています。同校の校長は、「学期中の二回のペーパーテストではなく、ゆとりある生活の中でみずから学ぶ意欲を身につけさせながら、日々の積み重ねを総合的に評価した方がいい」と述べております。
 また岡山県PTA連合会では、本年二月の栃木県における女性教諭刺殺事件を機に、「子供の教育は家庭から」を保護者が再認識し、家庭が責任を持って倫理観などを子供に身につけさせる、ナイフの携帯は法律違反と家庭でしっかり教える、学校の判断で適切に所持品検査をする場合は理解するよう努めるなどの三点を記した要請文を配付して保護者に呼びかけることを決定いたしました。
 さらに、心の教育を目指す兵庫県教育委員会では、児童生徒に実体験をさせる目的で、ジャングル感動体験事業を本年夏にボルネオ島サバ州において六泊七日の日程で実施するなど、さまざまな取り組みが各地で行われております。
 先月末、町村文部大臣は新聞社のインタビューで、若いお父さんやお母さん方はどういうしつけをやったらいいのか戸惑っているとして、これからの行政は家庭教育にも踏み込むべきだとの認識を示し、文部・厚生両省の協力により、母子手帳交付時などを活用した幼児期からのしつけ指導を支援する方針を明らかにしました。さらに、最近の中学生らによるナイフ等を使った殺傷事件は、いずれも学校教育より家庭教育が原因と見られる。荒れる教室への対応策として、校長のリーダーシップのもとで各教員が共通の認識を持って共通行動をとることの大切さを指摘した旨、報道されておりました。
 そこで、県警本部長にお尋ねをいたします。
 ナイフ等を使った中学生による殺人や強盗など凶悪な事件が続発し、本県でも中学生による校長への傷害事件が発生し、少年非行の戦後第四のピークを迎えると危惧されていますが、本県における状況と対策はどうか。
 次に、教育長にお尋ねをいたします。
 一、教育長は、神戸市須磨区の中学生による児童連続殺傷事件、栃木県黒磯市の中学生がナイフで女性教諭を殺害した事件、本県の和歌山市の中学生が校長に傷害を加えた事件等、どう受けとめられ、本県の状況と対策はどう図られるのか。
 二、子供のしつけ等は幼児期から家庭で親が中心になって行い、それを地域社会がサポートすると考えられますが、子供たちを厳しく鍛える父性の原理と、優しく包み込む母性の原理のバランスが必要であります。戦後の日本は、父性の原理を失い、子供の規範意識が希薄であるとの指摘があります。幼児期からの家庭教育のあり方と父性の原理の回復へどう対応されるのか。
 三、中学生による殺傷事件の続発や荒れる教室に対する教育現場の危機管理を含めて校長のリーダーシップが要請されるところであります。東京都教育委員会は、学校管理のあり方を定める都学校管理規則に、「職員会議は校長の補助機関」と明文化する方針を固め、新年度早々にも同規則の改正に踏み切るとの報道がなされています。本県における校長のリーダーシップの向上と職員会議の位置づけについての見解はどうか。
 四、栃木県鹿沼市の東中学校が新年度より中間、期末の定期テストを全面的に廃止するとの方針が反響を呼んでおります。二月二十五日付の産経新聞「主張」は、「競争を否定して何が残る」と題して、公立中学校が定期テスト廃止に進めば私学志向が強められて、幼児期からの塾通いなど、それこそ逆効果であると反論しております。中学校教育改善への教育長の所見はどうか。
 以上四点、お尋ねをいたします。
 次に、高等学校教育の改善充実についてお尋ねいたします。
 昭和二十三年に高等学校が発足して、本年は五十年目を迎えることになります。この間、高等学校は著しい量的な発展を遂げ、現在では進学率が九七%に達する状況にあります。近年、高校を取り巻く状況は、受験競争の激化、不本意入学や年間十万人に上る中途退学者など、さまざまな問題が生じてきています。平成三年四月の第十四期中央教育審議会の答申及び高校教育改革推進会議の報告を踏まえて、高校における、一、学科制度の再編、二、学校間の連携の推進、三、特色ある学校づくりの推進、四、高校入試の改善等の高校教育改革の方途が示されました。平成八年七月の第十五期中央教育審議会第一次答申では、今後の学校教育はゆとりの中で生きる力をはぐくむ教育への転換を目指すべきであると述べ、高校については生徒の多様な実態を踏まえ、一、特色ある学校づくりの推進、二、教育課程の一層の弾力化、三、自校以外の学習成果の単位認定の促進、さらに現行制度に加えてボランティア活動、企業実習、各種資格取得、大学の単位取得などの学校外の活動についても単位認定できるようにすべきであると提言しています。また、平成九年六月の第十六期中央教育審議会の第二次答申では、高等学校入学者選抜の改善、総合学科の一層の整備を強く求めております。さらに、学校制度の複線化構造を進める観点から中高一貫教育を提言しています。こうした答申や報告をもとに、本県は高校教育改革に積極的に取り組んで着実に成果を上げてきています。学科制度の再編による特色ある学校づくりの推進については、本県では平成元年四月より取り組み、本年四月までに十九校で二十五学科が新設され、各学校では特色ある学校づくりに努力しています。
 平成九年度における各学校の活動の一部を紹介しますと、県立紀北工業高校の生産技術部が昨年五月に秋田県大潟村で行われたバッテリー五十・エンジン自動車省エネ走行競技のワールド・エコノ・ムーブのジュニアクラスで優勝、また大阪で行われたホンダエコノパワー燃費競技関西大会の高校生の部でも優勝するという大活躍をしました。加えて、平成七年十一月の全国高等学校産業教育フェアを機に、韓国の青鶴工業高校との交流を続けており、昨年七月には青鶴工業高校の一行が紀北工業高校を訪問し、自作のロボットの操作実演などを行い親睦を深めました。県立紀北農芸高校施設園芸科では、ヤマユリの減少を食いとめようと、バイオテクノロジーの技術でヤマユリを増植し、山へ返す研究を行ってきました。その成果を後輩に託して、この三月卒業いたしました。後輩によるヤマユリの増植が期待されております。国際科を設置している県立那賀高校では、本年一月に中国山東省の中高一貫校である実験中学校と姉妹校提携を結び、生徒を交換留学させて互いの歴史と文化を学び、友好関係を育てていくことになりました。那賀高校は、既にオーストラリアとアメリカの二カ国において三校と交流があり、毎年約百人の生徒が相手校を訪問し、約三十人の生徒をホームステイで受け入れております。今回の姉妹校調印により日中の友好がさらに深まることが期待されております。県立向陽高校環境科学科では、本年二月に「商業捕鯨を再開すべきかどうか」をテーマに、肯定派と否定派に分かれて討議するディベート形式の授業が注目を浴びました。また、平成六年四月に環境科学科が設置され、環境教育における教材開発と学習活動の工夫改善に対して、平成九年度の県教育研究奨励賞が贈られました。教養理学科のある県立海南高校では、二十一世紀に自然科学の分野で活躍できる人材を育てるため、学校の授業に加えて近辺の大学、研究機関の協力で特設課外授業を実施してきています。九年度夏期は、大阪府立大学総合科学部と和歌山大学システム工学部で授業を受けました。さらに昨年九月、インターネットを使ったリモートコントロールシステムで美里町のみさと天文台の大型望遠鏡を遠隔操作して金星の観測に挑戦するなど、各校とも特色を生かした授業や活動を行っております。
 次に学校間連携については、本県では、平成五年四月に和歌山市内にある星林高校、県和商、和歌山工業高校の三校間で開始され、平成七年四月からは田辺地区において田辺高校、田辺商業、田辺工業、南紀高校、熊野高校の五校間で実施されてきました。平成八年四月からは、県和商と和歌山ろう学校との手話とワープロ授業を交換する特殊諸学校を含めた学校間連携は全国初の試みでありました。平成九年四月からは、伊都地方において、橋本高校、紀北工業、紀北農芸、伊都高校、紀の川高校、笠田高校の六校間で実施され、通信制の生徒も参加する学校間連携は全国的に注目の的となっております。
 次に、高校改革の目玉として平成六年四月に創設された総合学科は、この三月に第二期生が卒業しました。和歌山高校総合学科の卒業式に、安藤精一委員長職務代理者と一緒に私も出席させていただきました。式の最後を飾って、先生方が制作されたスライドが正面の舞台いっぱいに映し出され、生徒一人一人がアップで登場すると歓声が上がり、個性を大切にした教育や一クラス二十人学級の総合学科の特色が見事に発揮された卒業式でありました。また、卒業生の答辞の中に、生徒会で取り組んできたJR小倉駅から学校までの通学路の空き缶拾いの清掃活動は後輩の皆さんも続けていってくださいと、地域におけるボランティア活動を生徒から生徒にバトンタッチする姿は大変さわやかで、印象に残りました。昨年四月から県内二校目の総合学科としてスタートした有田中央高校では、日本新聞協会のニュースペーパー・イン・エデュケーション活動の平成九年度の実践校に決まり、新聞を活用することで思考力を高めたり、いろいろな見方を学ぶとして各紙の読み比べや自分自身の新聞をつくったりするなどの授業が行われております。平成十年度の総合学科の全国の設置状況は、四十五都道府県において百七校になります。文部省では、今後、総合学科の設置を促進して、当面、通学範囲に少なくとも一校整備することを目標としております。
 次に中高一貫教育については、子供や保護者の選択幅を広げるとともに、学校制度の複線化構造を進めるため、国の平成十年度予算において中高一貫教育実践研究モデル校を各都道府県に一校設置するとして八千九百万円が計上されております。さらに、平成十一年度から中高一貫教育を選択的に導入することを目指した法案の提出が予定されているとのことであります。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 一、本県における総合学科の増設にどう取り組まれるのか。
 二、本県における普通科単独校が五校ありますが、学科の再編や単位制の導入など今後の取り組みはどうか。
 三、学校外における体験的な活動等のうち、ボランティア活動、企業実習、農業体験実習、大学における単位取得、各種学校、公開講座における学習等の単位認定に向けて本県ではどう取り組まれるのか。
 四、中高一貫教育の実践研究モデル校への取り組みにどう対応されるのか。
 以上四点、お尋ねいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの新田和弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 新田議員にお答えをいたします。
 十年度当初予算と補正予算に関するご質問については、先ほどの馬頭議員への答弁と重複するところもございますが、ご了承いただきたいと思います。
 最近の経済状況は景気の停滞など大変厳しい局面を迎えていると認識してございまして、平成十年度予算では、経済の活性化を最重点の柱に据えて、長期的視点に立った産業振興策はもとより、現下の経済情勢に即応した諸般の対策を積極的に盛り込んだところでございます。具体的には、新規産業の創出に向けた取り組み、積極的な企業立地施策、中小企業者に対する融資制度の拡充、公共投資の実質的な事業規模の確保などの予算を計上しているところでございます。
 次に、目下国政の場で議論されている景気対策としての補正予算については、最近の景気、経済情勢を踏まえて、国の政策動向を注意深く見守りながら、これと軌を一にした適切な対応を図ってまいらなければならないと考えてございます。
 仮に公共事業が追加されるということになりますと、その場合の財源としては、国庫補助金等のほかに基金がかなり減少している現状を踏まえると、県債の追加発行に頼らざるを得ないと考えてございます。したがって、当然のことながら、その分の元利償還費の負担が公債費という形で後年度の財政運営に少なからず影響を与えることになります。
 お尋ねの財政の中期展望については、一定の前提条件を置いた上での財政の中期的推計でありますので、状況の変動に応じて毎年度必要な数値の修正を行っていくこととしております。いずれにいたしましても、県債の追加発行を行う場合でも極めて厳しい財政状況のもとでの対応となりますので、交付税措置を要望するなど、実質的な県の財政負担を極力軽減できるような努力をしてまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 金融機関の貸し渋りへの対策についてお答えいたします。
 厳しい景気動向が続く中、県といたしましても、融資制度の新規融資策の拡大等を図り、金融の円滑化に取り組んでいるところであります。平成十年一月末現在、振興資金の一般貸し付けは対前年同月比、件数で約一・三倍の四千件、金額では約一・五倍の三百三十二億円の利用状況となっており、中小企業者の資金需要にこたえているものと考えてございます。しかしながら、昨年末に実施した県の緊急調査や融資相談窓口での状況から、中小企業者の約六割が金融機関の融資姿勢が今後厳しくなると感じており、資金調達に不安を持っているといった結果が出ております。このため、平成十年度においては新規融資枠をさらに五十三億円拡大するとともに、中小企業者の方々の担保力がないとの声にもこたえられるよう、県独自で一千五百万円の無担保枠を設けた低利の不況対策特別資金を創設しております。また、信用保証協会の経営基盤を強化するための出捐金を約一・五倍に増額し、信用保証料の引き下げも継続するなど、保証の弾力化をより進めてまいりたいと考えております。
 さらに県内の各金融機関にあっては、自己の健全な経営基盤の確立を図り、地元企業の支援に積極的にこたえていただき、お互いに信頼できる地盤を確立し、地域経済の発展を担っていただきたいと考えております。このため昨年十二月、銀行協会を初め各金融機関等に対し中小企業金融の円滑化を要請したところでありますが、今後も引き続き要請を行っていくとともに、県制度融資の利用促進を初め、信用保証協会、各金融機関、政府系金融機関等と連携を密にし、県内中小企業者の金融の円滑化に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 十年度当初予算と景気対策の中の二点についてお答え申し上げます。
 まず予算の不適正支出の問題については、昨年八月に改善策を策定し、食糧費等について厳格な執行基準を設定するとともに職員研修を実施するなど、執行面では既にその徹底を図っているところでございます。
 一方、予算面については、予算と実態との間に乖離があったことが不適正な執行に至った原因の一つであったことから、十年度予算の編成に当たっては、前例にとらわれない見直しを行い、予算面での不合理を根本的に是正すべく所要の措置を講じたところでございます。
 具体的には、旅費など行政事務の執行に必要な基礎的な内部管理的経費を標準事務費として枠配分することにより、各部局の主体的判断のもとに所掌する事務事業の実情に即した適正な予算計上と課室間の不均衡是正を図るとともに、現下の財政事情を勘案してマイナス二〇%の要求基準を設定し、一層の節減合理化による総額抑制を図ったところでございます。この結果、例えば知事部局の食糧費及び旅費の額を見ると、九年度当初予算と比較して二二・四%、五億三千九百万円の減額となってございます。
 なお、議員のお話にありました旅費等の条例案についても、この問題を契機に制度面の見直しを行ったものでございまして、日当の加算制度を設けるなど、より旅行実態に柔軟に対応できる制度に改めるものでございます。
 次に公務員倫理の確立については、従来より全職員に対して定期的に副知事名等の通達を出し注意を喚起するとともに、各職場における職場研修や職員研修所における研修を通じ、徹底を図ってきたところでございます。職員研修所における研修については、今後とも公務員としての自覚を新たにし、モラルの高い職員を養成するため、平成十年度より、従来一般研修の中で実施していた公務員倫理研修を拡充するとともに、新たに意識改革研修を取り入れるなど、研修項目、研修内容をより充実してまいる所存でございます。今後とも、一層公務員倫理の確立を図ってまいります。
 なお、さきの予算執行状況調査の結果も踏まえて、幹部職員研修や出納員研修を初めとする各階層を対象とした臨時特別研修を既に実施したところでございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 警察本部長米田 壯君。
  〔米田 壯君、登壇〕
○警察本部長(米田 壯君) 新田議員のご質問にお答えをいたします。
 最近、全国的に少年犯罪が増加して凶悪化している中、本年に入っても中学生等によるバタフライナイフ等の刃物類を使用した凶悪事件が相次いで発生し、大きな社会問題となっており、極めて憂慮すべき情勢にあります。全国的に見ると、昨年中、少年による刃物類を使用した事件は四百三十一件で、前年に比べ百件、三〇%増加をしております。このうち、強盗等の凶悪犯は百六十二件となっております。
 本県においては、本年に入ってこの種事案の発生は見ておりませんが、昨年中は六件で前年に比べて倍増しております。このうち、強盗等の凶悪犯は三件となっております。こうした厳しい情勢に対して、警察といたしましては、県や学校等の関係機関との連携を図りながら、現在、県下約八百四十店の刃物類販売業者に対して販売自粛や使用目的の確認などの協力要請、正当な理由なく刃物類を携帯すること自体違法な行為であることを少年自身や家庭、学校関係者等に啓発するとともに、街頭補導活動等の強化による取り締まり等を推進しているところであります。
 なお、バタフライナイフ等に関しては、県条例に基づき有害刃物類として指定されたと承知しております。
 今後とも、関係機関等とのより一層の連携強化を図りながら、この種事案の防止の徹底を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題九点についてお答えいたします。
 ご指摘のように、中学生による刃物を使った衝撃的な出来事が相次いで発生していることは、まことに憂慮すべき事態であります。こうしたことは、過度の受験競争の弊害、有害情報のはんらん等が相まって生じている問題であり、学校教育はもとより、社会全体の教育力が問われているものと厳しく受けとめております。
 本県では、年間三件程度の対教師暴力が発生しておりますが、神戸市や栃木県のような凶悪な事件には至っておりません。教育委員会といたしましては、本年二月五日通知を出し、子供や保護者との信頼関係の構築、子供が自己を表現し心理的な抑圧を解消できる場の確保の重要性について改めて指導いたしました。さらに今回は、学校内で危険な状況が懸念される場合は、児童生徒の人格、人権に配慮しながら、教育的な指導の一環として、適切に所持品検査等を実施することについても指導してございます。しかしその後、和歌山市の中学校においてご指摘のような事件が起こったことから、事件の再発防止のため、和歌山市教育委員会と各地方教育事務所を通じ、重ねて指導したところであります。今後とも、子供たちの心のサインを見落とさないきめ細かな指導を重視し、子供と真っ正面から向き合った取り組みを大切にし、生命を尊重する心、規範意識、正義感の育成に努めてまいる所存であります。
 次に幼児期からの家庭教育についてでございますが、家庭教育は人間としての基礎、基本を培う最も重要な教育の場であると考えてございます。しかし、近年、核家族化や少子化の問題、また共働き家庭の増加等、家庭環境が大きく変化する中で、家庭の教育力の低下が指摘されているところであります。
 教育委員会といたしましては、こうした状況を踏まえ、今年度、新たに親子が共同でウオークラリーや昔の遊びを体験したり、父親が積極的に家庭教育へ参加する意識を高める事業を実施し、親同士の交流を図るとともに、父親が一層子育てにかかわっていくことの大切さ等について訴えたところであります。また去る二月八日には、初めての試みとして、経済界と教育界による生涯学習フォーラムを開催し、地域や企業等にも家庭教育に対する理解を広め、父親もゆとりを持って家庭教育に参画していくことの重要性について共通理解を図ったところであります。今後とも、こうした事業を積極的に推進し、家庭の教育力の向上に努めてまいる所存でございます。
 次に、校長のリーダーシップの向上と職員会議の位置づけについてであります。
 生徒の問題行動を初め、さまざまな教育問題の解決が求められている今日、校長は高度なリーダーシップを発揮して学校運営に当たる必要があり、管理職中央研修講座への派遣や校長会、各種研修会において資質の向上に努めております。
 職員会議は、学校教育法第二十八条において「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定められている権限によって、校長の責任と判断に基づき開かれるものであり、校長の職務執行についての補助機関ととらえてございます。こうしたことから職員会議は、職員の創造性や意欲を喚起するとともに、教育の方向性とビジョンを明確にしながら、職員の一致した体制をつくる上で校長が強いリーダーシップを発揮すべき場であると考えており、今後とも指導してまいります。
 次に、中学校教育の改善等についてであります。
 ご指摘の定期テストについては、ふだんの学習状況や単元ごとの小テストなどとあわせ、生徒の理解度や到達度を多面的に把握し、子供のよさを総合的に評価するとともに、指導の改善を図るための資料として重要な教育的意義を持つものと考えます。中学校教育については、生徒の能力、特性、興味、関心等の多様化が進む時期であることを踏まえ、一人一人の個性を生かすための教育を一層進めていく必要があります。このため、チームティーチングやグループ学習などの指導方法の改善を図るとともに、選択履修幅の拡大を図っているところであります。子供たちは、勉強の得意な子供、スポーツが得意な子供、正義感や公正さ、他人を思いやる心が人一倍強い子供など、実に多様であります。各学校においては、家庭や地域社会とともに特色ある教育を展開し、こうした子供たちの多様な個性を伸ばし、自己実現を支援することが中学校教育を活性化し、子供の問題行動の防止にもつながるものと考えます。
 次に総合学科についてでありますが、議員ご指摘のとおり、こうした学校においては、生徒一人一人が自信と誇りを持って学習やクラブ活動に生き生きと取り組むなど、学校の活性化が図られてきてございます。
 今後の総合学科の設置については、地域の実態等を勘案し、全県的な適正配置を視野に入れながら進めてまいりたいと考えます。
 全日制普通科高校の活性化については、教育委員会といたしましても大きな課題であると認識しております。ご指摘の各学校においては、現在、新しい学科の設置や単位制の導入など、さまざまな研究、検討を行っているところであります。今後とも、こうした学校の取り組みを積極的に支援し、それぞれの学校にふさわしい特色づくりを推進してまいる所存でございます。
 次に学校外における体験活動等の単位認定についてでありますが、従前から定時制、通信制課程において企業等での実務経験を職業科目の単位として認定しております。また本年度から、全日制課程を含め、情報処理技術者認定試験や英語検定等に合格した場合、これを単位として認定できることとしております。今後とも、生徒の学習意欲の向上や個性の一層の伸長、生涯学習の推進の観点から、専修学校における学習成果の認定やボランティア活動等の単位認定についても検討を進めてまいります。
 中高一貫教育については、これまで本会議でお答えしておりますとおり、受験競争の低年齢化や設置者に係る問題などさまざまな課題があることから、慎重に対応する必要がございます。このため実践研究については、現在本県で独自に実施している中学校と高等学校との連携推進事業をさらに拡充し、これとの関連性に留意するとともに、今議会に予算をお願いしているきのくに学校教育振興協議会において県民の幅広い声を聞きながら、今後研究課題にしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 38番新田和弘君。
○新田和弘君 二点だけ、簡潔に要望させていただきたいと思います。
 まず第一点目は金融の安定化ということで、国では金融安定化二法が制定されました。そして、都銀十八行と地銀三行が手を上げて、自己資本比率を高めるための対応をとったところでございますが、他の地方銀行並びに県内を含めての関係機関は手を上げなかったということでございます。和歌山県にとっては、和歌山県内の金融機関の安定ということが県経済の活性化の中でも大変大事な視点であろうかと思います。そういった意味で、手を上げなくても金融機関が安定しておるということであれば県民の皆さんは大変安心できるわけでございますが、そうでないとするならば、せっかく法律をつくって公的資金が導入されても効果がないということであれば、極めて遺憾なことでございます。県内の金融機関の安定化のために、ぜひとも万全の措置を要望いたしておきたいと思います。
 二点目に、ナイフ等を持った事件が続発をしております。昨日も、埼玉県の東松山市の東中学校で生徒同士が口論の結果、不幸にして生徒さんが命を落とすという事件が起こりました。
 先ほどの答弁にもございましたように、持ち物検査等について学校長にゆだねるという形をとっておるわけでございますが、持ち物検査という視点ではなくして、追い詰められた子供たちが凶器を持って立ち向かう、また暴力を持って立ち向かうという解決であれば、それは力によって物事を解決することにほかならないと思うのです。教育の場で、ぜひ話し合いでもって、対話でもって困難な物事を解決するんだということを指導する中で、凶器を持たせない指導をぜひやっていただきたいことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で新田和弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後零時十一分散会

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