平成9年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(井谷 勲議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番井谷 勲君。
  〔井谷 勲君、登壇〕(拍手)
○井谷 勲君 議長のお許しを得ましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 紀泉百万都市圏構想実現のための紀北地域の問題についてお尋ねいたします。
 まず初めに、京奈和自動車道に関しての道路問題についてでございます。
 京奈和自動車道は、京阪神都市圏の外環状道路の一翼を担う路線として関連地域相互の連携強化を図るとともに、住宅開発や産業立地等に伴う新たな交通需要に対応する路線であり、さらに西日本の広域経済文化圏の形成に向けた太平洋新国土軸の早期実現に資する道路として早期整備が望まれております。このうち、橋本道路については平成元年度に事業化され、用地買収が進み、一部工事にも着手されております。一方、紀北東道路についても平成五年度に事業化され、都市計画決定のための諸調査が実施されていると聞いております。一昨日は佐田議員から、紀北東道路並びに国道二十四号岩出バイパス打田町黒土地点から那賀郡東部への東伸計画の必要を強調されておりますので、私は省略いたします。また、本年度より打田町から和歌山市間の紀北西道路十二キロが事業化され、事業着手に向けた諸調査が進められていることと思われます。
 このように、京奈和自動車道については早期実現に向けて着々と進められているところですが、一般的に高速道路は、単に人や物を速く運ぶという役割だけではなくその沿線地域の産業活動等を促し、特にインターチェンジ周辺においては他府県でも工場等の立地が進んでおり、地域社会に与える影響は大変大きいものがあります。
 そこで、南麓サイエンスパーク、桃山町の工業団地等への新たな企業誘致を促し、関西国際空港の全体計画を見据えた地域振興の発展に寄与するとともに、知事が提唱されている紀泉百万都市圏構想の実現のためにも、関西国際空港や阪神圏と近接した岩出町根来地域の県道泉佐野岩出線周辺に京奈和自動車道紀北西道路へのフル規格のインターチェンジが必要であると考えております。土木部長の所見をお伺いいたします。
 続きまして、那賀地域への企業誘致の促進についてであります。
 全国的に長引く消費の低迷、また金融不安への懸念等により景気の先行きについては大変危惧されているところですが、このような中で政府においては先月十八日、二十一世紀を切り開く緊急経済対策を策定しております。この対策には、規制緩和、土地の流動化、中小企業対策などの七分野百二十項目にわたる施策を盛り込んでおられます。今回の特徴を一言で申しますと、短期的な需要を創出するよりも、中長期的な視点に立って民間の活力が発揮できるよう我が国の経済構造改革を推し進めることに重点を置いていることであります。新聞紙上などにも、この対策では景気に対して即効性がないと評判は芳しくありませんが、構造対策への取り組みとしては一部に評価する向きもございます。
 さて、このような経済構造改革への対応は、当然本県にも求められるものであります。構造改革の背景となっている時代認識、つまり少子化・高齢化社会の到来、価値観の多様化、また経済の国際化、情報化の進展等々の社会経済環境の変化はまさに二十一世紀に向かっての大きい奔流であり、本県はその流れを的確にとらえ、県勢の浮揚を図っていかねばなりません。特にこの対策で指摘されたところでもありますが、今や、経済の国際化を背景に企業が最適な事業環境を求めて国を選ぶ時代になってきております。海外へ進出する企業が増加する一方、国内の立地件数は低迷しております。
 このように全国的にも厳しい状況にある中、本県の企業誘致もこの数年芳しくありませんが、それでも昨年は打田町の北勢田ハイテクパークにコテック、また本年もかつらぎ町の西渋田工業団地に松阪興産の誘致がなされております。これは、県当局を初め関係機関の努力のあらわれと考えております。しかしながら、本県が二十一世紀に向けて大きく飛しょうするためには、厳しいことは重々理解しておりますが、企業誘致についてはより強力に推し進める必要があるのではないでしょうか。
 紀の川流域は、県の第四次長期総合計画において、関西国際空港への近接性を生かした新たな開発拠点として、産業、研究開発、学術などの機能の集積を目指す紀の川テクノエリア、紀の川テクノゾーンに位置づけられております。この長期計画が策定されて既に十一年が経過しておりますが、この間に、念願でありました関西国際空港が平成六年に、また研究開発・学術機関として近畿大学の生物理工学部が平成五年に開学しており、さらに京奈和自動車道を初めとする交通網の整備も進みつつあります。
 このような中、特に那賀地域は発展への基盤が着実に形成されているわけですが、先ほど申しましたとおり、全国的にも厳しい状況にある中、どのように当地域への企業誘致を促進していくのか、商工労働部長にお尋ねいたします。
 次に、第三点として那賀地域の農業問題についてであります。
 日本経済の先行きについては悲観論が次々に勢いを増すという情勢になっておりますことは、ご承知のとおりでございます。例えば、この十月末には長期国債が一・六%を下回り、世界でも最低の金利水準を記録しております。また、マスコミ報道に見られる山一証券の自主廃業を初めとする大手金融機関の崩壊に代表される金融市場の混乱等々、数え上げれば切りがないのであります。このことは、私たちが今迎えようとしている時代に対して最もふさわしい処方せん、政策が十分に用意されていないことから発しているのではないかと考えております。しかし、だからといって根拠のない悲観論に陥ってしまうと、百害あって一利なしであります。こうしたことは、過剰な世論の動向にも大いに責任があることであろうと思います。ともすれば極端な見方や過度の単純化したモデルに走りがちな私たちの気質にも一因があるものであります。
 あのオイルショックのときを思い出します。もはや対応すべき技術なしという悲観論が支配されていた中、私たちが省エネ技術の開発で乗り切ったことは記憶に新しいところでございます。技術の現場では、不易と流行の二つの分野が相互に補完し合いながら新しい技術を開発しているのであります。不易の部分を見ず、一時の流行だけを追う論議は現場を離れた観念論に陥りやすいことは、歴史の証明するところであります。
 農業にも同様のことが当てはまるのではないでしょうか。農業問題を語るまくら言葉として、これまでどれだけ多く「厳しい」、「非常に厳しい」という言葉が使われてきたのでしょうか。将来に不安を持った悲観論があちこちと聞かれるのであります。確かに一般論として、現状を認識するとその情勢は厳しいということでございますが、オレンジ・果汁の自由化を初め、最近では米の部分開放や農林水産物の関税引き下げ等を内容としたウルグアイ・ラウンド農業合意などに見られる国際化の進展とともに、国内に目を移しますと、緊急課題である財政構造改革を推進する一方で、昭和三十六年制定の農業基本法にかわる新たな基本法の制定に向けて本格的な検討が開始され、食糧、農業、農村の指針づくりに取り組まれつつあります。しかし、こうした情勢の変化、すなわち流行の部分に目を向け過ぎ、農業本来の持つ価値といいますか、変わらない不易の部分を忘れがちなのではないでしょうか。
 本県の農業生産は、自然との共生を前提とし、適地適策を基礎に営々と築かれて引き継がれてきた先人の技術がうまくかみ合わされ、そこに四百年の歴史と伝統を持つ有田ミカン、また桃、カキ、梅等の日本一の銘柄産地が形成されてきたことは論をまたないのでございます。いま一度原点に立ち返り、一時の豊凶に左右されることなく不易の部分に目を向け、もっと農業に自信を持っていいのではなかろうかと考えるのであります。
 地域には、地域に適した作目があります。そして、地域に根差した技術があります。これを忘れてはいけないのであります。と同時に、時代は動いております。流行の部分にも心しなければなりません。安全や健康を優先される消費者ニーズの台頭、農業生産の担い手の高齢化や後継者不足に対応した生産基盤の整備等々、多くの課題に機敏に対処していく必要があります。二十一世紀の本県農業を展望するとき、不易と流行の分野がそれぞれ補完し合うことができれば明るい未来が開かれてくるのではないかと私は確信します。
 そこで、本県農業の縮図と申しますか、那賀地域の農業について考えてみることにします。
 那賀地域は、京阪神の大消費地に隣接する地の利に恵まれた中で、果実、野菜、花、畜産等の各部門において多様な振興が積極的に図られてきましたが、景気の低迷や都市化の進展とも相まって農業生産は厳しい環境に置かれているのではないでしょうか。例えば果実につきましては、昨年は地域特産の桃、カキともに高価格で推移し、農業経済もある程度潤いがあったのではないかと私は思います。ことしはどうでしょうか。気候に恵まれ、順調な生育を見せておりますが、夏場の降雨などがあり、九月下旬の極わせミカンでは糖度が低く、近年にない低価格となっております。
 国、県では、こうした情勢に対処し、緊急需給特別対策として温州ミカンの市場隔離を発動するなど積極的な取り組みが行われておりますことは、高く評価をいたします。しかし、品質面のことですので、今後その価格回復は至難のわざではないかと思われます。積極的な販売推進を初めとする関係機関の一体となった取り組みを切望するものであります。またカキにつきましても、大幅な生産増ということもあり、やはり厳しい価格情勢にあります。農業にとってはダブルショックであり、農家の嘆きが聞こえてくるようです。
 私は、農家が手塩にかけて育ててきたものが今年のような価格で推移するときの心情は、痛いほどよくわかります。しかし、農家にも自信を持ってもらいたいものであります。将来を見据え、適地適策を基本に地域の実態に合わせながら、時代の先を読んで農業経営を構築していただきたいと心から願うものであります。
 松下幸之助氏の言葉の中に「道」と題したものがあります。その中で、「自分には自分に与えられた道がある 天与の尊い道がある 広い時もある せまい時もある のぼりもあれば くだりもある 思案にあまる時もあろう しかし 心を定め 希望をもって歩むならば 必ず道はひらける 深い喜びもそこから生まれてくる」と言っております。
 農家の自助努力に期待しながら、農林水産部長にお尋ねいたします。
 今後も大きく変化を続けるであろう情勢の中で、二十一世紀に農家が自信の持てる那賀地域の農業の展開方向をお示しいただきたいものです。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの井谷勲君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 井谷議員のご質問にお答えいたします。
 京奈和自動車道のうち、紀北西道路に関するご質問でございます。
 京奈和自動車道紀北西道路は平成九年度に新規事業化されたところでありまして、現在、計画決定に向けた調査が建設省において鋭意進められているところでございます。県といたしましては、広域ネットワークの形成等の観点から、県道泉佐野岩出線へのインターチェンジ設置を国に対して要望してまいる考えでございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長日根紀男君。
  〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 企業誘致の促進についてのご質問にお答えいたします。
 県といたしましては、県内それぞれの地域の持つ特色や魅力を生かした企業誘致に積極的に取り組んでいるところでございます。
 那賀地域につきましては、議員のお話のとおり、北勢田ハイテクパークあるいは桃山第二工業団地を初めとする工業団地や道路交通網の産業基盤の整備も着々と進展し、また至近距離に関西国際空港も位置していることから、国際的な事業展開を図る企業にとっても大変魅力的な地域になってきているものと考えております。
 さらに、高等教育研究機関である近畿大学生物理工学部、和歌山大学システム工学部の開設、また県工業技術センターや県デザインセンターなどの整備によりまして、企業に対する研究開発の支援体制も着実に整ってきております。
 県としましては、このような地域が企業の立地に際してハード・ソフト両面においてすぐれた事業環境を有することを最大限に生かしてまいりますとともに、全国でも高水準な優遇制度をもって積極的に企業誘致の促進を図ってまいる所存でございます。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
  〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 那賀地域における農業の展開方向についてのご質問でございますが、那賀地域は、将来、紀泉百万都市圏として発展が見込まれる中で、進取の気性に富んだ農家による養液栽培など、集約的な農業も見られるところでございまして、こうした立地条件等を生かした、より収益性の高い農業が展開できる地域であると認識してございます。
 県では、将来に向けた力強い農業を切り開いていくため、二十一世紀農業振興計画を策定し、基本的な振興方向として、技術革新、高品質、安全・健康を一層推進する三H農業の展開を目指すこととしてございますが、那賀地域につきましては、先人たちが築いてきた技術力を背景に、地域の特性を生かした桃、カキ等の落葉果樹や緑化木をベースとしながら、新技術を導入した軟弱野菜や需要の拡大が見込まれる花壇苗等も取り入れた、都市と共存した多様な農業の展開に努めてまいりたいと考えてございます。
 また、県といたしましては、こうした農業生産の核となる中核農家が自信を持って取り組めるよう、高い農業所得の実現を目指した経営モデルとして桃を中心とした複合経営なども示してございまして、これら実現のため、ウルグアイ・ラウンド国内対策を有効に取り入れるなど、積極的な施策展開に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(木下秀男君) 再質問がございませんので、以上で井谷勲君の質問が終了いたしました。

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