平成9年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(新島 雄議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 10番新島 雄君。
  〔新島 雄君、登壇〕(拍手)
○新島 雄君 おはようございます。
 大変暗い話題が多い昨今でございますが、明るく質問をさせていただきたいと思います。
 二十一世紀まで残り千百十七日、長野オリンピックまで五十八日、ワールドカップ・フランス大会まで百八十一日、ことしも残すところあと二十日となりました。
 こんな言葉があります。「夢なき者に成功なし」──夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、すなわち夢なき者に成功なし、であります。
 来年度予算の編成や本県の長期総合計画に夢はありますか。生活は質素に、心は豊かに、財政は少なくとも夢多き予算編成を望み、景気対策について質問をいたします。先輩議員からも質問がありました。重複する部分も多いと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 バブル崩壊後の不景気は平成五年十月に底を打ち、翌月から上昇を続けていると、つい最近まで発表されてまいりました。本当にそうだったのでしょうか。皆さんが肌で感じていることと同じでしょうか。高度成長期の経済成長を望んでいるわけではありません。低いレベルでの回復でもよいのです。しかし、国民や企業にとって実感があるでしょうか。何よりも、地方にとっては大変厳しい落ち込みのように感じられてなりません。
 経済企画庁の十一月の月例報告は、景気回復の基盤は失われていないものの足踏み状態であると発表され、十二月には「景気回復の基盤」という言葉さえなくなりました。最近、特に目立つことですが、企業の方や友人との話の中で、「景気悪いなあ、何とかしてくれよ」、そんな言葉をよく耳にいたします。昨年、阪和銀行に一部業務停止命令が出て以来、金融不安が続く中、こんなことをおっしゃる方もいらっしゃいました。今までは、銀行からお金を借りる場合、決算書を出せ、担保は、また、保証協会は、返済計画はと、大変な手続を経て希望額よりも少ないお金を借りるのであります。これからは、銀行に対してお金を預ける場合、銀行から決算書を見せてもらわなければならない時代になったな、そんなことをおっしゃっておりました。私も、そうなってきたのかな、そのように実感をいたしております。
 十一月十八日、政府は百二十項目に及ぶ緊急経済対策を発表いたしました。つい先日、十兆円云々という梶山発言もあったようですが、この経済対策の中身は、需要が期待できる規制緩和をかなりきめ細かく盛り込んだ、民間活力を期待した対策であります。従来ですと、公共事業の追加や減税を中心とした財政主導のものでありました。しかし内容は、大都市圏を中心とした対策のように思えてなりません。地方にどれだけ効果があるのでしょうか。県内景気は、経済企画庁の報告に比べ、もっともっと厳しい状況であると実感いたしております。
 十月の県内企業倒産件数は、過去最高となりました。また、現在の景気は、大企業の輸出に支えられたものであり、消費税の引き上げ反動や戦後最低水準の預金金利などにより消費の落ち込みを招き、地場産業にとっては非常に厳しい現状であります。現在、国も本県も、厳しい財政状況の中、来年度に向けての予算編成の最中であります。これからの活力ある和歌山を創造するために、県を挙げて積極的に景気対策に取り組むべきときであります。
 そこで、知事にお伺いいたします。県として来年度予算の中で景気対策をどう位置づけ、どのような予算を組もうとしているのか、また重点はどこに置いておられるのか。来年は、南紀熊野体験博の準備の年でもあります。関連事業も含め、来年度予算で検討されている景気対策の具体的事業についてもご答弁願います。
 また、ビッグバンを控え、銀行は自己資本比率の改善に向かって貸し渋りが起こっていると言われております。担保評価、経営内容のチェックも大変厳しくなっているとのことであります。こうした状況では意欲的な中小企業やベンチャー企業の成長もつぶされていくのではないかと、大変危惧をいたしております。中小企業に対する金融対策をどのように考えておられるのか、商工労働部長にお尋ねいたします。
 最後に、土木部長にお尋ねをいたします。
 建設業の比重の大変高い本県におきましては、来年度の国の公共投資が七%削減されることが大きな打撃であります。建設業の現状と来年度に向けての対策を答弁願います。
 以上で景気対策についての質問を終わり、次に移ります。
 新たな社会保障制度となる介護保険関連法について、お尋ねをいたします。
 十二月九日、衆議院本会議で成立、新たな介護システムが平成十二年より導入されることになりました。高齢化社会を本格的に迎えるに当たり、介護を家族など特定の人に押しつけるのではなく社会全体で考えていくという国民の合意形成のためには必要な法律であると考えます。昨年以来、幾多の変遷を経て成立したものと伺っております。
 介護保険は、四十歳以上の国民が保険料を負担し、各市町村が運営主体となるものであります。介護を身近なものとして抱えておられる方々にとっては歓迎の声がありますが、反面、負担金の問題や内容、介護認定基準などにおいて不安の声があるのも事実であります。また、第二の国保となり、地方自治体にとって負担だけがふえることにならないかと心配する首長の方も少なからずおられます。財政状況が厳しい中、この法律を実のあるものにするためには、まず二〇〇〇年までに全力で基盤整備に取り組まなければなりません。そして、厚生省や県がどこまで情報を公開し、国民とともに情熱を持って育てていくのか。
 また、従来の措置型行政から利用者本位の行政への移行について、住民や行政の意識改革が絶対必要となります。法の細部につきましては今後政省令の中で明らかにされると思いますが、国民が介護にひとしく関心を持ち、心配りをするため、何とかすばらしい内容のものとなるよう祈っている者の一人として、何点かについて質問をいたします。
 まず、介護保険のキーポイントと言える要介護認定についてであります。介護を考えるとき、その家庭の事情や緊急性もあり、また不要認定された場合なども含め、迅速にかつ正確に作業ができるのかどうか、お尋ねをいたします。
 次に、厚生省が目標として定めている必要な基盤整備については目標が達成されても、介護の需要に対して十分カバーし切れないのではという疑問であります。全力で基盤整備に取り組むとしても、制度導入時には十分なサービスが受けられないことにならないかということであります。小泉厚生大臣も、保険あって介護なしとならないよう準備、議論をすると決意を見せておりますが、そこで民間の力を介護の現場にもっと導入できないかということであります。コストダウン、サービスアップの観点からもお考えいただき、導入するとすればどのような方法が考えられるのか、お答えいただきたいと思います。
 運営主体となる市町村の立場から、お尋ねいたします。これまでの経験から、市町村の方では人的、財政的にも大変負担が大きいとして不安感がどうしてもぬぐい切れないようであります。この点についてどのような支援策があるのか、お答えください。
 また、市町村を指導する立場にある県としてどのような取り組みをされてきたのか、その中で市町村の要望などを聞いてどのように処理してこられたのか、お答えいただきたいと存じます。保険料が今後どのように推移していくのか、低所得者対策はどうなっているのかについてもお答えください。
 最後に、この制度を県民が正確に理解し、認識することが大切であると考えます。啓発に向けた取り組みについてお考えをお示しいただきたいと思います。
 すばらしい答弁を期待し、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの新島雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 新島議員にお答えをいたします。
 平成十年度予算についてでありますけれども、たびたびお答えを申し上げておりますように、本県財政は他の府県と同様に、大変厳しい状況に直面をしております。しかしながら、お話にございましたように、その中にあっても将来にわたって活力のある県勢を維持向上させていくためには、そのベースとなる経済活動が活性化し、活力を取り戻すことが何よりも重要であると認識をしてございます。
 十年度予算につきましては目下作業中でございまして、まだ知事査定までには至っておりませんけれども、県経済の活性化を最重点の柱の一つに据えて対応してまいりたいと考えております。具体的には、現下の経済情勢に即応した融資制度の充実などの中小企業対策に万全を期しますとともに、次の時代を先導する創造的企業の育成、あるいは新産業の創出などへの支援、既にその整備が完了しておりますけれども、工業技術センターあるいはデザインセンターなどの研究開発機能を活用して地場産業に対する技術支援も行っていきたい。また、来年予定をしております第一回CIOFFアジアこどもフェスティバルの開催、また海や川の全国フィッシングフェスティバル、さらに各種大会の本県での開催、南紀熊野体験博などの関連事業などにつきましても積極的に取り組んでいきたいと考えてございます。
 県経済に新たな活力を導き出すための布石となる産業基盤の整備を初め、さまざまな施策にも周到、着実な手を打っていきたいと考えてございまして、県民の皆様方や企業の方々が将来に対して希望の持てるような施策展開を、議員お話しのように、私もまた夢を持って強力に推し進めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長日根紀男君。
  〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 平成十年度の予算編成における中小企業に対する金融対策について、お答えいたします。
 議員お話しのように、景気の現況は足踏み状態となっております。また、最近の貸し渋り懸念に対応してまいりますために、十一月二十六日に実施した緊急調査におきまして、金融機関の融資条件について規模の小さい企業ほど厳しくなっているというふうな調査結果も出ております。私も、十二月一日に銀行協会を初め主要な金融機関を訪問いたしますとともに、県内金融機関に文書でもって迅速かつ適正な融資を強く要請したところでございます。また、中小企業対策連絡会を十二月十六日に開催することとしておりまして、各金融機関を初め、経済団体、政府系金融機関等とも連携を図るなど、中小企業の金融の円滑化に取り組んでいるところでございます。
 平成十年度予算におきましては、知事の答弁にありましたように、現下の経済情勢に即応した融資制度の充実を図ってまいる所存でございますが、特に利用度の高い振興資金の融資枠の拡充、また意欲のある企業家やベンチャー企業支援について充実を図りまして、県内中小企業者からの資金需要にこたえてまいりたいと考えております。
○議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 新島議員の、建設業の現状と来年度に向けての対策についてのご質問にお答えいたします。
 本県における建設産業は、県内総生産──GDPですけれども──の一〇・四%、就業者数におきましても一〇・〇%を占めておりまして、また住宅、社会資本整備の担い手として重要な役割を担っております。県といたしましては、このようなことからも、建設業を基幹産業として認識し、その育成に重点的に取り組んでいるところでございます。
 来年度に向けての対策ということでございますが、先刻、議員の方からもお話がありましたように、先月二十八日、財政構造改革法案が成立いたしましたことにより、来年度の公共事業費は本年度当初予算比七%減以下──ちょっと表現がややこしいですけれども、七%よりもっと下げるという趣旨です──とされることとなり、本県においても厳しい状況下となっておりますが、これまでにも県内建設業者の育成のため、事業内容等を踏まえた分離分割発注や公募型指名競争入札における参加資格条件の緩和等、受注機会の確保に努めているところでございます。
 厳しい状況のもと、土木部といたしましてはより積極的に予算の獲得に努めるとともに、入札制度の見直しや事業の平準化の推進に努める等、県内建設業界の健全な発展に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 介護保険についての六点にお答えいたします。
 まず認定の問題につきましては、平成八年度から市町村においてモデル事業を実施しているところでありまして、平成十年度には全市町村で実施することとなっております。その結果を踏まえ、国においては公平な介護認定が行われるための客観的な全国統一基準が作成されることとなっております。また、緊急性を要する場合におきましても、認定手続前にサービスを受けるための特例制度も考えられているところでございます。
 次に、民間活力についてでございますが、在宅部門での民間参入につきましては、既に農業協同組合が参加する等の実態がございます。介護保険が始まりますと、一定の基準を満たしている事業者は県の指定を受けることにより介護サービスの提供者となれるなど、民間参入がさらに促進され、介護需要への対応がなされていくものと考えております。
 次に、市町村に対する財政支援策につきましては、介護認定等に係る事務費への国からの助成、給付費増や保険料収納率の低下に対応するための財政安定化基金の県への設置などの支援策がございまして、市町村を保険者とする一方、国、県等が重層的に支える制度となってございます。また、市町村に対しては、介護保険制度がスムーズに導入されるよう、あらゆる機会を通じ、市町村長を初め、市町村関係職員に対し説明を行ってきたところであり、また、その際意見のあった内容につきましては国に対しても要望を重ねてきたところでございます。
 次に、保険料の推移についてでございますが、厚生省の試算によりますと、保険料月額で平成十二年度約二千五百円、十七年度約二千八百円、二十二年度約三千五百円と推定されています。また、低所得者の方に対する負担が過重とならないための制度として、保険料については所得段階別を、サービス利用時の一部負担については高額介護サービス費を設定し、自己負担の軽減を図るとともに、施設入所の場合の食費負担につきましても軽減措置が講じられることとなっております。なお、生活保護の対象となっている方については、生活保護法により適切に手当てされることとなっております。
 最後に、いずれにいたしましても、今回のこの制度を広く県民の皆様に正しく理解していただき、意識を高めていくため、あらゆる情報提供に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 10番新島 雄君。
○新島 雄君 ご答弁をいただきました。
 景気対策については、なかなか難しい問題でありますし、また、現時点では答えにくいことも多々あろうかと思います。その辺はよく理解をしているつもりでございます。
 そんな中で、知事の答弁の中に、県経済の活性化を再重点の柱に、また中小企業対策に万全を期すというご答弁がありました。決意のあらわれと受け取らせていただきます。県民や中小企業はせっぱ詰まっております。どうか今の決意を何とか来年度の予算にご反映をいただくよう、よろしくお願いをいたします。
 また、介護保険につきましては、生まれたばかりの法律であります。何事も、準備八割という言葉があります。これからの二年間が大変重要な時期となるものと考えております。どうか市町村と協力してこの法律を大きくすばらしい社会保障制度に育てていただきたい、そのように要望を申し上げて質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で新島雄君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(木下秀男君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十六分休憩
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