平成9年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

議 事 日 程   第四号   平成九年十二月十一日(木曜日)
                午前十時開議
  第一 議案第百二十四号から議案第百四十五号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第百二十四号から議案第百四十五号まで(質疑)
   二 一般質問
出 席 議 員(四十二人)
     1  番    大    沢    広太郎
     2  番    木    下    善    之
     3  番    小    川         武
     4  番    吉    井    和    視
     5  番    下    川    俊    樹
     6  番    井    出    益    弘
     8  番    門         三佐博
     9  番    永    井    佑    治
     10  番    新    島         雄
     11  番    向    井    嘉久藏
     12  番    佐    田    頴    一
     13  番    和    田    正    一
     14  番    阪    部    菊    雄
     17  番    谷         洋    一
     18  番    山    下    直    也
     19  番    高    瀬    勝    助
     20  番    松    本    泰    造
     21  番    堀    本    隆    男
     22  番    宇治田    栄    蔵
     24  番    橋    本         進
     25  番    神    出    政    巳
     26  番    玉    置    公    良
     27  番    上    野    哲    弘
     28  番    東    山    昭    久
     29  番    尾    崎    要    二
     30  番    野見山         海
     31  番    木    下    秀    男
     32  番    町    田         亘
     33  番    中    山         豊
     34  番    井    谷         勲
     35  番    鶴    田    至    弘
     36  番    森         正    樹
     37  番    村    岡    キミ子
     38  番    新    田    和    弘
     40  番    森    本    明    雄
     41  番    長    坂    隆    司
     42  番    冨    安    民    浩
     43  番    飯    田    敬    文
     44  番    中    村    裕    一
     45  番    松    本    貞    次
     46  番    大    江    康    弘
     47  番    和    田    正    人
欠 席 議 員(五人)
     7  番    藁    科    義    清
     15  番    西    本    長    弘
     16  番    馬    頭    哲    弥
     23  番    宗         正    彦
     39  番    平    越    孝    哉
説明のため出席した者
     知 事     西    口         勇
     副知事     山    下         茂
     出納長     高    瀬    芳    彦
     知事公室長   野    見    典    展
     総務部長    中    山    次    郎
     企画部長    藤    谷    茂    樹
     生活文化部長  中    村    協    二
     福祉保健部長  小    西         悟
     商工労働部長  日    根    紀    男
     農林水産部長  平    松    俊    次
     土木部長    長    沢    小太郎
     企業局長    佐    野    萬瑳義
     教育委員会委員長
             山    本         昭
     教育長     西    川    時千代
     公安委員会委員 中    尾    公    彦
     警察本部長   米    田         壯
     人事委員会委員長
             若    林    弘    澄
     代表監査委員  宮    市    武    彦
     選挙管理委員会委員長
             谷    口    庄    一
     以下、各部局次長・事務局長・財政課長
職務のため出席した事務局職員
     事務局長    西    畑    彰    久
     次  長    前         晴    夫
     議事課長    佐    竹    欣    司
     議事課副課長  島         光    正
     議事班長    松    谷    秋    男
     議事課主査   川    崎    良    雄
     議事課主事   大    浦    達    司
     総務課長    塩    路    義    和
     調査課長    湊         孝太郎
 (速記担当者)
     議事課主任   吉    川    欽    二
     議事課主査   鎌    田         繁
     議事課速記技師 中    尾    祐    一
     議事課速記技師 保    田    良    春
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  午前十時二分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
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  【日程第一 議案第百二十四号から議案第百四十五号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(木下秀男君) 日程第一、議案第百二十四号から議案第百四十五号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 40番森本明雄君。
  〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 おはようございます。
 順次、質問を進めてまいります。
 まず、総合学科の拡充と進路開拓についてであります。
 本年の三月に、総合学科の初めての卒業生が全国で七校、本県でも一校が卒業式を迎えました。本当に新たな高等学校教育の一ページが開かれたと思います。大変人気が高い総合学科でございますが、ぜひ進路に関しても県教委として積極的に道を開拓していただきたいと思います。
 いろいろなデータによると、全国的に約七〇%の生徒が進学を希望しているようであります。平成八年度末における国立大学での総合学科卒業生の特別枠を設けているのは一大学で、募集人員五人、私立大学で四大学、六十五人となっています。ことしで全国の総合学科の高校を合わすと七十五校、単純計算しても、来年、再来年と、その十倍に卒業生がふえてきます。
 文部省は、この特別枠につきまして、各国公私立大学に対して、入試選抜について留意してもらいたい事項あるいは配慮してもらいたい事項ということで、入試の指針というものを募集要項という形で出していますが、その中で総合学科の卒業生については特別枠ということで特記しています。しかし、まだなじみが薄いという大学関係者の不安があるようで、その点の不安を取り除く努力が必要であります。企業にも同じことが言えます。
 総合学科に関しては、教育評論家などによく言われることでありますが、職業高校の救済策なのか、あるいは進学校でも総合学科への転換が望ましいのかという大きな問題点があります。文部省としては、総合学科を導入したときに、通うことのできる範囲内に一校ぐらいは総合学科をつくっていきたいという一つの指針があったと思います。ということは、進学校でも総合学科への転換が望ましいと言っているものと思います。まさしく、進学校ということは大学進学への道が閉ざされてはいけないわけで、進学特別推薦枠の拡充について文部省や各大学に働きかけていただきたいと思います。また、企業に対し総合学科への認識を深めていただくよう努力を行い、卒業生の就職の開拓を進めていただきたいと思います。見解をお伺いいたします。
 なお、あわせて総合学科の拡充についてもお伺いいたします。
 次に、PCB使用電気機器の学校での管理と処理について。
 今年の春ごろだったと思いますが、鳥取県の私立高校で、教室の天井の蛍光灯から液体が漏れ、中毒事故が起きました。原因は蛍光灯器具のPCBによるものと指摘されていました。鳥取県の教委が県内の県立学校を調査したところ、十四の学校で千三百台使用されていることがわかったと報道されました。PCBは製造中止になって既に二十五年になりますが、たまたま鳥取県は県教委が県内の県立学校を調査したら判明したのであります。
 たしか平成四年だったと思いますが、使用中の、まだ稼働中のPCB使用電気機器を含め、財団法人電気絶縁物処理協会において全部台帳管理をしていると聞いていました。しかし、これは特にPCBの含有量の多い電力用トランス及びコンデンサーのみで、量的に少ないものについてはこの管理台帳には載せていないようであります。PCBは少量であっても大変毒性の強いもので、少量だから許される、こういう問題では決してないはずだと思います。
 昭和四十七年以前につくられた蛍光灯をつける電気器具にPCBを使用したコンデンサーが使用されていますが、今から二十五年以前に建設された校舎にはその電気器具が使用されており、現在も残っているのではないでしょうか。県内の公立学校の管理実態についてお伺いをいたします。
 私はこの問題について、今年改正された廃棄物処理法で、建設廃材の中からコンデンサーだけ除いて管理型に捨てればいいというものではないと思います。PCBは全部保管しなければなりませんし、破壊して処理をするということになっています。従来の処理方法と今後の処理方法についてお伺いします。
 なお、長期保管に伴うリスクの高まりに対する適正な処理方法の確立が必要だと思います。したがって、情報の適正な提供と基準の設定など適切なシステムの構築を図るべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。
 次に、スクールカウンセラーの諸問題についてであります。
 スクールカウンセラーは、平成七年度にスタートいたしました。今、スクールカウンセラーの育成、人員確保が問題になっています。と同時に、現場においては非常に期待感が大きく、うちの学校もうちの学校もという要望が多いと思います。
 スクールカウンセラーの成果としては、一つは教師たちにとって、スクールカウンセラーの指導を受けることで、子供たちのさまざまな悩みに応ずるに当たってこれまでに比べてはるかに安心感、あるいは自信を持って接することができる、保護者については、保護者たちもスクールカウンセラーの指導を受けることがあるわけで、自分の子供の、例えば登校拒否といったものに対する見方あるいは理解というものについても、これまでと違った慈養を深めた、精神的にも余裕を持って対処できるようになった、子供たち自身についても、人間関係のつまずき等から登校拒否となった子供たちがカウンセラーとの相談を通して登校が可能になる、あるいは進級、卒業という形でその成果が上がっているようであります。
 一方、課題も幾つかあるようであります。この事業が一週間に二回、一回当たり四時間という積算で行っていることで、時間的な制約からくる不十分さをスクルーカウンセラーの方々が感じているようです。また、二年間の研究期間が終わった後どうなるのかといった不安もあるようであります。さらに、教師とスクールカウンセラーの方々との間で、子供たちについてのさまざまな情報が入りますが、そういった情報をどのような形で交換し合っていくのか。これまで各学校の教師が担当していたカウンセラー部分をスクールカウンセラーが担当するということで、教師とスクールカウンセラーとの役割分担あるいは連携についてまだ不十分なようであります。スクールカウンセラー導入の成果と課題、そしてその課題克服の取り組みについてお伺いいたします。
 スクールカウンセラーは、臨床心理士の資格などの条件があり、対象となる人材が非常に少なく、適切な学校に当てはめるのが困難になりつつあります。したがって、人材確保がこれから非常に大きな問題になってくるのではないかと思います。
 全国的に見て、スクールカウンセラーの確保については、平成八年度では五百五十三校に配置され、うち九〇%が臨床心理士の資格を得た方々、その他の学校には精神科医や大学の教官等で子供の心の問題に対して高度の知識、技術を持った方々が配置されている状況であります。本年度は一千六十五校に配置、現在、臨床心理士は約五千人、ただ地域的な偏在等があります。県内での臨床心理士の配置状況と、今後ふえる要望に対応する育成確保の取り組みについてお伺いします。
 今日まで確かにスクールカウンセラーは倍々ゲームでふえてきましたが、例えば、全国に公立の小学校二万四千校、中学校一万五百校、高等学校は四千百校。県内でも、公立小学校三百四十九校、中学校百四十七校、高等学校四十七校、盲・ろう・養護学校十校、合計五百五十三校。現在、全国で臨床心理士約五千人、精神科医等の人を加えても、全校に配置するだけのマンパワーがいるかどうかというのは非常に心もとないと思います。スクールカウンセラーを今実験的に導入していますが、これからのフォローアップをどうするかというのは、単にスクールカウンセラーの学校への配置をふやしていくということもさることながら、スクールカウンセラーに頼らない何か仕組みができないものか。現場の教師は、第三者が校内に入って来ることに対する期待と不安があるようであります。できるならば、スクールカウンセラーと連携をとりながら、生徒指導に関しても意見をいただきたいという考えも持っているようであります。
 ところが、そこまでに発展しますと、学校の教育現場での生徒指導のあり方に関して、スクールカウンセラーは現場を実際には知らないわけで、心理的な面での専門家ではあっても、学校の教育現場に関してはまさしく初心者であります。そうした点、現場の教師との連携を深めるために、逆に現場の教師の皆さん方に生徒指導の重要性、対応の仕方を指導するために、むしろスクールカウンセラーが現場の教師から相談を受けることも多いと承っています。
 スクールカウンセラーの趣旨からいいますと、教師を経験された方が引き続きということになりますと、学校外の違った角度からの専門性を生かすということからいうと衝突するわけでありますが、ただ、スクールカウンセラーを迎え入れる方は、教師を経験した方はそのゆえをもってだめなのかというと、そういうことでもないと思います。学外から迎え入れることのメリットと同時に、学校の教師との間の意思疎通の問題、子供の扱いでの情報の処理の問題、学外から迎え入れることからくるさまざまなそごと言えるような問題点もあるようであります。OB教師であるということではなく、カウンセリングにおいて高い専門性を持たれた方、そういう方々については臨床心理士、精神科医、大学の教官等と並んで迎えてもよいのではないかと思います。見解をお伺いいたします。
 また、イギリスなどで行っているのは、中学校の三年生の中から数人、相談をする人を選んで、二年生、一年生とか、大体年代の近い人に相談するというのが非常にやりやすいということで、そういう上級生を一種のカウンセラーに選んで自主的にやって成果を上げていると聞いています。さらに石川県教委では、今年の四月から子供相談員の育成を始めたようであります。全県で三百人ほどの相談員を集め、カウンセリングの仕方を初歩的な段階から教えています。もちろん、それをもってすべてとするわけでなく、講習を受けた子供が教師に最終的に相談する体制になっていますが、いじめや不登校のない教育社会環境づくり推進事業ということでスタートしています。
 これから、いじめとか登校拒否を減らしていく、そして子供たちへの対応をどうしていくかということについては、種々検討すべき点があると思います。今までの体験や知識を踏まえ、臨床心理士に頼らない仕組みなど、今後スクールカウンセラーのあり方について十分工夫、研究をしていかなくてはならないと思いますが、見解をお伺いいたします。
 次に、心の教育、生きる力を育成する教育についてであります。
 中・高での校内暴力の発生状況について、平成七年度の資料によりますと、中学校全体で発生した学校数千四百六十校、発生件数五千九百五十四件、公立学校に占める発生率一三・八%。高校では、発生学校数七百七十五校、発生件数二千七十七件、発生率一八・六%。また一方では、教師による体罰やマツタケ教師等、教育現場というものが、子供たちの夢を育てつつも、大変な状況であると思います。
 今、子供たちはいらいらするとか腹が立ってむしゃくしゃする、それが何か受験戦争のあおりのような認識を子供たちが発言します。人はいつの日かどこかで、学び、苦しみ、それを乗り越えていくという時期が必要です。そこに対応しながら子供たちが伸びていくものであります。それにしても、親の子育てのあり方の過程というものが、従来のように複数の大勢の人間の中ではぐくまれている時代と違って、家庭という言葉で言えないような状況で子供たちが育っていることも現実であります。また、学校の教師の指導のあり方にしても何かゆとりのないような気がします。ゆとりある教育を訴えながら、それと社会環境としても歯どめのない情報の洪水の状況の中で、子供たちが取捨選択しながら安定した心境で青春時代を過ごしていくということはある意味で大変で、洪水の中でおぼれてしまう状況ができているのかもしれません。
 そうしたことを考えますと、心の問題とか人間性の問題ということの中に、道徳教育等々、日本古来の礼儀正しくまじめで正直で勤勉でなどという言葉が今の子供たちには余り当てはまらない気もします。また、このごろ起きるさまざまな事件の中で、一人の人間を多数であやめてしまう、高齢者や弱い者、あるいは大人であっても、「おやじ狩り」などという嫌な言葉もありますが、勇気がなく憶病であるがゆえに数人で事を運ぶという卑劣な行為が目立ちます。校内暴力が発生していくということも悪いことですが、ある意味ではそういうことのあらわれを学校で表現しているのかなと、そんな気もします。人は人にもまれて人になるという言葉があります。学校の中で心の問題を問うときに、紙の上で心づくりというのはできるのかなと思うのであります。
 社会というのは、まさに自分一人で生きていけません。その社会の中に自分が立つ最初の教育の場は家庭でありますが、少子化、核家族という中で家庭における教育力が低下しています。また、社会一般が余りにも子供に対して無関心過ぎ、人間関係が希薄になって社会教育力が低下しているようであります。
 さらに、学校教育においても、先ほどの数字を見ると大変深刻であります。三者の連携、協力が大変重要な課題でありますが、家庭教育力、社会教育力の低下を学校教育が中心となって補っていかない限り、人間教育は進まないと思うのであります。今の教育の基本は、子供たちに生きる力をつけていくことが非常に大事なことだと思います。このことは、言葉としては言うわけですが、逆に、今日の子供たちが生きる力を果たして今の学校教育の中でつけられるのか。もちろん、学力的には高い知識を有し、私たちの時代から比べてはるかに知的な面では高くなっています。しかし、たくさんの知識人はつくっても、社会の中で生きていってその知恵を活用できるような、弾力的に生きていけるような教育は、必ずしもなされていないように思うのであります。心の教育、生きる力を育成する教育についての所見と取り組みについてお伺いいたします。
 次に、学校図書館の充実についてであります。
 二十一世紀を展望した我が国の教育のあり方を審議している第十五期の中教審の一次答申には、「自分で課題を見つけ、自から学び、自から考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力」を養成する。そして、そのために学校は、知識を教え込む教育から、「自から学び、自から考える教育」を通じてゆとりの中でみずから生きる力を育成する教育を重視していくと書かれています。
 急激な変化を遂げる現代社会にあって、我々の得た知識はすぐ過去のものになってしまいます。こんな社会にあって、生きる力を育成することはもちろん、基礎的な知識を習得することは大変重要なことではありますが、その上に立って自分で問題あるいは課題を解決する方法を身につける、これがこれからの我々の生き方にとって大変大事なことだと思います。そのためには、学校教育においてこの図書館の果たす役割は大変に大きいし、また今後さらにその役割は増していくのではないかと思います。
 その学校図書館は、余り活用されていません。いろいろ事情があるとは思いますが、一つには図書の蔵書の問題、二つには指導に当たる教師の人的な整備の問題。三つには、学校教育の中で学校図書館の位置づけは学習指導要領等において明確になっていますが、具体的運用、実践においてどのように活用するかという点において、教師を含めて十分にこの学校図書館を使って学校教育を展開することの重要性というものの認識がなかったのではないでしょうか。これから二十一世紀にかけて、この学校図書館に何を期待されるのか、まずお伺いいたします。
 中教審の答申の中の項目、「第二部、学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方」の中で、「高度情報通信社会の進展を踏まえ、学校教育の質的改善や情報教育に資するため、情報のネットワーク環境の整備や学校図書館の充実などに積極的に取り組んでいく必要がある」と、学校図書館の充実の必要性が強調されています。
 平成五年度から、学校図書館図書整備五カ年計画が始まり、今年度は最終年度で合計で五百億円、地方交付税措置がされました。昨年度までに約三百八十億円が使われていますが、実際に措置された予算状況は約五〇%だと言われています。地方によっては学校図書購入費用を他に回してしまうようなこともあるようであります。
 この計画が終了した段階で、目安となります各学校の規模に応じた蔵書数、学校図書館標準が平成五年度に設定されています。同時に、この年から五カ年計画によって以前の蔵書の一・五倍をめどに書籍をふやしていく計画となっています。この水準は将来にわたってある程度の年月、今後の図書館の蔵書数の水準となっていく数字だと思います。平成五年まで、昭和三十二年の標準をそのまま使っていましたが、そういう時代おくれにならないように、その都度の標準として見直しを要望していく必要があるのではないかと思います。
 新五カ年計画によって、公立の義務教育諸学校の図書館の充実が進んでいます。そんな中で高校の学校図書館の整備が立ちおくれていると言われていますが、整備につきましては学校図書館法第十三条、関連して政令で定める基準が施行令第一条の別表に載っていますが、実は四十年前に決められた基準で、全く現状にそぐわなくなっています。これから期待される学校図書館の蔵書数として今の図書館標準というものが十分なものであるのかどうか、この点についての見解と県内公立学校の図書館の蔵書数の実態についてお伺いをいたします。
 本来、活発な読書活動というものを通じて、子供の知的な好奇心、興味や関心、あるいはさまざまな感動、そういうものを味わう点で学校図書館は、いわば心のオアシス、読書センターという役割があるのではないかと思います。また、これからの新しい時代に対応して、できるだけ多くの情報を収集し活用していくという面では、例えばインターネット、コンピューターを導入するというようなことで、学習情報センターとしての機能もあわせ持つべきではないかと思います。さらに、学校と公共図書館とを結ぶというような計画など、新しい時代に対応した学校教育ということの中で、図書館の意義というものをもっと高めていかなくてはならないと思うのでありますが、見解をお伺いいたします。
 今、活字離れ、読書離れの大変な実情があります。例えば、一カ月に一冊も本を読まない中学生は五五%、高校生は七〇%。三人に二人が一冊も読まない。中学生、高校生の心が荒廃し、不登校、いじめの原因の一つにもなっているのではないでしょうか。「民主主義は読書と本の上に成り立つ」というレーガン元大統領の有名な言葉がありますが、こうした活字離れ、読書離れ、家庭においても学校においても本を読まない子供が蔓延していることについて、どのように認識し対応しているのか、お伺いいたします。
 学校図書館に、本を中心とする図書館資料を使いこなせる、また利用に供する子供たち、生徒たちに指導やアドバイスをできる専門家が必要であります。それが司書教諭になっていると思います。ただ、各学校になぜ司書教諭が発令されなかったのか。司書教諭の資格を持っておられる方は相当数に上ると思いますが、その発令状況は、平成八年度現在、国公私立で全国で五百二十四人、内訳は、小学校七十二人、中学校百十一人、高校三百三十六人、特殊教育諸学校五人となっています。ちなみに、司書教諭の資格を持つ人は平成六年度の調査で公立で一万二千五百六十九人。この発令が進まなかった理由として考えられるのは、小・中につきましては、学校の規模等からして図書係等の校務分掌で担当することで足りる、あるいは有資格者はいるが、学校図書館ではなくてほかの校務分掌を担当している等。高校では、事務職員等が図書館事務を担当しているので司書教諭の発令は不要である。小・中・高共通の理由としては、小規模校のため、あるいはその方が学級担任をしているため、あるいは学校図書館法附則第二項による当分の間これを置かないことができる、この規定を理由に挙げているようであります。
 これらを総括しますと、附則はあくまで特例であって、原則はすべての学校に置かれるということだと思います。附則の運用、解釈において、これは置かなくてもある意味で差しさわりがないというような解釈がされていた点、学校図書館や司書教諭に対する認識の問題、司書教諭を引き受けることによって新たな負担がふえるということに対する抵抗感、こういった点が要因と思います。
 県内公立学校の司書教諭の発令状況と発令が進まなかった要因、そして、今度の改正法によって平成十五年四月一日以降は一定規模校以上には設置が義務づけられます。現在進行中の第六次公立義務教育諸学校の教職員配置改善計画は、十年度完結を二年間の延長、また財政構造改革五原則の中で新たな予算措置を伴う長期計画はやらない、第七次はないということであります。そうした状況の中での今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 今度の改正法で気になるのは、法令に定める小規模校をどう判断し対応するかであります。学校図書館法附則第二項の政令で定める規模以下の学校は、学級の数が十一以下の学校とする、これは学校教育法施行規則第十七条の標準学校に横並びさせたと思いますが、県内では小学校の六四%、中学校の七〇%、高校の一三%が小規模校であります。基本的には、教育はすべて県民が共通の土俵の上に立って、そして機会均等に受けられなければならない権利があります。小規模校だというだけの理由によって学校図書館の充実がおくれるということは、まさに教育そのものに対する差別ではないかと危惧します。
 この学校図書館は、これからの二十一世紀を担う子供たちにとって大変重要な役割を担うものであります。小規模校の生徒たちはその恩恵を受けることができません。同じ時代を生きてきた子供たちにこういった差を設けていくことは、あるべき姿ではないと思います。小規模校への司書教諭の配置に十分な配慮をお願いしたいと思いますが、見解をお伺いいたします。
 この高度情報通信社会、さまざまな世の中の実態を知るための教材が教師も必要ですが、そういうことを的確に、利用のためにアドバイスし指導できる専門家がいないことが、そういう授業の停滞の一因にもなっていると思います。本当に力のある人であるならば、教師にも、教材への的確な指導もできます。それがそのまま授業改革につながっていく、子供たちに指導すれば、それは考える力、学ぶ力、本を探したり資料を一つ一つ調べたりすることの喜びを感じ、みずから学ぶ力、考える力が身につきます。ますます時代は図書館における力ある専門家を必要としています。そうした認識がないと教育改革につながらないと思うのでありますが、所見をお伺いいたします。
 学校図書館担当事務職員、学校司書の方々でございますが、いわゆる事務職の立場であります。今日まで、自治体の努力で配置されたことは、やはり学校図書館の役割の重要性ということを訴えていると思います。この学校司書につきましては、昭和四十年代後半に検討されたことがあり、法律の中でも案として出されたことはありました。発令されない司書教諭のかわりとして、学校司書というか、学校図書館担当事務職員の配置が進んできました。この方々の果たしてきた役割は、教育現場において大きなものがあったと思います。しかし、現場では、改正法で学校司書の職場が奪われていくのではないか、不安や懸念が出ています。いわゆる学校司書の職務や役割と司書教諭の職務、役割を誤解し、また混同するような自治体が出てくると、弱い立場にある学校司書の方々は不利な状況に追い込まれます。学校司書の皆さんが不利にならないような状況をつくっていかなくてはならないと思いますが、取り組みについてお伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題、十五点についてお答えいたします。
 まず、総合学科の拡充と進路開拓についてであります。
 平成六年、全国に先駆けて和歌山高校に総合学科を設置し、さらに本年四月に県内で二番目の総合学科を有田中央高校に設置したところであります。和歌山高校においては、生徒一人一人が自分の興味、関心に応じて科目を選択し、生き生きと将来の進路に対応した学習に取り組んでおります。その結果、みずからが目指す進学や就職の達成率が大幅に向上してございます。
 卒業生の進路開拓につきましては、文部省や産業教育振興中央会等が繰り返し大学や経済団体等に働きかけており、現在、和歌山大学や大阪府立大学など、全国三十五大学で推薦枠が設けられ、就職についても企業の理解が進みつつあります。県内におきましても、学校と教育委員会が連携して、近隣の大学や経済団体、企業等を積極的に訪問するとともに、関係者を招いての学校紹介などを行い、進路の開拓に努めてまいりました。今後とも都道府県教育長協議会とも連携を図りながら、総合学科の特性に関する理解と進路開拓への協力を求めてまいりたいと考えております。
 本県における今後の総合学科の拡充につきましては、和歌山高校、有田中央高校の成果等を踏まえ、学校の主体的な取り組みを大切にしながら、全県的な視野から積極的に検討を進めてまいりたいと存じます。
 第二点目のPCB使用電気機器についての管理と処理についてでありますが、昭和四十七年以前の製品の現在の使用状況は、県立学校では約五千本、小中学校で約千六百本となっております。取りかえにつきましては、これまでにも各学校における大規模改造等の際に順次行ってきておりますので、市町村への指導も含め、引き続き取り組んでまいります。
 また、廃棄物の管理状況についてでございます。このたびの法の一部改正により分解処理も可能となりましたが、現在のところ国内には処理施設がございませんので、それまでの間、学校内で明確に表示をした上、厳重に保管をしてまいります。今後とも、関係機関と連携を密にしながら管理体制に万全を期してまいりたいと考えてございます。
 次に、スクールカウンセラーについてお答えいたします。
 配置校におきましては、スクールカウンセラーが学校における教育相談体制の中に位置づけられ、養護教諭との連携によって児童生徒の心のケアが進んだこと、あるいは教職員の子供に対する接し方が変わったといった成果が報告されてございます。一方、学校によってはスクールカウンセラーを十分に生かせていないといった課題もあることから、今後、管理職の理解を深める研修を重視し、その効果的な活用を図ってまいりたいと考えます。
 配置状況につきましては、平成七年度三校、八年度十二校、九年度二十二校と年々拡大を図ってきております。現在、スクールカウンセラーの資格は、臨床心理士、精神科医並びに大学の教官に限られております。和歌山県臨床心理士会には二十七名が登録されておりますが、本務等との関係ですべての方々にスクールカウンセラーをお願いできず、その確保に苦慮している現状でございます。
 カウンセラーには高度な専門性が必要とされますが、教育委員会といたしましては、人材確保のため文部省に対し、大学院卒業者等の活用など、資格の弾力化と計画的な養成を要望してきたところであります。本県では、従前からスーパーバイズ方式により、専門的力量を持つ教育相談主事等の助言のもとに、学校の教員がカウンセリングマインドを持って子供の相談に応じられる体制づくりを進めてまいりました。また、教育研修センターにおいて各学校における相談活動の中核となる人材の育成に努めるとともに、県独自に年間百二十回に及ぶカウンセラー派遣事業を行ってまいりました。今後、こうした努力を続けるとともに、議員ご提言の趣旨を踏まえ、幅広い人材活用による相談体制の整備について研究してまいりたいと考えます。
 次に、心の教育、生きる力をはぐくむ教育についてであります。
 近年、子供を取り巻く環境の変化に伴って、心の問題に起因する登校拒否やいじめが増加し、一方、社会のルールを無視した自己中心的な問題行動が多くなってございます。こうした状況から、教育委員会といたしましても、豊かな心を持ち、これからの社会をたくましく生きる力をはぐくむ教育の取り組みが一層重要になっていると受けとめております。また、心の教育を進める上で何よりも子供に対する愛情と心の交流が大切であり、子供にふさわしい遊びや体験的な活動を通じて心の成長を図っていくことが必要であると考えます。
 このため、教員の資質向上を図るとともに、豊かな心をはぐくむ教育推進校の指定やフロンティア・アドベンチャー事業等を実施し、子供たちに自然体験やボランティア活動などを通じ、自然や生命に対する畏敬の念、社会に奉仕する心構え、郷土に対する誇りや愛情などを培う教育の充実に努めているところであります。さらに、積極的に学校を開き、家庭や地域社会の教育力と結合することが重要な課題であるとの観点から、平成八年度から県下八地方における登校拒否やいじめを考えるフォーラムや関係機関連携推進会議などを開催し、教育関係者とPTA、地域の方々との連携を進めてまいりました。今後とも、こうした取り組みを一層充実させ、学校が先頭に立って社会全体で子供を育てる体制づくりを推進してまいりたいと存じます。
 学校図書館の充実についてでありますが、情報化、高齢化など、急激な変化を遂げる現代社会にあって学校図書館は、児童生徒の読書活動を促進し、各種の資料や情報を活用してみずから学ぶ力を育てる教育を進める上で、学習情報センター、読書センターとして、その果たすべき役割は極めて大きいと考えてございます。
 学校図書館の図書標準等についてでありますが、小・中学校の図書標準につきましては、ご指摘のように、平成五年に示されたものであり、県内の各市町村では基準財政需要額を上回る図書購入費を計上して努力しており、平成七年度の調査によると、児童生徒一人当たり小学校では十八・八冊と、全国平均十六・二冊並びに国の標準十七冊程度を超えておりますが、中学校では十六・一冊と、全国平均並みながら国の標準を満たしていない実態にあります。また、高等学校については一人当たり二十三・七冊と、全国平均の二十二・五冊を上回っており、一人当たり五冊から七冊という昭和三十三年の学校図書館法施行令の基準では実態にそぐわなくなっている面も見受けられます。今後とも、学校図書館に期待される役割を踏まえ、蔵書数の拡充に努力してまいりたいと考えます。
 コンピューター時代に対応した学校図書館のあり方につきましては、地域の情報センターとしての機能も期待され、公共図書館などとの連携が重視されることから、今後、県の情報ネットワークの整備を視野に入れて研究を進めてまいりたいと考えております。
 次に、読書離れについてでございますが、テレビやコンピューターを初めとする多様な情報メディアの発達、受験勉強などで本を読む時間的余裕がなくなるなどの原因が考えられ、豊かな感性や論理的な思考力を養う上で憂慮すべきことと受けとめてございます。教育委員会といたしましては、各種研修会等を通じて、子供たちが読書の楽しさと出会う場をつくるよう各学校に指導しているところであり、幼児期における読み聞かせの体験なども重要であることから、家庭教育との関連も考慮しながら読書に親しむ教育を重視してまいりたいと存じます。
 次に、学校図書館がその機能を十分に発揮するためには、専門的な素養を身につけた教員の配置が肝要でございます。こういったことから、司書教諭の資格を持った教諭の配置が求められてきたところでありますが、有資格者数が不足しているため、従来からも資格取得の促進に努めてきたところであります。今後は、平成十五年度までに十二学級以上の学校に配置するとともに、小規模校が多いという本県の実情を踏まえ、十一学級以下の学校においても配置できるよう、さらに和歌山大学など関係大学と連携しながら資格取得の機会の拡充に努力してまいりたいと考えてございます。
 次に、学校図書館担当事務職員等と司書教諭とのかかわりについてでございますが、担当事務職員等は、図書館サービスの提供及び学校図書館の庶務、会計などの業務に従事しており、一方、司書教諭は、学校図書館の利用指導計画の立案など指導助言を業務とするものでありますので、それぞれの役割が十分果たされることにより図書館教育がより一層充実するよう指導してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(木下秀男君) 再質問がございませんので、以上で森本明雄君の質問が終了いたしました。
○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 10番新島 雄君。
  〔新島 雄君、登壇〕(拍手)
○新島 雄君 おはようございます。
 大変暗い話題が多い昨今でございますが、明るく質問をさせていただきたいと思います。
 二十一世紀まで残り千百十七日、長野オリンピックまで五十八日、ワールドカップ・フランス大会まで百八十一日、ことしも残すところあと二十日となりました。
 こんな言葉があります。「夢なき者に成功なし」──夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、すなわち夢なき者に成功なし、であります。
 来年度予算の編成や本県の長期総合計画に夢はありますか。生活は質素に、心は豊かに、財政は少なくとも夢多き予算編成を望み、景気対策について質問をいたします。先輩議員からも質問がありました。重複する部分も多いと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 バブル崩壊後の不景気は平成五年十月に底を打ち、翌月から上昇を続けていると、つい最近まで発表されてまいりました。本当にそうだったのでしょうか。皆さんが肌で感じていることと同じでしょうか。高度成長期の経済成長を望んでいるわけではありません。低いレベルでの回復でもよいのです。しかし、国民や企業にとって実感があるでしょうか。何よりも、地方にとっては大変厳しい落ち込みのように感じられてなりません。
 経済企画庁の十一月の月例報告は、景気回復の基盤は失われていないものの足踏み状態であると発表され、十二月には「景気回復の基盤」という言葉さえなくなりました。最近、特に目立つことですが、企業の方や友人との話の中で、「景気悪いなあ、何とかしてくれよ」、そんな言葉をよく耳にいたします。昨年、阪和銀行に一部業務停止命令が出て以来、金融不安が続く中、こんなことをおっしゃる方もいらっしゃいました。今までは、銀行からお金を借りる場合、決算書を出せ、担保は、また、保証協会は、返済計画はと、大変な手続を経て希望額よりも少ないお金を借りるのであります。これからは、銀行に対してお金を預ける場合、銀行から決算書を見せてもらわなければならない時代になったな、そんなことをおっしゃっておりました。私も、そうなってきたのかな、そのように実感をいたしております。
 十一月十八日、政府は百二十項目に及ぶ緊急経済対策を発表いたしました。つい先日、十兆円云々という梶山発言もあったようですが、この経済対策の中身は、需要が期待できる規制緩和をかなりきめ細かく盛り込んだ、民間活力を期待した対策であります。従来ですと、公共事業の追加や減税を中心とした財政主導のものでありました。しかし内容は、大都市圏を中心とした対策のように思えてなりません。地方にどれだけ効果があるのでしょうか。県内景気は、経済企画庁の報告に比べ、もっともっと厳しい状況であると実感いたしております。
 十月の県内企業倒産件数は、過去最高となりました。また、現在の景気は、大企業の輸出に支えられたものであり、消費税の引き上げ反動や戦後最低水準の預金金利などにより消費の落ち込みを招き、地場産業にとっては非常に厳しい現状であります。現在、国も本県も、厳しい財政状況の中、来年度に向けての予算編成の最中であります。これからの活力ある和歌山を創造するために、県を挙げて積極的に景気対策に取り組むべきときであります。
 そこで、知事にお伺いいたします。県として来年度予算の中で景気対策をどう位置づけ、どのような予算を組もうとしているのか、また重点はどこに置いておられるのか。来年は、南紀熊野体験博の準備の年でもあります。関連事業も含め、来年度予算で検討されている景気対策の具体的事業についてもご答弁願います。
 また、ビッグバンを控え、銀行は自己資本比率の改善に向かって貸し渋りが起こっていると言われております。担保評価、経営内容のチェックも大変厳しくなっているとのことであります。こうした状況では意欲的な中小企業やベンチャー企業の成長もつぶされていくのではないかと、大変危惧をいたしております。中小企業に対する金融対策をどのように考えておられるのか、商工労働部長にお尋ねいたします。
 最後に、土木部長にお尋ねをいたします。
 建設業の比重の大変高い本県におきましては、来年度の国の公共投資が七%削減されることが大きな打撃であります。建設業の現状と来年度に向けての対策を答弁願います。
 以上で景気対策についての質問を終わり、次に移ります。
 新たな社会保障制度となる介護保険関連法について、お尋ねをいたします。
 十二月九日、衆議院本会議で成立、新たな介護システムが平成十二年より導入されることになりました。高齢化社会を本格的に迎えるに当たり、介護を家族など特定の人に押しつけるのではなく社会全体で考えていくという国民の合意形成のためには必要な法律であると考えます。昨年以来、幾多の変遷を経て成立したものと伺っております。
 介護保険は、四十歳以上の国民が保険料を負担し、各市町村が運営主体となるものであります。介護を身近なものとして抱えておられる方々にとっては歓迎の声がありますが、反面、負担金の問題や内容、介護認定基準などにおいて不安の声があるのも事実であります。また、第二の国保となり、地方自治体にとって負担だけがふえることにならないかと心配する首長の方も少なからずおられます。財政状況が厳しい中、この法律を実のあるものにするためには、まず二〇〇〇年までに全力で基盤整備に取り組まなければなりません。そして、厚生省や県がどこまで情報を公開し、国民とともに情熱を持って育てていくのか。
 また、従来の措置型行政から利用者本位の行政への移行について、住民や行政の意識改革が絶対必要となります。法の細部につきましては今後政省令の中で明らかにされると思いますが、国民が介護にひとしく関心を持ち、心配りをするため、何とかすばらしい内容のものとなるよう祈っている者の一人として、何点かについて質問をいたします。
 まず、介護保険のキーポイントと言える要介護認定についてであります。介護を考えるとき、その家庭の事情や緊急性もあり、また不要認定された場合なども含め、迅速にかつ正確に作業ができるのかどうか、お尋ねをいたします。
 次に、厚生省が目標として定めている必要な基盤整備については目標が達成されても、介護の需要に対して十分カバーし切れないのではという疑問であります。全力で基盤整備に取り組むとしても、制度導入時には十分なサービスが受けられないことにならないかということであります。小泉厚生大臣も、保険あって介護なしとならないよう準備、議論をすると決意を見せておりますが、そこで民間の力を介護の現場にもっと導入できないかということであります。コストダウン、サービスアップの観点からもお考えいただき、導入するとすればどのような方法が考えられるのか、お答えいただきたいと思います。
 運営主体となる市町村の立場から、お尋ねいたします。これまでの経験から、市町村の方では人的、財政的にも大変負担が大きいとして不安感がどうしてもぬぐい切れないようであります。この点についてどのような支援策があるのか、お答えください。
 また、市町村を指導する立場にある県としてどのような取り組みをされてきたのか、その中で市町村の要望などを聞いてどのように処理してこられたのか、お答えいただきたいと存じます。保険料が今後どのように推移していくのか、低所得者対策はどうなっているのかについてもお答えください。
 最後に、この制度を県民が正確に理解し、認識することが大切であると考えます。啓発に向けた取り組みについてお考えをお示しいただきたいと思います。
 すばらしい答弁を期待し、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの新島雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 新島議員にお答えをいたします。
 平成十年度予算についてでありますけれども、たびたびお答えを申し上げておりますように、本県財政は他の府県と同様に、大変厳しい状況に直面をしております。しかしながら、お話にございましたように、その中にあっても将来にわたって活力のある県勢を維持向上させていくためには、そのベースとなる経済活動が活性化し、活力を取り戻すことが何よりも重要であると認識をしてございます。
 十年度予算につきましては目下作業中でございまして、まだ知事査定までには至っておりませんけれども、県経済の活性化を最重点の柱の一つに据えて対応してまいりたいと考えております。具体的には、現下の経済情勢に即応した融資制度の充実などの中小企業対策に万全を期しますとともに、次の時代を先導する創造的企業の育成、あるいは新産業の創出などへの支援、既にその整備が完了しておりますけれども、工業技術センターあるいはデザインセンターなどの研究開発機能を活用して地場産業に対する技術支援も行っていきたい。また、来年予定をしております第一回CIOFFアジアこどもフェスティバルの開催、また海や川の全国フィッシングフェスティバル、さらに各種大会の本県での開催、南紀熊野体験博などの関連事業などにつきましても積極的に取り組んでいきたいと考えてございます。
 県経済に新たな活力を導き出すための布石となる産業基盤の整備を初め、さまざまな施策にも周到、着実な手を打っていきたいと考えてございまして、県民の皆様方や企業の方々が将来に対して希望の持てるような施策展開を、議員お話しのように、私もまた夢を持って強力に推し進めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長日根紀男君。
  〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 平成十年度の予算編成における中小企業に対する金融対策について、お答えいたします。
 議員お話しのように、景気の現況は足踏み状態となっております。また、最近の貸し渋り懸念に対応してまいりますために、十一月二十六日に実施した緊急調査におきまして、金融機関の融資条件について規模の小さい企業ほど厳しくなっているというふうな調査結果も出ております。私も、十二月一日に銀行協会を初め主要な金融機関を訪問いたしますとともに、県内金融機関に文書でもって迅速かつ適正な融資を強く要請したところでございます。また、中小企業対策連絡会を十二月十六日に開催することとしておりまして、各金融機関を初め、経済団体、政府系金融機関等とも連携を図るなど、中小企業の金融の円滑化に取り組んでいるところでございます。
 平成十年度予算におきましては、知事の答弁にありましたように、現下の経済情勢に即応した融資制度の充実を図ってまいる所存でございますが、特に利用度の高い振興資金の融資枠の拡充、また意欲のある企業家やベンチャー企業支援について充実を図りまして、県内中小企業者からの資金需要にこたえてまいりたいと考えております。
○議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 新島議員の、建設業の現状と来年度に向けての対策についてのご質問にお答えいたします。
 本県における建設産業は、県内総生産──GDPですけれども──の一〇・四%、就業者数におきましても一〇・〇%を占めておりまして、また住宅、社会資本整備の担い手として重要な役割を担っております。県といたしましては、このようなことからも、建設業を基幹産業として認識し、その育成に重点的に取り組んでいるところでございます。
 来年度に向けての対策ということでございますが、先刻、議員の方からもお話がありましたように、先月二十八日、財政構造改革法案が成立いたしましたことにより、来年度の公共事業費は本年度当初予算比七%減以下──ちょっと表現がややこしいですけれども、七%よりもっと下げるという趣旨です──とされることとなり、本県においても厳しい状況下となっておりますが、これまでにも県内建設業者の育成のため、事業内容等を踏まえた分離分割発注や公募型指名競争入札における参加資格条件の緩和等、受注機会の確保に努めているところでございます。
 厳しい状況のもと、土木部といたしましてはより積極的に予算の獲得に努めるとともに、入札制度の見直しや事業の平準化の推進に努める等、県内建設業界の健全な発展に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 介護保険についての六点にお答えいたします。
 まず認定の問題につきましては、平成八年度から市町村においてモデル事業を実施しているところでありまして、平成十年度には全市町村で実施することとなっております。その結果を踏まえ、国においては公平な介護認定が行われるための客観的な全国統一基準が作成されることとなっております。また、緊急性を要する場合におきましても、認定手続前にサービスを受けるための特例制度も考えられているところでございます。
 次に、民間活力についてでございますが、在宅部門での民間参入につきましては、既に農業協同組合が参加する等の実態がございます。介護保険が始まりますと、一定の基準を満たしている事業者は県の指定を受けることにより介護サービスの提供者となれるなど、民間参入がさらに促進され、介護需要への対応がなされていくものと考えております。
 次に、市町村に対する財政支援策につきましては、介護認定等に係る事務費への国からの助成、給付費増や保険料収納率の低下に対応するための財政安定化基金の県への設置などの支援策がございまして、市町村を保険者とする一方、国、県等が重層的に支える制度となってございます。また、市町村に対しては、介護保険制度がスムーズに導入されるよう、あらゆる機会を通じ、市町村長を初め、市町村関係職員に対し説明を行ってきたところであり、また、その際意見のあった内容につきましては国に対しても要望を重ねてきたところでございます。
 次に、保険料の推移についてでございますが、厚生省の試算によりますと、保険料月額で平成十二年度約二千五百円、十七年度約二千八百円、二十二年度約三千五百円と推定されています。また、低所得者の方に対する負担が過重とならないための制度として、保険料については所得段階別を、サービス利用時の一部負担については高額介護サービス費を設定し、自己負担の軽減を図るとともに、施設入所の場合の食費負担につきましても軽減措置が講じられることとなっております。なお、生活保護の対象となっている方については、生活保護法により適切に手当てされることとなっております。
 最後に、いずれにいたしましても、今回のこの制度を広く県民の皆様に正しく理解していただき、意識を高めていくため、あらゆる情報提供に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 10番新島 雄君。
○新島 雄君 ご答弁をいただきました。
 景気対策については、なかなか難しい問題でありますし、また、現時点では答えにくいことも多々あろうかと思います。その辺はよく理解をしているつもりでございます。
 そんな中で、知事の答弁の中に、県経済の活性化を再重点の柱に、また中小企業対策に万全を期すというご答弁がありました。決意のあらわれと受け取らせていただきます。県民や中小企業はせっぱ詰まっております。どうか今の決意を何とか来年度の予算にご反映をいただくよう、よろしくお願いをいたします。
 また、介護保険につきましては、生まれたばかりの法律であります。何事も、準備八割という言葉があります。これからの二年間が大変重要な時期となるものと考えております。どうか市町村と協力してこの法律を大きくすばらしい社会保障制度に育てていただきたい、そのように要望を申し上げて質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で新島雄君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(木下秀男君) この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十六分休憩
      ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(阪部菊雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(阪部菊雄君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番中山 豊君。
  〔中山 豊君、登壇〕(拍手)
○中山 豊君 出ばなからちょっとしたハプニングがあって、そういう続きが僕の質問になるかと思っている方もいらっしゃるかもわからんけれども、まじめにやります。
 僕なあ、神戸の淳ちゃん殺害事件、そして粉河の小学校一年生の女子の殺害事件と続いて起こったでしょう。あの報道に接するや、ああここまで来てしもうたかと、こういうふうなことを思わざるを得なかった。そういう心境から子供の問題に触れて考えていきたいという認識から、以下、述べてみたいと思います。
 生徒の荒れ──授業が成り立たない、あるいはまた、いじめ、不登校、自殺と、かねがね形や内容は変わりはしたけれども、子供が問題行動を起こすにつけて、何でこんなことになるのだろうと心に問い続けてきたところからの問いかけであるわけであります。子供が子供を殺し、あまつさえ死体をナイフやのこぎりで切断して持ち運んだりするようなこと、大人が近隣の顔なじみのいたいけない小学生女子を殺して冷蔵庫に、しかも全裸にして押し隠すなど残忍至極、こんなことは日本人の文化や宗教上からは考えられないことだと思うにつけて、大変なところに来てしまったという思いからであります。
 そんなこと中山だけが物申しているのと違うかと、こういうふうなことであってはならないので申すけれども、当局発行の「21世紀への紀ノ国通信 CaN」ナンバー二十一号──これは皆さんのお手元へも当局から届けられていると思いますけれども──を見ると、石森秀三の「熊野詣」の中で、「神戸のA少年事件に象徴されるように、いま日本人は子どもからお年寄りまで大なり小なり病んでいます」、このことを語らせていますね。
 また最近、大江健三郎と灰谷健次郎が紙上においてやりとりをいたしておりました。大江は、「子供ながらしっかりと人間らしさへの芽を持っている者への、誇りとユーモア。それがこの国で根絶やしになっ」てはならない、こういうようなことを指摘したのに対して、灰谷は、「わたしたちの住む社会は、子どもを子どもたらしめているものの一切を抹殺しかねない悪気流がある。政治に、メディアに、教育に──。」と切り返して、大江にさらなる切り込みを求めて、私たちは何をなすべきかを問うているところです。石森秀三を初め日本を代表する彼ら二人の知識人が指摘するまでもなく、多くの人々が神戸の事件や自然破壊、取りとめもなく進む道義の退廃など、何とかならんのかと問うていることから見ても、極めて今日的課題であろうということであります。以下、その立場から質問を展開してまいりたいと思います。
 戦後五十年余、その時代時代にさまざまの言われ方をされながらも、子供たちは問題行動をもって訴えてきているところですが、総じて、経済が成長し文明が発展し、豊かになり便利になったからといって、子供は決して立派に発育し成長するということにはなっていない、このことはだれしもが認めるところになっているのではないでしょうか。
 これを大きく眺めてみて、三つに区分けして見ることができるのではないかと思っているのです。まず一つは、戦後の混乱と貧しさの中から子供たちは非行に走った。二つ目は、経済成長の中で差別と選別への抵抗とも言える非行がありました。三つ目は、高度に発達した経済成長の過程と成長をなし遂げていく中での超過密の指導要領での落ちこぼれ、それが原因となってあらわれてきたさまざまな非行と問題。それぞれについて、少し立ち入って眺めていくことにいたしましょう。特に、七、八年ないしは十年単位で指導要領の改訂・見直しがされてきているが、その時々の特徴を追いながら問うことにしてみたいと思います。
 日本人の心にかかわる文化や宗教に及ぶところから、問題のすべてを教育委員会にただすことにはなりません。学校教育、社会教育、家庭教育、中でも学校教育に視点を据えて進めてまいりましょう。学校教育とあらば、教育活動のよりどころとされている指導要領がどうなのか、どのようにその時々において見直し、改訂されているかを見ていくのが妥当な進め方ではないかと考えてみたわけです。
 戦後間もなく、新憲法の理念を教育で実現しようとして、あの痛ましい戦争の反省から試案として指導要領ができました。それから今日までの状況を概観してみたいと思います。
 一の段階の非行は、生きるための非行と言ってもいいでしょうか。占領軍によるレッドパージ等、朝鮮戦争を挟んで迫害を受けながらも、ようやく経済が安定していくことも相まって、春闘が始まり、日本母親大会があり、原水爆禁止世界大会が始まるなど、平和と暮らしを守るため大人が力を合わせての運動が始められた時代であります。新しい憲法のもと、世の中をよくしようと大人たちが連帯し、未来に希望を持つことで子供たちが生きる見通しを持つことによって、非行の姿はだんだんと消えていくのであります。昭和二十六年、学習指導要領が示されたが試案とされて、あくまでも現場の創意と工夫、実態に見合った取り組みが進められていくのであります。
 第二の段階として、なべ底景気から抜け出して高度に経済を成長させようとの中で、それを支える人的資源確保と開発の求めにこたえるため、差別と選別の教育が推し進められるわけであります。高校進学希望者がだんだんとふえていきます。けれども、家庭の都合で高校進学ができない子供は疎外感を受け、荒れ始めて非行を起こすわけであります。しかし、そのころはまだ生活の事実や子供の心がつかみやすかったので、問題解決に先生方は苦労は伴わなかったとも言えるでしょう。同和教育(責善教育)や高校全入運動の前進の中で克服されていくのであります。
 しかし、労働運動の高揚、平和民主運動の高まりの中で、教職員に管理と統制をもって対処する勤務評定制度の導入が強化され、軌を一にしてか、昭和三十三年、指導要領の改訂があり、道徳の時間を特設して指導要領の拘束性を打ち出し、好むと好まざるとにかかわらず、管理・統制へと進められていくのであります。そして、昭和四十三年(一九六八年)、指導要領が見直され、能力開発がうたわれ、指導の容量が急にふやされ、小学一年生の漢字がとてつもなくふえたと、世間で母親たちの大きな話題となっていくわけであります。それが実施されて取り組みが始まると、校内暴力が忽然と顕在化し、特に中学校で大きく荒れ、あまつさえ教師の手に負えない状態にまで進んでいったことは、私たちの記憶にまだ新しいところであります。
 昭和五十二年(一九七七年)、ゆとりを目玉に改訂し、見直しながら、偏差値による判別や選考に反対する声が全国的に大きな世論となったが、指導の容量を一つもさわらない。「ゆとり」などと言って、問題を余計わかりにくくしていったわけであります。和歌山では智辯、近代附属と私立高校が進出・創設されます。高校の職業科推薦入学が始められ、あわせて内申書が判別・選考に取り上げられるわけであります。ゆとりの時間とは言うものの、実態として学習塾が盛んとなり、学校や教師への抵抗は姿を潜めるかわりに内にこもり始め、いじめが発生していくわけであります。
 昭和六十四年(一九八九年)、改訂・見直しがあり、今度は個性重視が表に打ち出されるわけであります。できる・できないのも個性だなどと言われ出すのであります。週五日制導入がされます。依然として指導内容が高学年から低学年へ、中学校から小学校へと移しかえられ、難しくなるが指導時間は不足し、見切り発車の授業が横行し、ますます落ちこぼれをつくり出すのであります。一九九〇年代、登校拒否が急増し始めるわけです。
 第三の段階として、ゆとりと個性重視をうたい文句にした新しい指導要領に基づく教育活動は、超過密、新幹線教育と言われるほどに落ちこぼれ問題がますます深刻化し、子供の生活に崩れが目立ち、一九八〇年代の校内暴力という荒れと管理教育と内申書で抑え込んだかに見えるが、落ちこぼれ、いじめ、不登校、パニック、夜間徘回、教師の指導が通らない、いわゆる教育困難の状況となり、やがて薬物使用、テレクラなど性にかかわるところまで問題が広まり深まってきているのではないかと思われるのであります。
 総じて、十年間隔で指導要領の見直し・改訂がされてきているけれども、昭和二十六年、最初の指導要領試案を除いて、そのたびごとにその時々の社会的、政治的動向を反映させて、国民向けには聞こえのよい呼びかけ、テーマを掲げて改訂・見直しをしているけれども、ますます矛盾が拡大し、子供たちの間に次から次へと問題を引き起こす要因をつくり出してきていると見られるのが実態ではないでしょうか。
 さきに発表された教育課程審議会の中間まとめは、中央教育審議会答申を全面的に受け入れ、学校制度の複線化、学校五日制の完全実施に対応したあり方を示すものとなっていますけれども、子供たちの深刻な状況について心を痛めるのではなくて、我が国の子供たちの学習状況はおおむね良好であるとしているわけであります。皆さん、そう思われますか。今の子供たちの状況を見て、我が国の子供たちの学習状況はおおむね良好だと、こういう認識の上に立って新たな学習指導要領を制定しようとしているわけです。後手を追い、問題解決の根幹を示すのではなくて罪の上塗りをしているのではと思えてならないのであります。つまり、生きる力やゆとりをうたって学校五日制の完全実施に伴う教育内容の厳選と授業数の削減を行う一方、小学校段階からの選択学習、能力別学級編成などの方向を打ち出しています。これでは、義務教育の段階からできる子・できない子によって選別する、とんでもない方向だと言わねばなりません。また、これまでの詰め込み教育の枠組みはそのままにしたままであります。
 第十六期中教審の中の柱の一つ、中高一貫教育について我が和歌山県の西川教育長は、さきの議会答弁で、何かと危惧されるところがあり受け入れがたいと申されているところであります。るる述べてきたところから見て、和歌山県の教育に責任を持つ立場からこれは立派だなというふうに大方は評価されるところだと思われますけれども、県下の教育の現場や子供たちの状況から見て、以下、幾つかお尋ね申し上げたいと思います。
 まず一つに、指導要領改訂のたびごとに打ち出されてきたことの内容が真に子供の発達や成長にそぐうものであったのかどうか。我が国の子供たちの学習状況は今おおむね良好であると、このような中間まとめについてのお考えをお示しいただきたいのがまず一つであります。
 二つ目の問題は、過ぐる文教常任委員会──私が県会へ送っていただいてから二年、県会議員の前半部分は文教常任委員会に所属させてもらっていました。それで、教育問題は本会議で取り上げるということはあえてしなくても、文教常任委員会の中であれこれと論議をしていろいろと解決を図ってもらえるであろうという形で、本会議で取り上げるのはこのたびが初めであります。その文教常任委員会で、いじめ、不登校、自殺等、痛ましい事件が打ち続く中で、和歌山県下では幸いにして問題はあっても事件発生にまで至っていない教育の現状をどう見るのか──和歌山県のですよ──、戦後五十余年の和歌山県の教育の総括をどうしているのか、このようにして尋ねたら、当局から答弁がある以前に、「そらそうや。勤評闘争でお互いに試されているからや」と、こういうふうにある議員が申されたんです。申された議員は今、残念ながらこの席にはおりませんね。それは半ば言い当てていると思ったけれども、戦後五十余年培ってきた和歌山県の教育の実績から中高一貫教育はそぐわないとの考えから教育長が申されたのかどうか、そのあたりもお聞かせください。
 三つ目の問題。昭和三十三年、要領改訂から拘束性を打ち出され、勤評制度が強行されるということがありました。それと相伴って、それに基づいて県教育行政を進めてきているところですけれども、今日の問題状況の基本的解決は、能力主義──できる子もできない子も個性やなんていうふうな物の考え方に伴う能力主義、中でも管理主義を改め、全面発達を保障するところにあるのではないか、教師たちの創造性豊かな教育研究、実践を鼓舞してこそそれが実現できるのではないか、このように思うのであります。
 指導要領をこなそうと教師が懸命になればなるほど今、子供との間にすき間ができて大きくなっていって授業が成り立たなくなっているという状況が起こっているようであります。悪循環に陥って、教師がノイローゼになり、心身症を起こして退職さえ余儀なくされている話は珍しいことではない。皆さんもご存じだと思います。授業が成り立たないのは先生の力がないからやというふうな話に落ちつくようでは、問題が解決できない。教師が教室で授業が成り立たないで困り抜いている実情を解消することこそが、今日極めて重大な課題だと考えるわけであります。発生する事件だけが問題ではないんです。それらの事件の背景にあって、構造的な子供の崩れにメスを入れてこそ教育の方向が見出されていくのではないかと、こう考えるわけであります。
 そういう状況にもかかわらず、定数法の具体化を先送りするというようなことになってきているわけであります。まあ、定数法の先送りなんていうことは、先ほども申し上げましたように、中教審の中間報告のまとめの中で、我が国の子供たちの学習状況はおおむね良好であるなんぞという、そういうふうな認識に立てばこそ、これだけ困っている現場の先生たちの状況や子供たち、ご父兄の心配などをよそにして定数法を先送りするという、こういうふうなことにもなるんでしょうけれども、これは認識違いも甚だしいのではないかと思われるのであります。ご意見を伺いたいと思います。
 四つ目。そのためにも、不登校に陥り悩み苦しんでいる生徒を受け入れ、和歌山県の教育の中でも大きな成果を上げている学校もあるわけです。具体的には、青陵高校初め幾つかの学校があると聞き及んでいるわけです。その青陵高校の教育環境たるや、極めて問題があると言われているわけです。その青陵高校の校舎、特に体育館の独立完備が急がれてなりません。逆に言えば、そういうふうに教育環境が整っていなくても教育の成果は上げられるよと、こういうふうな形で逆に切り返してくるようなことにならないようにしながらも、やっぱりそれだけ苦労して成果を上げていることにどんなにして行政がこたえていくか、このことこそが我々に課せられた課題ではないかと思います。これの解決で、県教育委員会及び県当局の、和歌山県教育への真骨頂を見せてほしいわけであります。これは、議会へ請願が出され、何年も継続審査に付されている課題でもあります。僕が文教に二年間おって、二年間ともずっと継続審査、継続審査で次へ先送りしてきている課題でもあったことを今にして思い出します。
 教育委員会は、何かしなければと心にとめているようであることだけは事実であります。残念ながら、決断に至らないというのが状況であります。これはもう、教育委員会で決断してあれこれというよりも、知事の決断を待たねばならんところに来ているのではないか、こういうふうなことさえ思われるわけです。僕は、文教に所属しているときにしみじみとそう思いながら、継続審査に付することに賛成してきた一人ですが、もう心は、もう教育委員会でどうにもならんとするならば知事に判断してもらおうではないかということで、採択すべきだったということを心に思いながら継続審査に付してきたことを今にして思い出します。
 どうか養護学校新設に続いて決断してほしい課題であります。ここで、知事の答弁をと中山は言うかもわからんと思っている人もいらっしゃるかわからんけれども、わしはそれ言わん。あえて申し上げたいところだけれども、それは言わない。それにはそれなりの僕の考え方があります。それは、教育行政権というのは、一般行政権から独立して、こっちの方が偉いんよ。教育を進めている大将なのよ。ここがしっかりしてくれたら、こういうことを言うこともないのかもわからないけれども、しかしそれを侵すわけにはいかない。おれの議員としての政治信条からしても、そういうふうなはみ出たことはしたくない。主体的に当局がそういう話を受け入れて、こっちが申し入れてこっちが受け入れてそうしようかと、こういうふうなことを期待するからであります。
 ここで、知事に「どうよ、決断したれよ」というふうなことを言ったからといって、うまいこと言ったって、こちらがしゃんと今後も続いて責任を持ってやってくれるというふうなことにならなかったとしたらどうにもならんじゃないの。そこを踏み外すような中山ではない。知事部局と教育委員会のそれぞれの立場からの決定を見守り待つのがもっともな態度であろう、このように声を大きくして申し上げたいわけであります。
 これは、県下の教職員のみならず、多くの県民の期待にこたえる課題でもあります。子を持つ親をとめどなく激励する課題であります。副知事初め当局の皆さん、教育委員会のことだからといって白々したような形で聞いておかないで、みんなそろって知事に、もうそろそろ決断してやったらどうよというぐらい進言してやりなさいなと申し上げたい。案外、役所の中はそれぞれ他人の領域を侵さないというふうなことがあって、そのことによって行政が萎縮したり県民のために役立たないという部分が幾らも存在するわけです。あれもこれも挙げよというたら幾らでも挙げられるけど、時間がもうあと十五分しかない。それで、もうそこだけにとめるけれども、これはそんなに難しい話じゃない。
 県の教育委員会も、そこはかとなく検討はしてくれているみたい。おれは直接聞いたことないけれども、研修センターをどこかへ移したら何とかなるのではないかというところまで具体的に検討を進めてくれているというようなことを、人づてに聞いておるのよ。人づてに。しゃんと言うてもらいたいとは思うけれども、ここではそれは求めないにしても、意見だけ申し上げておこう。研修センターをどこかへ移したらできるというふうな話で検討されているのだったら、それをこちらで受けてやってほしい。そしたら研修センターをどこへ持っていくんなという話は、次の課題や。それはどこへでも持っていける。
 今、県が開発して海南市へつくった頭脳立地というのがあるやろ。インテリジェントパークよ。あれ、県の産業界を初めとする頭脳の集積地よ。そこへ教育の頭脳を持っていって研究させたらいいのよ。そしたら、教育は教育だけの研究ではなくて、研究の頭脳が集まってきて、こうしよう、ああしようというふうなことで、いい方法、いい案が生まれ出すかもわからない。それをやれば両方とも解決できると、こういうことになるわけ。これ、ならんのかいな。これは、こちらの方へ申し上げながら、主体的に双方で相談をし討議をしてお決めくださることをご期待申し上げておきましょう。知事部局からの答弁はあえていただきません。重ねて言います。教育センターは頭脳立地の集積としてのインテリジェントパークに移せば、それは可能であります。(「ええこと言う」と呼ぶ者あり)──ええこと言うやろ。
 五番目。日本は明治以来、教育で始末する政治体質を持ち続けていることは関係筋の見るところであります。何ぞ言うたら教育で絞ろう絞ろう、教育で始末させようって、これはもう政治の悪い癖なのよ。これは和歌山県にもないとは言えないよ。教育に金をようけつぎ込んでいるから、そんなことと言うかもしれない。しかし、学校というのは、学校の先生があってこそ教育が進む。先生に対する人件費がかさんでくる。だから、予算の総枠から見たら教育にようけ金をつぎ込んでいるように見えるかもしれないけれども、施設の問題等、条件を完備するには出し惜しみするという体質が、和歌山県も含めて日本の政治の中にあると関係筋が見ているというふうなことをある書物で見たことがある。それは、わしもそうかなというふうに受けとめている立場からのお話であります。
 今日までの中教審答申は、文部行政の反省と総括の上に立って新たな取り組みを答申内容に用意してきたためしはない。改訂の内容に取り組まれるたびに結果として発生してきた問題にふたをしながら、子供たちを窮地に追いやる問題を深刻化させてきているのではないか。神戸の淳ちゃん殺害事件から急に「心の教育」を叫ばれるようになったけれども、現象面だけを追いかけて、なぜこんなことになるのかを分析、検討、総括してこうなのだと示されたことにはなっていない。要は経済成長の後追いをさせられ続けてきた結果、引き起こされてきているのだと見ても大した間違いはないだろう。少なくとも和歌山県においては、かつらぎ小の小学生の自殺、過日の粉河小学校一年生女子の殺害事件、にべもなく命を絶ち、絶たれることのない教育的土壌を耕し続けねばと思うのであります。
 国の施策の間違いで、和歌山県の子供の発育成長に支障が起こってきては大変であります。ここでこそ地方自治の精神に立たなければならないと、こういうふうなことを呼びかけたいわけであります。国の政治の間違いや国の言うことの過ちを正してこそ地方自治、すなわち補いをして子供たちを守っていく立場に立ってこそ子供が守られるということになるのではないかということを申し上げながら──こんな話あるやろ。今、田舎の方に入っていくと、柿の木から実を収穫した後、百姓は実を皆取れへんで。幾つかこずえにならしてある。あれは何というか、もう賢明な皆さんは思い出してくれていると思いますが、あの情景を見てよ。柿の実を収穫した後、全部取り払わないで五つや六つはこずえにならしてあるよ。あれ、「施し柿」って言うんやての。
 また、紀南の方へ言ったら、「いとこね」と言うて、サツマイモと小豆の炊いたのでだんごをつくって、それを野に供えて法事をするんやと。それは、百姓が耕作のうちにミミズやらケラやら虫けらをいつの日かとんがやくわで打ち殺してしまっているという、こういう行為や営みに対して、その虫やミミズなどに対する法事を行うという行事があるらしい。その心よ。
 農民が営々と培ってきた自然との共生感、これがこそ教育の根っこに座らなくちゃならん話ではないか。この心が子供たちや世の中の人々の中に根づいて生かされていったとしたら、淳ちゃんや粉河小学校の小学生があのようにして殺害されるなどという痛ましい事件は起ころうはずもない話であります。これは、日本の国が間違っている、農業をおろそかにされてきていることによって伝統文化を風化させてしまったところに、このような悲惨な事件が打ち続いて起こっているのではないかと思うのであります。
 もう、あと八分しかないな。それで、原稿をちょっと割愛するけれども、熊野体験博のテーマ、思い出してよ。あれ、心のいやしと言うてらな。思いやる心、これよ。これを教育の基調に据えるべきではないかと、こういうふうに思っているわけです。
 それで申し上げたいんだけれども、そういうふうな心とはまるきり違った現象がそういう事件となってあらわれたかと思ったら、また別に、わしに刃向かう者は卒業させてやらんぞ、おれのまたをくぐれとか、何回も言われて今議会の花になっているかわかりませんが、マツタケ一本十点などというふうな話が飛び出してくるようなことになるのよ。生徒から物品を要求するなど、今まで和歌山県の教育界にあったことのないようなことが起こっているわけです。これはどういうことなんだろう。問題発生の深い根っこに何があるのか、お考えを聞かせてもらえたらなと思っているわけです。これらを生み出す要因はどこにあるのか、県教育委員会の行政体質の中にこのようなものはないのか、潜んでいやしないか、こういうふうにしてお考えいただきたいわけであります。
 最後に、そういうふうなこととも考え合わせながら、県の教育事務所が身近なところにないというのも問題であります。これは身近なところへ移して、真に現場の教師たちや父母たちが悩んでいるこの問題に、かゆいところまで手の届くような行政がとり行われるように、海草県事務所も地元へお越しいただけるようお願いします。
 次の質問をいたします。
 かねてより私は、海南・海草地域における県の地方機関のあり方について質問を重ねてきました。その都度、知事を初め県当局より、身近な行政は住民に身近なところで考えて処理できる行政体制の整備を進めていくとの答弁をいただいてきております。県においては行政改革の一環として、昨年以来、本庁、地方機関の組織の見直しを行っており、今年四月の振興局長の設置に引き続き、今議会に振興局設置条例が提案されております。これまでの私の主張がどこまで反映されているのか、期待と不安を持って内容をつぶさに検討いたしました。その結論を申し上げれば、何ゆえ海草振興局の位置が和歌山なのかであります。和歌山市は平成九年四月より中核市に移行し、行政権限を拡大され、今後もその方向に進むと考えられます。この点について強く求めておきたい。
 次に移ります。ダイオキシンの問題ですが、ダイオキシンは十二月一日の政令施行を待ってということでしたけれども、まさに十二月一日から政令施行がありました。県のダイオキシン対策については、政令に求めるところによると県の実態にそぐわない。これについて、具体的にそぐうような施策を求めて、次に移ります。
 県立自然博物館の鯨骨格標本、あれが展示後どのように収納されるのかということについてであります。具体的にお示しください。
 道路問題については、県道森小手穂線についてのお考えと、それらについての今後将来にわたるお話を求めたいと思います。
 しまいの方はちょっとはしょった観もないではなかったけれども、教育にすごく情熱を込めて問題を提起させてもらったということでご了承いただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの中山豊君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 議案第百二十五号、振興局設置条例改正についてお答え申し上げます。
 振興局の設置についてでございますが、地域における行政課題に対しては、それぞれの地域において自主的かつ総合的に対応できる行政体制を整備することを目指して、今議会に設置条例を提案させていただきました。条例を提案するに当たりましては、平成七年十一月に策定しました行政改革大綱の考え方を基本に、簡素で効率的な行政体制の確保と県民サービスの向上の両面から、海草振興局が所掌すべき業務内容、所管区域などの検討を行ったところでございます。
 なお今後は、平成十年四月に向け、本庁から振興局に必要な事務権限の委譲等を行い、各地域の特性に応じた行政を総合的かつ迅速に行い得る体制整備に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 生活文化部長中村協二君。
  〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 中山議員にお答えをいたします。
 ダイオキシン対策に関する県下の焼却場の状況について、昨年度の調査では、結果としてダイオキシンの緊急対策基準の八十ナノグラムを超えた施設は三十一施設中五施設でございましたが、焼却管理の改善、排煙の冷却、集じん対策等の措置が講じられたところでございます。
 今後は、〇・五から五ナノグラムの恒久対策基準を達成すべく、市町村とともに研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 中山議員から、県道沖野々森小手穂線の小野田地区内の整備の考え方と将来にわたっての整備方針の考えをというご質問でございました。
 この県道沖野々森小手穂線の小野田地区内と申しますのは、幅員狭小でありますから、整備が必要だということで、過去、昭和五十年代に地元に整備計画も提示いたしましたけれども、その必要性について地元の方々に同意をもらえなかったということで事業がストップしているということでございます。
 したがいまして、この区間の事業を再開するということですけれども、その問題については、阪井地内の渋滞緩和策である龍部池バイパスを現在計画しておりまして、こういうことの検討であるとか、あるいは三百七十号奥佐々阪井線等の整備を促進している現状でありますので、こういうものを見ながら考えていく、考えざるを得ないというふうに考えております。
 以上です。
○副議長(阪部菊雄君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題についてお答えいたします。
 学習指導要領は、社会状況や児童生徒の実態を踏まえて改訂され、教育の機会均等と全国的な教育水準の確保について大きな役割を果たしてまいりました。しかしながら、画一化した教育の弊害が指摘される中、現行の学習指導要領においても大幅な弾力化が図られ、選択履修幅の拡大、チームティーチングの導入など、地域の特性や児童生徒の実態に則した教育課程の編成が求められております。
 これに対して、各学校における指導においては、学習指導要領の趣旨を生かし切れていない現状が見受けられます。今回の教育課程審議会の中間まとめでは、児童生徒の学習状況についておおむね良好としながらも、学習内容を十分理解できていない、あるいは多角的な物の見方や考え方が十分育っていないといった子供の実態を直視し、教育課程や入学試験の大幅な弾力化を打ち出しており、各学校の創意工夫と主体的な努力が求められているものと受けとめてございます。
 中高一貫教育につきましては、さきの議会では慎重に対応したいと答弁したところであります。このことについては、学歴偏重の風潮等が払拭されていない中では受験競争の低年齢化や大学進学に偏ったエリート校づくりになることなどが危惧されることから、当面は従前から県独自で実施してまいりました中・高連携推進支援モデル事業等による中高の連携や特色ある学校づくりを一層推進することが大切であると考えております。
 問題の基本的な解決についてでございますが、中教審答申におきましても、過度の受験競争の弊害が指摘されており、子供たちが生活体験や自然体験等の機会を十分に持つことができず、ゆとりを持って生活することが困難になっているという実態がございます。このため、教育関係者はもとより、企業や官公庁等が率先して、学校歴偏重と言われる考え方を改めて、知識の量で学力をはかるのではなく、主体的に生きる力をどれだけ身につけていくかを重視し、個性や能力を適正かつ多面的に評価することが求められております。
 学習環境の管理につきましては、子供や教職員の自発性や創造性を抑圧するような管理が行われてはならないと考えます。しかし、管理そのものを否定する余り、学校を円滑に運営し、教育活動を安全かつ効果的に進めるために必要な管理までもが行われない実態が一部には見られ、そうしたところからさまざまな混乱や問題も起こっていることも事実でございます。児童生徒の現実に立脚した教職員の創造性豊かな教育研究や実践は、公教育に携わる者の使命であり、まさに私たちが強く求めてきたところでございます。
 青陵高校の体育館の独立完備につきましては、現有敷地での建設は用地問題もありまして困難な状況にございます。当面、共用している桐蔭、青陵、陵雲各高等学校間の連携並びに協力によって維持できるよう各学校に対して調整方指導を行っている現状にありますが、引き続き、懸案の解消に向けて調査検討を進めてまいります。
 海草教育事務所を地元へにつきましては、今後の研究課題としてまいりたいと考えます。
 農業に例をとっての伝統文化の点で触れられておりましたが、私どもも重要であると考えてございます。先般来、奈良、三重両県ととともに開催いたしました紀伊半島民俗芸能サミット、あるいはマルチメディアで結ぶ三県高校ネットワークなども、紀伊半島固有の伝統文化を全国に発信するものであり、こうしたことは、熊野体験博を視野に入れて、これから心のふるさと教育の一層の充実を図っていこう、郷土に根差した心の教育を推進していこうという考え方のもとであります。
 次に、熊野高校の問題に関連いたしますが、この問題の背景といたしましては、全教職員が一致協力して生徒にかかわるという基本的な体制が十分であったとは言いがたい面がございます。そうした中で、当該教員の指導の実態が把握されず、長期間見過ごされてきたことにつきまして、教育委員会としての指導の不十分さや教育行政のあり方が厳しく問われているものと受けとめてございます。今回の出来事を契機に、教育委員会の指導や学校運営の責任者である管理職のあり方、教職員のモラルと資質の向上、さらにはPTAや同窓会、地域社会との連携などについて改めて点検と改善を図り、教師と生徒の心の通い合う教育、信頼に基づく教育を全教職員の共通理解と協力のもとに進めるよう努力してまいります。
 次に、自然博物館の鯨の骨格標本についてですが、平成七年十一月、和歌山港に漂着したニタリクジラは、世界各地の熱帯から亜熱帯にすみ、日本近海での漂着例としては極めてまれであります。自然博物館では、こうした学術上貴重な資料を研究公開するため、開館十五周年記念事業として本年の七月二十日から十一月三十日の間、「クジラが和歌山港に現れた」のタイトルで特別展を行ったところであります。
 保管につきましては、今後とも本館玄関前の広場において屋外展示することにいたしております。今後とも、県民に親しまれる施設として取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 33番中山 豊君。
○中山 豊君 僕の問題意識から言うたら、与えられた四十分というのは少な過ぎるわ。それをまず申し上げながら、あと三分間で何を言うかということを整理してみた。
 やっぱり、指導要領。これは教える内容が子供たちの実態から外れて、余りにも多過ぎる。これが教育困難を引き起こしている。そういうことの一つの証左として、学習指導要領の見直しをしなさいと、市町村自治体議会で県下で三十七も国へ上げられている。こういうふうな実態からも、やっぱり冷厳にそのあたりに目を配らなくちゃならんのやないかと。できたら本議会でも、そういう点の論議を十分していただきながら、見直せというふうな議決をして中央へ上げていただくよう要望を申し上げたいと思います。
 次に、やっぱり熊野の話よ。熊野高校の話は、しゃんとしておかなかったら、もう処分してそれで終わりやというようなことじゃなくて、ああいう今までなかったようなことが起こってくるということの背景は、教育長が今お述べになったことのように単純なものではないと思う。しゃんとしなかったら、教師の採用のときの人事行政に情実が絡んでいるのではないかという、こういうふうな話さえ飛び出してこないとも限らないから、身を引き締めて、どういうふうなことなのかということをつぶさにシビアに反省をして教育行政に当たってもらうことを申し上げておきたいと思います。(「そんなこと、問題発言やないか。情実ら絡んだらて」と呼ぶ者あり)
 次に、管理強化が進めば進むほど立派に秩序が保たれて教育効果が上がるかと言ったら、必ずしもそうではない。秩序ある職場なり教育活動というのは、やっぱりそういうふうなことだけに依拠するということにはならない。──問題発言はそっちの方やわ。おれが発言しているんや。
 管理強化がされればされるほど退廃が進むという、こういうふうなことの一つの証左として熊野高校のあの事件を見るべきではないかということを申し上げて──さらに、青陵高校の問題については、特に教育委員会に意見を求めるなどして知事、決断してあげてください。それだけお願いしておきます。
 以上です。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中山豊君の質問が終了いたしました。
  〔「議長、46番、議事進行」と呼ぶ者あり〕
○副議長(阪部菊雄君) 46番。
○大江康弘君 今の中山議員の再質問の発言の中で、情実採用というような、採用された教員全体の名誉にかかわるようなことが言われたんですけれども、これはもうとても放置できる問題ではありませんので、一回これを厳重にご審議いただきたいことを申し上げておきます。
  〔「議長、休憩」と呼ぶ者あり〕
○副議長(阪部菊雄君) この際、暫時休憩いたします。
  午後一時五十五分休憩
      ─────────────────────
  午後四時五十四分再開
○副議長(阪部菊雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
      ─────────────────────
○副議長(阪部菊雄君) この際、本日の会議時間は、都合によりこれを延長いたします。
      ─────────────────────
○副議長(阪部菊雄君) この際、暫時休憩いたします。
  午後四時五十五分休憩
      ─────────────────────
  午後五時四十一分再開
○副議長(阪部菊雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
      ─────────────────────
○議長(木下秀男君) ただいま、中山豊君から、同議員の発言中、意を尽くせない点があり誤解を招いた旨、議長に申し出がありましたので、これを了承いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(阪部菊雄君) ご異議なしと認めます。よって、この申し出を了承することに決定いたしました。
      ─────────────────────
○副議長(阪部菊雄君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 議長のお許しをいただきましたので、晴れて一般質問をさせていただきます。
 雑賀崎沖埋立問題と和歌山下津港についてであります。
 このテーマで私は、本年九月定例会一般質問四日目に質問をさせていただきました。そのときの再質問で、こう要望させていただきました。「このたびの埋め立てに当たって当局は、雑賀崎の地域住民の方、漁業に携わる方、観光業に携わる方、和歌山市当局、そして片男波から雑賀崎に至るこの和歌の浦の地をこよなく愛する一般市民のそれぞれの声を十分に聞かれておりますか。まずその作業から入ってください」と。
 確かに県当局は、県の港湾審議会で承認された後の内容を、十月に入ってから何回か説明に雑賀崎地区を回られておりました。しかしながら、最初に計画ありきとする県のやり方は、和歌浦観光旅館組合、十月七日に地元女性の方々の呼びかけによる雑賀崎の自然を守る会、和歌の浦観光協会、そして四連合自治会等の計画の白紙撤回を求める大きな反対運動に発展し、その声は国の運輸省、環境庁にも届き、八万人以上の反対署名が集まるに至ったのであります。
 私も、地元関係者や大学の教授にお会いして、自分の港湾整備の必要性を認めている立場を明らかにした上でお話を聞かせていただく機会も何度かありました。皆様、お立場、お立場で傾聴すべきご意見をお持ちでありました。
 反対運動を展開されている方々に大港湾の必要性を認識していただくためには、当計画が和歌山県に大きな経済的メリットをもたらすものでなければなりません。わずか三百万トン強といった貨物の微増と言わず、それこそ混雑をきわめる大阪湾内の危険を回避するために、わざわざ瀬戸内海へ大型船を航行させなくてもよいように、太平洋岸の、そして大阪湾の玄関港である和歌山下津港が、神戸港、大阪港の単なる補完港ではなく、両港に負けない物量をさばける大港湾に変貌させたいという意思を内外に示すべきではないでしょうか。そのためには、三十年先、いや五十年先までを視野に入れた将来設計を世に出してもよいのではないでしょうか。
 完成目標年度を二〇一〇年としておられますが、海陸一貫輸送を目指し、二十一世紀初頭着工を目指している紀淡海峡大橋の完成にも歩調を合わせていることが容易に推測されるわけであります。物が流通する交通の要衝には人もおのずと集まりますし、人の集まるところには産業も集積されるものであります。ただ、時代はバブル経済もはじけ、生活の豊かさというよりも、心の豊かさを求める時代に入っております。人の集まるところには、それらの人々の心をいやすものがなければなりません。それは、ほかでもない自然であります。和歌山港には、すぐ近くに男性的な海岸美の奥和歌の浦、雑賀崎があるのです。この自然美、景観を守らずして、磨かずして、二十一世紀の真のあるべき大港湾は誕生し得ないと言っても過言ではないと思います。人の手でつくった人工的な緑地帯では、ただのオブラートにしかすぎません。心のいやしにはならないのです。これからの港湾は、単に大型コンテナ船を就航させて大量貨物を動かすだけにとどまらず、人の心を満たす、そしていやしてくれる自然環境との共存を求めなければ、ただのコンクリートのしかばねにすぎないものになってしまいます。この反対運動の高まりは、単なる住民エゴではあり得ないと思います。
 中央港湾審議会における環境庁意見を見せていただきました。「本港沖地区に計画されている廃棄物処理・活用用地については、埋立を厳に抑制すべきとされる瀬戸内海における大規模な埋立てであり、瀬戸内海国立公園の特別地域に隣接していることから、特別地域内の重要な視点場である雑賀崎地区から望見した紀淡海峡から太平洋にかけての景観に著しい影響を与えるものである。 これは、『瀬戸内海環境保全特別措置法第十三条第一項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針』に定める、埋立てによる自然景観への影響の度合が軽微であること、自然公園法による特別地域(その周辺を含む)での埋立ては極力さけることの各事項に抵触するものと考える」とあります。これは、県にとっても、もはや無視できる見解ではありません。
 十一月二十八日の中央港湾審議会の発表を受けて長沢土木部長は、「当初の計画には固執しない。今後、反対意見も十分聞いた上で、計画変更を視野に入れながら作業を進める」と明言されました。そして西口知事は、「真摯に受けとめたい。埋立地の位置や形状について広く意見を聞き、柔軟に対応したい」とコメントを発表されました。
 知事が、聖徳太子の「人皆心あり」をご自身の座右の銘とされているとお聞きいたしておりますが、まさに「真(まこと)」の政治を標榜される西口知事を私は信じております。どうか、大交流時代の日本の中心として和歌山下津港を一大物流拠点へと導くとともに、観光立県和歌山の名にふさわしい自然景観を守り、むしろ磨いて輝かせる作業も同時に行ってください。この二つを両立させてこそ、和歌山県の生きる道が開けてくるものだと私は信じて疑いません。
 そこで、質問に入らせていただきます。
 一、今回の埋立計画に対する反対運動の高まりは、県にとりましても看過できないものになっております。そして、地元女性から声を上げたこの活動には、何の政党色もありません。生活に根差した女性の方々が、地元の男性にも理解いただき、広く地区外の人々をも共鳴させた、和歌山県で初めての女性の社会参加運動という重要な一面を見逃してはならないと思います。先ほども申しましたが、知事の政治信念からも真心で受けとめていただき、誠意ある対応をいただけるよう、壇上からではありますが、要望といたします。
 また、今後、埋立免許を取得して環境影響調査へと着手するためには、見直し計画のまとめが急務であります。地元住民を初め、各界の意見を聞く作業は避けて通れません。国の港湾審からまだ日も浅いですが、和歌山県の将来を考えれば一刻の猶予も許されません。県民は今、県当局の誠意を問うております。連日、先輩議員からも質問がありました。見直し計画、そしてその後のスケジュール等、早晩公表いただけるよう、ここで強く要望いたしておきます。
 二番目、県の港湾計画はオール関西の視点で港湾機能の充実を図ろうとするもので、大阪湾を取り巻く都市圏との役割分担、機能分担の意味から重みがあり、運輸省としても期待の大きいものであります。だからこそ、もっとできる限りオープンに審議されるべきであったと思います。県の審議会が承認されて初めてマスコミを通じて県民に公開されるという進め方こそ反対運動の起きる根本原因であります。計画段階の中でスムーズに計画を策定させるために非公開で行うというのならば、当初から当該港湾に身近な港湾業務関係者、地元住民の代表者の方などももっと港湾審のメンバーに入れているべきではないですか。
 三番目、山部赤人、藤原卿の詠んだ歌には、雑賀崎から遠く加太、友ケ島、淡路島を望み見るものが幾つか見られます。雑賀崎の持つ万葉ゆかりの歴史を尊重するならば、せめて番所の鼻から加太、友ケ島の望める位置まで計画の港湾関連用地を後退させるべきであります。その分を水軒の一文字防波堤沿いに本港沖地区のより北側へ持っていくのと、テクノスーパーライナー等、内貿拠点の整備をうたった、もともと大水深のある北港沖地区に外貿機能を持たせることによって補うしかないと思います。
 そして、例えば北港地区には欧米航路を、本港地区には東南アジア航路を持ってくるといった仕向け地、航路別整備を行うことが、ひいては同じ和歌山港内で相互補完機能をあわせ持つことになるのではないでしょうか。そのためには、北港地区と本港地区を最短距離でつなぐ橋を伴う道路の整備も不可欠であり、紀の川河口大橋ももはや無料にして本格的に臨港道路の機能を持たせるべきでありましょう。
 また、紀淡海峡大橋と和歌山港を直結させる湾岸道路がどうしても必要となってきます。現在の阪和高速、そして第二阪和国道との、今以上市街地の渋滞を引き起こさない道路アクセス計画もお示しいただきたい。
 そして、それが再び紀の川以北の景観破壊とならないような配慮をどうつけていくか、これも人工と自然との共生面から今後の重要な課題になってくると思われます。そして、今県が行っている西浜地区と雑賀崎地区の土地造成事業における港湾関連用地、埠頭用地についても、最大限むだのない、効率のよい施設の集積を行っていただきたいと思います。
 この際、県民の理解を得られるように、県の埋立計画の見通しとして必要だと認識されているポイントを具体的にお示しいただきたいと思います。
 二番目に、県立高等学校の学区制について質問させていただきます。
 和歌山市地区の学区二分割については、昭和四十七年以来、入学者選抜制度のあり方について議論され、昭和五十四年度に南北学区ということで実施に至ったわけであります。当時の県議会での諸先輩議員と教育委員長、教育長とのやりとりを、私も興味深く読ませていただきました。昨年九月議会において新島議員もご質問されましたが、私も学区制について常々疑問に思う者として、あえて重複を顧みず質問させていただきます。
 昭和五十四年当時の中学三年生の生徒数は、和歌山大学附属中学校を含めて、北学区で二千五百六十五名、南学区で三千百六十六名でありました。平成九年現在では、北学区で二千七百十四名、南学区で千六百九十七名と南北生徒数が逆転し、一千十七名という大きな差が出てきております。
 学区制施行前、既に昭和五十二年十二月議会の一般質問で岡本保議員が、「旧和歌山市──すなわち南学区だと思いますが──は非常に人口が減っておる。また、特に河西、河北、こういうところはどんどん人口がふえておる。だから、分割案を決める場合には、少なくとも十年先を見通した、長期展望に立ったところの分割案でなければならないと私は思う」と発言されております。
 二十年も前から適切な警告をいただいているのに、今まで学区制の見直しについて、当局において踏み込んだ議論がなされていないのはおかしいのではないでしょうか。私は、南北学区制という中学区制には反対であります。各高等学校には、もともと中学生を引きつける伝統とか強みがあります。例えば、A高校は野球の名門校で、ぜひあの高校で野球をしたい、あのユニホームを着てみたいとか、B高校ではサッカーが毎年強い、C高校にはある科目で名物教師がいる、D高校は文武両道で自由な校風だそうだとか、いろんな魅力を持っていると思います。まして、高等学校は義務教育ではありません。中学生に自由に高校を選ばせてあげることこそ、彼らにさまざまなやる気を持たせ、自信を伸ばしていくことになるのではないでしょうか。本当に自分が行きたい学校ならば、多少遠くても通学することをいとわないと思います。和歌山市のみではありません。私は、家庭の事情等が許されるのなら全県一区で高校を選択してもよいと思うのです。和歌山市内の野球少年が、どうしてもあの日高中津分校へ入学したいと言っていたり、あの黒潮の見える大自然に囲まれた学校で伸び伸び勉強したいとか思っている生徒が現実にいるのです。学力という尺度だけで学校間格差を云々することこそおかしいと思うのであります。
 私は、現行学区制の施行以前に高校を卒業いたしましたが、仲間の中には和歌山市外から住所を移して下宿暮らしをして高校に通ってくる学生がかなりいましたし、事実、ある年には全生徒数の一三%強が和歌山市外の中学校を出た者であったという統計もございます。学区制施行後も、事前にそれぞれの学区からもう一つの学区へ住所を移してくる学生も現にいたわけであります。
 今、専門学科において推薦入学というものが大きな割合を占めるようになっております。この原因の一つに南北学区制の問題が大きくかかわってくると思うのであります。専門学科はともかく、普通科においても、中央教育審議会においては推薦制度の採用の推進傾向が見られるということでありますが、生徒の自由競争、機会均等の立場から、中学校三年間をフルに勉学にスポーツにとエンジョイしてもらうためにも、この方向へ行くことはぜひ避けていただきたいものです。そもそも推薦制度というものは、一部のエリートを確保するための制度である一面があると思います。学内格差、学内における優越感、劣等感を生じさせるものであると思います。それの方が学校間格差よりも大きな問題だと思います。学校間格差というものを単に学力の差でとらえるのはおかしいのではないでしょうか。ぜひ、慎重にご議論いただきたいものです。
 南北学区制の採用に当たって当時県教育委員会は、現行中学区単独選抜制のもとでは同一学区内の高校数が多いほど格差が大きく、このため大学入試を目指して比較的学力の高い生徒が特定校に集まるという現象や、特定高校を目指して義務教育段階の熾烈な受験勉強が強まるなどの問題点が指摘されたと述べられておりますが、大学進学を目指す中学生たちが、友達も行くからと言って学習塾に通うことがもっと多くなり、中学生に対して受験勉強を強いている状態に現在とて変わりはありません。いや、小学校低学年のころから塾に通わせる家庭も少なくありません。有力な私立の進学校もできましたし、十八年前とは高等学校地図も随分さま変わりしております。学力だけでなく文武両道で高校生らしく伸び伸びとした学校生活を送っているのだという自信と充実感を公立高校生に持たせることは、学校側にとっても学生側にとっても大切であると思います。すべて一線に高等学校を並べて、高等学校側自身にも努力していただいて、中学生に自由に受験を選択してもらえばよいと思います。ただ専門学科を多くつくることによって無理に学校の目玉をつくるよりも、すべての基礎学科目を学ぶ機会のある普通科での学習を真に身につくものにするためにも学区制を廃止していただきたいと思います。
 基本的に高等学校というところは、学校生活をエンジョイしながらも勉強をするところであります。高校で総合的に各科目を勉強しながら、将来の自分の適性、進路というものを見つけていっても遅くないと思います。中学三年のときに将来に向かって専門的なものを選択させるのは少し無理があるような気がしてなりません。十五歳のときから自分の進路を固定化して、かえって自分を追い込んでしまう危険性もあります。各専門分野の大学へ進学したくても、例えば美術系の大学へ進学したくても、英語なり国語なり、その他基礎的なレベルの知識、学力を身につけてこそ、その専門分野をより大きな視野で学んでいけるもの、外へ大きく羽ばたいていけるものだと思います。
 最後に、「二十一世紀を展望した我が国の教育のあり方について」という中央教育審議会のまとめの中で中高一貫教育の導入についても述べられておりますが、これと学区制とを決して結びつけてほしくありません。全くの別問題ととらえていただきたいと思います。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 和歌山市だけにとどまらず、現行学区制について、見直しも含めた今後のあり方をどう考え、検討されていくおつもりですか。
 これで、私の第一回目の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 長坂議員のご質問にお答えいたします。
 雑賀崎埋立問題と和歌山下津港の問題でございます。
 まず、県の港湾審議会の審議のあり方とメンバーについてでございます。
 計画策定に当たっては、整備構想調査委員会を設置するなど、さまざまな意見を集約しながら計画案の検討を重ね、その上で地方港湾審議会でご審議をいただいたものでございます。この地方港湾審議会は、学識経験者や地元経済団体、港湾関係者、地元代表としての市長、町長のほか、県議会議員、関係官庁などといった各界各層より成る委員構成となっておりまして、それぞれの立場でご審議をお願いしたところでございます。
 次に、埋立計画の見直しとして必要であると認識されているポイントについてというご質問でございます。
 和歌山市下津港における物流機能の配置といたしましては、本港区において、現在既にある程度集積している外国貿易機能を活用しながらこれを拡充する、北港区においては、将来のテクノスーパーライナーなどの高速船にも対応可能な内貿機能を新たに展開していくべきであると考えております。こうした本港区と北港区を結び、さらに背後圏と円滑に接続するためには、議員ご指摘の臨港道路体系の整備はぜひとも必要であると考えております。
 今回の港湾計画では、本港沖地区と臨港道路一号線、都市計画道路南港山東線を結ぶ臨港道路本港沖線や北港沖地区から国道二十六号を結ぶ臨港道路紀の川右岸線などを位置づけておりますが、さらに紀淡連絡道路と接続し、北港区から今回の本港沖埋立地を利用して本港区に至る湾岸道路をも構想しております。また、臨港道路紀の川右岸線から第二阪和国道へのアクセス道路についても検討を行っているところであります。これらの道路により円滑な物流体制が確保され、和歌山下津港の港湾機能はより充実し、県経済の活性化につながるものと考えております。
 また、議員ご指摘の現在事業中の西浜地区については、これは輸入原木を水面から陸上貯木に転換するための貯木用地などとなっております。また雑賀崎地区については、市内の住工混在地の環境改善などを図るため、機械金属関係の工場を移転集約する工業用地やその関連用地であります。このようなことから、和歌山下津港で不足している貨物保管のための倉庫や上屋などの物流関連施設用地や紀北における防災用ヘリポート用地を新たに本港沖に計画したものであります。
 今後は、これら計画が掲げた目標を達成し、本県の発展を図るために、景観保全の観点をも含めて適切に対処してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 高等学校の学区制についてお答えいたします。
 県立高等学校の学区制については、高校教育の機会均等、生徒の通学事情、学校選択の自由等を総合的に勘案し、一学区につき全日制普通科高校を二校ないし三校程度とする中学区制をベターなものとして採用しているところでございます。和歌山市の学区についても、こうした考え方に立って実施してきております。
 一方、これまで社会の変化や生徒の学習ニーズの多様化等に対応する教育改革を積極的に進めるとともに、全県一区の国際交流科、環境科学科、情報処理科などの専門学科を初め、生徒一人一人の適性や進路希望に応じ、幅広い選択履修ができる総合学科などを新たに設置してまいりました。また、自分の学校にない科目を他の学校で履修できる学校間連携など、先進的な取り組みを推進してきてございます。こうしたことにより、生徒の学校選択の幅も拡大してきております。また和歌山市においては、南北学区間における生徒数のアンバランス等を踏まえ、本年、現行学区制を一部見直したところでございます。
 全県的な学区制の今後のあり方については、これまでの経緯、生徒や保護者の願い、県民の幅広い意見などを十分踏まえながら、中学校、高等学校教育に与える影響、さらには今後の教育改革の進展や社会情勢の変化等を見きわめ、総合的かつ慎重に研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番長坂隆司君。
○長坂隆司君 ご答弁をいただきました。
 今、難問の山積する国政における迷走を思うとき、ふと県政に思いが及びます。県民の声をよく聞いて、県民、住民の目線で物を考えていただきたい。真剣に埋め立ての位置や形状、そして景観、自然環境への配慮を検討いただき、可能な限り早い段階で見直し計画を県民にお示しいただきたいと思います。
 このたびの住民運動は、かつての新不老橋建設の際の反対とは、運動の性質、流れ、そして力強さが異なるものだと思います。まさに、これが「自然と共生 快適わかやま」をうたった県民運動に発展するかもしれません。すなわち、「CAN DO WAKAYAMA」「感動わかやま21」かもしれませんよ。私も、和歌山県経済の大きな発展のために、和歌山下津港の港湾整備の必要性を信ずる者として、県は本当に県民に今回の計画の趣旨、本質を納得してもらえるような形で計画を見直しつつ、将来に向かって前進していっていただきたいと要望します。
 学区制については、和歌山市は人口が四十万人弱あります。二、三校から選択というより、六校から選択しても決して多くないと思います。それくらい選択肢があった方が、受験する側もいろんな個性を、自分の可能性を振り返って考えてみる意味で有意義ではないでしょうか。今は、実社会に出てからが大事であります。だからこそ、現行学区制移行の際、問題点として挙げられた、中学生に過大な受験勉強を強いるとか、学校間の生徒の間の優越感、劣等感が生じるとかということは、学区制の大小にかかわらず、残念ながら少なからず起こり得ることです。ご答弁をいただいた中の、学校間連携などの施策や学校での活動を通じた愛校心の高揚などで緩和もされましょうし、むしろ同一行政区域内でもあるし、青少年時代の一通過点を生徒の自由意思を尊重して、生徒自身を生かすためにも、より大きな選択の機会を与えてあげてもよいと思います。どうか、今後とも学区制について検討を重ねていただくよう要望申し上げて、再質問にかえさせていただきます。
 終わります。
○副議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(阪部菊雄君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後六時十四分散会

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