平成9年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(宇治田栄蔵議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時一分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(木下秀男君) この際、お手元に配付のとおり、監査委員から監査の結果報告及び現金出納検査の結果報告がありましたので、ご報告いたします。
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○議長(木下秀男君) 次に、報告いたします。
 知事から、議案の追加提案がありました。
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                     財第185号
                     平成9年12月9日
 和歌山県議会議長  木 下 秀 男 殿
              和歌山県知事  西 口   勇
   和歌山県議会平成9年12月定例会議案の提出について
 地方自治法(昭和22年法律第67号)第96条の規定に基づく議決事件について、次のとおり議案を提出します。
               記
 議案第141号  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
 議案第142号  教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
 議案第143号  市町村立学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
 議案第144号  警察職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
 議案第145号  知事等の期末手当の特例に関する条例・
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  【日程第一 議案第百四十一号から議案第百四十五号まで】
○議長(木下秀男君) 日程第一、ただいま報告の議案第百四十一号から議案第百四十五号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) ただいま上程されました諸議案について、ご説明申し上げます。
 議案第百四十一号から第百四十四号は職員等の給与改定に伴う関係条例の改正であり、去る十月十三日に出された県人事委員会勧告を受けて本年四月一日から給与改定を実施するために所要の措置を講じるものであります。
 また議案第百四十五号は、平成九年度の特別職等の期末手当の支給割合を平成八年度の支給割合に据え置くためのものであります。
 なお、給与改定に伴う所要の経費につきましては、既定の予算で対応することといたしております。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(木下秀男君) 以上で、知事の説明が終わりました。
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  【日程第二 議案第百二十四号から議案第百四十号まで】
  【日程第三 一般質問】
○議長(木下秀男君) 次に日程第二、議案第百二十四号から議案第百四十号までをあわせ一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 22番宇治田栄蔵君。
  〔宇治田栄蔵君、登壇〕(拍手)
○宇治田栄蔵君 十二月県議会冒頭に質問の機会を与えていただきました先輩・同僚議員に感謝を申し上げ、質問をいたします。
 「変革と発展 輝け和歌山」をスローガンに県民の期待を担って知事就任後はや二年、西口知事は、道路の整備や港湾の整備、国際交流の推進、福祉の町づくり、環境基本条例の制定、分校サミットの開催など精力的に県政に取り組まれており、県民の期待もいよいよ高まっております。今回、「ゆとりと充実 輝く和歌山新時代」を基本目標とした新長期総合計画を策定されることは知事の意欲を示されるものであり、まことに時宜を得たものであると思います。
 時代は大きな転換期であり、国際社会では冷戦構造の終えんから新しい秩序づくりが模索されており、グローバル化とともに世界的な大競争時代に入っております。また国内においても、戦後の経済成長の行き詰まりから社会や経済における日本型システムの見直しが迫られており、橋本内閣では行政、財政、社会保障、経済、金融、教育の六つの改革が挙げられ、既に大変動を予感させるものがございます。明治、戦後に次ぐ第三の改革が成就するのか、これからが正念場だと思います。
 こういう先行き不透明な、なかなか明るさの見えない時期に二十一世紀の将来を予測し、県政の展望を示すことが知事として大事なことであり、県民も期待されていると思います。
 さて、先般、新長期総合計画の現在案が示され、策定作業も大詰めを迎えているようでございますが、検討を続けてきた審議会委員各位と事務局のご努力に対し、敬意を表する次第であります。本計画について、私なりの所感と質問を知事並びに企画部長にさせていただきます。
 本計画は、基本目標を「ゆとりと充実 輝く和歌山新時代」とし、この基本目標を達成するため、「心豊かで個性輝くひとづくり」、「豊かさを実感できる暮らしづくり」、「創造力あふれる産業づくり」、「新時代を支える基盤づくり」という四つの施策の基本方向を設定しています。また、本県を取り巻く潮流の変化とその展望として、少子化と人口減少、価値観の変化、ライフスタイルの多様化、経済のグローバル化、地球環境問題の顕在化、高度情報化社会の進展、産業・雇用構造の変化、集中から分散への七項目を挙げ、また本県の課題として、高齢化・少子化への対応、国際化への対応、豊かな環境の保全と創造、高度情報化社会への対応、産業の活性化、人材の育成・集積、文化の振興、安全な県土の創出、均衡のとれた県土の形成、参加と連携の推進を挙げ、状況分析については的確な把握がなされております。そして、これらの課題に対応し具体化する戦略的プロジェクトとして、広域連携ネットワーク構想、新産業創出・育成、紀の国ふれあいリゾート構想、共に生きる安心のまちづくり、快適環境のまちづくり、紀の国・人・いきいき構想の六つが提示されていますが、基盤整備以外は事業のイメージがいまひとつ思い浮かべにくく、具体的な課題解決への道は不十分であり、目標となる平成二十二年度の和歌山県の姿の打ち出しが弱いように思われます。
 総合計画の宿命か、総花であるとの印象を免れません。和歌山県の目指すところを明確にお示しいただきたいと存じます。
 そこでまず、今回の新長期総合計画の基本目標についてお伺い申し上げます。どういうお考えで「ゆとりと充実」というキャッチフレーズをつけられたのか、また「ゆとりと充実」が実現するためにどういうことが必要なのか、知事からお答えをいただきます。
 二年前の知事選において知事は、和歌山新時代の創出に向け、百三十六の公約を掲げておられましたが、その公約が本計画にどのように盛り込まれているのか、具体的にお示しを願います。
 また、県の発展には、地方分権化、国、地方の役割分担を進めていく中で、それぞれの地域が知恵を出し、活性化に結びつけていくことが必要であります。特に県、市町村の守備範囲もきちんとし、目標に向かって住民をリードしていくことが大事であると思います。もちろん、計画の推進に当たっては、県民の参加、地域住民の主体的な活動が必要であります。計画策定に当たっても、県民の声が反映されたものでなければ血の通った計画にならないと思います。
 知事は、移動県庁や女性一〇〇人委員会で県民との対話を重視されていますが、本計画に関して県民の声がどのように反映しているのか、お示しを願います。
 それから、県名を抜けばどこの県の長期総合計画かわからないとよく言われるわけでございますが、本県にあって和歌山県らしさ、特性といったものがぜひともこの長計の中に含まれていなければなりません。この長計において和歌山県らしさがどこに特徴的にあらわれているのか、この点について企画部長にお伺いをいたしたいと存じます。
 この長期総合計画の決定は来年の審議会で審議・答申を経て二月ごろに決定されるということでございますが、この長計で本当に大事なのは、計画ができて実施段階に入ってからだと思うわけであります。まず、厳しい財政状況の中でどうやって長計に位置づけられた施策を選択し、実施していくのか。それから、計画の推進に当たって市町村や県民の理解と協力が必要不可欠であると思いますが、この点はどのようになっているのか、企画部長にお伺いをいたします。
 次に、十年度予算編成についてお伺いをいたします。
 現在、国及び地方の財政を取り巻く環境には非常に厳しいものがあり、国や一部の地方自治体では「危機的状況」という表現が使われるまでに至っています。政府の長期債務残高は、国債発行残高だけで二百四十兆円に上り、国債以外に国有林野事業など特別会計の借入金が八十兆円、地方債務を加えると四百四十二兆円に達し、さらに一般会計の特別会計からの借り入れ、歳出を先送りする操作による隠れ借金や旧国鉄の債務を含めると四百七十六兆円になり、先進国中、最悪の水準にあります。そのため、国においては財政構造改革が強力に進められており、さきの臨時国会の冒頭における所信表明演説でも橋本総理大臣は、「今国会に内閣が提出する最も重要な法案は、財政構造改革を進めるための法案であります。国と地方を合わせた長期債務が本年度末には四百七十六兆円にも上り、さらに今後、少子・高齢化の進展に伴い歳出の自然増が見込まれる現在、財政構造をこのまま放置すれば経済の活力が低下し、将来に背負い切れない負担を残すことは明らかであります。これは、次の世代に対する責任の放棄にほかなりません」と述べ、不退転の決意を再度示されております。
 二カ月にもわたるさまざまな角度からの議論の末、財政構造改革の推進に関する特別措置法は、先日、国会で成立したところであります。その内容を見ますと、総論では、平成十五年度までに国と地方を合わせた財政赤字の対GDP比を三%以下とし、かつ特別公債からの脱却と公債依存度の引き下げを行うことを当面の目標に掲げております。また、その実現のために十年度から三年間を集中改革期間とし、予算の削減目標並びにそのための制度改革等を定めています。例えば社会保障の分野では、医療保険制度、年金制度及び雇用保険制度の改革を行うこととし、十年度の予算額は、八千億円の自然増が見込まれるところを三千億円以内にすること、十一年度及び十二年度の予算額は前年度の額の二%増以内に抑えることが規定されております。また公共投資につきましては、公共事業に係る長期計画について、その期間を延長することにより投資規模の実質的な縮減を図ることとし、十年度の予算額は前年度の七%カット、十一年度及び十二年度の予算額も前年度の予算額を下回ることが定められております。そのほか、人件費の抑制や補助金についても触れられており、さらに地方財政については、十年度の地方財政計画における一般歳出の額が九年度の額を下回るよう法律で義務づけられています。
 本県におきましても、財政状況が厳しくなっているということについては、議会においても知事や総務部長から幾度となく承っております。その中で、先日、本県の財政事情の中期展望が公表されましたが、その内容を見てみますと、今後三年間の財政状況については歳出が歳入を大幅に上回る状況が続くという試算になっています。平成十年度は三百四十二億円、十一年度は三百六十九億円、十二年度は三百七十一億円の財源不足が生じる。はっきり言って、大変な事態になっているのだな、本当にこれで大丈夫かという感想を受けます。
 県当局としては、これからの予算編成作業の中で、困難なことではありますが、この大幅な歳出歳入のギャップを埋めていく努力をしていくのだと思いますが、その一環として各部局に通知された十年度の予算編成方針は従前と比べて大変厳しい内容になっています。
 福祉に対する支出の県単独扶助費は九年度当初予算額と同額以下と横ばいになっていますが、県単独投資は一五%カット、不適正支出で問題となった旅費等の標準事務費は二〇%カット、その他の施策経費は一〇%カットとなっており、軒並みマイナスシーリングとなっています。他方、各部において予算の重点化を図るために三十五億円程度の重点化調整枠を設けるとともに、組織横断の政策課題に対処すべく関連施策を総合調整するために七億円程度の調整枠を設定するなど、予算のめり張りをつけるための工夫もされております。
 ここで、総務部長にお伺いします。
 本県において、財政事情の中期展望が示すように、三百億円を超える歳出歳入ギャップを生じるに至った要因をお伺いいたします。あわせて、そのギャップを埋めるためにどうしていくのか、さらには十年度のシーリングの基本的考えについてもお伺いいたします。さらに、財政健全化のためにはみずから血を流す覚悟も必要だと思いますが、今後、県庁組織そのもののリストラクチャリング、すなわち組織、定数などについていかがなされるおつもりか、見解を承りたいと存じます。
 一方、現在、日本経済並びに県経済の足取りはとても順調と言えるものではありません。私も、多くの有権者の方から、景気が悪いので何とかしてくれという声を聞きます。公共事業や県の単独事業が削減されることによる影響を懸念する声も各所で聞いております。また先日、一部の金融機関で取りつけ騒ぎが起きたことを見ても、県民には将来に対する漠然とした不安感が広がっていると言えるでしょう。このような懸念、不安感を払拭するためには、県経済が元気を取り戻すことが不可欠であります。もちろん、規制緩和が叫ばれる中、県経済が元気を出すためには、民間からの新たな発想やその行動力が第一に必要になってきますが、和歌山のように民間の力がやや弱い県では、行政もまた民間活力を導き出すための積極的な取り組みが必要であります。
 先ほど述べましたように、将来に禍根を残さないためにも財政再建は進めていかなければなりませんが、一方、県経済の活性化のために県当局が予算面等で民間をバックアップすることも必要であります。財政の健全化を推し進めはするが、将来を見据えた中で県勢の伸展につなげていくための万全の措置も講じていくという真摯な取り組みをぜひともお願いしたいわけであります。
 知事におかれては、この厳しい局面の中、十年度予算編成においてこれらの要請にどうこたえていくおつもりなのか、所見をお伺いいたします。
 次に、和歌山下津港湾本港沖地区埋立計画、通称・雑賀崎沖埋立計画について質問をいたします。
 和歌山下津港は、昭和四十年に特定重要港湾に指定され、臨海部に位置する各種工業及び紀北地域における流通拠点として重要な役割を果たしています。平成七年には釜山との外貿定期コンテナ航路が開設され、今後、地域国際流通港湾としての役割の増大が見込まれています。平成七年の港湾取扱貨物量は、外貿二千四百三十五万トン、内貿三千百二万トン、合計五千五百三十八万トンに達しています。本港の背後地域においては、近畿自動車道の開通、関西国際空港の開港に加え、京奈和自動車道などの高速交通体系が拡充されてきており、京阪神地域との結びつきが強化されることから、関西圏の一翼を担う拠点として今後ますます発展することが期待されています。このため、本港においては、背後地域の発展に伴う物流需要の増大やコンテナ化の進展など、物流形態の変化に対応した機能を確保するとともに、輸送の効率化等により地域産業の高度化、活性化を支援することが求められています。
 次世代の高速貨物船であるテクノスーパーライナーの母港誘致や船舶の大型化に対応した大水深、多目的外貿ターミナルの確保、ガントリークレーンの設置等、港湾の設備充実に対する県民の期待には大なるものがあります。しかしながら、今回の計画地・雑賀崎の地は、万葉のころ、「紀の国の雑賀の浦に出で見れば海人の灯火波の間ゆ見ゆ」と歌にも詠まれ、幕末、黒船の見張り所としての番所の鼻や大島、中ノ島、双子島が瀬戸内の海に浮かぶ景観は、和歌山市に残された貴重な財産であります。この景勝地を背景として、太公望、七洋園、双子島荘、潮風荘の四軒の旅館が観光旅館として営業されており、観光立県を重要政策とする本県において、この景観を守ることは必要不可欠であります。景観を尊重しながら港湾を整備していくことが肝要であります。
 十一月二十八日に開催された国の港湾審議会では、このことに思いをいたし、和歌山下津港の港湾計画について、「原案のとおり、おおむね適当である。但し、雑賀崎前面の埋立計画については、瀬戸内海国立公園の特別区域に隣接していることから、景観の保全についてさらに検討されたい」とのただし書きが付されました。
 県においては、国の港湾審議会の審議結果、雑賀崎自治会、和歌浦観光旅館組合の反対、商工会議所等の経済団体の推進要望などを踏まえ、今後本計画をどう進めていくお考えか、お尋ねをいたします。
 十一月二十七日の読売新聞では、県は雑賀崎沖埋立計画について、予定地を北に数百メートルずらして景勝地から遠ざける方針を固めたと報じられておりますが、そのような事実はあるのか否か、お答えを願いたいと存じます。
 また、本計画では、地域環境保全のため廃棄物受け入れ空間を確保することとされ、海面処分場としての性格を有することが示されていますが、県民の多くは産業廃棄物の投棄による汚染を心配しております。廃棄物処分の概要と本港沖での必要性についてお答えを願います。
 さらに、本港沖の埋め立てについて反対されている多くの方は、唐突に計画が出されたとの思いがあります。何ゆえに事前に計画の概要が説明されなかったのか、お聞かせ願います。
 次に、教育委員会の不適正経理について質問をいたします。
 教育委員会では、文部省の委嘱を受けて小学校実技県講座、高等学校教育課程全国研究集会などの事業を行っており、その数は二百四十四件に上ります。これら事業の費用は文部省の予算でありますが、その執行は教育委員会でなされ、その使途については費目が限定されています。
 本年六月、会計検査院はこれら文部省委嘱事業について検査した結果、平成六年度から八年度までの三年間で約三千万円の不適正な経理があったとの指摘がありました。さきの九月県議会では、県の調査の結果、総額十三億四千四百万余円の不適正支出が明らかとなり、職員の責任のもとに返還されておりますが、県費とは別に今回、国の経費にかかわってこのような不適正な経理が発覚したことは、まことに遺憾であります。
 今回不適正な経理として指摘されたのは、教師を対象にした体育の実技指導講座など文部省委嘱の百三十六事業でありますが、その内容を見ますと、報告書の製本費用を予算以下に抑えたり、講座に参加する人数を規定より少なくし、その差額を講師謝金の補てんや会食等に充てていたというものであります。教育委員会においては、このような事態を招いたことを深く反省し、再発の防止に努めるよう望むものであります。教育委員会は今回の事件をどのように受けとめているのか、また返還を含め、どのように対応するおつもりか、教育長の答弁を求めます。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの宇治田栄蔵君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 宇治田議員にお答えをいたします。
 まず、新しい長期総合計画の基本目標である「ゆとりと充実」についてのご質問でございます。
 本計画は、二十一世紀を展望して、平成二十二年、二〇一〇年を目標年次といたしてございます。二十一世紀は、これまでの機能や効率を優先した社会から感性や創造性が重視される時代になると考えてございます。我が国は欧米先進国を目標に豊かさを追求してまいったわけでありますが、物質的に豊かになればなるほど、心の豊かさ、充足感を求める人が多くなってくるわけでございます。こうした新しい時代の豊かさをあらわすものとして「ゆとりと充実」ということは適切な表現であろうと考えております。
 「ゆとりと充実」の実現に関し、何をなすべきかを考えてみますと、本県には全国に誇れる豊かな自然や歴史・文化といった財産がございます。疲れをいやし、人間性を回復させる心のふるさとになり得るものでございます。こうした財産を活用するとともに、県民パワーによる多彩な活動や交流を行うことで新しい文化や産業の創出に結びつけていくことが重要なことであろうと考えてございます。
 それから、本計画における施策の位置づけでございます。
 二年前の知事選におきまして、一三六のプロジェクトを掲げ、県民の皆様に施策提案として訴えたところでございます。この一三六のプロジェクトにつきましては、政策課題や施策提案だけでなく、将来展望というか未来社会へのビジョンといったものも含めて提案をさせていただきました。知事就任後、例えば女性一〇〇人委員会、輝けわかやま・二十一世紀ふるさとづくり事業、あるいは南紀熊野体験博など、できる限り速やかに実行に移してきたところでございます。
 新しい長期総合計画の策定に当たりましては、現在、審議会において施策についてご検討いただいておるわけでございますけれども、一三六のプロジェクトのうち中長期的な構想に類するものについては、その趣旨や方向性について十分盛り込んでいきたいと考えてございます。
 昨年二月に諮問を行って以来、審議会の委員の皆様にはさまざまな角度からご検討をいただいてございます。答申案の作成に向けては、住民代表あるいは市町村長、県議会の皆様からのご意見を策定事務局も参加しながらお聞きをしているところでございます。計画樹立の暁には、二十一世紀の和歌山新時代を切り開くために、私も県民の皆様に県政への積極的な参画を呼びかけ、計画の実行に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、十年度予算編成に当たっての基本的な考え方、特に財政再建と県経済の活性化についてでございます。
 本議会の冒頭で申し上げたところでありますが、本県財政は、次年度以降も多額の歳入歳出ギャップが見込まれる一方で、県債残高の累増、元利償還費の増嵩等による財政構造の硬直化、財源調整のための基金の減少など、まことに厳しい状況に直面しておるわけでございます。
 一方、将来にわたって活力ある県勢を維持向上させていくためには、このような県財政の現況を構造的に転換して立て直していくことが焦眉の急であり、避けて通れない課題でございます。したがいまして、十年度予算においてはあらゆる手だてを講じて財政の構造改革を推進してまいる決意でございます。しかし、これは単に予算カットを図るといった消極的なものではございませんで、財政の構造的な転換を図ることによって今後生じるさまざまな要請に行政が十分対応できるようにするとともに、県民生活や経済活動の成長力を引き出し、積極的に新たな活力を導き出すことを目指したいと考えております。
 このような観点から、十年度予算の編成に当たりましては、一つ一つの制度や施策を根底から精査・吟味し、二十一世紀を見据え、和歌山新時代の創造につながる事業については思い切った重点主義で臨みますとともに、予算のより一層の効率化を図ることによって実質的な効果を最大限に重視した、中身の濃い予算をつくってまいりたいと考えております。県民の皆さんや企業の方々が将来に対して希望の持てるような施策展開を強力に推し進めたいと考えてございます。
 次に、今回の和歌山下津港港湾計画でございます。
 これは、近畿圏経済の一翼を担うベイフロンティア構想を推進するための第一段階として、平成二十年代前半を目標年次とした長期構想として取り組んだものでございます。
 港湾計画の主要な柱は、一つ目は、近畿圏の外国貿易の拠点として本港沖地区において水深十四メーターの岸壁二バースを計画し、物流コストの低減を図ること、二つ目に、地域の環境保全の観点から、処分場が逼迫している紀北地域の建設残土等の海面処分場を確保すること、三つ目に、関西地域の安定的な電力供給を図るために北港地区における電源立地の要請に対応すること、四つ目に、テクノスーパーライナーにも対応できる内貿バースを北港沖地区に確保するとともに薬種畑地区の再開発を図ること、以上の四つでございます。
 国の財政構造が厳しく議論をされている中で、これらの計画はすぐに実現できるものではありませんけれども、去る十一月二十八日の国の港湾審議会において、おおむね適当である旨の承認がされたものでございます。しかしなお、本港沖埋立計画のうち雑賀崎前面については、景観保全の観点からさまざまなご意見も寄せられてございます。
 私は常々申し上げてございますけれども、本県のすばらしい自然、古い歴史・文化を大切にし生かしながら、同時にさまざまな施策によって本県の発展を図っていく必要があると考えております。
 景観を初めとする環境の問題は、私にとっても重大な課題であると考えてございます。国の港湾審議会で出された意見についても真摯に受けとめて景観への特段の配慮を図るべく、今後、事業実施までに多くの検討を要することもございますので、今日までの経過を踏まえながら、埋め立ての位置や形状についてもさらに関係各位の意見をお聞きしながら柔軟に対応してまいりたいと考えてございます。
 他の問題につきましては、関係部長から答弁をいたします。以上であります。
○議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
  〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 宇治田議員にお答え申し上げます。
 新しい和歌山県長期総合計画における県民の声の反映についてでございますが、本計画の策定に関しましては、各界各層の代表者や有識者で構成する審議会にお諮りし、答申をいただき、これに基づいて計画を決定するところでございます。
 審議会における策定作業の中で、八年度は地域別の懇談会を開催し、市町村長や住民代表約百二十名の方々からご意見、ご要望をお聞きいたしました。平成九年二月には中間報告に対するご意見や和歌山県の活性化方策等について提言募集を行ったところでございます。さらに、九年度においても再度地域別の懇談会を開催し、各般にわたる施策についてご意見を承りました。これらのご意見、ご提言については、可能な限り計画策定に生かしてまいりたいと考えてございます。
 次に計画の特色でございますが、本計画では、太平洋新国土軸の形成や関西国際空港全体構想あるいはベイフロンティア構想による港湾整備などの基盤整備を見据えた上で、人や物の広域的な交流の増加による本県の活性化策を打ち出してまいりたいと考えてございます。
 現行の第四次長期総合計画ではテクノ&リゾートを県土づくりの戦略にしておりましたが、新しい長期総合計画では、目標達成のために県が重点的、戦略的に取り組む施策を戦略的プロジェクトとして基本構想に掲げるとともに、県政の主要施策の目標で数値化できるものについては県民生活の姿としてわかりやすくあらわしたものを提示してまいりたいと考えてございます。
 次に計画の推進についてでございますが、限られた財源で最大の行政効果を得るためには、事業の重要度、優先度に応じた計画的、重点的な予算配分とその着実な執行が不可欠であり、そのために三年ごとに事業の具体的な内容やスケジュール等を盛り込んだ中期実施計画を策定し、長期計画の進行管理を実施してまいりたいと考えてございます。
 長期総合計画に基づく施策の推進については、県と市町村の連携、あるいは市町村間の連携、さらには民間団体や県民の方々の知恵と力を結集することが必要でございます。このため、計画の策定に当たっては県民のご意見を十分反映するとともに、計画書のダイジェスト版など、わかりやすい資料を作成し、広く県民にPRし、理解と協力を求めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 財政事情の中期展望の中の三点についてお答え申し上げます。
 まず、十月九日に公表した財政事情の中期展望でお示ししました歳入歳出ギャップの要因と今後の対策についてでございます。
 ご承知のように、平成四年度以降、県税収入が百億円程度減収しましたが、その後も回復の足取りは重く、横ばいの状態が続いてございます。本来なら、「入るをはかって出るを制す」と申しますように、県税収入が急激に減少したこの時期に歳出規模を抑制するなど、財政運営上、工夫を凝らすことも大切でございます。しかし、当時はバブル崩壊後の相次ぐ景気対策や本県の社会資本の整備のため県単独事業を中心とした投資的事業を大幅に伸ばす必要性が強く、歳出規模を拡大してきたところでございます。一方、期待どおり税収が回復しなかったこともあって、ご指摘のような歳入と歳出の乖離を生じることになったところでございます。さらに、その財源不足を補うために県債の大量発行を行ってきました。そのことが公債費の増加につながるため、中期展望でお示ししましたとおり、歳入が今後順調にふえたとしても、人件費や公債費といった義務的経費がそれを上回る水準で増加し、このままだと歳入歳出ギャップが今後も拡大することが想定されるところでございます。
 この大幅な歳入と歳出の乖離を解消し、一部自治体に見られるような危機的な財政状況を回避するためには、まず何よりも抜本的な行財政改革と計画的な財政運営により歳入規模に相応した水準に歳出規模を抑制することが必要であると考えてございます。また、こうした取り組みによってもなお生じる財源不足に対しましては、県債の発行と基金の取り崩しに頼るほかないわけでございますが、基金も急激に減少し、公債費による財政負担もかなり重くなってきている現状では、従来のようなスタンスでそうした手だてに依存することはできないと考えてございます。
 そこで、次に十年度予算におけるシーリングの考え方についてでございますが、今申し上げました県財政の中期展望を踏まえ、中長期的な財政運営の健全性と安定性を確保するため、経費区分ごとに一定のマイナス要求基準を設定するとともに、中期展望で示された歳入歳出ギャップを極力縮小し、県債元利償還費の増嵩を抑えるべく、県債発行規模の抑制を図ることといたしました。
 一方、二十一世紀を見据え、県勢の活性化につなげていくための施策や課題に適切に対応するための予算編成手法として、新たに重点化調整枠及び組織横断政策課題調整枠を設け、緊要の事業への財政資金の重点投入を図ることとして、予算の重点化と効率化について従前よりも一段と踏み込んだ考え方を打ち出したところでございます。
 いずれにいたしましても、十年度予算要求のシーリングは、単なる予算規模の削減といった消極的なものを目指すものでなく、要求段階から施策の優先順位の厳しい選択を促すとともに予算の重点化と合理化、効率化を図り、真に実効性のある予算を目指すものでございます。今後、このシーリングに沿って提出された予算要求の精査を行い、本県の発展につながる予算づくりに全力で取り組んでまいる所存でございます。
 次に組織、定数等についてでございますが、本県におきましては、ご承知のように平成七年十一月に策定した行政改革大綱に基づき、地方分権への対応、簡素で効率的な行政運営の実現を主たるテーマとして行政改革を進めているところでございます。
 組織につきましては、平成八年度に福祉・保健・医療施策の一元化等を図ることを目的に本庁組織の再編を実施し、さらに平成十年度から、縦割り行政の問題点を除き、部局間の従前の概念にとらわれない総合行政を推進し、地方機関間の横断的連携を強化するために県事務所、土木事務所等を統合して振興局を設置するための条例案を本議会に提案させていただきました。また、従来県が直営で行っていた業務の見直しを行いまして、八年度、九年度の二年間で五地方機関を廃止したところでございます。今後とも組織の見直しを行い、簡素で効率的な組織機構の確立を図ってまいります。
 なお、職員定数に関しましては、高齢化社会への対応、高速道路の建設促進、南紀熊野体験博の実施など新たな行政需要に対応していくために、スクラップ・アンド・ビルドを基本に総定員の中で適正な定員管理に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) 宇治田栄蔵議員のご質問にお答えいたします。
 雑賀崎沖埋立計画についてでございます。
 まず、新聞報道についてのご質問ですが、県としては、九月十八日の地方港湾審議会で承認された計画案を国の港湾審議会でご審議いただいたわけであり、十一月二十七日付の読売新聞報道のような事実はございません。
 次に、海面処分場の内容についてでございます。
 紀北地域の道路整備や下水道整備等の公共事業に伴って発生する建設副産物につきましては、平成八年に住友金属西防波堤沖埋立地での処分が終了し、現在西浜地区での海面処分を行っていますが、これもおおむね来年夏ごろまでにはその受け入れが限界となり、公共事業等の実施に影響が出るといったことが危惧されます。このため、建設残土──建設工事に伴って生じる土でございます──や港湾のしゅんせつによって発生する土などを受け入れる海面処分場を新たに確保するものであり、産業廃棄物を受け入れる計画ではございません。
 また、これを本港沖に求めた理由でございますが、埋立地を利用して和歌山下津港の外国貿易機能を拡充するという要請に対応することとし、このためには、既に一定の外国貿易機能が集積していること、背後幹線道路へのアクセスが比較的整備されていること、かつ大型船が操船できる十分な広さの水域が確保できることから本港沖が最も適当であると判断したものでございます。
 三つ目の、計画策定の経過についてでございます。
 今回の計画改定につきましては、平成四年から学識経験者や庁内関係部局、また地元代表としての関係市、町等から成る整備構想調査委員会を設置し、計画案の検討を重ね、さらに地方港湾審議会での審議を経て策定されたものであります。
 港湾計画は、国の審議会において承認されて初めて県の計画としてオーソライズされるマスタープランといった性格のものであり、具体化を図るためには公有水面埋立法に基づいて縦覧し、広く意見を聞くとともに、地元市町村長の意見を聴取し、さらには漁業権者等の権利者の同意が必要とされるものでございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 不適正経理に係る二点についてお答えいたします。
 まず、不適正経理の内容についてでございますが、去る六月二日から五日間、文部省所管の歳出予算について会計検査院の実地検査が行われました。本県ではこれまで、教育の振興を図るため積極的に全国規模の大会などを開催してまいりましたが、議員ご指摘のとおり、平成六年度から八年度までの三年間に国から委嘱された高等学校教育課程全国研究集会や全国産業教育フェア、外国語指導助手近畿地区研修会などを含め、二百四十四の事業で総額四億九百六十一万二千円を執行した経費のうち、三千十四万六千円が不適正な経理と指摘されてございます。この事業は、県教育委員会が実施依頼を受け、経費は直接国の予算で執行したものであり、さきの予算執行調査改善委員会の調査では対象外となっておりました。
 これらの経費の使途につきましては、相当部分は講師及び教員などの協力者への旅費、講師謝金の補てん、職員研修旅費、会議費や消耗品費、印刷製本費等に充てておりましたが、そのほかに目的以外の備品購入費、外部講師等との飲食費、いじめ対策など緊急の会議を開催するための旅費や会議費等にも充てておりました。
 経理処理につきましては、いかなる場合も適切かつ正確であることが重要であります。このたびの不適正な経理は、委嘱制度と実態に乖離も見られますが、基本的には幹部職員を初め職員の公金に対する意識が希薄であったことなどにもよるものであります。議員各位並びに県民の皆さん方に深くおわびを申し上げる次第でございます。
 返還につきましては、不適正と指摘された経費のうち、文部省からの返還額の確定を待って管理職を中心に速やかに返還をいたしたいと考えてございます。今後、職員一同厳しくみずからを律し、県民の皆様方の教育への信頼回復に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 22番宇治田栄蔵君。
○宇治田栄蔵君 丁寧なるご答弁、ありがとうございます。
 ただいまの答弁を聞いておりまして、本当に来年度は厳しい状況にあるなと、財政・経済・一般にわたってそういう感をいたすわけでございます。特に民間においては、今、景気が低迷しております。しかも昨年、阪和銀行が業務停止命令を受けるというようなことで県民には非常に暗い話題が多いわけでありまして、明るい話題に飢えているのが現在の状況であると私は思います。ですから、来年度予算編成に当たっては、明るい話題を県の方から県民に提供するというようなことに心がけていただきまして、ぜひとも県民を明るい気持ちにさせていただくよう、よろしくお願いをしたいと存じます。
 それから雑賀崎埋立計画について、先ほど知事におかれては景観についての重要性ということをご答弁いただきました。今までは、柔軟に対応していきたいというコメントだけで、知事の思いというものが伝わるところがなかったわけでありますが、十分に景観への思いというものも考慮に入れながらこの港湾計画を進めていきたいというご答弁を知事からいただきました。両立ということは大変難しいことだと思うわけでございますけれども、ぜひとも両立させるような解決方法を探っていって県民の皆さんの理解が得られるような港を建設していただきたいと要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で宇治田栄蔵君の質問が終了いたしました。

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