平成9年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(大沢広太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時三分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
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 【日程第一 議案第百四号から議案第百十五号まで、議案第百十七号から議案第百二十号まで、及び報第七号】
 【日程第二 一般質問】
○議長(木下秀男君) 日程第一、議案第百四号から議案第百十五号まで、議案第百十七号から議案第百二十号まで、及び知事専決処分報告報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 1番大沢広太郎君。
 〔大沢広太郎君、登壇〕(拍手)
○大沢広太郎君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 県経済と中小零細金融の問題についてお伺いをいたします。
 西口知事は昨年の十二月議会で、我が自民党県議団の宇治田栄蔵議員の、経営が破綻した阪和銀行をめぐる質疑で、業務停止命令の連絡を受けたのは五時間前の午前三時ごろだったと不快感と驚きを隠せない表情で答弁を行い、和歌山の経済界を揺るがした時期からこの十一月までで間もなく一年を迎えようとしています。阪和銀行従業員八百五十人のうちの再雇用を見てみますと、業務停止命令から半年後の新聞紙上では再就職をした従業員は百三十人と、長引く景気低迷状況のもとで、まさに厳しい状況下に置かれています。さらに、さきに経済企画庁が発表した四月から六月期の国内総生産は、一月から三月期に比べて二・九%減少し、第一次石油ショック以来の大幅減となり、また年率換算では一一・二%減となっています。この減少面は消費税率の引き上げを前にした駆け込み需要の反動減などで、個人消費や住宅建設などが落ち込んだことが原因とされています。七月から九月期はプラス成長に戻る公算が大きいとされているものの、政府の今年度成長率見通し一・九%については達成が難しいとされており、景気の低迷、横ばい感が改めて確認されたところであります。
 一方、本県経済は、鉱工業生産指数や有効求人倍率などの動きを見ても依然として厳しいものがありますが、県内景気について知事はどのような認識をされているのか、ご所見を賜りたいと思います。
 本県のリーディングバンクである紀陽銀行にあっては、金融ビッグバンの本格的な導入に備え、経営の効率化、合理化を行い、地域経済にさらに貢献するために役職員が一丸となって取り組んでいると聞いております。ところが阪和銀行については、破綻後間もなく一年になろうとしているのに、その衝撃波は現在も進行中であります。預金の払い戻し業務を引き継ぐために設立された紀伊預金管理銀行も近く営業が譲渡され、破綻処理は、表向きは順調に進んでいると聞いています。
 また、阪和銀行関連で県が行った中小企業向けの緊急融資では、昨年十一月から三月末までで二百九十五件、総額で四十四億三千六百三十万円に上り、このうちの件数別では、和歌山市内で百四十一件、また阪和銀行が紀南無尽として創業した田辺市や西牟婁郡では四十二件となっています。県では、四月以降の今年度も五十億円の融資枠を用意し、事態に対応しています。しかし、融資を受けた企業や事業者のほとんどは証書貸し付けをきちんと返済し、担保力のあるところが中心で、零細企業で資金繰りが厳しいところほど融資が受けられていないと聞いております。また、手形決済を行っている企業は、銀行の業務停止の影響で新たな貸し付けが受けられず、連鎖倒産は新たな局面を迎えるのではないかと言われています。
 このように、県経済への打撃はまさに深刻なものがあります。大蔵省近畿財務局に、局長に次ぐナンバーツーのポストとして新設された金融安定監理官に着任された楠寿晴氏が七月末の就任記者会見で、関西の金融情勢はバブル経済の発生、崩壊の影響が関東に比べて厳しいものがあると表明したほか、特に信用組合の仕事が中心になり、各府県の信用組合担当者が一々東京の大蔵省へ足を運ぶことがなくても済むようにと考えていきたい、今後の金融行政のあり方については、市場の規律に基づいた透明性のある監督を行うとともに預金者保護等金融の安定を図っていく必要があるとも会見で表明したと報じられています。
 この信用組合対策でありますが、今月五日付の全国紙各社の朝刊には、大阪府が府内の信用組合を再編するために、系列など後ろ盾のない独立系信用組合を二つの生命保険会社系の信用組合に再編するとの構想を明らかにしたとあります。これは、多くの不良債権を抱え業務停止命令が出されれば、すべての債権が整理回収銀行に移り、取引先企業の資金調達ができなくなり、倒産する企業が相次ぐ危険性が高いためだと大阪府側は説明しているということであります。この信組再編については、今月下旬にも具体化に向けて大蔵省、日銀と協議に入るとしています。
 信用組合は、地域住民の生活や中小企業とより密着し、地域社会に根差した身近な金融機関であることは既成の事実であります。二〇〇一年の日本版ビッグバンを控え、県内信用組合を取り巻く環境には厳しいものがあると思われますが、今後の信用組合のあり方について、指導監督機関である県当局はどのように考えているのか、お伺いをいたします。
 あわせて、さきの阪和銀行従業員のその後の雇用状況と受け皿銀行への譲渡時期、また譲渡後の、阪和銀行と取引のあった企業への対応策をどう講じていくのかについてお尋ねをいたします。
 続いて、低迷する漁業の振興策の一つとして、浮き魚礁の設置についてお伺いをいたします。
 流れ藻、流木、ジンベイザメ、イルカなどの生物、無生物に限らず、浮遊物にカツオ、キワダ、シイラなど表層遊泳魚類が蝟集する習性のあることは、古くから知られております。その習性を利用した漁業は以前から行われており、沖合ではカツオさお釣り船やまき網漁船が浮遊物をいち早く見つけて操業したり、沿岸でも漬け漁業として、係留した浮遊物に集まった魚群を漁獲しており、この漬けこそが伝統的浮き魚礁であります。我が国では江戸時代に始まると言われているシイラ漬け、またインドネシアではルンポン、またフィリピンではパヤオと呼ばれ、特にモウソウチクなどを数本重ねて係留した、いわば簡易型浮き魚礁であります。
 地先の海域に浮遊物を係留し、通過する魚群を一時的にとめて漁獲しようとする漬け漁業は、まさに沿岸漁民の知恵の産物であります。しかも、天然の漁場に恵まれない海域でも人工的に漁場を造成できる点では、先駆的な発想であったと言えます。
 本県においても、昭和五十八年から数年、西牟婁地方は市江崎沖、東牟婁地方では熊野灘沖に合わせて三十台設置し、市江沖の浮き魚礁で漁をした田辺関係で六千五百万円、串本関係で八千万円、さらに東牟婁関係では三億円から五億円に上ったとも言われていると、当時の新聞に記載されております。ただ、当時の浮き魚礁は比較的簡易なものであったことなどから耐久性に乏しく、台風の風波や船舶に切られるなどして、設置した年にすべて流出してしまったように関係漁業者から聞いております。
 現在、沖縄県においては、沖縄本島、周辺海域はもとより、奄美、宮古島周辺海域にも設置し、その数は百七十基を超えていると聞いております。その上、改良を加えた先端漁法とも言ってよい新しいパヤオ漁であります。浮き魚礁の設置を行ったことによりひき縄漁業者の水揚げがふえ、組合員の漁業意欲も増大し、市場も活気が見られ、現在では高く評価されていると伺っております。沖縄では、午前中は漁業者、午後は遊漁者に開放し、入漁金を得てうまく使い分けし、観光漁業にも寄与しているようであります。
 紀伊水道は全国でも有数の船舶の往来が多い海域であり、過去にはロープが切断されて流出したり、また他種漁業とのトラブルで邪魔になるとクレームがつくなど、いろいろと問題点が多かったようですが、最近では、中層型浮き魚礁と言って、水面から五十メートルの海中に設置する工法も開発されていると聞いております。紀伊水道を往来する多くの船舶などにも余り影響がないのではないかと、そのように思う次第であります。
 今般、紀南の代表的漁法であるカツオひき縄釣り漁業を主とするすさみ漁業協同組合では浮き魚礁設置に向けての視察研修を行い、田辺市及び西牟婁管内の漁業協同組合で構成する西牟婁田辺漁業振興協議会に提言し、同協議会においても事業の推進決議をされたと伺っております。本日も、大変お忙しい中にもかかわらず、すさみ漁協の皆さん、そしてすさみ町議会の関係者の皆さんも大勢傍聴にお見えでございます。
 そこで、この皆さん方はこれからの紀南の漁業に展望が開けるような農林水産部長の答弁を期待しておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 先ほど、本県における過去の設置状況につき触れましたが、現在では、浮き魚礁本体の構造も過去のモウソウチクからFRP等にかわり、また係留技術も向上し、耐用年数も高度に向上しているとのことであります。カツオひき縄釣り漁業を主とする漁民にとって浮き魚礁は安定した漁獲向上の一つの策でもあり、漁家経営の安定に寄与するものと考えますが、部長の考えをお伺いいたします。また、隣接県である高知県、三重県等が成果を上げていると聞いておりますが、浮き魚礁を設置する組合に対する県としての支援策等についてもあわせてお伺いをしたいと思います。
 これで、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの大沢広太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 大沢議員にお答えをいたします。
 県内景気に対する見方についてでございます。
 全国的には消費税率の引き上げによる消費の反動減の影響が長引いておりますものの、景気回復の基調に変化はないとされてございますけれども、その要因の一つには、円安などを背景とする自動車、半導体、通信機器といった業界の好業績が挙げられてございます。しかしながら本県では、輸出型の機械や化学の一部に明るさが見られますものの、総じて景気回復を牽引する産業が少ないために、生産面、雇用面ともに全国水準より低く推移しているのが実態でございます。加えて、お話にございました阪和銀行の業務停止などによる金融不安も懸念をされておりまして、県内中小企業者にとっては依然厳しい状況が続いているというのが実態であろうと認識をいたしております。
 私といたしましては、このような認識のもとに、交通体系を含めた産業基盤の整備を初め、新産業の創出、さらには企業誘致の促進、また各種の大型プロジェクトの推進など、厳しい財政状況でありますが、創意工夫を凝らし、県経済の活性化を図ってまいりたいと考えております。十月に開催する産業博覧会なども、その一つの起爆剤になればと期待をしておるところであります。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○商工労働部長(日根紀男君) 県経済と中小零細金融の問題、二点についてお答えいたします。
 まず信用組合の指導についてでありますが、信用組合は、中小零細企業の金融の円滑化を通じて地域経済の振興に大きな役割を果たしてまいりました。しかしながら、他の金融機関同様、バブル経済の崩壊等、厳しい経営環境にございまして、現在、経営改善に懸命に取り組んでいるところでございます。
 いわゆる日本版ビッグバンを間近に控え、金融機関経営の透明性がますます求められるとともに、国、県当局の検査、指導に頼らずに、資産の自己査定により経営に対してみずから責任を持つという自己責任原則の徹底が求められているところでございます。
 今後、外国資本の進出や国内金融機関の再編等、金融機関を取り巻く環境が大きく変わっていくことが予想されます。したがって、信用組合といたしましては、地域にしっかり根をおろした営業活動を展開し、都市銀行などの普通銀行とは違った特色ある経営を行って、さまざまな生き残り策を図っていく必要があるのではないかと考えております。県といたしましては、信用組合が厳しい競争に生き残り、自立していけるよう強く指導してまいりたいと考えております。
 次に、阪和銀行への対応の問題でございます。
 阪和銀行従業員の雇用問題については県としても重要な課題の一つとして考えておりまして、現在、商工労働部内に阪和銀行雇用支援会議を設置して再就職の支援を行っておりますが、八月末現在で再就職が決まった従業員は、八百四十六人のうち二百五十二名となっております。今後におきましても、依然として厳しい雇用情勢ではございますが、一人でも多く再就職が図られるよう引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
 なお、受け皿銀行への事業譲渡につきましては、今年度内が目途ということでありますが、具体的な日程についてはまだ確定していないと聞いております。
 金融支援として県が実施している阪和銀行対策特別融資は、昨年十一月から本年八月までで三百六十四企業、五十四億七千三百四十万円の利用がございまして、これまでのところ、当面の事業資金には対応できたものというふうに見ております。
 事業譲渡後の企業への対応策といたしましては、金融機関、信用保証協会等に対して引き続き弾力的な取り扱いを要請いたしますとともに、制度融資の活用を図りながら金融の円滑化を図ってまいりたいと考えております。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
 〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 低迷する漁業の振興策のうち、浮き魚礁の効果と支援についてお答えいたします。
 浮き魚礁につきましては、ひき縄漁業者の漁獲の安定、漁労時間の短縮、漁業コストの節減等を図る上で有効な漁業振興策の一つであると考えてございます。
 議員お話しの沖縄県のほか、幾つかの県においても各種浮き魚礁の取り組みが行われているところでございます。本県でも、過去に簡易な浮き魚礁を設置したほか、耐久性のある大型浮き魚礁の試験も実施し、データの集積もございます。しかしながら、他種漁業との調整や大型船舶のふくそうする海域での漁業者の安全対策等が必要でございますので、関係者との調整を図りながら、漁業者の要望を踏まえ、対応してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 1番大沢広太郎君。
○大沢広太郎君 ただいま答弁をいただき、ありがとうございました。
 金融対策について、西口知事の答弁でも、県内の景気の低迷ぶりが改めて確認されたほか、活性化に向けては相違工夫を凝らして取り組むとの決意を示されましたが、本県も大阪府のように信組の再編等の強力な特別策を講じていただき、中小企業従事者や家族から、和歌山県に住んでよかったと言われるような行政としての取り組みをお願いしたいと思います。
 また、海で働く漁師さんらが寒風が吹くしけの中で漁をしたり、強い雨が降りしきる中、漁に精を出したりして、まさに命がけで家族の生活を支えているのが現状であります。本県の漁業では後継者不足と高齢化が大きな課題となるほど、漁業を取り巻く環境はまさに厳しいものがあります。漁業者の皆さんは、水産資源の確保や漁業の整備等、漁業の経営安定を望んでいます。各地で明らかな効果が出ているこの事業を漁業者のために、ひいては消費者のためにも強力な基盤投資をよろしくお願いするものでございます。
 ところで、本県では水産業の活性化を図るため、海の資源を守り育て、提供する黒潮産業への飛躍といったスローガンを掲げ、基盤づくりや人づくり、情報体制づくりを重点施策に取り組まれています。また、これまで県内ではイセエビ漁の資源管理の成功事例もあり、このように時代を先取りしたこれからの漁業の振興を推進していただくとともに、豊かで潤いのある漁業の発展に取り組まれることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で大沢広太郎君の質問が終了いたしました。

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